特許第6372642号(P6372642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6372642無効電力制御装置、無効電力制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372642
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】無効電力制御装置、無効電力制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   H02M7/12 Q
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-191233(P2013-191233)
(22)【出願日】2013年9月14日
(65)【公開番号】特開2015-57934(P2015-57934A)
(43)【公開日】2015年3月26日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507149648
【氏名又は名称】株式会社MERSTech
(72)【発明者】
【氏名】磯部 高範
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−286061(JP,A)
【文献】 特開平06−274237(JP,A)
【文献】 特開2000−175361(JP,A)
【文献】 特開2007−252048(JP,A)
【文献】 特開2011−097688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−7/98
G05F 1/70
H02J 3/00−3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1から第4の4つのスイッチと少なくとも一つのコンデンサとから構成され交流電力回路に接続されるブリッジ回路と、
前記交流電力回路の周波数より高い周波数で前記第1から第4のスイッチのオン・オフを切り替え、前記切り替えるタイミングを制御することで前記交流電力回路に供給する無効電力を制御する制御部と、
を備え、
前記第1から第4のスイッチは、第1及び第2の端子と制御端子とを備え、前記制御端子にオン信号を入力される第1と第2の端子の間の両方向の電流を導通するオン状態になり、前記制御端子にオフ信号を入力される前記第1の端子から前記第2の端子への電流を遮断し、前記第2の端子から前記第1の端子への電流を導通するオフ状態になり、
前記ブリッジ回路は、
前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第3のスイッチの第1の端子とが接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第2のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第3のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第2のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第2の端子とが接続され、前記コンデンサを前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第2のスイッチの前記第2の端子との間に接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第3のスイッチの前記第2の端子とによって前記交流電力回路に接続され、
前記制御部は、前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記切り替えるタイミングを制御する、
ことを特徴とする無効電力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記コンデンサの電圧を特定し、前記特定されたコンデンサ電圧に基づいて前記切り替えるタイミングを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無効電力制御装置。
【請求項3】
前記コンデンサの電圧を検出し、検出したコンデンサ電圧を前記制御部へ送信する電圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記特定されたコンデンサ電圧と、前記検出したコンデンサ電圧と、に基づいて前記切り替えるタイミングを制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無効電力制御装置。
【請求項4】
第1及び第2の端子と制御端子とを備え、前記制御端子にオン信号を入力される第1と第2の端子の間の両方向の電流を導通するオン状態になり、前記制御端子にオフ信号を入力される前記第1の端子から前記第2の端子への電流を遮断し、前記第2の端子から前記第1の端子への電流を導通するオフ状態になる第1から第4のスイッチを備え、前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第3のスイッチの第1の端子とが接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第2のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第3のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第2のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第2の端子とが接続され、コンデンサを前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第2のスイッチの前記第2の端子との間に接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第3のスイッチの前記第2の端子とによって交流電力回路に接続されるブリッジ回路を制御することによって、前記交流電力回路に供給する無効電力を制御する無効電力制御方法であって、
前記交流電力回路の周波数より高い周波数で前記第1から第4のスイッチのオン・オフを切り替え、前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記切り替えるタイミングを制御するステップを含む、
ことを特徴とする無効電力制御方法。
【請求項5】
第1及び第2の端子と制御端子とを備え、前記制御端子にオン信号を入力される第1と第2の端子の間の両方向の電流を導通するオン状態になり、前記制御端子にオフ信号を入力される前記第1の端子から前記第2の端子への電流を遮断し、前記第2の端子から前記第1の端子への電流を導通するオフ状態になる第1から第4のスイッチを備え、前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第3のスイッチの第1の端子とが接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第2のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第3のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第2のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第2の端子とが接続され、コンデンサを前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第2のスイッチの前記第2の端子との間に接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第3のスイッチの前記第2の端子とによって交流電力回路に接続されるブリッジ回路を制御することによって、前記交流電力回路に供給する無効電力を制御するコンピュータに、
前記交流電力回路の周波数より高い周波数で前記第1から第4のスイッチのオン・オフを切り替え、前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記切り替えるタイミングを制御させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無効電力制御装置、無効電力制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流回路における無効電力補償を、半導体を用いた電力変換装置によって行う方式はいくつか知られている。特にコンデンサと半導体スイッチによって構成される電圧型コンバータを用いる方式は広く用いられている。
負荷が消費または発生する無効電力変動を補償することで力率を改善し、または配電・送電系統の電圧変動を補償する技術として、STATCOM(STATic synchronous COMpensator)と呼ばれる無効電力補償装置が知られている(例えば、特許文献1)。
また、交流電源と負荷または別の交流電源との間に電圧型コンバータを直列に接続することで、回路に直列に存在するリアクタンスを補償し、電力潮流の制御や電力の増大を図る装置としてSSSC(Static Synchronous Series Compensator)が知られている。
また電圧型の単相ブリッジを交流回路に直列に接続し、電源周波数によるスイッチングと電源電圧位相を基準とした位相角制御を行うものとしてMERS(Magnetic Energy Recovery Switch)が知られている(特許文献2)。MERSは、電圧型変換器の直流側電圧を一定にする制御を必須としない。そのため、コンデンサ容量を小さくしても同様に無効電力発生ができることが知られている。
これらは、固定コンデンサまたはリアクトルを段階的に切り替えることによる古典的な無効電力補償に比べ、高速かつ連続的に無効電力を制御可能であるため、系統電圧の急変にも高速に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−280358
【特許文献2】特許第3735673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に、SSSCおよびSTATCOMは、多くの電圧型変換回路と同様に、直流側電圧をほぼ一定とすることを仮定して制御している。そのため、接続するコンデンサの容量を十分大きくすることが必要である。多くの場合これはコンデンサの寸法が大きくなるという問題がある。電解コンデンサを用いることによって、大容量のコンデンサを小型にすることも可能であるが、電解コンデンサの寿命はフィルムコンデンサなどの寿命に比べ非常に短く,電力機器としての信頼性に足らないものとなる。また、スイッチングロスを減らすという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、容量の小さなコンデンサを利用可能な無効電力制御装置、無効電力供給方法及びプログラムを提供することを目的とする。また、スイッチングロスの少ない無効電力制御装置、無効電力供給方法及びプログラムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無効電力補償装置は、
第1から第4の4つのスイッチと少なくとも一つのコンデンサとから構成され交流電力回路に接続されるブリッジ回路と、
前記交流電力回路の周波数より高い周波数で前記第1から第4のスイッチのオン・オフを切り替え、前記切り替えるタイミングを制御することで前記交流電力回路に供給する無効電力を制御する制御部と、
を備え、
前記第1から第4のスイッチは、第1及び第2の端子と制御端子とを備え、前記制御端子にオン信号を入力される第1と第2の端子の間の両方向の電流を導通するオン状態になり、前記制御端子にオフ信号を入力される前記第1の端子から前記第2の端子への電流を遮断し、前記第2の端子から前記第1の端子への電流を導通するオフ状態になり、
前記ブリッジ回路は、
前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第3のスイッチの第1の端子とが接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第2のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第3のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第2のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第2の端子とが接続され、前記コンデンサを前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第2のスイッチの前記第2の端子との間に接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第3のスイッチの前記第2の端子とによって交流電力回路に接続され、
前記制御部は、前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記切り替えるタイミングを制御する、
ことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る無効電力補償方法は、
第1及び第2の端子と制御端子とを備え、前記制御端子にオン信号を入力される第1と第2の端子の間の両方向の電流を導通するオン状態になり、前記制御端子にオフ信号を入力される前記第1の端子から前記第2の端子への電流を遮断し、前記第2の端子から前記第1の端子への電流を導通するオフ状態になる第1から第4のスイッチを備え、前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第3のスイッチの第1の端子とが接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第2のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第3のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第2のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第2の端子とが接続され、コンデンサを前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第2のスイッチの前記第2の端子との間に接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第3のスイッチの前記第2の端子とによって交流電力回路に接続されるブリッジ回路を制御することによって、前記交流電力回路に供給する無効電力を制御する無効電力制御方法であって、
前記交流電力回路の周波数より高い周波数で前記第1から第4のスイッチのオン・オフを切り替え、前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記切り替えるタイミングを制御するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
第1及び第2の端子と制御端子とを備え、前記制御端子にオン信号を入力される第1と第2の端子の間の両方向の電流を導通するオン状態になり、前記制御端子にオフ信号を入力される前記第1の端子から前記第2の端子への電流を遮断し、前記第2の端子から前記第1の端子への電流を導通するオフ状態になる第1から第4のスイッチを備え、前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第3のスイッチの第1の端子とが接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第2のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第3のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第1の端子とが接続され、前記第2のスイッチの前記第2の端子と前記第4のスイッチの前記第2の端子とが接続され、コンデンサを前記第1のスイッチの前記第1の端子と前記第2のスイッチの前記第2の端子との間に接続され、前記第1のスイッチの前記第2の端子と前記第3のスイッチの前記第2の端子とによって交流電力回路に接続されるブリッジ回路を制御することによって、前記交流電力回路に供給する無効電力を制御するコンピュータに、
前記交流電力回路の周波数より高い周波数で前記第1から第4のスイッチのオン・オフを切り替え、前記コンデンサのリアクタンスに基づいて前記切り替えるタイミングを制御させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、容量の小さなコンデンサを利用可能な無効電力制御装置、無効電力制御方法及びプログラムを提供することが可能である。また、スイッチングロスの少ない無効電力制御装置、無効電力制御方法及びプログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る無効電力制御装置の構成を示す回路図である。
図2図1に示す無効電力制御装置の制御構成を示すブロック図である。
図3図1に示す無効電力制御装置のPWM制御を説明するための波形図である。
図4図1に示す無効電力制御装置のPWM制御を説明するための波形図である。
図5図1に示す無効電力制御装置の各部の電流・電圧を示した波形図である。
図6図1に示す無効電力制御装置の各部の電流・電圧を示した波形図である。
図7図1に示す無効電力制御装置の各部の電流・電圧を示した波形図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る無効電力制御装置の構成を示す回路図である。
図9図8に示す無効電力制御装置の詳細な構成を示す回路図である。
図10図9に示す無効電力制御装置の制御構成を示すブロック図である。
図11図9に示す無効電力制御装置の各部の電流・電圧を示した波形図である。
図12図9に示す無効電力制御装置の各部の電流・電圧を示した波形図である。
図13図9に示す無効電力制御装置の各部の電流・電圧を示した波形図である。
図14図1の電力変換装置の変形例の回路構成などを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。本発明の第1の実施の形態に係る無効電力制御装置100は、通過する交流電流の位相に対して90度進み位相の交流電圧を発生する装置である。これにより、直列に接続された誘導性リアクタンス(たとえば、線路リアクタンス)を補償する。
【0012】
(第1の実施の形態:構成)
無効電力制御装置100は、図1に示すように、ブリッジ回路110と、入出力端子111並びに112と、電圧計115と、電流計117と、制御部150と、から構成されている。無効電力制御装置100は、入出力端子111に内部に誘導性リアクタンスLを持つ交流電源VSが接続され、入出力端子112に負荷LDを接続されている(交流電源VSと負荷LDとが接続された交流電力回路内に直列に接続されている)。例えば、交流電源VSは遠方の発電所からの出力であり、負荷LDは遠方の電力需要家での電力消費である。
【0013】
ブリッジ回路110は、接続点N1乃至N4と、第1乃至第4スイッチSWU乃至SWYと、コンデンサCMと、を備える。ブリッジ回路110は、第1のスイッチSWUと第2のスイッチSWXが同時にオンすることがない。また、同様に、第3のスイッチSWVと第4のスイッチSWYが同時にオンすることがない。
【0014】
接続点N1には入出力端子111が接続されている。接続点N2には入出力端子112が接続されている。これによりブリッジ回路110は、接続点N1を介して交流電源VSに接続され、接続点N2を介して負荷LDに接続されている。
【0015】
第1のスイッチSWUは、並列に接続されたスイッチ部とダイオード部とから構成されている(等価回路的に並列に接続されている場合も含む)。第1スイッチSWUは、例えば、ダイオード素子とスイッチング素子(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など)とを並列に接続した複数の素子から構成されている。なお、第1のスイッチSWUは、例えば、Nチャンネル型シリコンMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の逆導通型半導体スイッチであってもよい。この場合、スイッチ部は、例えば、Nチャンネル型シリコンMOSFETの自己消弧型素子の部分から構成されており、ダイオード部は、Nチャンネル型シリコンMOSFETの寄生ダイオードの部分から構成される。
【0016】
スイッチSWUは、ゲート(制御端子)GUを備える。ゲートGUには、制御部150から制御信号(ゲート信号)、つまり、オン信号又はオフ信号のいずれかが供給される。
【0017】
スイッチSWUは、ゲートGUにオン信号が供給されると、スイッチ部がオン(導通状態)になる。よって、第1スイッチSWUは、オン信号が供給されると、双方向へ導通状態になる。
【0018】
スイッチSWUは、ゲートGUにオフ信号が供給されると、スイッチ部が非導通状態になる。よって、スイッチSWUは、オフ信号が供給されると、ダイオードとして機能する。
【0019】
第2乃至第4のスイッチSWX乃至SWYは、それぞれが、第1のスイッチSWUと同じ構成である。それぞれ、第1のスイッチSWUと同様に、オン信号によってオンしたときに導通状態になり、オフ信号によってオフしたときにダイオードとして機能する。
【0020】
第1のスイッチSWUは、ダイオード部のカソード側(第1の端子)が接続点N3に接続されダイオード部のアノード側(第2の端子)が接続点N1に接続される向きで、接続点N1と接続点N3との間に接続されている。
【0021】
第2のスイッチSWXは、ダイオード部のカソード側(第1の端子)が接続点N1に接続され、ダイオード部のアノード側(第2の端子)がN4に接続される向きで、接続点N4と接続点N1との間に接続されている。
【0022】
第3のスイッチSWVは、ダイオード部のカソード側(第1の端子)がN3に接続され、アノード側(第2の端子)が接続点N2に接続される向きで、接続点N2と接続点N3との間に接続されている。
【0023】
第4のスイッチSWYは、ダイオード部の、カソード側(第1の端子)が接続点N2に接続され、アノード側(第2の端子)が接続点N4に接続される向きで、接続点N4と接続点N3との間に接続されている。
【0024】
コンデンサCMは、一端(正極側)が接続点N3に接続され、他端(負極側)が接続点N4に接続されている。コンデンサCMは、一般的な平滑コンデンサの1/4〜1/10の大きさの容量を持つ。
【0025】
電圧計115は、コンデンサCMの他端に対する一端の電圧を測定し、その電圧値vを制御部150へ送信する。
【0026】
電流計117は、ブリッジ回路110の入出力端子111から入出力端子112の方向へ流れる電流を測定し、その電流値iを制御部150へ送信する。
【0027】
制御部150は、CPU(Central Processing Unit)151と、RAM(Random Access Memory)152と、ROM(Read Only Memory)153と、入出力部154と、を備える。本実施形態では、RAM152及びROM153によって、制御部150の記憶部が構成されているが、この記憶部は、他の記憶装置を含んで構成されてもよい。また、記憶部は、制御部150の外部にあってもよい。さらに、制御部150の少なくとも一部は、CPU151が行う下記処理の少なくとも一部を実行する専用回路(ASIC(Application Specific Integrated Circuit)など)によって構成されてもよい。
【0028】
CPU151は、ROM153が記憶するプログラムに従って、制御部150が行う下記処理を実行する。RAM152は、CPU151のメインメモリとして機能する。ROM153は、プログラムや、下記処理中にCPU151に使用される各種データを記憶する。CPU151は、下記処理を、ROM153が記憶するデータを適宜用いて行うものとする。入出力部154は、各種ポートから構成される。制御部150に入出力される制御信号、各種データ等は、入出力部154を介して、CPU151に入出力される。
【0029】
制御部150は、ヒューマンインターフェイスまたは上位の制御系155より与えられるリアクタンスXによって制御を行う。リアクタンスXは、ブリッジ回路110の基本波成分の等価リアクタンス(等価リアクタンス)を意味する指令値である。
【0030】
制御部150の行う処理は、図2に示すように、入力部159と,PLL部160と、比較部162と,算出部163,164と,PWM部165と,1−パルス制御部168と,出力部170と,から構成されている。
【0031】
なお、以下の説明では、各記号は下記データを代表する。また、各処理において制御部150は、各データをRAM152及びROM153を活用し、適宜読み書きするものとする。なお、小文字の記号は、値が連続的に変化する瞬時電圧・瞬時電流等のデータ列を表す(例えば電流の瞬時値i)。大文字の記号は、電源の1サイクルごとに更新されるデータを表す(例えば電流の実効値I)。また、ユーザーなどによって指令される指令値には*を付している。
i:ブリッジ回路110の入出力端子111から112の方向に流れる電流(実測)
I:電流値iの実効電流値(iから計算される)
v:ブリッジ回路110の入出力端子112に対する111の電圧値(本実施形態の動作においては制御に用いられない)
:ブリッジ回路110の入出力端子112に対する111の実効電圧値(計算値)
θ:電流iの位相(計算値,電流が最大になる時点を0度とする)
:コンデンサCMの電圧の値(実測)
:コンデンサCMの電圧の値(計算値)
c.peak:コンデンサCMのピーク電圧の値(ユーザーによって設定,電圧値vのピーク値より大きな値)
ref+:リファレンス電圧(ブリッジ回路110に発生する電圧の基本波成分波形であって、ユーザーが所望のもの)
:ブリッジ回路110の基本波成分の等価リアクタンスの指令値
:ブリッジ回路110のコンデンサCMのリアクタンスX(コンデンサCMの容量から計算値)
t0:大きさが±1で振幅する三角波
:電圧値vを包絡線とする三角波
【0032】
また、以下の説明では、理解を容易にするため、ブリッジ回路110の入出力端子111から112の方向に流れる実効電流は一定(電流値Iは一定)であるとする。
【0033】
入力部159には、電圧計115及び電流計117から電圧値v及び電流値iが入力される。制御部150は、入力されたデータに基づいてRAM152のデータを適宜更新する。
また、入力部159は、外部の制御系155から各種データを受信する。また、入力部159はユーザーインターフェース(図示せず)を備える。ユーザーは、外部の制御系155またはこのユーザーインターフェースを介して等価リアクタンスXを制御部150に指示する。制御部150は、指示された等価リアクタンスXに基づいてRAM152のリアクタンスXを更新する。また、入力部159は、V=X×Iを計算しVを更新する。
また、入力部159は、ユーザーインターフェースを介して、ユーザーが他のデータを入力することもできる。制御部150は、RAM152の各データを入力された各データに更新する。
また、制御部150は、故障やデータの不備などがあると、入力部159のユーザーインターフェースを介して、ユーザーに適切な処置を求める。
【0034】
PLL部160は、電流値iの位相θ,周波数f及び実効電流値Iを検出する。なお、位相θは、電流値iが最大になる時点を0度とする。検出された周波数f及び位相θはRAM152に保存される。
【0035】
比較部162は、記憶されている等価リアクタンスXとリアクタンスXとを比較し、その大小によって、算出部163,164若しくは168を実行する。
【0036】
<Xの場合、算出部163が実行される。具体的には、下記の数式1に定められた計算を実行する。数式1によって、コンデンサCMのリアクタンスXを用いて、X<Xの場合の次の周期におけるコンデンサCMの電圧値v(θ)が求まる。
【0037】
【数1】
【0038】
>Xの場合、算出部164が実行される。具体的には、下記の数式2に定められた計算を実行する。数式2によって、コンデンサCMのリアクタンスXを用いて、X>Xの場合の次の周期におけるコンデンサCMの電圧値v(θ)が求まる。
【0039】
【数2】
【0040】
算出部163または164によって電流値v(θ)が求まると、PWM制御部165が実行される。
【0041】
PWM制御部165は、数式1または2で求まったコンデンサCMの電圧値v(θ)を用いてブリッジ回路110をPWM制御する。
PWM制御部165は、図3及び図4に示す特殊なPWMを行う。PWM制御部165は、まず、算出部163または164で算出された±v(θ)を包絡線とする振幅の変化する三角波vを作る。具体的には、所望のスイッチング周波数をもった大きさが±1の三角波vt0にv(θ)を乗ずる。
【0042】
次に、PWM制御部165は、リファレンス電圧vref+を三角波vと比較しゲート信号SGU,SGXを作成する。本実施形態では、PWM制御部165は、リファレンス電圧vref+が三角波vより大きい場合に、ゲート信号SGUをオン信号にし、ゲート信号SGXをオフ信号にする。PWM制御部165は、リファレンス電圧が三角波vより小さい場合に、ゲート信号SGUをオフ信号にし、ゲート信号SGXをオン信号にする。
同様に、PWM制御部165は、リファレンス電圧vref+のマイナス値vref−を上記三角波vと比較しゲート信号SGV,SGYを作成する。PWM制御部165は、三角波vのほうが大きい場合に、ゲート信号SGVをオフ信号にし、ゲート信号SGYをオン信号にする。PWM制御部165は、三角波vのほうが小さい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。
【0043】
また、PWM制御部165は、電源電圧周期の過去1サイクル分のコンデンサCMの実際の電圧値vと算出部163で求めた電圧値vを比較し、この差が0になるように、ゲート信号の位相をフィードバック制御する(具体的には、vref+の位相を制御する)。例えば、電圧値vの方が大きいときは位相を遅らせ、小さい時は位相を進める。
【0044】
=Xの場合、1−パルス制御部170が実行される。PLL部160で求めた周波数(すなわち交流電源VSの周波数)で制御部150は、ブリッジ回路110をスイッチング制御する。具体的には、0度≦θ<180度で、ゲート信号SGU及びSGYをオンにし、ゲート信号SGV及びSGXをオフにする。また、180≦θ<360でゲート信号SGU及びSGYをオフにしゲート信号SGV及びSGXをオンにする。なお、先述したように、SGUとSGXが同時にオンすることはなく、SGVとSGYは同時にオンすることはない。
【0045】
また、1−パルス制御部170は、上述の数式1を計算して電圧値vを算出する。1−パルス制御部170は、算出された電圧値vと過去1サイクル分のコンデンサCMの実際の電圧値vとを比較し、この差が0になるように、ゲート信号をオンからオフへ切り替えるタイミングを制御する。
【0046】
出力部170は、算出部163並びに164及び1−パルス制御部168で定まった各ゲート信号を出力し、各ゲートGU乃至GYに供給する。
【0047】
制御部150は、以上の処理を、適宜繰り返す。
【0048】
(第1の実施の形態:具体的な制御及び動作)
以上説明した構成によって、無効電力制御装置100は、以下に説明するのように無効電力を制御する。
なお、以下の説明では、初期に指令される等価リアクタンスXがコンデンサCMのリアクタンスXより小さく、ユーザーの指令によって等価リアクタンスXがしだいに大きくなっていくものとして説明する。
【0049】
無効電力制御装置100が動作を開始すると、制御部150は、RAM152及びROM153に記憶されている各種データ・プログラムに従いブリッジ回路110の制御を開始する。
【0050】
制御部150は、入力部159に、電圧計115からコンデンサCMの電圧値vを,電流計117からブリッジ回路110を流れる電流値iを、外部の制御系から等価リアクタンスXを入力される。また、制御部150は、入力部159において、入力された等価リアクタンスXからブリッジ回路110に発生すべき電圧の実効電圧値Vを特定する。
【0051】
制御部150は、算出部160において、入力部159で入力された電流値iに基づいて、電流値iの位相θ,周波数f及び実効電流値Iを検出する。
【0052】
制御部150は、比較部162において、入力部159で入力された等価リアクタンスXとコンデンサCMの実際のリアクタンスXを比較する。
【0053】
(X<Xの時の動作)
初期状態では等価リアクタンスXがリアクタンスXより小さいため、制御部150は、算出部163の計算を実行する。すなわち、制御部150は、数式1を計算することにより、入力部159で算出した電圧値VからコンデンサCMの電圧値v(θ)を求める。
【0054】
制御部150は、PWM制御部165において、電圧値v(θ)に基づいてゲート信号を作成する。
【0055】
具体的には、制御部150は、三角波vt0に電圧値v(θ)を乗じて、三角波vを生成する。三角波vは、包絡線が±v(θ)である三角波となる。
制御部150は、PWM制御部165において、リファレンス電圧vref+及びvref−と三角波Vとを比較することによりゲート信号を作成する。
【0056】
制御部150は、出力部170から、ゲート信号をゲートGU,GV,GX及びGYへ送信する。スイッチSWU,SWV,SWX及びSWYは、受信したゲート信号に従い、スイッチのオン・オフを切り替える。
【0057】
これによって、図5に示すように、ブリッジ回路110を流れる電流(電流値i)の位相から基本波成分が90度ずれた電圧がブリッジ回路に発生する(電圧値v)。すなわち、ここでは無効電力が発生している。また、ブリッジ回路110の実際の等価リアクタンスXがコンデンサCMの実際のリアクタンスより小さくなるため、コンデンサCMの電圧(電圧値v)が0電圧まで落ちている。なお、図5においては、波形を見やすくするために、リファレンス電圧vref+等の周波数を小さくして表示している。
また、コンデンサ電圧値vの包絡線を持った三角波vを用いることによって、
高調波(スイッチング周波数より低い周波数成分の高調波)の少ない電圧(電圧値v)を発生させることができる。
【0058】
(X=Xの時の動作)
ユーザーが入力部159を介して、等価リアクタンスXの値を変更すると、RAM152の等価リアクタンスXの値が更新される。リアクタンスXの変化に伴い、制御部150は、電圧値v等各種データの値を更新する。更新が完了すると、制御部150は、出力部170から、更新されたデータに基づいたゲート信号をゲートGU,GV,GX及びGYへ送信する。スイッチSWU,SWV,SWX及びSWYは、ゲート信号を受信し、スイッチのオン・オフを切り替える。
更に、ユーザーが等価リアクタンスXの値を変更し、等価リアクタンスXがコンデンサCMのリアクタンスXと同じ値になると、制御部150は、比較部162においてX=Xを判断し、1−パルス制御部168を実行する。
【0059】
制御部150は、1−パルス制御部168により、入出力端子111から112への方向で流れる電流のピークで、ゲート信号SGU及びSGYをオンにし、ゲート信号SGV及びSGXをオフにする。そして制御部150は、1−パルス制御部168により、入出力端子112から111への方向で流れる電流のピークで、ゲート信号SGU及びSGYをオフにし、ゲート信号SGV及びSGXをオンにする。
作成されたゲート信号は、出力部170から各ゲートへ供給される。スイッチSWU,SWV,SWX及びSWYは、ゲート信号を受信し、スイッチのオン・オフを切り替える。
【0060】
これによって、図6に示すように、ブリッジ回路110を流れる電流(電流値i)の位相から基本波成分が90度ずれた電圧がブリッジ回路に発生する(電圧値v)。また、ブリッジ回路110の実際の等価リアクタンスXがコンデンサCMの実際のリアクタンスと同じになるため、コンデンサCMの電圧(電圧値v)がブリッジ回路110の電圧の絶対値と等しくなる。この場合、コンデンサCMを直接接続した場合と同じことを意味するので、高調波が少ない。また、電源周波数の1周期に1度しかスイッチングしないので、損失がすくない。
【0061】
(X>Xの時の動作)
さらにユーザーが等価リアクタンスXの値をより大きくしリアクタンスXより大きくなると、制御部150は比較部162においてX>Xを判定し、算出部154の計算を実行する。すなわち、制御部150は、数式2を計算することにより、コンデンサCMの電圧値v(θ)を更新する。
【0062】
電圧値v(θ)が更新されると、制御部150は、PWM制御部165において、電圧値v(θ)に基づいてゲート信号を作成する。
制御部150は、三角波vt0に電圧値v(θ)を乗じて、三角波vを生成する。本実施形態において制御部150は、包絡線が±v(θ)の三角波vになる。
【0063】
次に制御部150は、PWM制御部165において、リファレンス電圧値vref+と三角波vとを比較することによりゲート信号を作成する。
【0064】
ゲート信号が作成されると、制御部150は、出力部170から、ゲート信号をゲートGU,GV,GX及びGYへ送信する。スイッチSWU,SWV,SWX及びSWYは、制御部150からゲート信号を受信し、スイッチのオン・オフを切り替える。
【0065】
これによって、図7に示すように、ブリッジ回路110を流れる電流(電流値i)の位相から基本波成分が90度ずれた電圧がブリッジ回路に発生する(電圧値v)。すなわち、ここでは無効電力が発生している。また、ブリッジ回路110の実際の等価リアクタンスXがコンデンサCMの実際のリアクタンスより大きくなるため、コンデンサCMの電圧(電圧値v)が0電圧まで落ちることがない。なお、図7においては、波形を見やすくするために、リファレンス電圧値vref+等の周波数を小さくして表示している。
また、コンデンサ電圧値vの包絡線を持った三角波vを用いることによって、
高調波(三角波vのスイッチング周波数より低い周波数成分)の少ない電圧(電圧値v)を発生させることができる。
【0066】
上述したように無効電力制御装置100によって任意のXに対して制御が可能である。よって、電源VSと負荷LDとの間にある任意の大きさの誘導性リアクタンスを任意に補償することが可能である。すなわち、無効電力制御装置100は任意の無効電力を制御可能である。
【0067】
(第1の実施の形態:まとめ)
以上説明したように、本実施形態に係る無効電力制御装置100によって、任意の無効電力を交流電力回路に供給可能である。無効電力制御装置100は、ブリッジ回路110の等価リアクタンスXを制御することによって、無効電力を制御することができる。
【0068】
特に、交流電源VSの出力周波数におけるブリッジ回路110の等価リアクタンスXがコンデンサCMのリアクタンスより小さい場合を含むため、一般的なSSSCなどで用いられるコンデンサに比べて、極めて容量の小さいコンデンサを用いることができる。
また、コンデンサCMのリアクタンスXに基づいて求まるコンデンサCMの電圧値vから三角波vを作成することにより、コンデンサ電圧の大きな脈動に対しても、適切な無効電力の制御が可能である。
また、コンデンサCMの電圧が0電圧まで下がる場合と下がらない場合と(X<X及びX=XあるいはX>Xの場合)で制御を切り替えることにより高調波の少ない制御が可能である。特に、数式1,2によって将来のコンデンサCMの電圧を求めることが可能であるため、実際に測定するよりも安定した制御が可能である。
また、ブリッジ回路110の等価リアクタンスXとブリッジ回路110のコンデンサCMのリアクタンスXの値が同じ時は、電源周波数と同じ周波数でスイッチングが可能であるため、スイッチング損失を低く抑えられる。
また、PWM制御の場合は、コンデンサCMの電圧の位相と、ブリッジ回路110を流れる電流の位相が90度ずれるためスイッチング損失がより低くなる。コンデンサ電圧が一定である一般的な電圧形コンバータと比較するとスイッチング損失は最大半分である。
【0069】
(第1の実施の形態:応用及び変形例)
以上、本発明の第1の形態を説明したが、本発明の実施の形態は上述のものに限られない。
例えば、上記説明では1−パルス制御について、X=Xの時と説明したが、もちろんこの1点に限定しなくてもよく、無効電力制御装置100の運用方法に合わせて1−パルス制御の範囲を適切に設定するのが好ましい。例えば、範囲をX=X±5%などとしてもよい。許容される高調波の量などによって適切に設定することが好ましい。この場合、オン時間を調整したり、各ゲート信号の位相を制御するのが好ましい。加えて、コンデンサCMを介さずに電流が流れる期間を設けてもよい。例えば、θ=0度とθ=180度の周辺に、第1のスイッチSWU及び第3のスイッチSWVをオンにし、第2のスイッチSWX及びSWYをオフにする、あるいは、第1のスイッチSWU及び第3のスイッチSWVをオフにし、第2のスイッチSWX及びSWYをオンにする期間を設ける。また、X<Xの時、あるいは、X>Xの時に上述の1−パルス制御を行い、それ以外では上述のPWM制御を行うように制御されてもよい。
【0070】
また、PWMにおけるゲート信号の作成も上記例に限定されない。コンデンサCMの実際のリアクタンスXに基づいて求まる電圧値v(θ)からスイッチングパターンを作成することが重要であり、一般的に知られている他の制御が応用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では三角波比較法によるPWM制御を行ったが、制御はこれに限定されない。例えば、固定パルスパターンでもよい。
また、X<Xの場合であれば、電源周波数の一周期においてのゲート信号のデューティーはほぼ一定になる。そのため、X<Xの場合は、等価リアクタンスXにするデューティーを予め設定しておき、等価リアクタンスXに対応して、その周期のデューティーを設定してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、無効電力制御装置100で消費される有効電力は無いとして説明したが、消費される有効電力を補充してもよい。例えば、外部の電源から電力を供給してもよい。
【0073】
また、上述の説明は、電流が一定であるとして説明したが、電圧が一定の場合でもよい。
【0074】
また、上記無効電力制御装置100は、ブリッジ回路110を交流電力回路に直列に接続することによって無効電力を制御供給した。他方、ブリッジ回路110を交流電力回路に並列に接続することによって無効電力を供給することも可能である。すなわち、STATCOMに応用可能である。
【0075】
(第2の実施の形態)
以下、無効電力制御装置100をSTATCOMに応用した、本発明の第2の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0076】
(第2の実施の形態:構成)
本発明の実施の形態に係る無効電力制御装置200は、図8に示すように、三相交流電力回路280に、デルタ接続された3つのユニット201から構成されている。
【0077】
三相交流電力回路280は、R相,S相及びT相から構成されている。本実施形態では、三相交流電力回路280は、200V,50Hzの三相交流電源から交流電圧を供給された送電線である。
【0078】
3つのユニット201はそれぞれ同様の構成をしている。これらは、無効電力制御装置200とリアクトル205の直列回路から構成されている。無効電力制御装置200に発生する電圧をVconvとすると、線間電圧とVconvとの差がリアクトル205に印加される。これによりリアクトル205に電流が流れ無効電力が発生する。それぞれの無効電力制御装置200は、電圧Vconvを制御することでリアクトル205に印加される電圧を制御するため、無効電力を制御することができる。
【0079】
なお、以下では、理解を容易にするため、R相とS相との間に接続されている単相のユニット201を代表して説明する。
【0080】
ユニット201は、図9に示すように、リアクトル205と無効電力制御装置200との直列回路から構成されている。
【0081】
リアクトル205の一端はR相に接続されている。
無効電力制御装置200は、ブリッジ回路110と電圧計246並びに247と制御部250とを備える。
【0082】
ブリッジ回路110は、上述の第1の実施形態のブリッジ回路110と同様である。
【0083】
ブリッジ回路110は、入出力端子111をリアクトル205の他端に接続され、入出力端子112をS相に接続されている。
【0084】
電圧計246は、ブリッジ回路110のコンデンサCMの電圧値vを計測し、その値を制御部250へ送信する。
電圧計247は、R相とS相との線間電圧値vを計測し、制御部250へ送信する。
【0085】
制御部250は、CPUやメモリ、RAMから構成されている。制御部250は、ブリッジ回路110の等価リアクタンスXの大きさによって、制御を切り替える。
具体的には、図10に示す各機能部を実現することによって後述の制御を行う。
なお、以下の説明では、各記号は下記データを代表する。また、各処理において制御部250は、各データを内部のRAM及びROMを活用し、適宜読み書きする。
なお、小文字の記号は、値が連続的に変化するデータ列である(例えば電流の瞬時値i)。大文字の記号は、電源の1サイクルごとに更新されるデータである(例えば電流の実効値I)。また、指令値には*を付している。
i:ブリッジ回路110の入出力端子111から112の方向に流れる電流値(本実施形態の動作においては制御に用いられない)
I:ブリッジ回路110の入出力端子111から112の方向に流れる電流実効値(指令値)
Imax:ブリッジ回路110の入出力端子111から112の方向に流れる電流の期待される最大値(ユーザーによって設定する値)
conv:ブリッジ回路110の入出力端子112に対すると111の電圧(本実施形態の動作においては制御に用いられない)
conv:ブリッジ回路110の入出力端子112に対すると111の実効電圧(計算)
:コンデンサ電圧(実測値)
:コンデンサ電圧(IやVconvから求まる計算値であり指令値)
c.*peak:コンデンサCMのピーク電圧(指令値)
:線間電圧(実測値)
:線間電圧の実効値(vから求まる計算値)
θ:電圧値vの位相(vから求める計算値。負から正に切り替わる零点を0度とする。)
ref+:リファレンス電圧(入出力端子111,112間の所望の波形をもった電圧)
:ブリッジ回路110の等価リアクタンス(この値の大小によって制御部150は、単相電圧型ブリッジ回路110の制御を切り替える。)
:ブリッジ回路110のコンデンサCMのリアクタンス(初期値として制御部250に記憶されている。)
:リアクトル205のリアクタンス(初期値として制御部250に記憶されている。)
【0086】
制御部250は、図10に示すように、入力部251,PLL部252,算出部253,255,256,257,258,259並びに260,及び,出力部270を備える。
【0087】
入力部251は、ユーザーインターフェース(図示せず)を備える。ユーザーは、このユーザーインターフェースを介して、電流値Imaxを入力する。電流値Imaxは、所望の無効電力を供給するためにブリッジ回路110を流れるべき電流の最大値である。
また、入力部251には、電圧計246からコンデンサCMの電圧値Vが、電圧計247から線間電圧値vが入力される。入力されたデータは、前述のRAMに記憶され、後述の各種動作に使用される。
また、入力部251を介してユーザーは、各種データの閲覧及び更新が可能である。
【0088】
PLL部252は、線間電圧値vの周波数f及び位相を検出する。検出された周波数f及び位相θはRAMに保存される。また、PLL部252は、線間電圧値vの実効電圧値Vを算出する。算出された実効電圧値VはRAMに保存される。
【0089】
算出部253は、線間電圧値vに対応する電流値Iを算出する。具体的には、電流値Iは、電圧値vが小さいほど大きく、電圧値vが大きいほど小さくなる。電流値Iが算出されると、RAMに保存されているIが更新される。電流値Iに相当する電流が実際に流れることによって、無効電力補償装置200は、所望の無効電力を三相交流電力回路280に供給することになる。
また、算出部253は電流値Iを一定にすることも可能である。対象箇所の力率を一定にすることを目的にする場合になどには、それに適した電流値Iに設定することが望ましい。
なお、以下では、算出部253は線間電圧値vに対応する電流値Iを算出するものとして説明する。
【0090】
算出部255は、所望の無効電力を補償するのに適したブリッジ回路110の実効電圧値Vconvを算出する。具体的には、下記の数式3に定められた計算を実行する。数式3によって、電圧値Vconvが求まる。
【0091】
【数3】
【0092】
算出部256は、算出された最適な電圧値Vconvと算出された流れるべき電流値IからコンデンサCMの持つべき電圧値vを算出する。具体的には、X=Vconv/Iを計算し、X≦Xの場合は下記の数式4,X>Xの場合は数式5,6に定められた計算を実行する。数式4乃至6によって、コンデンサCMの持つべき電圧値vが算出される。
【0093】
【数4】
【0094】
すなわち、X≦Xである場合、数式4によって、電流値Iが流れる場合のコンデンサCMの持つべき電圧値vが求まる。
【0095】
【数5】
【数6】
【0096】
すなわち、X>Xの場合、数式5によって、電流値が最大でImaxとなるために必要なコンデンサCMのピーク電圧値が算出され、数式6によって、電流値Iが流れる場合のコンデンサCMの持つべき電圧値vが算出される。
【0097】
算出部257は、コンデンサCMに補充すべき有効電力を算出する。
具体的には、算出部257は、算出したコンデンサ電圧の電圧(電圧値v)と実測したコンデンサCMの電圧(電圧値v)とを比較し、その差が0になるように実効電圧値Vactをフィードバック制御する。例えば三相交流電力回路280の1周期間における移動平均を比較してフィードバック制御する。
【0098】
算出部258は、入出力端子112に対する入出力端子111の電圧の理想的な波形を求める。具体的には、下記の数式7に定められた計算を実行する。数式7によって、リファレンス電圧vref+が求まる。
【0099】
【数7】
【0100】
数式7によって、発生すべき無効電力(右辺第1項に相当)と、補充すべき有効電力(右辺第2項に相当)と、の両方を考慮したリファレンス電圧が求まる。
【0101】
算出部259は、電流値Iが流れる場合のコンデンサCMの電圧値vを包絡線に持つ三角波vを算出する。具体的には、三角波vt0に電圧値vを乗ずる。
【0102】
算出部260は、算出されたリファレンス電圧値vref+と、算出された三角波vを比較する。
算出部260は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより大きい場合に、ゲート信号SGUをオン信号にし、ゲート信号SGXをオフ信号にする。算出部260は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより小さい場合に、ゲート信号SGUをオフ信号にし、ゲート信号SGXをオン信号にする。
同様に、算出部260は、リファレンス電圧値vref+のマイナス値−Vref−を上記三角波vと比較しゲート信号SGV,SGYを作成する。算出部260は、三角波vのほうが大きい場合に、ゲート信号SGVをオフ信号にし、ゲート信号SGYをオン信号にする。算出部260は、三角波vのほうが小さい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。
【0103】
出力部270は、算出部260で求められたゲート信号を、ゲートGU,GV,GX及びGYに送信する。
【0104】
(第2の実施の形態:具体的な制御及び動作)
以上説明した構成によって、無効電力制御装置201は、以下のように無効電力を制御する。
なお、初期状態は、発生すべき無効電力が少ないため電流値Iが小さく、X(=Vconv/I)がXより大きいとして説明する。
【0105】
無効電力制御装置201が動作を開始すると、制御部250は、RAM及びROMに記憶されている各種データ・プログラムに従い上記各部を実行し、ブリッジ回路110の制御を開始する。
【0106】
制御部250は、入力部251に電圧計246からコンデンサCMの電圧値vが、電圧計247から線間電圧値vが入力される。
【0107】
制御部250は、入力されたデータに基づき、PLL部252において、線間電圧値vの位相θ,周波数f及び実効電圧値Vを検出する。
【0108】
制御部250は、算出部253において、線間電圧値vに対応する電流値Iを算出する。
【0109】
制御部250は、算出部255において、数式3によって電圧値Vconvを算出する。
【0110】
(X>Xの時の動作)
制御部250は、算出部256において、初期状態ではX>Xなので、数式5及び6によって、コンデンサCMの持つべき電圧値vを算出する。
【0111】
制御部250は、算出部257において、算出されたコンデンサ電圧値vと実測したコンデンサ電圧値vとを比較することで、コンデンサに補充すべき有効電力Vactを算出する。
【0112】
制御部250は、算出部258において、数式7によって、リファレンス電圧値vref+が求まる。
【0113】
制御部250は、算出部259において、三角波vt0にvを乗じて、電圧値vを包絡線に持つ三角波vを算出する。
【0114】
制御部250は、算出部260において、算出されたvref+と、算出されたコンデンサ電圧値vを包絡線に持つ三角波vを比較する。
制御部250は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより大きい場合に、ゲート信号SGUをオン信号にし、ゲート信号SGXをオフ信号にする。算出部260は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより小さい場合に、ゲート信号SGUをオフ信号にし、ゲート信号SGXをオン信号にする。
同様に、制御部250は算出部260において、リファレンス電圧値vref+のマイナス値vref−を上記三角波vと比較しゲート信号SGV,SGYを作成する。算出部260は、三角波vのほうが大きい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。算出部260は、三角波vのほうが小さい場合に、ゲート信号SGVをオフ信号にし、ゲート信号SGYをオン信号にする。
【0115】
制御部250は、算出部260において求まったゲート信号を、出力部270からゲートGU,GV,GX及びGYに送信する。
【0116】
スイッチSWU乃至SWYは、ゲートに受信したゲート信号によってオン・オフを切り替える。これによって図11に示すように、各電圧・電流が発生する。
スイッチSWU乃至SWYのオン・オフに伴い、コンデンサCMの電圧(電圧値v)が、ブリッジ回路110の電圧として(電圧値vconv)発生する。なお、ブリッジ回路110の等価リアクタンスXがコンデンサCMのリアクタンスより大きくなるため、コンデンサCMの電圧(電圧値v)は、0電圧には落ちない。また、図中の電圧値vconv1で表される電圧が基本波成分としてブリッジ回路110の電圧として発生しており、ブリッジ回路110の電圧(電圧値vconv)は高調波(三角波vのスイッチング周波数以下の高調波)が少ない。
線間電圧(電圧値v)とブリッジ回路110の電圧(電圧vconv)がリアクトル205に印加される。これにより、リアクトル205及びブリッジ回路110には、電流(電流値i)が流れる。ブリッジ回路110の電圧は高調波が少ないため、電流(電流値i)は正弦波に近い波形を持つ。
すなわち、リアクトル205に正弦波に近い波形を持った電流を流すことによって、無効電力制御装置200は無効電力を発生させることが可能である。
【0117】
(X=Xの時の動作)
例えば、線間電圧値vが低下したとする(一般的な交流電力回路においては、無効電力が低下するなどし、電圧が下がることが知られている)。すると、制御部250は、算出部253において電流値Iを大きくする。X>Xになるまでは、各データを更新しつつ上述の動作を繰り返す。
更にIが大きくなりX=Xになると、制御部250は、算出部256において、数式4によって、コンデンサCMの持つべき電圧値vを算出する。なお、X=Xの時、計算上は、X=X=Vconv/Iになる。すると、制御部250が算出部256において用いる数式4は、下記数式と等価になる。
【0118】
【数8】
【0119】
数式8は、X=Xの場合にはコンデンサ電圧(電圧値v)が、入出力端子111−112間の電圧の絶対値に等しくなることを意味する。
【0120】
制御部250は、算出部257において、算出したコンデンサ電圧値vと実測したコンデンサ電圧値vとを比較することで、コンデンサに補充すべき有効電力Vactを算出する。
【0121】
制御部250は、算出部258において、数式7によってリファレンス電圧値vref+を求める。
【0122】
制御部250は、算出部259において、大きさが1で周波数2500Hzの三角波vt0にvを乗じて、vを包絡線に持つ三角波vを算出する。
【0123】
制御部250は、算出部260において、算出されたvref+と、算出されたコンデンサ電圧値vを包絡線に持つ三角波vを比較する。
制御部250は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより小さい場合に、ゲート信号SGUをオン信号にし、ゲート信号SGXをオフ信号にする。算出部260は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより大きい場合に、ゲート信号Uをオン信号にし、ゲート信号Xをオフ信号にする。
同様に、制御部250は算出部260において、リファレンス電圧値vref+のマイナス値Vref−を上記三角波vと比較しゲート信号SGV,SGYを作成する。算出部260は、三角波vのほうが小さい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。算出部260は、三角波vのほうが大きい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。
【0124】
ところで、数式8が示すように、X=Xの場合にはコンデンサ電圧(電圧値v)が、入出力端子111−112間の電圧の絶対値に等しくなる。そのため三角波vは±vを包絡線に持ち、vref+の絶対値はvに大きさが等しい。すなわち、三角波vの包絡線とリファレンス電圧値vref+は実質的に同じ波形を持つ。よって、算出部260が、三角波vとリファレンス電圧値vref+を比較して作成されるゲート信号は、一度オン信号になると、電源周期の半周期の間オンを継続し、一度オフになると電源周期の半周期の間オフを継続することになる。
【0125】
算出部260がゲート信号を作成すると、制御部250は、出力部270からゲートGU,GV,GX及びGYに送信する。
【0126】
スイッチSWU乃至SWYは、ゲートに受信したゲート信号によってオン・オフを切り替える。これによって図12に示すように、各電圧・電流が発生する。
X=Xであるため、コンデンサCMの電圧(電圧値v)は毎周期0電圧に落ちる。スイッチSWU乃至SWYのオン・オフに伴い、コンデンサCMの電圧(電圧値vs)が、0電圧に落ちる度に極性が切り替わってブリッジ回路110に発生する(電圧値vconv)。このブリッジ回路110の電圧(電圧値vconv)は正弦波を波形に持ち高調波(三角波vのスイッチング周波数以下の高調波)が少ない。
線間電圧(電圧値v)とブリッジ回路110の電圧(電圧vconv)がリアクトル205に印加される。これにより、リアクトル205及びブリッジ回路110には、電流(電流値i)が流れる。ブリッジ回路110の電圧(電圧vconv)は高調波が少ないため、電流(電流値i)は正弦波に近い波形を持つ。
すなわち、リアクトル205に正弦波に近い波形を持った電流を流すことによって、無効電力制御装置200は、無効電力を発生させることが可能である。
【0127】
(X<Xの時の動作)
線間電圧値vがさらに低下してIが大きくなり、X>Xになると、制御部250は、算出部256において、引き続き数式4によって、コンデンサCMの持つべき電圧値vを算出する。
【0128】
制御部250は、算出部257において、算出したコンデンサ電圧値vと実測したコンデンサ電圧値vとを比較することで、コンデンサに補充すべき有効電力Vactを算出する。
【0129】
制御部250は、算出部258において、数式7によってリファレンス電圧値vref+を求める。
【0130】
制御部250は、算出部259において、大きさが1で周波数2500Hzの三角波vt0にvを乗じて、vを包絡線に持つ三角波vを算出する。
【0131】
制御部250は、算出部260において、算出されたvref+と、算出されたコンデンサ電圧値vを包絡線に持つ三角波vを比較する。
制御部250は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより小さい場合に、ゲート信号SGUをオン信号にし、ゲート信号SGXをオフ信号にする。算出部260は、リファレンス電圧値vref+が三角波vより大きい場合に、ゲート信号Uをオン信号にし、ゲート信号Xをオフ信号にする。
同様に、制御部250は算出部260において、リファレンス電圧値vref+のマイナス値Vref−を上記三角波vと比較しゲート信号SGV,SGYを作成する。算出部260は、三角波vのほうが小さい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。算出部260は、三角波vのほうが大きい場合に、ゲート信号SGVをオン信号にし、ゲート信号SGYをオフ信号にする。
【0132】
制御部250は、算出部260において求まったゲート信号を、出力部270からゲートGU,GV,GX及びGYに送信する。
【0133】
スイッチSWU乃至SWYは、ゲートに受信したゲート信号によってオン・オフを切り替える。これによって図13に示すように、各電圧・電流が発生する。
X<Xであるため、コンデンサCMの電圧(電圧値v)は毎周期0電圧に落ちる。スイッチSWU乃至SWYのオン・オフに伴い、コンデンサCMの電圧(電圧値v)がブリッジ回路110に発生する(電圧値vconv)。このブリッジ回路110の電圧(vconv)は電圧値vconv1で表される基本波成分を持つ。ブリッジ回路110の電圧(vconv)は、高調波(三角波vのスイッチング周波数以下の高調波)が少ない。
線間電圧(電圧値v)とブリッジ回路110の電圧(電圧vconv)との差がリアクトル205に印加される。これにより、リアクトル205及びブリッジ回路110には、電流(電流値i)が流れる。ブリッジ回路110の電圧は高調波が少ないため、電流(電流値i)は正弦波に近い波形を持つ。
すなわち、リアクトル205に正弦波に近い波形を持った電流を流すことによって、無効電力制御装置200は、無効電力を発生させることが可能である。
【0134】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る無効電力制御装置200によって、任意の無効電力を発生可能である。これによって、交流電力回路の電圧変動等を抑制することができる。言い換えると、前述の無効電力制御装置100をSTATCOMとして応用することができる。
【0135】
(第2の実施の形態:まとめ)
上記のように、本実施形態では、容量の小さなコンデンサを用いて、交流電力回路に供給する無効電力を制御可能である。また、ブリッジ回路の等価リアクタンスが、コンデンサのリアクタンスより小さい場合であっても、大きい場合とは違う制御を用いることで、高調波を少ないまま、適切な無効電力を供給可能である。
【0136】
(変形例等の説明)
なお、本発明は、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態や変形例は、本発明の実施例を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。下記に上記実施形態の変形例を例示するが、各変形例は適宜組み合わせることが可能である。
【0137】
(変形例1)
無効電力制御装置100は、ブリッジ回路110を流れる電流値を用いて制御する例として説明した。しかし、無効電力制御装置100が接続される付近の線間電圧を用いて制御してもよい。その場合、図14に示無効電力制御装置300ように、電流計117で電流を検知する代わりに電圧計116によって線間電圧を検知すればよい。この場合、検出した線間電圧から位相や周波数などを検出し、ブリッジ回路110を流れる電流を指令値にすればよい。
【0138】
(変形例2)
無効電力制御装置100及び200は、無効電力を供給する装置として説明したが、一般的なSTATCOMと同じように、無効電力供給するだけではなく、さらに無効電力を消費するようにしてもよい。
【0139】
(変形例3)
上記処理を実行させるプログラムは、上記実施形態では所定のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(上記では、記憶部を構成するRAM152、ROM153)にはじめから記憶されているものとしている。しかし、上記処理を実行させるプログラムは、フレキシブルディスク、CD−R (Compact Disc Recordable) 、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの持ち運び可能なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して配布してもよい。また、上記処理を実行させるプログラムは、インターネットなどを介して、コンピュータに供給することによって、コンピュータを上記無効電力制御装置100としてもよい。また、上記処理を実行させるプログラムは、OS(Operating System)などと協働して上記処理を実行させるプログラムであってもよい。
【0140】
(変形例4)
上記説明で用いた算出処理等は一例であって、本発明の目的を達するのであれば様々な応用が可能である。例えば、指令値に対するゲート信号を予め外部で計算しておいてもよい。無効電力制御装置200であれば、線間電圧vを測定し、測定した線間電圧vの大きさに対してのゲート信号を予め設定する。また、予め設定されたゲート信号のパターンのうち、適切なパターンを選択するように、ブリッジ回路110の実効電圧をフィードバック制御することもできる。
【0141】
また、上記説明では、コンデンサCMのリアクタンスXに直接基づいて、スイッチSWU乃至SWYのオン・オフを切り替えるタイミングを制御した。しかし、実質的にリアクタンスXに基づいて制御すればよく、リアクタンスXに相関関係のある別の値、例えば、アドミッタンスやキャパシタンスを用いても良い。
その他の値も、上記説明に限定されるわけではなく、相関性のある別の値を用いることで本発明を実施することで、本発明を実施することが可能である。
【0142】
また上記説明では、無効電力制御装置100でX=Xで1−パルス制御部168を用いたが、これは必須ではない。X=Xの場合においても算出部163を用いてよい。また、無効電力制御装置200において、X=Xの時に算出部256を用いねばならないわけではない。代わりに1−パルス制御部168と同様の制御を用いるだけでよい。
いずれの実施の形態のおいても、互いの制御を流用可能である。
【符号の説明】
【0143】
100,200,300 無効電力制御装置
VS 交流電源
LD 負荷
L リアクタンス
110 ブリッジ回路
SWU,SWV,SWX,SWY スイッチ
CM コンデンサ
111,112 入出力端子
115 116 電圧計
117 電流計
150,250 制御部
201 ユニット
205 リアクトル
246,247 電圧計
280 三相交流電力回路
LD 負荷
150 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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