特許第6372340号(P6372340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372340
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】七フッ化ヨウ素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 7/24 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   C01B7/24
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-254833(P2014-254833)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113337(P2016-113337A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】長友 真聖
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 力哉
(72)【発明者】
【氏名】八尾 章史
(72)【発明者】
【氏名】柴山 茂朗
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−023896(JP,A)
【文献】 特開2004−331465(JP,A)
【文献】 特開2006−265057(JP,A)
【文献】 特開2002−018286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/00−11/24
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiF、FeF、及びCoFの中から、少なくとも1種類以上を含有する充填物を内部に有する反応器に、モル比(F/I)が5以上となるようにフッ素ガスとヨウ素ガスを供給して反応させ
前記フッ素ガスと前記ヨウ素ガスとが反応する際の前記金属フッ化物の温度が150℃以上350℃以下である
ことを特徴とする、七フッ化ヨウ素の製造方法。
【請求項2】
前記反応器中に供給されるガスに、不活性ガスが10体積%以上含まれることを特徴とする請求項1に記載の七フッ化ヨウ素の製造方法。
【請求項3】
前記モル比が7以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の七フッ化ヨウ素の製造方法。
【請求項4】
前記モル比(F/I)が10以上であり、
前記反応器中の滞在時間が10秒以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の七フッ化ヨウ素の製造方法。
【請求項5】
前記フッ素ガスと前記ヨウ素ガスとが反応する際の前記金属フッ化物の温度が200℃以上330℃以下であり、
前記反応器中の滞在時間が10秒以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の七フッ化ヨウ素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化剤、或いは半導体産業におけるエッチングガス、クリーニングガスとして用いられる七フッ化ヨウ素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
七フッ化ヨウ素の製造方法としては、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスとを反応させることによって七フッ化ヨウ素を製造する方法が一般的であり、非特許文献1では、70〜80℃に加熱した五フッ化ヨウ素の液にフッ素ガスを吹き込み、得られる五フッ化ヨウ素ガスと同伴するフッ素ガスを、280〜290℃に加熱した反応器に導入し、フッ素と五フッ化ヨウ素を反応させる七フッ化ヨウ素の製造方法が報告されている。
【0003】
特許文献1では、フッ素ガスが流通する蒸発器に五フッ化ヨウ素の液滴を加えて蒸発・混合させた後、この混合ガスを300℃に加熱した反応器に導入し、フッ素と五フッ化ヨウ素を反応させる七フッ化ヨウ素の製造方法において、五フッ化ヨウ素を基準とした七フッ化ヨウ素の収率は60%であることが報告されている。
【0004】
特許文献2では、フッ素ガスと五フッ化ヨウ素ガスを予め合流させて、230℃に加熱した反応器に導入して反応させ、生成物である七フッ化ヨウ素を冷却捕集し、未反応物である五フッ化ヨウ素を冷却捕集して原料として再利用すると共に、未反応のフッ素ガスをコンプレッサで循環供給する、フッ素循環方式による七フッ化ヨウ素の製造方法が報告されている。
【0005】
一方で、五フッ化ヨウ素を経由せずに、フッ素とヨウ素とを直接反応させることによって七フッ化ヨウ素を製造する方法も知られている。この場合、フッ素とヨウ素との直接反応はきわめて激しく反応し、局所的に膨大な発熱を発生させる為、特許文献3では、ヨウ素とフッ素を原料として反応器に投入する際に、七フッ化ヨウ素が存在している反応器に、フッ素含有ガスとヨウ素含有ガスをそれぞれ供給し、反応器中のガスを循環させながら反応させることにより、穏和に反応を進行させることが出来る七フッ化ヨウ素の製造方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−159505号公報
【特許文献2】特開2006−265057号公報
【特許文献3】特開2009−23896号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Walter C. Schumb、外1名、「Ind. Eng. Chem.」、1950、42 (7)、 pp 1383−1386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の発明では、ヨウ素とフッ素を一段の反応で七フッ化ヨウ素を形成させることが可能であったが、その収率にはまだ改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、反応器内でフッ素ガスとヨウ素ガスを反応させることによって一段の反応で七フッ化ヨウ素ガスを製造する方法において、ヨウ素を基準とした七フッ化ヨウ素の収率を向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、フッ素ガスとヨウ素ガスを、金属フッ化物の存在下で反応させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、NiF、FeF、及びCoFの中から、少なくとも1種類以上を含有する充填物を内部に有する反応器に、モル比(F/I)が5以上となるようにフッ素ガスとヨウ素ガスを供給して反応させ、前記フッ素ガスと前記ヨウ素ガスとが反応する際の前記金属フッ化物の温度が150℃以上350℃以下であることを特徴とする、七フッ化ヨウ素の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、反応器内でフッ素ガスとヨウ素ガスを反応させることによって一段の反応で七フッ化ヨウ素ガスを製造する方法において、ヨウ素を基準とした七フッ化ヨウ素の収率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、反応器内でフッ素ガスとヨウ素ガスとを反応させることにより七フッ化ヨウ素を製造する七フッ化ヨウ素の製造方法において、前記反応器は、金属フッ化物を含有する充填物を内部に有し、前記充填物の存在下でフッ素ガスとヨウ素ガスとを反応させることを特徴とする。
【0015】
本発明で使用される充填物に含有する金属フッ化物として、金属をフッ素化したものであれば特に限定されない。例えば、NiF、FeF、CoF、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaFなどが挙げられるが、安価且つ収率向上の寄与が大きいことを考慮すると、遷移金属のフッ化物であるNiF、FeF、及びCoFのいずれか1種類またはこれらの混合物を含有することが好ましい。
【0016】
使用する充填物の形状は、フッ素ガスとヨウ素ガスが効率よく接触し、且つ、流通させる両原料のガスが閉塞しなければ特に限定されない。充填物は、例えば、メッシュ状の金属片をフッ素ガス、三フッ化塩素ガス、七フッ化ヨウ素ガス等によりフッ素化することにより、該金属表面に金属フッ化物が生成した形で得ることができ、又は粉体状の金属フッ化物をペレット形状に成型して得ることができる。
【0017】
また、上記金属フッ化物は、フッ素ガスとヨウ素ガスの反応に用いる反応器の材質として用いることができる。この場合、本発明の効果を得るためには、該反応器にさらに上記充填物を充填する必要がある。
【0018】
上記充填物を充填する反応器の材質として、上記金属フッ化物の他に、ニッケル、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、モネル(登録商標)、アルミニウム、アルミナ、ステンレス鋼等も使用できるが、反応器の温度が200℃超となる場合、耐腐食性を考慮すると、ニッケル、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、モネル(登録商標)、又はアルミナが好ましい。なお、インコネル(登録商標)は、ニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデンなどを加えた合金である。ハステロイ(登録商標)は、ニッケルをベースとし、モリブデンやクロムを加えた合金である。モネルは、ニッケルをベースとし、銅を加えた合金である。
【0019】
反応器の形状としては、充填物を充填することができ、充填物を充填した状態でガスを流通又は封入することができる空洞を有し、且つ、上記材質で組成されていれば、特に限定されず、例えば、管を使用することができる。管を使用する場合は、内部が粗面であると、ガスの滞留、圧力損失の増大、又は局所的な反応等が生じ易くなり効率が低下する恐れがあるので、内部が平滑な管、例えば、光輝焼鈍管、が好ましい。
【0020】
反応器の方式は、フッ素ガスとヨウ素ガスが充填物と接触できれば、特に限定されず、例えば、流通式、及び、密閉式を使用できる。流通式では、フッ素ガスとヨウ素ガスを同時に反応器に導入する必要がある。密閉式では、フッ素ガスとヨウ素ガスを予め混合したガスを反応器に導入してもよいし、それぞれを個別に反応器に導入してもよい。それぞれ個別に導入する場合、導入の順番は特に限定されず、フッ素ガスとヨウ素ガスを同時に、または、何れか一方を先に導入してもよい。いずれの方式においても、フッ素ガス及びヨウ素ガスと充填物との効率的な接触を考慮すると、フッ素ガスとヨウ素ガスを混合したガスを反応器に導入する方法が好ましい。
【0021】
フッ素ガスとヨウ素ガスが接触するときに、フッ素、ヨウ素、五フッ化ヨウ素及び七フッ化ヨウ素と反応しない不活性ガスが存在していても特に問題はなく、不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス、フッ化水素ガス等があるが、経済性を考慮すると窒素ガスが好ましい。不活性ガスで希釈した状態で、フッ素ガスとヨウ素ガスの反応熱を、不活性ガスを通じて逃がすことができ、充填物や反応器の破損や反応の暴走を防ぐことができる。効率的に熱を逃がすために、不活性ガスの割合は、ガス全体の10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることが好ましい。一方で、不活性ガスの割合が高いほどより安全に装置を運転することができるが、フッ素ガスやヨウ素ガスの割合が減り、七フッ化ヨウ素の生産量も減ってしまう。
【0022】
フッ素ガスとヨウ素ガスを反応させる時の充填物の温度は、150℃以上350℃以下が好ましい。150℃未満ではフッ素とヨウ素の反応速度が遅くなる恐れがあり、350℃超では生成した七フッ化ヨウ素がフッ素、五フッ化ヨウ素、ヨウ素に分解する逆反応が進行する恐れがある。特に、200℃以上330℃以下が好ましい。また、充填物を充填した状態で反応器を電気ヒータや蒸気などで加熱することにより、充填物を所望の温度にできる。
【0023】
反応器に導入されたガスの反応器中の滞在時間として、逆反応が顕著とならない反応温度であれば、滞在時間の増加とともに収率は増加するが、生産性は滞在時間の増加により低下する恐れがある。したがって、滞在時間は、所望の収率と生産性を考慮し、種々選択できる。生産性を考慮する場合、滞在時間は短い方が望まれる。例えば、フッ素とヨウ素のモル比(F/I)が7以上でフッ素ガスとヨウ素ガスを反応させる場合、金属フッ化物の温度が200℃以上330℃以下であれば、少なくとも滞在時間は10秒以上あれば、収率は50%以上得ることができる。
【0024】
反応器に供給されたフッ素ガスとヨウ素ガスのモル比、すなわち、上記流通式の場合のフッ素ガスとヨウ素ガスの導入時の流量比や、上記密閉式の場合のフッ素ガスとヨウ素ガスの混合比は、いずれもF/Iで5以上が好ましく、7以上がより好ましい。特に、該モル比が10以上では、滞在時間10秒以上で収率90%以上を得ることができるが、該モル比を45以上とすると、収率の向上に対し、フッ素ガスの使用量増加による経済性の低下が顕著になるため好ましくない。また、該モル比が5未満では、五フッ化ヨウ素が主な生成物となり、七フッ化ヨウ素を得ることが困難である。また該モル比が5以上7未満では、七フッ化ヨウ素を製造することはできるが未反応のヨウ素及び中間生成物の五フッ化ヨウ素が増加するため七フッ化ヨウ素の収率が低下する恐れがある。
【0025】
使用するフッ素ガスとヨウ素ガスの純度としては、本発明を実施する上で特に制約されることは無く、フッ素ガスとヨウ素ガスの濃度が前記モル比の範囲であれば良い。但し、使用するフッ素ガス及び、ヨウ素ガスの純度は、生成する七フッ化ヨウ素ガスの純度に影響するため、例えば99%以上の七フッ化ヨウ素ガスを得るためには、純度99%以上のフッ素ガス及び、ヨウ素ガスを用いることが好ましい。
【0026】
ヨウ素ガスの供給方法として、例えば、容器にヨウ素を充填し、該容器を加熱することでヨウ素を融解し、融解したヨウ素中に不活性ガスをバブリングすることでヨウ素ガスを供給する方法がある。容器としては、例えば、ニッケル、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、モネル(登録商標)、アルミニウム、アルミナ、ステンレス鋼等製の容器が好ましい。容器を加熱する温度としては、ヨウ素の融点(115℃)以上が好ましい。バブリングする不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス等が好ましい。
【0027】
反応器への充填物の充填方法として、フッ素ガス及びヨウ素ガスと充填物とが効率よく接触し、且つ、流通するガスが閉塞しなければ特に限定されない。
【0028】
反応時の反応器内の圧力は、フッ素、ヨウ素、五フッ化ヨウ素、七フッ化ヨウ素に毒性があるために、漏洩を防止するために大気圧以下が好ましく、経済性を考慮すると40kPa(絶対圧)以上が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されない。
【0030】
[実施例1]
粉末のNiF(純度99%、Apollo Scientific Limited製)を加圧成型によりペレット状(4mm×4mm×2mm)にした金属フッ化物を総量で48g(0.5モル)を、反応器として用いる電気ヒータ及び圧力計を備えたニッケル製の光輝焼鈍管(内径22.1mm、長さ300mm)に充填した。該電気ヒータにより該光輝焼鈍管を加熱することにより充填物の温度を270℃とした。この温度で、Fガスと窒素ガスで26.7体積%に希釈したIガスの混合ガス(モル比(F/I=10)(混合ガスの組成:F濃度72.7体積%、I濃度7.3体積%、N濃度20.0体積%)を該光輝焼鈍管の両端の一方(入口)から導入し、他方(出口)から排出させた。この時、該光輝焼鈍管内の圧力を101kPa(絶対圧)とし、該混合ガスを滞在時間が10秒となる流量(686cm/min)で1時間流通させた。また、該混合ガスの流通時に、該反応器出口のガスを一部抜き出して、IFとIFの組成をFT−IR(株式会社島津製作所製Prestige21)で、IとFの組成をUV−Vis(株式会社日立ハイテクサイエンス製U−2810)で速やかに分析した。組成分析結果に基づき、Iの供給量を基準としたIFの理論捕集量に対する収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は85%だった。
【0031】
[実施例2]
金属フッ化物として、粉末のFeF(Strem Chemicals製、製品番号93−2610)を加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で56g(0.5モル)を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は71%だった。
【0032】
[実施例3]
金属フッ化物として、粉末のCoF(Sigma Aldrich製、製品番号236128)を加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で48g(0.5モル)を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は53%だった。
【0033】
[実施例4]
メッシュ状(100メッシュ)に成形されたニッケル製のNiメッシュを総量で29g(0.5モル)を反応器に充填し、反応器を350℃に加熱させて圧力66.7kPa(絶対圧)、フッ素ガスを500cm/minで3時間流通させることでNiメッシュの表面にNiFを生成した。金属フッ化物として表面にNiFが生成したNiメッシュを使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は76%だった。
【0034】
[実施例5]
金属フッ化物として、粉末のNiFを加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で24g(0.25モル)と、粉末のFeFを加圧成型によりペレット状にした金属フッ化物を総量で28g(0.25モル)の混合物を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は83%だった。
【0035】
[実施例6]
金属フッ化物の温度を150℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は54%だった。
【0036】
[実施例7]
金属フッ化物の温度を200℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は65%だった。
【0037】
[実施例8]
金属フッ化物の温度を330℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は80%だった。
【0038】
[実施例9]
金属フッ化物の温度を350℃とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は64%だった。
【0039】
[実施例10]
滞在時間を20秒(流量346cm/min)とする以外は、実施例7と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は76%だった。
【0040】
[実施例11]
滞在時間を20秒(流量348cm/min)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は96%だった。
【0041】
[実施例12]
ガスとIガスの混合ガスのモル比(F/I)を5(混合ガスの組成:F濃度66.7体積%、I濃度13.3体積%、N濃度20.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は34%だった。
【0042】
[実施例13]
ガスとIガスの混合ガスのモル比(F/I)を7(混合ガスの組成:F濃度70.0体積%、I濃度10体積%、N濃度20.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は61%だった。
【0043】
[実施例14]
ガスとIガスの混合ガスのモル比(F/I)を9(混合ガスの組成:F濃度72.0体積%、I濃度8.0体積%、N濃度20.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は78%だった。
【0044】
[実施例15]
ガスとIガスの混合ガスのモル比(F/I)を14(混合ガスの組成:F濃度71.1体積%、I濃度8.9体積%、N濃度20.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は96%だった。
【0045】
[実施例16]
ガスとIガスの混合ガスのモル比(F/I)を21(混合ガスの組成:F濃度74.4体積%、I濃度3.6体積%、N濃度20.0体積%)とする以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は99%だった。
【0046】
[実施例17]
反応器として、電気ヒータと圧力計とを備え、さらに入口と出口にそれぞれ仕切弁が設置された、ニッケル製の光輝焼鈍管(内径22.1mm、長さ0.3m)を使用し、実施例1と同様に金属フッ化物を充填し、金属フッ化物を270℃に加熱した。FガスとIガスの混合ガス(モル比(F/I)=10.0(混合ガスの組成:F濃度72.7体積%、I濃度7.3体積%、N濃度20.0体積%)を圧力101kPa(絶対圧)となるように入口側の仕切弁から反応器に導入して、両側の仕切弁を閉じ密閉した。密閉してから120秒経過(滞在時間)後、反応器内のガスの一部を抜き出して実施例1とIFとIFの組成をFT−IR(株式会社島津製作所製Prestige21)で、IとFの組成をUV−Vis(株式会社日立ハイテクサイエンス製U−2810)で速やかに分析して収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は96%だった。
【0047】
[実施例18]
密閉時間を240秒にする以外は、実施例17と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は95%だった。
【0048】
[実施例19]
ガス、次いで、Fガスを、モル比(F/I)=10(混合ガスの組成:F濃度72.7体積%、I濃度7.3体積%、N濃度20.0体積%)、圧力101kPa(絶対圧)となるように仕切弁から別々に反応器に導入する以外は、実施例17と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は75%だった。
【0049】
[比較例1]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は35%だった。
【0050】
[比較例2]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例6と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は20%だった。
【0051】
[比較例3]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例11と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は38%だった。
【0052】
[比較例4]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例12と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は5%だった。
【0053】
[比較例5]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例17と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は45%だった。
【0054】
[比較例6]
反応器に金属フッ化物を充填しない以外は、実施例18と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は67%だった。
表1に上記の実施例及び比較例の結果を示す。
【0055】
[比較例7]
反応器の充填物として、粉末のα―Al(Strem Chemicals製、製品番号13−0750、純度99.5%、)を加圧成型によりペレット状にした充填物を総量で51g(0.5モル)を使用する以外は、実施例1と同様に行い、収率を算出したところ、Iを基準としたIFの収率は37%だった。
【0056】
各実施例と比較例の結果を表1にまとめた。実施例1と比較例1、実施例6と比較例2、実施例11と比較例3、実施例12と比較例4、実施例17と比較例5、実施例18と比較例6を比べると、金属フッ化物を充填することで、収率が格段に向上していることが分かる。また、実施例1と比較例1と比較例7を比べると、アルミナを充填しても収率は向上しないことが分かる。
【0057】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法は、フッ素化剤、或いは半導体の製造に用いられるエッチングガスやクリーニングガスとして、従来から用いられている七フッ化ヨウ素の効率的な製造方法として利用できる。