(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力供給に係る電力流通事業体の会計情報と、前記電力流通事業体が管轄する複数の設備の特性を示す設備特性情報と、前記電力流通事業体の配下にある各地域に存在する単位組織それぞれの管轄範囲における前記設備ごとの電力流通に対する貢献度を示す地域特性情報と、を取得し、取得した前記設備特性情報と前記地域特性情報とのうち少なくとも一方に基づいて前記電力流通事業体の前記会計情報を前記単位組織のそれぞれに配賦する配賦処理部
を備えることを特徴とする会計装置。
前記設備は種類別に、送電設備と、変電設備と、配電設備とに分類され、さらに、送電設備は、送電電圧に応じて系統別に基幹系統送電設備と地域系統送電設備とに分類され、また、変電設備は、受電電圧に応じて系統別に基幹系統変電設備及び地域系統変電設備とに分類され、
前記会計情報は、前記設備ごとの取得原価を含み、
前記配賦処理部は、前記電力流通事業体の電力流通に対する総収入を所定の方法で按分し前記設備の種類ごとの収入を示す設備種類別収入を算出するとともに、当該設備種類別収入を、前記取得原価の合計に応じて前記種類別、系統別に按分した値のそれぞれを、さらに前記地域特性情報に応じて按分し、その按分した収入を当該地域特性情報に対応する前記単位組織に配分する
ことを特徴とする請求項1に記載の会計装置。
前記総収入を設備の種類ごとに按分する所定の方法は、前記配賦処理部が、前記設備特性情報と前記地域特性情報とに基づいて前記設備の種類ごとの料金を算出し、前記電力流通事業体の電力流通に対する総収入を前記設備の種類ごとの料金の比率で按分する方法である
ことを特徴とする請求項3に記載の会計装置。
前記総収入を設備の種類ごとに按分する所定の方法は、前記配賦処理部が、前記設備の種類ごとの電力流通事業にかかる原価を示す会計情報を取得して合計し、前記電力流通事業体の電力流通に対する総収入を前記設備の種類ごとの原価の合計の比率で按分する方法である
ことを特徴とする請求項3に記載の会計装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態による会計装置を
図1〜
図13を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態による会計装置の一例を示すブロック図である。
この図において、符号1は会計装置を表している。
図1に示す通り、会計装置1は、入力受付部10、会計情報取得部11、配賦処理部12、帳票出力部13、記憶部14、制御部15を備えている。会計装置1は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えたPC(パーソナルコンピュータ)やサーバ装置である。会計装置1は、ディスプレイ、キーボード、マウスなどと接続されている。会計装置1は、電力供給を行う電力会社における各種会計情報を集計し、管理会計に必要な各種帳票を責任単位ごとに出力する。責任単位とは、管理会計で定めた目標値などに対して責任を持つ1つの単位組織のことである。本実施形態の電力会社は、複数の事業体に分かれており、各事業体の配下には、階層の上から順に分野、支店、支社などの組織体が存在する。また、以下において責任単位は支社であるとする。
【0017】
入力受付部10は、ユーザが不図示のキーボードやマウスなどを用いて行った操作の操作情報を受け付ける。
会計情報取得部11は、各種会計情報を取得し、記憶部14に記録する。各種会計情報には、例えば勘定残高情報、給与情報、振替伝票情報、設備投資情報などが含まれる。
配賦処理部12は、記憶部14に記録された会計情報を各責任単位に配賦する処理を行う。
帳票出力部13は、責任単位ごと、あるいは、複数の責任単位を束ねた組織ごとに収支レポートなどの帳票を出力する。
記憶部14は、会計情報取得部11が取得した会計情報、配賦処理部12がどの会計情報をどの責任単位に配賦するかを決定するルールを定義した情報を記憶するテーブル、帳票出力部13が帳票出力時に使用するマスタテーブルなどを記憶している。
制御部15は、ユーザの操作に基づいてアプリケーションプログラムの各種動作の制御を行う。
これら、入力受付部10、会計情報取得部11、配賦処理部12、帳票出力部13、制御部15は、会計装置1の備えるCPUが記憶部14からプログラムを読み出し実行することで備わる機能である。
【0018】
図2は、本発明の第一の実施形態による会計装置に格納されたテーブルの一例である。
図2(a)は、会計情報取得部11が取得して記憶部14に記録する会計情報のデータフォーマットの一例である。「区分」は、計画、実績を区別する情報を格納する項目である。「店所コード」、「箇所コード」は、本実施形態の電力会社における組織体系のうち、ある階層の組織体に割り当てられたコードである。店所は、箇所よりも上位の階層の組織である。「科目コード」、「項コード」は勘定科目を示すコードである。項は、科目のより上位の区分である。「残高」は、当該勘定科目の残高である。「年月」は、残高情報がいつ時点のものであるかを示している。会計情報取得部11は、
図2(a)で例示したフォーマットの電子ファイルを取得し、記憶部14に記録する。
【0019】
図2(b)は、配賦処理部12が会計情報をどの責任単位に配賦するかを決定するために用いる勘定所属マスタテーブルのデータフォーマットの一例である。「店所コード」、「箇所コード」は、
図2(a)で説明したとおりある階層の組織に割り当てられたコードである。「事業体コード」、「分野コード」、「責任単位コード」は、管理会計に用いる組織体系の各階層の組織体に割り当てられたコードであり、事業体、分野、責任単位の順に下層の組織を表している。事業体とは、例えば、電力の生産や燃料の調達を行う事業体、電力の流通を行う事業体(電力流通事業体)、顧客へサービスを提供する事業体などである。分野とは、例えば電力流通事業体の場合、送変電や配電である。責任単位とは、例えば各地に存在する支社である。
図2(b)の1行目のレコードは、「店所コード=001」、「箇所コード=0011」で計上された会計情報は、管理会計上「事業体コード=01」、「分野コード=011」、「責任単位コード=0111」に対応付けられることを示している。この勘定所属マスタテーブルは、予め記憶部14に記憶されている。
【0020】
図2(c)は、配賦処理部12が、
図2(a)で例示した会計情報に対して配賦処理を行った結果を示すテーブル(配賦後テーブル)の一例である。
図2(c)で例示したテーブルには、
図2(a)の会計情報に対して「事業体コード」、「分野コード」、「責任単位コード」の項目が付加されている。付加されたこれらのコードは、配賦処理部12が、勘定所属マスタテーブルに基づいて付加した情報である。
【0021】
図3は、本発明の第一の実施形態による会計装置が出力した帳票の一例を示す図である。
図3は、本実施形態の電力会社における電力流通事業体のある責任単位についての収支を表す帳票(収益レポート)である。
図3で例示するとおり、この帳票には、収入及び費用を表す勘定科目ごとに、送電、変電、配電の分野ごとの収入または費用の計画値、実績値の金額が印字され、また、全収入と全費用の差額である利益が印字される。責任者は、この収益レポートを各責任単位の経営に役立てることができる。なお、これら分野ごとの各勘定科目に対する金額は、会計情報取得部11が取得する会計情報に含まれている情報である。
帳票出力部13は、この帳票を例えば月次、四半期ごとにユーザの出力指示に基づいて出力する。帳票出力部13は、この収益レポートを、責任単位ごとだけではなく、分野ごと、事業体ごとに集計した形式でも出力する。なお、本実施形態では責任単位を支社としているが、支社を統括する支店、支社をさらに細分化したグループなどを責任単位とし、より多層的な単位で収益レポートを出力するようにしてもよい。
【0022】
図4は、本発明の第一の実施形態による会計装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートを用いて、会計装置1における会計情報の取得から収益レポートの出力までの処理について説明する。
前提として、制御部15が、会計情報の取得指示や帳票出力指示を行うメニュー画面のプログラムを記憶部14から読み出して、メニュー画面の画像を会計装置1に接続されたディスプレイに出力しているものとする。なお、メニュー画面には、ユーザが会計情報の取得指示を行う「会計情報取得ボタン」や帳票の出力指示を行う「帳票出力指示ボタン」が表示されているものとする。
【0023】
まず、ユーザが、会計情報が含まれた電子ファイル(CSVファイルなど)を指定し、「会計情報取得ボタン」を押下する。すると、入力受付部10がその操作情報を取得し、会計情報取得部11に電子ファイルのパス情報と取得指示情報とを出力する。すると、会計情報取得部11は、指定された電子ファイルを読み込み(ステップS1)、会計情報を記憶部14に書き出すとともに、配賦処理部12に配賦処理の指示を行う。配賦処理部12は、会計情報取得部11が記憶部14に書き出した会計情報を1件ずつ読み取り、配賦処理を行う(ステップS2)。具体的には、配賦処理部12は、読み取った会計情報から店所コードと箇所コードを取得し、それらのコードをキーとして勘定所属マスタテーブルを検索する。次に、配賦処理部12は、検索がヒットしたレコードから事業体コード、分野コード、責任単位コードを取得する。次に、配賦処理部12は、取得した事業体コード、分野コード、責任単位コードを読み取った会計情報に付加し、
図2(c)で例示した配賦後テーブルに書き出す。
ユーザは、帳票の出力に必要な会計情報が含まれる電子ファイルを取り込むよう取得指示操作を繰り返し、会計情報取得部11は、指定された電子ファイルの内容を記憶部14に書き出す。また、配賦処理部12は、会計情報取得部11が会計情報を取得する度に責任単位コード等を付加し、記憶部14の配賦後テーブルに書き出す。
【0024】
次に、ユーザが出力対象となる年月や責任単位を指定して「帳票出力指示ボタン」を押下する。すると、入力受付部10がその操作情報を取得し、帳票出力部13に指定された年月や責任単位の情報と出力指示情報とを出力する。すると、帳票出力部13は、配賦後テーブルから指定された年月、責任単位コードを持つレコードを読み出して勘定科目ごとに集計する。そして、帳票出力部13は、集計した値を所定の帳票フォーマットで出力する(ステップS3)。なお、集計する単位は責任単位に限らない。事業体別や分野別に集計して帳票出力を行ってもよい。
【0025】
以上が会計情報の取り込みから帳票出力までの処理の概要である。収益や費用がある店所や箇所で計上する場合、それらの会計情報に当該店所コード及び箇所コードに対応付けられた責任単位コードを付して集計を行えば、責任単位における管理会計の情報を得ることができる。しかし、例えば電力流通に対する総収入の場合、電力は複数の責任単位(支社)が管理する送電線などの設備を用いて送電されるため、送電に貢献した各支社に収入を配分しなければならない。このとき配分方法が合理的でないと、責任単位間で不公平が生じたり、あまり使わない設備に過度な配分をしてしまったり、設備の維持に必要な修繕費などが賄えなくなるといった問題が発生する。そこで、本実施形態では、各支社の有する設備の特性や、各支社の管轄する地域に存在する設備の貢献度に応じて合理的に電力流通に対する総収入を配分する方法を提供する。
【0026】
図5は、本発明の第一の実施形態による収入の配分方法を説明するための第一の図である。
図5を用いて電力流通に係る設備の概要について説明する。
図5は、電力系統の全体概略を示している。符号21は発電所を示している。符号22は、基幹系統の送電設備を示している。送電設備とは例えば送電線である。基幹系統送電設備22は、例えば275kV以上の電圧で電力を送電する。符号23は、超高圧変電設備を示している。超高圧変電設備23は、基幹系統送電設備22の電圧を地域系統の送電設備で送電できる電圧にまで低下させる。符号24は、地域系統の送電設備を示している。地域系統送電設備24は、例えば66〜154kVの電圧で電力を送電する。符号25は、配電用変電設備を示している。配電用変電設備25は、地域系統の送電線で送電される電力の電圧を例えば6kVに低下させ、地域の配電系統に供給する。符号26は、配電系統の配電設備を示している。配電系統配電設備26は、電力を各需要家に供給する。発電所21で生じた電力は、超高圧変電設備23、配電用変電設備25で電圧を低下させながら、基幹系統送電設備22、地域系統送電設備24、配電系統配電設備26を介して各需要家に供給される。これら設備は、種類別に分類すると変電設備、送電設備、配電設備に分類することができる。また、これら設備は系統別に分類すると、基幹系統、地域系統、配電系統に分類することができる。なお、本実施形態においては、超高圧変電設備23を基幹系統の設備、配電用変電設備25を地域系統の設備として分類することにする。
【0027】
図6は、本発明の第一の実施形態による収入の配分方法を説明するための第二の図である。
図6を用いて各設備に対して付与する料金単価や設定料金について説明する。後述するように各設備に対する料金に応じて、各設備を有する責任単位に収入を配分する。
各設備の設定料金は、送電設備及び配電設備については、送配電した電力量(以下、輸送量)と送配電した距離(以下、輸送距離)と料金単価を乗じた値に設定する。変電設備については、輸送量と料金単価とを乗じた値を設定する。但し、基幹系統の送電及び変電設備の設定料金の算出方法は若干異なる。以下、系統別に設定料金の算出方法について説明する。
【0028】
まず、基幹系統について説明する。基幹系統は、故障がなく確実に機能することが重要である。また、基幹系統は環状(ループ系統)に構成されていることが多く、実際に電流が流れていないルートでも系統の安定に役立っているため単純に送電した電力量で貢献度を算定するのは適切ではない。そこで、基幹系統の場合は、実際に送電した電力量は考慮せず、設備の規模を基準に料金を設定する。また、基幹系統の設備は、他の設備に比べ扱う電圧が高く且つ高価なので、料金単価を高めに設定する。また、基幹系統の送電設備に対する設定料金は、基幹系統送電設備22の料金単価に輸送距離を乗じた値に設定する。基幹系統の変電設備に対する設定料金は、変電設備の場合、輸送距離を考えないので超高圧変電設備23の料金単価に輸送量として設備の容量を乗じた値を設定料金に設定する。なお、設備の容量とは、実際に超高圧変電設備23を通過した電力量ではなく設備の規模を表す値である。
【0029】
次に地域系統について説明する。地域系統の場合、料金単価は、各送電設備が扱う電圧に応じて設定する。つまり電圧が高い程、高い単価を設定し、電圧が低い程、安い単価を設定する。電力が高い方が単価が高いのは、電圧が高い方が効率よく多くの電力を送電でき、貢献度が高いからである。また、地域系統の送電設備に対する設定料金は、地域系統送電設備24の電圧に応じた料金単価に輸送量と輸送距離とを乗じた値に設定する。また、地域系統の変電設備に対する設定料金は、変電設備の場合、輸送距離を考えないので配電用変電設備25の受電電圧に応じた料金単価に輸送量(配電用変電設備25を通過した電力量)を乗じた値を設定する。
【0030】
次に配電系統について説明する。配電系統の場合、各配電設備が扱う電圧は一定で料金単価も単一の値を設定する。配電系統の送電設備に対する設定料金は、配電系統配電設備26の料金単価に輸送量と輸送距離とを乗じた値を基準に設定する。
【0031】
図7は、本発明の第一の実施形態による収入の配分方法を説明するための第三の図である。
図7を用いて、地域系統の送電設備に対する設定料金の計算方法について説明する。
図7(a)は、ある送電経路において顧客の需要に応じた電力を送電する状況の一例を示している。この図において、符号31〜35は、それぞれ電力の送電経路を示している。何れの経路も電圧は同じである。従って符号31〜35の輸送経路には、同じ料金単価=Kが設定されている。符号31の輸送距離は全長が5kmで、輸送量は、10MWhであるとする。符号32の輸送距離は全長が10kmで、輸送量は、5MWhであるとする。符号33の輸送距離は全長が20kmで、輸送量は、20MWhであるとする。すると、A線の電力送電に対する設定料金は、以下の式で計算することができる。
A線の設定料金 = K × (5km×10MWh + 10km×5MWh +
20km×20MWh )= K×500MWh・km
【0032】
次にB線の電力送電に対する収入を計算する。符号34の輸送距離は全長が5kmで、発電所Gからの輸送量は、5MWhであるとする。符号35の輸送距離は全長が10kmで、輸送量は、2MWhであるとする。すると、B線の設定料金は、以下の式で計算することができる。
B線の設定料金 = K × (5km×|−5MWh| + 10km ×2MWh )= K×45MWh・km
【0033】
図7(b)は、上記のA線における収入をグラフで図示したものである。符号31S〜33Sが示す領域の面積は、それぞれ
図7(a)のA線の経路31〜33の収入額に対応している。
図7(b)が示すように地域系統の送電設備に対する設定料金は、各領域の面積の和で算出することができる。
また、例えばA線とB線とをそれぞれ異なる責任単位が管理しているような場合、それぞれの責任単位には、A線の設定料金とB線の設定料金との比に応じて収入を配分する。
【0034】
図8は、本発明の第一の実施形態による収入の配分方法を説明するための第四の図である。
図8を用いて、配電系統の送電設備に対する設定料金の計算方法について説明する。
図8(a)は、ある配電経路において顧客の需要に応じた電力を配電する状況の一例を示している。この図において、符号36〜37は、それぞれ電力の配電系統を示している。配電系統の場合も地域系統の送電設備と同様に輸送量と輸送距離を乗じた値を基準とする。配電系統の配電線は、配電用変電設備25から多数の需要家まで網状に張り巡らされており、各需要家までの配電線の距離を把握するのは容易ではなく、1つの配電線の距離には、1つの配電系統内(1支社内)における配電線亘長の平均値を用いる。また、どの需要家にどれだけの電力が供給されているかを把握することも容易ではないので、輸送量と輸送距離の関係は反比例する関係にあるとして計算を行う。
【0035】
図8(b)は、そのようにして配電電力量と配電線の距離を定めた場合の1本の配電線における輸送量と輸送距離との関係を示すグラフである。配電系統の場合、
図8(b)のグラフにおける符号38が示す三角形の面積が1本の配電線あたりの設定料金となる。つまり配電系統の設定料金は、以下の式で算出する。
配電系統の設定料金 = 1/2 × 輸送量 × 輸送距離
例えば、
図8(a)で例示した配電系統36と配電系統37の1本の配電線の輸送距離が等しく、輸送量も等しいと仮定すると、配電系統36と配電系統37に対する設定料金は、4:2となり、配電系統36と配電系統37とを管理する責任単位には、4:2の比率で収入を配分する。
【0036】
図9は、本発明の第一の実施形態による収入の配分方法を説明するための第五の図である。
図9を用いて、収入の各支社への配分方法について説明する。
まず、顧客から得た託送収入(電力流通に対する総収入)を、設備の種類ごとに按分して設備種類別収入を算出する。按分の方法には、2つの方法が存在する。
1つ目の方法では、顧客から得た託送収入(電力流通に対する総収入)を、設備の種類ごとの設定料金の比率で按分し設備種類別収入を算出する(符号41)。設備の種類ごと系統ごとの設定料金の算出方法は上記のとおりである。これらを設備の種類ごとに合計して設備の種類ごとの設定料金を求める。送電設備の設定料金は、基幹系統送電設備ごとの料金単価に輸送距離を乗じた値を合計した値と、地域系統送電設備ごとの料金単価に輸送量と輸送距離を乗じた値を合計した値を合算して求める。変電設備の設定料金は、基幹系統変電設備ごとの料金単価に輸送量(容量)を乗じた値の合計値と、地域系統変電設備ごとの料金単価と輸送量を乗じた値の合計値を合算して求める。配電設備の設定料金は、配電設備ごとの料金単価に1/2と輸送量と輸送距離とを乗じた値を合計して求める。託送収入を、設備の種類ごとの設定料金の比率で按分した値をそれぞれ送電収入、変電収入、配電収入とする。
2つ目の方法では、顧客から得た託送収入を、設備の種類ごとの費用の計画値の合計で按分し設備種類別収入を算出する(符号41)。この計画値の合計は、
図3で例示した帳票における費用に係る勘定科目の計画欄に記載された金額の合計である。費用の計画値とは、託送料金の改定時に算定した電力流通事業にかかる原価であって、減価償却費、人件費、修繕費などが含まれる。2つ目の方法では、設備の種類ごとに原価の合計を算出し、この合計値の比率で按分した値をそれぞれ送電収入、変電収入、配電収入とする。なお、設備の種類ごとの原価(費用の計画値)は、会計情報取得部11が取得し、記憶部14に記録した会計情報に含まれている。
【0037】
次に、送電収入及び変電収入を、基幹系統と地域系統に配分する(符号42)。基幹系統と地域系統へ配分するには、各設備の取得原価を用いる。具体的には、送電収入を各基幹系統送電設備の取得原価の合計額と各地域系統送電設備の取得原価の合計額と、の比率で按分して、基幹系統送電設備の収入(基幹送電収入)と地域系統送電設備の収入(地域送電収入)とを算出する。また、変電収入を各基幹系統変電設備の取得原価の合計額と各地域系統変電設備の取得原価の合計額との比率で按分して基幹系統変電設備の収入(基幹変電収入)と地域系統変電設備の収入(地域変電収入)とを算出する。ここで、例えば各設備の簿価ではなく取得原価を用いるのは、簿価を用いると原価償却が進んだ設備の簿価は小さな値となるが、原価償却が進んだ比較的古い設備にこそメンテナンスを必要としコストをかけなければならないのに対し、簿価で按分するとそのような設備に収入が回らず、比較的新しくメンテナンスの必要性が低い設備に対してより多くの収入が配分されることとなり実態と合わないからである。
【0038】
次に、基幹送電収入、地域送電収入、基幹変電収入、地域変電収入、配電収入のそれぞれを各支社へ配分する(符号43)。まず、基幹送電収入については、支社ごとにその支社の管轄範囲を基幹系統送電設備(送電線)が通過した距離に応じて基幹送電収入を按分する。地域送電収入については、支社ごとにその支社の管轄範囲を地域系統送電設備(送電線)が通過する距離と通過する電力量を積算した値に応じて地域送電収入を按分する。また、基幹変電収入については、支社ごとにその支社の管轄範囲に設置された変電設備の容量に応じて基幹変電収入を按分する。地域変電収入については、支社ごとにその支社の管轄範囲に設置された変電設備を通過する電力量に応じて地域変電収入を按分する。また、配電収入は、各支社における需要電力量と配電設備(配電線)の距離と配電線の本数とを積算した値に応じて配電収入を按分する。
【0039】
次に配賦処理部12が、上記の方法によって託送収入を各支社に配分する処理について
図10〜
図13を用いて説明する。
図10は、本発明の第一の実施形態による収入配分処理の一事例を説明するための図である。
図10が示すように支社100の管轄範囲には、基幹系統送電設備51と、超高圧変電設備52と、地域系統送電設備53の一部とが含まれている。支社200の管轄範囲には、地域系統送電設備53の一部と、配電用変電設備54とが含まれている。支社300の管轄範囲には、配電系統配電設備55が含まれている。説明を簡単にするため、これらの支社100〜300と設備51〜55のみが存在するとして収入配分処理の説明を行う。
【0040】
図11は、本発明の第一の実施形態による収入配分処理に用いるテーブルの一例を示す第一の図である。
図11に例示するテーブル(設備特性情報設定テーブル)には、設備ごとにその設備の特性と料金単価、取得原価が設定されている。設備の特性とは、各設備で扱う電圧である。各設備で扱う電圧とは送電設備であれば送電電圧、変電設備であれば受電電圧、配電電圧であれば配電電圧である。各設備の料金単価は、各設備の電圧に応じて、電圧が高い程、高い単価が設定されている。例えば、基幹系統送電設備51の料金単価「X
51」と地域系統送電設備53の料金単価「X
53」とを比較すると、基幹系統送電設備51の送電電圧の方が高いので「X
51」の方が高い金額が設定されている。この設備特性情報設定テーブルは、記憶部14に予め記憶されたテーブルである。
【0041】
図12は、本発明の第一の実施形態による収入配分処理に用いるテーブルの一例を示す第二の図である。
図12に例示するテーブル(地域特性情報設定テーブル)には、支社ごとにその支社の管轄範囲にある設備ごとに電力の輸送量及び輸送距離が設定されている。本実施形態においては、この輸送量と輸送距離が各設備の電力流通に対する貢献度を示す指標となる。
図12が示すとおり、基幹系統送電設備51は、支社100の管轄範囲にあり、輸送距離に「M
101」が設定されている。基幹系統の設備は、インフラ設備の根幹として確実に機能することが重要であり、従量制の考えを適用するのは馴染まないとの考えにより、実際に送電した電力量は考慮せず、輸送量は設定されていない。基幹系統変電設備52についても同様に、支社100の管轄範囲にあり、輸送量には設備の容量「W
52」が設定されている。基幹系統変電設備52についても、従量制に基づいた値(例えば、実際に変電設備を通過した電力量)ではなく設備の規模(kVA)が設定されている。また、変電設備の為、輸送距離は設定されていない。基幹系統送電設備を管轄範囲に有する支社には、輸送距離を乗じた値に応じた収入が配分される。基幹系統の変電設備を管轄範囲に有する支社には、各設備の輸送量に応じた収入が配分される。
【0042】
次の地域系統送電設備53については、支社100の管轄範囲にある部分と、支社200の管轄範囲にある部分が存在し、地域特性情報設定テーブル中にそれぞれ別のレコードとして記録されている。まず、支社100の管轄範囲にある部分については、輸送量に「P
531」、輸送距離に「M
102」が設定されている。この輸送量「P
531」は、基幹系統設備の場合と異なり、支社100の管轄範囲において計測器で測定した電力量の値である。また、輸送距離「M
102」は、地域系統送電設備53が支社100の管轄範囲を通過する距離である。地域系統送電設備53のうち、支社200の管轄範囲にある部分については、輸送量に「P
532」、輸送距離に「M
201」が設定されている。それぞれの値が示す意味は支社100の場合と同じである。
【0043】
配電用変電設備54については、支社200の管轄範囲にあり、輸送量には配電用変電設備54を通過した電力量「P
54」が設定されている。また、変電設備の為、輸送距離は設定されていない。
配電系統配電設備55については、輸送量に「P
55」、輸送距離に「M
301」が設定されている。
地域系統送電設備及び配電系統設備を管轄範囲に有する支社には、各設備の輸送量と輸送距離を乗じた値に応じた収入が配分される。また、地域系統の変電設備(配電用変電設備)を管轄範囲に有する支社には、各設備の輸送量に応じた収入が配分される。
なお、この地域特性情報設定テーブルは、記憶部14に予め記憶されたテーブルである。
【0044】
図13は、本発明の第一の実施形態による収入配分処理の一例を示すフローチャートである。
図13を用いて、
図4のフローチャートのステップS2の配賦処理において、託送収入を各責任単位に配分する処理について説明する。なお、説明には、
図10〜
図12で例示した情報を用いる。
まず、配賦処理部12は、会計情報取得部11が記憶部14に書き出した会計情報を1件ずつ読み取り、託送収入を示す勘定科目が含まれているかどうかを判定する(ステップS11)。託送収入を示す勘定科目が含まれていない場合(ステップS11;No)、このフローチャートの処理は終了する。託送収入を示す勘定科目が含まれている場合(ステップS11;Yes)、配賦処理部12は、その勘定科目の金額について配分処理を行う。
【0045】
まず、配賦処理部12は、設備特性情報設定テーブルと地域特性情報設定テーブルとを読み込んで設備別収入を算出する(ステップS12)。上述した1つ目の方法で設備種類別収入を算出する場合、具体的には、以下の処理を行う。
(1)設備種類ごとの料金を算出する。
送電設備の料金:C1 = X
51× M
101 + X
53×(P
531×M
102)+ X
53×(P
532×M
201)
変電設備の料金:C2 = X
52×(W
52)+ X
54×(P
54)
配電設備の料金:C3 = X
55×(1/2×P
55×M
301)
(2)設備種類別収入を算出する。
送電収入:I1 = 託送収入 × (C1/(C1+C2+C3))
変電収入:I2 = 託送収入 × (C2/(C1+C2+C3))
配電収入:I3 = 託送収入 × (C3/(C1+C2+C3))
【0046】
また、上述した2つ目の方法で設備種類別収入を算出する場合、次のように処理する。まず配賦処理部12は、記憶部14に格納された会計情報から、送電設備、変電設備、配電設備それぞれの費用に係る勘定科目の計画値(原価)を読み出し、設備ごとに計画値の合計を算出する。送電設備の費用の計画値合計をD1、変電設備の費用の計画値合計をD2、配電設備の費用の計画値合計をD3とする。配賦処理部12は、設備種類別収入を以下の式から算出する。
送電収入:I1 = 託送収入 × (D1/(D1+D2+D3))
変電収入:I2 = 託送収入 × (D2/(D1+D2+D3))
配電収入:I3 = 託送収入 × (D3/(D1+D2+D3))
【0047】
次に、配賦処理部12は、設備種類別収入を取得原価で按分する(ステップS13)。
具体的には、配賦処理部12は、送電及び変電に係る設備の取得原価を設備特性情報設定テーブルから読み出す。そして配賦処理部12は、各設備の取得原価を基幹系統と地域系統ごとに合計する。
基幹系統送電設備取得原価=Y
51
基幹系統変電設備取得原価=Y
52
地域系統送電設備取得原価=Y
53
地域系統変電設備取得原価=Y
54
そして、配賦処理部12は、送電設備収入I1を基幹系統送電設備取得原価Y
51、地域系統送電設備取得原価Y
53の比率で按分する。
基幹送電収入:I1
B=I1 ×(Y
51/(Y
51+Y
53))
地域送電収入:I1
R=I1 ×(Y
53/(Y
51+Y
53))
また、配賦処理部12は、変電設備収入I2を基幹系統変電設備取得原価Y
52、地域系統変電設備取得原価Y
54の比率で按分する。
基幹変電収入:I2
B=I2 ×(Y
52/(Y
52+Y
54))
地域変電収入:I2
R=I2 ×(Y
54/(Y
52+Y
54))
【0048】
次に、配賦処理部12は、設備種類別収入を各支社へ配分する(ステップS14)。
(1)設備ごと地域ごとに按分に用いる基準値を算出する。
基幹系統送電設備51の基準値:J
51 = M
101
基幹系統変電設備52の基準値:J
52 = W
52
地域系統送電設備53(支社100分)の基準値:J
53(100) = P
531×M
102
地域系統送電設備53(支社200分)の基準値:J
53(200) = P
532×M
201
配電用変電設備54の基準値:J
54 = P
54
配電系統配電設備55の基準値:J
55 =1/2×P
55×M
301
なお、この按分に用いる基準値には、さらにそれぞれの設備に対して設定された料金単価を乗算した値を用いてもよい。
(2)設備種類別収入を基準値で按分して支社に配分する。
支社100へ配分する収入金額 = I1
B×(J
51/J
51) +
I2
B×(J
52/J
52) +
I1
R×(J
53(100)/(J
53(100) + J
53(200)))
支社200へ配分する収入金額 = I1
R×(J
53(200)/(J
53(100) + J
53(200))) + I2
R×(J
54/J
54)
支社300へ配分する収入金額 = I3×(J
55/J
55)
(3)支社300へ配分する収入金額が決まると、配賦処理部12は、各支社に配分した会計情報を作成し、記憶部14に記録する。例えば、配賦処理部12は、
図2(c)で例示したテーブルに新たなレコードを追加し、事業体コード、分野コード、責任単位コードを勘定所属マスタテーブルから取得してそれぞれ、「事業体コード」項目及び「分野コード」項目及び「責任単位コード」項目へ設定し、算出した収入金額を「残高」項目に設定する。なお、「科目コード」、「項コード」、「年月」項目は、託送収入を示す勘定科目が含まれていた会計情報と同じ値でもよい。
【0049】
本実施形態によれば、電力流通に対する収入を管理会計上の各責任単位に合理的に配分することができ、効率的な人員や設備の配備を行うことができる。例えば、資源配分の効率化が進むことにより、需要の多い地域により多くの設備を配するなど、実体に即した設備投資を行うことができるようになる。また、各責任単位においても、適切な収入の配分を得ることができるので、安定して電力を供給するために必要な設備の維持・管理を行うことができる。
【0050】
なお、上述の会計装置1は内部にコンピュータを有している。そして、上述した会計装置1の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0051】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態の会計装置1は、1台のコンピュータにより実現されてもよいし、2台以上のコンピュータを有線または無線で接続し、これら複数のコンピュータにより実現されてもよい。