特許 6372428 ジョイントコネクタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6372428

(24)【登録日】2018年7月27日

(45)【発行日】2018年8月15日

(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ

(51)【国際特許分類】

   H01R 13/42 20060101AFI20180806BHJP

   H01R 31/08 20060101ALI20180806BHJP

【ＦＩ】

   H01R13/42 F

   H01R31/08 Q

【請求項の数】4

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2015-124766(P2015-124766)

(22)【出願日】2015年6月22日

(65)【公開番号】特開2017-10758(P2017-10758A)

(43)【公開日】2017年1月12日

【審査請求日】2017年6月28日

(73)【特許権者】

【識別番号】395011665

【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所

(73)【特許権者】

【識別番号】000183406

【氏名又は名称】住友電装株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000002130

【氏名又は名称】住友電気工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100067828

【弁理士】

【氏名又は名称】小谷 悦司

(74)【代理人】

【識別番号】100115381

【弁理士】

【氏名又は名称】小谷 昌崇

(74)【代理人】

【識別番号】100109058

【弁理士】

【氏名又は名称】村松 敏郎

(72)【発明者】

【氏名】鷲尾 和紘

(72)【発明者】

【氏名】大森 康雄

【審査官】 板澤 敏明

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００５−０５０７９４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−０４３６４２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開平０５−０８４０７６（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開平０６−００７１８３（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開平０４−０１８９８５（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 特開２０１４−０４９３９９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｈ０１Ｒ １３／４２

Ｈ０１Ｒ ３１／０８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

複数の電線のそれぞれに装着された複数の電線側端子同士を電気的に接続することにより前記複数の電線同士を短絡させるためのジョイントコネクタであって、
導電性を有する材料からなり、短絡方向に延びる基部及びこの基部から前記短絡方向に対して交差する端子突出方向に突出する複数の短絡側端子部を一体に有し、各短絡側端子部が前記端子突出方向と平行な嵌合方向に前記各電線側端子と嵌合可能な形状を有する短絡部材と、
当該短絡部材を保持する絶縁ハウジングと、を備え、
前記絶縁ハウジングは、前記短絡部材の少なくとも前記基部を収容する短絡部材収容部を含むハウジング本体と、前記短絡部材収容部内に前記短絡部材を拘束するように前記ハウジング本体に対して特定の着脱方向に着脱可能に装着される短絡部材リテーナと、を備え、前記着脱方向は、前記短絡方向及び前記嵌合方向の双方に交差する方向であり、前記短絡部材リテーナは、前記嵌合方向への前記短絡部材の動きを規制するように当該短絡部材を前記着脱方向に横切る短絡部材拘束部を有し、
前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部は、前記複数の短絡側端子部のうち互いに隣接する短絡側端子部同士の間をそれぞれ横切る複数の拘束片を含む、ジョイントコネクタ。

【請求項2】

複数の電線のそれぞれに装着された複数の電線側端子同士を電気的に接続することにより前記複数の電線同士を短絡させるためのジョイントコネクタであって、
導電性を有する材料からなり、短絡方向に延びる基部及びこの基部から前記短絡方向に対して交差する端子突出方向に突出する複数の短絡側端子部を一体に有し、各短絡側端子部が前記端子突出方向と平行な嵌合方向に前記各電線側端子と嵌合可能な形状を有する短絡部材と、
当該短絡部材を保持する絶縁ハウジングと、を備え、
前記絶縁ハウジングは、前記短絡部材の少なくとも前記基部を収容する短絡部材収容部を含むハウジング本体と、前記短絡部材収容部内に前記短絡部材を拘束するように前記ハウジング本体に対して特定の着脱方向に着脱可能に装着される短絡部材リテーナと、を備え、前記着脱方向は、前記短絡方向及び前記嵌合方向の双方に交差する方向であり、前記短絡部材リテーナは、前記嵌合方向への前記短絡部材の動きを規制するように当該短絡部材を前記着脱方向に横切る短絡部材拘束部を有し、
前記ハウジング本体が、前記各短絡側端子部に嵌合される前記電線側端子を保持する端子保持部をさらに有し、
前記ジョイントコネクタは、前記短絡側端子部に向かう前記電線側端子の通過を許容する通過許容位置と当該短絡側端子部に嵌合された当該電線側端子を係止する係止位置との間で前記短絡部材リテーナの着脱方向と平行な方向に移動可能となるように前記ハウジング本体に装着される電線側端子リテーナと、当該電線側端子リテーナと前記短絡部材リテーナとが互いに連動して前記着脱方向に移動するように両リテーナ同士を連結するリテーナ連結部と、をさらに備え、
前記短絡部材リテーナ、前記電線側端子リテーナ及び前記リテーナ連結部が単一のリテーナ部材として一体に形成されるとともに、前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部は前記電線側端子リテーナが前記通過許容位置及び前記係止位置のいずれの位置にあるときも前記短絡部材を拘束する形状を有する、ジョイントコネクタ。

【請求項3】

請求項１または２記載のジョイントコネクタであって、前記ハウジング本体の短絡部材収容部は、前記嵌合方向について前記短絡部材の基部の一方の側に位置する本体側拘束部を有する一方、前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部は、前記嵌合方向について前記基部を挟んで前記本体側拘束部と反対の側を前記着脱方向に横切るものである、ジョイントコネクタ。

【請求項4】

請求項１〜３のいずれかに記載のジョイントコネクタであって、前記短絡部材として複数の短絡部材を備え、当該複数の短絡部材が前記着脱方向と平行な方向に並ぶように配置され、これらの短絡部材を共通の前記短絡部材拘束部が横切るように前記短絡部材リテーナが前記ハウジング本体に装着される、ジョイントコネクタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、自動車のワイヤハーネス等に含まれる複数の電線同士を電気的に短絡させるためのジョイントコネクタに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、自動車のワイヤハーネス等に含まれる複数の電線同士を短絡させるための手段として、ジョイントコネクタが知られている。例えば、特許文献１には、短絡すべき複数の電線の端末にそれぞれ圧着された雌型の電線側端子を受け入れるハウジングと、このハウジング内に固定される金属製の短絡部材であるジョイント端子と、を備えたジョイントコネクタが開示されている。前記ジョイント端子は、前記電線側端子の配列方向に延びるバスバーと、このバスバーから当該バスバーの長手方向と直交する方向に延びる複数のタブ状端子と、を一体に有し、前記各タブ状端子と前記各電線側端子との嵌合によって前記電線同士の短絡が行われる。

【0003】

前記ジョイント端子は、前記タブ状端子に対する前記電線側端子の嵌合力（両端子の嵌合及び離脱に要する力）に対抗して前記ハウジングに保持されるように、当該ハウジング内に固定される必要がある。そのための構造として、特許文献１記載のジョイントコネクタのハウジングは、前記ジョイント端子の各タブ状端子が圧入可能な複数の挿通孔をもつ中間壁を有する。すなわち、前記ジョイント端子は、当該ジョイント端子に含まれる前記各タブ状端子の前記各挿通孔への圧入によって、前記ハウジング内に保持される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００５−３５３３６１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

前記特許文献１に記載されるように挿通孔へのタブ状端子の圧入によってジョイント端子がハウジングに固定されるジョイントコネクタでは、その圧入抵抗の設定が難しいという課題がある。すなわち、前記ハウジングが前記嵌合力に対抗するのに十分な保持力で前記ジョイント端子を保持するためには、前記圧入抵抗を大きく設定しなければならないが、当該圧入抵抗が大きいほど、その圧入作業の際にハウジングを構成する樹脂に割れが生じる可能性や、タブ状端子の座屈等による破損が生じる可能性が高くなる。特に近年は、電線の細径化に伴い、端子の小型化、小幅化が進められており、これによって、前記圧入抵抗を大きく設定することに伴う前記タブ状端子の破損のおそれが高くなる。

【0006】

本発明は、このような事情に鑑み、複数の電線のそれぞれに装着される複数の電線側端子と嵌合する短絡部材と、当該短絡部材を保持する絶縁ハウジングと、を備えたジョイントコネクタであって、前記絶縁ハウジングや前記短絡部材の破損のおそれを伴うことなく前記絶縁ハウジングが前記短絡部材を十分な保持力で保持することが可能なジョイントコネクタを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明が提供するのは、複数の電線のそれぞれに装着された複数の電線側端子同士を電気的に接続することにより前記複数の電線同士を短絡させるためのジョイントコネクタであって、導電性を有する材料からなり、短絡方向に延びる基部及びこの基部から前記短絡方向に対して交差する端子突出方向に突出する複数の短絡側端子部を一体に有し、各短絡側端子部が前記端子突出方向と平行な嵌合方向に前記各電線側端子と嵌合可能な形状を有する短絡部材と、当該短絡部材を保持する絶縁ハウジングと、を備える。前記絶縁ハウジングは、前記短絡部材の少なくとも前記基部を収容する短絡部材収容部を含むハウジング本体と、前記短絡部材収容部内に前記短絡部材を拘束するように前記ハウジング本体に対して特定の着脱方向に着脱可能に装着される短絡部材リテーナと、を備える。前記着脱方向は、前記短絡方向及び前記嵌合方向の双方に交差する方向であり、前記短絡部材リテーナは、前記嵌合方向への前記短絡部材の動きを規制するように当該短絡部材を前記着脱方向に横切る短絡部材拘束部を有する。

【0008】

このジョイントコネクタによれば、前記短絡部材収容部内に収容される前記短絡部材の前記嵌合方向への動きは、当該短絡部材を前記着脱方向に横切る短絡部材リテーナの短絡部材拘束部によって規制されるので、当該動きの規制のために前記短絡部材を前記絶縁ハウジングにきつく圧入する必要がない。従って、当該圧入による絶縁ハウジングまたは短絡部材の破損を伴うことなく、前記短絡部材拘束部による拘束によって前記短絡部材を当該短絡部材に作用する嵌合力、つまり、当該短絡部材の短絡側端子部と電線側端子との嵌合及び離脱の際に当該短絡部材に作用する力、に対抗する十分な保持力で前記短絡部材収容部内に保持することが、可能である。

【0009】

前記短絡部材拘束部は、前記短絡部材の前記嵌合方向への全ての動きを規制するものでなくてもよく、その動きの一部を規制するものであっても、絶縁ハウジングへの前記短絡部材のタイトな圧入を不要にすることが可能である。例えば、前記ハウジング本体の短絡部材収容部は、前記嵌合方向について前記短絡部材の基部の一方の側に位置する本体側拘束部を有する一方、前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部は、前記嵌合方向について前記基部を挟んで前記本体側拘束部と反対の側を前記着脱方向に横切るものであってもよい。この構造では、前記本体側拘束部と前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部との協働によって、前記短絡部材が前記嵌合方向の両側から拘束されることが可能である。

【0010】

この出願の第１の発明において、前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部は、前記複数の短絡側端子部のうち互いに隣接する短絡側端子部同士の間をそれぞれ横切る複数の拘束片を含む。これらの拘束片は、前記短絡部材の嵌合方向についての拘束に加えて当該嵌合方向と直交する方向についての各短絡側端子部の拘束を行うことも可能である。

【0011】

本発明は、前記短絡部材として複数の短絡部材を備えるものにも適用可能である。この場合、当該複数の短絡部材が前記着脱方向と平行な方向に並ぶように配置され、これらの短絡部材を共通の前記短絡部材拘束部が横切るものでは、複数の短絡部材によって多くの電線同士の短絡が可能な短絡回路を形成することができるのに加え、部品点数の少ない構造で当該複数の短絡部材を拘束することが可能である利点がある。

【0012】

この出願の第２の発明に係るジョイントコネクタでは、前記ハウジング本体が、前記各短絡側端子部に嵌合される前記電線側端子を保持する端子保持部をさらに有するとともに、当該ジョイントコネクタが、前記短絡側端子部に向かう前記電線側端子の通過を許容する通過許容位置と当該短絡側端子部に嵌合された当該電線側端子を係止する係止位置との間で前記短絡部材リテーナの着脱方向と平行な方向に移動可能となるように前記ハウジング本体に装着される電線側端子リテーナと、当該電線側端子リテーナと前記短絡部材リテーナとが互いに連動して前記着脱方向に移動するように両リテーナ同士を連結するリテーナ連結部と、をさらに備え、前記短絡部材リテーナ、前記電線側端子リテーナ及び前記リテーナ連結部が単一のリテーナ部材として一体に形成されるとともに、前記短絡部材リテーナの短絡部材拘束部は前記電線側端子リテーナが前記通過許容位置及び前記係止位置のいずれの位置にあるときも前記短絡部材を拘束する形状を有する。

【0013】

このジョイントコネクタでは、前記電線側端子リテーナと前記短絡部材リテーナとを前記リテーナ連結部を介して一体化した部品点数の少ない構造で、前記短絡部材収容部内での前記短絡部材の拘束と前記端子保持部内での各電線側端子の係止との双方を行うことが可能である。

【発明の効果】

【0014】

以上のように、本発明によれば、複数の電線のそれぞれに装着される複数の電線側端子と嵌合する短絡部材と、当該短絡部材を保持する絶縁ハウジングと、を備えたジョイントコネクタであって、前記絶縁ハウジングや前記短絡部材の破損のおそれを伴うことなく前記絶縁ハウジングが前記短絡部材を十分な保持力で保持することが可能なジョイントコネクタが、提供される。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】本発明の実施の形態に係るジョイントコネクタの電線側端子リテーナが通過許容位置にある状態を示す断面側面図であって図３のＩ−Ｉ線に沿った断面を示す図である。

【図2】図１のＩＩ−ＩＩ線に沿った断面を示す平面図である。

【図3】前記ジョイントコネクタを第２短絡側端子部側から見た正面図である。

【図4】前記ジョイントコネクタの断面側面図であって図３のＩＶ−ＩＶ線に沿った断面を示す図である。

【図5】図２に示されるジョイントコネクタの要部を拡大して示した断面平面図である。

【図6】前記ジョイントコネクタの底面図である。

【図7】前記ジョイントコネクタをフード部側から見た斜視図である。

【図8】図１が示す断面と同等の断面を示す側面図であって前記電線側端子リテーナが係止位置にある状態を示す断面平面図である。

【図9】図４が示す断面と同等の断面を示す側面図であって前記電線側端子リテーナが係止位置にある状態を示す断面平面図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。

【0017】

図１〜図９は、本発明の第１の実施の形態に係るジョイントコネクタを示す。このジョイントコネクタは、複数の電線１０の端末にそれぞれ装着される複数の電線側端子２０同士を相互に短絡するためのコネクタであり、複数の短絡部材３０と、絶縁ハウジングＨＧと、を備える。

【0018】

前記複数の電線側端子２０は、いわゆる雌型端子であり、電線圧着部２２と、電気接触部２４と、を有し、これらが単一の金属板により形成されている。前記電線圧着部２２は、前記電線１０の端末に圧着される部分であり、当該圧着により前記電線側端子２０と前記電線１０の導体部分との間の電気的導通を可能にする。前記電気接触部２４は、前記短絡部材３０と嵌合することにより当該短絡部材３０と電気的に接触する、つまり電気的導通を形成するように接触する、部位である。この実施の形態に係る電気接触部２４は、雌型のもので、当該電気接触部２４への前記短絡部材３０の嵌入を受け入れる。

【0019】

前記複数の短絡部材３０は、それぞれ、導体からなり、基部３２と、複数の第１短絡側端子部３４と、複数の第２短絡側端子部３６と、を一体に有する。この実施の形態に係る各短絡部材３０は、単一の平坦な金属板からなる。

【0020】

前記基部３２は、一定の幅で特定の短絡方向（この実施の形態ではコネクタ左右方向）に延びる形状を有する。前記複数の第１短絡側端子部３４は、前記短絡方向に間隔（図例では等間隔）をおいて並び、かつ、当該短絡方向と直交する第１突出方向に突出する。各第１短絡側端子部３４は、いわゆる雄型端子（タブ）として前記雌型の電気接触部２４に前記第１突出方向と平行な嵌合方向（つまり電線側端子２０の軸方向と平行な方向）に嵌入され、これにより当該電気接触部２４と電気的に接触することが可能である。前記複数の第２短絡側端子部３６は、前記短絡方向に間隔（図例では第１短絡側端子部３４と同じく等間隔）をおいて並び、かつ、前記基部から前記第１突出方向と反対の第２突出方向に突出する。各第２短絡側端子部３６は、前記複数の電線１０とは別の電線束の端末に設けられたコネクタであって図１及び図２に二点鎖線で示される相手方コネクタＣＣに含まれる複数のコネクタ端子とそれぞれ前記嵌合方向に嵌合可能な形状を有する。

【0021】

前記絶縁ハウジングＨＧは、ハウジング本体ＨＢと、これに装着されるリテーナ部材ＲＭと、を備える。

【0022】

前記ハウジング本体ＨＢは、前記短絡部材３０を収容する短絡部材収容部５０と、この短絡部材収容部５０を収容する外側部４０と、を有し、いずれも合成樹脂等の絶縁材料により成形されている。

【0023】

前記外側部４０は、端子保持部４３と、ケーシング部４４と、フード部４６と、を有する。

【0024】

前記端子保持部４３は、複数の端子収容室４１を画定するとともに、当該複数の端子収容室４１についてそれぞれ設けられた複数のランス４２を有する。

【0025】

前記端子収容室４１は、前記複数の電線側端子２０がそれぞれ当該電線側端子２０の軸方向に沿って挿入されるのを受け入れる形状を有する。具体的に、前記複数の端子収容室４１は、縦横に並ぶように、すなわち上下複数段にわたって左右方向に並ぶように、形成され、各端子収容室４１は前記軸方向の一方の側（図１及び図２では右側）に開口する端子挿入口４１ａを有する。前記各電線側端子２０は、前記電気接触部２４を先頭にして前記端子挿入口４１ａから対応する前記端子収容室４１内に挿入されることが可能である。

【0026】

前記複数のランス４２は、それぞれ、前記各端子収容室４１に挿入される電線側端子２０を係止（一次係止）する端子係止部を構成する。当該ランス４２は、いわゆる片持ち梁状をなす。具体的に、当該ランス４２は、図１及び図８に示されるように、前記端子収容室４１を画定する壁の一部とつながる基部と、その反対側の端部である先端部と、を有し、当該背先端部が前記電線側端子２０の軸方向と直交する方向（図１では下方向）に撓み変位するように、ランス４２が弾性変形することが可能である。当該ランス４２は、前記先端部が前記電線側端子２０から退避する向き（図１では上向き）に撓み変位することにより、前記端子収容室４１内に前記電線側端子２０が挿入されるのを許容する一方、前記電線側端子２０が当該端子収容室４１内に完全に挿入された状態で一部弾性復帰することにより、当該電線側端子２０を前記端子収容室４１内に係止（一次係止）する。具体的には、当該ランス４２の前記先端部がその挿入された電線側端子２０の適当な部位（図４及び図５の例では電気接触部２４の中間部位）と係合して当該電線側端子２０の離脱を阻止する。

【0027】

前記ケーシング部４４は、前記端子保持部４３に対して前記各端子挿入口４１ａと反対の側（図１及び図２では左側）に隣接し、前記短絡部材収容部５０を収容する。前記フード部４６は、前記ケーシング部４４から前記端子保持部４３と反対の側（図１及び図２では左側）に延長された部位である。

【0028】

前記短絡部材収容部５０は、この実施の形態では略直方体状をなす。当該短絡部材収容部５０は、前記複数の短絡部材３０の少なくとも基部３２を収容する。この実施の形態に係る短絡部材収容部５０は、当該複数の短絡部材３０が上下方向に並ぶ複数の段に亘って並び、かつ、各短絡部材３０が前記電線側端子２０の軸方向と平行な方向に短絡部材収容部５０を貫通する状態で当該短絡部材３０の基部３２及び各第１短絡側端子部３４の一部を収容する。

【0029】

この短絡部材収容部５０は、前記外側部４０のケーシング部４４内に収容され、保持される。この短絡部材収容部５０が保持される位置は、前記各短絡部材３０の第１短絡側端子部３４がそれぞれ前記各端子収容室４１内に前記端子挿入口４１ａと反対の側（図１及び図２では左側）から突出する位置であって、当該各端子収容室４１に挿入される電線側端子２０の電気接触部２４がそれぞれ当該第１短絡側端子部３４と嵌合する（詳しくは当該電気接触部２４内に前記第１短絡側端子部３４が嵌入される）ことを可能にする位置である。

【0030】

前記短絡部材収容部５０は、前記フード部４６側に開口して当該フード部４６側からの前記各短絡部材３０の基部３２の挿入を受け入れる基部挿入部５２と、前記基部挿入部５２に連通し、各第１短絡側端子部３４の挿通を受け入れる複数の端子挿通孔５３と、前記第１短絡側端子部３４に嵌合される各電線側端子２０の電気接触部２４を受け入れる複数の端子受入れ凹部５４と、前記基部３２を拘束するための複数の本体側拘束部５５と、を有する。前記複数の本体側拘束部５５は、それぞれ、短絡部材収容部５０のうち前記各端子挿通孔５３をコネクタ左右方向の両側から挟む部分であって、前記基部挿入部５２に挿入される基部３２に対して前記第２短絡側端子部３６と反対の側から当接することにより前記第１短絡側端子部３４側への前記基部３２の変位を規制するように当該基部３２を拘束する。

【0031】

前記ケーシング部４４は、前記短絡部材収容部５０を収容し、保持する。具体的に、前記短絡部材収容部５０の外周面の適所には、ケーシング部４４に拘束されるための被拘束部５７，５８が設けられる一方、前記ケーシング部４４は各被拘束部５７，５８をそれぞれ拘束する拘束部４７，４８を有する。

【0032】

なお、前記外側部４０と前記短絡部材収容部５０は単一の部材として一体に成形されていてもよい。

【0033】

前記フード部４６は、前記短絡部材収容部５０から突出する前記各第２短絡側端子部３６を包囲するとともに、前記相手方コネクタＣＣのハウジングの挿入を受け入れる形状を有する。このように、このフード部４６は、前記各第２短絡側端子部３６とともに、前記相手方コネクタＣＣと結合可能なコネクタ部分を構成する。

【0034】

前記リテーナ部材ＲＭは、前記各電線側端子２０を二次係止するための電線側端子リテーナ６０と、この実施の形態に係るジョイントコネクタの特徴となる短絡部材リテーナ７０と、両リテーナ６０，７０同士を連結するリテーナ連結部８０と、を一体に有するものであり、前記ハウジング本体ＨＢに対して所定の着脱方向に装着される。当該着脱方向は、前記短絡方向と前記嵌合方向の双方に対して交差する方向であればよく、この実施の形態に係る着脱方向は当該短絡方向及び当該嵌合方向の双方に直交している。

【0035】

前記電線側端子リテーナ６０は、前記端子保持部４３における各端子収容室４１に挿入された電線側端子２０を前記ランス４２による係止とは別に係止（二次係止）すべく、前記外側部４０における前記端子保持部４３に装着される。具体的に、当該電線側端子リテーナ６０は、前記各端子収容室４１のうち前記各ランス４２よりも後ろ側の特定部分をそれぞれ構成する複数の窓６１を画定する形状を有するとともに、各端子収容室４１に挿入される前記電線側端子２０の特定部位（図１では電線圧着部２２の後端）をそれぞれ係止するための複数の係止突起６２を有する。

【0036】

この電線側端子リテーナ６０は、図１及び図４に示される係止位置であって前記係止突起６２が前記電線側端子２０を係止する係止位置と、図８及び図９に示されるように当該係止位置から前記着脱方向（この実施の形態では前記電線側端子２０の軸方向と直交する方向；図１では下方向）に外れた通過許容位置と、の間で移動可能である。前記通過許容位置では、前記各窓６１が対応する前記端子収容室４１の他の部分と合致することにより、当該窓６１を前記電線側端子２０の電気接触部２４が通過して（つまり電線側端子リテーナ６０を貫通して）前記第１短絡側端子部３４に嵌合されることを許容する。

【0037】

前記短絡部材リテーナ７０は、前記短絡部材収容部５０内に前記短絡部材３０を拘束するように前記ハウジング本体ＨＢに対して前記電線側端子リテーナ６０と前記着脱方向に着脱可能に装着される。前記着脱方向は、前記のように前記短絡方向及び前記嵌合方向の双方に交差する方向であればよく、この実施の形態では当該短絡方向及び当該嵌合方向の双方に直交する方向（図１及び図４では上下方向）である。

【0038】

前記短絡部材リテーナ７０は、前記嵌合方向であって前記第２突出方向（フード部４６側への方向）の前記短絡部材３０の動きを規制するように当該短絡部材３０を前記着脱方向に横切る短絡部材拘束部を有する。具体的に、この短絡部材リテーナ７０は、図７に示されるようにコネクタ左右方向（前記短絡方向と平行な方向）に延びる基部７２と、この基部７２から前記着脱方向と平行な方向に延びる複数の拘束片７４と、を有する。

【0039】

前記各拘束片７４は、前記嵌合方向について前記短絡部材３０の基部３２を挟んで前記本体側拘束部５５と反対の側に位置して当該基部３２を拘束するものであり、当該基部３２の際において前記複数の第２短絡側端子部３６のうち互いに隣接する短絡側端子部３６同士の間をそれぞれ横切ることにより、前記基部３２の前記嵌合方向についての拘束と、当該嵌合方向と直交する方向（前記短絡方向と平行な方向）についての各第２短絡側端子部３６の拘束と、を行う。これに対し、前記短絡部材収容部５０には、前記各拘束片７４の横切りを許容するための複数の嵌入孔５６が形成されている。これらの嵌入孔５６は、前記着脱方向と平行な方向に延び、当該嵌入孔５６内に前記各拘束片７４が嵌入されるのを許容する断面形状を有し、当該嵌入により前記各拘束片７４が前記短絡部材３０を横切ることを可能にする。

【0040】

前記リテーナ連結部８０は、前記電線側端子リテーナ６０の前記着脱方向についての一方の端（図１では下端）と、前記短絡部材リテーナ７０の前記着脱方向についての一方の端（図１では下端）と、を相互に連結することにより、両リテーナ６０，７０が互いに連動するようにこれらを一体化する。従って、前記電線側端子リテーナ６０が図１及び図４に示される前記通過許容位置と図８及び図９に示される前記係止位置との間で前記着脱方向に移動するのに連動して前記短絡部材リテーナ７０も当該着脱方向に移動する。ここで、前記短絡部材リテーナ７０の各拘束片７４は、前記電線側端子リテーナ６０が前記通過許容位置及び前記係止位置のいずれにある場合にも前記短絡部材３０を横切ってこれを拘束することが可能な長さを有している。

【0041】

このジョイントコネクタでは、前記短絡部材収容部５０の基部挿入部５２及び端子挿通孔５３への（圧入を伴わない）短絡部材３０の挿入と、当該挿入後の短絡部材収容部５０への短絡部材リテーナ７０の装着と、によって、前記短絡部材３０を前記短絡部材収容部５０内に拘束して当該短絡部材３０に作用する嵌合力に対抗するのに十分な保持力で当該短絡部材３０を保持することができる。詳しくは、この実施の形態では、短絡部材収容部５０における本体側拘束部５５による拘束と、前記短絡部材リテーナ７０の各拘束片７４による拘束とによって、前記各短絡部材３０を前記短絡部材収容部５０内に拘束することができる。そして、前記短絡部材リテーナ７０とともに前記ハウジング本体ＨＢに装着される電線側端子リテーナ６０が通過許容位置にある状態で各電線側端子２０を各端子収容室４１に挿入して各第１短絡側端子部３４に嵌合した後、前記電線側端子リテーナ７０を前記通過許容位置から係止位置に移動させることにより、当該各電線側端子２０を二次係止することができる。

【0042】

すなわち、このジョイントコネクタによれば、前記短絡部材収容部５０内に収容される前記短絡部材３０の動きの少なくとも一部は、当該短絡部材３０を前記着脱方向に横切る短絡部材リテーナ７０の拘束片７４によって規制されるので、当該動きの規制のために前記短絡部材３０を前記絶縁ハウジングＨＧにきつく圧入する必要がない。従って、当該圧入による絶縁ハウジングＨＧまたは短絡部材３０の破損を伴うことなく、前記のように十分な保持力で前記短絡部材収容部５０内に前記短絡部材３０を保持することが、可能である。

【0043】

ただし、本発明は短絡部材収容部への短絡部材の圧入を完全に除外するものではない。短絡部材収容部に短絡部材が圧入される場合であってもその圧入抵抗を小さく抑えることにより、短絡部材収容部や短絡部材の破損を回避することが可能であり、かつ、その小さな圧入抵抗による保持力不足をハウジング本体への短絡部材リテーナの装着によって解消することが可能である。

【0044】

また、本発明では短絡部材の個数を問わない。本発明は、例えば単一の短絡部材のみを具備するジョイントコネクタにも適用可能である。ただし、前記実施の形態のように複数の短絡部材３０が短絡部材リテーナ７０の着脱方向と平行な方向（当該実施の形態では上下方向）に並ぶように配置され、これらの短絡部材３０を共通の短絡部材拘束部（例えば前記複数の拘束片７４）を横切るものは、複数の短絡部材３０によって多くの電線同士の短絡が可能な短絡回路を形成することができるのに加え、部品点数の少ない構造で当該複数の短絡部材３０を拘束することが可能である利点がある。

【0045】

前記実施の形態では、前記短絡部材収容部５０の本体側拘束部５５と短絡部材リテーナ７０との協働によって前記短絡部材３０が嵌合方向に拘束されるが、当該短絡部材リテーナ７０のみによって前記短絡部材３０の嵌合方向の拘束を行うことも可能である。例えば、前記本体側拘束部５５に相当する部分が前記拘束片７４と併せて前記短絡部材リテーナ７０に設けられてもよい。ただし、前記のような本体側拘束部と短絡部材リテーナとの協働による拘束は、当該短絡部材リテーナの形状を簡素化できる利点がある。

【0046】

また、短絡部材リテーナ７０が短絡部材３０を拘束する部分の形状は、前記実施の形態に係る複数の拘束片７４を含むものに限られない。例えば、短絡部材３０の第２短絡側端子部３６が省略される場合、短絡部材リテーナ７０が短絡部材３０を拘束する部分は前記基部３２のうち前記第１短絡側端子部３４と反対側の辺に沿って当該辺と当接する直線状のものであってもよい。

【0047】

さらに、本発明に係る短絡部材リテーナは前記短絡部材リテーナ７０のように電線側端子リテーナ６０と一体化されるものに限定されない。本発明は、電線側端子リテーナを具備しないジョイントコネクタや、電線側端子リテーナを具備するが当該電線側端子リテーナと短絡部材リテーナとが相互分離したジョイントコネクタも含む趣旨である。

【符号の説明】

【0048】

１０ 電線
２０ 電線側端子
３０ 短絡部材
３２ 基部
３４ 第１短絡側端子部
３６ 第２短絡側端子部
４０ 外側部
４１ 端子収容室
４２ ランス
４３ 端子保持部
５０ 短絡部材収容部
５５ 本体側拘束部
６０ 電線側端子リテーナ
７０ 短絡部材リテーナ
７４ 拘束片
８０ リテーナ連結部
ＨＧ 絶縁ハウジング
ＨＢ ハウジング本体
ＲＭ リテーナ部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】