(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、回転電機等の構成の説明の便宜上、上下左右等の方向を適宜使用するが、回転電機等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
<1.第1実施形態>
(1−1.回転電機の概略構成)
図1及び
図2を用いて、第1実施形態に係る回転電機の概略構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の回転電機10は、固定子30と、固定子30の内側に配置された回転子50とを備え、軸方向長さを短縮した扁平なインナーロータ型のモータである。この回転電機10は、後述の
図11に示すように、例えば産業用ロボットの関節部7を駆動するモータ11等に使用される。
【0013】
回転電機10はシャフト51を備えている。シャフト51は、回転電機10の軸方向一方側(
図1中左側)に設けられた反負荷側ブラケット42(筐体の一例に相当)及び軸方向他方側(
図1中右側)に設けられた負荷側ブラケット41(筐体の一例に相当)に、それぞれ反負荷側軸受44及び負荷側軸受43を介して回転自在に支持されている。シャフト51の反負荷側端部には、エンコーダ40が設けられている。なお、エンコーダ40は設置されなくてもよい。負荷側ブラケット41は、円筒状のフレーム部41aを一体に備えている。フレーム部41a、負荷側ブラケット41及び反負荷側ブラケット42は、回転電機10の筐体を構成する。
【0014】
なお、本明細書において「負荷側」とは回転電機10に対してシャフト51が突出する方向(
図1中右側)を指し、「反負荷側」とは負荷側の反対方向、すなわち回転電機10に対してエンコーダ40が配置される方向(
図1中左側)を指す。
【0015】
(1−2.回転子の構成)
回転子50は、固定子30と径方向に磁気的間隙を空けて、シャフト51の外周側に設けられている。回転子50は、周方向に配置された複数の永久磁石58と、永久磁石58の径方向外側及び径方向内側を挟むように配置された外側の回転子鉄心52及び内側の回転子鉄心53とを備える。複数の永久磁石58は、軸方向から見て実質的にV字状に配置された1対の永久磁石58が複数対(この例では16対)、周方向に沿うように配列されている。複数対の永久磁石58は、各対の永久磁石58の互いに向かい合う側の磁極同士が同極のN極又はS極となり、かつそのN極同士、S極同士の磁極が周方向に交互に繰り返されるように配置されている。永久磁石58、外側の回転子鉄心52、及び内側の回転子鉄心53は、ボルト57によってシャフト51に固定された円環状の大径の負荷側プレート55と、該第1プレート55の反負荷側に配置された狭幅の円環状の反負荷側プレート56との間に挟持される。そして、永久磁石58及び回転子鉄心52,53は、回転子鉄心52,53の各々を貫通して負荷側プレート55及び反負荷側プレート56を結合したボルト54によって一体に固定され、負荷側プレート55を介してシャフト51に支持されている。
【0016】
(1−3.固定子の構成)
固定子30は、ヨーク部31から径方向内側に突出したティース部33を有するとともに、フレーム部41aの内周面に周方向に配置されて環状に連結された複数(この例では18個)の固定子鉄心32と、ティース部33に装着された複数(この例では18個)の空芯コイル20(固定子コイルの一例に相当)とを備えている。隣り合うティース部33,33間にはスロット34が形成され、ティース部33に装着された空芯コイル20は、周方向両側部がスロット34内に装着される。空芯コイル20の巻き始め側のリード端部21、巻き終り側のリード端部22は、空芯コイル20の反負荷側から径方向外側に引き出されて結線部39で結線され、外部の給電ケーブル8と接続される。
【0017】
図3に示すように、ティース部33は、軸方向(
図3中左右方向)中央の中央側ティース部33aと、中央側ティース部33aの軸方向両側に小さく突出した負荷側ティース部33b及び反負荷側ティース部33cとを有している。負荷側ティース部33b及び反負荷側ティース部33cは、周方向(
図3中上下方向)の寸法が中央側ティース部33aよりも短くなっている。また、反負荷側ティース部33cは、負荷側ティース部33bよりも軸方向の寸法が長くなっている。空芯コイル20と負荷側ティース部33b、反負荷側ティース部33c、中央側ティース部33aとの間にはインシュレータ37が介挿されている。また、空芯コイル20の軸方向両側の端面23,24と、負荷側ブラケット41及び反負荷側ブラケット42との間には、
図1に示すように、絶縁体36が密着して配置されている。絶縁体36としては、例えば絶縁シート等が用いられるが、空芯コイル20を被覆するモールド材や、ブラケットの表面に形成されたコーティング材でもよい。が設けられている。さらに、固定子鉄心32、空芯コイル20、及び絶縁体36を一体に樹脂成形したモールド樹脂部38が設けられている。
【0018】
なお、
図3において、符号18は、空芯コイル20の反負荷側の角部であり、符号19は、空芯コイル20の負荷側の角部である。本実施形態では、反負荷側の両側の角部18において、空芯コイル20の巻線17(後述の
図5参照)の巻き位置の移動が行われる。負荷側の両側の角部19では、巻線17の巻き位置の移動は行われない。上述のように、反負荷側ティース部33cの軸方向寸法が負荷側ティース部33bよりも長いことにより、反負荷側の2つの角部18の曲率半径は負荷側の2つの角部19よりも大きくなる。
【0019】
(1−4.空芯コイルの形状)
図4(b)に示すように、空芯コイル20は、径方向内側(
図4(b)中右側)及び径方向外側(
図4(b)中左側)に実質的に円筒形状の一部を構成する曲面状となる端面28及び端面29をそれぞれ備えている。また、空芯コイル20は、周方向両側(
図4(b)中上側及び下側)に実質的に平面状となる端面25,25をそれぞれ備えている。また、空芯コイル20は、
図4(c)に示すように、軸方向両側の負荷側、反負荷側に実質的に平面状となる端面23及び端面24をそれぞれ備えている。これら端面23及び端面24は、いずれも回転子50の回転軸心AX(
図1参照)に垂直な面方向の端面となっている。
【0020】
なお、上記の説明における「曲面状」及び「平面状」とは、厳密な意味での「曲面」及び「平面」ではない。すなわち、端面28,29については、曲面状のプレス治具により加圧成形された結果得られた「実質的に曲面状」の端面という意味であり、巻線17の輪郭による細かな凹凸形状や、コイル端面の形状によりプレス治具との間に隙間が生じた場合の窪み等の形状は許容される。端面23,24,25についても同様であり、平面状のプレス治具により加圧成形された結果得られた「実質的に平面状」の端面という意味であり、巻線17の輪郭による細かな凹凸形状や、コイル端面の形状によりプレス治具との間に隙間が生じた場合の窪み等の形状は許容される。
【0021】
また、空芯コイル20は、周方向両側にスロット34内に装着されるスロット装着部26、及び、軸方向両側に固定子鉄心32の軸方向両側に位置するコイルエンド部27を備える。
図4(b)に示すように、スロット装着部26の周方向の断面形状は、実質的に径方向外側ほど寸法が大きくなる扇形であり、
図4(c)に示すように、コイルエンド部27の軸方向の断面形状は、実質的に長方形である。
【0022】
以上のような空芯コイル20の形状により、複数(この例では18個)の空芯コイル20を固定子鉄心32に装着して周方向に配置したとき、1つの正確な円筒形状が形成され、空芯コイル20をブラケット41,42に密着させた固定子30を構成することができる。
【0023】
(1−5.空芯コイルの巻線の構成)
図5に示すように、空芯コイル20を形成する巻線17は、周方向両側(
図5中左右両側)と軸方向両側(
図5中紙面の奥側及び手前側)の4つの平面部13において整列配置されている。巻線17の巻き位置の移動は、空芯コイル20の軸方向のいずれか一方側の2つの角部、本実施形態では反負荷側(
図5中紙面の手前側)の両側の角部18のみで行われる。
【0024】
なお、
図5は、反負荷側のコイルエンド部27の側から見た加圧成形前の空芯コイル20の周方向の断面を示している。巻き始めのリード端部21は、巻き治具80の径方向外側より導入され、巻線17(「線材」ともいう。)の巻回が開始される。
図5中右側の巻線17に示したX印は、図中右側のスロット装着部26に入って負荷側(
図5中紙面の奥側)に向けて巻回される巻線17を示し、
図5中左側の巻線17に示した番号は、負荷側に向けて巻回された巻線17が図中左側のスロット装着部26に入って反負荷側に向けて巻回される順序(内側から外側に巻く通常の巻き方式による巻回の順序)を示している。スロット装着部26と負荷側のコイルエンド部27の間は全て整列巻きであり、巻線17の巻き位置の移動は行われない。反負荷側のコイルエンド部27も整列巻きであるが、他の整列巻き部に対し径方向に半ピッチ位置がずれている。この半ピッチの位置ずれとなるように、反負荷側のコイルエンド部27の両側の角部18で巻き位置の移動が行われる。
【0025】
このように巻線17の巻き位置の移動が反負荷側の角部18で行われる結果、周方向両側と軸方向両側の4つの平面部13において整列巻きが可能になり、反負荷側のコイルエンド部27を含めた空芯コイル20の外形部の6面全てにおける加圧成形が可能になる。なお、巻線17の巻き位置の移動を行う箇所は反負荷側の角部18のみに限定されるものではなく、4つの角部18,18,19,19のうちいずれか2つの角部において行われればよい。
【0026】
図6(a)に空芯コイル20の巻線17の巻き始め時の様子を示し、
図6(b)に空芯コイル20の巻線17の巻き終り時の様子を示す。なお、
図6(a)は、巻線17の巻き始めより1層目の巻回を終え、2層目の巻回中の状態である。
【0027】
図6(a)に示すように、巻き治具80に巻回される空芯コイル20の巻線17において、巻き始め側のリード端部21は、空芯コイル20の反負荷側(
図6中紙面の手前側)の一方(
図6(a)中右側)の角部18において径方向外側の第1層目より引き出される。一方、
図6(b)に示すように、巻き終わり側のリード端部22は、空芯コイル20の反負荷側の他方(
図6(b)中左側)の角部18においてコイル最外層より径方向外側に引き出される。
【0028】
なお、例えば結線部39が固定子鉄心32の負荷側に配置される場合には、2つのリード端部21,22を負荷側の2つの角部19,19より引き出してもよい。また、例えば結線部39がコイルエンド部27の径方向内側に配置される場合には、2つのリード端部21,22をコイルエンド部27の径方向内側に向けて引き出してもよい。
【0029】
(1−6.巻き治具の構成)
空芯コイル20は、巻線17を定位置に巻回できるような形状の巻き治具80に巻回された後、平坦な型に装着されて加圧成形される。
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、巻き治具80は、空芯コイル20の内側の巻き治具本体87と、巻き治具本体87の径方向両側(
図7(a)中左右両側)にはめ合わされた径方向内側治具85及び径方向外側治具86とを備えている。この例では、
図7(b)に示すように、巻き治具本体87は、負荷側治具81、反負荷側治具82、周方向右側治具83、及び周方向左側治具84の4つの組み合わせで構成されている。
【0030】
反負荷側治具82、周方向右側治具83、及び周方向左側治具84には、空芯コイル20の1層目の巻線17を導く溝88が形成されている。これにより、巻き治具80における巻線17の位置が固定される。反負荷側治具82の溝88は、他の溝付きの治具である周方向右側治具83、周方向左側治具84に対し半ピッチ、溝位置がずれている。
【0031】
巻き治具本体87のうち、負荷側治具81には溝がないので、他の反負荷側治具82、周方向右側治具83、及び周方向左側治具84から取り外し可能である。このため、巻き治具80への空芯コイル20の巻線17の巻回後、初めに負荷側治具81が外される。次に、反負荷側治具82、周方向右側治具83、及び周方向左側治具84が取り外される。そして、巻回された空芯コイル20に平坦なコアピン71(後述の
図8及び
図9参照)が装着され、加圧成形される。
【0032】
(1−7.空芯コイルの加圧成形)
上述のように、巻き治具80に巻線17を巻回して未成形の空芯コイル20を形成した後、空芯コイル20の径方向内側及び外側の端面を円筒形状の一部を構成する曲面状のプレス治具で加圧成形し、空芯コイル20の周方向両側及び軸方向両側の端面を平面状のプレス治具で加圧成形する。この空芯コイル20の加圧成形について
図8及び
図9を用いて説明する。
【0033】
図8に示すように、まず、巻線17の巻回により形成された未成形の空芯コイル20に、コアピン71が装着される。そして、コアピン71が上パンチ73に取り付けられ、上パンチ73を受容するダイ72の成形穴70にセットされる。
【0034】
成形穴70は、空芯コイル20の軸方向両側に対応する前側及び後側が開口した有底の穴である。この成形穴70は、空芯コイル20の径方向内側の外形状を成形する径方向内側用の成形面70aと、空芯コイル20の周方向両側の外形状を成形する周方向用の1対の成形面70bを有する。成形面70aは、円筒形状の一部を構成する曲面状であり、具体的には、空芯コイル20の径方向内側の外形状に対応した所定の曲率で上に凸に湾曲した湾曲壁面からなる。1対の成形面70bは、平面状であり、具体的には、空芯コイル20の周方向両側の外形状に対応した傾斜で成形面70aの左右の辺から外開き状に立ち上がる傾斜壁面からなる。上パンチ73は、空芯コイル20の径方向外側の外形状を成形する成形面73aを有する。成形面73aは、円筒形状の一部を構成する曲面状であり、具体的には、空芯コイル20の径方向外側の外形状に対応した所定の曲率で上に凹に湾曲した湾曲壁面からなる。
【0035】
空芯コイル20がダイ72の成形穴70にセットされたら、
図8中白抜きの矢印に示すように、上パンチ73がダイ72に対し所定量降下される。これにより、ダイ72と上パンチ73とにより空芯コイル20の径方向両側の端面が押圧され、空芯コイル20の径方向両側の外形状が加圧成形される。また、空芯コイル20の周方向両側の端面が押圧され、空芯コイル20の周方向両側の外形状が加圧成形される。
【0036】
次に、
図9に示すように、上パンチ73とダイ72との間に形成された前後両側の1対の開口75のそれぞれに、横パンチ74が
図9中白抜きの矢印で示すように挿入される。横パンチ74は、空芯コイル20の周方向断面形状に対応する左右方向の断面形状を有している。また、横パンチ74の空芯コイル20と接触する側の壁面は、平面状であり、具体的には、空芯コイル20の軸方向両側の端面に対応した扇型の外郭を有する垂直な成形面となっている。ダイ72の開口75に挿入されたそれぞれの横パンチ74が所定量前進されると、空芯コイル20の軸方向両側の端面が押圧され、空芯コイル20の軸方向両側の外形状が軸心AXに対して略垂直な端面となるように加圧成形される。
【0037】
以上により、空芯コイル20の加圧成形が完了する。その後、成形された空芯コイル20を熱硬化性等の樹脂で樹脂モールドすることにより、本実施形態で使用する完成品の空芯コイル20が得られる。
【0038】
なお、成形面73aを備えた上パンチ73及び成形面70aを備えたダイ72が曲面状のプレス治具の一例に相当し、1対の成形面70bを備えたダイ72及び横パンチ74が平面状のプレス治具の一例に相当する。
【0039】
(1−8.加圧成形による巻線の変形)
加圧成形後の空芯コイル20の各巻線17の断面の様子を
図10に示す。巻線17は、導体15をエナメル等の絶縁被膜16で被覆した構造である。導体15は、例えば銅又はアルミ等からなる。なお、導体15にアルミを用いた場合には、空芯コイル20を軽量化でき、固定子30、ひいては回転電機10を軽量化できる。各巻線17は、加圧成形により丸形の断面が塑性変形した形状(例えば略矩形や略多角形等)となっている。図中の符号Pは、ダイ72の成形面70bや横パンチ74の成形面を表しており、加圧成形により空芯コイル20の端面が実質的に平面状に形成されている。これにより、占積率を高めつつ、各端面を所望の形状とした空芯コイル20を実現できる。
【0040】
(1−9.扁平モータの用途)
例えば産業用ロボットの関節部の駆動に使用するモータには、関節部の肥大化を防ぐためにモータを扁平形状に構成したい要望がある。
図11に産業用ロボットの関節部の一例を示す。産業用ロボットの関節部7では、元アーム9と、先アーム12との間をモータ11で連結して、モータ11により関節部7を駆動し、元アーム9に対し先アーム12の回動動作を行わせている。
【0041】
本実施形態の回転電機10は、軸方向に扁平なモータを構成することが可能であるので、産業用ロボットの関節部7等を駆動するモータ11として使用するのに好適である。
【0042】
以上において、空芯コイル20における巻線17の巻き位置の移動を反負荷側の角部18のみで行い、周方向両側と軸方向両側の4つの平面部13において整列巻きとする構成、及び、リード端部21,22を角部18において引き出す構成が、径方向内側又は径方向外側への引き出しが、空芯コイルの径方向両側、軸方向両側、周方向両側の端面の加圧成形を可能とする手段の一例に相当する。
【0043】
(1−10.第1実施形態の効果)
以上説明したように、第1実施形態の回転電機10は、ティース部33を備えた固定子鉄心32と、ティース部33に装着され、径方向内側及び外側に実質的に円筒形状の一部を構成する曲面状となる端面28,29を備えると共に周方向両側に実質的に平面状となる端面25,25及び軸方向両側に実質的に平面状となる端面23,24を備えた空芯コイル20と、を有する。
【0044】
このように、空芯コイル20の軸方向両側に実質的に平面状となる端面23,24を備えるので、両端面23,24を負荷側ブラケット41及び反負荷側ブラケット42に十分に密着させることが可能となり、放熱性を向上できる。また、軸方向両側の端面23,24は加圧成形により平面状に形成されるので、軸方向両側のコイルエンド部27,27の軸方向長さを短縮できる。したがって、放熱性を損なうことなく軸方向長さを短縮した回転電機10を実現できる。
【0045】
また、空芯コイル20の径方向内側及び外側に実質的に円筒形状の一部を構成する曲面状となる端面28,29を備えるので、複数の空芯コイル20を各ティース部33に装着したときに1つの正確な円筒形状が形成され、断面形状が単なる台形状であるコイルに比べて占積率を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20の軸方向両側の端面23,24が回転子50の回転軸心AXに垂直な面方向の端面として形成される。これにより、例えばコイルエンド部27の軸方向の断面形状が径方向外側程寸法が大きくなる略扇形である場合に比べ、空芯コイル20の軸方向長さを短縮できる。その結果、軸方向長さの小さい扁平形の回転電機10を実現できる。
【0047】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20のスロット装着部26の周方向の断面形状が実質的に径方向外側ほど寸法が大きくなる扇形であり、コイルエンド部27の軸方向の断面形状が実質的に長方形である。これにより、占積率の高い固定子を構成できる。
【0048】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20は、スロット装着部26及びコイルエンド部27における各巻線17の断面形状が、丸形が加圧成形により塑性変形した形状を含むように構成される。これにより、占積率を高めつつ、各端面23,24,25,28,29を所望の形状とした空芯コイル20を実現できる。
【0049】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20は、周方向両側に位置する2つの平面部13(端面25,25を含む2つの平面部)及び軸方向両側に位置する2つの平面部13(端面23,24を含む2つの平面部)と、この4つの平面部13の各々の間に位置する4つの角部18,18,19,19と、を備え、各平面部13において巻線17が整列に配置され、4つの角部18,18,19,19のうちいずれか2つの角部において巻き位置の移動が行われるように、巻線17が巻回されて構成される。このように、巻線17の巻き位置の移動が角部のみで行われる結果、周方向両側と軸方向両側の4つの平面部13において整列巻きが可能となり、反負荷側のコイルエンド部27の端面24を含めた空芯コイル20の6面全てに対し加圧成形が可能となる。
【0050】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20は、巻線17の巻き位置の移動が行われる2つの角部18の曲率半径が、巻き位置の移動が行われない他の2つの角部19の曲率半径よりも大きくなるように構成される。これにより、巻線17の巻き位置の移動が行われる角部において、巻き位置の移動を無理なく行うのに必要な長さ(巻線17の経路の長さ)を確保できる。
【0051】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20は、反負荷側の2つの角部18,18よりコイルエンド部27の径方向外側に向けて引き出された2つのリード端部21,22を有する。これにより、2つのリード端部21,22をコイルエンド部27の径方向外側に配置された結線部39に導くことができる。また、2つのリード端部21,22を加圧成形が行われない角部より引き出すので、加圧成形によるリード端部の損傷を防止できる。
【0052】
また、本実施形態では特に、巻き始め側のリード端部21は、反負荷側の一方の角部18において径方向外側の第1層目より引き出され、巻き終わり側のリード端部22は、反負荷側の他方の角部18においてコイル最外層より引き出される。これにより、巻線17を内側から外側に積層して巻回した通常の巻き方式の空芯コイル20を実現できる。
【0053】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20の軸方向両側の端面23,24と負荷側ブラケット41及び反負荷側ブラケット42との間に密着して配置された絶縁体36を有する。これにより、回転電機10の放熱性を損なうことなく、空芯コイル20と負荷側ブラケット41及び反負荷側ブラケット42との絶縁を確保できる。
【0054】
また、本実施形態では特に、固定子鉄心32、空芯コイル20、及び絶縁体36を一体に成形したモールド樹脂部38を有する。これにより、固定子30が一体的に構成されるので、回転電機10の組立時の作業性を向上できる。また、固定子鉄心32と空芯コイル20とのガタつきを防止し、絶縁に対する長期的な信頼性を確保できる。
【0055】
また、本実施形態では特に、空芯コイル20のコイルエンド部27の径方向外側に配置され、空芯コイル20のリード端部21,22を結線する結線部39を有する。このように、結線部39がコイルエンド部27の径方向外側に配置されるので、結線部39による回転電機10の軸方向長さの増大を防止できる。
【0056】
<2.第2実施形態>
図12乃至
図14を用いて、第2実施形態について説明する。
【0057】
(2−1.回転電機の概略構成)
図12に、第2実施形態に係る回転電機10Aの概略構成を示す。回転電機10Aは、固定子30Aの構成が第1実施形態の回転電機10における固定子30と異なる。回転電機10Aのその他の構成は第1実施形態の回転電機10と同様である。
図12において
図10と同様な要素については同一の符号を付して適宜説明を省略又は簡略化する。
【0058】
本実施形態における固定子30Aの固定子鉄心32Aは、ヨーク部31の軸方向両側に環状鉄心35を設けて、ヨーク部31及び両側の環状鉄心35からなるヨーク部31Aを有する。この構造により、ヨーク部31Aはティース部33より軸方向寸法が大きくなる。これにより、ティース部33の磁路の大きさを確保したままヨーク部31Aの内径を大きくすることができ、その分、ティース部33に装着する空芯コイル20Aのコイル寸法を大きく設計できる。
【0059】
(2−2.空芯コイルの巻線の構成)
なお、空芯コイル20Aを、第1実施形態で説明した空芯コイル20のように、巻き始め側のリード端部21を第1層目のコイルエンド部27の径方向外側に引き出す構成とした場合、環状鉄心35に干渉する可能性があることから、環状鉄心35に干渉しないようなリード端部の設け方を工夫する必要がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、
図13に示すように、空芯コイル20Aの一方のリード端部21A(巻き終り側のリード端部に相当)は、径方向内側のコイル最外層より角部18を経て、コイルエンド部27の径方向外側に引き出され、もう一方のリード端部22A(巻き始め側のリード端部に相当)は、コイル最外層より角部18を経て、コイルエンド部27の外側に引き出されるように構成される。
【0061】
すなわち、空芯コイル20Aの巻線17の巻回はいわゆるα巻き方式となっており、2本のリード端部21A,22Aが外側に形成される。なお、第1実施形態と同様に、巻線17の巻き位置の移動は、反負荷側の両側の角部18のみで行われ、周方向両側と軸方向両側の4つの平面部13において整列巻となり、反負荷側のコイルエンド部27を含めた空芯コイル20Aの外形6面全てで加圧成形される。
【0062】
図13に示すように、巻線17の巻き始めは径方向内側より行われる。一方のリード端部22Aは巻き治具80Aの径方向外側へ1,2,3,・・・と15ターン巻回して1層目とし、これを2層目、3層目、・・・と巻回し、6層目の69ターン(符号22aで示す)で巻回を終了する。もう一方のリード端部21Aは径方向内側を2層目、3層目と巻回し、2ターン(符号21aで示す)で巻回を終了するため、空芯コイル20Aのターン数は第1実施形態の空芯コイル20と同じ71ターンである。
【0063】
巻き治具80Aは、径方向外側治具86のリード端部21Aの位置が変更される以外は、第1実施形態で使用する巻き治具80と同じ形状である。
【0064】
図14(a)に空芯コイル20Aの巻線17の巻き始め時の様子を示し、
図14(b)に空芯コイル20Aの巻線17の巻き終り時の様子を示す。なお、
図14(a)は、巻線17の巻き始めより1層目の巻回を終え、2層目の巻回中の状態である。
【0065】
空芯コイル20Aの一方のリード端部21Aは、径方向内側のコイル最外層より反負荷側のコイルエンド部27の周方向右側の角部18を経て、コイルエンド部27の外側に引き出される。もう一方のリード端部22Aは、コイル最外層より反負荷側のコイルエンド部27の周方向左側の角部18を経て、コイルエンド部27の外側に引き出される。そのため、
図12で示した環状鉄心35に干渉せずにリード端部21A,22Aを結線部39に導くことができる空芯コイル20Aが得られる。
【0066】
(2−3.第2実施形態の効果)
以上説明した第2実施形態によれば、リード端部21A,22Aの両方を最外層より引き出した、いわゆるα巻き方式の空芯コイル20Aを実現できる。この場合、両方のリード端部21A,22Aをコイルエンド部27の軸方向外側位置で引き出すことができるので、固定子鉄心32Aのヨーク部31Aの軸方向寸法をティース部33よりも大きくした場合でも、リード端部21A,22Aとヨーク部31Aとの干渉を防止できる。
【0067】
また、本実施形態では特に、固定子30Aは、ティース部33及びティース部33よりも軸方向寸法が大きいヨーク部31Aを備えた固定子鉄心32Aを有する。これにより、ティース部33の磁路の大きさを確保しつつ、ヨーク部31Aの内径を大きくすることが可能となり、その分空芯コイル20Aの寸法を大きく設計できる。また、空芯コイル20Aの寸法を増大させない場合には、ヨーク部31Aの外径を小さくすることが可能となり、回転電機10Aの径方向寸法を小型化できる。
【0068】
<3.変形例>
以上では、回転電機10,10Aがモータである場合を一例として説明したが、本実施形態は、回転電機10,10Aが発電機である場合にも適用することができる。
【0069】
なお、以上の説明における「垂直」とは、厳密な意味での垂直ではない。すなわち、「垂直」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」という意味である。
【0070】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0071】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。