特許第6372394号(P6372394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372394
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20180806BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20180806BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20180806BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20180806BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180806BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01L33/50
   H01L33/56
   H01L33/58
   C09K11/00 ZZNM
   C09K11/02 Z
   H01L23/30 F
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-39142(P2015-39142)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-162850(P2016-162850A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】森村 由太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優輝
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−054995(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0293123(US,A1)
【文献】 特開2009−272634(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132232(WO,A1)
【文献】 特開2007−227791(JP,A)
【文献】 特開2008−244421(JP,A)
【文献】 特開2007−103512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を封止する封止材と、
前記封止材中に分散する、平均粒径が20nm以下である蛍光体粒子と、
前記封止材中に分散し、前記封止材中に三次元の網目構造を形成する、平均粒径が前記蛍光体粒子の平均粒径より大きい5〜40nmのシリカよりなる分散粒子と、
前記封止材中に分散し、屈折率が前記封止材よりも大きい平均粒径が100〜500nmの光散乱粒子と、
を有し、
前記蛍光体粒子は、その位置が低くなるほど濃度が高くなる高さ方向の濃度勾配を有し、
前記蛍光体粒子の平均位置が、前記光散乱粒子の平均位置よりも低い、
発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体粒子が量子ドット蛍光体粒子である、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記封止材が有機変性シリコーンである、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記分散粒子の平均粒径が前記発光素子の発光波長よりも短い、
請求項1〜のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光装置として、発光素子を封止する封止材中に、ナノ粒子である蛍光体粒子が分散した発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された発光装置によれば、蛍光体粒子の平均粒径が発光素子の発光波長と比較して十分に小さいため、蛍光体粒子による光の散乱が極めて小さく、発光素子から発せられた光の多くが直進したまま発光装置外に射出される。このため、発光装置の発光色度の出射角度依存性が大きく、色度むらが大きくなる。
【0004】
また、他の従来の発光装置として、発光素子を封止する封止材中に、ナノ粒子である蛍光体粒子と光散乱粒子が分散した発光装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に開示された発光装置によれば、ナノ粒子である蛍光体粒子による光の散乱は極めて小さいが、光散乱粒子によって、発光素子から発せられる光を散乱し、発光装置の発光色度の出射角度依存性を小さく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/093203号
【特許文献2】特開2009−272634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、発光色度の出射角度依存性が小さく、かつ蛍光体による光変換効率の高い発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[]の発光装置を提供する。
【0009】
[1]発光素子と、前記発光素子を封止する封止材と、前記封止材中に分散する、平均粒径が20nm以下である蛍光体粒子と、前記封止材中に分散し、前記封止材中に三次元の網目構造を形成する、平均粒径が前記蛍光体粒子の平均粒径より大きい5〜40nmのシリカよりなる分散粒子と、前記封止材中に分散し、屈折率が前記封止材よりも大きい平均粒径が100〜500nmの光散乱粒子と、を有し、前記蛍光体粒子は、その位置が低くなるほど濃度が高くなる高さ方向の濃度勾配を有し、前記蛍光体粒子の平均位置が、前記光散乱粒子の平均位置よりも低い、発光装置。
【0010】
[2]前記蛍光体粒子が量子ドット蛍光体粒子である、前記[1]に記載の発光装置。
【0012】
]前記封止材が有機変性シリコーンである、前記[1]又は[2]に記載の発光装置。
【0013】
]前記分散粒子の平均粒径が前記発光素子の発光波長よりも短い、前記[1]〜[]のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光色度の出射角度依存性が小さく、かつ蛍光体による光変換効率の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、第1の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。図1(b)は、発光装置1から発せられる光の出射角度と色度ずれの関係を模式的に示すグラフである。
図2図2(a)は、比較例に係る発光装置の垂直断面図である。図2(b)は、比較例に係る発光装置から発せられる光の出射角度と色度ずれの関係を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施の形態〕
(発光装置の構成)
図1(a)は、第1の実施の形態に係る発光装置1の垂直断面図である。発光装置1は、凹部15aを有するケース15と、凹部15aの底に上面が露出するようにケース15に収納された基体16と、基体16上に搭載された発光素子10と、凹部15a内に充填された、発光素子10を封止する封止材11と、封止材11中に含まれる蛍光体粒子12、光散乱粒子13、及び分散粒子14とを有する。
【0017】
ケース15は、例えば、ポリフタルアミド樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer)、PCT(Polycyclohexylene Dimethylene Terephalate)等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。ケース15は、光反射率を向上させるための、二酸化チタン等の光反射粒子を含んでもよい。
【0018】
基体16は、例えば、全体またはその表面がAg、Cu、Al等の導電材料からなるリードフレームであり、インサート成型等により、ケース15と一体に成型される。
【0019】
発光素子10は、例えば、チップ基板と、発光層及びそれを挟むクラッド層を含む結晶層とを有する、LEDやレーザーダイオード等の発光素子である。図1(a)に示される例では、発光素子10は、基体16とボンディングワイヤー17を介して接続されるフェイスアップ型の素子であるが、結晶層が下方を向いたフェイスダウン型の素子であってもよく、また、導電バンプ等のボンディングワイヤー以外の部材によって基体16に接続されてもよい。
【0020】
蛍光体粒子12は、平均粒径が20nm以下の極微小な粒子である。20nm以下の粒径は、発光素子10の発光波長や自身の蛍光波長に対して非常に小さいため、発光素子10及び他の蛍光体粒子12から発せられる光のレイリー散乱がほとんど生じない。このため、発光素子10及び他の蛍光体粒子12から発せられる光は、蛍光体粒子12によってほぼ散乱されずに直進する。
【0021】
蛍光体粒子12は、典型的には、量子ドット蛍光体と呼ばれる、粒径によってバンドギャップを調節し、蛍光色を制御することのできる蛍光体粒子である。この場合、例えば、赤色の蛍光を発するためにはCdSe、(Cd,Zn)Se、(Cd,Te)Se等が材料として用いられ、緑色又は青色の蛍光を発するためにはZnSe、CdSe等が材料として用いられる。蛍光体粒子12の典型的な平均粒径は、例えば、2〜10nmである。
【0022】
光散乱粒子13は、平均粒径が蛍光体粒子12の平均粒径よりも大きく、屈折率が封止材11よりも大きい。このため、発光素子10及び蛍光体粒子12から発せられる光を散乱させることができる。
【0023】
例えば、封止材11が1.45程度の屈折率を有するシリコーン樹脂からなる場合は、光散乱粒子13の材料として、屈折率が1.45よりも大きい材料である、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al)等が用いられる。光散乱粒子13の典型的な平均粒径は、例えば、100〜500nmである。
【0024】
図2(a)は、比較例としての、光散乱粒子を含まず、ナノ粒子である蛍光体粒子22のみを含む発光装置2の垂直断面図である(分散粒子の図示は省略する)。上述のように、蛍光体粒子22による光の散乱はほとんど生じないため、発光素子10から放射状に発せられた光は、直進したまま発光装置2から射出される。このため、発光装置2の発光色度の出射角度依存性が高くなる。
【0025】
図2(b)は、比較例に係る発光装置2から発せられる光の出射角度と色度ずれの関係を模式的に示すグラフである。図2(b)は、発光素子10の中心を通る鉛直方向を基準とする出射角度が大きくなるほど、出射角度が0°のときの色度からのずれΔCx、Cyが大きくなることを示している。
【0026】
一方、本実施の形態に係る発光装置1においては、光散乱粒子13によって光を散乱させることができるため、発光色度の出射角度依存性を小さく抑えることができる。
【0027】
図1(b)は、発光装置1から発せられる光の出射角度と色度ずれの関係を模式的に示すグラフである。図1(b)は、出射角度が大きくなったときの、色度ずれΔCx、Cyの変化が小さいことを示している。
【0028】
分散粒子14は、光散乱粒子13よりも光散乱強度が小さい。分散粒子14の典型的な平均粒径は、例えば、5〜40nmであるが、レイリー散乱をほとんど起こさない20nm以下であることが好ましい。分散粒子14は、例えば、アエロジル(登録商標)等のシリカ(SiO)の粒子である。
【0029】
分散粒子14は、封止材11中で三次元の網目構造を形成する。この網目構造の網目の大きさは、蛍光体粒子12が通り抜け易く、光散乱粒子13が通り抜け難い大きさである。このため、分散粒子14によって光散乱粒子13の沈降が抑制され、封止材11中の光散乱粒子13の濃度分布の均一性が高くなる。
【0030】
一方、蛍光体粒子12は、分散粒子14の網目構造を通り抜けて沈下するため、その位置が低くなるほど濃度が高くなる高さ方向の濃度勾配を有する。すなわち、ケース15の凹部15aの底に近いほど蛍光体粒子12の濃度が高くなる。
【0031】
このため、蛍光体粒子12の平均位置が、光散乱粒子13の平均位置よりも低く、発光素子10の近傍の領域では蛍光体粒子12の濃度が比較的高い。このような構成においては、蛍光体粒子12が封止材11中に均一に分散している構成と比較して、発光素子10から発せられた後、光散乱粒子13によって散乱されるよりも前に、蛍光体粒子12に直接吸収され、効率よく波長変換される光の割合が高い。
【0032】
発光素子10の近傍の領域において蛍光体粒子12に波長変換された光は、封止材11の上層まで分布する光散乱粒子13によって散乱する。
【0033】
封止材11は、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の透明樹脂からなる。具体的には、例えば、メチルシリコーン、フェニルシリコーン、有機変性シリコーンからなり、特に、有機変性シリコーンからなることが好ましい。
【0034】
有機変性シリコーンは粘度が低いため、分散粒子14の添加量の調整より封止材11の粘度を制御することが容易であり、それによって封止材11中の蛍光体粒子12及び光散乱粒子13の配置を容易に制御できる。
【0035】
封止材11の形態は、ケース15の凹部15aのような凹部に充填される形態に限られない。例えば、基板上に搭載された発光素子10を覆うドーム状の形態であってもよい。
【0036】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、極微小の蛍光体粒子を用いる場合であっても、光散乱粒子によって光を散乱させ、発光装置の発光色度の出射角度依存性を小さく抑えることができる。
【0037】
また、蛍光体粒子と光散乱粒子の平均粒径を調整し、分散粒子の形成する三次元網目構造に対する挙動を異ならせることにより、それぞれの濃度分布を制御し、蛍光体粒子による波長変換効率を向上させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0039】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0040】
1 発光装置
10 発光素子
11 封止材
12 蛍光体粒子
13 光散乱粒子
14 分散粒子
図1
図2