(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルバメート化合物より前記イソシアネート化合物を製造する際の反応圧力が、絶対圧0.1kPa〜101.33kPaである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明について詳細に説明する。以下の3つの内容について説明する。
【0044】
(A)固体触媒の構成
(B)固体触媒の調製方法
(C)イソシアネート化合物の製造方法
【0045】
[(A)固体触媒の構成]
本発明の固体触媒は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属化合物、及びシリカを含む、好適にはイソシアネート化合物の製造に用いられる触媒である。本発明の固体触媒は他の触媒と組み合わせて使用することができ、それゆえ本発明の固体触媒には、前記の金属化合物とシリカとを含む固体触媒に対し、前記の金属化合物とシリカとは異なる無機化合物とを含む固体触媒を物理的に混合したものも含まれる。
【0046】
本発明の固体触媒においては、その表面における前記金属化合物における金属原子とシリカにおける珪素原子との原子比(M/Si)が0.5〜20であり、選択性や収率の観点からより好ましくは0.7〜10、更に好ましくは0.8〜10、特に好ましくは1〜6である。このように触媒の表面における金属化合物(これが主に触媒反応に寄与するものと考えられる)における金属原子とシリカにおける珪素原子との原子数の比率を一定の範囲にすることによって、優れた選択性及び収率を達成することができる。
【0047】
なお、本明細書において、前述の固体触媒の表面における原子比(M/Si)は、X線光電子分析装置(ESCA)で測定した値である。
【0048】
また、本発明の固体触媒は、その窒素ガス吸着法により測定される比表面積が0.01m
2/g〜50m
2/gであり、選択性や収率の観点からより好ましくは0.1m
2/g〜10m
2/g、更に好ましくは0.1m
2/g〜5m
2/g、特に好ましくは0.2m
2/g〜3m
2/gである。
【0049】
シリカには細孔が存在するが、その細孔は大きくミクロ孔、メゾ孔、マクロ孔の3つに分けられる。ミクロ孔は直径2nm未満、メゾ孔は直径2nm〜50nm、マクロ孔は直径が50nmより大きい細孔である(例えば、Carbon,2008,850−857.参照)。
【0050】
ミクロ孔やメゾ孔は触媒に多くの反応点を与えるが、一方でその部分に反応基質が強く結合して、反応が終了しても生成物がそこから脱離しない場合や、目的としていない反応が進行することが考えられる。本発明においては、例えば後述する所定の方法によりシリカを処理し、固体触媒の比表面積を一定の範囲に制御してこれらミクロ孔やメゾ孔を減らすことで、前記の不利点を克服しているものと考えられる。
【0051】
なお、本発明の固体触媒においては、シリカ以外に、例えば、活性炭;アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物;チタニアシリカ、チタニアジルコニア、ジルコニアシリカ、ハイドロタルサイト等の複合金属酸化物;カオリン、スメクタイト、ベントナイト、クロライト、イライト等の粘土鉱物;ゼオライト等のメタロシリケート;シリカゾル、アルミナゾル等の金属酸化物前駆体を使用することができ、これらと、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属化合物とを含む固体触媒も、優れた選択性や収率を達成しうる。
【0052】
これらの中では好ましくは金属酸化物及び複合金属酸化物、より好ましくはアルミナ及びシリカアルミナである。
【0053】
本発明で使用するシリカとして、好ましくは非晶質シリカが挙げられる。当該非晶質シリカとしては、乾式法又は湿式法で製造した合成非晶質シリカのいずれも使用することができる。また、非晶質シリカは、例えば、水分を含んだ市販品をそのまま、後述する、触媒調製工程の(2)前焼成工程や(3)吸着工程に供することができる。さらに、シリカゲルも好適に使用することができる。
【0054】
また、シリカとして多孔質シリカも使用可能である。その例としては、富士シリシア化学社製 キャリアクトQ10、キャリアクトQ50、キャリアクトQ100、キャリアクトQ300等が挙げられる。多孔質シリカは、装置に適用できるように篩い分けして使用することもできる。
【0055】
本発明で使用されるシリカの粒子径は、特に限定されないが、通常、0.5mm〜10mmである。
【0056】
また、前記シリカの、水銀圧入法により測定されるメジアン細孔直径は、通常8nm〜300μm、好ましくは10nm〜50μm、より好ましくは50nm〜20μmであり、更に好ましくは0.1μm〜10μmである。なお、シリカの細孔直径は、窒素ガス吸着法及び水銀圧入法いずれの方法でも測定することができる。
【0057】
また、前述の多孔質シリカの細孔容積及び比表面積は、窒素ガス吸着法及び水銀圧入法のいずれの方法でも測定することができる。ただし、細孔容積及び比表面積は、多孔質シリカの細孔径が0.4nm〜200nmのとき、窒素ガス吸着法により測定でき、細孔径が3.6nm〜400μmのときは水銀圧入法で測定できる。細孔径が3.6nm〜200nmのときは、窒素ガス吸着法と水銀圧入法のいずれの方法でも測定することができる。
【0058】
この多孔質シリカは、反応活性及び選択性の点から、水銀圧入法により測定した細孔容積が0.01mL/g〜2mL/gであることが好ましく、より好ましくは0.1mL/g〜1.5mL/gであり、更に好ましくは0.3mL/g〜1mL/gである。また、多孔質シリカの水銀圧入法により測定した比表面積が0.01m
2/g〜100m
2/gであることが好ましく、より好ましくは0.1m
2/g〜80m
2/gであり、更に好ましくは0.3m
2/g〜50m
2/gである。
【0059】
同時に、窒素ガス吸着法により測定した多孔質シリカの細孔容積が0.0001mL/g〜1mL/gであることが好ましく、より好ましくは0.0002mL/g〜0.8mL/gであり、更に好ましくは0.0004mL/g〜0.5mL/gである。また、多孔質シリカの窒素ガス吸着法により測定した比表面積が0.01m
2/g〜1000m
2/gであることが好ましく、より好ましくは0.01m
2/g〜100m
2/gであり、更に好ましくは0.01m
2/g〜50m
2/gであり、特に好ましくは0.1m
2/g〜10m
2/gである。
【0060】
以上説明したシリカは、本発明において、いずれかのものを1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
本発明の固体触媒には、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属化合物が使用される。当該金属化合物におけるアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムが挙げられる。また前記金属化合物におけるアルカリ土類金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウムであり(つまりアルカリ金属化合物として好ましくはナトリウム化合物及びセシウム化合物であり、アルカリ土類金属化合物として好ましくはマグネシウム化合物及びカルシウム化合物である)、更に好ましくは、カルシウムである。
【0062】
また、前記金属化合物はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の、所定の元素との化合物である限り特に限定されないが、当該金属化合物として例えば、金属酸化物や、シリカとの複合酸化物等が挙げられる。
【0063】
また、以下に説明する本発明の固体触媒の調製時には、まずシリカにアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を吸着させ、そして焼成する。この吸着工程の際に使用される金属化合物としては、例えば、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の無機酸塩;フッ化物、塩化物等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;及び、酢酸塩、シュウ酸塩等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の有機酸塩が挙げられる。さらに、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は水和物であってもよい。
【0064】
本発明の固体触媒においては、固体触媒全体の質量に対して、以上説明した金属化合物の含有量の合計は、各金属原子に換算して、好ましくは、0.01質量%〜50質量%、より好ましくは、0.05質量%〜30質量%、更に好ましくは、0.1質量%〜20質量%である。なお、固体触媒における金属化合物の含有量は、例えば、蛍光X線元素分析法(XRF)あるいはICP−AES法等を用いて、測定することができる。
【0065】
また、本発明の固体触媒の粒径は、通常1mm〜10mm、好ましくは1mm〜5mmである。
【0066】
[(B)固体触媒の調製方法]
次に、本発明の固体触媒の製造方法について説明する。本発明の固体触媒は、例えば、700℃〜1200℃で1〜20時間焼成したシリカに、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属化合物を吸着させ、当該金属化合物を吸着させた焼成シリカを300℃〜1200℃で1〜40時間焼成することにより調製することができる。より具体的には、例えば以下のような手順で調製する。
【0067】
(1)合成工程;シリカを合成する。
(2)前焼成工程;得られたシリカを焼成し、ミクロ孔とメゾ孔を低減する。
(3)吸着工程;含浸法等により、金属化合物をシリカに吸着させる。
(4)乾燥工程;得られた固体を必要に応じて乾燥する。
(5)焼成工程;必要に応じて乾燥した後の固体を焼成する。
これら5工程の中で、重要な(2)及び(5)の工程から説明する。
【0068】
(2)前焼成工程
本発明の固体触媒を調製する際に使用するシリカは、金属化合物を吸着させる前に、前述のミクロ孔とメゾ孔を低減する目的で焼成処理する必要がある。
【0069】
前記の焼成処理における温度は、700℃〜1200℃と高温である必要があり、選択性及び収率の観点からより好ましくは800℃〜1100℃、更に好ましくは900℃〜1000℃である。
【0070】
この範囲とすることで、シリカにおけるミクロ孔及びメゾ孔を低減し、その後の各工程を経て得られる本発明の固体触媒の窒素ガス吸着法で測定した比表面積を、前述の範囲に制御することができる。その結果、基質が反応後本発明の固体触媒から好適に脱離しやすく、目的の反応以外の反応が低減されるものと考えられる。なお、本前焼成工程(2)の前の合成工程(1)の段階でシリカの比表面積が所定の範囲にあり、本工程(2)を実施せずとも後述する(3)〜(5)の工程を経ることで、本発明で規定される固体触媒の比表面積の範囲が達成される場合がある。従って、本発明の固体触媒の製造方法においては、本工程(2)は省略してもよい場合がある。なお、工程(2)を省略してもよくなる、工程(1)の段階でのシリカの比表面積のおおよその範囲は、当業者に期待される合理的な程度の試験を実施することで、当業者が容易に把握することができる。
【0071】
また、本発明で金属化合物をシリカに吸着させる前にシリカを焼成処理する時間は、前述の温度範囲内で1〜20時間、より好ましくは1〜10時間である。この範囲とすることで、本発明の固体触媒の窒素ガス吸着法で測定した比表面積を前述の範囲に制御することができる。
【0072】
なお、均一な焼成の観点から、前焼成工程(2)で使用するシリカは、ふるい分けするなどして、その粒径を1mm〜10mm、より好ましくは1mm〜5mmにそろえてから、焼成することが望ましい。
【0073】
(5)焼成工程
工程(2)でシリカを前焼成した後、後述する工程(3)において金属化合物をシリカに吸着させ、得られた固体を必要に応じて工程(4)で乾燥後、更に焼成する必要がある。焼成条件は、金属化合物、シリカ等の無機化合物(前述のシリカや活性炭など)の種類、形態、含有量又は乾燥状態等によって適宜、調整することができる。
【0074】
焼成温度は、好ましくは300℃〜1200℃であり、より好ましくは500℃〜1000℃、更に好ましくは、500℃〜800℃である。この範囲で焼成することで、得られる固体触媒表面での金属化合物における金属原子とシリカにおける珪素原子の原子比M/Siを前述の範囲に制御し、必要な触媒活性(反応速度、反応収率及び選択性の向上等)を得ることができる。
【0075】
また、焼成時間は、十分に焼成がなされる時間であれば特に限定されないが、好ましくは、1時間〜40時間、更に好ましくは、1時間〜20時間である。この範囲で焼成することで、固体触媒表面での金属化合物における金属原子とシリカにおける珪素原子の原子比M/Siを前述の範囲に制御し、必要な触媒活性(反応速度、反応収率及び選択性の向上等)を得ることができる。
【0076】
次に、本発明の固体触媒の調製における、(1)、(3)及び(4)の工程について説明する。
【0077】
(1)合成工程
シリカは従来公知の方法に従って合成することができ、また上述の通り市販品も使用することができるが、ここではシリカの合成法の一例を説明する。水とポリエチレングリコールの混合溶媒に対しオルトケイ酸テトラエチルと硝酸を混合し、撹拌及び洗浄後に乾燥することでシリカを合成することができる。
【0078】
ここで使用する水の量は、オルトケイ酸テトラエチル1mLに対し、好ましくは0.1mL〜3mL、更に好ましくは0.5mL〜2mLである。また、使用するポリエチレングリコールは、オルトケイ酸テトラエチル1mLに対し、好ましくは0.01mL〜0.2mL、更に好ましくは0.02mL〜0.1mLである。この範囲とすることで、良好な攪拌性を維持しながら、反応液の固化を防ぐことができる。
【0079】
使用する硝酸は、例えば、濃度が60%のとき、オルトケイ酸テトラエチル1mLに対し、好ましくは0.01mL〜0.1mL、更に好ましくは0.02mL〜0.08mLである。
【0080】
シリカゲル合成後の乾燥時間は、好ましくは5時間〜100時間、更に好ましくは10時間〜80時間である。また、乾燥温度は好ましくは90℃〜150℃、更に好ましくは100℃〜120℃である。この範囲とすることで、前述の時間内にシリカゲル中の溶媒を次工程に影響のない量まで低減することができる。
【0081】
また、乾燥後に、ポリエチレングリコール等のシリカの合成に使用した材料の残存物を除去するために、600℃程度の温度で焼成を行ってもよい。
【0082】
(3)吸着工程
工程(1)でシリカを合成した後、上述の工程(2)にてシリカを前焼成する。そして、このシリカに金属化合物を含浸させる。使用される金属化合物は、前述の通り、アルカリ金属やアルカリ土類金属の無機酸塩などである。
【0083】
前記の含浸後、乾固及び濾過、乾固又は濾過により、シリカに金属化合物が吸着した固体を得ることができる。乾固、濾過の方法としては、一般的な方法を採用することができる。
【0084】
また、シリカに金属化合物を含浸させる方法としては、固体触媒の調製における通常の方法を用いることができ、例えば、ポアフィリング法、蒸発乾固法、平衡吸着法、Incipient wetness法等が適用できる。
【0085】
(4)乾燥工程
前記の吸着工程で得られた固体は通常、使用した溶媒の除去を目的として、乾燥することが好ましい。本発明による固体触媒製造時の乾燥温度は、好ましくは、50℃〜150℃、更に好ましくは80℃〜120℃である。乾燥時間は、好ましくは、6時間〜36時間、更に好ましくは12時間〜24時間である。この範囲とすることで、固体中の溶媒を次工程に影響のない量まで低減することができる。
【0086】
このようにして得られた固体を、上記で説明した焼成工程(5)において焼成することで、本発明の固体触媒が得られる。なお、吸着工程(3)においてアルカリ金属の無機酸塩などを使用した場合には、焼成により当該無機酸塩などは酸化されて、金属酸化物や、シリカとの複合酸化物となるものと考えられる。
【0087】
以上説明した、所定の条件による所定の工程を経て固体触媒の製造を行うと、後述するとおり高選択性かつ高収率でイソシアネート化合物などを生成可能な、優れた固体触媒を再現性よく製造することができる。
【0088】
[(C)イソシアネート化合物の製造方法]
以上説明した本発明の固体触媒は、各種の反応の触媒として使用しうるが、特にカルバメート化合物よりイソシアネート化合物を製造する反応の触媒として有用である。本発明のイソシアネート化合物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)は、本発明の固体触媒の存在下、カルバメート化合物を反応させることにより実施される。本発明の製造方法は、好ましくは熱分解反応により実施される。
【0089】
本発明の製造方法に用いるカルバメート化合物としては、下記一般式(1)
【0090】
【化3】
で示される、分子内に少なくとも1つのウレタン結合(−NHCO
2−)を有する化合物が好適に使用される。
【0091】
前記一般式(1)において、R
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基;
プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等の炭素原子数2〜20のアルケニル基;
メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基等の炭素原子数1〜20のアルキリデン基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、ジメチルシクロヘキシル基、イソホロン基、ノルボルナン基、デカリン基、アダマンタン基、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン)基、2,4’−メチレンビス(シクロヘキサン)基等の炭素原子数3〜20のシクロアルキル基;
1,4−シクロヘキシリデン基等の炭素原子数3〜20のシクロアルキリデン基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、トリメチルフェニル基、4,4’−メチレンビスフェニレン基等の1〜3個の芳香族環を含むアリール基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0092】
前記一般式(1)において、R
2は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基;
プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等の炭素原子数2〜20のアルケニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、ジメチルシクロヘキシル基、イソホロン基、ノルボルナン基、デカリン基、アダマンタン基等の炭素原子数3〜20のシクロアルキル基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、トリメチルフェニル基等の1〜3個の芳香族環を含むアリール基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0093】
前記一般式(1)のR
1及びR
2において、前記置換基を有していてもよい炭化水素基における置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0094】
前記一般式(1)において、nは1〜4の整数であるが、これはR
1の対応する結合価数により定まるものであり、例えば、R
1が1価の基(例えば、シクロヘキシル基)である場合には、nは1であり、R
1が2価の基(例えば、シクロへキシレン基)である場合には、nは2である。また、R
1における炭化水素基の例としてアルキル基を挙げたが、例えばnが2(R
1が2価)の場合には、前記炭化水素基はアルキル基の対応する2価の基(アルキレン基)である。nが3の場合には、同様に対応する3価の基(アルカントリイル基)である。炭化水素基の例として挙げた他の基についても同様である。
【0095】
また、本発明の製造方法で得られるイソシアネート化合物の各種製造原料等としての有用性の観点からは、nは好ましくは2である。
【0096】
本発明の製造方法に用いるカルバメート化合物は、好ましくは以上説明した一般式(1)で示される化合物であるが、その例としては、例えば、脂肪族系カルバメート化合物、脂環族系カルバメート化合物、芳香族系カルバメート化合物等が挙げられる。
【0097】
本発明の製造方法に用いる脂肪族系カルバメート化合物は、例えば、前記一般式(1)において、R
1が、置換基を有していてもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、又は炭素原子数1〜20のアルキリデン基であり、R
2が、置換基を有していてもよい、炭素原子数1〜20、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であるカルバメート化合物である。本発明の製造方法に用いる脂肪族系カルバメート化合物としては、例えば、メチルヘキシルカルバメート、メチルオクチルカルバメート、メチルドデシルカルバメート、メチルオクタデシルカルバメート、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ブタン、1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ブタン、1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ブタン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ペンタン、1,6−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,6−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,8−ビス(メトキシカルボニルアミノ)オクタン、1,8−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)オクタン、1,8−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)−4−(フェノキシカルボニルアミノメチル)オクタン、1,9−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ノナン、1,9−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ノナン、1,10−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−デカン、1,12−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)−ドデカン、1,12−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−ドデカン、1,12−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)−ドデカン、1,3,6−トリス(メトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,3,6−トリス(フェノキシカルボニルアミノ)ヘキサン等が挙げられる。
【0098】
本発明の製造方法に用いる脂環族系カルバメート化合物は、例えば、前記一般式(1)において、R
1が、置換基を有していてもよい、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基であり、R
2が、置換基を有していてもよい、炭素原子数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であるカルバメート化合物である。本発明の製造方法に用いる脂環族系カルバメート化合物としては、例えば、1,3−又は1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサン、2,4’−又は4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,4’−又は4,4’−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,4’−又は4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,4’−又は4,4’−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,5−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン、1−(ブトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(ブトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン、3−(メトキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチル−1−(メトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,2’−ジシクロヘキシルプロパン、4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)−2,2’−ジシクロヘキシルプロパン等が挙げられる。
【0099】
本発明の製造方法に用いる芳香族系カルバメート化合物は、R
1が、置換基を有していてもよい、炭素原子数6〜18の芳香族環を含むアリール基であり、R
2が、置換基を有していてもよい、炭素原子数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であるカルバメート化合物である。本発明の製造方法に用いる芳香族系カルバメート化合物としては、例えば、1,3−又は1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ベンゼン、2,2’−ビス(4−プロポキシカルボニルアミノフェニル)プロパン、2,4’−又は4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,4’−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,5−又は2,6−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ナフタレン、1,5−又は2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ビフェニル、4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ビフェニル、2,4−又は2,6−ビス(メトキシカルボニルアミノ)トルエン、2,4−又は2,6−ビス(エトキシカルボニルアミノ)トルエン、2,4−又は2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン等が挙げられる。
【0100】
本発明の製造方法では、例えば以上説明した一般式(1)で示されるカルバメート化合物より、対応するイソシアネート化合物を製造するが、当該イソシアネート化合物は、好ましくは下記一般式(2)で示される化合物である。
【0102】
式中、R
1及びnは、前記一般式(1)のR
1及びnと同義である。また、nが2以上の場合は、前述の化合物以外に中間体として1個、・・・(n−1)個のカルバメート基がイソシアネート化した化合物が得られることがある。例えば、イソホロンジメチルカルバメート(1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン)を用いた場合、下式に示すように、ジイソシアネート体以外に、2種のモノイソシアネート体が得られることがある。
【0104】
本発明の固体触媒は、触媒表面における金属化合物とシリカとの金属原子/珪素原子の原子比率を所定の範囲とすることで反応性を好適なものとし、窒素ガス吸着法により測定した触媒の比表面積を一定の範囲とすることによって、反応生成物が適度に脱離しやすくしている。
【0105】
このために、本発明の固体触媒を用いた反応では、カルバメート化合物のウレタン結合の多くがイソシアネート基へと変換され、上記で示したモノイソシアネートのような中間体の生成は抑制される。さらに、触媒活性が高すぎるなどの場合に生成するイソシアヌレート体などの生成も抑制される。従って、本発明の固体触媒を用いれば、高選択性かつ高収率でイソシアネート化合物を製造できる。
【0106】
本発明の製造方法では、イソシアネート化合物は、前記触媒の存在下、カルバメート化合物を反応させることにより製造される。好ましくは、前記触媒の存在下、前記一般式(1)のカルバメート化合物を反応させて、前記一般式(2)のイソシアネート化合物を製造する。
【0107】
このときの反応形態は特に制限されず、気相反応、液相反応のいずれでも差支えないが、気相反応が望ましい。また、反応方式は、固定床方式、流動床方式、懸濁床方式等、固体触媒反応に用いられる方式を適用できる。特に固定床方式が好ましく用いられる。
【0108】
本発明の製造方法において好ましく採用される気相固定床方式は、例えば、
図1に示す、原料タンク(1)、基質供給ポンプ(2)、触媒を充填した管状反応器(3)、反応器を加熱する熱源(管状電気炉等)(4)、生成物熱交換器(6)、凝縮した生成物のイソシアネート化合物を回収する受器(7)、アルコール(カルバメート化合物からイソシアネート化合物を製造する際に生成する)凝縮のための熱交換器(8)、アルコール取得のための受器(9)、真空ポンプ(17)に繋いだ真空ラインで構成することができるが、これに限定されない。なお、
図1におけるその他の符号がついた構成については、後述する実施例において説明する。
【0109】
気相固定床方式での基質の供給速度1mL/hに対して、本発明の固体触媒は、好ましくは0.01mL〜10mL、更に好ましくは0.02mL〜5mLの量で用いられる。
【0110】
気相固定床方式では、基質が気化された状態であれば、窒素等の不活性ガスを同伴させて反応を行なっても、不活性ガスを使用せずに反応を行ってもよく、常圧又は減圧下に行なってもよい。
【0111】
本発明の製造方法では、固体触媒を懸濁床方式で用いる場合、これらの触媒は、カルバメート化合物100質量部に対して、例えば、好ましくは、0.1質量部〜100質量部の範囲、更に好ましくは、0.5質量部〜50質量部の範囲で用いられる。
【0112】
本発明の製造方法では、カルバメート化合物の反応は、例えば、カルバメート化合物及び固体触媒を、不活性溶媒と共に加熱することで実施してもよい。また本発明の製造方法は、この反応において生成するイソシアネート化合物、アルコール化合物を系外に分離させる反応蒸留方式により実施することが好ましい。なお、本発明の製造方法では、必ずしも不活性溶媒とカルバメート化合物を共に加熱する必要はなく、無溶媒で反応させることもできる。
【0113】
本発明の製造方法では、前記不活性溶媒は、カルバメート化合物及び生成するイソシアネート化合物に対して不活性であれば、特に制限されないが、反応を効率よく実施するには、カルバメート化合物より高い沸点を有する溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなどのエステル類、或いは、例えば、ジベンジルトルエン、トリフェニルメタン、フェニルナフタレン、ビフェニル、テルフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族系炭化水素や脂肪族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は単独又は二種以上を併用してもよい。その使用量は反応装置や形態に依存して適宜調整することができる。
【0114】
本発明の製造方法では、不活性溶媒は、例えば、カルバメート化合物1mLに対して、好ましくは、0.1〜150mL使用し、更に好ましくは、1〜50mL使用する。この範囲とすることで、良好な攪拌性を維持しながら、反応液の固化を防ぐことができる。
【0115】
本発明の製造方法では、カルバメート化合物の供給速度1mL/hに対して、固体触媒は、好ましくは0.01mL〜10mL、更に好ましくは0.02mL〜5mLの量で用いられる。この範囲とすることで、工業的に好適な反応速度でイソシアネート化合物を得ることができる。
【0116】
本発明の製造方法では、カルバメート化合物の反応温度は、例えば、80℃〜600℃であり、好ましくは200℃〜500℃であり、更に好ましくは、300℃〜500℃である。この範囲とすることで、実用的な反応(特に熱分解)速度が得られ、イソシアネート化合物の重合など、好ましくない副反応を抑制することができる。
【0117】
本発明の製造方法では、反応圧力は、上記の反応温度に対して、生成するイソシアネート化合物及びアルコール化合物が気化し得る圧力であることが好ましく、設備面及び用益面から実用的には、好ましくは、絶対圧0.1kPa〜101.33kPa、更に好ましくは、絶対圧0.5kPa〜30kPaである。
【0118】
本発明において、バッチ式でカルバメート化合物を反応させるときは、前述の固体触媒は、カルバメート化合物100質量部に対して、好ましくは、0.1質量部〜100質量部の範囲、更に好ましくは、0.5質量部〜50質量部の範囲で用いられる。
【0119】
また、必ずしも不活性溶媒とカルバメート化合物を共に加熱する必要はなく、無溶媒で反応させることもできるが、不活性溶媒を用いる場合、その使用量は、カルバメート化合物1gに対して、通常1〜30mL、好ましくは1〜10mLである。
【0120】
反応圧力、温度については前述の通りである。
反応時間は、触媒量、温度、基質の濃度及び圧力等によって適宜調節されるが、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
【0121】
本発明の製造方法では、イソシアネート化合物が気化された状態であれば、窒素等の不活性ガスを同伴させて反応を行なっても、不活性ガスを使用せずに反応を行ってもよく、常圧又は減圧下に行なってもよい。
【0122】
本発明の製造方法によって得られたイソシアネート化合物は、反応後の溶液から、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって単離・精製することができる。得られたイソシアネート化合物は、更に精製を繰り返すことで高純度のイソシアネート化合物とすることができる。
【0123】
また、カルバメート化合物の反応の終了後、反応液の残液から、濾過や遠心分離などの公知の分離方法によって、固体触媒を容易に回収することができ、回収した固体触媒は、そのまま、或いは溶媒洗浄や焼成などの公知の方法により再活性化させた後、再使用することもできる。
【実施例】
【0124】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0125】
[製造例1 (Ca/SiO
2触媒の調製)]
水144.0g、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業株式会社製、平均分子量20,000)9.6gをポリエチレン容器の中で混合、攪拌し、均一溶液にした。これにオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)120mL、60%硝酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)8.4mLを加え、容器を密閉し室温(20℃〜30℃)で1時間激しく攪拌した。
【0126】
更に約50℃で12時間静置し、生成したゲルを取り出し、精製水で洗浄後、約110℃で60時間乾燥し、空気中約600℃で2時間、約1000℃で3時間焼成を行った。
【0127】
焼成物を乳鉢で粉砕し、粒子の大きさが1mm〜2mmの範囲にふるい分けして、多孔質且つ非晶質のシリカゲルを25g得た。水銀圧入法(測定装置:Quanta Chrome Co.製全自動細孔分布測定装置Pore Master 60−GT)で測定した、このシリカゲルのメジアン細孔直径は7.5μmであった。
【0128】
一方、硝酸カルシウム・4水和物0.196g(0.83mmol)とイオン交換水2.6gをフラスコ中で混合撹拌して硝酸カルシウム水溶液を得た。前記で調製したシリカゲル2.0g(33mmol)をこの硝酸カルシウム水溶液に加えた後(Ca/Si比=0.025)、1時間静置した。
【0129】
さらに約110℃で12時間乾燥し、空気中約500℃で5時間焼成を行って触媒(Ca/SiO
2)を2.1g得た。蛍光X線元素分析法(XRF)で測定したところ、得られた触媒(Ca/SiO
2)は、固体触媒全体に対して、カルシウム化合物が、カルシウム原子に換算して1.8質量%含まれていた。すなわち、固体触媒全体のカルシウム原子と珪素原子の原子比(Ca/Si)は0.027である。
【0130】
また、窒素ガス吸着法により測定した固体触媒の比表面積は0.3m
2/gであり、X線光電子分析装置で測定した、固体触媒表面上のカルシウム原子と珪素原子との原子比(Ca/Si)は5.8であった。
【0131】
[製造例2〜11 (各種Ca/SiO
2触媒の調製)]
各種条件を、以下の表1、表2に示すとおりに変更した以外は製造例1と同様にして、各種Ca/SiO
2固体触媒を調製した。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
表1において、シリカゲルメジアン細孔直径とは水銀圧入法により測定したもので、測定条件は次の通りである。
【0135】
水銀圧入法による測定装置としては、Quanta Chrome Co.製全自動細孔分布測定装置Pore Master 60−GTを用いた。また、水銀圧入法の測定条件としては、室温で約7kPaから414MPaまで昇圧しながら測定を行った。なお、水銀の表面張力の値としては480dyn/cm、接触角の値としては140°を用いた。
【0136】
表2において、触媒全体Ca/Si比とは固体触媒中のカルシウム原子と珪素原子の原子比を示し、混合したシリカゲルと硝酸カルシウムの質量から算出した値である。なお、固体触媒調製後の固体触媒全体のCa/Si比は、蛍光X線元素分析法(XRF)等により測定することができる。
【0137】
表2において、固体触媒比表面積とはカルシウムを吸着させ、焼成した後(前述の触媒調製における工程(5))の固体触媒における比表面積を表し、窒素ガス吸着法により測定したものである。測定条件は次の通りである。
【0138】
本測定はBET式粉体比表面積測定装置を用いて物理吸着法(窒素吸着法)により行った。本発明では、「日本ベル(株)製、BELSORP−miniII」を用い、吸着ガスに窒素を使用し、BET多点式法測定を行った。具体的には粉体試料を真空下で150℃の温度で加熱脱気し、次いで液体窒素温度まで冷却して窒素ガスを吸着させ、吸着/脱着等温線を測定し、これから試料の比表面積を算出した。
【0139】
表2において、表面Ca/Si比とは固体触媒表面上のカルシウム原子と珪素原子の原子比を示し、X線光電子分析装置により分析したものである。測定条件は次の通りである。
【0140】
(X線光電子分光法(ESCA)測定条件)
・装置名:PHI社製 Quantum2000
・X線源:単色化Al−Kα、出力15kV−20W(X線発生面積100μmφ)
・帯電中和:電子銃(20μA)、イオン銃(30V)併用
・分光系:パルスエネルギー187.85eV@ワイドスペクトル、46.95eV@ナロースペクトル(全元素)
・測定領域:スポット照射(照射面積<340μmφ)
・取り出し角:45°(表面より)
【0141】
[実施例1 (式(1) R
1=1,3,3−トリメチル−1−メチレンシクロヘキシレン基、R
2=メチル基、n=2;イソホロンジメチルカルバメート(1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン)の熱分解によるジイソシアン酸イソホロンの製造)]
【化6】
【0142】
図1に示すように、直径10mm、長さ42cmのガラス管(3)を反応器とし、触媒を充填した部分(以下、「触媒層」)が約360℃になるように外部から電気炉(4)を設置した。反応器下部を二系列のラインに分岐させ、それぞれイソシアネート化合物の取得のための受器(室温)(7)及び(13)、生成物を冷却するための生成物熱交換器(6)及び(12)、メタノールの取得のための受器(冷エタノールで冷却)(9)及び(15)(その前にメタノール凝縮のための熱交換器(8)及び(14)がそれぞれある)を経由し、両方のラインを真空ポンプ(17)に繋ぎ、真空ラインを連結した。二つのラインの切り替えは弁(5と10、及び11と16)片方のラインのみ開く(もう片方のラインは閉じる)ことで行った。
【0143】
触媒として、製造例1で調製したCa/SiO
2固体触媒(粒径1.1〜2.2mm)2mLを上記のガラス管(3)に充填し(ガラス管(3)は気化層(3a)及び触媒層(3b)より構成される)、真空ポンプ(17)を起動し絶対圧1.33kPaに減圧し、弁(5)、弁(10)を開とし、弁(11)、弁(16)を閉とし、電気炉(4)で触媒層の温度が約360℃になるように加熱した。約150℃で加熱融解させたイソホロンジメチルカルバメート(1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン)をシリンジポンプ(2)にて4mL/hでガラス管(3)に供給した。
【0144】
凝縮したイソシアネート化合物を含む生成物が受器(7)に回収され始めたのを確認して30分経過後、弁(5)、弁(10)を閉とし、弁(11)、弁(16)を開とし、凝縮したイソシアネート化合物を含む生成物を受器(13)、メタノールを受器(15)に30分間回収した。受器(13)に回収された、凝縮したイソシアネート化合物を含む生成物を液体クロマトグラフィーで、受器(15)に凝縮し回収されたメタノールをガスクロマトグラフィーで分析し、ジカルバメート転化率、ジイソシアネートの収率、モノイソシアネートの収率を算出した。
【0145】
その結果、生成物として、ジイソシアン酸イソホロンが収率94%(選択率94%)、モノイソシアネート体が収率2%で得られた。
【0146】
[実施例2〜6、比較例1〜5 (各種Ca/SiO
2を用いた、イソホロンジメチルカルバメート(1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン)の熱分解によるジイソシアン酸イソホロンの製造)]
各種条件を、以下の表3に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、ジイソシアン酸イソホロンを合成した。
【0147】
【表3】
【0148】
表1、表2、表3から、触媒全体のCa/Si比、固体触媒の比表面積、固体触媒表面のCa/Si比、転化率、収率を抽出して、まとめたものを表4に記載する。また、この表4をグラフ化したものを
図2に示す(比較例1は表示していない)。
【0149】
【表4】
【0150】
表4及び
図2から、固体触媒表面上のカルシウム原子と珪素原子の原子比Ca/Siが0.5〜20、固体触媒の比表面積が0.01m
2/g〜50m
2/g、という両方の条件を満たすとき(実施例1〜6)、ジイソシアネート化合物の収率が85%以上、ジカルバメート化合物の転化率が100%となる。一方、固体触媒が前述のいずれかの条件を満たさないとき(比較例1〜5)、収率や転化率が低下する。
【0151】
[製造例12 (Na/SiO
2触媒の調製)]
水144.0g、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業株式会社製、平均分子量20,000)9.6gをポリエチレン容器の中で混合、攪拌し、均一溶液にした。これにオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)120mL、60%硝酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)8.4mLを加え、容器を密閉し室温(20℃〜30℃)で1時間激しく攪拌した。
【0152】
更に約50℃で12時間静置し、生成したゲルを取り出し、精製水で洗浄後、約110℃で60時間乾燥し、空気中約600℃で2時間、約1000℃で3時間焼成を行った。
【0153】
焼成物を乳鉢で粉砕し、粒子の大ききが2mm〜4mmの範囲にふるい分けして、多孔質且つ非晶質のシリカゲルを55g得た。水銀圧入法(測定装置:Quanta Chrome Co.製全自動細孔分布測定装置Pore Master 60−GT)で測定した、このシリカゲルのメジアン細孔直径は7.5μmであった。
【0154】
一方、硝酸ナトリウム0.106g(1.25mmol)とイオン交換水3.7gをフラスコ中で混合撹拌して硝酸ナトリウム水溶液を得た。前記で調製したシリカゲル3.0g(49.9mmol)をこの硝酸ナトリウム水溶液に加えた後(Na/Si比=0.025)、1時間静置した。
【0155】
さらに約110℃で12時間乾燥し、空気中約500℃で8時間焼成した後、空気中約700℃で8時間焼成を行って固体触媒(Na/SiO
2)を3.03g得た。蛍光X線元素分析法(XRF)で測定したところ、得られた固体触媒(Na/SiO
2)は、固体触媒全体に対して、ナトリウム化合物が、ナトリウム原子に換算して0.84質量%含まれていた。すなわち、固体触媒全体のナトリウム原子と珪素原子の原子比(Na/Si)は0.022である。また、窒素ガス吸着法により測定した固体触媒の比表面積は0.51m
2/gで、X線光電子分析装置で測定した、触媒表面上のナトリウム原子と珪素原子の原子比(Na/Si)は0.5であった。
【0156】
[実施例7 (式(1) R
1=1,3,3−トリメチル−1−メチレンシクロヘキシレン基、R
2=メチル基、n=2;イソホロンジメチルカルバメート(1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン)の熱分解によるジイソシアン酸イソホロンの製造)]
【0157】
【化7】
【0158】
触媒層の温度を365℃とし、触媒として製造例12で得られた固体触媒(Na/SiO
2:粒径1.1〜2.2mm)を3mL用いた以外は、実施例1と同様にして、ジイソシアン酸イソホロンを製造した。
【0159】
ジイソシアン酸イソホロンの収率は83%(選択率84%)、モノイソシアネートが収率17%であった。
【0160】
[製造例13 (Mg/SiO
2触媒の調製)]
水144.0g、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業株式会社製、平均分子量20,000)9.6gをポリエチレン容器の中で混合、攪拌し、均一溶液にした。これにオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)120mL、60%硝酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)8.4mLを加え、容器を密閉し室温(20℃〜30℃)で1時間激しく攪拌した。
【0161】
更に約50℃で12時間静置し、生成したゲルを取り出し、精製水で洗浄後、約110℃で60時間乾燥し、空気中約600℃で2時間、約1000℃で3時間焼成を行った。
【0162】
焼成物を乳鉢で粉砕し、粒子の大ききが2mm〜4mmの範囲にふるい分けして、多孔質且つ非晶質のシリカゲルを55g得た。水銀圧入法(測定装置:Quanta Chrome Co.製全自動細孔分布測定装置Pore Master 60−GT)で測定した、このシリカゲルのメジアン細孔直径は7.5μmであった。
【0163】
一方、硝酸マグネシウム・6水和物0.320g(1.25mmol)とイオン交換水3.5gをフラスコ中で混合撹拌して硝酸マグネシウム水溶液を得た。前記で調製したシリカゲル3.0g(49.9mmol)をこの硝酸マグネシウム水溶液に加えた後(Mg/Si比=0.025)、1時間静置した。
【0164】
さらに約110℃で12時間乾燥し、空気中約500℃で8時間焼成を行って固体触媒(Mg/SiO
2)を3.03g得た。蛍光X線元素分析法(XRF)で測定したところ、得られた固体触媒(Mg/SiO
2)は、固体触媒全体に対して、マグネシウム化合物が、マグネシウムに換算して1.50質量%含まれていた。すなわち、固体触媒全体のマグネシウム原子と珪素原子の原子比(Mg/Si)は0.038である。また、窒素ガス吸着法により測定した固体触媒の比表面積は0.58m
2/gで、X線光電子分析装置で測定した、固体触媒表面上のマグネシウム原子と珪素原子の原子比(Mg/Si)は1.9であった。
【0165】
[実施例8 (式(1) R
1=1,3,3−トリメチル−1−メチレンシクロヘキシレン基、R
2=メチル基、n=2;イソホロンジメチルカルバメート(1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン)の熱分解によるジイソシアン酸イソホロンの製造)]
【0166】
【化8】
【0167】
触媒層の温度を365℃とし、触媒として製造例13で得られた固体触媒(Mg/SiO
2:粒径1.1〜2.2mm)を3mL用いた以外は、実施例1と同様にして、ジイソシアン酸イソホロンを製造した。
【0168】
ジイソシアン酸イソホロンの収率は85%(選択率85%)、モノイソシアネートの収率は12%だった。
【0169】
以上の実施例7及び8から、固体触媒表面上のナトリウム原子又はマグネシウム原子と珪素原子の原子比M/Siが0.5〜20、固体触媒の比表面積が0.01m
2/g〜50m
2/g、という両方の条件を満たすとき、ジイソシアネート化合物の収率が83%以上となることがわかる。
【0170】
[製造例14 (Ca/SiO
2触媒の調製)]
水60g、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業株式会社製、平均分子量20,000)3.6gをポリエチレン容器の中で混合、攪拌し、均一溶液にした。これにオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)60mL、60%硝酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)4.2mLを加え、容器を密閉し室温(20℃〜30℃)で1時間激しく攪拌した。
【0171】
更に約50℃で12時間静置し、生成したゲルを取り出し、精製水で洗浄後、約110℃で12時間乾燥し、空気中約600℃で2時間、約1000℃で3時間焼成を行った。
【0172】
焼成物の一部を乳鉢で粉砕し、粒子の大ききが1mm〜2mmの範囲にふるい分けして、多孔質且つ非晶質のシリカゲルを8.0g得た。水銀圧入法(測定装置:Quanta Chrome Co.製全自動細孔分布測定装置Pore Master 60−GT)で測定した、このシリカゲルのメジアン細孔直径は6.1μmであった。
【0173】
一方、硝酸カルシウム・4水和物0.393g(1.7mmol)とイオン交換水2.2gをフラスコ中で混合撹拌して硝酸カルシウム水溶液を得た。前記で調製したシリカゲル2.0g(33mmol)をこの硝酸カルシウム水溶液に加えた後(Ca/Si比=0.05)、1時間静置した。
【0174】
さらに約110℃で12時間乾燥し、空気中約500℃で3時間焼成を行って固体触媒(Ca/SiO
2)を2.3g得た。窒素ガス吸着法により測定した固体触媒の比表面積は0.8m
2/gで、X線光電子分析装置で測定した、固体触媒表面上のカルシウム原子と珪素原子の原子比(Ca/Si)は1.1であった。
【0175】
[実施例9 (式(1) R
1=シクロヘキサン−1,3−ジイルビスメチレン基、R
2=メチル基、n=2;1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサンの熱分解による1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの製造)]
【0176】
【化9】
【0177】
触媒層の温度を365℃とし、触媒として製造例14で得られた固体触媒(Ca/SiO
2:粒径1〜2mm)を3mL用いて、カルバメート化合物として1,3−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサンを用いた以外は、実施例1と同様にして、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを製造した。
【0178】
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの収率は95%(選択率95%)、モノイソシアネートの収率は1%だった。
【0179】
[製造例15 (Ca/SiO
2触媒の調製)]
水120g、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業株式会社製、平均分子量20,000)9.6gをポリエチレン容器の中で混合、攪拌し、均一溶液にした。これにオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)120mL、60%硝酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)8.5mLを加え、容器を密閉し室温(20℃〜30℃)で1時間激しく攪拌した。
【0180】
更に約50℃で12時間静置し、生成したゲルを取り出し、精製水で洗浄後、約110℃で12時間乾燥し、空気中約600℃で2時間、約1000℃で3時間焼成を行った。
【0181】
焼成物の一部を乳鉢で粉砕し、粒子の大ききが1mm〜2mmの範囲にふるい分けして、多孔質且つ非晶質のシリカゲルを9g得た。水銀圧入法(測定装置:Quanta Chrome Co.製全自動細孔分布測定装置Pore Master 60−GT)で測定した、このシリカゲルのメジアン細孔直径は1.0μmであった。
【0182】
一方、硝酸カルシウム・4水和物0.008g(0.03mmol)とイオン交換水2.5gをフラスコ中で混合撹拌して硝酸カルシウム水溶液を得た。前記で調製したシリカゲル2.0g(33mmol)をこの硝酸カルシウム水溶液に加えた後(Ca/Si比=0.001)、1時間静置した。
【0183】
さらに約110℃で12時間乾燥し、空気中約500℃で3時間焼成を行って固体触媒(Ca/SiO
2)を2.0g得た。窒素ガス吸着法により測定した固体触媒の比表面積は1.7m
2/gで、X線光電子分析装置で測定した、固体触媒表面上のカルシウム原子と珪素原子の原子比(Ca/Si)は0.75であった。
【0184】
[実施例10 (式(1) R
1=2,4−トリレン基、R
2=メチル基、n=2;2,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)トルエンの熱分解によるトリレン−2,4−ジイソシアネートの製造)]
【0185】
【化10】
【0186】
触媒層の温度を375℃とし、触媒として製造例15で得られた固体触媒(Ca/SiO
2:粒径1〜2mm)を3mL用いて、カルバメート化合物として2,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)トルエンを用いた以外は、実施例1と同様にして、トリレン−2,4−ジイソシアネートを製造した。
【0187】
トリレン−2,4−ジイソシアネートの収率は95%(選択率95%)、モノイソシアネートの収率は3%だった。