(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック部材は、前記ロック状態で前記ロック部が前記伝達部材に近づく方向に付勢されており、前記係止が解除されることで動作するものであることを特徴とする請求項1記載のドロワ装置。
前記ロック部材は、前記係止が解除された状態では、前記伝達部材が前記モータの回転によって前記初期状態から前記噛合状態に移行する力よりも強い力で、前記伝達ギヤが前記ギヤ部から離間する方向に該伝達部材を押すものであることを特徴とする請求項1記載のドロワ装置。
前記ギヤ部は、前記噛合状態で前記伝達ギヤが一方向に回転し続けると、該伝達ギヤとの噛合が解除されるものであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のドロワ装置。
前記ロック状態において、前記伝達部材に近づく方向に前記ロック部を付勢する付勢部材を備えたことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項記載のドロワ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、モータを用いた従来のドロワ装置では、ロック状態のロック部材に対応する円筒カムの位置と、ロック状態が解除された状態のロック部材に対応する円筒カムの位置それぞれを、センサで検出して位置制御を行い、さらに円筒カムをそれぞれの位置に正確に移動させるために、逆電流をかけたりするモータの停止制御(ブレーキ制御)を行う必要がある。さらに、引出しの係合部とロック部材との係合を解除する動作の後には、引出しの係合部を受け入れるために、モータの逆転動作を行い、ロック部材の位置が引出しの係合部に対応するように円筒カムを初期状態に移動させなければならない。この初期状態への移動においても、円筒カムの位置をセンサで検出して位置制御を行い、さらにモータの停止制御を行う必要がある。これらのため、モータを用いた従来のドロワ装置では、位置制御やモータの停止制御をするためのセンサや制御基板等が必要になり、コストアップにつながっている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、位置制御やモータの停止制御をすることなく引出しのロックとその解除ができるドロワ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決する本発明のドロワ装置は、
収納位置において進出方向に付勢された引出しと、
係止部およびギヤ部を有する係止部材と、
モータと、
初期状態では前記ギヤ部と離間した位置関係にあり噛合状態では該ギヤ部に噛合し前記モータの回転力を受けて回転する伝達ギヤを有し、該モータの回転によって該初期状態から該噛合状態に移行する伝達部材と、
ロック状態では前記係止部に係止されているロック部、および該ロック状態では前記引出しと係合し該引出しを前記収納位置に引き留めておく引留部を有するロック部材とを備え、
前記ロック部材は、前記噛合状態で前記モータが一方向に回転することで、前記係止部による係止が解除され、該係止が解除されることで動作するものであり、
前記引出しは、前記ロック部材が動作することで前記引留部との係合が解除され、前記収納位置から進出するものであり、
前記伝達部材は、前記ロック部材が動作することで該ロック部材に押されるものであり、
前記伝達ギヤは、前記ロック部材に前記伝達部材が押されることで、前記噛合状態から前記初期状態に移行するものであり、
前記引留部は、前記収納位置から進出した前記引出しが該収納位置に押し戻されることで、該引出しと係合するものであり、
前記係止部は、前記収納位置から進出した前記引出しが該収納位置に押し戻されることで、前記ロック部に係止するものであることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明のドロワ装置は、前記係止が解除されて移動してきた前記ロック部材を初期状態で停止させる第1ストッパ部を備えたものであってもよい。この前記ロック部材の初期状態とは、例えばストッパフレーム等の係合部を、該ロック部材が受け入れる状態、すなわち、前記引留部が、該収納位置に押し戻される該引出しの係合部に係合できる状態であることが好ましい。また、本発明のドロワ装置は、前記ロック部材に押されることで前記噛合状態から移行してきた前記伝達部材を、前記初期状態で停止させる第2ストッパを備えたものであってもよい。なお、前記第2ストッパは、前記第1ストッパの機能を兼ねるものであってもよい。
【0012】
本発明のドロワ装置によれば、前記噛合状態で前記モータが一方向に回転することで、前記係止部と前記ロック部との係止が解除される。また、前記収納位置から進出した前記引出しが該収納位置に押し戻されることで、前記係止部は、前記ロック部に係止する。このため、前記係止が解除される状態においても、前記係止部が前記ロック部に係止する状態においても、該係止部の位置および該ロック部の位置を制御する必要はない。すなわち、前記係止部も前記ロック部も前記モータの逆転動作や停止制御、さらにセンサで検出して位置制御する必要はない。
【0013】
また、前記係止が解除されて動作する前記ロック部材に前記伝達部材が押され、前記伝達ギヤは、前記噛合状態から前記初期状態に移行する。すなわち、前記係止が解除されると前記噛合状態ではなくなり、前記モータの回転力が前記ギヤ部に伝達されなくなるため、該モータの停止制御をする必要もない。
【0014】
さらに、前記係止が解除された解除状態では、ギヤ部は伝達ギヤと離間された状態であるため、前記引出しが該収納位置に押し戻されることでロック部が回動し係止部と係止する。よって、係止部を初期状態(係止準備状態)に移動させるための前記モータの逆転動作やセンサを用いた位置制御、さらには該モータの停止制御も不要になる。
【0015】
本発明のドロワ装置において、前記ロック部材は、前記ロック状態では前記ロック部が前記伝達部材に近づく方向に付勢されており、前記係止が解除されることで動作するものであってもよい。
【0016】
こうすることで、前記ロック部材を動作させる構成として、バネ等の簡易な部材を採用することも可能になる。
【0017】
さらに、本発明のドロワ装置において、前記ロック部材は、前記係止が解除された状態では、前記伝達部材が前記モータの回転によって前記初期状態から前記噛合状態に移行する力よりも強い力で、前記伝達ギヤが前記ギヤ部から離間する方向に該伝達部材を押すものであってもよい。
【0018】
こうすることで、前記係止が解除された状態では、前記モータが回転しても、前記伝達部材が前記噛合状態に移行することを阻止することができる。
【0019】
また、本発明のドロワ装置において、前記伝達ギヤは、遊星ギヤであることが好ましい。
【0020】
遊星ギヤを前記伝達ギヤに採用することで、前記モータの回転によって前記伝達部材を前記初期状態から前記噛合状態に移行させ、前記ギヤ部に噛合させた状態で該ギヤ部に該回転力を伝達することができる。
【0021】
さらに、本発明のドロワ装置において、前記ギヤ部は、前記噛合状態で前記伝達ギヤが一方向に回転し続けると、該伝達ギヤとの噛合が解除されるものであってもよい。
【0022】
ここで、前記ギヤ部は、ギヤ歯が円弧状に並んだものであってもよい。
【0023】
例えば、ユーザが引出しを押さえていた場合や、鍵による強制ロックが働いていた場合などには前記ロック部材が動作せず、前記伝達部材を前記噛合状態から前記初期状態に移行させることができない場合がある。前記伝達部材が前記噛合状態のまま、前記伝達ギヤが一方向に回転し続け、前記係止部材を必要以上に、例えば該係止部材が回転できる範囲を超えて回転させてしまうと、前記モータがロックしてしまう虞がある。ここで、前記噛合状態で前記伝達ギヤが一方向に回転し続けると、前記ギヤ部と該伝達ギヤとの噛合が解除される態様を採用すれば、前記伝達部材が前記初期状態に移行しない場合であっても前記モータのロックを防止することができる。
【0024】
また、本発明のドロワ装置において、前記ロック部は、回動することで前記伝達部材に向かって移動するものであってもよい。
【0025】
さらに、本発明のドロワ装置において、前記ロック状態において、前記伝達部材に近づく方向に前記ロック部を付勢する付勢部材を備えたものであってもよい。
【0026】
こうすることで、前記係止が解除されると、前記付勢部材の付勢力によって前記ロック部材が前記伝達部材を押す動作がなされ、付勢部材といった簡易な部材を用いて前記伝達ギヤを前記噛合状態から前記初期状態へ移行させることができる。
【0027】
また、前記付勢部材は、前記ロック状態において、前記ロック部に向けて前記係止部を付勢する機能を兼ねてもよい。
【0028】
こうすることで、前記付勢部材によって前記ロック部と前記係止部の双方を付勢し、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のドロワ装置によれば、位置制御やモータの停止制御をすることなく引出しのロックとその解除ができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態であるドロワ装置は、POSシステム等のキャッシュドロワや、キャッシュレジスタに搭載されたキャッシュドロワ、あるいはプリンタと一体化されたキャッシュドロワ等に採用されるものである。本実施形態では、プリンタと一体化された態様を例に挙げて説明する。なお、本発明は、キャッシュドロワに限らず、家具やキッチン等に備えられるドロワ装置にも適用することができる。
【0032】
図1は、ドロワ装置としてのキャッシュドロワ10を備えたPOS用機器9を示す図である。このPOS用機器9は、不図示のPOS端末と接続され、このPOS端末でなされる決済処理に基づき、レシート発行や金銭処理を行うものである。POS用機器9は、筐体90に内蔵された不図示のプリンタと、筐体90に引出し2が収容されたキャッシュドロワ10とを備えている。筐体90に内蔵された不図示のプリンタの前側にはプリンタカバー91が配置され、引出し2は、前側部分に配置された前板24を有している。これらプリンタカバー91の前面と、前板24の前面とは、デザイン上、左右方向に面一状に揃うことが望ましい。このため、本実施形態では、筐体90に収容された引出し2の前後方向の位置を調整する構成が設けられている。この構成の詳しい説明は後述する。キャッシュドロワ10の引出し2は、図では左斜め下方に進出するものであり、この引出し2が進出する左斜め下方に向かう方向が進出方向に相当する。また、POS用機器9およびキャッシュドロワ10の左斜め下方が前側になり、右斜め上方が後側になる。以下の説明では、POS用機器9およびキャッシュドロワ10を前側から見た場合の右側を単に右側と称し、POS用機器9およびキャッシュドロワ10を前側から見た場合の左側を単に左側と称することがある。また、前側と後側を結ぶ方向を前後方向と称し、左側と右側を結ぶ方向を左右方向と称して説明することがある。なお、POS用機器9と不図示のPOS端末は、例えばUSBケーブルで接続され、POS用機器9からPOS端末にUSBバス給電する態様としてもよいし、POS端末からPOS用機器9にUSBバス給電する態様を採用してもよい。
【0033】
図2は、
図1に示すPOS用機器を分解した状態を示す斜視図である。
図2では、筐体についてはそのベース部90aのみを示し、筐体に内蔵されるプリンタも省略している。また、
図2は、POS用機器9を右斜め後側から見た図であり、
図2では、左斜め上方が前側になり、右斜め下方が後側になる。
【0034】
図2に示すように、キャッシュドロワ10は、引出し2と、ロックユニット3を備えている。引出し2は、その後側の端部部分に左右一対の摺動部材21,21を有している。ベース部90aは、プリンタ側ベース部91aとドロワ側ベース部92aを有しており、ドロワ側ベース部92aには、摺動部材21,21に対応する、左右一対のレール部材921,921が設けられている。
図2では、引出し2は、左斜め上方に向けて進出するものであり、摺動部材21,21が、レール部材921,921に案内されて進出方向とは反対方向に移動し、
図1に示すように筐体90内に収納される。また、引出し2は、その後側の部分に、ストッパフレーム22が固定される取付部27を有している。
図2では、引出し2の取付部27が設けられた部分を四角で囲んで拡大して示し、ストッパフレーム22を円で囲んで拡大して示している。取付部27には、上方に突出した一対のボス27a,27aが設けられ、右側の端部に切込27bが形成されている。ストッパフレーム22は、左右方向に延在した固定部221と、この固定部221の右側の端部から垂下した係合部222とを有している。固定部221には、一対のボス27a,27aをそれぞれ挿通する一対の挿通孔221aが形成され、係合部222には、略矩形状に開口した係合孔222aが形成されている。ストッパフレーム22は、一対の挿通孔221aにそれぞれボス27aが挿通した状態で固定部221が取付部27に載置され、係合部222が、切込27bに挿入されて下方に突出している。この状態で一対のボス27a,27aそれぞれにネジ23が取り付けられ、取り付けられたネジ23,23に押さえられることで取付部27にストッパフレーム2
2が固定されている。後述するように、取付部27の切込27bから下方に突出した係合部222には、ロックフレーム7(
図3等参照)が係合する。
【0035】
ドロワ側ベース部92aの後端側部分には、その後端側の端部が取り付けられた圧縮コイルばね923が前後方向に延在する姿勢で設けられている。ドロワ側ベース部92aの後端側部分には、収容部922が設けられており、この収容部922にロックユニット3が収容される。引出し2は、
図1示す筐体90内に収納された収納位置では、圧縮コイルばね923によって進出方向(前方)に付勢された状態で、ロックユニット3のロックフレーム7(
図3等参照)がストッパフレーム22に係合することで収納位置に引留められる。
【0036】
次いで、
図3および
図4を用いて、ロックユニット3を詳細に説明する。
図3(a)は、
図2に示すロックユニット3の平面図であり、
図3(b)および同図(c)は、同図(a)に示すロックユニット3の斜視図である。
図3(b)では、ロックユニット3を右斜め後方から見た様子を示しており、同図(c)では、ロックユニット3を左斜め前方から見た様子を示している。なお、
図3では、引出しのストッパフレーム22全体あるいはストッパフレーム22の一部である係合部222を用い、係合部222にロックフレーム7が係合したロック状態を示している。
図4は、
図3(a)に示すロックユニット3を分解して示す平面図である。
図4では、ベースフレーム4を、天板41と底板43に分断して示し、側板42は省略している。また、
図4でも、ストッパフレーム22を示している。
【0037】
図3および
図4に示すように、ロックユニット3は、ベースフレーム4、フックギヤ5、遊星ギヤユニット6、ロックフレーム7、DCモータ81および引張コイルばね82を有している。DCモータ81の出力軸にはウォームギヤ811が設けられている。
【0038】
ベースフレーム4は、外形形状が略矩形状の底板43と、この底板43よりも左右方向の寸法が小さい天板41と、
図3(b)および
図3(c)に示すように、底板43の左側の端部と天板41の左側の端部とを接続する側板42とを有している。
図4に示すように、底板43には、挿通孔43a,挿通孔43b、および後端側から切欠かれた切欠部43cが形成されている。また、
図3および
図4に示すように、底板43には、前側の端部から上方に折曲した、第2ストッパ部431とモータ取付片432が設けられている。第2ストッパ部431は、遊星ギヤユニット6の後述する回転を停止させるものである。モータ取付片432にはDCモータ81が取り付けられている。
【0039】
図4に示すように、天板41には、底板43の挿通孔43aと上下方向に対応した位置に挿通孔41aが形成され、底板43の挿通孔43bと上下方向に対応した位置には挿通孔41bが形成されている。また、
図3および
図4に示すように、天板41は、前端側から切欠かれた切欠部41cを有し、また下方に折曲した第1ストッパ部411が設けられている。切欠部41cは、ロック状態において、係合部222との干渉を避けるために形成されている。第1ストッパ部411は、ロックフレーム7の後述する回転を停止させるものである。
【0040】
図3に示すように、底板43、側板42および天板41によって囲まれた領域に、フックギヤ5、遊星ギヤユニット6およびロックフレーム7が配置されている。
【0041】
図4に示すように、フックギヤ5は、上下方向に延在した軸部材51とフックギヤ本体52を有している。フックギヤ本体52は、鉤状のフック部521と、円弧状にギヤ歯が複数(本実施形態では5つ)並んだギヤ部522と、引張コイルばね82の一端部821が取り付けられる突起部523と、底板43の切欠部43cに挿入され先端部分が底板43の下方に位置するガイド部524を有している。軸部材51は、底板43に形成された挿通孔43aと、天板41に形成された挿通孔41aとに挿通され、
図3に示すように、軸部材51の、天板41上に突出した部分にC字状の抜止ワッシャ83が取り付けられている。これにより、フックギヤ本体52は、ベースフレーム4に対して軸部材51を軸に回転自在に取り付けられている。フックギヤ5は、係止部材の一例に相当し、フックギヤ5のフック部521は、係止部の一例に相当する。
【0042】
図3(c)に示すように、天板41と底板43との間には、上下方向に延在したシャフト85が設けられ、このシャフト85の下端部分が遊星ギヤユニット6に挿通され、シャフト85の上端部分がロックフレーム7に挿通されている。シャフト85には、天板41の上方からネジ84が締められ、底板43の下方からも不図示のネジが締めれている。これによって、天板41と底板43との間に、ロックフレーム7、シャフト85および遊星ギヤユニット6が取り付けられている。
【0043】
図4に示すように、遊星ギヤユニット6は、ベース部材63と、二段太陽ギヤ61と、二段遊星ギヤ62を有している。ベース部材63は、シャフト85を挿通する挿通孔を有しており、二段太陽ギヤ61に挿通されたシャフト85が、ベース部材63の挿通孔に挿通されている。また、ベース部材63には、ロックフレーム7と当接する当接片631を有している。二段太陽ギヤ61は、小径の駆動ギヤ612と、この駆動ギヤ612の上側に位置する大径のウォームホイール611を有している。ウォームホイール611の上端部分には、C字状の抜止ワッシャ86が取り付けられている。これにより、二段太陽ギヤ61およびベース部材63は、ベースフレーム4に対してシャフト85を軸に回転自在に取り付けられている。
【0044】
二段遊星ギヤ62は、大径の大径遊星ギヤ621と、この大径遊星ギヤ621の上側に位置する小径の小径遊星ギヤ622を有し、ピン87を軸に回転自在にベース部材63に取り付けられている。また、二段遊星ギヤ62とベース部材63との間に不図示のバネが取り付けられている。二段遊星ギヤ62は、不図示のバネを押圧した状態でC字状の抜止ワッシャ88が取り付けられている。これにより、二段遊星ギヤ62がピン87を軸に回転する際に不図示のバネとの間で摩擦力が発生し、遊星ギヤユニット6とベース部材63をシャフト85を軸に回転できるための一定のトルクが生じるように設定されている。さらに、二段遊星ギヤ62は、シャフト85を中心に回動する。すなわち、二段遊星ギヤ62は、ピン87を軸に自転し、さらにシャフト85を軸にいわゆる公転するものである。
【0045】
図3(b)に示すように、二段太陽ギヤ61のウォームホイール611は、DCモータ81のウォームギヤ811に噛合しており、DCモータ81の回転力が二段太陽ギヤに伝達される。
図4に示すように、二段太陽ギヤ61の駆動ギヤ612は、二段遊星ギヤ62の大径遊星ギヤ621に噛合しており、DCモータ81の回転力が大径遊星ギヤ621に伝達される。前述したように、二段遊星ギヤ62が回転する際には不図示のバネとの間に所定の摩擦力が生じるため、この摩擦力によって二段遊星ギヤ62はピン87を軸に自転することなくシャフト85を軸に公転するとともにベース部材63が回転し、小径遊星ギヤ622がフックギヤ5のギヤ部522に噛合する(
図5(a−2)参照)。小径遊星ギヤ622がフックギヤ5のギヤ部522に噛合する噛合状態になると、DCモータ81の回転力が伝達されて小径遊星ギヤ622がピン87を軸に回転し、これによってフックギヤ5はDCモータ81の回転力を受けて軸部材51を軸に回転する。すなわち、小径遊星ギヤ622は、伝達ギヤの一例に相当し、遊星ギヤユニット6は、伝達部材の一例に相当する。
【0046】
ロックフレーム7は、薄板状のものであり、
図4に示すように、シャフト85の上端部分85aが挿通される挿通孔7aを有している。ロックフレーム7は、シャフト85を軸に回転するものであり、ロック状態においてフックギヤ5のフック部521が係止するロック部71と(
図5(b−1)参照)、
図3に示すように同じくロック状態においてストッパフレーム22の係合部222と係合する引留部72を有している。
図4では、ロック状態におけるロックフレーム7の姿勢を示しており、引留部72は、ロック状態では左右方向と略平行に延在した係合面72aを有している。
図3(a)に示すように、ロック状態では、係合面72aが、係合部222の係合孔222aに係合する。これにより、引出し2は、
図1に示す収納位置に引き留められる。
【0047】
本実施形態では、
図1を用いて前述したように、プリンタカバー91の前面と、前板24の前面とを、左右方向に面一状に揃えるための構成を有しており、この構成について
図4を用いて説明する。
図4では、ストッパフレーム22と、このストッパフレーム22を固定する取付部27(
図2参照)のうちボス27aのみを示すとともに、最も後側に位置する状態のストッパフレーム22を実線で示し、最も前側に位置する状態のストッパフレーム22を二点鎖線で示している。
図4において両矢印で示すように、ストッパフレーム22の一対の挿通孔221aそれぞれは、前後方向に対して傾斜する方向に長い長孔で形成されている。このため、ボス27aが、一対の挿通孔221a,221aそれぞれの最も前側(図では左斜め下方)に位置する状態でストッパフレーム22をネジ23(
図2参照)で押さえて固定すれば、ストッパフレーム22は最も後側に位置する状態になる。一方、ボス27aが、一対の挿通孔221a,221aそれぞれの最も後側(図では右斜め上方)に位置する状態でストッパフレーム22をネジ23(
図2参照)で押さえて固定すれば、ストッパフレーム22は最も前側に位置する状態になる。ストッパフレーム22は、最も後側に位置する状態と最も前側に位置する状態との間Cの範囲で前後方向の位置を調整することができる。
【0048】
図3(a)に示すように、ロック状態におけるロックフレーム7の係合面72aは、一定の位置で左右方向と略平行に延在した状態になるため、この係合面72aに係合するストッパフレーム22の位置を前後方向に調整することで、引出し2の前板24の前後方向の位置も調整することができる。これにより、プリンタカバー91の前面と、前板24の前面とを、左右方向に面一状に揃える調整が可能になる。ここで、挿通孔221aを、前後方向に長い長孔で構成することもできる。ただし、挿通孔221aを前後方向に長い長孔とすると、引出し2に前方への荷重がかかった場合にネジ23の固定が弛みやすく、ロックフレーム7が不用意に動いて引出し2のロック状態が不安定になってしまう場合がある。本実施形態のように、前後方向に対して傾斜した方向に延在した長孔とすれば、引出し2に前方への荷重がかかった場合に、ネジ23の固定の弛みを抑えることができる。
【0049】
また、ロックフレーム7は、反時計回りに回転した際に、天板41の第1ストッパ部411に当接する当接部73と、下方に折曲した取付片74を有している。この取付片74は、引張コイルばね82の他端部822が取り付けられるものである。引張コイルばね82は、一端部821がフックギヤ5の突起部523に取り付けられ、他端部822がロックフレーム7の取付片74に取り付けられている(
図5(b−1)等参照)。この引張コイルばね82により、フックギヤ5とロックフレーム7は、共に反時計回りに回転する方向に付勢されている。引張コイルばね82の付勢力は、DCモータ81の回転によって二段遊星ギヤ62を公転させる力よりも大きくなるように設定され、ロック状態では、ロック部71が、遊星ギヤユニット6に近づく方向に付勢されている。
【0050】
図5は、
図3(a)に示すロック状態のロックユニット3において、ロック状態が解除される様子を段階的に示す図であり、
図6は、
図5に示す、ロック状態が解除される様子の続きを段階的に示す図である。
図5および
図6では、ロックユニット3の各構成要素の動作を示すため、左側の(a)では、天板41、ロックフレーム7および引張コイルばね82を省略し、フックギヤ5と遊星ギヤユニット6の動作を示している。また、(a)の右側に示す(b)では、(a)に対してロックフレーム7、引張コイルばね82およびストッパフレームの係合部222を追加し、フックギヤ5、ロックフレーム7および係合部222の動作を示している。
図6(c−5)では、さらに天板41を追加し、ロックフレーム7と天板41との当接状態を示している。
【0051】
図5(a−1)および同図(b−1)では、
図3(a)に示すロックユニット3と同様に、ロック状態のロックユニット3を示している。また、遊星ギヤユニット6は初期状態に位置している。
図5(a−1)に示すように、初期状態の遊星ギヤユニット6は、ベース部材63が底板43の第2ストッパ部431に当接し、小径遊星ギヤ622がフックギヤ5のギヤ部522と離間している。また、
図5(b−1)に示すように、ロック状態では、ロックフレーム7のロック部71にフックギヤ5のフック部521が係止した状態で、引張コイルばね82によって、フックギヤ5が軸部材51を軸に反時計回りに回転する方向に付勢され、ロックフレーム7がシャフト85を軸に反時計回りに回転する方向に付勢されている。これらにより、フック部521とロック部71は互いに近づく方向に付勢され、フック部521とロック部71との係止状態が維持されている。また、ロック部71にフック部521が係止した状態では、ロックフレーム7の引留部72は、その係合面72aが左右方向と略平行になる姿勢に維持される。
図2を用いて前述したように、引出し2は、圧縮コイルばね923によって前方(進出方向)に付勢されており、引留部72の係合面72aに、引出しの
ストッパフレーム
22における係合部222が係合している。これによって、引出しは、前方(進出方向)に付勢された状態で収納位置に留められている。
【0052】
例えば、
図1に示す筐体90に内蔵されたプリンタのカッタ装置によって用紙が切断され一つの決済が完了すると、POS端末やプリンタ等からキャッシュドロワ10を駆動するためのドライブ回路を介してドロワキック信号が出力される。このドロワキック信号は、DCモータ81への0.5秒〜1.0秒程度の電力供給に相当する。ドロワキック信号が出力されると、DCモータ81が駆動し、DCモータ81の回転力が二段太陽ギヤ61に伝達される。DCモータ81は一方向に回転するものであり、DCモータ81の回転力が二段太陽ギヤ61に伝達されると、
図5(a−2)に示すように、二段太陽ギヤ61が時計回りに回転し、これに伴い二段遊星ギヤ62がシャフト85を軸に時計回りに公転(回動)する。これにより、小径遊星ギヤ622が、フックギヤ5のギヤ部522に噛合し、遊星ギヤユニット6は噛合状態に移行する。なお、遊星ギヤユニット6が噛合状態に移行しても、
図5(b−2)に示すように、フックギヤ5とロックフレーム7は動作せず、ロック状態が維持される。
【0053】
噛合状態において、DCモータ81の回転力が二段太陽ギヤ61を介して二段遊星ギヤ62に伝達されると、
図5(a−3)に示すように、二段遊星ギヤ62がピン87を軸に反時計回りに自転(回転)し、小径遊星ギヤ622にギヤ部522が噛合しているフックギヤ5が時計回りに回転する。フックギヤ5が時計回りに回転すると、
図5(b−3)に示すように、ロックフレーム7のロック部71に対するフック部521の係止が解除される。係止が解除されると、引張コイルばね82によってロックフレーム7に付与されている反時計回りに回転する方向の付勢力と、圧縮コイルばねの付勢力によって引出しが進出する際に係合部222が引留部72に付与する付勢力によって、ロックフレーム7が反時計回りに回転する。
【0054】
ロックフレーム7が反時計回りに回転すると、
図6(b−4)に示すように、引留部72と係合部222との係合が解除され、引出し2は収納位置から進出し(
図2等参照)、ロック部71が、遊星ギヤユニット6の当接片631に当接する。なお、
図6(a−4)に示すように、小径遊星ギヤ622とフックギヤ5のギヤ部522との噛合状態が維持されている状態では、フックギヤ5の時計回りの回転が継続する。
【0055】
遊星ギヤユニット6の当接片631に当接したロックフレーム7は、さらに反時計回りに回転する。これにより、
図6(b−5)に示すように、遊星ギヤユニット6はロックフレーム7に押され、遊星ギヤユニット6もロックフレーム7とともに反時計回りに回転する。遊星ギヤユニット6は、ベース部材63が第2ストッパ部431に当接することで回転を停止する。ロックフレーム7は、
図6(c−5)に示すように、当接部73が天板41の第1ストッパ部411に当接することで回転を停止する。なお、ベース部材63の第2ストッパ部431に当接した遊星ギヤユニット6によってロックフレーム7の回転を停止させる態様を採用し、天板41の第1ストッパ部411を省略することもできる。
図6(a−5)に示すように、ロックフレーム7に押され遊星ギヤユニット6が反時計回りに回転することで、小径遊星ギヤ622が反時計回りに回転する方向に公転(回動)する。これにより、遊星ギヤユニット6は、小径遊星ギヤ622がフックギヤ5のギヤ部522から離間した初期状態に移行する。さらに前述した通り、ロックフレーム7は二段遊星ギヤ62が公転する力よりも大きな力で付勢しているため、二段遊星ギヤ62は解除状態ではギヤ部522から離間した初期状態から移動できない。この結果、DCモータ81の駆動が継続している場合であっても、二段遊星ギヤ62は87を軸に自転するだけ(空回り状態)であり、DCモータ81の回転力はフックギヤ5に伝達されない。このため、DCモータ81の停止制御が不要になる。さらに、噛合状態でDCモータ81が一方向に回転することで、フック部521とロック部71との係止が解除される。このため、フック部521とロック部71との係止が解除される状態においても、フック部521の位置もロック部71の位置も制御する必要はない。すなわち、フック部521もロック部71もセンサで検出して位置制御する必要はない。
【0056】
また、
図6(b−5)および同図(c−5)では、ロックフレーム7は、収納位置から進出した引出し2が収納位置に押し戻される際に、引出し2の係合部222を受け入れる姿勢で停止している。具体的には、引留部72を、収納位置に押し戻されてきた係合部222に接触しない位置に退避させている。この
図6(b−5)および同図(c−5)に示すロックフレーム7の状態が、ロックフレーム7の初期状態になる。
【0057】
図7は、
図5(a−1)および同図(b−1)に示すロック状態のロックユニット3において、ユーザが引出しを押さえていたり、あるいは鍵による強制ロックが働き、引出しが進出できない場合にもかかわらず、ドロワキック信号が出力されたときの各構成要素の動作を示す図である。
図7の左側に示す(c)では、天板41、ロックフレーム7および引張コイルばね82を省略し、フックギヤ5と遊星ギヤユニット6の動作を示している。また、(c)の右側に示す(d)では、(c)に対してロックフレーム7、引張コイルばね82、およびストッパフレームの係合部222を追加し、フックギヤ5、ロックフレーム7および係合部222の動作を示している。
【0058】
図5(a−1)および同図(b−1)に示すロック状態において引出しが進出できない場合にドロワキック信号が出力されると、
図7(c−1)に示すように、DCモータ81が駆動することでフックギヤ5が時計回りに回転する。やがて、
図7(d−1)に示すように、フック部521とロック部71との係止が解除されるが、引出しが収納位置に留まるため係合部222の位置も変化しない。このため、係合部222によってロックフレーム7の動作が阻止され、小径遊星ギヤ622とギヤ部522との噛合状態が継続する。
【0059】
本実施形態のギヤ部522は、ギヤ歯の数を所定に設定(例えば5つ)しており、DCモータ81の駆動が継続しフックギヤ5が回転していくと、
図7(c−2)に示すように、小径遊星ギヤ622とギヤ部552との噛合が解除される。これにより、小径遊星ギヤ622が空回りする状態になり、ドロワキック信号に相当する、0.5秒〜1.0秒程度の電力供給が終了すると小径遊星ギヤ622の回転も停止する。ここで、フックギヤ5が回動できる範囲を超えて小径遊星ギヤ622とギヤ部552との噛合を継続させると、DCモータ81がロックしてしまう虞がある。本実施形態ではギヤ部552のギヤ歯の数を所定に設定することで、フックギヤ5が回動できる範囲内で小径遊星ギヤ622とギヤ部552との噛合が解除される態様を採用し、DCモータ81のロックを防止している。ここで、ギヤ部552のギヤ歯の数は、フックギヤ5が回動できる範囲や電力供給の時間等に基づいて適宜設定すればよい。なお、
図7(c−2)および
図7(d−2)に示す状態から、引出し2の強制ロック等が解除され、引出し2が進出できる状態になると、圧縮コイルばね923(
図2参照)の付勢力によって、引出し2は進出方向に進出する。
【0060】
図8は、
図6(b−5)に示す、ロックフレーム7が初期状態に位置するロックユニット3において、引出し2を収納位置に押し戻し、
図5(b−1)に示す、ロック状態のロックユニット3に戻すまでの様子を示す図である。
図8(e−1)および同図(e−2)では、
図5の(b)および
図6の(b)に対応させ、天板41を省略し、フックギヤ5、ロックフレーム7および係合部222の動作を示している。
【0061】
図6(b−5)に示す、初期状態のロックフレーム7に対し、引出し2を収納位置に向けて押し戻していくと、ロックフレーム7は、引出し2の係合部222に押され、
図8(e−1)に示すように時計回りに回転していく。
【0062】
引出し2を収納位置まで押し戻すと、
図8(e−2)に示すように、ロックフレーム7の引留部72が係合部222の係合孔222aに入り込み、引出し2の係合部222とロックフレーム7の引留部72が係合する。また、ロックフレーム7のロック部71が、フックギヤ5のフック部521を超える位置まで回動し、引張コイルばね82の付勢力によって、フックギヤ5は反時計回りに回転する。これにより、ロックユニット3は、
図5(b−1)に示すロック状態に移行する。このように、フック部521がロック部71に係止する状態においても、フック部521の位置もロック部71の位置も制御する必要はない。また、本実施形態では、係止が解除されて動作したロックフレーム7は、収納位置に押し戻される引出し2の係合部222を受け入れる初期状態で停止する。このため、ロックフレーム7を初期状態に移動させるための、モータの逆転動作やセンサを用いた位置制御、さらにはモータの停止制御も不要になる。
【0063】
本発明のキャッシュドロワ10によれば、位置制御やモータの停止制御をすることなく引出し2のロックとその解除ができる。この結果、位置制御やモータの停止制御をするためのセンサや制御基板が不要になり装置のコストを抑えることができる。さらに、ユーザーの誤動作に基づくエラーの発生が減少する。
【0064】
本発明は前述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、ロックフレーム7のロック部71によって遊星ギヤユニット6を押す態様を採用したが、ロックフレーム7におけるロック部71以外の部分によって遊星ギヤユニット6を押し、遊星ギヤユニット6を噛合状態から初期状態に移行させる態様としてもよい。また、上記実施形態では、一つの引張コイルばね82によってフックギヤ5とロックフレーム7の双方を付勢しているが、フックギヤ5を付勢する付勢部材とロックフレーム7を付勢する付勢部材をそれぞれ設けてもよい。ただし、一つの引張コイルばね82によってフックギヤ5とロックフレーム7の双方を付勢する態様によれば部品点数を削減することができる。