【実施例】
【0052】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
[溶液透過率]
電荷輸送層形成用塗布液を、10mmガラスセルに入れ波長700nmの光線透過率を株式会社島津製作所製UV−1800分光光度計で測定した。なお、各溶媒だけガラスセルに入れた透過率を100%として、溶液の光線透過率を補正し、溶液透過率とした。
ポリマーが溶媒に十分に溶解しない場合には、この溶液透過率は低い値となる。
【0054】
[感光体特性評価]
ドラムテスター(QEA社製PDT−2000LTM)を用いて、作製した電子写真感光体を、表面電位700V、印加電圧を5.5kVに設定し、帯電露光を行って光減衰曲線を描き、半減露光量(E1/2)と残留電位を求めた。
半減露光量(E1/2)の値は小さい方が高感度である。
残留電位の値は小さい方が高感度である。
未溶解物が発生し、均一電荷輸送層成膜が出来なかった場合、測定不可とした。
【0055】
[感光体外観]
作製した電子写真感光体を観察し、白濁やゆず肌状の凹凸がみとめられたものは×、微細なクラックが認められたものは△、それらが認められなかったものは○とした。
【0056】
[印刷画像外観]
作製した電子写真感光体を、市販LBP(セイコーエプソン株式会社製LP−S210)に組込み、50枚連続黒ベタ印刷後の50枚目の印刷画像の外観を観察した。直径1mm以上の白抜き(トナー無し部)が1カ所以上確認できたものは×、確認できなかったものは○とした。
【0057】
[極限粘度の測定方法]
ポリカーボネート樹脂のジクロロメタン0.5質量/体積%溶液を20℃、ハギンズ定数0.45にて、ウベローデ粘度管を用いて求めた。
【0058】
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー条件]
Waters社製アライアンスHPLCシステム、
昭和電工株式会社製Shodex805Lカラム2本、
0.25w/v%クロロホルム溶液サンプル、1ml/分クロロホルム溶離液、
254nmのUV検出の条件で測定。
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
【0059】
合成例1
5%(質量/体積)の水酸化ナトリウム水溶液1000mlに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(本州化学工業株式会社製、以下BPZと略称)107.2gを加え溶解した。これにメチレンクロライド500mlを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン52gを50分かけて吹き込んだ。
吹き込み終了後、撹拌を停止し、p−t―ブチルフェノール(DIC株式会社製、以下PTBPと略称)1.7gと、さらに5%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液100ml加え、撹拌を再開した。10分後、0.4mlのトリエチルアミン(TEA)を加え、さらに約1時間撹拌を続け、重合を完結させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合樹脂液を、60℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去しながら重合物を粒状化した。得られた白色粉末状重合物を濾過後、105℃、18時間乾燥して粉末状ポリカーボネート樹脂(以下PC1と略称)を得た。
この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃におけるハギンズ定数0.45として得られた極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
【0060】
合成例2
BPZの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学株式会社製、以下BPAと略称)36.5gと2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(本州化学工業株式会社製、以下BPCと略称)61.4g用い、PTBPを1.8gに変更した以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC2と略称、極限粘度0.54dl/g)を得た。
【0061】
合成例3
BPZの代わりに、BPCを102.4gを用い、PTBPを1.4gに変更した以外は合成例1と同様に界面重縮合反応させてポリカーボネート(、以下PC3と略称、極限粘度0.63dl/g)を得た。
【0062】
合成例4
BPZの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン(本州化学工業株式会社製、以下DMBPAと略称)63.6gとビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル(DIC株式会社製、以下DHPEと略称)40.4g用い、PTBPを1.2gに変更した以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC4と略称、極限粘度0.75dl/g)を得た。
【0063】
合成例5
BPZの代わりに、1,1‘−ビフェニル−4,4’−ジオール(本州化学工業株式会社製、以下BPと略称)9.3gと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業株式会社製、以下BPEと略称)74.9g用いた以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC5と略称、極限粘度0.57dl/g)を得た。
【0064】
合成例6
BPZの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(本州化学工業株式会社製、以下BPAPと略称)116g用い、PTBPを2.0gに変更した以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC6と略称、極限粘度0.46dl/g)を得た。
【0065】
合成例7
BPZを80.4gに変更し、さらにビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(三光株式会社製、以下BPFと略称)20gを用いた以外は合成例1と同様の界面重縮合反応させてポリカーボネート(以下PC7と略称、極限粘度0.45dl/g)を得た。
【0066】
合成例8 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE1と略称)の合成
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr
2 3.88g(17.4mmol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n−ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’−3,3’−5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェノール)−4,4’−ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6−ジメチルフェノール292.19g(2.40mol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n−ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2L/分の流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50質量%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(PPE1)のトルエン溶液を833.40g得た。このPPE1のトルエン溶液は、合成例9で使用した。また、PPE1のトルエン溶液をメタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥した。この末端が水酸基のPPE1の数平均分子量は930、重量平均分子量は1460、水酸基当量が465であった。
【0067】
合成例9 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE2と略称)の合成
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に、合成例8で得たオリゴマーPPE1のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(CMS−P セイミケミカル(株)製)160.80g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5質量%NaOH水溶液175.9gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して末端がビニル基のオリゴマーPPE2を501.43g得た。このPPE2の数平均分子量は1165、重量平均分子量は1630であった。
【0068】
合成例10 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE3と略称)の合成
攪拌装置、温度計、空気導入管、邪魔板のついた12Lの縦長反応器にCuBr
2 9.36g(42.1mmol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン 1.81g(10.5mmol)、n−ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’−3,3’−5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェノール)−4,4’−ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6−ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n−ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2L/分の流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50質量%に濃縮し、末端が水酸基である2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE3と略称)のトルエン溶液を1981g得た。このオリゴマーPPE3の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
【0069】
合成例11 2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(以下PPE4と略称)の合成
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器にPPE3のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(CMS−P)76.7g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン6.2g、純水199.5g、30.5質量%NaOH水溶液83.6gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して末端がビニル基であるオリゴマー(以下PPE4と略称)を450.1g得た。このPPE4の数平均分子量は2250、重量平均分子量は3920であった。
【0070】
<下引き層形成用塗布液の製造>
メタノール/1−ブタノールの質量比が7/3の混合溶媒中にポリアミド樹脂(東レ製「アラミンCM−8000」)を加熱しながら撹拌、混合し固形分濃度5質量%の下引き層形成用塗布液を作製した。
【0071】
<電荷発生層形成用塗布液の製造>
電荷発生物質としてY型オキシチタニウムフタロシアニン(SENSIENT TECNOLOGY製)11質量部とテトラヒドロフラン18質量部、水2質量部とを混合し、ローラーミルで撹拌溶解した。続いてこの微細化処理液に、アルキルアセタール化ポリビニルブチラール(積水化学製、商品名「デンカブチラール」BX−1)8質量部とテトラヒドロフラン500質量部と水6質量部を混合して電荷発生層形成用塗布液を調製した。
【0072】
実施例1
前記下引き層形成用塗布液をメスシリンダーに入れ、アルミ素管(直径24mm、長さ252mm、0.8mm厚)を塗布液に漬け、浸漬塗布を行い、室温で風乾して約0.5μm厚の下引層を得た。
続いて、前記電荷発生層形成用塗布液を別のメスシリンダーに入れ、前記下引層を塗布したアルミ管に浸漬塗布を行い、室温で風乾して、約0.3μmの電荷発生層を得た。
次に、ポリカーボネート樹脂PC1を90質量部、PPE2を10質量部、電荷輸送材としてN,N‐ビス(4‐メチルフェニル)‐4‐(2,2‐ジフェニルエテニル)アニリン(高砂香料工業株式会社製)を80質量部、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを1質量部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル(信越シリコーン社製:商品名KF96)0.05質量部を、テトラヒドロフラン100質量部とトルエン380質量部との混合溶媒に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。電荷輸送層形成溶液は、一部をサンプリングし、溶液透過率を測定した。
また、前記電荷輸送層形成用塗布液をメスシリンダーに入れ、前記電荷発生層を塗布したアルミ管に浸漬塗布を行い、室温で風乾後、125℃、20分乾燥し、電子写真感光体を作製した。
得られた電子写真感光体は外観観察後、ドラムテスターにてE1/2と残留電位を測定し、さらに市販のLBPにセット後、印刷して印刷画像の外観を観察した。
【0073】
実施例2
PC1の代わりにPC2を用い、PPE2の代わりにPPE4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0074】
実施例3
90質量部のPC1の代わりに80質量部のPC3を用い、10質量部のPPE2の代わりに20質量部のPPE4を用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0075】
実施例4
90質量部のPC1の代わりに95質量部のPC4を用い、PPE2を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0076】
実施例5
PC1の代わりにPC5を用い、PPE2の代わりにPPE4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0077】
実施例6
PC1の代わりにPC6を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0078】
実施例7
PC1の代わりにPC7を用い、PPE2の代わりにPPE4を用いた以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0079】
実施例8
PC1を98質量部に変更し、PPE2を2質量部に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0080】
実施例9
PC1を70質量部に変更し、10質量部のPPE2を30質量部のPPE4に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0081】
実施例10
テトラヒドロフランの代わりにメチルエチルケトン、トルエンの代わりにオルトキシレンを使用した以外は実施例3と同様に電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0082】
比較例1
PPE2の代わりに、市販のポリフェニレンエーテル樹脂(三菱ガス化学株式会社製PX100F、Mw18700、以下PPE5と略称)を用いた以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0083】
比較例2
PPE4の代わりに、市販のポリフェニレンエーテル樹脂(三菱ガス化学株式会社製PX100L、Mw24200、以下PPE6と略称)を用いた以外は、実施例2と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0084】
比較例3
PPE2の代わりに、PPE5を用いた以外は、実施例3と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0085】
比較例4
PPE2の代わりに、PPE5を用いた以外は、実施例4と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0086】
比較例5
PPE4の代わりに、PPE1を用いた以外は、実施例5と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0087】
比較例6
PC1を100質量部に変更し、PPE2を用いなかった以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0088】
比較例7
PC1を99.2質量部に変更し、PPE2を0.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0089】
比較例8
PC1を65質量部に変更し、PPE2を35質量部に変更した以外は、実施例1と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った
【0090】
比較例9
PPE2の代わりに、PPE5を用いた以外は、実施例10と同様に、電子写真感光体作製、各物性評価を行った。
【0091】
実施例1〜10、比較例1〜9の結果を表1に示す。
【0092】
【表1】