(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記温度計測装置の計測結果が予め設定した閾値を超えた状態で、予め設定した規定時間を経過したとき、前記ガス吹込装置の駆動の制御を開始する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のボイラ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ボイラ装置を部分負荷帯で運転すると、燃焼ガス量が少ないため、ガス流路におけるガス流量に偏りが生じる。これにより、ガス流路に設けられた熱交換器では、ガス流量が偏った側の蒸気温度が高くなり、逆にその反対側では蒸気温度が低くなり、蒸気温度差が発生してしまうことがある。この蒸気温度差が発生すると、熱伸び差による熱応力が発生し、ボイラ装置や蒸気タービンにおける構造物にストレスがかかる、という問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、燃焼ガス量が少ない場合でも、熱交換器において蒸気温度の均一化を図り、ボイラ装置の安定した運転を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、燃焼ガスが流通するガス流路を備える火炉と、前記火炉の内部で燃料を燃焼させ、前記燃焼ガスを発生させるバーナと、前記ガス流路の前記バーナより下流側において、前記燃焼ガスと熱交換する熱交換器と、前記ガス流路の前記バーナと前記熱交換器との間において、前記ガス流路を横断する方向における一方側と他方側のそれぞれからガスを吹き込むガス吹込装置と、前記熱交換器の前記一方側と前記他方側における蒸気温度差を計測する温度計測装置と、前記温度計測装置の計測結果に基づいて、前記ガス流路の前記一方側及び前記他方側の少なくともいずれか一方からの前記ガスの吹込量を、ステップ状に変化させるよう前記ガス吹込装置の駆動を制御する制御装置と、を有する、ボイラ装置を採用する。
【0008】
本発明では、ボイラ装置に係る第2の解決手段として、前記制御装置は、前記蒸気温度差の大きさに基づいて、前記ガスの吹込量を変化させるステップ幅を設定する、という構成を採用する。
【0009】
本発明では、ボイラ装置に係る第3の解決手段として、前記ガス吹込装置は、前記ガス流路を横断する第一方向における前記一方側と前記他方側のそれぞれに、前記ガス流路を横断し且つ前記第一方向と交差する第二方向において対向する一対のガス吹込部を有しており、前記制御装置は、前記一対のガス吹込部のうちの一方から吹き込まれる前記ガスの吹込量のみを、ステップ状に変化させるよう前記ガス吹込装置の駆動を制御する、という構成を採用する。
【0010】
本発明では、ボイラ装置に係る第4の解決手段として、前記制御装置は、前記温度計測装置の計測結果が予め設定した閾値を超えた状態で、予め設定した規定時間を経過したとき、前記ガス吹込装置の駆動の制御を開始する、という構成を採用する。
【0011】
本発明では、ボイラ装置に係る第5の解決手段として、前記ガス吹込装置は、前記ガスとして、前記燃料を二次燃焼させる二次燃焼用空気を吹き込む、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明では、燃焼ガスが流通するガス流路を備える火炉と、前記火炉の内部で燃料を燃焼させ、前記燃焼ガスを発生させるバーナと、前記ガス流路の前記バーナより下流側において、前記燃焼ガスと熱交換する熱交換器と、前記ガス流路の前記バーナと前記熱交換器の間において、前記ガス流路を横断する方向における一方側と他方側のそれぞれからガスを吹き込むガス吹込装置と、を有するボイラ装置の制御方法であって、前記熱交換器の前記一方側と前記他方側における蒸気温度差に基づいて、前記ガス流路の前記一方側及び前記他方側の少なくともいずれか一方からの前記ガスの吹込量を、ステップ状に変化させるよう前記ガス吹込装置の駆動を制御する、ボイラ装置の制御方法を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガス流路を横断する方向における一方側と他方側において熱交換器の蒸気温度差が生じた場合、ガス流路においてバーナと熱交換器との間に設けられたガス吹込装置からのガスの吹込量を一方側と他方側とで、ステップ状に変化させる。ガス流路における燃焼ガス量の偏りは、落ち着くことは少なく、左から右、右から左とサイクリックに移り変わることの方が多いため、ガスの吹込量を連続的に変化させたのでは、後追い制御になり、燃料ガス量の偏りを低減することは難しい。このため、本発明では、ガスの吹込量をステップ状に変化させることで、燃焼ガスの流れにインパクトを与えて、ガス流路における燃焼ガス量の偏りを低減させる。
したがって、本発明では、燃焼ガス量が少ない場合でも、熱交換器において蒸気温度の均一化を図り、ボイラ装置の安定した運転を可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るボイラ装置1の概略構成図である。
図2は、
図1における矢視A−A断面図である。
本実施形態のボイラ装置1は、蒸気を生成し、不図示の蒸気タービンを駆動させ発電を行うものである。このボイラ装置1は、
図1に示すように、火炉2と、バーナ3と、熱交換器4と、ガス吹込装置5と、
図2に示すように、温度計測装置6と、制御装置7と、を有する。
【0017】
火炉2は、
図1に示すように、微粉炭等の燃料がバーナ3で燃焼され、その燃焼により生成された固形物を排出する排出口20を有する。また、火炉2は、燃料の燃焼により発生した燃焼ガスを排気する排気口21を有する。火炉2内には、燃料ガスのガス流路22が形成されている。ガス流路22は、火炉2の長手方向に延在し、排気口21と連通している。燃焼ガスは、排気口21を介して排出された後、排ガス処理を経て大気に放出される。
【0018】
バーナ3は、火炉2の内部で燃料を燃焼させ、燃焼ガスを発生させるものである。バーナ3は、燃料を供給する燃料供給管30と、燃焼用空気を供給する空気供給管31と、を有する。燃料供給管30からは、燃料として、例えば微粉炭が噴射される。この燃料は、空気供給管31から噴射される燃焼用空気と混合し、輻射や対流伝熱によって加熱され、石炭から放出された揮発成分が着火することで燃焼する。この結果、火炉2内に燃焼ガスが発生する。
【0019】
空気供給管31からは、燃焼用空気として、燃料を一次燃焼させる一次燃焼用空気が吹き込まれる。本実施形態のボイラ装置1では、燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減させるため、燃焼用空気を一次及び二次に分けて供給している。すなわち、燃料に対する所定の空気比よりも低い一次燃焼用空気で燃料を一次燃焼させると共に熱分解する。これにより、一次燃焼で燃焼温度を下げてNOx発生を抑制することができる。なお、ボイラ装置1では、その下流側のガス吹込装置5から所定の空気比に不足分の二次燃焼用空気を吹き込み二段燃焼させることで、燃焼を完結させるものとしている。
【0020】
熱交換器4は、ガス流路22のバーナ3より下流側において、燃焼ガスと熱交換するものである。熱交換器4は、対流型のものであり、火炉2内に複数設けられている。本実施形態の熱交換器4は、燃焼ガスの熱で生成した蒸気を不図示の蒸気タービンに必要な温度まで過熱する過熱器からなり、蒸気は複数段で過熱されることにより高温になる。この熱交換器4は、
図2に示すように、蒸気を搬送する複数の蒸気配管40と、複数の蒸気配管40が接続される出口寄配管41と、を有する。
【0021】
蒸気配管40は、燃焼ガスの対流伝熱により加熱される熱交換器4を形成する配管であり、熱交換器4の出口側から延出するものである。出口寄配管41は、ガス流路22を横断する方向(第一方向)における一方側10Aで熱交換した複数の蒸気配管40と接続される出口寄配管41Aと、ガス流路22を横断する第一方向における他方側10Bで熱交換した複数の蒸気配管40と接続される出口寄配管41Bと、からなる。なお、出口寄配管41A,41Bを流通する蒸気は、下流側で合流して、不図示の蒸気タービンに供給される。
【0022】
ガス吹込装置5は、
図1に示すように、ガス流路22のバーナ3と熱交換器4との間においてガスを吹き込むものである。本実施形態のガス吹込装置5は、吹き込むガスとして、燃料を二次燃焼させる二次燃焼用空気を吹き込むようになっている。このガス吹込装置5は、ガスを吹き込む複数のOAP50(Over Air Port:ガス吹込部)と、複数のOAP50に接続された空気供給管51と、OAP50のそれぞれから吹き込まれるガスの吹込量を調整するOAPダンパ52と、を有する。
【0023】
OAP50は、
図2に示すように、ガス流路22を横断する第一方向における一方側10Aと他方側10Bのそれぞれに、ガス流路22を横断し且つ第一方向と交差する第二方向において対向して設けられている。ガス吹込装置5は、第一方向の一方側10Aにおいて第二方向で対向する一対のOAP50A1,50A2と、第一方向の他方側10Bにおいて第二方向で対向する一対のOAP50B1,50B2と、を有する。なお、本実施形態の第一方向は、火炉2の断面の長手方向に対応しており、本実施形態の第二方向は、火炉2の断面の短手方向に対応している。
【0024】
空気供給管51は、
図1に示すように、バーナ3に接続された空気供給管31から分岐して設けられている。空気供給管51は、その下流側で分岐して
図2に示すOAP50A1,50A2,50B1,50B2のそれぞれに接続されている。
OAPダンパ52は、空気供給管51の流路に設けられた風量調整板を有し、その風量調整板の傾き(OAP開度)に応じて、各OAP50からのガスの吹込量を調整する構成となっている。ガス吹込装置5は、OAP50A1からのガスの吹込量を調整するOAPダンパ52A1と、OAP50A2からのガスの吹込量を調整するOAPダンパ52A2と、OAP50B1からのガスの吹込量を調整するOAPダンパ52B1と、OAP50B2からのガスの吹込量を調整するOAPダンパ52B2と、を有する(
図2参照)。
【0025】
温度計測装置6は、熱交換器4の一方側10Aと他方側10Bにおける蒸気温度差を計測するものである。温度計測装置6は、熱交換器4の出口寄配管41Aを流通する蒸気の温度を計測する温度センサ60Aと、熱交換器4の出口寄配管41Bを流通する蒸気の温度を計測する温度センサ60Bと、を有する。温度計測装置6は、温度センサ60Aと温度センサ60Bとの差分から熱交換器4の一方側10Aと他方側10Bにおける蒸気温度差を計測することが可能な構成となっている。
【0026】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び電気的に接続されたガス吹込装置5、温度計測装置6と通信を行うインターフェイス回路等から構成されている。この制御装置7は、上記ROMに記憶された各種演算制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行い、演算結果に基づいてガス吹込装置5の駆動を制御する構成となっている。
【0027】
制御装置7は、温度計測装置6の計測結果に基づいて、ガス流路22の一方側10A及び他方側10Bの少なくともいずれか一方からのガスの吹込量を、ステップ状に変化させるようガス吹込装置5の駆動を制御するようになっている。また、制御装置7は、蒸気温度差の大きさに基づいて、ガスの吹込量を変化させるステップ幅を設定するようになっている。また、制御装置7は、温度計測装置6の計測結果が予め設定した閾値を超えた状態で、予め設定した規定時間を経過したとき、ガス吹込装置5の駆動の制御を開始するようになっている。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係る制御装置7の制御フローを示す図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るOAP開度と蒸気温度差との関係を示すグラフである。なお、
図3において、過熱器出口蒸気温度(左)とは温度センサ60Aから出力された信号であり、過熱器出口蒸気温度(右)とは温度センサ60Bから出力された信号である。
制御装置7は、
図3に示すように、熱交換器4の一方側10Aと他方側10Bにおける蒸気温度差に基づいて、OAP開度を変化させるステップ幅を変更するようになっている。
【0029】
具体的には、先ず、温度センサ60Aから出力された信号と、温度センサ60Bから出力された信号は、加減算器70に入力される。加減算器70は、温度センサ60Aから出力された信号と、温度センサ60Bから出力された信号と、の差の信号を出力する。加減算器70から出力された信号は、符号が+の場合(温度センサ60Aの蒸気温度が大きい場合)、高側モニタ71a〜71d若しくは低側モニタ72eに入力される。一方、加減算器70から出力された信号は、符号が−の場合(温度センサ60Bの蒸気温度が大きい場合)、低側モニタ72a〜72d若しくは高側モニタ71eに入力される。
【0030】
蒸気温度差がα4より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、高側モニタ71aに入力される。また、蒸気温度差がα4より小さくα3より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、高側モニタ71bに入力される。また、蒸気温度差がα3より小さくα2より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、高側モニタ71cに入力される。また、蒸気温度差がα2より小さくα1より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、高側モニタ71dに入力される。また、蒸気温度差がα1より小さいβより小さい場合、加減算器70から出力された信号は、低側モニタ72eに入力される。なお、β、α1〜α4は、0<β<α1<α2<α3<α4の関係を有する(
図4参照)。
【0031】
高側モニタ71a〜71dから出力された信号は、オンディレイタイマ72に入力される。オンディレイタイマ73は、予め設定した規定時間を経過したとき信号を出力する。オンディレイタイマ73から出力された信号は、セット・リセット74のセット側に入力される。また、低側モニタ72eから出力された信号は、セット・リセット74のリセット側に入力される。すなわち、蒸気温度差がほとんどなくなったとき(蒸気温度差<βとなったとき)、低側モニタ72eから出力された信号によって、蒸気温度差の大きさに基づくOAP開度のステップ幅の設定がベース(初期)にリセットされる。
【0032】
セット・リセット74のセット側から出力された信号は、切換器76に入力される。切換器76は、入力された信号に基づき、OAP開度指令(ベース)に、関数発生器75においてボイラ負荷に応じて発生したバイアス(レベル1〜4)を掛ける。高側モニタ71dに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル1のバイアスを掛ける。また、高側モニタ71cに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル2のバイアスを掛ける。また、高側モニタ71bに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル3のバイアスを掛ける。また、高側モニタ71aに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル4のバイアスを掛ける。なお、OAP開度はステップ状に設定されており、ベース<レベル1<レベル2<レベル3<レベル4の関係を有する(
図4参照)。
【0033】
一方、蒸気温度差が−α1より小さく−α2より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、低側モニタ72aに入力される。また、蒸気温度差が−α2より小さく−α3より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、低側モニタ72bに入力される。また、蒸気温度差が−α3より小さく−α4より大きい場合、加減算器70から出力された信号は、低側モニタ72cに入力される。また、蒸気温度差が−α4より小さい場合、加減算器70から出力された信号は、低側モニタ72dに入力される。また、蒸気温度差が−α1より大きい−βより大きい場合、加減算器70から出力された信号は、高側モニタ71eに入力される。なお、−β、−α1〜−α4は、−α4<−α3<−α2<−α1<−β<0の関係を有する(
図4参照)。
【0034】
低側モニタ72a〜72dから出力された信号は、オンディレイタイマ72に入力される。オンディレイタイマ73は、予め設定した規定時間を経過したとき信号を出力する。オンディレイタイマ73から出力された信号は、セット・リセット74のセット側に入力される。一方、高側モニタ71eから出力された信号は、セット・リセット74のリセット側に入力される。すなわち、蒸気温度差がほとんどなくなったとき(蒸気温度差>−βとなったとき)、高側モニタ71eから出力された信号によって、蒸気温度差の大きさに基づくOAP開度のステップ幅の設定がベース(初期)にリセットされる。
【0035】
セット・リセット74のセット側から出力された信号は、切換器76に入力される。切換器76は、入力された信号に基づき、OAP開度指令(ベース)に、関数発生器77においてボイラ負荷に応じて発生したバイアス(レベル−1〜−4)を掛ける。低側モニタ72aに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル−1のバイアスを掛ける。また、低側モニタ72bに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル−2のバイアスを掛ける。また、低側モニタ72cに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル−3のバイアスを掛ける。また、低側モニタ72dに係る信号が入力された切換器76は、出力する信号aにレベル−4のバイアスを掛ける。なお、OAP開度はステップ状に設定されており、レベル−4<レベル−3<レベル−2<レベル−1<ベースの関係を有する(
図4参照)。
【0036】
次に、変化率制限器78において、バイアスが所定範囲を超えないように制限する。変化率制限器78から出力された信号は、切換器79に入力される。切換器79は、左右温度差制御が入力された場合(蒸気温度差の大きさが所定の閾値を超えた場合)、OAP開度指令にバイアスを掛けた指令を出す。切換器79は、それ以外の場合、OAP開度指令にバイアスを掛けない。このOAP開度指令に基づいて、
図2に示すOAPダンパ52の開度が制御される。
【0037】
本実施形態の制御装置7は、
図2に示すように、第二方向で対向する一対のOAP50のうちの一方から吹き込まれるガスの吹込量のみを、
図3に示す制御フローでステップ状に変化させるようガス吹込装置5の駆動を制御する。本実施形態では、OAPダンパ52A1、OAPダンパ52B1のみが
図3に示す制御フローにより制御される。すなわち、OAPダンパ52A2、OAPダンパ52B2では、熱交換器4の一方側10Aと他方側10Bにおける蒸気温度差に基づいて、OAP開度を変化させるステップ幅を変更するようになってはいない。
【0038】
続いて、上記構成のボイラ装置1の具体的な動作(制御方法)について、
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るボイラ装置1の動作を説明するための図である。なお、
図5は、
図2に対応する図であり、図中の符号Gは、燃焼ガスを模式的に示したものである。
【0039】
ボイラ装置1を部分負荷帯で運転すると、燃焼ガス量が少ないため、
図5おいてGが付された二点鎖線で示すように、ガス流路22におけるガス流量に偏りが生じる。これにより、ガス流路22に設けられた熱交換器4では、ガス流量が偏った側(第一方向の一方側10A)の蒸気温度が高くなり、逆にその反対側(第一方向の他方側10B)では蒸気温度が低くなり、蒸気温度差が発生してしまうことがある。この蒸気温度差が発生すると、熱伸び差による熱応力が発生し、ボイラ装置1や蒸気が供給される不図示の蒸気タービンにおける構造物にストレスがかかる。
【0040】
このため、本実施形態のボイラ装置1は、熱交換器4の一方側10Aと他方側10Bにおける蒸気温度差を計測する温度計測装置6と、温度計測装置6の計測結果に基づいて、ガス流路22の一方側10A及び他方側10Bの少なくともいずれか一方からのガスの吹込量を、ステップ状に変化させるようガス吹込装置5の駆動を制御する制御装置7と、を有する。ガス吹込装置5は、NOx低減のために二次燃焼用空気を吹き込むOAP50を第一方向における一方側10Aと他方側10Bとに複数備えており、この設備を利用してガス流路22における燃焼ガス量の偏りを低減させることで、別途設備を追加することがないようにすることができる。
【0041】
ガス流路22における燃焼ガス量の偏りは、落ち着くことは少なく、左から右、右から左とサイクリックに移り変わることの方が多い。このため、ガスの吹込量を連続的に変化させたのでは、後追い制御になり、燃料ガス量の偏りを低減することは難しい。そこで、本実施形態では、ガスの吹込量をステップ状に変化させることで、燃焼ガスの流れにインパクトを与えて、ガス流路22における燃焼ガス量の偏りを低減させる。
図3に示す制御フローによれば、一方側10Aの蒸気温度が上昇し始めたら、その一方側10Aからのガスの吹込量をステップ状に増加させる。また、蒸気温度が上昇するようであれば、さらにステップ状にガスの吹込量を増加させる。蒸気温度が下がり始めたら、逆にステップ状にガスの吹込量を減少させる、といった制御が可能となる。
【0042】
このように、本実施形態では、ガス流路22を横断する方向における一方側10Aと他方側10Bにおいて熱交換器4の蒸気温度差が生じた場合、ガス流路22においてバーナ3と熱交換器4との間に設けられたガス吹込装置5からのガスの吹込量を一方側10Aと他方側10Bとで、ステップ状に変化させることで、燃焼ガスの流れにインパクトを与えて、ガス流路22における燃焼ガス量の偏りを低減させることができる。例えば、
図5に示す例では、第一方向の一方側10Aの蒸気温度が高い場合、第一方向の他方側10BのOAP50B1の開度を低減させ、燃焼ガスが他方側10Bに流れ易いように調整することができる。このため、本実施形態では、燃焼ガス量が少ない場合でも、熱交換器4において蒸気温度の均一化を図り、ボイラ装置1の安定した運転を可能とすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、制御装置7は、蒸気温度差の大きさに基づいて、ガスの吹込量を変化させるステップ幅を設定する、という構成を採用する。この構成によれば、
図4に示すように、蒸気温度差の大きさに基づいてOAP開度のバイアスが比例的に大きくなるため、蒸気温度差が大きさに対応したインパクトを燃焼ガスの流れに与えることができる。このため、本実施形態では、ガス流路22における燃焼ガス量の偏りを速く効果的に低減させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、制御装置7は、OAP50A1,50B1から吹き込まれるガスの吹込量のみを、ステップ状に変化させるようガス吹込装置5の駆動を制御する、という構成を採用する。上述した様に、燃焼ガスの流れは、落ち着くことなく移り変わり易い。したがって、例えば、全てのOAP50でガスの吹込量を変化させてしまうと、燃焼ガスがランダムに動き、燃焼ガス量の偏りを制御することが困難になってしまう。このため、本実施形態では、OAP50の制御を、一方側10Aと他方側10Bとで一つずつに絞ることで、燃焼ガス量の偏りの制御を容易にさせている。
【0045】
また、本実施形態では、制御装置7は、温度計測装置6の計測結果が予め設定した閾値(例えばα1)を超えた状態で、オンディレイタイマ73で予め設定した規定時間を経過したとき、ガス吹込装置5の駆動の制御を開始(セット)する、という構成を採用する。上述した様に、ガス流路22における燃焼ガス量の偏りは、落ち着くことは少なく、左から右、右から左とサイクリックに移り変わることの方が多い。したがって、一時的な温度変化にとらわれると、燃焼ガス量の偏りを正確に把握できず、逆に偏りを助長させてしまう制御をかけてしまうことがある。このため、本実施形態では、一時的な温度変化に伴う制御を排除すべく、蒸気温度差がある閾値を超えて規定時間が経過した場合に、OAP開度指令をステップ状に切り換えるようになっている。
【0046】
このように、上述の本実施形態によれば、燃焼ガスが流通するガス流路22を備える火炉2と、火炉2の内部で燃料を燃焼させ、燃焼ガスを発生させるバーナ3と、ガス流路22のバーナ3より下流側において、燃焼ガスと熱交換する熱交換器4と、ガス流路22のバーナ3と熱交換器4との間において、ガス流路22を横断する方向における一方側10Aと他方側10Bのそれぞれからガスを吹き込むガス吹込装置5と、熱交換器4の一方側10Aと他方側10Bにおける蒸気温度差を計測する温度計測装置6と、温度計測装置6の計測結果に基づいて、ガス流路22の一方側10A及び他方側10Bの少なくともいずれか一方からのガスの吹込量を、ステップ状に変化させるようガス吹込装置5の駆動を制御する制御装置7と、を有する、ボイラ装置1を採用することによって、燃焼ガス量が少ない場合でも、熱交換器4において蒸気温度の均一化を図り、ボイラ装置1の安定した運転を可能とすることができる。
【0047】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、蒸気温度差の大きさに基づいて、ガスの吹込量を変化させるステップ幅を設定すると説明したが、本発明はこの手法に限定されるものではなく、
図3に示す制御フローは一例である。例えば、温度差に応じて比例的にステップ幅を設定するのではなく、二次関数的にステップ幅を設定する手法を採用してもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、熱交換器4は過熱器であると説明したが、本発明はこの手法に限定されるものではなく、例えば熱交換器4が再熱器であってもよい。
【0050】
(3)上記実施形態では、ガス吹込装置5は、ガスとして、燃料を二次燃焼させる二次燃焼用空気を吹き込むと説明したが、本発明はこの手法に限定されるものではなく、例えばガスとして、不活性ガスや蒸気、燃焼排ガスの一部等を吹き込む手法を採用してもよい。
【0051】
(4)上記実施形態では、OAP50を4つ配置すると説明したが、本発明はこの手法に限定されるものではなく、OAP50の個数や配置はボイラ装置1の仕様によって適宜変更可能である。