(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動部は、プランジャーを有するソレノイドであり、前記プランジャーが前記揺動軸を前記離間方向へ押圧可能に前記揺動軸に連結されている請求項2に記載のシート給送装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態は適宜変更できる。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す図である。ここで、以下の説明においては、画像形成装置10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向6を定義する。また、画像形成装置10の手前側(
図1の紙面右側)を前として前後方向7を定義し、画像形成装置10を手前側(正面側)から見て左右方向8を定義する。
【0012】
[画像形成装置10]
図1に示されるように、画像形成装置10は、入力された画像をトナーなどの印刷材料を用いて、シート部材に印刷するプリンターである。なお、画像形成装置10は印刷機能のみを有するプリンターに限られない。例えば、プリンターやファクシミリ、複写機、或いはこれらの各機能を兼ね備えた複合機などであっても、本発明は適用可能である。
【0013】
図1に示されるように、画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成部18と、定着部19と、給紙装置15(本発明のシート給送装置の一例)と、搬送ローラー44と、画像形成装置10を統括的に制御する制御部12と、排紙部21とを備えている。これらは、画像形成装置10の外枠のカバーや内部フレームを構成する筐体14に設けられている。
【0014】
給紙装置15は、画像形成装置10の最下部に設けられている。給紙装置15は、給紙トレイ50(本発明のシート収容部の一例)と、給送機構17と、を備えている。給送機構17は、給紙トレイ50のシート部材を給送するものであり、ピックアップローラー51と、フィードローラー52(本発明の給送ローラーの一例)と、リタードローラー53(本発明の分離ローラーの一例)と、を備えている。
【0015】
給紙トレイ50は、画像形成部18によって画像が形成されるシート部材を収容するものであり、筐体14に支持されている。本実施形態では、筐体14によって給紙トレイ50が前後方向7へスライド可能に支持されている。これにより、給紙トレイ50は、筐体14に収容された位置と筐体14から前方へ引き出された位置との間で移動可能となる。
【0016】
給紙トレイ50は、底面を有する矩形状の箱形に形成されている。給紙トレイ50の内部に複数枚のシート部材が収容可能である。給紙トレイ50の底面には、リフト板54が設けられており、このリフト板54は、後端部側を基点として前端部が上昇可能に支持されている。制御部12によってモーターが駆動制御されるなどしてリフト板54に駆動力が入力されると、リフト板54の上昇が開始され、給紙トレイ50内の最上位のシート部材が給送可能な給送位置まで上昇される。給紙トレイ50の上方には不図示のセンサーが設けられており、リフト板54が前記給送位置まで上昇すると、制御部12は、前記センサーの出力信号を受けてリフト板54の上昇を停止する。なお、給紙トレイ50におけるシート部材の積載量が減少して最上位のシート部材の位置が低下すると、再びリフト板54が上昇されて前記給送位置で停止される。このようなリフト板54の上昇制御が行われることにより、給紙トレイ50内の最上位のシート部材は常に前記給送位置に配置される。
【0017】
給紙装置15に適用されるシート部材の具体例としては、所謂普通紙(Plain Paper)や、普通紙よりも厚い所謂厚紙(Heavy Paper)、コート紙、はがき、光沢紙などがある。本実施形態の給紙装置15は、いずれの種類のシート部材が収容された場合でも、給紙トレイ50からシート部材を重送することなく確実に分離して給送することができるように構成されている。
【0018】
図1に示されるように、給送機構17は、給紙トレイ50の前方部の上側に設けられている。給送機構17によって、給紙トレイ50からシート部材が給送される。
【0019】
ピックアップローラー51は、ローラーホルダー55に回転可能に支持されている。ピックアップローラー51は、左右方向8に延びる回転軸51Aを備えており、この回転軸51Aがローラーホルダー55に回転可能に支持されている。ピックアップローラー51は、給紙トレイ50の上方に位置するようにローラーホルダー55に支持されている。詳細には、ピックアップローラー51は、そのローラー面が給紙トレイ50に収容された最上位のシート部材に当接する位置に配置されている。所定の回転駆動力が回転軸51Aに入力してピックアップローラー51が回転駆動されると、ピックアップローラー51はリフト板54により押し上げられたシート部材のうち最上位のシート部材に接触摩擦による給送力を付与する。これにより、ピックアップローラー51は、ピックアップローラー51による給送方向D1の下流側のフィードローラー52へ向けてシート部材を送り出す。
【0020】
フィードローラー52は、ピックアップローラー51の回転軸51Aと平行な回転軸52Aを備える。回転軸51Aは、筐体14の内部フレームに回転可能に支持されている。言い換えると、フィードローラー52は、ピックアップローラー51による送り出し方向に直交する方向を回転軸52Aとして回転可能に支持されている。本実施形態では、ローラーホルダー55が回転軸52Aの両端部で揺動可能に支持されている。つまり、回転軸52Aがローラーホルダー55の揺動軸を兼ねている。フィードローラー52は、ピックアップローラー51に対して前記給送方向D1の下流側に配置されている。このため、ローラーホルダー55は回転軸52Aに支持されることにより、回転軸52Aを中心に揺動可能になる。これにより、ローラーホルダー55は、ピックアップローラー51のローラー面が最上位のシート部材に対して接離する方向へ揺動可能になる。
【0021】
フィードローラー52は、そのローラー面がピックアップローラー51により送り出されたシート部材に当接する位置に配置されている。モーターからの回転駆動力が回転軸52Aに入力してフィードローラー52が回転駆動されると、フィードローラー52は、ピックアップローラー51により送り出されたシート部材に接触摩擦による給送力を付与して、そのシート部材を給送方向D1の下流側の第1搬送路26に給送する。なお、フィードローラー52の回転軸52Aとピックアップローラー51の回転軸51Aとの間にはギヤ又はベルトなどによる伝達機構が介在されており、モーターから回転軸52Aに入力された回転駆動力は、前記伝達機構を介して回転軸51Aに伝達される。
【0022】
図2は、給送機構17の模式図である。
図2では、ピックアップローラー51及びローラーホルダー55の図示が省略されている。
図2に示されるように、リタードローラー53は、フィードローラー52の下方に設けられている。リタードローラー53は、後述するリタードホルダー60によって支持される。リタードホルダー60によって支持されることにより、リタードローラー53は、フィードローラー52のローラー面と接触して、フィードローラー52との間でニップ部79を形成する。リタードローラー53は、ピックアップローラー51によって一度に複数枚のシート部材が送り出されたときに、その複数枚のシート部材のうち最上位置のシート部材から他のシート部材を分離させる用途として用いられる。なお、リタードローラー53及びその支持機構については後述する。
【0023】
リタードローラー53の外周には、所定の硬度の弾性部材58が設けられている。この弾性部材58は、フィードローラー52の表面の硬度よりも小さく、例えば、JIS規格に定めるデュロメータタイプA型のゴム硬度計による測定値が25度〜50度の範囲内の弾性力を有するウレタンゴムで構成されている。つまり、リタードローラー53の外周面は、フィードローラー52の表面よりも柔らかくて弾性を有する素材で形成されている。なお、硬度25度〜50度の範囲内に属するものであれば、ウレタンゴム以外の材質、例えば、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンスポンジなどを適用してもよい。
【0024】
リタードローラー53には、トルクリミッター74が設けられている。トルクリミッター74は、リタードローラー53の回転軸53Aに取り付けられている。トルクリミッター74は、リタードローラー53の回転軸53Aが予め定められた設定値未満のトルクを受けているときにリタードローラー53と接続して静止トルクを付与する。一方、回転軸53Aが前記設定値以上のトルクを受けたときにリタードローラー53との接続を切断して前記静止トルクの伝達を遮断して、回転軸53Aに対してリタードローラー53を回転可能にする。
【0025】
画像形成装置10に対してシート部材の給送動作を開始する指示が入力されると、フィードローラー52及びピックアップローラー51が回転駆動されて、給紙トレイ50からシート部材が給送される。ピックアップローラー51によって給紙トレイ50から給送方向D1へ送り出されたシート部材がフィードローラー52によって給送可能な位置に到達すると、シート部材はフィードローラー52によって更に給送方向D1の下流側へ給送される。そして、フィードローラー52よりも下流側に配置された搬送ローラー44にシート部材が到達すると、そのタイミングでピックアップローラー51及びフィードローラー52の回転は停止される。その後、シート部材は、搬送ローラー44のみによって第1搬送路26(
図1参照)を搬送される。なお、搬送ローラー44のみによってシート部材が搬送される際に、ピックアップローラー51はワンウェイクラッチを内蔵しているため、その回転が停止している。また、ピックアップローラー51による給送時にシート部材の重送が発生していない場合は、シート部材の搬送によりフィードローラー52とリタードローラー53とは従動回転する。リタードローラー53にはトルクリミッター74が設けられているが、後述するコイルバネ71(
図3参照)によってフィードローラー52に圧接されている。そのため、リタードローラー53とシート部材との間には十分な摩擦力が生じるので、トルクリミッター74の前記静止トルクに抗って従動回転する。一方、ピックアップローラー51による給送時にシート部材の重送が発生している場合は、シート部材の搬送によりフィードローラー52は従動回転する。しかし、リタードローラー53は、重送された複数のシート部材(シート束に相当)のうち最上位のシート部材を除く他のシート部材とともに、トルクリミッター74の前記静止トルクによって停止している。これにより、リタードローラー53は、前記他のシート部材が前記最上位のシート部材につられて搬送されるのを防いでいる。前記最上位のシート部材は、停止されている下位のシート部材に接触した状態で滑りながら搬送される。
【0026】
図1に示されるように、第1搬送路26の終端近傍に画像形成部18が設けられている。画像形成部18は、外部から入力された画像データに基づいて、シート部材にトナー画像を形成する。具体的には、画像形成部18は、トナーを用いてシート部材にトナー像を転写する。画像形成部18は、感光体ドラム31と、帯電部32と、現像部33と、転写部35と、クリーニング部36と、露光部としてのLSU(Laser ScanningUnit)34とを備えている。画像形成動作が開始されると、帯電部32によって感光体ドラム31の表面が一様の電位に帯電される。また、LSU34から帯電した感光体ドラム31に対して画像データに応じてレーザー光が走査される。これにより、感光体ドラム31に静電潜像が形成される。その後、現像部33によって静電潜像にトナーが付着されて、感光体ドラム31にトナー像が現像される。そして、第1搬送路26を搬送ローラー44によって搬送されてきたシート部材に、前記トナー像が転写部35によって転写される。トナー像が形成されたシート部材は、画像形成部18よりもシート部材の搬送方向下流側に形成された第2搬送路27に搬送される。
【0027】
第2搬送路27は画像形成装置10の後方へ延びており、その終端に定着部19が設けられている。画像形成部18から第2搬送路27へ送り出されたシート部材は、第2搬送路27を通って定着部19に搬送される。定着部19は、シート部材に転写されたトナー像を熱と圧力によってそのシート部材に定着させるものであり、加熱ローラー41と加圧ローラー42とを備える。シート部材が定着部19を通過する際に、定着部19は、トナー像をシート部材に定着して、シート部材に画像を形成する。その後、シート部材は、定着部19よりもシート部材の搬送方向下流側に形成された第3搬送路28に搬送される。
【0028】
第3搬送路28は、定着部19から上方へ湾曲されてから鉛直上方へまっすぐに延び、更に前方側へ湾曲されて用紙排出口22に至っている。つまり、第3搬送路28は、定着部19から用紙排出口22までの間に形成されている。第3搬送路28には、回転駆動される複数の排紙ローラー対23が設けられている。第3搬送路28に搬送されたシート部材は、回転駆動される排紙ローラー対23によって第3搬送路28を通って上方へ搬送されて、用紙排出口22から画像形成装置10の上面に設けられた排紙部21へ排出される。
【0029】
以下、
図2及び
図3を参照して、リタードローラー53及びその支持機構の詳細について説明する。
【0030】
図2に示されるように、給送機構17は、リタードローラー53を支持するリタードホルダー60(本発明の支持部材の一例)と、リタードホルダー60に付勢力を付与するコイルバネ71(本発明の第1付勢部材の一例)と、を備えている。
【0031】
リタードホルダー60は、リタードローラー53を回転可能に軸支する。具体的には、リタードホルダー60は、リタードローラー53を収容するとともに、回転可能に支持する収容部61を有する。収容部61は、左右方向8に隔てられた一対の側壁63と、側壁63の下端を連結する底板64とによって区画される。
【0032】
リタードローラー53は、ピックアップローラー51やフィードローラー52の軸方向と同じ方向に延びる回転軸53Aを有している。側壁63の後方側に軸孔(不図示)が形成されており、回転軸53Aは前記軸穴に固定されている。リタードローラー53は、回転軸53Aに回転可能に支持されている。
【0033】
リタードホルダー60は、揺動軸65を有している。揺動軸65は、リタードローラー53の回転軸53Aよりも給送方向D1の下流側(
図2において前方側)に設けられている。揺動軸65は、側壁63の前方側に形成された貫通孔を貫通して、その両端が後述の支持プレート80に支持されている。揺動軸65は、前記貫通孔で側壁63に固定されている。具体的には、前記貫通孔に固定ブッシュ67が設けられており、固定ブッシュ67によって揺動軸65が側壁63に固定されている。これにより、リタードホルダー60は、揺動軸65を中心に揺動可能に支持されている。本実施形態では、リタードホルダー60は、リタードローラー53がフィードローラー52の周面に接触してニップ部79を形成可能な接触位置(
図2に示される位置)と、リタードローラー53がフィードローラー52から離間する離間位置との間で揺動可能に支持される。
【0034】
給紙装置15は、揺動軸65を支持する一対の支持プレート80を有する。支持プレート80は、リタードホルダー60の各側壁63よりも外側に設けられている。支持プレート80は、例えば、筐体14(
図1参照)の内部フレームの一部を構成するものである。支持プレート80は、上下方向6に長い長孔84を有する。長孔84に揺動軸65の両端が挿通されている。これにより、揺動軸65が上下方向6へ移動可能に支持されている。具体的には、
図3(A)に示されるように、支持プレート80は、接面S1から下方へ離れる離間方向へ移動可能に揺動軸65を支持する。ここで、接面S1は、フィードローラー52によってシート部材が給送されていない非給送状態において、ニップ部79における接線を含み回転軸53Aに平行な接面である。
【0035】
図3に示されるように、支持プレート80には、接面S1に近づく近接方向へ揺動軸65を付勢するコイルバネ82(本発明の第2付勢部材の一例)が設けられている。コイルバネ82は、長孔84の内部に設けられている。具体的には、コイルバネ82は、長孔84の下端84Aと揺動軸65との間に設けられている。コイルバネ82は、所謂圧縮バネであり、揺動軸65を上方へ付勢する付勢力、つまり、前記近接方向へ付勢する付勢力を揺動軸65に付与する。これにより、揺動軸65は、外力が加えられていない状態では、前記付勢力を受けて、長孔84の上端84Bに当接した状態を維持する。
【0036】
図3(A)に示されるように、リタードホルダー60が前記接触位置にある状態で、揺動軸65は、回転軸53Aと揺動軸65とを結ぶ直線と接面S1とのなす角αが5度から15度の範囲内となるように設けられている。このため、フィードローラー52との接触により従動回転するリタードローラー53には、その周面がフィードローラー52に食い込もうとする食い込み力F10が生じる。この食い込み力F10は、リタードローラー53がその回転軸53Aとは異なる位置にある揺動軸65によって揺動可能に保持されている構成において、フィードローラー52が回転駆動されるときに生じる力である。具体的には、
図3において反時計回転方向へフィードローラー52が回転駆動されると、トルクリミッター74(
図2参照)による静止トルクが作用しているリタードローラー53との間に接触による摩擦力F11(
図3(A)参照)が生じる。この摩擦力F11は、フィードローラー52とリタードローラー53とが直接に接触しているときの摩擦力だけでなく、フィードローラー52とリタードローラー53との間にシート部材が介在した状態で前記シート部材に生じる摩擦力を含む。そして、その摩擦力F11におけるリタードホルダー60の回動方向の分力がリタードローラー53をフィードローラー52側へ押しつけるように作用する。この押しつけ力が、後述するコイルバネ71の付勢力F20と合わさって前記食い込み力F10としてフィードローラー52とリタードローラー53との間に作用する。
【0037】
ここで、前記食い込み力F10は、フィードローラー52の回転駆動時にニップ部79から接面S1に沿って揺動軸65側へ向かう接線方向D11に生じる力をF12(
図4参照)とし、接面S1と直線L1とがなす角βの角度をθとすると、下記の式(1)で表すことができる。
【0038】
F10=F12*tanθ ・・・(1)
【0039】
ここで、力F12は、
図4に示されるように、ニップ部79にシート部材が存在している場合に、シート部材の上面に対して接線方向D11の方向の力としてニップ部79において生じる力である。この力F12は、ニップ部79を介して、リタードローラー53及び回転軸53Aを経てリタードホルダー60に作用する(
図4点線矢印参照)。
【0040】
力F12の大きさは、ニップ部79においてシート部材に生じている摩擦力F11にトルクリミッター74から受ける静止トルクを加えた力と同等である。この力F12は、シート部材を接線方向D11へ搬送する力としてシート部材に作用する。トルクリミッター74の設定値をMとし、リタードローラー106の半径をrとすると、リタードローラー106が従動回転するときの回転トルクF12*rは前記設定値Mに等しい(F12*r=M)。一方、ニップ部79において、リタードローラー53がフィードローラー52から受ける下方向きの垂直抗力をNとし、回転軸53Aと揺動軸65との間の距離をX、接面S1から揺動軸65までの距離をYとすると、揺動軸65の支点周りにおいて力の釣り合い関係を示す下記の式(2)が成り立つ。
【0041】
(F20−N)*X+M−F12(r−Y)=0 ・・・(2)
【0042】
前記式(2)にF*r=Mを代入して、垂直抗力Nについて整理すると、下記の式(3)となる。
【0043】
N=F12(Y/X)+F20
=F12*tanθ+F20=F10+F20・・・(3)
【0044】
つまり、前記式(3)に示されるように、垂直抗力Nには、コイルバネ71の付勢力F20に加えて、前記食い込み力F10(=F12*tanθ)が含まれることが理解できる。
【0045】
コイルバネ71は、リタードホルダー60に付勢力を付与することにより、リタードローラー53をフィードローラー52の周面に接触する方向へ付勢する。具体的には、コイルバネ71は、リタードホルダー60の底板64とバネ受け75との間に設けられている。バネ受け85は、筐体14(
図1参照)の内部フレームの一部を構成するものであり、底板64よりも下方に設けられている。本実施形態では、コイルバネ71の上端は、底板64において揺動軸65よりも給送方向D1の上流側(
図3において後方側)に連結されている。コイルバネ71は、所謂圧縮バネであり、リタードホルダー60の後方側を上方へ付勢する。上述したように、リタードホルダー60の後方側にリタードローラー53が設けられている。そのため、コイルバネ71がリタードホルダー60を上方へ付勢することにより、リタードホルダー60は、外力が加えられていない状態では、前記付勢力を受けて、前記接触位置を維持する。なお、コイルバネ71は、リタードローラー53をフィードローラー52の周面に接触させる付勢力をリタードホルダー60に付与するものであればよく、例えば、支持プレート80とリタードホルダー60との間に設けられたコイルバネやねじりコイルバネなどであってもよい。
【0046】
このように給送機構17が構成されているため、
図3(A)に示されるように、シート部材がニップ部79に進入していない状態では、コイルバネ71による上方への付勢力F20を受けて、リタードホルダー60は、リタードローラー53がフィードローラー52の周面に接触した前記接触位置に維持される。このときの接面S1と直線L1とがなす角βの角度を角度θ1とする。ここで、角度θ1は、0°よりも大きく90°よりも小さい範囲内(0°<θ1<90°)の角度である。また、直線L1は、ニップ部79における接点(リタードローラー53とフィードローラー52との接点)と揺動軸65の中心とを通る。
【0047】
従来の分離機構では、給送されるシート部材の枚数が増えると、リタードローラー53の表面が摩耗して摩擦係数が低下し、分離性能が低下し、このため、シート部材が重送されてニップ部79に搬送されたときに、リタードローラー53と下側のシート部材との間に十分な摩擦力が生じず、シート部材を分離することができない場合がある。一方、摩耗による分離性能の低下を見込んで、フィードローラー52とリタードローラー53との圧接力を大きくすると、比較的厚みの大きい所謂厚紙がニップ部79に搬送されると、ニップ部79における厚紙に対する圧接力が過大となり、厚紙が給送されないなどの給送不良を生じるおそれがある。
【0048】
本実施形態では、シート部材がピックアップローラー51によって給送されてニップ部79に進入すると、シート部材がリタードローラー53をコイルバネ71の付勢力に抗して下方へ押圧する。このとき、リタードローラー53の回転軸53Aを介してリタードホルダー60にも下方の押圧力が作用する。この下方の押圧力は、コイルバネ82の付勢力に抗して揺動軸65を接面S1から離反する方向(下方)へ押し下げる。なお、前記押圧力によってリタードホルダー60が下方へ押し下げられるように、コイルバネ71及びコイルバネ82それぞれの付勢力や、揺動軸65に対する回転軸53Aの位置、リタードホルダー60の重量などが定められている。揺動軸65が長孔84内を下方へ押し下げられると、接面S1と直線L1とがなす角βは、角度θ1よりも大きい角度θ2となる。ここで、角度θ2は、0°よりも大きく90°よりも小さい範囲内の角度である。また、直線L1は、ニップ部79における接点(シート部材とフィードローラー52との接点)と揺動軸65の中心とを通る。つまり、シート部材がニップ部79に進入すると、角βは、前記角度θ1よりも大きい前記角度θ2となるように揺動軸65が移動する。このように、シート部材がニップ部79に進入したことにより、角βの角度が拡大するため、前記食い込み力F10が大きくなる。なお、リタードホルダー60が下方へ移動したことによりコイルバネ71の付勢力F20が大きくなるが、前記食い込み力F10の増大に比べると過小である。
【0049】
このため、シート部材が重送された場合でも、シート部材のニップ部79への進入によって、食い込み力F10が増大する。したがって、リタードローラー53の表面が摩耗して摩擦係数が低下していても、シート部材とリタードローラー53との間に十分な摩擦力が生じるため、分離性能が低下することがなくなり、重送を好適に防止することができる。また、比較的厚みの大きいシート部材(所謂厚紙)が重送された場合は、シート部材の厚みが大きければ大きい程、角βの角度が拡大するため、前記食い込み力F10が増大する。そのため、厚紙が重送された場合でも、分離性能が低下せず、重送を防止することができる。つまり、本実施形態の給紙装置15では、給送されるシート部材の厚みに応じて良好にシート部材を分離することが可能である。
【0050】
なお、上述の実施形態では、長孔84を上下に長い形状としたが、長孔84は、直線L1に対して垂直な方向に長い形状のものであってもよい。この場合、揺動軸65長孔84内を移動する移動量に対する各βの拡大度合いが上下に長い形状の場合に比べて大きくなる。また、長孔84は、ニップ部79を中心点として揺動軸65の中心を通る仮想円の円弧に沿って長い円弧形状のものであってもよい。
【0051】
〔第2実施形態〕
以下、
図5を参照して、本発明の第2実施形態の給送機構17Aについて説明する。本発明の第2実施形態の給送機構17Aが上述の第1実施形態と異なるところは、ソレノイド90(本発明の駆動部の一例)が設けられている点と、コイルバネ82が設けられていない点である。
【0052】
図5に示されるように、ソレノイド90は、プランジャー91を有している。ソレノイド90は、リタードホルダー60に駆動力を付与するため、プランジャー91の先端がリンク部材92を介して揺動軸65に連結されている。ソレノイド90は、駆動信号が入力された場合にプランジャー91が突出し、駆動信号が途切れた場合に、内蔵された引っ張りバネによって元の位置までプランジャー91を引き戻す。ソレノイド90の駆動は制御部12(
図1参照)によって制御される。
【0053】
リンク部材92は、プランジャー91が揺動軸65を前記離間方向へ押圧可能なように揺動軸65に連結されている。具体的には、ソレノイド90が駆動していない状態で、リンク部材92の一方端は揺動軸65に連結されており、他方端は、揺動軸65の高さ位置よりも高い位置でプランジャー91の先端に連結されている。
【0054】
本実施形態では、制御部12は、給紙トレイ50に予め定められた厚み以上のシート部材(所謂厚紙)が収容されている場合に、ソレノイド90を制御して揺動軸65を前記離間方向へ移動させる駆動力をリンク部材92を介して揺動軸65に付与する。給紙トレイ50に予め定められた厚みのシート部材が収容されているかどうかの判定は、例えば、ユーザーによって画像形成装置10に予め登録されたシート種別情報に基づいて行われる。このシート種別情報は、給紙トレイ50に収容されているシート部材の厚みを含む情報であり、制御部12に含まれる記憶部に記憶されている。また、画像形成装置10に入力されたプリントジョブ情報にシート部材の厚み情報が含まれている場合は、そのプリントジョブ情報に基づいて判定することも可能である。
【0055】
図5(A)はソレノイド90が駆動していない状態を示し、
図5(B)はソレノイド90が駆動した状態を示している。
図5(A)に示されるように、ソレノイド90が駆動していない状態では、リタードホルダー60は、前記接触位置を維持している。この状態で、制御部12がソレノイド90に駆動信号を出力すると、ソレノイド90のプランジャー91が突出し、リンク部材92が揺動軸65を動作させる。具体的には、プランジャー91の突出により揺動軸65は、前記離間方向へ動作する。これにより、リタードホルダー60は、揺動軸65を中心に
図5(B)において時計回転方向へ揺動する。また、コイルバネ71の付勢力によってリタードローラー53は上方へ付勢されているので、リタードローラー53はフィードローラー52に接触した状態を維持する。このとき、
図5(B)に示されるように、角βは、角度θ1よりも大きい角度θ2に拡大されるので、食い込み力F10が増大する。
【0056】
このように、給送機構17Aが構成されているため、シート部材に対するリタードローラー53の摩擦力が低下して増大前の食い込み力F10では厚紙の分離ができない状態になっていたとしても、厚紙が給送される場合だけリタードホルダー60の揺動軸65が前記離間方向へ移動して前記食い込み力F10が増大する。このため、厚紙が重送された場合でも、リタードローラー53の摩擦力低下の影響を受けずに、厚紙を確実に分離することが可能である。
【0057】
なお、上述の実施形態では、駆動部の一例としてソレノイド90を例示したが、ソレノイド90に代えて、モーターなどの駆動部を適用してもよい。
【0058】
〔第3実施形態〕
以下、
図6を参照して、本発明の第3実施形態の給送機構17Bについて説明する。本発明の第3実施形態の給送機構17Bが上述の第2実施形態と異なるところは、リタードローラー53の回転軸53Aに、リタードローラー53の回転の有無を検出するためのロータリーエンコーダー95(本発明の回転検出センサーの一例)が設けられている点である。
【0059】
ロータリーエンコーダー95は、リタードローラー53の回転数に応じた検出信号を制御部12に出力する。制御部12は、その検出信号に基づいてリタードローラー53が回転しているか、停止しているかを判断する。また、制御部12は、リタードローラー53が回転している場合は、その回転数を判定する。
【0060】
例えば、リタードローラー53のシート部材に対する摩擦力が十分にある場合は、1枚のシート部材がニップ部79に進入した場合、リタードローラー53は、フィードローラー52と同じ回転数(回転速度)で回転する。一方、摩擦力が十分にある場合は、シート部材が重送された状態でニップ部79に搬送されるとリタードローラー53が停止する。この場合は、シート部材の分離が正しく行われていると考えられる。他方、リタードローラー53のシート部材に対する摩擦力が足りない場合、詳細には、リタードローラー53のシート部材に対する摩擦力がシート部材間の摩擦力よりも小さい場合は、シート部材が重送された状態でニップ部79に搬送されても、リタードローラー53に接触しているシート部材が滑るため、そのシート部材は停止せず、シート部材が重送したまま搬送されます。また、この場合、リタードローラー53は、シート部材との間で生じる滑りなどによって回転が安定しなくなり、結果的にフィードローラー52の回転数よりも遅い速度で回転する。この場合、制御部12は、フィードローラー52の回転駆動時に、ロータリーエンコーダー95からの検出信号に基づいて、リタードローラー53の回転数がフィードローラー52の回転数よりも遅いことを判定することができる。このとき、制御部12は、ソレノイド90を駆動させて、揺動軸65を前記離間方向へ移動させる。
【0061】
このように、給送機構17Bが構成されているため、制御部12によって揺動軸65が前記離間方向へ移動されることにより、前記角βは、前記角度θ1よりも大きい角度θ2に拡大され、食い込み力F10が増大する。その結果、摩耗などによりリタードローラー53のシート部材に対する摩擦力が低下して分離性能が低下した場合でも、食い込み力F10が増大するため、シート部材の重送を確実に防止することができる。