特許第6372240号(P6372240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372240
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G03G5/05 101
   G03G5/05 102
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-166460(P2014-166460)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2016-42169(P2016-42169A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 典慶
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−292388(JP,A)
【文献】 特開2005−292413(JP,A)
【文献】 特開平02−000654(JP,A)
【文献】 特開平02−308171(JP,A)
【文献】 特開平06−214407(JP,A)
【文献】 特開平05−134430(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141298(WO,A1)
【文献】 特開2015−151513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05
C08L 69/00,71/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層のバインダー樹脂として、(A)ポリカーボネート樹脂99〜70質量部、および(B)分子末端に不飽和二重結合基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー1〜30質量部からなるポリカーボネート樹脂組成物を用いた電子写真感光体であって、
前記(A)ポリカーボネート樹脂の極限粘度[η]が、0.40dl/g以上、1.5dl/g以下、前記(B)ポリフェニレンエーテルオリゴマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜6,000である、電子写真感光体
【請求項2】
(A)ポリカーボネート樹脂が、下記構造式(1)で示されるものから構成された請求項に記載の電子写真感光体。
【化1】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、または、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基である。Xは、単結合、
【化2】
のいずれかである。
ここにRとRはそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。RとRが結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
とRはそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。RとRが結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
とR10はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。RとR10が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
11とR12はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニル基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R13は置換基を有しても良い1〜9のアルキレン基である。
14とR15はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R14とR15が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
aは1〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。)
【請求項3】
(A)ポリカーボネート樹脂が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルの群のいずれか1つ以上のビスフェノール類から誘導されたものである請求項1又は2のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項4】
(B)ポリフェニレンエーテルオリゴマーが、下記構造式(2)で示されるものである請求1〜のいずれかに記載の電子写真感光体。
【化3】
(式中、R16とR18はそれぞれ独立に炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルケニル基を置換基として芳香環に有する炭素数7〜17のアラルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基を置換基として芳香環に有する炭素数6〜12のアリール基である。R17は、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数6〜24の芳香族炭化水素構造を有する基を表す。n1、n2は1〜100の整数を表す。)
【請求項5】
感光層が、電荷発生層と電荷輸送層との積層構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
非ハロゲン系有機溶媒を用いた浸漬塗布法により感光層を形成することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
非ハロゲン系有機溶媒がトルエン、テトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種以上を含む請求項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送性と画像安定性に優れた電子写真感光体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザービームプリンタ(以下、LBPと略称)、ファックス等に使用されている電子写真感光体には、有機感光体(以下OPC略称)が主に用いられている。
【0003】
現在は、OPCは感光層が電荷発生層と電荷輸送層を有する積層型電子写真感光体が主流であり、アルミニウムやステンレス鋼製の円筒またはアルミ蒸着ポリエステル製の円筒やベルトなどの金属基材上に、ポリカーボネートやポリアリレートなどのバインダー樹脂と電荷発生剤や電荷輸送剤を溶かした溶液を、浸漬塗布法に代表される湿式成形することで作製される。
【0004】
近年、複写機やLBPの高速化、高画質化には、電子写真感光体の感度向上の一手段として、電荷輸送層中の電荷移動速度の向上が求められている。例えば、電荷輸送性能の高い特殊な電荷輸送剤を用いたり(特許文献1)、電荷輸送性を主鎖に組み込んだ特殊なバインダー樹脂を用いて電荷輸送層中の電荷移動速度の向上させる方法(特許文献2)がある。
【0005】
しかしながら、これらの方法は感度向上効果はあるが、コストが高く、費用対効果の面で普及していない。
【0006】
一方、ポリフェニレンエーテル樹脂は機械的強度が劣るものの、ベンゼン環含有量が高いため、ポリカーボネート樹脂と併用したバインダー樹脂組成物とすることで、感度向上と機械的強度を両立した電子写真感光体(特許文献3)が開示されている。この文献に開示されているポリフェニレンエーテルはオリゴマーではなく、また、分子末端については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−164659号公報
【特許文献2】特開平7−325409号公報
【特許文献3】特開平6−214407号公報
【特許文献4】特開2003−12796号公報
【特許文献5】特開2006−83364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されている電子写真感光体を試験したところ、バインダー樹脂が塩素系有機溶媒には溶解するものの、トルエンやテトラヒドロフランのような非ハロゲン系有機溶媒には溶解性が劣り、所望の電子写真感光体を作製できないことが判明した。現在、電子写真感光体製造時に使用する有機溶媒は、環境へ負荷低減のため前記非ハロゲン系溶媒が主流となっており、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリカーボネート樹脂と併用したバインダー樹脂組成物の非ハロゲン系溶媒への溶解性改善が求められていた。
【0009】
本発明の課題は、高感度で、かつ安価で製造し易い電子写真感光体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造でかつ特定の分子量のポリフェニレンエーテルオリゴマーとポリカーボネート樹脂とは極めて相溶性が高く、非ハロゲン系有機溶媒に良溶で、高感度の電子写真感光体のバインダー樹脂製造に好適なことを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す電子写真感光体及びその製造方法に関する。
【0012】
<1>
導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層のバインダー樹脂として、(A)ポリカーボネート樹脂99〜70質量部、および(B)分子末端に不飽和二重結合基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー1〜30質量部からなるポリカーボネート樹脂組成物を用いた電子写真感光体。
【0013】
<2>
(B)ポリフェニレンエーテルオリゴマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜6,000である<1>記載の電子写真感光体。
【0014】
<3>
(A)ポリカーボネート樹脂が、下記構造式(1)で示されるものから構成された<1>または<2>に記載の電子写真感光体。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、または、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基である。Xは、単結合、
【0017】
【化2】
【0018】
のいずれかである。
ここにRとRはそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。RとRが結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
とRはそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。RとRが結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
とR10はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。RとR10が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
11とR12はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニル基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R13は置換基を有しても良い1〜9のアルキレン基である。
14とR15はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R14とR15が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
aは1〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。)
【0019】
<4>
(A)ポリカーボネート樹脂が、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルの群のいずれか1つ以上のビスフェノール類から誘導されたものである<1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0020】
<5>
(B)ポリフェニレンエーテルオリゴマーが、下記構造式(2)で示されるものである<1>〜<4>のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R16とR18はそれぞれ独立に炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルケニル基を置換基として芳香環に有する炭素数7〜17のアラルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基を置換基として芳香環に有する炭素数6〜12のアリール基である。R17は、置換基を有してもより炭素数1〜12のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数6〜24の芳香族炭化水素構造を有する基を表す。n1、n2は1〜100の整数を表す。)
【0023】
<6>
非ハロゲン系有機溶媒を用いた浸漬塗布法により感光層を形成することを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【0024】
<7>
感光層が、電荷発生層と電荷輸送層との積層構造を有することを特徴とする<6>記載の電子写真感光体の製造方法。
【0025】
<8>
トルエン、テトラヒドロフランから選ばれる少なくとも1種以上の非ハロゲン系有機溶媒を含む<6>または<7>に記載の電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電子写真感光体は、感光層の電荷輸送速度が速く、感度が向上する。また、従来のポリフェニレンエーテル樹脂とポリカーボネート樹脂と併用したバインダー樹脂を用いた高感度電子写真感光体の製造方法に比べ、環境への負荷が小さく、製造コスト削減に効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明で用いられるポリフェニレンエーテルオリゴマーとは、構造式(3)で表される構造のものである。構造式(3)で示されるポリフェニレンエーテルオリゴマーは、例えば、特許文献4に記載の2価のフェノールと1価のフェノールとをアミンの存在下で共重合する方法などで得た後、例えば特許文献5に記載の塩基性下でのビニルベンジルクロライドと分子末端の水酸基を反応させ製造することができる。
【0029】
【化4】
【0030】
構造式(3)の分子末端のR19、R21はそれぞれ独立に、炭素数2〜5のアルケニル基、または、炭素数2〜5のアルケニル基を置換基として芳香環に有する炭素数7〜17のアラルキル基であるが、特にビニル置換ベンジル基が好ましい。
【0031】
構造式(3)のR20は、置換基を有してもより炭素数1〜12のアルキレン基、または、置換基を有してもよい炭素数6〜24の芳香族炭化水素構造を有する基であるが、特に置換基を有してもよいビフェニル、置換基を有してもよいビスフェニル構造を有するものが好ましく、さらにはメチル基を複数有するビフェニル構造を有する基が好ましい。
【0032】
構造式(3)のn3とn4は、それぞれ独立に1〜100の整数である。
【0033】
本発明のポリフェニレンエーテルオリゴマーの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量で1,000〜6,000であり、なかでも1,000〜4,000の範囲が好ましい。6,000を超えると非ハロゲン系有機溶媒への溶解性が劣り、1,000未満では電子写真感光体の強度低下が大きくなる。
【0034】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール類と炭酸エステル形成化合物と反応させることによって、製造することができるものであり、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)等の方法を採用することができる。
【0035】
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記構造式(4)で示される構成単位を有するものが好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
式中、R22〜R25はそれぞれ独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜17のアラルキル基である。Xは、単結合、式(5)から選ばれる一種である。
【0038】
【化6】
【0039】
ここにR26とR27はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R26とR27が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
28とR29はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R28とR29が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
30とR31はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R30とR31が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
32とR33はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニル基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R34は置換基を有しても良い1〜9のアルキレン基である。
35とR36はそれぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、各々置換基を有してもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基を表す。R35とR36が結合して、炭素数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成しても良い。
cは1〜20の整数を表し、dは1〜500の整数を表す。
【0040】
本発明においてポリカーボネートの製造に用いられる、ビスフェノール類としては、具体的には1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)プロパン、3,3,5−トリメチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、両末端に3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル基を有するジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンのランダム共重合体、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール等が例示される。これらは、2種類以上併用することも可能である。また、これらの中でも特にビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルから選ばれることが好ましい。ただし、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルを使用する場合は、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性を向上させるため、上記のうちの残りのビスフェノール類を30モル%以上共重合することが好ましい。
【0041】
また、本発明においてポリカーボネートの製造に用いられる、炭酸エステル形成化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
【0042】
さらに、本発明のポリカーボネートの製造時に、また重合度調節として、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p-クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが可能である。また、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト、トリスフェニルホスファイトなどの酸化防止剤、安定剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノールなど分岐化剤を少量添加してもよい。
【0043】
本発明において電子写真感光体バインダー樹脂として用いる、ポリカーボネートとしては極限粘度[η]が0.40dl/g以上、1.5dl/g以下のものが好ましい。また、(A)ポリカーボネートと(B)ポリフェニレンエーテルオリゴマーの混合割合は、(A)99〜70質量%、(B)1〜30質量%が好ましく、さらには、(A)95〜80質量%、(B)5〜20質量%が好ましい。ここで(A)と(B)の合計は100質量%とする。極限粘度[η]がかかる範囲外では、強度や製膜性に劣る。また(B)の混合割合が30質量%を超えると感光体にクラックが生じやすく製膜性が劣り、1質量未満では電荷輸送性改質効果が不十分となる。
【0044】
本発明のバインダー樹脂組成物には、その効果を保持する範囲で、各種紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、滑剤等を所望に応じて添加することも可能である。
【0045】
本発明の電子写真感光体は導電性支持体上に単一層の感光層を有するものでも、機能分離した積層型のものにも使用可能であるが、電荷輸送物質を保持するバインダー樹脂の特性が十分発揮しやすい積層型の電子写真感光体の電荷輸送層に用いることが好ましい。
なお、導電性支持体上に単一層の感光層を有する場合には、感光層には電荷輸送物質と電荷発生物質の両方をバインダー樹脂に混合して使用する。
【0046】
本発明の導電性支持体とは、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属材料や、又、表面にアルミニウム、パラジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂、紙等が使用される。これらの導電性支持体の表面には、所望により、平滑性や密着性を改善するアンダーコート層を形成させても良い。
【0047】
本発明の電荷発生層は公知の方法により、導電性支持体上に形成される。電荷発生物質としては、例えば、アゾキシベンゼン系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンズイミダゾール系、多環式キノリン系、インジゴイド系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系、メチン系等の有機顔料が使用できる。これらの電荷発生物質は、その微粒子をポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、各種セルロース等のバインダー樹脂に分散させた形で使用される。
【0048】
本発明の電荷輸送層は、電荷発生層上に公知の方法を用いて、電荷輸送物質を分散させたバインダー樹脂組成物により形成される。電荷輸送物質としては、例えば、ポリテトラシアノエチレン;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン系化合物;ジニトロアントラセン等のニトロ化合物;無水コハク酸;無水マレイン酸;ジブロモ無水マレイン酸;トリフェニルメタン系化合物;2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物;ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物;1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物;4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N,N‘−ビス(3−メチルフェニル)―N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン、N,N‐ビス(4‐メチルフェニル)‐4‐(2,2‐ジフェニルエテニル)アニリン等のアミン誘導体;1、1ービス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の共役不飽和化合物;4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物;縮合多環式化合物等が挙げられる。上記電荷輸送物質は単独で使用しても、複数種併用しても良い。
【0049】
本発明のバインダー樹脂組成物を用いて、電荷輸送物質等と混合した後、溶液流延法、キャスト法、スプレー法、浸漬塗布法(ディップ法)等の公知湿式成形で電子写真感光体を形成することが可能であるが、特に浸漬塗布法が好ましい。
【0050】
前記湿式成形に使用される溶媒としては、非ハロゲン系有機溶媒であり、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチルセロソルブ、アニソール等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非ハロゲン系有機溶媒が挙げられる。本発明では、これらの溶媒を単独または2種以上を併用して使用することが可能である。その中でも特に、溶媒の除去が容易で安価であるトルエン、テトラヒドロフランが好ましい。溶媒に本バインダー樹脂組成物を溶解して、電荷輸送層を形成する際は、1〜30重量%の樹脂溶液を作製して用いることが好ましい。
【0051】
電荷輸送物質とバインダー樹脂組成物との混合比は、10:1〜1:10の範囲内が好ましい。この電荷輸送層の厚さは、2〜100μm、好ましくは5〜40μmが好適である。
【実施例】
【0052】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
[溶液透過率]
電荷輸送層形成用塗布液を、10mmガラスセルに入れ波長700nmの光線透過率を株式会社島津製作所製UV−1800分光光度計で測定した。なお、各溶媒だけガラスセルに入れた透過率を100%として、溶液の光線透過率を補正し、溶液透過率とした。
ポリマーが溶媒に十分に溶解しない場合には、この溶液透過率は低い値となる。
【0054】
[感光体特性評価]
ドラムテスター(QEA社製PDT−2000LTM)を用いて、作製した電子写真感光体を、表面電位700V、印加電圧を5.5kVに設定し、帯電露光を行って光減衰曲線を描き、半減露光量(E1/2)と残留電位を求めた。
半減露光量(E1/2)の値は小さい方が高感度である。
残留電位の値は小さい方が高感度である。
未溶解物が発生し、均一電荷輸送層成膜が出来なかった場合、測定不可とした。
【0055】
[感光体外観]
作製した電子写真感光体を観察し、白濁やゆず肌状の凹凸がみとめられたものは×、微細なクラックが認められたものは△、それらが認められなかったものは○とした。
【0056】
[印刷画像外観]
作製した電子写真感光体を、市販LBP(セイコーエプソン株式会社製LP−S210)に組込み、50枚連続黒ベタ印刷後の50枚目の印刷画像の外観を観察した。直径1mm以上の白抜き(トナー無し部)が1カ所以上確認できたものは×、確認できなかったものは○とした。
【0057】
[極限粘度の測定方法]
ポリカーボネート樹脂のジクロロメタン0.5質量/体積%溶液を20℃、ハギンズ定数0.45にて、ウベローデ粘度管を用いて求めた。
【0058】
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー条件]
Waters社製アライアンスHPLCシステム、
昭和電工株式会社製Shodex805Lカラム2本、
0.25w/v%クロロホルム溶液サンプル、1ml/分クロロホルム溶離液、
254nmのUV検出の条件で測定。
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
【0059】
合成例1
5%(質量/体積)の水酸化ナトリウム水溶液1000mlに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(本州化学工業株式会社製、以下BPZと略称)107.2gを加え溶解した。これにメチレンクロライド500mlを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン52gを50分かけて吹き込んだ。
吹き込み終了後、撹拌を停止し、p−t―ブチルフェノール(DIC株式会社製、以下PTBPと略称)1.7gと、さらに5%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液100ml加え、撹拌を再開した。10分後、0.4mlのトリエチルアミン(TEA)を加え、さらに約1時間撹拌を続け、重合を完結させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合樹脂液を、60℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去しながら重合物を粒状化した。得られた白色粉末状重合物を濾過後、105℃、18時間乾燥して粉末状ポリカーボネート樹脂(以下PC1と略称)を得た。
この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃におけるハギンズ定数0.45として得られた極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
【0060】
合成例2
BPZの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学株式会社製、以下BPAと略称)36.5gと2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(本州化学工業株式会社製、以下BPCと略称)61.4g用い、PTBPを1.8gに変更した以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC2と略称、極限粘度0.54dl/g)を得た。
【0061】
合成例3
BPZの代わりに、BPCを102.4gを用い、PTBPを1.4gに変更した以外は合成例1と同様に界面重縮合反応させてポリカーボネート(、以下PC3と略称、極限粘度0.63dl/g)を得た。
【0062】
合成例4
BPZの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン(本州化学工業株式会社製、以下DMBPAと略称)63.6gとビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル(DIC株式会社製、以下DHPEと略称)40.4g用い、PTBPを1.2gに変更した以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC4と略称、極限粘度0.75dl/g)を得た。
【0063】
合成例5
BPZの代わりに、1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール(本州化学工業株式会社製、以下BPと略称)9.3gと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業株式会社製、以下BPEと略称)74.9g用いた以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC5と略称、極限粘度0.57dl/g)を得た。
【0064】
合成例6
BPZの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(本州化学工業株式会社製、以下BPAPと略称)116g用い、PTBPを2.0gに変更した以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC6と略称、極限粘度0.46dl/g)を得た。
【0065】
合成例7
BPZを80.4gに変更し、さらにビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(三光株式会社製、以下BPFと略称)20gを用いた以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC7と略称、極限粘度0.45dl/g)を得た。
【0066】
合成例8 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE1と略称)の合成
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr 3.88g(17.4mmol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n−ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’−3,3’−5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェノール)−4,4’−ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6−ジメチルフェノール292.19g(2.40mol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n−ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2L/分の流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50質量%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(PPE1)のトルエン溶液を833.40g得た。このPPE1のトルエン溶液は、合成例9で使用した。また、PPE1のトルエン溶液をメタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥した。この末端が水酸基のPPE1の数平均分子量は930、重量平均分子量は1460、水酸基当量が465であった。
【0067】
合成例9 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE2と略称)の合成
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に、合成例8で得たオリゴマーPPE1のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(CMS−P セイミケミカル(株)製)160.80g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5質量%NaOH水溶液175.9gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して末端がビニル基のオリゴマーPPE2を501.43g得た。このPPE2の数平均分子量は1165、重量平均分子量は1630であった。
【0068】
合成例10 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE3と略称)の合成
攪拌装置、温度計、空気導入管、邪魔板のついた12Lの縦長反応器にCuBr 9.36g(42.1mmol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン 1.81g(10.5mmol)、n−ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’−3,3’−5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェノール)−4,4’−ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6−ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n−ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2L/分の流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50質量%に濃縮し、末端が水酸基である2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE3と略称)のトルエン溶液を1981g得た。このオリゴマーPPE3の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
【0069】
合成例11 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE4と略称)の合成
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器にPPE3のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(CMS−P)76.7g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン6.2g、純水199.5g、30.5質量%NaOH水溶液83.6gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して末端がビニル基であるオリゴマー(以下PPE4と略称)を450.1g得た。このPPE4の数平均分子量は2250、重量平均分子量は3920であった。
【0070】
<下引き層形成用塗布液の製造>
メタノール/1−ブタノールの質量比が7/3の混合溶媒中にポリアミド樹脂(東レ製「アラミンCM−8000」)を加熱しながら撹拌、混合し固形分濃度5質量%の下引き層形成用塗布液を作製した。
【0071】
<電荷発生層形成用塗布液の製造>
電荷発生物質としてY型オキシチタニウムフタロシアニン(SENSIENT TECNOLOGY製)11質量部とテトラヒドロフラン18質量部、水2質量部とを混合し、ローラーミルで撹拌溶解した。続いてこの微細化処理液に、アルキルアセタール化ポリビニルブチラール(積水化学製、商品名「デンカブチラール」BX−1)8質量部とテトラヒドロフラン500質量部と水6質量部を混合して電荷発生層形成用塗布液を調製した。
【0072】
実施例1
前記下引き層形成用塗布液をメスシリンダーに入れ、アルミ素管(直径24mm、長さ252mm、0.8mm厚)を塗布液に漬け、浸漬塗布を行い、室温で風乾して約0.5μm厚の下引層を得た。
続いて、前記電荷発生層形成用塗布液を別のメスシリンダーに入れ、前記下引層を塗布したアルミ管に浸漬塗布を行い、室温で風乾して、約0.3μmの電荷発生層を得た。
次に、ポリカーボネート樹脂PC1を90質量部、PPE2を10質量部、電荷輸送材としてN,N‐ビス(4‐メチルフェニル)‐4‐(2,2‐ジフェニルエテニル)アニリン(高砂香料工業株式会社製)を80質量部、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを1質量部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル(信越シリコーン社製:商品名KF96)0.05質量部を、テトラヒドロフラン100質量部とトルエン380質量部との混合溶媒に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。電荷輸送層形成溶液は、一部をサンプリングし、溶液透過率を測定した。
また、前記電荷輸送層形成用塗布液をメスシリンダーに入れ、前記電荷発生層を塗布したアルミ管に浸漬塗布を行い、室温で風乾後、125℃、20分乾燥し、電子写真感光体を作製した。
得られた電子写真感光体は外観観察後、ドラムテスターにてE1/2と残留電位を測定し、さらに市販のLBPにセット後、印刷して印刷画像の外観を観察した。
【0073】
実施例2
PC1の代わりにPC2を用い、PPE2の代わりにPPE4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0074】
実施例3
90質量部のPC1の代わりに80質量部のPC3を用い、10質量部のPPE2の代わりに20質量部のPPE4を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0075】
実施例4
90質量部のPC1の代わりに95質量部のPC4を用い、PPE2を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0076】
実施例5
PC1の代わりにPC5を用い、PPE2の代わりにPPE4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0077】
実施例6
PC1の代わりにPC6を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0078】
実施例7
PC1の代わりにPC7を用い、PPE2の代わりにPPE4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0079】
実施例8
PC1を98質量部に変更し、PPE2を2質量部に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0080】
実施例9
PC1を70質量部に変更し、10質量部のPPE2を30質量部のPPE4に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0081】
実施例10
テトラヒドロフランの代わりにメチルエチルケトン、トルエンの代わりにオルトキシレンを使用した以外は実施例3と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0082】
比較例1
PPE2の代わりに、市販のポリフェニレンエーテル樹脂(三菱ガス化学株式会社製PX100F、Mw18700、以下PPE5と略称)を用いた以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0083】
比較例2
PPE4の代わりに、市販のポリフェニレンエーテル樹脂(三菱ガス化学株式会社製PX100L、Mw24200、以下PPE6と略称)を用いた以外は、実施例2と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0084】
比較例3
PPE2の代わりに、PPE5を用いた以外は、実施例3と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0085】
比較例4
PPE2の代わりに、PPE5を用いた以外は、実施例4と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0086】
比較例5
PPE4の代わりに、PPE1を用いた以外は、実施例5と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0087】
比較例6
PC1を100質量部に変更し、PPE2を用いなかった以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0088】
比較例7
PC1を99.2質量部に変更し、PPE2を0.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0089】
比較例8
PC1を65質量部に変更し、PPE2を35質量部に変更した以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った
【0090】
比較例9
PPE2の代わりに、PPE5を用いた以外は、実施例10と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0091】
実施例1〜10、比較例1〜9の結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の電子写真感光体は、特定のポリフェニレンエーテルオリゴマーをバインダー樹脂に含有することにより、非ハロゲン系有機溶媒を用いて容易に湿式成形可能で、かつ電化輸送性が良く高感度で、安定した画像が得られる。また、従来の高感度電子写真感光体に比べ安価に製造可能であり、特に、コストパフォーマンスが求められる低中速の複写機、LBP、それら複合機に好適である。