(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モールド部と絶縁電線の絶縁被覆との間から水等の液体が侵入することを防ぐため、モールド部の後端部において、モールド部と絶縁被覆との間にゴム栓が挿入されることがある。
【0006】
ここで、より高い止水性を得るためには、ゴム栓を比較的圧縮させた状態で、モールド部と絶縁電線との間の隙間に挿入する必要がある。しかしながら、この場合、ゴム栓を比較的強い力で圧縮させ、また、その圧縮状態を維持したままゴム栓をモールド部と絶縁電線との間に挿入する必要があり、その作業が困難であることが懸念される。
【0007】
本発明は、モールド部付電線において、より簡単にモールド部と絶縁電線の絶縁被覆との間から水等の液体が侵入することを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係るモールド部付電線は、芯線と前記芯線の周囲を覆う絶縁被覆とを備える絶縁電線と、前記絶縁電線の端部の前記芯線に接続された端子と、前記端子と前記絶縁電線の前記芯線との接続部分を覆う第一モールド部と、前記第一モールド部と一体に形成され、前記第一モールド部よりも柔軟な部材であり、前記絶縁被覆の外周面に接触しつつ前記第一モールド部から前記端子側に対し反対側へ突出して形成された第二モールド部と、前記第二モールド部の周囲を囲む環状の部材であり、前記第二モールド部を前記絶縁被覆の外周面に押し付けた状態で前記第一モールド部及び前記第二モールド部に取り付けられ
、前記第二モールド部よりも硬い樹脂製の部材である固定部材と、を備える。
【0009】
第2態様に係るモールド部付電線は、第1態様に係るモールド部付電線の一態様である。第2態様に係るモールド部付電線においては、前記第一モールド部には、係止部が形成され、前記固定部材には、前記係止部に係止可能な被係止部が形成され、前記係止部と前記被係止部とが係りあって、前記第一モールド部及び前記第二モールド部に対し前記絶縁電線の延在方向において前記固定部材が固定されている。
【0010】
第3態様に係るモールド部付電線は、
芯線と前記芯線の周囲を覆う絶縁被覆とを備える絶縁電線と、前記絶縁電線の端部の前記芯線に接続された端子と、前記端子と前記絶縁電線の前記芯線との接続部分を覆う第一モールド部と、前記第一モールド部と一体に形成され、前記第一モールド部よりも柔軟な部材であり、前記絶縁被覆の外周面に接触しつつ前記第一モールド部から前記端子側に対し反対側へ突出して形成された第二モールド部と、前記第二モールド部の周囲を囲む環状の部材であり、前記第二モールド部を前記絶縁被覆の外周面に押し付けた状態で前記第一モールド部及び前記第二モールド部に取り付けられた固定部材と、を備え、前記第一モールド部には、係止部が形成され、前記固定部材には、前記係止部に係止可能な被係止部が形成され、前記係止部と前記被係止部とが係りあって、前記第一モールド部及び前記第二モールド部に対し前記絶縁電線の延在方向において前記固定部材が固定されており、前記第二モールド部は、前記第一モールド部側を向き前記第一モールド部の前記端子側に対し反対側の端面に接する第一面と、前記第一モールド部側に対し反対側を向く第二面と、を含み、前記固定部材は、前記第二面に接触する部分を含み、前記固定部材が、前記第二面を前記第一モールド部側に押した状態で前記係止部と前記被係止部とが係りあって固定されている。
【0011】
第4態様に係るモールド部付電線は、第1態様から第3態様のいずれか1つに係るモールド部付電線の一態様である。第4態様に係るモールド部付電線においては、前記第二モールド部が、シリコーン樹脂を含む。
【0012】
第5態様に係るモールド部付電線は、第1態様から第4態様のいずれか1つに係るモールド部付電線の一態様である。第5態様に係るモールド部付電線においては、前記絶縁被覆が、シリコーン樹脂を含む。
【0013】
第6態様に係るモールド部付電線は、第1態様から第5態様のいずれか1つに係るモールド部付電線の一態様である。第6態様に係るモールド部付電線においては、前記固定部材は、複数の固定部材片を含み、前記複数の固定部材片が合体した状態で前記環状を成す。
【発明の効果】
【0014】
上記の各態様において、柔軟な第二モールド部は、第一モールド部から端子側に対し反対側へ突出して形成されている。そして、固定部材が、第二モールド部を絶縁被覆の外周面に押し付けた状態で第一モールド部及び第二モールド部に取り付けられている。ここで、第二モールド部は、モールド樹脂を金型内に射出し、それが硬化することで得られるため、簡単に得ることができる。そして、固定部材が、第二モールド部を絶縁被覆へ押し付けることで、モールド部と絶縁電線の絶縁被覆との間から水等の液体が侵入することが抑制される。この場合、ゴム栓を圧縮させモールド部と絶縁被覆との間に挿入する場合に比べ、より簡単にモールド部と絶縁電線の絶縁被覆との間から水等の液体が侵入することを抑制できる。
【0015】
また、第2
及び第3態様においては、第一モールド部に形成された係止部と固定部材に形成された被係止部とによって、固定部材が第一モールド部及び第二モールド部に固定されている。この場合、固定部材と第一モールド部及び第二モールド部との固定状態をより強固にできる。
【0016】
また、第3態様においては、固定部材が、第二面に接触する部分を含む。そして、固定部材が、第二面を第一モールド部側に押した状態で係止部と被係止部とが係りあって固定されている。この場合、第一モールド部の端子側に対し反対側の面と第一面とをより強く密着させることができる。このため、第一モールド部の端子側に対し反対側の面と第二モールド部の第一面との間に水等の液体が侵入する恐れのある隙間が生じることをより確実に抑制できる。
【0017】
また、第4態様においては、第二モールド部がシリコーン樹脂を含む。この場合、比較的小さな力で第二モールド部を絶縁被覆に押し付けることが可能となり、その間の隙間を塞ぐことができる。また、例えば、絶縁被覆がシリコーン樹脂を含む場合、第二モールド部及び絶縁被覆が同じ材質なのでより密着可能である。
【0018】
また、第5態様において、絶縁被覆が、シリコーン樹脂を含む。この場合、絶縁電線の柔軟性が向上する。また、例えば、第二モールド部がシリコーン樹脂を含む場合、第二モールド部及び絶縁被覆が同じ材質なのでより密着可能である。
【0019】
また、第6態様において、固定部材は、複数の固定部材片が合体した状態で環状を成す。この場合、固定部材を第一モールド部及び第二モールド部に取り付ける作業をより簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0022】
<第1実施形態>
はじめに、
図1〜3を参照しつつ、第1実施形態に係るモールド部付電線100について説明する。モールド部付電線100は、絶縁電線9と端子8と第一モールド部1と第二モールド部2と固定部材3とを備える。
【0023】
図1は、モールド部付電線100の断面図である。
図1は、モールド部付電線100の絶縁電線9の延在方向に沿う切断線で切断された断面を示す図である。
図2は、
図1の一部拡大断面図である。
図2は、モールド部付電線100における第一モールド部1及び第二モールド部2の境界部分を拡大した断面図である。
図3は、モールド部付電線100の斜視図である。
【0024】
モールド部付電線100は、例えば、自動車等の車両に搭載される。モールド部付電線100においては、第一モールド部1、第二モールド部2及び固定部材3によって絶縁電線9と端子8との接続部分が止水される。
【0025】
モールド部付電線100において、絶縁電線9は、芯線91と芯線91の周囲を覆う絶縁被覆92とを備える。芯線91は、例えば、銅又はアルミ二ウム等の金属を主成分とする導体である。絶縁被覆92は、樹脂の絶縁部材である。
【0026】
本実施形態では、絶縁被覆92は、シリコーン樹脂を含む。ここでは、絶縁被覆92は、ゴム状のシリコーン樹脂(シリコーンゴム)であることが考えられる。この場合、絶縁電線9の柔軟性が向上する。なお、絶縁被覆92が、例えば、ポリエチレン又は塩化ビニルなどを主成分とする合成樹脂の部材である場合も考えられる。
【0027】
モールド部付電線100においては、絶縁電線9の端部において、芯線91の周囲の絶縁被覆92が除去される。絶縁電線9の端部における絶縁被覆92が除去された芯線91には、端子8が接続される。
【0028】
モールド部付電線100において、端子8は、絶縁電線9の端部の芯線91に接続されている。端子8は、銅等の金属を主成分とする部材である。また、本実施形態では、端子8は、電線接続部81と相手側接続部82とを備える。
【0029】
本実施形態において、電線接続部81は、絶縁電線9の端部の芯線91に接続される部分である。ここでは、
図1に示されるように、電線接続部81は、絶縁電線9の端部の芯線91に圧着可能な圧着片を含む。電線接続部81においては、圧着片が絶縁電線9の端部の芯線91の周囲を覆う状態でかしめられている。
【0030】
なお、電線接続部81が、絶縁電線9の端部の絶縁被覆92にかしめられる圧着片を含む場合も考えられる。また、端子8が、熱溶接又は超音波溶接等の溶接によって絶縁電線9の端部の芯線91に接続されている場合も考えられる。この場合、電線接続部81は、絶縁電線9の端部の芯線91を溶接可能な平板状に形成されていること等が考えられる。
【0031】
また、本実施形態において、相手側接続部82は、この端子8の接続相手である相手側部材に接続可能な部分である。相手側部材としては、例えば、端子台等が考えられる。ここでは、
図1,3に示されるように、相手側接続部82には、相手側部材に対しボルト締結を可能にする孔820が形成されている。
【0032】
次に、第一モールド部1について説明する。モールド部付電線100において、第一モールド部1は、端子8と絶縁電線9の芯線91との接続部分を覆う。なお、本実施形態では、第一モールド部1は、端子8と絶縁電線9の芯線91との接続部分の他に、絶縁被覆92の端部も覆っている。従って、ここでは、第一モールド部1は、端子8と芯線91との接続部分及び絶縁被覆92の端部の周囲を覆う環状に形成されている。
【0033】
第一モールド部1は、後述する第二モールド部2に比べ、硬い部材である。第一モールド部1を形成する樹脂としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、LCP樹脂(液晶ポリマー)、フェノール系、ポリエステル系、ポリアミド系又はエポキシ系の樹脂等が考えられる。
【0034】
また、本実施形態では、第一モールド部1には、係止部11が形成されている。係止部11は、後述する固定部材3の被係止部31に係止可能な部分である。ここでは、第一モールド部1の端子8の相手側接続部82側に対し反対側の端部に係止部11が形成されている。以下、第一モールド部1の端子8の相手側接続部82側に対し反対側を、後端側と称する。即ち、本実施形態では、第一モールド部1の後端部に係止部11が形成されている。
【0035】
本実施形態において、係止部11は、第一モールド部1の内周側から外周側へ突出して形成されている。ここでは、係止部11は、最も突出した部分から後端側に向かって徐々に下るように傾斜して形成されている。また、ここでは、係止部11において、最も突出した部分の後端側に対し反対側の部分は、絶縁電線9の延在方向に直交する方向に沿って内周側から外周側へ突出している。即ち、係止部11の後端側には、傾斜面が形成され、係止部11の第一モールド部1側には、絶縁電線9の延在方向に直交する垂直面が形成されている。
【0036】
また、本実施形態において、係止部11の端子8側の部分には、後述する固定部材3の被係止部31を嵌め込み可能な溝15が形成されている。
【0037】
次に、第二モールド部2について説明する。第二モールド部2は、第一モールド部1と一体に形成されている。なお、本実施形態では、後述するように一部の金型を共有し、二色成形によって第一モールド部1及び第二モールド部2が成形される。なお、それぞれ別の金型を用意し、モールド成形を2回行うことによって第一モールド部1及び第二モールド部2が成形される場合も考えられる。
【0038】
第二モールド部2は、第一モールド部1よりも柔軟な部材である。本実施形態では、第二モールド部2は、シリコーン樹脂を含む部材である。例えば、第二モールド部2が、液状シリコーンが硬化した部材であることが考えられる。
【0039】
モールド部付電線100において、第二モールド部2は、絶縁被覆92の外周面に接触しつつ、第一モールド部1から端子8側に対し反対側へ突出して形成されている。即ち、第二モールド部2は、第一モールド部1の後端側へ突出して形成されている。ここでは、第二モールド部2は、絶縁被覆92の部位のみに形成されている。即ち、第二モールド部2は、絶縁被覆92の周囲を覆う環状に形成されている。
【0040】
また、本実施形態では、第二モールド部2は、第一モールド部1側を向く第一面21を含む。ここでは、第二モールド部2が、第一モールド部1側を向き第一モールド部1の端子8側に対し反対側の端面、即ち、後端面19から突出して形成されている。そして、第二モールド部2における第一面21は、第一モールド部1の後端面19に接している。このため、第一面21を第二モールド部2の前端面と称することもできる。
【0041】
また、第二モールド部2には、第一面21から第一面21に対しその反対側の後端面29に至るまでの間に段差25が形成されている。ここでは、
図2に示されるように、段差25が形成されていることで、第一面21側の部分が、後端面29側の部分よりも外周側に突出している。
【0042】
ここで、段差25が形成されている部分において、第一モールド部1側に対し反対側を向く面を第二面22と称する。第二面22は、第一面21側の部分における第一面21に対し反対側の面である。モールド部付電線100では、第二面22に後述する固定部材3が接することで第一面21が後端面19に強く押し付けられる。
【0043】
また、本実施形態では、第二面22は、第一面21に平行な面である。この場合、より効率的に第一面21を後端面19に押し付けることができる。
【0044】
次に、固定部材3について説明する。固定部材3は、第二モールド部2の周囲を囲む環状の部材である。なお、本実施形態では、固定部材3は、第二モールド部2の他に第一モールド部1の後端部の周囲も囲む環状の部材である。
【0045】
本実施形態では、固定部材3は、第二モールド部2を絶縁被覆92側に押し付ける程度に伸縮しない部材である。ここでは、固定部材3は、第二モールド部2よりも硬い樹脂製の部材である。固定部材3は、例えば、PP(ポリプロピレン)、ナイロン又はポリエチレン等の樹脂製の部材であることが考えられる。また、固定部材3は、第一モールド部1及び第二モールド部2と別体の部材である。固定部材3は、第二モールド部2を絶縁被覆92の外周面に押し付けた状態で第一モールド部1及び第二モールド部2に取り付けられる。
【0046】
本実施形態では、例えば、第二モールド部2に取り付けられる前の状態で、固定部材3の内周面が成す輪郭が、絶縁電線9の周囲を囲む第二モールド部2の外周面が成す輪郭よりも小さいことが考えられる。この場合、固定部材3が第二モールド部2の周囲に配設されることで第二モールド部2が絶縁被覆92側に押され、変形する。これにより、第二モールド部2と絶縁被覆92との間の隙間を埋めることができる。
【0047】
なお、固定部材3がかしめ部材である場合も考えられる。この場合、第二モールド部2の周囲を囲む状態の固定部材3がかしめられることで、第二モールド部2が絶縁被覆92に押し付けられる。また、固定部材3が、第二モールド部2を絶縁被覆92に押し付けた状態で巻かれたテープ部材であることも考えられる。また、固定部材3が、熱収縮チューブが収縮した部材である場合も考えられる。
【0048】
また、固定部材3は、第一モールド部1と同じ硬さの部材であること、又は第一モールド部1よりも硬い部材であることが考えられる。なお、本実施形態のように、固定部材3が第一モールド部1の後端部の周囲を囲む場合において、固定部材3が第一モールド部1よりも硬い部材である場合、第一モールド部1の後端部を絶縁被覆92側に押し付けることも可能である。
【0049】
また、本実施形態では、固定部材3には、第一モールド部1の係止部11に係止可能な被係止部31が形成されている。ここでは、
図2に示されるように、被係止部31は、固定部材3の内周面側において凸状を成し、係止部11の第一モールド部1側の面に接触する係止面310を含む凸部である。
【0050】
本実施形態では、固定部材3が第一モールド部1の後端側から端子8側へ近付けられる。また、ここでは、係止部11は、最も突出した部分である端子8側の部分から後端側に向かって徐々に下るように傾斜して形成されているため、固定部材3は、この傾斜に沿って弾性変形しつつ、端子8側に近付けられる。
【0051】
やがて、第一モールド部1の係止部11と固定部材3の被係止部31とが係りあう。これにより、固定部材3が第一モールド部1及び第二モールド部2に取り付けられる。ここでは、
図2に示されるように、第一モールド部1の溝15に被係止部31が嵌まり込むことで、係止部11と被係止部31とが係りあう。そして、被係止部31の係止面310が係止部11に接触することで、第一モールド部1及び第二モールド部2に対し固定部材3が離れる方向に移動することが規制される。また、溝15を成す端子8側の面が、固定部材3の第一モールド部1側の面に接触することで、固定部材3が端子8側に移動することが規制される。これにより、第一モールド部1及び第二モールド部2に対し絶縁電線9の延在方向において固定部材3が固定される。
【0052】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、固定部材3は、第二モールド部2の第二面22に接触する部分を含む。以下、この部分を接触部36と称する。ここでは、接触部36は、固定部材3の内周面側において凸状を成す凸部である。接触部36は、固定部材3が第一モールド部1の後端側から端子8側に近付けられる際に、第二面22を第一モールド部1側に押し付ける。これにより、第二モールド部2の第一面21を含む部分が第一モールド部1に押し付けられる。その結果、第一面21と後端面19とがより強く密着する。そして、第一面21と後端面19とが密着した状態で、係止部11と被係止部31とが係りあい、固定部材3が第一モールド部1及び第二モールド部2に固定されることにより、その密着状態が維持される。
【0053】
また、接触部36は、第二モールド部2の段差25の高さに応じた突出量であることが考えられる。好ましくは、接触部36は、段差25の高さよりも大きい突出量であることが考えられる。この場合、第二モールド部2を絶縁被覆92側に効率よく押し付けることができる。
【0054】
また、本実施形態では、固定部材3が第一モールド部1及び第二モールド部2に取り付けられた状態において、固定部材3の第一モールド部1側に対し反対側の後端面39の位置と第二モールド部2の後端面29の位置とが、絶縁電線9の延在方向において一致している。即ち、後端面39と後端面29との間に段差が形成されていない。これは、本実施形態では、固定部材3の接触部36が、第二モールド部2の第二面22を押し付けることで、第一面21と後端面19とがより密着するためである。即ち、第二モールド部2の後端面29を第一モールド部1側に押し付けなくとも、第一面21と後端面19とをより密着させることができるためである。この場合、固定部材3における後端面29を覆う部分を不要とすることで、絶縁電線9の延在方向における固定部材3の寸法を小さくできる。即ち、モールド部付電線100の止水構造を小型化することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、さらに、固定部材3が第二モールド部2の後端面29を覆う部分を含むことも考えられる。
【0056】
次にモールド部付電線100を製造するモールド部付電線製造方法について説明する。ここでは、モールド部付電線製造方法は、第一モールド部成形工程、第二モールド部成形工程及び固定部材取付工程を含む。そして、モールド部付電線製造方法では、第一モールド部成形工程及び第二モールド部成形工程において共通の金型5が使用される。即ち、第一製造方法によって得られるモールド部付電線100においては、第一モールド部1と第二モールド部2とが二色成形によって得られる。
【0057】
図4は、第一モールド部成形工程を示す図である。
図5は、第二モールド部成形工程を示す図である。
図6は、固定部材取付工程を示す図である。
【0058】
はじめに、第一モールド部成形工程及び第二モールド部成形工程において使用される共通の金型5について説明する。
図4に示されるように、本実施形態において、金型5には、第一モールド部1の外周面が成す輪郭に沿う内周面によって囲まれた空間50が形成されている。また、ここでは、金型5は、一方が他方に接近すること及び離隔することが可能に支持された上金型51と下金型52とを含む。この場合、空間50は、上金型51と下金型52とが最接近した状態において形成される。
【0059】
次に、第一モールド部成形工程で使用される金型6について説明する。金型6は、絶縁電線9の絶縁被覆92の外周面が成す輪郭に沿う内周面によって囲まれた空間60が形成されている。また、ここでは、金型6は、一方が他方に接近すること及び離隔することが可能に支持された上金型61と下金型62とを含む。この場合、空間60は、上金型61と下金型62とが最接近した状態において形成される。本実施形態において、金型6は、上金型61と下金型62とが最接近した状態において、絶縁電線9を挟んで支持し固定する。
【0060】
本実施形態では、
図4に示されるように、第一モールド部成形工程において、端子8が絶縁電線9の端部の芯線91に接続された絶縁電線9が金型6によって支持される。そして、端子8と絶縁電線9の芯線91との接続部分が空間50内に収容されるように、上金型51と下金型52とが、端子8及び絶縁電線9に対して近付けられる。
【0061】
そして、金型5の空間50に、端子8と絶縁電線9の芯線91との接続部分が収容された状態で、第一モールド部1を構成するモールド樹脂が空間50に流し込まれる。そして、このモールド樹脂が硬化することで、第一モールド部1が形成される。
【0062】
次に、第二モールド部成形工程について説明する。本実施形態では、第一モールド部成形工程の後に、第二モールド部成形工程が行われる。ここでは、第二モールド部成形工程において、金型7が使用される。
図5に示されるように、金型7には、第二モールド部2の外周面が成す輪郭に沿う内周面によって囲まれた空間70が形成されている。また、ここでは、金型7は、一方が他方に接近すること及び離隔することが可能に支持された上金型71と下金型72とを含む。この場合、空間70は、上金型71と下金型72とが最接近した状態において形成される。
【0063】
本実施形態では、第一モールド部1が形成された後、上金型61及び下金型62が離隔する方向に移動させられ、金型6が絶縁電線9の絶縁被覆92から取り外される。そして、金型6が取り外された部分が空間70内に収容されるように、上金型71及び下金型72が近付けられる。これにより、第一モールド部1の後端側の絶縁被覆92が金型7の空間70に収容される。
【0064】
そして、金型7の空間70に、第一モールド部1の後端側の絶縁被覆92が収容された状態で、第二モールド部2を構成するモールド樹脂が空間70に流し込まれる。そして、このモールド樹脂が硬化することで、第二モールド部2が形成される。なお、本実施形態では、第二モールド部2を構成するモールド樹脂は、液状シリコーンである。この場合、モールド樹脂がより早く硬化し、第二モールド部2を得ることができる。
【0065】
第二モールド部成形工程完了後、第一モールド部1及び第二モールド部2を伴う端子8が接続された絶縁電線9が、金型5及び金型7から取り出される。そして、第一モールド部1及び第二モールド部2に固定部材3を取り付ける固定部材取付工程が行われる。
【0066】
固定部材3は、予め絶縁電線9の周囲を囲むように配設されている場合、又は、絶縁電線9の端子8が接続された側に対し反対側の部分が固定部材3に挿通されることで絶縁電線9の周囲を囲むように配設されている場合等が考えられる。
【0067】
本実施形態では、固定部材取付工程において、固定部材3が第一モールド部1の後端側から端子8側へ近付けられる。やがて、第一モールド部1の係止部11と固定部材3の被係止部31とが係りあうことにより、固定部材3が第一モールド部1及び第二モールド部2に対して固定される。
【0068】
なお、別の態様として、第一モールド部成形工程と第二モールド部成形工程との順番を変更してもよい。また、第一モールド部成形工程及び第二モールド部成形工程において、それぞれ別の金型を用意し、モールド成形を2回行うことによって第一モールド部1及び第二モールド部2が成形される場合も考えられる。
【0069】
<効果>
本実施形態において、柔軟な第二モールド部2は、第一モールド部1から後端側へ突出して形成されている。そして、固定部材3が、第二モールド部2を絶縁被覆92の外周面に押し付けた状態で第一モールド部1及び第二モールド部2に取り付けられている。ここで、第二モールド部2は、モールド樹脂を金型7内に射出し、それが硬化することで得られるため、簡単に得ることができる。そして、固定部材3が、第二モールド部2を絶縁被覆92へ押し付けることで、第二モールド部2と絶縁電線9の絶縁被覆92との間から水等の液体が侵入することが抑制される。この場合、ゴム栓を圧縮させモールド部と絶縁被覆との間に挿入する場合に比べ、より簡単に第一モールド部1及び第二モールド部2と絶縁電線9の絶縁被覆92との間から水等の液体が侵入することを抑制できる。
【0070】
ここで、端子と電線との接続部分を覆うモールド部の後端部におけるモールド部と絶縁電線との間に別体のゴム栓が挿入される場合、ゴム栓を圧縮させつつ挿入する必要があり、その挿入作業は大変である。特に、モールド部の寸法公差等を考慮して大きめのゴム栓が選ばれる場合、その圧縮作業が比較的大変な作業となる。また、ゴム栓を挿入するためのスペースをモールド部に形成する必要があり、モールド部が大型化することが懸念される。
【0071】
一方、本実施形態のモールド部付電線100においては、ゴム栓を強く圧縮させるような大変な作業を必要とせずに、端子8と芯線91との接続部分の止水を行うことができる。また、第一モールド部1の後端部に形成される第二モールド部2の外形が小さい場合でも、固定部材3によって第二モールド部2と絶縁被覆92との間の隙間をうめることで十分に止水を行うことができる。即ち、第一モールド部1及び第二モールド部2の大型化も抑制できる。
【0072】
また、本実施形態においては、第一モールド部1に形成された係止部11と固定部材3に形成された被係止部31とによって、固定部材3が第一モールド部1及び第二モールド部2に固定されている。この場合、係止部11と被係止部31とが係りあうことで、絶縁電線9の延在方向における固定部材3の移動が規制される。このため、固定部材3と第一モールド部1及び第二モールド部2との固定状態をより強固にできる。
【0073】
また、本実施形態においては、固定部材3が、第二面22に接触する部分を含む。そして、固定部材3が、第二面22を第一モールド部1側に押した状態で係止部11と被係止部31とが係りあって固定されている。この場合、後端面19と第一面21とをより強く密着させることができる。このため、第一モールド部1の後端面19と第二モールド部2の第一面21との間に水等の液体が侵入する恐れのある隙間が生じることをより確実に抑制できる。その結果、止水性をより向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、第二モールド部2がシリコーン樹脂を含む。この場合、比較的小さな力で第二モールド部2を絶縁被覆92に押し付けることが可能となり、その間の隙間を塞ぐことができる。
【0075】
また、本実施形態では、第二モールド部2は、液状シリコーンが硬化することで得られる。この場合、第二モールド部2のモールド樹脂を硬化に必要な時間を抑制できる。また、比較的低い温度で硬化させることができる。
【0076】
また、本実施形態において、絶縁被覆92が、シリコーン樹脂を含む。この場合、絶縁電線9の柔軟性が向上する。また、ここでは、第二モールド部2もシリコーン樹脂を含む。このため、第二モールド部2及び絶縁被覆92が同じ材質なのでより密着する。
【0077】
<第2実施形態>
次に、
図7,8を参照しつつ、第2実施形態に係るモールド部付電線200について説明する。モールド部付電線200は、固定部材3と異なる構造の固定部材3Aを備える点で第1実施形態と異なる。
図7は、モールド部付電線200の斜視図である。
図8は、固定部材3Aの断面図である。
図8は、
図7のII−II線で切断した断面図である。なお、
図7,8において、
図1〜6に示される構成要素と同じ構成要素には、同じ参照符号が付されている。以下、本実施形態における第1実施形態と異なる点について説明する。
【0078】
モールド部付電線200は、第一モールド部1と、第二モールド部2と、固定部材3Aと、端子8と、絶縁電線9と、を備える。第一モールド部1、第二モールド部2、端子8及び絶縁電線9については、第1実施形態と同様の構造であるため、説明を省略する。
【0079】
本実施形態において、固定部材3Aは、複数の固定部材片30Aを含む。そして、固定部材3Aは、複数の固定部材片30Aが合体した状態で環状を成す。ここでは、
図7,8に示されるように、固定部材3Aは、2つの固定部材片30Aを含む。しかしながら、固定部材3Aが、3つ以上の固定部材片30Aを含む場合も考えられる。
【0080】
本実施形態において、複数の固定部材片30A各々には、環状を成す合体状態を維持するための合体保持部300が形成されている。ここでは、
図8に示されるように、合体保持部300が、係止爪301と係止孔302とを含む場合を説明する。なお、
図7において、合体保持部300は、便宜上省略されている。
【0081】
本実施形態では、固定部材片30Aの内周面側の部分が対向した状態で近付けられ、係止爪301が係止孔302に収容される。そして、係止孔302に収容された係止爪301が、係止孔302の内縁部に接触し、係りあうことで、2つの固定部材片30Aの合体状態が維持される。
【0082】
また、本実施形態では、固定部材3Aは、同種類の2つの固定部材片30Aを含む。この場合、固定部材3Aを1種類の固定部材片30Aで構成できる。ここでは、2つの固定部材片30A各々の合体保持部300同士が係止することで、2つの固定部材片30Aが合体し、第二モールド部2の周囲を囲む環状が維持される。
【0083】
なお、別の態様として、固定部材3Aが、ヒンジで連なった固定部材片を含む場合も考えられる。
【0084】
また、固定部材3Aが、2種類の固定部材片を含む場合も考えられる。この場合、2種類の固定部材片の一方に、係止爪301が形成され、他方に、係止孔302が形成されていることが考えられる。
【0085】
本実施形態においては、2つの固定部材片30Aの内周面同士が対向し、その間に絶縁電線9が配設された状態で、2つの固定部材片30Aが近付けられることで、絶縁電線9の周囲を囲む固定部材3Aを得ることができる。そして、
図7に示されるように、固定部材3Aを第一モールド部1側に近付け、係止部11と被係止部31とが係りあうことで第一モールド部1及び第二モールド部2に取り付けることができる。この場合、固定部材3Aを第一モールド部1及び第二モールド部2に取り付ける作業をより簡単に行うことができる。
【0086】
また、本実施形態では、モールド部付電線200の製造方法において、固定部材3Aを後付できる。このため、製造工程の自由度が向上する。
【0087】
なお、本発明に係るモールド部付電線は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは、各実施形態を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。