(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372210
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】セラミックス基複合材料よりなるタービン静翼
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20180806BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20180806BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
F01D9/02 101
F01D25/00 X
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-143919(P2014-143919)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-20643(P2016-20643A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 文章
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
カナダ国特許出願公開第02853040(CA,A1)
【文献】
特開2003−214180(JP,A)
【文献】
特開平05−033602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の周りに並べられてタービンノズルを構成する静翼であって、
前記軸に対して径方向に延びた翼部と、
前記翼部の外側端から連続して、前記周方向に曲げられたアウタバンド部と、
前記アウタバンド部の、前記軸方向に前方の端から連続して、前記径方向に外方に曲げられた第1のフック部と、
前記アウタバンド部の、前記軸方向に後方の端から連続して、前記径方向に外方に曲げられた第2のフック部と、
前記翼部の内側端から連続して、前記軸に対して周方向に曲げられたインナバンド部と、
前記インナバンド部の、軸方向に一方の端から連続して、前記径方向に内方に曲げられたフランジ部と、
前記翼部、前記アウタバンド部、前記第1のフック部、前記第2のフック部、前記インナバンド部、および前記フランジ部の全体に連続してセラミックスと一体化した強化繊維織物と、
前記翼部の、前記軸方向に前縁から、前記アウタバンド部の前記前方の端に亘る切欠きと、
を備えた静翼。
【請求項2】
請求項1の静翼であって、
前記アウタバンド部の前記後方の端は、前記切欠きに対して相補的な形状を有し、以って隣接する静翼のアウタバンド部と密に接し合う、静翼。
【請求項3】
請求項1または2の静翼であって、
前記切欠きが形成する面は、前記翼部の前記前縁と前記アウタバンド部との両方に斜めに交差し、以って前記前縁から前記アウタバンド部に向かう応力の集中を緩和する、静翼。
【請求項4】
軸の周りに並べられてタービンノズルを構成する静翼を製造する方法であって、
翼部とするべく、強化繊維織物を、前記軸に対して径方向に延長し、
前記翼部から連続したアウタバンド部とするべく、前記翼部の外側端から前記周方向に曲げ、
前記アウタバンド部から連続した第1のフック部とするべく、前記アウタバンド部の、前記軸方向に前方の端から前記径方向に外方に曲げ、
前記アウタバンド部から連続した第2のフック部とするべく、前記アウタバンド部の、前記軸方向に後方の端から前記径方向に外方に曲げ、
前記翼部から連続したインナバンド部とするべく、前記強化繊維織物を、前記翼部の内側端から前記軸に対して周方向に曲げ、
前記インナバンド部から連続したフランジ部とするべく、前記インナバンド部の、前記軸に沿う軸方向に一方の端から前記径方向に内方に曲げ、
前記強化繊維織物が前記翼部、前記アウタバンド部、前記第1のフック部、前記第2のフック部、前記インナバンド部、および前記フランジ部の全体に連続するように、セラミックスを前記強化繊維織物に一体化し、
前記翼部の、前記軸方向に前縁から、前記アウタバンド部の前記前方の端に亘る切欠きを形成するべく、前記強化繊維織物に一体化した前記セラミックスを機械加工する、
ことを含む方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、
前記アウタバンド部の前記後方の端を、前記切欠きに対して相補的な形状とするべく、前記強化繊維織物に一体化した前記セラミックスを機械加工することを、さらに含む方法。
【請求項6】
請求項4または5の方法であって、
前記切欠きが形成する面が前記翼部の前記前縁と前記アウタバンド部との両方に斜めに交差せしめて、以って前記前縁から前記アウタバンド部に向かう応力の集中を緩和するよう、前記強化繊維織物に一体化した前記セラミックスを機械加工することを、さらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基複合材料よりなるタービン静翼に関し、特に、複数の部材を結合することなく一体に形成され、以って強化繊維がその全体に亘り連続しているタービン静翼に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス基複合材料(CMC)は高い強度を示すことに加えて軽量であり、さらには高い耐熱性をも有する。かかる優位性に鑑み、航空機への応用、とりわけジェットエンジンの部材へのCMCの適用が検討されている。例えばタービン動翼や静翼をCMCより製造できれば、性能向上や燃費改善に大きく貢献しうる。
【0003】
CMCの高強度は、マトリックス中の強化繊維に負うところが大きい。構造を形成するにあたり、接着ないし機械的な結合を利用すれば、強化繊維はそこで連続性が失われ、従って著しく強度が低下してしまう。それゆえ複数の部材の結合を要する複雑形状の部材に適用することは困難であり、これまで専ら単純な形状の部材にのみCMCの適用が検討されてきた。
【0004】
関連する技術が、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−87663号公報
【特許文献2】特開2013−217320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示するタービン動翼においては、ブレード部からプラットフォーム部に亘り強化繊維織物が連続しうるが、プラットフォーム部においては連続性が損なわれている。特許文献2が開示する静翼においては、少なくとも翼部とアウタバンド部とは別体の強化繊維織物より製造するのであり、この間において強化繊維は連続していない。すなわち従来技術によれば、静翼のごとき複雑形状の部材においては、強化繊維を連続せしめることは難しく、CMCの優位性を十分に享受しうることは困難であった。本発明はかかる問題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、軸の周りに並べられてタービンノズルを構成する静翼は、前記軸に対して径方向に延びた翼部と、前記翼部の外側端から連続して、前記周方向に曲げられたアウタバンド部と、前記アウタバンド部の、前記軸方向に前方の端から連続して、前記径方向に外方に曲げられた第1のフック部と、前記アウタバンド部の、前記軸方向に後方の端から連続して、前記径方向に外方に曲げられた第2のフック部と、前記翼部の内側端から連続して、前記軸に対して周方向に曲げられたインナバンド部と、前記インナバンド部の、軸方向に一方の端から連続して、前記径方向に内方に曲げられたフランジ部と、前記翼部、前記アウタバンド部、前記第1のフック部、前記第2のフック部、前記インナバンド部、および前記フランジ部の全体に連続してセラミックスと一体化した強化繊維織物と、
前記静翼は、前記翼部の、前記軸方向に前縁から、前記アウタバンド部の前記前方の端に亘る切欠きと、を備える。
【0008】
好ましくは、前記アウタバンド部の前記後方の端は、前記切欠きに対して相補的な形状を有し、以って隣接する静翼のアウタバンド部と密に接し合う。あるいは好ましくは、前記切欠きが形成する面は、前記翼部の前記前縁と前記アウタバンド部との両方に斜めに交差し、以って前記前縁から前記アウタバンド部に向かう応力の集中を緩和する。
【0009】
本発明の他の局面によれば、軸の周りに並べられてタービンノズルを構成する静翼を製造する方法は、翼部とするべく、強化繊維織物を、前記軸に対して径方向に延長し、前記翼部から連続したアウタバンド部とするべく、前記翼部の外側端から前記周方向に曲げ、前記アウタバンド部から連続した第1のフック部とするべく、前記アウタバンド部の、前記軸方向に前方の端から前記径方向に外方に曲げ、前記アウタバンド部から連続した第2のフック部とするべく、前記アウタバンド部の、前記軸方向に後方の端から前記径方向に外方に曲げ、前記翼部から連続したインナバンド部とするべく、前記強化繊維織物を、前記翼部の内側端から前記軸に対して周方向に曲げ、前記インナバンド部から連続したフランジ部とするべく、前記インナバンド部の、前記軸に沿う軸方向に一方の端から前記径方向に内方に曲げ、前記強化繊維織物が前記翼部、前記アウタバンド部、前記第1のフック部、前記第2のフック部、前記インナバンド部、および前記フランジ部の全体に連続するように、セラミックスを前記強化繊維織物に一体化
し、前記翼部の、前記軸方向に前縁から、前記アウタバンド部の前記前方の端に亘る切欠きを形成するべく、前記強化繊維織物に一体化した前記セラミックスを機械加工することよりなる。
【0010】
好ましくは、前記方法は、前記アウタバンド部の前記後方の端を、前記切欠きに対して相補的な形状とするべく、前記強化繊維織物に一体化した前記セラミックスを機械加工することを、さらに含む。また好ましくは、前記方法は、前記切欠きが形成する面が前記翼部の前記前縁と前記アウタバンド部との両方に斜めに交差せしめて、以って前記前縁から前記アウタバンド部に向かう応力の集中を緩和するよう、前記強化繊維織物に一体化した前記セラミックスを機械加工することを、さらに含む。
【発明の効果】
【0011】
複数の織物を結合することによらず、単一の強化繊維織物より製造するに適した構造を静翼に採用することにより、強化繊維織物は静翼の全体に亘って連続し、以って高強度、軽量であって、高い耐熱性を有するタービンノズルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の本実施形態に利用される強化繊維織物の模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、仮成形された強化繊維織物の斜視図である。
【
図3】
図3は、機械加工されたCMCよりなる静翼の斜視図である。
【
図4】
図4は、軸周りに並べられて互いに組み合わされた複数の静翼の斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態による静翼のアウタバンド部およびその周囲を拡大して示す部分斜視図である。
【
図6】
図6は、タービンのハウジングとアウタバンド部との結合を主に表す一部断面立面図である。
【
図7】
図7は、静止部材とインナバンド部との結合を主に表す一部断面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の幾つかの実施形態を添付の図面を参照して以下に説明する。図面は必ずしも正確な縮尺により示されておらず、従って相互の寸法関係は図示されたものに限られないことに特に注意を要する。
【0014】
本実施形態は、例えばガスタービンエンジンに適用することができ、特にタービンノズルを構成する静翼のごとき複雑形状の部品に好適に適用しうる。もっともこれは例示に過ぎず、高温強度を必要とする他の多くの機械部品に本実施形態は適用しうる。以下において、
図3に例示される静翼1を例にとり、本実施形態を説明する。
【0015】
静翼1は、実質的に全体的にセラミックス基複合材料(CMC)よりなる。その強化繊維は、例えば炭化珪素ファイバ、カーボンファイバ、窒化珪素ファイバ、アルミナファイバ、窒化ホウ素ファイバの何れかであるが、他の適宜のセラミックスよりなる繊維でもよく、またこれらの2以上の混合物であってもよい。
【0016】
静翼1が相当程度の厚さを必要とすることに応じて、好ましくは、強化繊維が3次元的に織成された3次元織物を利用する。あるいは複数の2次元織物を積み重ねたものでもよく、あるいは複数の2次元織物を積み重ねて強化繊維により互いに縫い合わせた織物を利用してもよい。織物の向きは、静翼に印加される応力の向きを考慮して選択されるべきである。
【0017】
かかる強化繊維よりなる織物を仮成形し、含浸や焼結等の工程によりセラミックスを形成して織物と一体化することにより、CMCよりなる静翼1が製造される。
【0018】
図1を参照するに、強化繊維織物10は、先ず、静翼1の原型に応じた形状に切断される。切断はセラミックス形成の前であってもよいし、後でもよい。
【0019】
すなわち、概ね、翼部となるべき部分11と、かかる部分11の一方の端から幅方向に広がりアウタバンド部になるべき部分13と、他方の端から幅方向に広がりインナバンド部になるべき部分15と、を含むように強化繊維織物10が切り出される。ただし織物を折り曲げることによる変形や、後工程における機械加工により失われる分を見込み、最小限必要な形状(図中において一点鎖線で示されている)よりも適宜のマージンを確保する。もちろんこれらの全体において強化繊維が連続している。
【0020】
図2を参照するに、強化繊維織物10は、静翼1に近似した形状に折り曲げられる。かかる折り曲げは、強化繊維織物10を型に嵌め込んで加圧することによることができるが、あるいは他の方法によってもよい。
【0021】
翼部となるべき部分11は、その長手方向には真直に近く、幅方向には緩やかに反らせて湾曲部21とする。かかる湾曲部21は、一方の面21pを腹面とした所謂エアフォイル形状に近似する。
【0022】
アウタバンド部になるべき部分13は、湾曲部21に対して略直角に曲げ、外側屈曲部23とする。曲げる方向は、タービンノズルにおいて周方向に相当する。さらに軸方向に前方に相当するその一方の端23fにおいて、湾曲部21は上方に(タービンノズルにおいて径方向に外方に)曲げられる。同様に軸方向に後方に相当する他方の端23aにおいて、湾曲部21は上方に(径方向に外方に)曲げられる。これらはそれぞれ、フォアフック部、アフトフック部となるべき部分である。
【0023】
インナバンド部になるべき部分15は、湾曲部21に対して略直角に曲げ、内側屈曲部25とする。さらに軸方向に前方に相当する端25fにおいて下方に(タービンノズルにおいて径方向に内方に)曲げられる。かかる部分はフランジ部となるべき部分である。
【0024】
上述のように仮成形された強化繊維織物10は、セラミックスよりなるマトリックスと一体化する。マトリックスを形成する方法としては公知の方法を採用することができ、例えば気体からの化学反応を利用して繊維中にマトリックスを含浸させることができるし、あるいはセラミックスのプリカーサである固体粉末をスラリー状にし、これを繊維に流し込むことにより含浸し、次いでこれを熱分解あるいは焼結させてもよい。かかる工程により、セラミックスよりなるマトリックスが生成し、強化繊維織物10に一体化する。
【0025】
図3を参照するに、強化繊維織物10に一体化したセラミックスは、下記のごとくに機械加工されて静翼1とされる。
【0026】
湾曲部21は機械加工されて、腹面31pと背面31s(
図6参照)とを有する所謂エアフォイル形状の翼部31とされる。
【0027】
外側屈曲部23は機械加工されて、アウタバンド部33になる。ここでアウタバンド部33の周方向の端面41は、隣接する静翼1のアウタバンド部33ないし腹面31pに対して相補的な形状であって、以って
図4に示すごとくアウタバンド部33同士が密に接し合うことができる。
【0028】
図5(a)を参照するに、外側屈曲部23の両端23f,23aもそれぞれ機械加工されて、フォアフック部37,アフトフック部39にされる。
【0029】
フォアフック部37において、周方向に翼部側の縁を切り欠いて、切欠き面49を設けることができる。好ましくは切欠き面49は、翼部31の、軸方向に前方である前縁31Lから、アウタバンド部33の前方の端に亘り、さらにフォアフック部37の前端にまで亘るように形成され、それらの間を斜めに滑らかに繋ぐ。かかる切欠きは、強度の向上に寄与するが、これについては後に改めて詳述する。
【0030】
端面41およびフォアフック部37において反対側の縁51は、かかる切欠き面49と相補的な形状であって、以って
図4に示すごとく隣接するフォアフック部37同士が密に接し合うことができる。
【0031】
同様にアフトフック部39も切欠き53を備えることができる。その両縁55,57は互いに相補的な形状であって、隣接するアフトフック部39同士も密に接し合うことができる。
【0032】
図3に戻って参照するに、内側屈曲部25は機械加工されて、インナバンド部35になり、その端25fはフランジ部43となる。フランジ部43には、後述のピンを通すためのノッチ45を設ける。ここでインナバンド部35の周方向の端面47は、隣接する静翼1のインナバンド部35ないし腹面31pに対して相補的な形状であって、以って
図4に示すごとくインナバンド部35同士が密に接し合うことができる。
【0033】
上述より理解される通り、複数の静翼1が軸の周りに並ぶことによりタービンノズルを構成することができる。かかるタービンノズルにおいてアウタバンド部33とインナバンド部35とが画定する円環状の流路を高温ガスが通過し、翼部31はこれを動翼へと導く。
【0034】
本実施形態による静翼1は、次のようにしてガスタービンエンジンに組み込まれる。
【0035】
図6を参照するに、タービンのハウジング81は、フォアレール83およびアフトレール87を備える。フォアフック部37はフォアレール83に係合し、アフトフック部39はアフトレール87に係合する。
【0036】
フォアフック部37の前縁の切欠き59は、
図6の視野においてはV字状の凹所のように見え、かかる切欠き59に係合するように、クランプ71が挿入される。クランプ71は、その前端のピンチ部73により、静翼1の前段のシュラウド89の後端と共にフォアレール83を挟む。好ましくはクランプ71の後方の窪み75内にCリング91が弾発的に挿入され、以ってクランプ71を前方および下方に押圧する。それゆえクランプ71がフォアレール83から抜け止めされ、以ってシュラウド89が抜け止めされる。Cリング91は、また、フォアフック部37を上方に押圧し、以ってフォアフック部37をフォアレール83の基部面85に押し付けてこれを固定する。
【0037】
図7を参照するに、ハウジング81は、これに対して静止した部材である支持リング93を備え、支持リング93から支持プレート95が径方向に立ち上がっている。インナバンド部35から下方に連続したフランジ部43は、ピン97により支持プレート95に固定される。
【0038】
本実施形態による静翼1は、従来技術と同様な態様によりハウジング81に組み込むことができる。従来技術と異なり、アウタバンド部33およびインナバンド部35は、共に翼部31から片側に曲げられただけであるが、
図4より理解される通り、従来技術と同様に流路を密に囲むことができる。
【0039】
本実施形態によれば、専ら強化繊維織物を折り曲げることによって各部位を形成しているので、強化繊維は、翼部31、アウタバンド部33、フォアフック部37、アフトフック部39、インナバンド部35、およびフランジ部43の全体に亘り連続する。繊維が不連続な部分がないので、高い強度を保証している。
【0040】
切欠き59は、静翼1の強度向上に寄与する。すなわち、切欠き59が無ければ、
図5(b)に示す如く翼部のごく薄い前縁31L’からフォアフック部37’が鋭く張り出した箇所Sが生ずる。高温ガス流は翼部を捻る方向に応力を生み、かかる応力は前縁31L’からフォアフック部37’へと伝えられるが、かかる箇所Sにおいて応力集中が起こり、静翼が破損するリスクを高めてしまう。
【0041】
本実施形態によれば、切欠き59が作る面49は、前縁31Lとフォアフック部37との間を斜めに滑らかに結ぶので、応力集中を緩和することができる。切欠き59があっても、端面41および縁51がこれと相補的な形状になっているので、隣接する静翼1間に隙間が生じることはない。
【0042】
好適な実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記開示内容に基づき、当該技術分野の通常の技術を有する者が、実施形態の修正ないし変形により本発明を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
高強度、軽量であって、高い耐熱性を有するCMCよりなる静翼が提供される。
【符号の説明】
【0044】
1 静翼
10 強化繊維織物
21 湾曲部
23 外側屈曲部
25 内側屈曲部
31 翼部
31L 前縁
31p 腹面
31s 背面
33 アウタバンド部
35 インナバンド部
37 フォアフック部
39 アフトフック部
43 フランジ部
45 ノッチ
49 切欠き面
51 縁
53 切欠き
59 切欠き
71 クランプ
73 ピンチ部
75 窪み
81 ハウジング
83 フォアレール
87 アフトレール
89 シュラウド
91 Cリング
93 支持リング
97 ピン