【実施例1】
【0031】
図1はNAS電池システムを3台(NO.1号機200a、NO.2号機200b、NO.3号機200c)備えた実施形態例の系統連系システムの構成を示している。
【0032】
本実施例1では、受電点電力P_line_detを電力検出器23によって計測し、各NAS電池システム(200a,200b,200c)の電力(P1_det,P2_det,P3_det)を電力検出器13a,13b,13cによって計測し、PV発電システム100の電力P_sun_detを電力検出器13によって計測し、それら計測値に基づいて、系統安定化装置360が各NAS電池システム(200a,200b,200c)の充放電制御を行うことにより、受電点電力P_line_detを制御する。
【0033】
図1において
図8と同一部分は同一符号をもって示している。各NAS電池システム号機(200a,200b,200c)の運転モードは、(M1)充電リセットモード、(M2)手動充電モード、(M3)手動放電モード、(M4)自動制御モードより選択する。
【0034】
ただし、1台は(M4)自動制御モードを選択し、残り2台は(M1)充電リセットモード、(M2)手動充電モード、(M3)手動放電モードより選択する。
【0035】
系統安定化装置360内の、(M4)自動制御モード号機の制御ブロックを
図2に示す。図中の破線で示すxが、
図9の従来方式から追加した制御ブロック部であり、
図9と同一部分は同一符号をもって示している。
【0036】
以下に、
図2における各パラメータ値と動作を説明する(各パラメータ値の極性は、放電方向を+とする)。
【0037】
・P_line_ref:受電点電力指令値
・P_line_det:電力検出器23によって検出された受電点電力検出値
・P_auto_ref_before:P_line_refとP_line_detの差分をPI演算して算出した、補正前の自動制御モード号機の充放電電力指令値
・Pmax:各号機への放電電力指令値(極性:+)の上限リミッタ値
・Pmin:各号機への充電電力指令値(極性:−)の下限リミッタ値
・P_sun_det:電力検出器13によって検出されたPV発電システム100の電力検出値
・Pman_dis:手動放電モード号機への手動放電指令値(手動放電モード号機がない場合は、Pman_dis=0とする)。
【0038】
・Pres_limit:NAS充電リセット電力許容値(M1充電リセットモード号機への、リセット充電電力の最大上限値であり、充電リセットモード号機がない場合は、Pres_limit=0となる)。
【0039】
このPres_limitは下式により計算する。
【0040】
Pres_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pman_dis…(1)(Pres_limit0はPres_limitのデフォルト値)
すなわち、PV発電システム100の電力検出値P_sun_det、各号機への放電電力指令値の上限リミッタ値Pmaxおよび手動放電モード号機への手動放電指令値Pman_disの合計により求められる(尚充電モード(充電方向)であるため極性として「−」が各々付加されている。)。
【0041】
ただし、NAS電池システムには充電電電力許容範囲(Pmin〜0)があるので、リミッタ303aa(limiter1)を設けている。すなわち、
Pres_limit0≧Pminの場合、Pres_limit=Pres_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pman_disである。
【0042】
これに対してPres_limit0<Pminの場合はPres_limit=Pminとする。
【0043】
・Pman_limit:手動充電の電力許容値(M2手動充電モード号機への、手動充電電力の最大上限値であり、手動充電モード号機がない場合は、Pman_limit=0となる)。
【0044】
このPman_limitは下式により計算する。
【0045】
Pman_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pres_limit−Pman_dis…(2)(Pman_limit0はPman_limitのデフォルト値)
すなわち、PV発電システム100の電力検出値P_sun_det、各号機への放電電力指令値の上限リミッタ値Pmax、前記リセット充電電力の最大上限値Pres_limitおよび手動放電モード号機への手動放電指令値Pman_disの合計により求められる(尚充電モード(充電方向)であるため極性として「−」が各々付加されている。)。
【0046】
ただし、NAS電池システムには充電電力許容範囲(Pmin〜0)があるので、リミッタ303ab(limiter2)を設けている。すなわち、
Pman_limit0≧Pminの場合、Pman_limit=Pman_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pres_limit−Pman_disである。
【0047】
これに対してPman_limit0<Pminの場合はPman_limit=Pminとする。
【0048】
P_sum:PV発電システム100と、NAS電池システム200の、(M1)充電リセットモード号機と、(M2)手動充電モード号機と、(M3)手動放電モード号機とから充放電される受電点電力予測合計値
このP_sumは、
P_sum=Pres_limit+Pman_limit+Pman_dis+P_sun_det…(3)で求められる。
【0049】
すなわち、前記リセット充電電力の最大上限値Pres_limit、手動充電電力の最大上限値Pman_limit、手動放電モード号機への手動放電指令値Pman_disおよびPV発電システム100の電力検出値P_sun_detを加算器311、312、313(受電点電力予測合計値演算部)によって加算して得られる。
【0050】
・Psmin:充電時受電点最小電力設定値
尚、買電を防止する場合では、通常、Psmin=0とする。
【0051】
・P_auto_ref_add:自動制御モード号機の充放電電力補正加算指令値
このP_auto_ref_addは、減算器320(充放電電力補正加算指令値演算部)によって、充電時受電点最小電力設定値Psminと受電点電力予測合計値P_sumの偏差をとることで得られる。
【0052】
このP_auto_ref_addは、Psmin≧P_sumの場合ON制御され、Psmin<P_sumの場合OFF制御されるスイッチSWを介して加算器310(加算部)に導入され、前記自動制御モード号機の補正前充放電電力指令値P_auto_ref_beforeに加算される。
【0053】
Psmin≧P_sumの時、自動制御モード号機が放電を行わないと、P_line_det<Psminとなり買電となってしまう。そこで買電を回避、もしくは買電電力・買電時間を抑制するために、スイッチSWをONとし、
P_auto_ref_add=Psmin−P_sum…(4)
として加算器310へ加算する。
【0054】
一方、Psmin<P_sumの時はP_auto_ref_add=0とする。
【0055】
・P_auto_ref:補正後の自動制御モード号機の充放電電力指令値
このP_auto_refは下式により計算する。
【0056】
P_auto_ref0=P_auto_ref_before+P_auto_ref_add…(5)(P_auto_ref0はP_auto_refのデフォルト値)
ただし、NAS電池システムには充放電電力許容範囲(Pmin〜Pmax)があるので、リミッタ303(limiter3)を設けている。すなわち、
Pmin≦P_auto_ref0≦Pmaxの場合、P_auto_ref=P_auto_ref0である。
【0057】
これに対し、P_auto_ref0<Pminの場合は、P_auto_ref=Pminとなり、P_auto_ref0>Pmaxの場合は、P_auto_ref=Pmaxとなる。
【0058】
NAS電池システム200の自動制御モード号機は、前記補正後の充放電電力指令値P_auto_refとなるように制御が行われる。
【0059】
以下のPsmin≧P_sumの時のP_auto_refの補正(自動制御モード号機への放電指令値の上昇)動作により、系統連系システムでの買電を回避、もしくは買電電力・買電時間を抑制する。
【0060】
すなわち、受電点電力予測合計値P_sumが充電時受電点最小電力設定値Psmin以下になったら、自動制御モード号機の充放電電力指令値P_auto_refは補正前充放電電力指令値P_auto_ref_beforeと充放電電力補正加算指令値P_auto_ref_addが加算された値となるため、自動制御モード号機(200)の充放電電力が放電方向に急増し、受電点電力検出値P_line_detの受電点電力指令値P_line_refからの急変動が抑制され、買電を回避、又は買電電力・買電時間を抑制できる。
【0061】
例として、下表(表1〜表4)の運転モード(ケース1〜ケース4)とパラメータ値の場合での動作を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
このケース1において、
Pres_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pman_dis
=−25kW−10kW−0kW=−35kWである。
【0064】
ここで、Pres_limit0(−35kW)<Pmin(−10kW)であるためPres_limitはPminの−10kWとなる。
【0065】
またPman_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pres_limit−Pman_dis=−25kW−10kW−(−10kW)−0kW=−25kWである。
【0066】
ここで、Pman_limit0(−25kW)<Pmin(−10kW)であるためPman_limit=−10kWとなる。
【0067】
またP_sum=Pres_limit+Pman_limit+Pman_dis+P_sun_det=−10kW−10kW+0kW+25kW=5kWである。
【0068】
ここで、P_sum>Psminであるので、スイッチSWはOFFであり、P_auto_ref_add=0kWである。
【0069】
図2の制御ブロック図の追加ブロック部xの出力は0kWとなるので、自動制御モード号機(200)の充放電電力指令値(リミッタ303での補正前)への加算はない。
【0070】
【表2】
【0071】
このケース2では、ケース1と同一の(M1)、(M2)、(M4)の運転モードが選択されているが、PV発電システム100の電力検出値P_sun_detが異なる。
【0072】
ケース2において、
Pres_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pman_dis
=−15kW−10kW−0kW=−25kWである。
【0073】
ここで、Pres_limit0(−25kW)<Pmin(−10kW)であるためPres_limitはPminの−10kWとなる。
【0074】
またPman_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pres_limit−Pman_dis=−15kW−10kW−(−10kW)−0kW=−15kWである。
【0075】
ここで、Pman_limit0(−15kW)<Pmin(−10kW)であるためPman_limit=−10kWとなる。
【0076】
またP_sum=Pres_limit+Pman_limit+Pman_dis+P_sun_det=−10kW−10kW+0kW+15kW=−5kWである。
【0077】
ここで、P_sum(=−5kW)はPsmin(=0kW)より低いので、スイッチSWはONとなり、P_auto_ref_add=Psmin−P_sum=0kW−(−5kW)=5kWとなる。このため
図2の制御ブロック図の追加ブロック部xの出力は5kWとなり、この値が自動制御モード号機(200)の充放電電力指令値(リミッタ303での補正前)に加算される。
【0078】
ケース1とケース2は、PV発電システム100の電力検出値が異なる。ケース1の運転状態中にP_sun_detの値が減少してケース2となった場合、P_auto_ref_addが0kW→5kWと変化する。
【0079】
これにより、自動制御モード号機(200)の充放電電力が放電方向に急増加して、日射量低減によるP_sun_detの減少電力を補充して、受電点電力検出値P_line_detの受電点電力指令値P_line_refからの急変動が抑制されて、買電を回避できる。もしくは買電電力・買電時間を抑制できる。
【0080】
【表3】
【0081】
このケース3では、NAS電池システム200の各号機の運転モードは(M1)、(M3)、(M4)の運転モードが選択されている。
【0082】
ケース3において、
Pres_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pman_dis
=−15kW−10kW−5kW=−30kWである。
【0083】
ここで、Pres_limit0(−30kW)<Pmin(−10kW)であるためPres_limitはPminの−10kWとなる。
【0084】
またPman_limit=0kW、手動充電モード(2)がないので、Pman_dis=5kWであるため、P_sumは、
P_sum=Pres_limit+Pman_limit+Pman_dis+P_sun_det=−10kW+5kW+15kW=10kWとなる。
【0085】
ここで、P_sum>Psminであるので、スイッチSWはOFFであり、P_auto_ref_add=0kWである。
【0086】
図2の制御ブロック図の追加ブロック部xの出力は0kWとなるので、自動制御モード号機(200)の充放電電力指令値(リミッタ303での補正前)への加算はない。
【0087】
【表4】
【0088】
このケース4では、NAS電池システム200の各号機の運転モードは(M2)、(M3)、(M4)の運転モードが選択されている。
【0089】
ケース4において、
Pman_limit0=−P_sun_det−Pmax−Pres_limit−Pman_dis
=−15kW−10kW−0kW−5kW=−30kWである。
【0090】
ここで、Pman_limit0(−30kW)<Pmin(−10kW)であるためPman_limitはPminの−10kWとなる。
【0091】
またP_sum=Pres_limit+Pman_limit+Pman_dis+P_sun_det=0kW−10kW+5kW+15kW=10kWとなる。
【0092】
ここで、P_sum>Psminであるので、スイッチSWはOFFであり、P_auto_ref_add=0kWである。
【0093】
図2の制御ブロック図の追加ブロック部xの出力は0kWとなるので、自動制御モード号機(200)の充放電電力指令値(リミッタ303での補正前)への加算はない。
【0094】
また、(M1)充電リセットモード、(M2)手動充電モード、(M3)手動放電モードの各号機の制御ブロック図を、
図3、
図4、
図5に示す。
【0095】
充電リセット号機の制御ブロックを示す
図3において、331は、充電リセットモード号機内の前記電力検出器13a又は13b又は13cにより検出された充電リセットモード号機電力検出値P_res_detと充電リセット電力許容値P_res_limit(充電リセットモード号機へのリセット充電電力の最大上限値)との偏差をとる減算器であり、332は減算器331の偏差出力をPI演算するPI演算器である。
【0096】
PI演算器332の出力はリミッタ304(Limiter4)によって、充電電力指令値の下限リミッタ値Pminから放電電力指令値の上限リミッタ値Pmaxの間に制限され、充電リセットモード号機(200)の電力指令値P_res_refが制御演算される。
【0097】
図1の系統連系システムにおいて、NAS電池システムのNO.1号機200aが(M1)充電リセットモードの号機の場合、
図3のブロック図では、P_res_det=P1_det、P_res_ref=P1_refとなる。
【0098】
手動充電モード号機の制御ブロックを示す
図4において、341は、手動充電モード号機内の前記電力検出器13a又は13b又は13cにより検出された手動充電モード号機電力検出値P_man_detと手動充電電力許容値P_man_limit(手動充電モード号機への手動充電電力の最大上限値)との偏差をとる減算器であり、342は減算器341の偏差出力をPI演算するPI演算器である。
【0099】
PI演算器342の出力はリミッタ305(Limiter5)によって、充電電力指令値の下限リミッタ値Pminから放電電力指令値の上限リミッタ値Pmaxの間に制限され、手動充電モード号機(200)の電力指令値P_man_refが制御演算される。
【0100】
図1の系統連系システムにおいて、NAS電池システムのNO.2号機200bが(M2)手動充電モードの号機の場合、
図4のブロック図では、P_man_det=P2_det、P_man_ref=P2_refとなる。
【0101】
手動放電モード号機の制御ブロックを示す
図5において、351は、手動放電モード号機内の前記電力検出器13a又は13b又は13cにより検出された手動放電モード号機電力検出値P_dis_detと手動放電電力許容値P_man_dis(手動放電モード号機への手動放電指令値)との偏差をとる減算器であり、352は減算器351の偏差出力をPI演算するPI演算器である。
【0102】
PI演算器352の出力はリミッタ306(Limiter6)によって、手動放電電力指令値の下限リミッタ値Pminから手動放電電力指令値の上限リミッタ値Pmaxの間に制限され、手動放電モード号機(200)の電力指令値P_dis_refが制御演算される。
【0103】
図1の系統連系システムにおいて、NAS電池システムのNO.3号機200cが(M3)手動放電モードの号機の場合、
図5のブロック図では、P_des_det=P3_det、P_dis_ref=P3_refとなる。
【0104】
以上のように実施例1によれば、受電点電力予測合計値が充電時受電点最小電力設定値以下の場合(Psmin≧P_sumの場合)に
図2に示すように自動制御モード号機の充放電電力指令値を補正する制御ブロック(追加ブロック部x)を適用することによって、日射量の急低下などによって生じる受電点電力の急変動を抑制させることができる。これによって、買電を回避、もしくは買電電力・買電時間を抑制させることができる。
【0105】
図7に、本発明方式での受電点電力変動のグラフの例を示す。日射量低下前は、実施例1のケース1(表1)の制御モード、日射量低下後は、実施例1のケース2(表2)の制御モードに相当する。
【0106】
図7において、
図11の従来方式のグラフと比べて、買電電力と買電時間が抑制・短縮されている。