(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単量体(A1)〜(A3)、単量体(B)および必要に応じて用いられるその他の単量体(C)との合計100mol%中、単量体(A1)〜(A3)の合計が1〜40mol%であり、単量体(B)が20〜99mol%、その他の単量体(C)が0〜79mol%であるか、または、
単量体(A4)〜(A6)、単量体(B)および必要に応じて用いられるその他の単量体(C)との合計100mol%中、単量体(A4)〜(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応している部分が1〜40mol%であり、単量体(B)が20〜99mol%、単量体(A4)〜(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応していない部分とその他の単量体(C)との合計が0〜79mol%である、請求項2記載の皮膚貼付用粘着剤。
請求項1〜4いずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着剤と液状媒体とを含む粘着剤塗液を、シート状基材に、塗布し、前記液状媒体を除去し、前記シート状基材上に経皮吸収性薬剤を含有する粘着剤層を形成し、前記粘着剤層に、剥離用シート状部材を積層する、剥離用シート状部材付き皮膚用貼付剤の製造方法。
請求項1〜4いずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着剤と液状媒体とを含む粘着剤塗液を、剥離用シート状部材に、塗布し、前記液状媒体を除去し、前記剥離用シート状部材上に経皮吸収性薬剤を含有する粘着剤層を形成し、前記粘着剤層にシート状基材を積層する、剥離用シート状部材付き皮膚用貼付剤の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の創傷被覆や医療用具を皮膚に固定するために、各種皮膚貼付用粘着剤が用いられている。また、皮膚を通して経皮吸収性薬剤を生体内に投与するための経皮吸収製剤として、膏体や、粘着剤を用いたパップ剤や経皮吸収性粘着シートなどの経皮吸収型の外用貼付剤が開発されている。そのなかでも、投与作業が比較的容易で投与量を制御できることから、粘着剤中に経皮吸収性薬剤を含有させた経皮吸収性粘着シートが注目されている。
【0003】
このような経皮吸収性粘着シートは、経皮吸収用薬剤を含有する粘着剤層を皮膚面に貼付して使用されるため、皮膚面への接着性(密着性)が求められる。また、より確実な治療効果を上げるために、長時間患部に持続的に薬剤を投与できる経皮吸収型貼付剤の開発が期待されている。そのため、粘着剤の薬剤溶解性の向上や、粘着剤中からの薬剤放出性の向上が求められている。
【0004】
このような要求に応えるため、皮膚貼付用粘着剤としてゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤がよく用いられている。
【0005】
例えば、ゴム系粘着剤としては、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体および天然ゴム等を主成分としてこれに粘着付与剤や軟化剤、安定剤を添加したものが用いられている。
特許文献1は、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体と炭素数10〜30のパラフィン系炭化水素及び/またはナフテン系炭化水素と脂環族炭化水素樹脂とを含む粘着剤を開示する。
特許文献2は、ABA型ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー、該熱可塑性エラストマーと相溶性のある液状成分、および、粘着付与剤からなる貼付シートまたはテープを開示する。
特許文献3は、粘着剤層に流動性の異なる2種の合成ゴムを含有することを特徴とする貼付剤を開示する。
【0006】
また、シリコーン系粘着剤としては、シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサン等を用いたものが知られている。
特許文献4は、シリコーン液、シリコーン樹脂及び非イオン界面活性剤などの接着力強化剤よりなる感圧性シリコーン接着剤を開示する。
特許文献5は、オルガノシロキサン系重合体と、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体とを含有する粘着剤組成物を開示する。
特許文献6は、シリコーン樹脂と、シリコーン樹脂と相溶可能な変性シリコーンオイルとを含有し、油中水型エマルション化された皮膚用シリコーン系粘着剤を開示する。
【0007】
また、アクリル系粘着剤として、特許文献7は、カルボキシル基もしくはヒドロキシル基を含有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルを必須成分として共重合してなる共重合体と、側鎖に塩構造を有さない窒素原子を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルとを必須成分として共重合してなる共重合体とを用いてなる経皮吸収製剤を開示する。
特許文献8は、N−ビニル−2−ピロリドンを構成成分とする水不溶性の共重合体及び無水マレイン酸のモノアルキルエステルを構成成分とする重合体からなることを特徴とする粘着剤組成物を開示する。
【0008】
また、特許文献9〜12は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリコリン(以下、MPCモノマーと略す)を重合してなる重合体(以下、MPC重合体と略す。ホスホベタイン構造を有する重合体ともいう)を用いてなる皮膚外用剤を開示する。
さらに、特許文献13は、温感用外用剤組成物が記載され、N−メタクリロイルエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン重合体の利用が示唆されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3のようなゴム系粘着剤や、特許文献4〜6のようなシリコーン系粘着剤は、疎水性が高いため、薬剤の溶解性が不十分であり、薬剤組成の選択幅が狭いという欠点があった。
特許文献7および8のようなアクリル系粘着剤は、粘着剤の凝集力を確保するため、カルボキシル基や水酸基を有するモノマーが共重合されるが、使用する薬剤によっては、これら官能基の影響を受けて、薬剤放出量が低下する課題があった。また薬剤溶解性も十分とは言えない。
特許文献9〜12に開示される共重合体は、原料であるMPCモノマー合成時に複数の反応やそれに伴う精製が必要であるなど生産性に問題を有していた。また、特許文献9〜12に開示される外用剤は、皮膚に塗布した後、べたつかないような使用感を目指すものである。なお、MPCモノマーは共重合可能なモノマーが限られており、得られるMPC重合体を粘着剤用に用いることは難しい。
特許文献13には、カルボベタイン構造を有する重合体の貼付剤への利用が示唆されてはいる。しかし、皮膚面への粘着性、皮膚からの剥離性、薬剤の溶解性、および粘着剤中からの薬剤放出性への要求を満足するものではなかった。
【0011】
上記事情に鑑み、本発明は、皮膚面への粘着性、皮膚からの剥離性、薬剤の溶解性、および粘着剤中からの薬剤放出性に優れた皮膚貼付剤に好適な皮膚貼付用粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般に、重合体に凝集力を付与したり、薬剤の溶解性を改善したりするためには、カルボキシル基や水酸基のような高極性基を導入する方法が知られているが、薬剤と強く相互作用してしまい、薬剤放出性の点では適切ではない。
そこで、本発明者らは、親水性であるカルボベタイン構造および/またはスルホベタイン構造を特定量含有し、ガラス転移温度および質量平均分子量が特定の範囲にある重合体の利用により、皮膚面への粘着性、皮膚から剥がす際の剥離性、薬剤溶解性、および薬剤放出性に優れる貼付剤を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記一般式1〜3で示される少なくともいずれかの繰返し構造を合計で全繰返し構造100mol%中に1〜40mol%含み、ガラス転移温度が−60℃〜−10℃であり、かつ、質量平均分子量が10000〜10000000であるビニル系重合体(a)と、経皮吸収性薬剤(b)とを含むことを特徴とする皮膚貼付用粘着剤に関する。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
(式中、
R
2は炭素数1〜6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
R
5は炭素数1〜4のアルキレン基
Xは酸素原子または−NH−、
Yは−COO
−または−SO
3−、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキレン基、
R
10〜R
14のうち4つは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
10〜R
14のうちの1つはビニル系重合体の主鎖との結合位置を表し、
R
15は炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキレン基を表し、
*はビニル系重合体の主鎖との結合位置を表す。)
【0016】
前記ビニル系重合体(a)は下記(a1)または(a2)であることが好ましい。
(a1)下記一般式4〜6で示される少なくともいずれかの単量体(A1)〜(A3)と、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と炭素数1〜12のアルキル基とを有する単量体(B)との共重合体である。
(a2)下記一般式7〜9で示される少なくともいずれかの単量体(A4)〜(A6)と、1分子中に1つのエチレン性不飽和基および炭素数1〜12のアルキル基を有する単量体(B)との共重合体と、環状スルホン酸エステル(D1)、ω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)、環状カルボン酸エステル(D3)およびω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)からなる群から選ばれる一つ以上のベタイン化剤(D)との反応生成物である。
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
(式中、
R
1は水素原子またはメチル基、
R
2は炭素数1〜6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
R
5は炭素数1〜4のアルキレン基
Xは酸素原子または−NH−、
Yは−COO
−または−SO3
−、
R
6は水素原子またはメチル基、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキレン基、
R
16〜R
20のうち4つは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
16〜R
20のうちの1つはCH
2=C(R
21)を表し、
R
15は炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキレン基を表し、
R
21は水素原子またはメチル基を表し、
**はベタイン化剤(D)との反応部位を表す。)
【0023】
また、前記ビニル系重合体(a)は、単量体(A1)〜(A3)、単量体(B)および必要に応じて用いられるその他の単量体(C)との合計100mol%中、単量体(A1)〜(A3)の合計が1〜40mol%であり、単量体(B)が20〜99mol%、その他の単量体(C)が0〜79mol%であるか、または、
単量体(A4)〜(A6)、単量体(B)および必要に応じて用いられるその他の単量体(C)との合計100mol%中、単量体(A4)〜(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応している部分が1〜40mol%であり、単量体(B)が20〜99mol%、単量体(A4)〜(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応していない部分とその他の単量体(C)との合計が0〜78mol%であることが好ましい。
【0024】
また、皮膚貼付用粘着剤100質量%中に含まれるビニル系重合体(a)は20〜99質量%であることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、シート状基材と前記の皮膚貼付用粘着剤の層とを有する皮膚用貼付剤に関する。
【0026】
さらにまた、本発明は、前記皮膚貼付用粘着剤と液状媒体とを含む粘着剤塗液を、シート状基材に、または剥離用シート状部材に、塗布し、前記液状媒体を除去し、前記シート状基材または前記剥離用シート状部材上に経皮吸収性薬剤を含有する皮膚貼付用粘着剤層を形成し、前記粘着剤層に剥離用シート状部材またはシート状基材を積層する、剥離用シート状部材付き皮膚用貼付剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0027】
一般式1〜3で示される少なくともいずれかの構造を特定量含有し、ガラス転移温度および質量平均分子量が特定の範囲にあるビニル系重合体(a)を用いることにより、皮膚面への粘着性、皮膚から剥がす際の剥離性、薬剤の溶解性、粘着剤中からの薬剤放出性に優れた皮膚貼付用粘着剤を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の皮膚貼付用粘着剤は、ビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする。ビニル系重合体(a)を、ベタイン樹脂(a)と言うこともある。
<ビニル系重合体(a)、ベタイン樹脂(a)>
ベタイン構造とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合していない構造を指す。また、ビニル系重合体(a)とは、分子構造中にこのベタイン構造を有するビニル系重合体のことを示す。分子内にベタイン構造を有することで、樹脂に凝集力を付与し、また、優れた薬剤の溶解性や薬剤放出性を付与することが出来た。
【0029】
ビニル系重合体(a)は、下記一般式1〜3で示される少なくともいずれかの構造を側鎖に有する。前記繰返し構造は合計で全繰返し構造100mol%中に1〜40mol%含まれ、2〜35mol%であることが好ましい。
【0033】
(式中、
R
2は炭素数1〜6のアルキレン基、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
R
5は炭素数1〜4のアルキレン基
Xは酸素原子または−NH−、
Yは−COO
−または−SO
3−、
R
7は水素原子またはメチル基、
R
8は炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキレン基、
R
10〜R
14のうち4つは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
10〜R
14のうちの1つはビニル系重合体の主鎖との結合位置を表し、
R
15は炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキレン基を表し、
*はビニル系重合体の主鎖との結合位置を表す。)
【0034】
このようなビニル系重合体(a)は、以下の方法で得ることが好ましい。
即ち、
(1)下記一般式4〜6で示される少なくともいずれかの単量体(A1)〜(A3)と、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と炭素数1〜12のアルキル基とを有する単量体(B)とを共重合する。得られる共重合体をビニル系重合体(a1)という。
あるいは、
(2)下記一般式7〜9で示される少なくともいずれかの単量体(A4)〜(A6)と、1分子中に1つのエチレン性不飽和基および炭素数1〜12のアルキル基を有する単量体(B)とを共重合し、得られた共重合体中の単量体(A4)〜(A6)に由来する部分に後述するベタイン化剤(D)を反応させる。得られる反応生成物は、単量体(A1)を用いた共重合体と同様にベタイン構造を有し、ビニル系重合体(a2)という。
【0041】
(式中、
R
1は水素原子またはメチル基、
R
6は水素原子またはメチル基、
R
9は水素原子またはメチル基、
R
16〜R
20のうち4つは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
16〜R
20のうちの1つはCH
2=C(R
21)を表し、
R
21は水素原子またはメチル基を表し、
**はベタイン化剤(D)との反応部位を表す。)
その他の記号は、一般式1〜3と同様。)
【0042】
<ビニル系重合体(a1)>
ビニル系重合体(a1)は、前述の通り、一般式4〜6で示される群から選択される少なくもといずれかの単量体(A1)〜(A3)を共重合体の構成単位とするものである。単量体(A1)〜(A3)の利用によって、ビニル重合体の側鎖にベタイン構造を導入することができる。そこで、単量体(A1)〜(A3)は、ベタイン単量体ということもできる。
【0043】
<単量体(A1)>
単量体(A1)は、一般式4に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このような単量体としては、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジエチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジエチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジエチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、などのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウムアルキル−α−カルボキシベタイン;N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、などのN−(メタ)アクリルアミドアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウムアルキル−α−カルボキシベタイン;N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン、などのN−(メタ)アクリルアミドアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウムアルキル−α−カルボキシベタイン;N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、などのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジメチルアンモニウムアルキル−α−スルホベタイン;N−(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、などのN−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアネルコキシ−N,N−ジメチルアンモニウムアルキル−α−スルホベタイン;N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインなどのN−(メタ)アクリルアミドアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウムアルキル−α−スルホベタインなどが挙げられる。本発明において(メタ)アクリルと表記した場合、メタクリルもしくはアクリルであることを示す。
【0044】
<単量体(A2)>
単量体(A2)も、一般式5に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このような単量体としては、例えば、1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩、1−ビニル−3−(3−スルホブチル)イミダゾリウム内部塩、1−ビニル−2−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩、1−ビニル−2−メチル−3−(4−スルホブチル)イミダゾリウム内部塩などの1−ビニル−2−アルキル−3−(4−スルホアルキル)イミダゾリウム内部塩などが挙げられる。
【0045】
<単量体(A3)>
単量体(A3)も、一般式6に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このような単量体としては、例えば、2−ビニル−1−(3−スルホプロピル)ピリジニウム内部塩、2−ビニル−1−(3−スルホブチル)ピリジニウム内部塩、などの2−ビニル−1−(3−スルホアルキル)ピリジニウム内部塩;4−ビニル−1−(3−スルホプロピル)ピリジニウム内部塩、4−ビニル−1−(3−スルホブチル)ピリジニウム内部塩、などの4−ビニル−1−(3−スルホアルキル)ピリジニウム内部塩が挙げられる。
【0046】
<ビニル系重合体(a2)>
本発明におけるビニル系重合体(a)は、前述の通り、単量体(A1)〜(A3)そのものを共重合した共重合体である必要はなく、以下のような段階を経て得ることができる。
即ち、単量体(A1)〜(A3)の前駆体ともいうべき一般式7〜9で示される単量体(A4)〜(A6)のうち少なくともいずれかと、これと共重合可能な単量体を共重合し、得られた共重合体中の**で示された窒素の少なくとも一部とベタイン化剤(D)とを反応させ得ることができる。得られる水溶性ビニル系重合体(a2)は、単量体(A4)〜(A6)を用いた共重合体と同様にベタイン構造を側鎖に有する。
【0047】
このような単量体(A4)としては、例えば、
N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジエチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジエチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N,N−ジエチルアミン、
などのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアミン;
N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N,N−ジエチルアミン、
などのN−(メタ)アクリルアミドアルキル−N,N−ジアルキルアミン;
N−(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアミン、
N−(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアミン、
などのN−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアネルコキシ−N,N−ジメチルアミンなどが挙げられる。
【0048】
このような単量体(A5)としては、例えば、
1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチル−イミダゾール、
などの1−ビニル−2−アルキル−イミダゾールが挙げられる。
【0049】
このような単量体(A6)としては、例えば、4−ビニル−ピリジン、2−ビニル−ピリジンなどのビニルピリジンが挙げられる。
【0050】
<ベタイン化剤群(D)>
ベタイン化剤群(D)は、環状スルホン酸エステル(D1)、ω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)、環状カルボン酸エステル(D3)およびω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)からなる群より選択される。一般式化7〜9で示される単量体(A4)〜(A6)の**で示される窒素を重合後に、スルホベタイン化もしくはカルボベタイン化するために用いられる化合物群である。
【0051】
このような環状スルホン酸エステル(D1)としては、例えば、1,2−エタンスルトン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンが挙げられる。
【0052】
このようなω‐ハロゲン化アルキルスルホン酸金属塩(D2)としては、例えば、2-クロロエタンスルホン酸ナトリウム、2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、3-クロロプロパンスルホン酸ナトリウム、3-ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム、4-クロロブタンスルホン酸ナトリウム、4-ブロモブタンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0053】
このような環状カルボン酸エステル(D3)としては、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンなどが挙げられる。
【0054】
このようなω‐ハロゲン化アルキルカルボン酸金属塩(D4)としては、例えば、2−クロロ酢酸ナトリウム、2−ブロモ酢酸ナトリウム、3−クロロプロピオン酸ナトリウム、3−ブロモプロピオン酸ナトリウム、4−クロロ酪酸ナトリウム、4−ブロモ酪酸ナトリウム、5−クロロペンタン酸ナトリウム、5−ブロモペンタン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0055】
<単量体(B)>
ビニル系重合体(a1)、(a2)を得る際に、単量体(A1)〜(A3)、(A4)〜(A6)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数1〜12のアルキル基とを有する単量体(B)を用いることができる。単量体(B)に基づく構成単位の導入により、極性やTgが適切に制御され、優れた粘着性、薬剤溶解性および薬剤放出性を有することができる。
【0056】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数1〜12のアルキル基とを有する単量体(B)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;1−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0057】
<単量体(C)>
ビニル系重合体(a1)、(a2)を得る際に、単量体(A1)〜(A3)、(A4)〜(A6)、(B)以外のその他の単量体(C)も使用することができる。
【0058】
<単量体(C1)>
単量体(C)の中でも水酸基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、1〜3級アミド基、1〜4級アミン基、ポリエーテル鎖を分子構造内に有するものを単量体(C1)とする。ベタイン樹脂(a)は、極性官能基を有する単量体(C1)に基づく構成単位を有することで、極性官能基を有することができる。
【0059】
この単量体(C1)としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどの水酸基を有する単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボン酸基、もしくはその無水物を有する単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体;(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアッシドホスフェートなどのリン酸基を有する単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有する単量体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、およびトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの1〜4級アミン基を有する単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有する単量体が挙げられる。
【0060】
<単量体(C2)>
本発明のベタイン樹脂(a)は、単量体(A1)〜(A3)、(A4)、(B)および(C1)に加えて、エチレン性不飽和基を有するその他の単量体(C2)に基づく構成単位をさらに有してもよい。
【0061】
単量体(C2)としては、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリルエステル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体などの(メタ)アクリレート系単量体が挙げられる。
【0062】
また単量体(C2)としては、例えば、ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物などの側鎖に高分子構造を有する(メタ)アクリレート系単量体が挙げられる。
【0063】
また単量体(C2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和単量体;酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリル単量体;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニル単量体;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニル単量体パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物等の、(メタ)アクリレートではないエチレン性不飽和結合を有する単量体が挙げられる。
【0064】
本発明において、単量体(C)の有するエチレン性不飽和結合基は、重合性の観点から(メタ)アクリレート基もしくは芳香族ビニル基であることが好ましい。
【0065】
ビニル系重合体(a1)の場合、単量体(A1)〜(A3)、単量体(B)および必要に応じて用いられる他の単量体(C)との合計100mol%中、単量体(A1)〜(A3)の合計は1〜40mol%であり、2〜35mol%であることが好ましい。
また、ビニル系重合体(a2)の場合は、単量体(A4)〜(A6)、単量体(B)および必要に応じて用いられるその他の単量体(C)との合計100mol%中、単量体(A4)〜(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応している部分が1〜40mol%であり、単量体(B)が20〜99mol%、単量体(A4)〜(A6)に由来する構造のうちベタイン化剤(D)と反応していない部分とその他の単量体(C)との合計が0〜79mol%であることがより好ましい。
単量体(A1)〜(A3)や単量体(A4)〜(A6)に由来する部分にベタイン化剤群(D)が反応した部分が、上記範囲にあることによって、好適な粘着性を発現すると共に、薬剤溶解性と薬剤放出性を向上できる。
【0066】
単量体(B)は、単量体(A1)〜(A3)もしくは(A4)〜(A6)、単量体(B)および必要に応じて用いられるその他の単量体(C)との合計100mol%中、20〜99mol%であることが好ましく、30〜98mol%であることがより好ましい。99mol%以下とすることにより、ビニル系重合体(a)の疎水化を抑制することが出来、薬剤溶解性を向上できる。20mol%以上であることにより、樹脂の低Tg化によって粘着性を付与しやすく、また、単量体(A1)〜(A3)もしくは(A4)〜(A6)の量が相対的に少なくなり、ビニル重合体(a)の耐水性を向上することが出来る。
【0067】
その他の単量体(C)を用いる場合、単量体(A1)〜(A3)もしくは(A4)〜(A6)、単量体(B)およびその他の単量体(C)との合計100mol%中、他の単量体(C)は、もしくはその他の単量体(C)と単量体(A4)〜(A6)に由来する部分にベタイン化剤群(D)が反応していない部分が、0〜79mol%であることが好ましく、0〜68mol%であることがより好ましい。
その他の単量体(C)として、極性官能基を有する単量体(C1)を用いる場合、単量体(A1)〜(A3)もしくは(A4)、単量体(B)およびその他の単量体(C)との合計100mol%中、極性官能基を有する単量体(C1)は0〜20mol%であることが好ましい。
単量体(C1)の極性官能基に薬剤が吸着し、薬剤放出性放出が低下する可能性があることから、単量体(C1)は少ない方が好ましい。
【0068】
皮膚貼付用粘着剤100質量%中に含まれるビニル系重合体(a)は20〜99質量%であることが好ましく、25〜99質量%であることがより好ましい。ビニル系重合体(a)の割合を20質量%以上とすることで、薬剤溶解性や薬剤放出性などの所望の性能を発揮することが出来る。
【0069】
また、ビニル系重合体(a)は非水溶性であることが好ましい。本発明において非水溶性とは、25℃のイオン交換水中99g中に重合体を1g入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、水を取り除き、重合体を減圧乾燥したあとの質量減少が5%以下であることをいう。ビニル系重合体(a)が非水溶性であることにより、粘着層に耐水性を付与でき、水の接触による粘着層の皮膚からの剥がれを抑制できる。
【0070】
<ガラス転移温度>
ビニル系重合体(a)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、−60℃〜−10℃であり、−55〜−15℃であることが好ましい。Tgが−60℃以上であることにより、凝集力を付与でき、粘着剤を皮膚から剥がす際の糊残りの発生を抑制できる。またTgが−10℃以下であることにより、皮膚への濡れ性が向上することから、優れた皮膚粘着性を付与することが出来る。
【0071】
<質量平均分子量(Mw)>
ビニル系重合体(a)の質量平均分子量は、10000〜10000000であり、15000〜5000000であることが好ましい。分子量が10000以上であることにより、凝集力を付与でき、粘着剤を皮膚から剥がす際の糊残りの発生を抑制できる。また10000000以下であることにより、樹脂の溶剤溶解性が向上し、また適正な粘度になることから、塗工適性が向上する。
【0072】
ビニル系重合体(a)の質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用する。測定装置および測定条件としては、下記条件1 によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2 とすることを許容する。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア( 溶離液) およびそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008を参照することとする。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定することとする。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM−H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 、
TOSOHTSKgelSuperHZ2000
をつないだカラムを用いる
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1ml
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM−Hを2本つなげる
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1ml
【0073】
<経皮吸収性薬剤(b)>
本発明において添加することができる薬剤としては、特に限定はなく、例えば、全身麻酔剤、睡眠剤、鎮痛剤、消炎鎮痛剤、ステロイドホルモン剤、興奮・覚醒剤、精神神経用剤、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自立神経用剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、カルシウム拮抗剤、抗殺菌剤、寄生性皮膚疾患用剤、皮膚軟化剤、抗生物質、解毒剤、鎮咳剤、鎮痒剤、催眠剤、精神活力剤、ぜんそく剤、ホルモン分泌促進剤、抗潰瘍剤、制癌剤、ビタミン剤、美肌成分等の美白効果があるもの等が挙げられる。
【0074】
また、本発明の皮膚用貼付剤の用途が局所作用型貼付剤である場合、この貼付剤に含まれる薬剤として、例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、ピロキシカム、メロキシカム、ケトロラック、フェルビナク、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム等の消炎鎮痛剤が挙げられる。薬剤の含有量は、特に限定されないが、通常、粘着層全体に対して0.1〜20質量%程度であってよい。創傷治療用、局所投与用、または全身投与用等いずれの薬剤を添加しても良い。具体的には、消炎鎮痛剤、ステロイド系抗炎症剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗腫瘍剤、抗高血圧・不整脈用剤、抗うつ・抗不安剤、局所麻酔剤、ホルモン剤、喘息・鼻アレルギー治療剤、抗凝血剤、鎮痙剤、脂溶性ビタミンなどがあげられる。
薬剤の配合量は、薬剤の種類、貼付剤の使用目的により異なるが、皮膚貼付用粘着剤の総質量に対して0.1質量%〜30質量%の範囲で通常は用いられる。
【0075】
<粘着付与剤>
本発明の皮膚貼付用粘着剤はさらに粘着付与剤を含有することができる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。
これらの粘着付与剤を配合させた場合、タック、接着剤及び保持力の調整が容易となる。また、これらは1種または2種以上を併用して用いることもできる。粘着付与剤の配合量は、その種類および極性等により異なるが、通常は皮膚貼付用粘着剤の総質量に対して1質量%〜50質量%の範囲で用いられる。
【0076】
<経皮吸収促進剤>
本発明では、粘着剤層内での薬剤の溶解性や拡散性をよくするために、さらに経皮吸収促進剤を添加することができる。
経皮吸収促進剤としては、具体的には、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン類、オリーブ油などの動植物油、乳酸などのカルボン酸類、流動パラフィン、ワックス等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル等の一価アルコール脂肪酸エステル、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、グリセリンなどのアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸ポリエチレングリコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の液状樹脂、レチノール、パルミチン酸レチノール、トコフェノール、酢酸トコフェノール等の油性ビタミンが挙げられる。
これらの経皮吸収促進剤を配合させた場合、皮膚貼付用粘着剤層の粘度を調節することができる。また、特に、ミリスチン酸イソプロピルなどの疎水性の高い化合物とグリセリンなどの多価アルコールとを併用するとき、薬剤の経皮吸収を促進する効果もある。経皮吸収促進剤の配合量は、その種類および極性、粘着剤の種類、極性および分子量などにより異なるが、通常は皮膚貼付用粘着剤の総質量に対して0.5質量%〜50質量%の範囲で用いられる。
【0077】
さらに本発明の皮膚貼付用粘着剤は、目的を損なわない範囲で任意成分としてさらに、増粘剤、酸化防止剤、保湿剤、pH調整剤等の添加剤も適宜使用することができる。特に、皮膚貼付用粘着剤用途で直接肌に接するような用途に使用する場合は、保湿剤を併用するのが好ましい。
【0078】
本発明の皮膚用貼付剤は、ビニル重合体(a)と経皮吸収性薬剤(b)とを含む粘着剤層を、シート状基材に直接あるいは間接に積層して得ることができる。
たとえば、シート状基材上に、ビニル重合体(a)と経皮吸収性薬剤(b)とを含む皮膚貼付用粘着剤と、液状媒体とを含む粘着剤塗液を塗布・乾燥して粘着剤層を形成し、該粘着剤層上に、剥離用シート状部材(ライナーともいう)をラミネートすることにより、剥離用シート部材付きの皮膚用貼付剤を得ることができる。あるいは、剥離用シート状部材上に粘着剤塗液を塗布・乾燥して粘着剤層を形成し、該粘着剤層上に、シート状基材をラミネートすることにより、剥離用シート部材付きの皮膚用貼付剤を得ることができる。
【0079】
本発明に用いられるシート状基材としては、通常皮膚貼付剤に用いられる柔軟な基材を使用することができ、特に限定されない。具体的には例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、またはセルロースエステル等の重合体フィルム;ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエステル、ポリウレタン、またはポリアミド等からなる織物・編物・不織布;または紙などを使用することができる。これらの支持体の厚みは、貼付剤の種類にもよるが基材の場合、通常50μm〜300μm、好ましくは、70μm〜200μmに設定される。
【0080】
シート状基材のうち、不織布のように目が粗く多孔なものは、液状媒体に溶解したものを支持体に塗布する方法では、溶解物が抜け落ちる恐れがあり、また、抜け落ちないまでも内部にまで浸透することから溶解物を余分に消費することにもなり、前述したあらかじめ別の基材上に粘着剤塗液を塗布・乾燥して形成した粘着剤層をラミネートする製造方法が好ましい。
【0081】
剥離用シート部材としては特に制限されず、公知の剥離フィルムを使用することができる。例えば、粘着剤層との接触面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム類、上質紙、グラシン紙等の紙類、あるいは上質紙又はグラシン紙等と、ポリオレフィンとのラミネートフィルム等が用いられる。剥離フィルムの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
【0082】
また、貼付剤は、支持体層、粘着剤層のほかに、例えばライナーや表面保護層等、通常用いられる他の機能層を積層することができる。
【実施例】
【0083】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表し、Tgはガラス転移温度を意味する。
【0084】
<ガラス転移温度の測定方法>
DSC(示差走査熱量計)によるガラス転移温度の測定は以下のようにして行うことができる。ビニル系重合体(a)の溶液を乾固し、得られた樹脂約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該試験容器をDSC測定ホルダーにセットし、10℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取る。このときのピーク温度を本発明のガラス転移温度とする。
【0085】
<各種ベタインモノマーの合成>
ビニル系重合体(a)の合成に用いたN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインおよび、N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタインは、特許5690645号を参考に合成した。同様に、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボベタインは特許3878315を、1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩と2−ビニル−1−(3−スルホプロピル)ピリジニウム内部塩は特許3584998を参考に合成した。
【0086】
[製造例1]
<ビニル系重合体(a)の調製>
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル60部、エタノール60部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’−アゾジイソブチロニトリルを0.4部、単量体(A1)としてN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインを15部(8.0mol%)、単量体(B)としてノルマルオクチルアクリレートを50部(44.9mol%)、ブチルアクリレートを30部(38.8mol%)、メチルメタクリレートを5部(8.3mol%)混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに2時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して取出した。その後、オーブンで溶媒を完全に揮発させ、ビニル系重合体(a)を得た。得られたビニル系重合体(a)のTgをDSCにより測定したところ、−44.8℃、GPCにより質量平均分子量を測定したところ、110000であった。
【0087】
[製造例2〜21]、[比較製造例1〜7]
表1に示す配合組成で、製造例1と同様の方法でビニル系重合体(a)を合成した。
【0088】
【表1】
【0089】
表中の記号は以下の通り。
DMBS:N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン
DMPS:N−アクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン
DMMC:N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボベタイン
VSPI:1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩
VSPB:2−ビニル−1−(3−スルホプロピル)ピリジニウム内部塩
OA:ノルマルオクチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
MEA:2−メトキシエチルアクリレート
AIBN:2,2‘-アゾジイソブチロニトリル
【0090】
[製造例22]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル60部、エタノール60部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2‘-アゾジイソブチロニトリルを0.4部、単量体(A4)としてメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルを15部(50mol%)、単量体(B)としてブチルアクリレートを75部、メチルメタクリレートを5部(40mol%)、単量体(C2)として2−メトキシエチルアクリレートを5部(10mol%)混合したものを、内温を75度に保ちながら3時間滴下を続け、さらに2時間撹拌を継続し、共重合体を得た。
固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、1,4−ブタンスルトンを21.4部(前記単量体(A4)の1.5倍に当たる量)加え、更に20時間撹拌を続けた。
以下の反応式に示すように、1,4−ブタンスルトンの開環反応により、単量体(A1)の一種であるN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインを用いた製造例1等と同様の構造をビニル系重合体の側鎖に有すことができる。
【0091】
【化10】
【0092】
次いで、冷却して取出し、オーブンで酢酸エチルおよびエタノール、を完全に揮発させた。乾燥させた樹脂をメチルエチルケトンでよく洗浄し、副生成物や残存した原料を取り除いた。得られた樹脂のTgをDSCにより測定したところ、−35.0℃、GPCにより質量平均分子量を測定した所、120000であった。
【0093】
[製造例23〜27]
表2に示す配合組成で、製造例22と同様の方法でビニル系重合体(a)を合成した。
【0094】
【化11】
【0095】
【化12】
【0096】
【化13】
【0097】
【化14】
【0098】
【化15】
【0099】
【表2】
【0100】
表中の記号は以下の通り。
DM:N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアミン
VI:1−ビニルイミダゾール
VP:2−ビニルピリジン
【0101】
[実施例]、[比較例]
(1)粘着力
製造例、比較製造例で合成したビニル系重合体を酢酸エチル、エタノール混合溶媒(重量比70:30)で固形分濃度が30%になるように溶解し、そこに前記ビニル系重合体固形分100部に対し、経皮吸収性薬剤としてロキソプロフェンナトリウムを3部添加し溶解させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターで乾燥塗膜30μmになるように塗工し、100℃で2分乾燥した。
次に剥離処理された別のポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層側にラミネートし、剥離用シート状部材付き皮膚用貼付剤(以下、貼付剤シートという)を作製した。
この貼付剤シートを幅25mm、長さ75mmに切断後、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、ベークライト板に23℃、65%RHの条件で貼付した。JISに準じてロール圧着し20分静置させた後、23℃、65%RHの環境下、300mm/minの速度で180度方向に剥離し、25mm幅の剥離力を測定した。
〇:12N<粘着強度
△:8N<粘着強度≦12N
×:粘着強度≦8N
【0102】
(2)糊残り
上記(1)で粘着力を測定したのと同様の試料を用い、拇指テストにより粘着剤の触感を評価した。指を離した後に、指上に粘着剤が残留するかについて目視で評価した。
〇:指上への糊移行の全くないもの
×:指上への糊移行のあるもの
【0103】
(3)薬剤溶解性
製造例、比較製造例で合成したビニル系重合体を酢酸エチル、エタノール混合溶媒(重量比70:30)で固形分濃度が30%になるように溶解し、そこに前記ビニル系重合体固形分100部に対し、経皮吸収性薬剤としてロキソプロフェンナトリウムを一定量ずつ(3部、5部、7部、9部、13部、17部、21部)添加し溶解させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターで乾燥塗膜30μmになるように塗工し、100℃で2分乾燥した。
次に剥離処理された別のポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層側にラミネートし、貼付剤を作製した。
この貼付剤を25℃−60%の恒温恒湿器に1ヶ月間保存した後、粘着剤層中の薬剤の結晶析出の有無を目視で観察し、評価した。結晶が生成しなかった最大の薬剤添加量をその粘着剤の最大薬剤溶解量とし、以下の基準で判断した。
◎:17部≦最大薬剤溶解量
〇:9部≦最大薬剤溶解量<17部
△:5部≦最大薬剤溶解量<9部
×:最大薬剤溶解量<5部
【0104】
(4)薬剤放出性
製造例、比較製造例で合成したビニル系重合体を酢酸エチル溶媒で固形分濃度が30%になるように溶解し、そこに前記樹脂固形分100部に対し、経皮吸収性薬剤としてロキソプロフェンナトリウムを、(3)で求めたそのビニル系重合体の最大薬剤溶解量分加え、経皮吸収促進剤として乳酸を2部添加し溶解させた後、上記(3)と同様にしてポリエチレンテレフタレート/粘着剤層/剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる積層構成の貼付剤を作製し、直径2cmの円形(=3.14cm
2)の大きさに切り出した。
ヌードマウスの背部剥離皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、この皮膚に、上記貼付剤から剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、露出した粘着剤層を貼り付け、皮膚透過性を調べた。
レセプター液としては、リン酸緩衝液(pH7.2)を用い、貼付剤から皮膚を通じてレセプター液に移行したロキソプロフェンナトリウムの量を24時間後にHPLCで測定した。ロキソプロフェンナトリウムの皮膚透過率は、24時間後のレセプター液中のロキソプロフェンナトリウムの量を、貼付剤中のロキソプロフェンナトリウムの量で除算した後、100倍して求めた。
〇:6[%]≦皮膚透過率
△:3[%]≦皮膚透過率<6[%]
×:皮膚透過率<3[%]
【0105】
【表3】
【0106】
表3をみてわかるように、比較例1および3で用いたビニル系重合体は、ベタイン構造を有していないため、薬剤溶解性が乏しく、また凝集力が低下し、糊残りが発生した。比較例2では、ビニル系重合体の酸価が高いため、ビニル系重合体に薬剤が吸着し、薬剤放出性が低下した。比較例4で用いたビニル系重合体は、ベタイン構造の導入量が少なく、薬剤溶解性が低下し、また、凝集力が低く、糊残りが発生した。比較例5で使用したビニル系重合体は、ベタイン構造の導入量が非常に多いため、ビニル系重合体と薬剤との相互作用が発生し、薬剤放出性が低下した。比較例6では、ビニル系重合体のTgが高いため、皮膚への濡れ性が低下し、粘着力が低下した。比較例7ではビニル系重合体の分子量が低いため凝集力が低下し、糊残りが発生した。
一方、実施例に用いたビニル系重合体は、すべての物性においてバランスよく良好な結果が得られた。