(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0018】
1、電極材料
本発明の電極材料は、粉状(粉末ともいう)である酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物に、貴金属及び/又はその酸化物が担持された構造を有する。
酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物は酸窒化チタンとチタン酸化物が混相状態になっているものである。言い換えると一つの該化合物粒子中に酸窒化チタンとチタン酸化物が混在したものであり、XRD測定により混相であることを確認することができる。
【0019】
酸窒化チタンはTiO
xN
(1−X)とも表記されるが、酸素と窒素の比、すなわちxの値は粉末X線回折(XRD)の測定により求めることができる。その理由として、酸窒化チタンは、NaCl型の結晶構造を有する窒化チタン(TiN)や一酸化チタン(TiO)の窒素元素(N)の一部が酸素元素(O)で置き換わった状態、又は、酸素元素(O)の一部が窒素元素(N)で置き換わった状態のものであり、TiNとTiOのX線回折は同様のパターンを示すが、結晶格子内においてNとOでは原子間距離が異なり、格子定数の違いとして識別できるためである。XRDによる格子定数及びTiO
xN
(1−X)におけるx値の算出については、後に詳細を記載する。
【0020】
チタン酸化物としては(二)酸化チタン、亜酸化チタンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、(二)酸化チタンはルチル型であることが好ましい。
【0021】
上記酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物に含まれる酸窒化チタンは、TiO
XN
(1−X)と表した場合、Xが0.1以上、0.9以下であることが好ましい。この範囲であると、電極材料としての性能と耐久性のバランスがとれ実用上有利である。Xは、より好ましくは、0.5以上、0.9以下であり、更に好ましくは、0.6以上、0.9以下である。
【0022】
上記酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物は、粉状である。これにより、電極材料としての分散性や取扱い性が良好になり、任意の形状に成型することができる。なお、電極材料自体も粉状であることが好ましい。
【0023】
上記酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物は、Ti以外の金属元素の含有量が0.2質量%未満であることが好ましい。これにより、Ti以外の金属元素が導電性材料使用時に溶出するおそれを充分に排除することができ、本発明の電極材料に由来する性能がより効果的に発揮されることになる。
【0024】
本明細書中、Ti以外の金属元素の含有量は、XRF(蛍光X線分析)やICP(誘導結合プラズマ発光分析)にて測定することができる。
なお、「金属元素」には、ケイ素等の半金属原子も包含するものとする。
【0025】
上記酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物に担持する貴金属及び/又はその酸化物は、1種であってもよいし2種以上であってもよい。貴金属は特に限定されないが、電極の触媒反応を容易かつ安定に行わせる観点から、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びパラジウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることが好適である。中でも白金がより好ましい。
なお、製造条件次第で貴金属は合金を生成するが、酸素還元活性をより向上させる可能性があるため、貴金属の一部又は全体がチタンとの合金になっていてもよい。
【0026】
貴金属及び/又はその酸化物の担持量は、上記酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物100重量部に対し、貴金属の元素換算で1〜40重量部であることが好ましい(2種以上用いる場合はその合計の担持量がこの範囲にあることが好ましい)。これにより、貴金属及び/又はその酸化物がより微細に分散され、電極材料としての性能がより向上する。より好ましくは5〜35重量部、更に好ましくは8〜35重量部である。
貴金属等の担持量は、後述する実施例に記載の通り、例えば、走査型蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII、株式会社リガク製)を用いて測定することができる。
【0027】
上記電極材料は、貴金属及び/又はその酸化物に加え、更に、ニッケル、コバルト、鉄、銅及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含んでもよい。
【0028】
上記電極材料は、その細孔径分布において下記(I)を満たす。
(I)Log微分細孔容積分布から算出された、細孔径0〜180nm間のピーク面積aと、細孔径50〜180nm間のピーク面積bとの比(b/a)が、0.9以上。
このピーク面積比(b/a)は、酸素還元活性を更に高める観点から、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.95以上である。
上記細孔径分布の関係性が電極材料の性能に影響を与える理由は判明していないが、細孔径が50nm未満の細孔中では、生成物質である水の拡散が十分に行われず滞留してしまい、酸素還元反応の反応物質である酸素や、プロトンを伝達するための電解質が細孔中に移動しにくくなると予想されるので、50nm未満の細孔が多いと酸素還元活性が低下してしまう可能性が考えられる。
【0029】
上記電極材料はまた、その細孔径分布において下記(II)を満たす。
(II)50〜180nmの積算細孔容積が0.1cm
3/g以上。
この積算細孔容積が上記を満たすことで電極に流通させる反応ガスを十分に拡散させることが出来るが、酸素還元活性を更に高める観点から、好ましくは0.2cm
3/g以上、更に好ましくは0.25cm
3/g以上である。
【0030】
本明細書中、上記細孔特性(上述のb/a、及び、積算細孔容積)は、後述の実施例に記載の方法にて求めることができる。なお、積算細孔容積は、180nmの細孔容積値に、細孔径が小さくなるごとに細孔容積を積算した値である。
【0031】
上記電極材料は、貴金属及び/又はその酸化物の比表面積あたりの面積比活性が80A/m
2以上であることが好ましい。面積比活性が大きいほど、酸素還元活性が高く、電気化学特性に優れることを意味する。より好ましくは100A/m
2以上、更に好ましくは120A/m
2以上、特に好ましくは150A/m
2以上である。
本明細書中、面積比活性は、後述の実施例に記載の手法により求めることができる。
【0032】
上記電極材料はまた、比表面積が10m
2/g以上であることが好ましい。これにより、電気化学特性が更に向上する。より好ましくは15m
2/g以上、更に好ましくは20m
2/g以上、特に好ましくは25m
2/g以上である。
【0033】
本明細書中、比表面積(SSAとも称する)は、BET比表面積を意味する。
BET比表面積とは、比表面積の測定方法の一つであるBET法により得られた比表面積のことをいう。比表面積とは、ある物体の単位質量あたりの表面積のことをいう。
BET法は、窒素等の気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から比表面積を測定する気体吸着法である。本明細書では、後述の実施例に記載した方法により比表面積を求めることができる。
【0034】
2、電極材料組成物
本発明の電極材料組成物は、上述した本発明の電極材料を含む。電極材料組成物に含まれる電極材料の好ましい形態は上述の電極材料と同じである。
【0035】
3、製造方法
本発明の電極材料及び電極材料組成物を得るための製造方法は特に限定されないが、例えば、比表面積が20m
2/g以上であるルチル型酸化チタンを含む原料を、アンモニア雰囲気下で焼成する工程(1)と、該工程(1)で得た生成物と貴金属及び/又はその水溶性化合物とを用いて、貴金属及び/又はその酸化物を担持する工程(2)とを含む製造方法により、本発明の電極材料を容易かつ簡便に得ることができる。このような電極材料の製造方法は、本発明の一つである。この製造方法は、必要に応じ、通常の粉末製造時に採用される1又は2以上のその他の工程を更に含んでもよい。
【0036】
1)工程(1)
工程(1)では、比表面積が20m
2/g以上であるルチル型酸化チタンを含む原料を用いる。酸化チタンを用いると、製造時に含まれる不純物が少なくなるうえ、容易に入手できるため、安定供給の点で優れている。なお、このような工程(1)により、上述した粉状の酸窒化チタンを効率的に得ることができる。
本明細書中、「酸化チタン」とは、通常の市場で流通している酸化チタン(二酸化チタンとも称す)を意味し、具体的には、X線回折測定等の定性試験で「酸化チタン」と称されるものをいう。
【0037】
ここで、ルチル型酸化チタン以外の酸化チタン(例えばアナタース型酸化チタン等)を使用すると、得られる電極材料において、Log微分細孔容積分布から算出された、細孔径0〜180nm間のピーク面積aと、細孔径50〜180nm間のピーク面積bとの比(b/a)が小さくなる。
【0038】
上記酸化チタンの比表面積は20m
2/g以上である。これにより、上記粉状の酸窒化チタンがより効率的に得られる。好ましくは30m
2/g以上、より好ましくは40m
2/g以上、更に好ましくは50m
2/g以上である。
【0039】
原料として2種以上の成分からなる混合物(原料混合物)を使用する場合、これは各成分を通常の混合方法で混合することで得ることができるが、その際、乾式法を採用することが好適である。すなわち乾式混合物であることが好ましい。
なお、各原料成分はそれぞれ1種又は2種以上使用することができる。
【0040】
工程(1)では、上記原料をアンモニア雰囲気下で焼成(アンモニア焼成とも称す)に供する。その際、原料をそのまま焼成してもよいし、原料が溶媒を含む場合は、ろ過なのどの操作により脱溶媒を行った後に焼成してもよい。
【0041】
アンモニアの濃度は5vol%〜100vol%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50vol%以上、更に好ましくは75vol%以上、特に好ましくは100vol%である。
【0042】
焼成温度は、例えば500℃以上、1100℃未満とすることが好ましい。これにより、上述した細孔特性を満たす電極材料を効率的に得ることが可能になる他、電極材料が高比表面積と高導電性とを両立することも可能になる。焼成温度は、より好ましくは600℃以上、更に好ましくは650℃以上であり、また、より好ましくは1000℃以下、更に好ましくは950℃以下である。
本明細書中、焼成温度とは、焼成工程での最高到達温度を意味する。
【0043】
焼成時間、すなわち上記焼成温度での保持時間は、例えば5分〜100時間とすることが好ましい。焼成時間がこの範囲内にあると反応がより充分に進み、生産性に優れる。より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上、特に好ましくは2時間以上であり、また、より好ましくは24時間以内、更に好ましくは10時間以内である。
なお、焼成終了後に降温する場合は、アンモニア以外のガス(例えば窒素ガス)を混合又は置換して行ってもよい。アンモニア焼成の前又は後に、水素ガス等で還元焼成を行ってもよい。これにより、酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物を得ることが出来る。還元焼成での焼成温度及び焼成時間、雰囲気ガス濃度は、それぞれアンモニア焼成と同様の範囲とすることが好ましい。
【0044】
還元焼成を行う場合、原料は還元助剤を含んでもよい。還元助剤の例としては、金属チタン、水素化チタン、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
2)工程(2)
工程(2)では、工程(1)で得た生成物(粉状の酸窒化チタン)と貴金属及び/又はその水溶性化合物とを用いる。なお、工程(2)の前に、必要に応じて粉砕、水洗、分級等の1又は2以上のその他の工程を含んでもよい。その他の工程は特に限定されない。
【0046】
ここで、工程(1)で粉状の酸窒化チタンを得る前後に更に還元雰囲気下で焼成(還元焼成とも称す)したものは酸窒化チタンと、マグネリ型亜酸化チタン及び/又はルチル型酸化チタンとが複合化した化合物となるので、それを工程(2)に供すると、複合化した化合物に、貴金属及び/又はその酸化物が担持された構造を有する電極材料を効率的に得ることができる。また、工程(1)で得た粉状の酸窒化チタンと、別途作製した粉状の亜酸化チタン(特に好ましくはTi
4O
7)及び/又はルチル型酸化チタンとの混合物を工程(2)に供することによっても、当該電極材料(電極材料組成物)を得ることができる。
【0047】
還元雰囲気としては特に限定されず、水素(H
2)雰囲気、一酸化炭素(CO)雰囲気、窒素(N
2)雰囲気、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気等が挙げられる。中でも、効率性の観点から、窒素雰囲気、又は水素雰囲気であることが好ましい。還元焼成での焼成温度及び焼成時間は、それぞれアンモニア焼成と同様の範囲とすることが好ましい。
【0048】
工程(2)では、工程(1)で得た生成物等(工程(1)で得た粉状の酸窒化チタン;粉状の酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物;該粉状の酸窒化チタンと、別途作製した亜酸化チタン及び/又はルチル型酸化チタンとの混合物;を意味する。以下同様)と、貴金属及び/又はその水溶性化合物(以下、貴金属化合物とも総称する)とを混合することが好適である。具体的には、上記工程(1)で得た生成物等を含むスラリーと、貴金属化合物の溶液又は貴金属の分散液とを混合することで混合液を作製することが好ましい。これにより、貴金属及び/又はその酸化物をより高分散に担持することができる。
なお、各成分はそれぞれ1種又は2種以上使用することができる。
【0049】
上記成分を混合する方法、すなわち上記混合液の調製方法は特に限定されないが、例えば、工程(1)で得た生成物等を含むスラリーを容器内で撹拌した状態で、貴金属化合物の溶液又は貴金属の分散液を添加し、撹拌混合する方法が挙げられる。添加時の温度は40℃以下とすることが好ましく、撹拌混合をしながら所定の温度になるまで加熱することが好ましい。混合は、撹拌子を用いてスターラーで撹拌してもよいし、プロペラ式、櫂式等の撹拌羽根を備えた撹拌機を用いてもよい。
【0050】
上記スラリーは、更に溶媒を含む。
溶媒としては特に限定されず、例えば、水、酸性溶媒、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、中でもアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の2価以上の水溶性アルコール;等が挙げられる。溶媒として好ましくは水であり、より好ましくはイオン交換水である。
【0051】
上記溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、工程(1)で得た生成物等の固形分量(2種以上用いる場合はその固形分総量)100重量部に対して、100〜100000重量部とすることが好ましい。これにより、電極材料をより簡便に得ることができる。より好ましくは500〜50000重量部、更に好ましくは1000〜30000重量部である。
【0052】
上記スラリーはまた、酸、アルカリ、キレート化合物、有機分散剤、高分子分散剤等の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤を含むことにより、スラリーに含まれる担体の分散性向上が期待される。
【0053】
上記貴金属化合物の溶液又は貴金属の分散液は、貴金属及び/又はその水溶性化合物を含む溶液、分散液であれば特に限定されないが、例えば、貴金属の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩等の無機塩;貴金属の酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩;等の溶液、あるいは、ナノサイズの貴金属等の分散溶液が挙げられる。中でも、塩化物溶液、硝酸塩溶液、ジニトロジアンミン硝酸溶液、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)溶液等の溶液であることが好ましい。貴金属については上述したとおりであり、白金が特に好ましい。従って、貴金属の溶液として特に好ましくは、塩化白金酸水溶液、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液であり、中でも反応性の観点から、塩化白金酸水溶液が最も好ましい。
【0054】
上記貴金属化合物の溶液の使用量は特に限定されないが、例えば、貴金属の元素換算で、工程(1)で得た生成物等の固形分総量100重量部に対し、0.01〜50重量部とすることが好ましい。これにより、貴金属及び/又はその酸化物をより微細に分散させることができる。より好ましくは0.1〜40重量部、更に好ましくは10〜30重量部である。
【0055】
工程(2)では、必要に応じ、上記混合液に対し還元処理、表面処理及び/又は中和処理を行ってもよい。例えば、還元処理を行う場合は、混合液に還元剤を添加して、貴金属化合物を適度に還元することが好ましい。表面処理を行う場合は、混合液に界面活性剤を添加して行うことが好ましく、これにより担体や貴金属化合物の表面を最適な状態にすることができる。中和処理を行う場合は、混合液に塩基性溶液を添加して行うことが好ましい。なお、還元処理、表面処理及び中和処理のうち2以上の処理を行う場合、還元剤、界面活性剤、塩基性溶液は任意の順で別々に添加してよいし、まとめて添加してもよい。
【0056】
上記還元剤は特に限定されるものではないが、例えば、塩化ヒドラジン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、アルコール、水素、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、エチレン、一酸化炭素等が挙げられ、好ましくは塩化ヒドラジンである。添加量は特に限定されるものではないが、上記混合液に含まれる貴金属のモル当量の0.1〜1倍量であることが好ましい。
【0057】
上記界面活性剤として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を用いることができる。これらは特に限定されるものではないが、例えば、アニオン界面活性剤としては、セッケン等カルボン酸塩型アニオン界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム等のスルホン酸塩型、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩等の硫酸エステル塩が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩型、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等のアミン塩型が挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸メチル等のアミノ酸型やラウリルジメチルベタイン等のベタイン型が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコール型やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。添加量は特に限定されるものではないが、工程(1)で得た生成物等の総量100重量部に対し、0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0重量部である。
【0058】
上記塩基性溶液は特に限定されるものではないが、NaOH水溶液、NH
3水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられ、好ましくはNaOH水溶液である。中和工程での中和温度は、好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは70℃〜100℃である。
【0059】
工程(2)では、上記混合液(上述の通り、必要に応じて還元処理、表面処理及び/又は中和処理を行ったものであってもよい)から、水分及び副生物(副生成物とも称す)を除去することが好ましい。その除去手段は特に限定されないが、例えば、濾過、水洗、乾燥、加熱下での蒸発等により水分及び副生物を除去することが好ましい。
【0060】
ここで、副生成物は水洗により取り除くことが好ましい。電極材料中に副生成物が残存すると、固体高分子形燃料電池の運転中に系内に溶出するなどし、発電特性の悪化やシステムの損傷を引き起こすおそれがある。水洗の方法としては、酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物に担持されていない水溶性物質を系外に除去できる方法であれば特に限定されず、ろ過水洗やデカンテーション等が挙げられる。このとき、水洗水の電導度が10μS/cm以下になるまで水洗することで副生成物を取り除くことが好ましい。より好ましくは電導度が3μS/cm以下になるまで水洗することである。
【0061】
工程(2)ではまた、上記混合液から水分及び副生物を除去した後に、その粉末を焼成することがより好適である。これによって、酸素還元活性が発現しにくい低結晶化度の貴金属やその酸化物を、酸素還元活性の発現に好適な結晶化度にすることができる。結晶化度は、XRDにおいて、貴金属やその酸化物に由来するピークが確認できる程度であればよい。乾燥粉末を焼成する場合、還元雰囲気下で焼成することが好適である。還元雰囲気については上述したとおりであり、窒素雰囲気、又は水素雰囲気が特に好ましい。焼成温度は特に限定されないが、例えば、500〜900℃とすることが好ましい。また焼成時間も特に限定されないが、例えば、30分〜24時間とすることが好適である。雰囲気ガスの濃度はアンモニア焼成と同様の範囲とすることが好ましい。これによって、貴金属やその酸化物と酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物とを、酸素還元活性の発現に好適な状態とすることができる。
【0062】
工程(2)として特に好ましくは、工程(1)で得た生成物等と貴金属化合物とを含む混合液を還元した後、濾過、乾燥して得た粉末を焼成する工程である。
【0063】
4、用途等
本発明の電極材料及び電極材料組成物は、従来一般に使用されているカーボン担体に白金を担持した材料と同等以上の高導電性を有するとともに、高い酸素還元活性を有するため、燃料電池、太陽電池、トランジスタ、液晶等の表示装置の電極材料用途に好適に用いることができる。中でも、固体高分子形燃料電池(PEFC)用の電極材料用途に好適である。このように上記電極材料及び電極材料組成物が固体高分子形燃料電池の電極材料である形態は、本発明の好適な形態の1つであり、上記電極材料又は電極材料組成物から構成された電極を備える燃料電池は、本発明に包含される。
【0064】
5、燃料電池
上記の通り本発明の電極材料及び電極材料組成物は、燃料電池用の電極材料用途に好適に用いることができ、中でも、固体高分子形燃料電池(PEFC)用の電極材料用途に特に好適である。特に、従来一般に使用されているカーボン担体上に白金を担持した材料の代替材料として有用である。このような電極材料は、正極(空気極とも称す)、負極(燃料極とも称す)のいずれにも好適であり、また、カソード(陽極)、アノード(陰極)のいずれにも好適である。本発明の電極材料又は電極材料組成物を用いた固体高分子形燃料電池は、本発明の好適な実施形態の1つである。
【実施例】
【0065】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
【0066】
1、X線回折パターン(XRD分析:TiO
xN
(1−x)のx値の算出)
下記条件の下、X線回折装置(株式会社リガク製、商品名「RINT−TTR3」)を用いて、粉末X線回折パターンを測定した。結晶相の判定については
図13のXRDデータ解析説明図を参照した。
X線源:Cu−Kα線
測定範囲:2θ=10〜60°
スキャンスピード:5°/min
電圧:50kV
電流:300mA
TiO
xN
(1−x)におけるxの値は以下の様に求めた。
まず、測定した回折パターンをX線回折装置付属の粉末X線回折パターン総合解析ソフトウェアJADE7Jを用いて解析し、結晶系 Cubic、空間群 Fm−3m(225)、面指数(h k l)=(1 1 1)、(2 0 0)、(2 2 0)に対応するピークから格子定数a[Å]を算出した。なお、必要に応じて、スムージング、バックグランド除去を実施してから行った。TiO
xN
(1−x)の格子定数は、TiOの格子定数とTiNの格子定数との間の数値を取るため、O原子の比率xは、比例計算、すなわちTiO
xN
(1−x)とTiNの格子定数の差分と、TiOとTiNの格子定数の差分の比から求めた。格子定数の算出に当たり、TiO(JCPDSカードNo.08−1117)の格子定数4.1770[Å]と、TiN(JCPDSカードNo.38−1420)の格子定数4.2417[Å]を用いた。
【0067】
2、細孔特性
測定サンプル(各例で得た粉末)を200℃、1.0×10
−2kPaの減圧条件にて10時間保持した後、BEL−SORP mini II(日本ベル株式会社製)を用いて、N
2吸着法によって、積算細孔容積分布、差分細孔容積分布を測定した。
細孔容積は、大径側から小径側へ測定し、180nmから50nmまでの積算細孔容積を算出した。
測定した差分細孔容積分布から、差分細孔容積を細孔径の対数扱いの差分値で割ってLog微分細孔容積を求め、これを各区間の平均細孔径に対してプロットすることでLog微分細孔容積分布を作成した。
上記のように作成したグラフを、三菱製紙株式会社製PPC用紙−RJ:1枚に印刷し、印刷物から必要なピーク部分を切り取って重さを量る方法で、面積比(すなわち、細孔径0〜180nm間のピーク面積aと、細孔径50〜180nm間の細孔のピーク面積bとの比(b/a))を算出した。
【0068】
3、TEM画像解析
透過型電子顕微鏡(電界放出形透過電子顕微鏡JEM−2100F、日本電子株式会社製)を用いて各試料の透過型電子顕微鏡写真(TEM像又はTEM写真とも称す)を撮影した。
【0069】
4、白金担持量
走査型蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII、株式会社リガク製)を用いて、試料中の白金含有量を測定し、白金担持量を算出した。
【0070】
5、比表面積(BET−SSA)
JIS Z8830(2013年)の規定に準じ、試料を窒素雰囲気中、200℃で60分間熱処理した後、比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、商品名「Macsorb HM−1220」)を用いて、比表面積を測定した。
【0071】
6、面積比活性
以下の手順で面積比活性を評価した。なお、面積比活性が高いほど、導電性が高いことを意味する。
(1)作用極の作製
測定対象のサンプルに、5重量%パーフルオロスルホン酸樹脂溶液(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)、イソプロピルアルコール(和光純薬工業株式会社製)及びイオン交換水を加え、超音波により分散させてペーストを調製した。ペーストを回転グラッシーカーボンディスク電極に塗布し、充分に乾燥した。乾燥後の回転電極を作用極とした。
(2)電気化学的有効比表面積(ECSA:ElectroChemical Surface Area)測定
Automatic Polarization System(北斗電工株式会社製、商品名「HZ−5000」)に、回転電極装置(北斗電工株式会社製、商品名「HR−502」)を接続し、作用極に、上記で得た測定サンプル付き電極を用い、対極と参照極には、それぞれ白金電極と可逆水素電極(RHE)電極を用いた。
測定サンプル付き電極のクリーニングのため、25℃で、電解液(0.1mol/lの過塩素酸水溶液)にアルゴンガスをバブリングしながら0.05Vから1.2Vまでサイクリックボルタンメトリーに供した。その後、25℃で、アルゴンガスを飽和させた電解液(0.1mol/l過塩素酸水溶液)で1.2Vから0.05Vまで掃引速度50mV/secでサイクリックボルタンメトリーを行った。
その後、掃引時に得られる水素吸着波の面積(水素吸着時の電荷量:QH(μC))から、下記数式(i)を用いて電気化学的有効比表面積を算出した。なお、式(i)中、「210(μCcm
2)」は、白金(Pt)の単位活性面積あたりの吸着電荷量である。
(3)面積比活性の測定
Automatic Polarization System(北斗電工株式会社製、商品名「HZ−5000」)に、回転電極装置(北斗電工株式会社製、商品名「HR−502」)を接続し、作用極に、上記で得た測定サンプル付き電極を用い、対極と参照極には、それぞれ白金電極と可逆水素電極(RHE)電極を用いた。
測定サンプル付き電極のクリーニングのため、25℃で、電解液(0.1mol/lの過塩素酸水溶液)にアルゴンガスをバブリングしながら0.05Vから1.2Vまでサイクリックボルタンメトリーに供した。その後、25℃で、アルゴンガスを飽和させた電解液(0.1mol/l過塩素酸水溶液)で0.05Vから1.21Vまで掃引速度10mV/secでサイクリックボルタンメトリーを行った。
その後、酸素をバブリングし、酸素を飽和させた後、掃引速度10mV/s、0.05Vから1.21Vまで掃引して4水準(1600,900,400,100rpm)の電極回転速度条件にてサイクリックボルタンメトリーを行った。
0.8Vvs.RHEでの電流値を回転速度毎にプロットし、活性化支配電流値を求め、ECSAで除して白金1m
2あたりの面積比活性(A/m
2)とした。
【0072】
7.粉末のメジアン径(D50)の測定
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−950、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
なお、表1に記載の「Pt担持前」のD50とは、貴金属(白金)担持前の担体のD50であり、「Pt担持後」のD50とは、各例で最終的に得た粉末のD50である。
【0073】
実施例1
ルチル型酸化チタン(堺化学工業株式会社製、商品名「STR−100N」、比表面積100m
2/g)2.0gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて100%アンモニアを400ml/分で流通しながら800℃まで300℃/hrで昇温し、800℃で6時間保持した後、室温まで自然冷却し、酸窒化チタン粉末(t1)を得た。
得られた酸窒化チタン粉末(t1)0.60gと、イオン交換水128gをビーカーに計量して撹拌混合し、酸窒化チタンスラリーを得た。
別のビーカーにて塩化白金酸水溶液(白金として15.343%、田中貴金属工業株式会社製)1.3gをイオン交換水8.0gで希釈した後、塩化ヒドラジン(東京化成工業株式会社、商品名「Hydrazine Dihydrochloride」)0.053gを添加し、撹拌混合したものを準備した(これを「混合水溶液」と称す)。
酸窒化チタンスラリーを攪拌しながら、別のビーカーにて準備した上記の混合水溶液全量を添加し、その後、液温70℃に加熱保持しながら撹拌混合した。更に、1Nの水酸化ナトリウム水溶液7.0mlを添加し撹拌混合して、液温70℃に1時間加熱保持した後、濾過、水洗、乾燥して水分を全て蒸発させて、粉末(p1)を得た。
粉末(p1)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて窒素を200ml/分で流通しながら510℃まで600℃/hrで昇温し、510℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して実施例1粉末を得た。
【0074】
実施例2
実施例1で得られた酸窒化チタン粉末(t1)0.72gと、イオン交換水128gをビーカーに計量して撹拌混合し、酸窒化チタンスラリーを得た。
別のビーカーにて塩化白金酸水溶液(白金として15.343%、田中貴金属工業株式会社製)0.54gをイオン交換水3.2gで希釈した後、塩化ヒドラジン(東京化成工業株式会社、商品名「Hydrazine Dihydrochloride」)0.022gを添加し、撹拌混合したものを準備した(これを「混合水溶液」と称す)。
酸窒化チタンスラリーを攪拌しながら、別のビーカーにて準備した上記の混合水溶液全量を添加し、その後、液温70℃に加熱保持しながら撹拌混合した。更に、1Nの水酸化ナトリウム水溶液3.0mlを添加し撹拌混合して、液温70℃に1時間加熱保持した後、濾過、水洗、乾燥して水分を全て蒸発させて、粉末(p2)を得た。
以降、実施例1の製造方法における粉末(p1)の代わりに粉末(p2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2粉末を得た。
【0075】
実施例3
ルチル型酸化チタン(堺化学工業株式会社製、商品名「STR−100N」、比表面積100m
2/g)2.0gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて100%アンモニアを400ml/分で流通しながら920℃まで300℃/hrで昇温し、920℃で4時間保持した後、室温まで自然冷却し、酸窒化チタン粉末(t2)を得た。
以降、実施例2の製造方法における酸窒化チタン粉末(t1)の代わりに酸窒化チタン粉末(t2)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、実施例3粉末を得た。
【0076】
実施例4
ルチル型酸化チタン(堺化学工業株式会社製、商品名「STR−100N」、比表面積100m
2/g)2.0gと金属チタン(和光純薬工業株式会社製、商品名「チタン,粉末」)0.1gを乾式混合した後、水素雰囲気下、900℃まで300℃/hrで昇温し、900℃で150分保持した後、室温まで自然冷却し、Ti
4O
7粉末を得た。
得られたTi
4O
7粉末1.7gと、酸窒化チタン粉末(t1)0.9gを乾式混合し、粉末(t4)を得た。
以降、実施例2の粉末(p2)の製造方法における粉末(t1)の代わりに粉末(t4)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、粉末(p4)を得た。
粉末(p4)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて100%水素を200ml/分で流通しながら560℃まで600℃/hrで昇温し、560℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して電極材料組成物である実施例4粉末を得た。
【0077】
実施例5
ルチル型酸化チタン(堺化学工業株式会社製、商品名「STR−100N」、比表面積100m
2/g)2.0gと金属チタン(和光純薬工業株式会社製、商品名「チタン,粉末」)0.3gを乾式混合した後、アルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて100%水素を400ml/分で流通しながら700℃まで300℃/hrで昇温し、700℃で2時間保持した後、750℃まで300℃/hrで昇温し、その後、水素の流通を止め、100%アンモニアを400ml/分で流通しながら750℃で3時間保持した後、室温まで自然冷却し、複合化した化合物粉末(t5)を得た。
以降、実施例4の製造方法における複合化した化合物粉末(t4)の代わりに複合化した化合物粉末(t5)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で、実施例5粉末を得た。
【0078】
比較例1
アナタース型酸化チタン(堺化学工業株式会社製、商品名「SSP−25」、比表面積270m
2/g)2.0gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて100%アンモニアを400ml/分で流通しながら700℃まで300℃/hrで昇温し、700℃で6時間保持した後、室温まで冷却し、酸窒化チタン粉末(t6)を得た。
以降、実施例2の製造方法における酸窒化チタン粉末(t1)の代わりに酸窒化チタン粉末(t6)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、比較例1粉末を得た。
【0079】
比較例2
実施例4の製造方法におけるTi
4O
7粉末3.3gと、比較例1の製造方法における酸窒化チタン粉末(t6)0.9gを乾式混合し、粉末(t7)を得た。
以降、実施例4の製造方法における粉末(t4)の代わりに粉末(t7)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で、比較例2粉末を得た。
【0080】
比較例3
実施例2の製造方法における粉末(t1)の代わりに実施例4の製造方法におけるTi
4O
7粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で、比較例3粉末を得た。
【0081】
実施例1〜5及び比較例1〜3で得た各粉末(試料)につき、上述した分析及び評価を行った。結果を表1及び
図1〜13に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例及び比較例の結果より、表1に示す通り、以下のことを確認した。
実施例1〜3で得た粉末は、担体として、チタン、窒素及び酸素からなり、粉状である酸窒化チタンを用い、b/aが0.9以上であり、50〜180nmの積算細孔容積が0.1cm
3/g以上である電極材料である。一方、比較例1で得た粉末は、b/aが0.9未満である点で、比較例3で得た粉末は、担体がTi
4O
7のみからなる、つまり窒素を含まない電極材料であり、かつ50〜180nmの積算細孔容積が0.1cm
3/g未満である点で、いずれも本発明の電極材料とは相違する。
なお、比較例1では、アナタース型酸化チタンを原料としたため、b/aが0.9未満になったと推定される。
【0084】
このような相違の下、酸素還元活性の指標である面積比活性を対比すると、実施例1〜3で得た粉末は、比較例1、3で得た粉末に比較して面積比活性が著しく高く、また比較例3で得た粉末に比較して比表面積も著しく大きいことが分かる。なお、比較例3では、面積比活性の値が測定限界値未満であったため、測定できなかった。
【0085】
実施例4、5で得た粉末は、担体として、チタン、窒素及び酸素からなり、粉状である複合化した化合物を用い、b/aが0.9以上であり、50〜180nmの積算細孔容積が0.1cm
3/g以上である電極材料である。一方、比較例2で得た粉末は、b/aが0.9未満であり、かつ50〜180nmの積算細孔容積が0.1cm
3/g未満である点で、本発明の電極材料とは相違する。これらを比較すると、実施例4、5で得た粉末は、比較例2で得た粉末に比較して面積比活性が著しく大きいことが分かる。
【0086】
上記表には示していないが、実施例1で粉末について、Ti以外の金属元素の含有量を分析したところ、含有量が0.2質量%未満であることも確認した。検出されたTi以外の金属元素とその含有量を具体的に示すと、実施例1粉末からは、Nb元素が0.093質量%、Si元素が0.071質量%検出された。
【0087】
従って、本発明の電極材料は、高い導電性に加え、高い酸素還元活性を有し、電気化学特性に優れることが分かった。
【解決手段】酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物に貴金属及び/又はその酸化物が担持された構造を有する電極材料であって、該酸窒化チタン又は酸窒化チタンとチタン酸化物が複合化した化合物は、粉状であり、該電極材料は、その細孔径分布において下記(I)及び(II)を満たす電極材料。