(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の構成では、ケースの内部に水が浸入することについては対策が十分になされていなかった。このため、ケースの内部に水が浸入すること自体を抑制することが望まれていた。この点、ケース内への水の浸入経路をシール部材でシールすることも考えられるが、部品点数の増加等によりコストの増大を招くため、現実的でない。
【0007】
本明細書に開示する技術は、上記事情に基づいて完成されたものであって、簡易な構成により、ケース内への水の浸入が抑制された電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書が開示する電気接続箱は、回路構成体と、上壁を備えて前記回路構成体を収容する収容部が設けられた第1ケースと、前記第1ケースに係止されて前記収容部を覆う第2ケースと、を備え、前記収容部の前記上壁の上面には、前記第1ケースと前記第2ケースの境界から浸入する水を貯留する凹状の貯留部が設けられており、前記第2ケースは、前記貯留部の上方を覆うとともに、前記貯留部の上端縁と当該第2ケースの内面との間隔が所定の寸法以下となるように前記第1ケースに係止されている。
【0009】
上記構成によれば、第1ケースと第2ケースの境界から浸入する水が少量であれば、これを収容部の外側に位置する貯留部内に溜めることで、収容部への水の浸入を抑制できる。上記構成において、貯留部の上端縁と第2ケースの内面との間隔を規定する所定の寸法を、例えば貯留部内に溜められた水の限界盛り上がり高さ以下とすれば、第1ケースと第2ケースの境界から浸入する水の量が増加して貯留部内が満たされると、貯留部を満たした水が第2ケースの内面に接触して第1ケースと第2ケースとが表面張力(ラプラス力)によって張り付いた状態となり、ケース内部への水の浸入が抑制される。なお、本明細書において「限界盛り上がり高さ」とは、凹状の貯留部内に注水した場合に、その上端縁を超えて水面が盛り上がりオーバーフローするまでの過程において、最高位となる水面の貯留部側壁上縁からの高さをいう。
【0010】
本明細書が開示する電気接続箱において、前記貯留部は、前記第1ケースの前記上壁の上面に複数個が、前記第2ケースの端縁に沿って並んで設けられていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、第2ケースの端縁の特定の部分から水が浸入した場合、浸入した水は当該部分に臨む貯留部内に溜まる。当該貯留部を満たした水が、第2ケースの内面と接触すると、この部分において第1ケースと第2ケースとが張り付いた状態となって、水の浸入が抑制される。このように、水が特定の部分から継続的に浸入するような場合に、当該部分に臨む比較的容量の小さな貯留部内が満たされた時点で、ケース内への水の浸入を迅速に抑制することができる。
【0012】
本明細書が開示する電気接続箱において、前記第1ケースは前記上壁の両側縁から下方に垂下する左壁および右壁を有し、前記第1ケースの前記上壁の上面には、前記第2ケースの端縁と反対側において前記貯留部に隣接する位置に、前記左壁および前記右壁の少なくとも一方に形成された側部排水路に至る上部排水路が設けられており、前記第2ケースが前記第1ケースに係止された状態において、前記側部排水路と前記第2ケースの外側が連通して、前記側部排水路に流れる水を前記第2ケースの外側に排出する排水口が形成されるものであってもよい。
【0013】
上記構成によれば、貯留部から水が溢れた場合でも、上部排水路、側部排水路、および排水口を通じて、円滑に電気接続箱外に排水できる。
【0014】
本明細書が開示する電気接続箱において、前記貯留部の前記上部排水路側の側壁の上端には、前記上部排水路側に向けて下降傾斜する傾斜面が形成されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、貯留部から溢れた水を排水路に向けて確実に誘導することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成により、ケース内への水の浸入が抑制された電気接続箱を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、
図1ないし
図16によって説明する。
本実施形態に係る電気接続箱1の外観を、
図1および
図2に示す。電気接続箱1は、図示しない電源と、ランプ、モータ等の車載電装品(図示せず)との間に配設されて、例えば、車載電装品のスイッチングを実行する。電気接続箱1は、
図1の右下手前を上(左上奥を下)、左下手前を右(右上奥を左)、上手前を前(下奥を後)とするように配設される。下記の説明では、上記の配設方向に従って方向を表記し、各図面には方向線を付す。
【0019】
図1および
図2に示す電気接続箱1は、回路基板2(回路構成体の一例。
図7等参照)と、回路構成体2を収容する収容部13(
図6等参照)を有する第1ケース10と、第1ケース10の外面に係止される絶縁樹脂製の第2ケース20と、を備える。
【0020】
回路基板2には、プリント配線技術により図示しない導電路が形成されており、各種電子部品(図示せず)が接続されている。
図2等に示すように、電気接続箱1の下面には2つのコネクタ嵌合部18が突設されており、図示しないコネクタが嵌合されて、回路構成体2と電気的に接続される。
【0021】
第1ケース10について、主として
図3を参照しつつ説明する。
第1ケース10は、前側および後側に開口する略矩形枠状の概形をなす絶縁樹脂製のフレーム11と、フレーム11の後側の開口を塞ぐように固着される金属製のヒートシンク19とを備えて構成される。
フレーム11の内方、ヒートシンク19の前側には、回路基板2を垂直姿勢で収容する収容部13が設けられている。また、ヒートシンク19が固着されるフレーム11の開口周縁には、フレーム縁部12が外側に張り出すように形成されている。
【0022】
第1ケース10のフレーム11において、収容部13に収容された回路基板2の上面を覆う上壁15の上面には、フレーム縁部12から前側に向かって、上側に開口する凹状に形成された複数の貯留部31、前側に向かって下降傾斜する傾斜面34、左側および右側に向かって下降傾斜する上部排水路32、上側に突出するフランジ36が、順に並んで形成されている。
【0023】
図6、
図8、
図10、
図12および
図14にも表されているように、フランジ36および上部排水路32の下側には、複数の肉抜き部37が設けられ、フレーム11の反り防止および軽量化が図られている。
【0024】
貯留部31は、
図11等にも表されているように、フレーム縁部12の前面に沿って、複数個が並んで設けられ、貯留部31の後面は、フレーム縁部12の前面から連なっている。第2ケース20は、
図7等に表されているように、その後縁をフレーム縁部12の前面に当接させた状態で、第1ケース10に係止されるため、これらの境界面から浸入した水は、そのまま貯留部31内に流れ込む。貯留部31の配設状態等については、後に詳述する。
【0025】
また、貯留部31は、
図14等にも表されているように、肉抜き部37の後方に配設されている。内部に水を貯めていない状態では、肉抜き部37と同様、フレーム11の反り防止および軽量化に寄与しうるものとなっており、第1ケース10の内部空間が有効活用されている。
【0026】
貯留部31の前側の上端縁には、
図7、
図9、
図13および
図14にも表されているように、上部排水路32側に向けて下降傾斜する傾斜面34が形成されている。
図6および
図12にも示すように、上部排水路32は、左右方向の中央部が最も高く、左右両端側に向けて下降するように形成されており、上部排水路32を流れる水は、傾斜に沿って確実に左右両側面に向けて流れ落ちるようになっている。
【0027】
上部排水路32は、
図6および
図12にも表されているように、中央部が最も高く、左側および右側に向かって下降傾斜するように形成されている。また、その前側には、
図7、
図9、
図13および
図14にも表されているように、フランジ36が上方に突出するように形成されて、収容部13前面の開口への水の到達を規制している。貯留部31から溢れて傾斜面34を流下し、上部排水路32に達した水は、フランジ36で堰き止められ、上部排水路32の傾斜に沿って左右両側に向けて流れ落ちるように誘導される。
【0028】
上部排水路32の左右両端は、
図9および
図10等にも表されているように、第1ケースの左壁16および右壁17の外面に形成されている側部排水路33に連なっている。側部排水路33は、フランジ36の後面が、第1ケース10の左壁16および右壁17において後側に向かって張り出すことで下方に先細りとなり、フレーム縁部12に沿って延出するように形成されている。そして、第1ケース10の左壁16からは係止部14Cが、右壁17からは係止部14A,14Bが、これらの後面と、側部排水路33の前側の縁部とが面一となるように、突設されている。
【0029】
続いて、第2ケース20について説明する。
図1および
図2に示すように、第2ケース20は、後側に開口する箱型に形成されており、右面に2つ、左面に1つ、下面に1つ形成された被係止部24(24A,24B,24C,24D)を有する。
図4等に示すように、これらの被係止部24が、第1ケース10のフレーム11外面において対応する箇所に設けられた係止部14(14A,14B,14C,14D)に係止されることによって、第2ケース20が、第1ケース10の収容部13を覆いつつ係止される。
【0030】
続いて、第2ケース20の第1ケース10への取り付けに伴う排水口35の形成について、説明する。
図5に示すように、係止部14と被係止部24との係止部分のうち、電気接続箱1の下面に形成されている係止部14Dおよび被係止部24Dを除く係止部分には、これらが係止された状態において排水口35が形成される。
【0031】
第2ケース20の被係止部24A,24B,24Cは、
図1および
図2等に示すように、第2ケース20の左面または右面から外側に膨出するように設けられており、第1ケース10の左壁16または右壁17から突設された係止部14A,14B,14Cに外側から覆い被さるように係止される被係止片25A,25B,25Cを有している。被係止片25A,25B,25Cの内側には係止部14A,14B,14Cの後面に係止される爪部(図示しない)が突設され、上側および下側にはそれぞれスリットが設けられて、被係止片25A,25B,25Cの後端が自由端とされている。これにより、第2ケース20が第1ケース10の外側から押し嵌められると、被係止片25A,25B,25Cが、内側の爪部が係止部14A,14B,14Cに当接して、外方に変位する。第2ケース20がさらに押し込まれ、爪部が係止部14A,14B,14Cを乗りこえると、被係止片25A,25B,25Cは弾性回復し、爪部が係止部14A,14B,14Cの後面に係止される。この結果、被係止部24が係止部14に対して抜け止めされ、第2ケース20が第1ケース10に取付けられるようになっている。
【0032】
ここで、スリットに挟まれた被係止片25A,25B,25Cの後端は、被係止部24A,24B,24Cが係止部14A,14B,14Cに係止された状態において、第1ケース10の左壁16または右壁17の外面に配された側部排水路33の上方に隙間を空けた状態で配される。この結果、係止部14A,14B,14Cの後側に配設されている側部排水路33は、被係止片25A,25B,25Cの内側において第2ケース20の外側に連通され、排水口35が形成される。貯留部31、傾斜面34、上部排水路32、側部排水路33を経て流れてきた水は、この排水口35を通じて第2ケース20の外側に排水される。
【0033】
なお、本実施形態では、
図3等に示すように、側部排水路33は、左壁16および右壁17の全長に亘って、すなわち係止部14A,14B,14Cの形成位置に臨みつつ下端に至るまで、形成されており、排水口35で排出されなかった水は、そのまま側部排水路33の下端まで流下して、第1ケース10と第2ケース20との境界面から下方へと排水される。
【0034】
続いて、貯留部31に対する第2ケース20の配設状態等について、貯留部31を満たした水Wと第2ケース20の内面との位置関係を模式的に表した
図15および
図16を参照しつつ、説明する。
貯留部31内を満たした水Wは、
図15の一部に示すように、表面張力によって、貯留部31の上端縁から盛り上がった状態となる。さらに注水すると、一定の高さを超えて盛り上がった水面は崩落し、オーバーフローする。このように、貯留部31内に注水した場合に、その上端縁を超えて水面が盛り上がりオーバーフローするまでの過程において、最高位となる水面の貯留部31側壁上縁からの高さを、限界盛り上がり高さh
0とする。
【0035】
図15は、本明細書に開示する技術と対比するために、貯留部31の上端縁と第2ケース20の内面との間隔Hが、貯留部31内に溜められた水Wの限界盛り上がり高さh
0よりも大きくなるように設定された状態を示したものである。このような配設状態では、貯留部31内を満たした水Wは、第2ケース20の内面に接触することなくオーバーフローし、傾斜面34を通って上部排水路32に流出する。
【0036】
これに対し、
図16は、貯留部31の上端縁と第2ケース20の内面との間隔Hが、貯留部31内に溜められた水Wの限界盛り上がり高さh
0よりも小さくなるように設定された状態を示している。このような配設状態では、貯留部31内に溜められて表面張力によって盛り上がった水Wは、第2ケース20の内面と接触する。
図16のように、メニスカスを形成した水Wの内部に働くラプラス力が、第2ケース20と貯留部31とをくっつけようとすることで、第2ケース20は第1ケース10に張り付いた状態となる。この結果、第2ケース20と第1ケース10との境界部分からの水の浸入が防止される。
【0037】
本実施形態に係る電気接続箱1では、貯留部31の上端縁と第2ケース20の内面との間隔を規定する所定の寸法を、前述の限界盛り上がり高さh
0とする。これにより、貯留部31は、これを満たした水Wが、第1ケース10に係止された第2ケース20の内面に接触可能となるように、すなわち
図16に表される状況を生じうるように、配設される。
【0038】
以下、本実施形態の作用について説明する。
車両に搭載される電気接続箱1においては、降雨時や、洗車時等において、その上面に水が付着する場合がある。付着した水が、第1ケース10と第2ケース20とのわずかな隙間を通って第2ケース20の内側に浸入すると、第2ケース20の端縁に沿って第1ケース10の上壁15の上面に形成された貯留部31内に流れ込んで溜められる。さらに水が浸入して貯留部31が満たされると、この水が第2ケース20の内面に接触することで、第2ケース20が第1ケース10に張り付いた状態となり、水の浸入が抑制される。
【0039】
貯留部31からオーバーフローした水は、傾斜面34を流下して、上壁15の上面において貯留部31に隣接するように設けられた上部排水路32に流れ込む。上部排水路32に流れ込んだ水は、傾斜に沿って両側に向けて流れて左壁16および右壁17に設けられた側部排水路33に達する。側部排水路33を流下する水は、係止部14A,14B,14Cと被係止部24A,24B,24Cとの係止部分において被係止片25A,25B,25Cの内側に形成された排水口35を通じて、或いは、側部排水路33の下端において第1ケース10と第2ケース20との境界面から、第2ケース20の外側に排出される。
【0040】
以下、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、第1ケース10と第2ケース20の境界から浸入する水が少量であれば、これを収容部13の外側に位置する貯留部31内に溜めることで、収容部13への水の浸入を抑制できる。第1ケース10と第2ケース20の境界から浸入する水の量が増加すると、貯留部31を満たした水が第2ケース20の内面に接触することで、第1ケース10と第2ケース20とが表面張力(ラプラス力)によって張り付いた状態となり、水の浸入が抑制される。
【0041】
本実施形態によれば、第2ケース20の端縁の特定部分から水が浸入するような場合、浸入した水は、第1ケース10の上壁15上面に並んで設けられた複数個の貯留部31のうち、水が浸入する部分に臨む貯留部31内に溜まる。当該貯留部31を満たした水が、第2ケース20の内面と接触すると、この部分において第1ケース10と第2ケース20とが張り付いた状態となって水の浸入が抑制される。よって、水が浸入する部分に臨む比較的容量の小さな貯留部31内が満たされた時点で、迅速に水の浸入を抑制することができる。
【0042】
本実施形態によれば、貯留部31から水が溢れた場合でも、上部排水路32、側部排水路33、および排水口35等を通じて、円滑に電気接続箱1外に排水できる。ここで、貯留部31から溢れた水は、傾斜面34により、上部排水路32に向けて確実に誘導することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、貯留部31の上端縁と係止状態にある第2ケース20の内面との間に、貯留部31内に溜められた水Wの限界盛り上がり高さよりも小さな隙間が形成される構成としたが、貯留部31の上端縁が第2ケース20の内面にぴったり当接する構成であってもよい。
(2)上記実施形態では、上部排水路32は、両側に向けて下降傾斜する構成とし、第1ケース10の左壁16および右壁17の両側面に側部排水路33を設けたが、これに限定されない。一端部を高くして、片側に向けて下降傾斜するものとし、第1ケース10の左壁16または右壁17のいずか一方のみに、側部排水路33を設けてもよい。
(3)上記実施形態では、排水口35は、第1ケース10と第2ケース20との係止部分において形成される構成としたが、このようなものに限定されない。係止部分とは異なる部分に、側部排水路33と第2ケース20の外側とを連通させるような排水口を設けてもよい。
(4)排水口35の数および配置、係止部14および被係止部24の数および配置も、上記実施形態のものに限定されない。
(5)上記実施形態では、電気接続箱1内に、回路構成体として1枚の回路基板2が収容される構成としたが、回路構成体として、複数の回路基板等が含まれる構成であってもよい。複数の回路基板等が含まれる場合、全ての回路基板等が第1ケースの収容部内に収容される必要はなく、収容部の外側や上方等に保持されるものがあってもよい。収容部の外側に保持される回路基板等がある場合、これらには防水コーティングが施されていることが好ましい。