(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のスリット等で端高部分を低減した場合、端高部分の型崩れは防止されるが、工程下流側に流されるペースト材料は、スリットにより塗り広げられ、均されることとなる。このため、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストの表面にその端高部分のペースト材料が付着されるので、塗工された電極ペーストの厚みが厚くなったり、電極ペーストの表面にスジ等ができる。
【0005】
そこで、本発明は、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストへの影響を抑えつつ、電極ペーストの突出部分(特に、端高部分)を平坦化できる電極の製造装置及び電極の製造方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電極の製造装置は、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストの突出部分を平坦化する電極の製造装置であって、帯状の金属箔の搬送経路上に配置され、帯状の金属箔の搬送中に電極ペーストの突出部分を除去して平坦化する平坦化部を備え、平坦化部は、搬送経路側に突き出た凸状部を有し、凸状部は、帯状の金属箔の搬送方向に直交する方向に対して傾いた方向に延在する。
【0007】
この製造装置では、帯状の金属箔の搬送方向に直交する方向に対して傾いた凸状部により電極ペーストの突出部分を除去する。そのため、除去された突出部分の電極ペーストが、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストの表面に付着されない。これにより、製造装置は、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストへの影響を抑えつつ、突出部分(特に、端高部分)を平坦化できる。なお、凸状部は、平坦化部の面から突き出た部分であり、段差状の部分も含む。
【0008】
一実施形態の電極の製造装置では、平坦化部で除去された突出部分の電極ペーストを回収する回収部を備える。この構成により、製造装置は、除去した電極ペーストを回収部で回収できる。
【0009】
一実施形態の電極の製造装置では、平坦化部は、コンマロールであり、凸状部は、コンマロールの段差の部分である。この構成により、製造装置は、コンマロールの傾けられた段差で突出部分を幅方向の一端側から他端側に除去していく。
【0010】
一実施形態の電極の製造装置では、平坦化部は、グラビアロールであり、グラビアロールは、複数の凸状部を有し、凸状部と凸状部との間の溝が搬送方向に直交する方向に対して傾いた方向に延在する。この構成により、製造装置は、グラビアロールの傾けられた溝で突出部分を除去する。
【0011】
本発明の一側面に係る電極の製造方法は、帯状の金属箔に電極ペーストを塗工する塗工工程を含む電極の製造方法であって、帯状の金属箔の搬送中に、塗工工程で塗工された電極ペーストの突出部分を帯状の金属箔の搬送方向に直交する方向に対して傾いた凸状部により除去する除去工程と、除去工程で除去された突出部分の電極ペーストを回収する回収工程とを含む。
【0012】
この製造方法では、搬送方向に直交する方向に対して傾いた凸状部により電極ペーストの突出部分を除去し、除去した突出部分の電極ペーストを回収するので、その除去した突出部分の電極ペーストが帯状の金属箔に塗工された電極ペーストの表面に付着しない。これにより、製造方法は、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストへの影響を抑えつつ、突出部分(特に、端高部分)を平坦化できる。
【0013】
一実施形態の電極の製造方法では、塗工工程は、帯状の金属箔に電極ペーストを間欠塗工する。間欠塗工では、電極ペーストの吐出開始と吐出終了が一定周期で繰り返されるので、電極ペーストの吐出量が不安定になり易い。そのため、帯状の金属箔に一定間隔で塗工された電極ペーストには、端高部分ができ易い。したがって、この電極の製造方法が塗工工程で間欠塗工を行う場合に適用されると効果的である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、帯状の金属箔に塗工された電極ペーストへの影響を抑えつつ、突出部分(特に、端高部分)を平坦化できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電極の製造装置及び電極の製造方法を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施形態に係る電極の製造装置は、電極の塗工工程で間欠塗工された電極ペーストの端高部分(突出部分)を除去する装置である。第1実施形態がコンマロールを利用した形態であり、第2実施形態がグラビアロールを利用した形態である。なお、製造される電極は、例えば、二次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電装置に用いられる。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。また、製造される電極は、一次電池に用いられてもよい。本実施形態では、リチウムイオン二次電池に用いられる電極を製造する場合とする。
【0018】
電極は、金属箔の少なくとも一面に電極ペーストが塗工されて、活物質層が形成されている。電極は、金属箔の端部に活物質層が形成されていないタブを有している。金属箔は、例えば、正極の場合にはアルルミニウム箔であり、負極の場合には銅箔、ニッケル箔である。電極ペーストは、所定の粘度を有するスラリ状であり、活物質、バインダ、溶剤等を含んでいる。活物質は、正極活物質又は負極活物質である。正極活物質は、例えば、複合酸化物、硫黄系材料である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。負極活物質は、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素である。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリノレ基含有樹脂である。溶剤は、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤、水である。また、電極ペーストは、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等の導電助剤を含んでいてもよい。また、電極ペーストは、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含んでいてもよい。
【0019】
電極を製造する場合、上記各物質を混練して電極ペーストを生成する混練工程、電極ペーストを帯状の金属箔に間欠塗工する塗工工程、間欠塗工された電極ペーストを乾燥する乾燥工程等により、帯状の金属箔に活物質層が形成される。そして、この活物質層が形成された帯状の金属箔から電極が切り出される。
【0020】
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る電極の製造装置1について説明する。
図1は、第1実施形態に係る電極の製造装置1を模式的に示す図である。
図2は、製造装置1に備えられるコンマロールの斜視図である。
【0021】
製造装置1を用いた端高部分を除去する工程及びその前工程の塗工工程は、帯状の金属箔Aの搬送中に実施される。搬送前に、帯状の金属箔Aは、リール(図示せず)に巻き取られたロール状(巻出ロール)である。搬送中、帯状の金属箔Aが巻出ロールから送り出され、活物質層が形成された帯状の金属箔Aがリール(図示せず)に巻き取られてロール状(巻取ロール)になる。帯状の金属箔Aは、所定の搬送経路で巻出ロールから巻取ロールまで搬送される。帯状の金属箔Aは、所定の搬送速度で搬送される。搬送中の帯状の金属箔Aには、所定のテンション(張力)がかかっている。
図1では、符号Cの矢印により帯状の金属箔Aが搬送される方向を示している。この搬送方向Cは、搬送される帯状の金属箔Aの幅方向と略直交する。
【0022】
製造装置1について説明する前に、塗工工程について説明しておく。塗工工程は、例えば、
図1に示すダイ方式の塗工装置3により行われる。塗工装置3は、塗工ガン30、バックアップロール31等を備える。塗工ガン30には、ポンプ(図示せず)によりタンク(図示せず)に貯蔵される電極ペーストが送り込まれる。バックアップロール31は、塗工ガン30の吐出口30aに対向して配置される。塗工ガン30は、バックアップロール31によって支持されながら搬送される帯状の金属箔Aに、吐出口30aから電極ペーストを吐出する。特に、塗工装置3は、間欠塗工により電極ペーストを一定間隔毎に帯状の金属箔Aに塗工する。間欠塗工は、塗工ガン30からの電極ペーストの吐出を一定時間毎に停止することによって行われる。また、間欠塗工は、塗工ガン30をバックアップロール31に対して前後移動させるかあるいはバックアップロール31を塗工ガン30に対して前後移動させることによって行われてもよい。
【0023】
塗工ガン30等で電極ペーストを吐出する場合、電極ペーストに圧力を加えて、電極ペーストを押し出している。そのため、電極ペーストの吐出開始時と吐出終了時は、吐出量が不安定になり易い。吐出量が不安定になると(吐出中の一定の吐出量よりも少し吐出量が多くなると)、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBの表面の端部に、表面の平坦な部分よりも突き出た部分(以下、端高部分と呼ぶ)ができる。
図1に示す例の場合、端高部分Baが電極ペーストBの始端部(搬送方向Cの下流側の端部)にできた場合である。端高部分は、電極ペーストBの終端部(搬送方向Cの上流側の端部)にできる場合、始端部と終端部の両方にできる場合もある。なお、端高部分ができる要因としては、電極ペーストの表面張力等の他の要因もある。また、間欠塗工をバックアップロール31等の前後移動によって行う場合、電極ペーストの金属箔Aへの転写開始時または転写終了時に、電極ペーストBの厚みが不安定になりやすい。
【0024】
特に、間欠塗工では、一定時間毎に、電極ペーストの吐出開始と吐出終了が繰り返される。これにより、帯状の金属箔Aには、一定間隔毎に略矩形状のパターンの電極ペーストBが形成される(
図3参照)。したがって、間欠塗工の場合、この一定間隔毎の電極ペーストBに端高部分Baがそれぞれできる可能性がある。電極を製造する場合には電極ペーストBの表面(活物質層の表面)の平坦性(厚みの均一性)が求められるので、電極ペーストBの表面から端高部分Ba(余分な電極ペースト)を除去し、平坦化する必要がある。そこで、製造装置1では、塗工工程の直後に、帯状の金属箔Aに間欠塗工された電極ペーストBから端高部分Baを除去して平坦化する。
【0025】
なお、本実施形態ではダイ方式に適用しているが、コンマロールを用いたコンマロール方式、グラビアロールを用いたグラビア方式等の他の塗工方式も適用可能である。他の塗工方式の場合も、塗工された電極ペーストの表面の端部に端高部分ができる場合がある。また、本実施形態では間欠塗工に適用しているが、連続塗工にも適用可能である。連続塗工では、連続塗工された電極ペーストの始端部、終端部等に端高部分ができる場合がある。また、
図1に示す例では帯状の金属箔Aの一面に電極ペーストが塗工される場合であるが、帯状の金属箔Aの両面に電極ペーストが塗工される場合にも適用可能である。両面に塗工される場合、帯状の金属箔Aの一面に電極ペーストが塗工され、この塗工された電極ペーストが乾燥した後に、帯状の金属箔Aの他面に電極ペーストが塗工される。
【0026】
それでは、製造装置1について説明する。製造装置1は、帯状の金属箔Aの搬送中に、帯状の金属箔Aに間欠塗工された電極ペーストBから端高部分Baを除去し、平坦化する。特に、製造装置1は、端高部分Baを除去するためにコンマロールを利用する。製造装置1では、コンマロールの段差により端高部分Baを金属箔Aの幅方向の一端側から他端側に除去するとともにその除去した端高部分Baの電極ペーストを他端側に寄せ、他端側で回収する。そのために、製造装置1は、コンマロール10、バックアップロール11、回収容器12を備えている。
【0027】
コンマロール10は、端高部分Baを金属箔Aの幅方向の一端側から他端側に除去するとともに、その除去した端高部分Baの電極ペーストを他端側に寄せるためのコンマロールである。コンマロール10は、金属製である。コンマロール10は、略円柱形状である。コンマロール10は、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBの幅よりも広い幅である。コンマロール10の周面10aには、段差10bが設けられている。段差10bは、搬送方向Cに直交する方向(搬送中の帯状の金属箔Aの幅方向(コンマロール10の軸方向))に対して搬送方向Cの上流側に所定角度傾いた方向に延在している。この所定角度は、帯状の金属箔Aの搬送速度、電極ペーストの塗工幅、電極ペーストの粘度等を考慮して適宜設定される。所定角度は、例えば、搬送方向Cに直交する方向に対して5°〜45°であり、さらには10°〜30°が望ましい。所定角度を5°未満にすると、電極ペーストBの厚みが厚くなったり、電極ペーストBの表面にスジ等ができる可能性がある。また、所定角度を45°より大きくすると、除去した端高部分Baの電極ペーストが幅方向に移動せずに、その除去した電極ペーストが電極ペーストBの表面に付着する可能性がある。
【0028】
コンマロール10は、帯状の金属箔Aの搬送経路上における塗工ガン30の下流側かつ搬送中の帯状の金属箔Aの上方に配置される。特に、コンマロール10は、
図1に示すように、段差10bが下端部に位置するように配置される。したがって、段差10bは、帯状の金属箔Aの搬送経路側に突き出た凸状である。このコンマロール10の配置では、段差10bの先端部10cと金属箔Aに塗工された電極ペーストB(平均厚みの電極ペーストBを想定)の表面との間に僅かな隙間ができるように、コンマロール10の高さ位置が調整される。また、コンマロール10は、
図1に示すように、段差10bで周面10aの径が小さくなる側が搬送方向Cの下流側になるように配置される。コンマロール10は、回転することはなく、固定である。
【0029】
段差10bは、搬送方向Cに直交する方向に対して所定角度傾いている。そのため、帯状の金属箔Aの搬送方向Cへの移動に伴って、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBの端高部分Baは、幅方向の一端部から他端側に徐々に段差10bにぶつかる。このぶつかる部分は、段差10bの上流側の周面10aの部分である。段差10bにぶつかった端高部分Baの電極ペーストは、傾いた段差10bによって他端側に押され、電極ペーストBの表面から徐々に押し退けられる。この押し退けられた端高部分Baの電極ペーストは、傾いた段差10bによって他端側に寄せられる。したがって、段差10bは、端高部分Baの電極ペーストを一端部から他端部まで押し退ける部分になるとともに、押し退けた電極ペーストを他端側に寄せる部分になる。
【0030】
バックアップロール11は、コンマロール10により端高部分Baが除去されているときに帯状の金属箔Aを下方から支持するためのバックアップロールである。バックアップロール11は、金属製である。バックアップロール11は、円柱形状である。バックアップロール11は、バックアップロール31の下流側かつ搬送中の帯状の金属箔Aの下方に配置される。特に、バックアップロール11は、コンマロール10に対向した位置に配置される。バックアップロール11は、回転自在である。
【0031】
回収容器12は、コンマロール10により他端側に寄せられて落ちた端高部分Baの電極ペーストを回収する容器である。回収容器12は、例えば、直方体の容器である。回収容器12の上端部は、開口している。回収容器12は、バックアップロール31の下流側かつ搬送中の帯状の金属箔Aの側方に配置される。特に、回収容器12は、コンマロール10の段差10bによって落とされる電極ペーストが入る位置に配置される。
【0032】
図3を参照して、製造装置1の動作について説明する。
図3は、製造装置1の動作の流れを示す図である。
図3では、端高部分Baの電極ペーストをグレーで描いている。
図3では、コンマロール10により除去された電極ペーストを符号Ba’で示す。
図3(a)〜
図3(c)は搬送中の帯状の金属箔Aを上方から見た図であり、
図3(d)は搬送中の帯状の金属箔Aを側方から見た図である。
図3(a)〜
図3(c)では帯状の金属箔Aが搬送方向Cに徐々移動しており、
図3(d)では帯状の金属箔Aが
図3(c)と同じ位置である。
【0033】
帯状の金属箔Aは、搬送方向Cに所定の搬送速度で搬送される。塗工ガン30は、一定時間毎に、搬送中の帯状の金属箔Aの一面に電極ペーストを所定時間塗工する(塗工工程)。これにより、帯状の金属箔Aには、一定間隔毎に、略矩形形状のパターンの電極ペーストBが塗工される。
図3に示す例では、電極ペーストBの表面の始端部に端高部分Baができている。
【0034】
帯状の金属箔Aが搬送方向Cに移動しているので、帯状の金属箔Aに一定間隔毎に塗工された電極ペーストBの端高部分Baがコンマロール10の下方に順次到達する。
図3(a)に示すように、端高部分Baの幅方向の一端部が、最初に、コンマロール10の段差10bにぶつかる。
【0035】
帯状の金属箔Aの搬送方向Cへの移動により、
図3(b)に示すように、端高部分Baの一端部から他端側が、徐々に、搬送方向Cに直交する方向に対して傾いた段差10bにぶつかる。これにより、端高部分Baの一端部から他端側が、徐々に、段差10bにより電極ペーストBの表面から押し退けられる(除去工程)。この押し退けられた端高部分Baの電極ペーストBa’は、段差10bにより他端側に寄せられていく。やがて、端高部分Baの一端部から他端部までの全てが、段差10bにより押し退けられる。そして、押し退けられた端高部分Baの電極ペーストBa’は、段差10bにより電極ペーストBの表面の他端部に寄せられる。これにより、端高部分Baは、電極ペーストBの表面から除去され、平坦化される。
【0036】
さらに、
図3(c)及び
図3(d)に示すように、この他端部に寄せられた電極ペーストBa’は、徐々に、下方に落ちる。この落とされた電極ペーストBa’は、回収容器12の中に入り、回収される(回収工程)。そして、除去された全ての電極ペーストBa’が、回収容器12に回収される。このように、電極ペーストBの表面から除去された電極ペーストBa’は、コンマロール10の段差10bで他端部まで寄せられ、回収される。したがって、電極ペーストBの表面には、除去された電極ペーストBa’が付着しない。そのため、製品となる電極ペーストB(活物質層)の厚みが電極ペーストBa’によって厚くなるようなことはなく、また、電極ペーストBの表面にスジ等ができるようなこともない。電極ペーストBの厚みが厚くならないので、電極ペーストBの目付け量(重量)が予め設定されている規定量より多くなることもない。
【0037】
この電極の製造装置1によれば、コンマロール10の段差10bを搬送方向Cに直交する方向に対して傾けて配置することにより、段差10bで端高部分Baを幅方向の一端側から他端側に押し退けるとともにその押し退けた端高部分Baの電極ペーストBa’を他端側に寄せ、他端側で電極ペーストBa’を回収できる。これにより、製造装置1は、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBへの影響を抑えつつ、端高部分Baを除去して平坦化できる。その結果、製造装置1は、電極ペーストBの表面の平坦性を向上できる。なお、電極ペーストBの表面の端部以外の部分に平坦な部分よりも突き出た突出部分ができた場合でも、この製造装置1は、電極ペーストBへの影響を抑えつつ、その突出部分を除去して平坦化できる。
【0038】
図4及び
図5を参照して、第2実施形態に係る電極の製造装置2について説明する。
図4は、第2実施形態に係る電極の製造装置2を模式的に示す図である。
図5は、製造装置2に備えられるグラビアロール(斜線型の連続溝を有するロール)の斜視図である。
【0039】
製造装置2は、帯状の金属箔Aの搬送中に、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBから端高部分Baを除去し、平坦化する。特に、製造装置2は、端高部分Baを除去するためにグラビアロールを利用する。製造装置2では、グラビアロールの一定パターンの連続した溝により端高部分Baを除去し、その除去した端高部分Baの電極ペーストを他のロールに転写して回収する。そのために、製造装置2は、グラビアロール20、バックアップロール21、転写ロール22、スクレイパー23、回収容器24を備えている。
【0040】
グラビアロール20は、端高部分Baの電極ペーストを金属箔Aの幅方向の一端部から他端部まで除去するとともに、その除去した電極ペーストを転写ロール22まで運ぶためのグラビアロールである。グラビアロール20は、金属製である。グラビアロール20は、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBの幅よりも広い幅である。グラビアロール20は、円柱の表面にグラビアパターン(一定間隔毎に配置された斜線型の溝20b)が設けられた形状である。このグラビアパターンは、
図5に示すように、凹凸形状のパターンである。溝20bは、凹凸形状のパターンにおいて隣り合う一方の凸状部と他方の凸状部との間の凹状の部分である。特に、この凹凸形状のパターンは、搬送方向Cに直交する方向(搬送中の帯状の金属箔Aの幅方向(グラビアロール20の軸方向))に対して搬送方向Cの上流側に所定角度傾いている。したがって、グラビアロール20の周面20aには、一定間隔毎に、搬送方向Cに直交する方向に対して傾いた溝20bが延在する。溝20bの断面形状は、台形状、矩形状、V字形状、U字形状等の適宜の形状としてよい。所定角度は、帯状の金属箔Aの搬送速度、電極ペーストの塗工幅、電極ペーストの粘度等を考慮して適宜設定される。所定角度は、例えば、搬送方向Cに直交する方向に対して5°〜45°であり、さらには10°〜30°が望ましい。
【0041】
グラビアロール20は、帯状の金属箔Aの搬送経路上における塗工ガン30の下流側かつ搬送中の帯状の金属箔Aの上方に配置される。このグラビアロール20の配置では、周面20aの凸状部と金属箔Aに塗工された電極ペーストBの表面との間に僅かな隙間ができるように、グラビアロール20の高さ位置が調整される。グラビアロール20は、回転自在である。グラビアロール20は、モータ(図示せず)等により一定の回転速度で回転駆動される。この回転速度は、グラビアロール20の径、帯状の金属箔Aの搬送速度等に応じて適宜設定される。グラビアロール20は回転するので、グラビアロール20の下端部に位置する溝20bは順次変わる。
【0042】
溝20bは、搬送方向Cに直交する方向に対して所定角度傾いている。この溝20bに到達した端高部分Baの電極ペーストは、溝20bの中に入り、電極ペーストBの表面から剥ぎ取られる。この際、端高部分Baの幅方向の一端部から他端部までの電極ペーストは、複数の溝20bに分れて入る。グラビアロール20は回転しているので、溝20b内に入った電極ペーストは、溝20bの回転移動に応じて電極ペーストBの表面から離れ、剥ぎ取られることになる。そして、溝20b内に入った電極ペーストは、グラビアロール20の回転に伴って転写ロール22まで運ばれる。したがって、溝20bは、端高部分Baの電極ペーストを一端部から他端部まで剥ぎ取る部分になるとともに、剥ぎ取った電極ペーストを運ぶ部分になる。また、端高部分Baの電極ペーストの量が多く、溝20b内に収まらなかった場合、収まらなかった電極ペーストは、溝20bの傾きにより、幅方向の一端部から他端側に移動する。このような、溝20b内に収まらなかった電極ペーストは、グラビアロール20の回転により、新たに接する次の溝20bにて剥ぎ取られるか、又はさらに他端側に移動する。これにより、端高部分Baの電極ペーストは、複数の溝20bにより剥ぎ取られるか、剥ぎ取られなかった場合も他端側に移動する。
【0043】
バックアップロール21は、グラビアロール20により端高部分Baが除去されているときに帯状の金属箔Aを下方から支持するためのバックアップロールである。バックアップロール21は、第1実施形態のバックアップロール11と同様のバックアップロールである。特に、バックアップロール21は、グラビアロール20に対向した位置に配置される。
【0044】
転写ロール22は、グラビアロール20の溝20b内に入っている電極ペーストが転写される転写ロールである。転写ロール22の少なくとも表面は、電極ペーストが転写され易い材料からなり、例えば、ゴムである。転写ロール22は、円柱形状である。転写ロール22は、グラビアロール20の幅と同程度の幅である。転写ロール22は、グラビアロール20の上流側かつグラビアロール20の上方に配置される。特に、転写ロール22は、周面22aがグラビアロール20の周面20aに接するように配置される。転写ロール22は、回転自在である。転写ロール22は、モータ(図示せず)等により一定の回転速度で回転駆動される。この回転速度は、グラビアロール20の回転速度、グラビアロール20の径と転写ロール22の径との比等に応じて適宜設定される。転写ロール22の回転方向は、グラビアロール20の回転方向と同方向である。
【0045】
スクレイパー23は、転写ロール22に転写されている電極ペーストを掻き取るためのスクレイパーである。スクレイパー23は、転写ロール22の幅と同程度の幅である。スクレイパー23は、転写ロール22の上流側かつ転写ロール22と同程度の高さ位置に配置される。特に、スクレイパー23は、先端部が転写ロール22の周面22aに接するように配置される。
【0046】
回収容器24は、スクレイパー23により掻き落された端高部分Baの電極ペーストを回収する容器である。回収容器24は、例えば、直方体の容器である。特に、回収容器24は、スクレイパー23の幅よりも広い幅を持つ容器である。回収容器24の上端部は、開口している。回収容器24は、スクレイパー23によって落とされる電極ペーストが入るように、スクレイパー23と転写ロール22との接触箇所の下方に配置される。
【0047】
図6を参照して、製造装置2の動作について説明する。
図6は、製造装置2の動作の流れを示す図である。
図6では、端高部分Baの電極ペーストをグレーで描いている。
図6では、グラビアロール20により除去された電極ペーストを符号Ba’で示す。
図6(a)〜
図6(d)は、搬送中の帯状の金属箔Aを側方から見た図である。
図6(a)〜
図6(d)では、帯状の金属箔Aが搬送方向Cに徐々移動し、グラビアロール20と転写ロール22が徐々回転している。第2実施形態でも第1実施形態と同様の塗工工程が実施されるので、塗工工程については説明を省略する。
【0048】
帯状の金属箔Aが搬送方向Cに移動しているので、帯状の金属箔Aに一定間隔毎に塗工された電極ペーストBの端高部分Baがグラビアロール20の下方に順次到達する。
図6(a)に示すように、この到達した端高部分Baの電極ペーストは、グラビアロール20の溝20bの中に入り、電極ペーストBの表面から剥ぎ取られる(除去工程)。グラビアロール20は回転しているので、
図6(b)に示すように、溝20b内に入った電極ペーストBa’は、転写ロール22側に運ばれる。これにより、端高部分Baは、電極ペーストBから除去され、平坦化される。なお、溝20bによる端高部分Baの除去は、複数の溝20bによって行われる。
【0049】
やがて、溝20b内に入った電極ペーストBa’が、転写ロール22に到達する。この溝20b内の電極ペーストBa’の幅方向の一端部が、最初に、転写ロール22の周面22aに当たる。グラビアロール20と転写ロール22の回転により、溝20b内の電極ペーストBa’の一端部から他端側が、徐々に、周面22aに当たる。これにより、溝20b内の電極ペーストBa’が、徐々に、転写ロール22の周面22aに転写される。やがて、
図6(c)に示すように、溝20b内の全ての電極ペーストBa’が、転写ロール22に転写される。転写ロール22は回転しているので、転写ロール22に転写された電極ペーストBa’は、スクレイパー23側に運ばれる。
【0050】
やがて、転写ロール22に転写された電極ペーストBa’が、スクレイパー23の先端部に到達する。
図6(d)に示すように、転写ロール22の回転により、転写ロール22に転写された電極ペーストBa’が、徐々に、掻き落される。この落とされた電極ペーストBa’は、回収容器24の中に入り、回収される(回収工程)。そして、掻き取られた全ての電極ペーストBa’が、回収容器24に回収される。このように、電極ペーストBの表面から除去された電極ペーストBa’は、グラビアロール20と転写ロール22とで順に運ばれ、回収される。したがって、電極ペーストBの表面には、除去された電極ペーストBa’が付着しない。
【0051】
この電極の製造装置2によれば、グラビアロール20の溝20bを搬送方向Cに直交する方向に対して傾けて配置することにより、溝20bで端高部分Baを幅方向の一端部から他端部まで剥ぎ取るとともにその剥ぎ取った端高部分Baの電極ペーストBa’を電極ペーストBの表面から離すことができる。さらに、製造装置2によれば、転写ロール22及びスクレイパー23を設けることにより、グラビアロール20の溝20b内の電極ペーストBa’を回収できる。これにより、製造装置2は、帯状の金属箔Aに塗工された電極ペーストBへの影響を抑えつつ、端高部分Baを除去して平坦化できる。その結果、製造装置2は、電極ペーストBの表面の平坦性を向上できる。なお、電極ペーストBの表面の端部以外の部分に平坦な部分よりも突き出た突出部分ができた場合でも、この製造装置2は、電極ペーストBへの影響を抑えつつ、その突出部分を除去して平坦化できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0053】
例えば、上記実施形態ではコンマロール、グラビアロールにより平坦化部を構成したが、このようなロール状のもの以外のもので平坦化部を構成してもよい。例えば、直方体形状の金型の下面に第1実施形態のコンマロールの傾いた段差と同様のものを設け、平坦化部とする。このような平坦化部でも、傾いた段差により端高部分を幅方向の一端側から他端側に押し退け、押し退けた端高部分の電極ペーストを幅方向の他端側に寄せることができる。