特許第6372645号(P6372645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372645
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20180806BHJP
【FI】
   H01M10/0567
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-9504(P2014-9504)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-138660(P2015-138660A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年10月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕江
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀美
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−233141(JP,A)
【文献】 国際公開第08/123038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、セパレータ及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、前記非水電解質は、下記一般式(1)
【化8】
(式中、R及びRは水素原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示し、かつ、R、R、及びRのうち少なくともいずれか1つは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されており、nは0〜6の整数を表す。)
で表される含フッ素ホスホン酸エステルを含み、前記負極は負極活物質が黒鉛であり、充電電圧4.35V以上に達する高電圧で作動されることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
及び/又はRの水素原子がフッ素原子で置換されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記非水電解質中の含フッ素ホスホン酸エステルの含有量は、非水電解質を構成する有機溶媒の全質量に対して0.5〜5質量%である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池、特に、非水電解質に特徴を有する非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池は、その高エネルギー密度という利点を活かして、携帯電話に代表されるモバイル機器の電源として幅広く普及している。また、近年、小形機器用電源だけでなく、電力貯蔵用、電気自動車用及びハイブリッド自動車用等の中大型産業用途への展開がなされている。
【0003】
非水電解質二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、非水溶媒及びリチウム塩を含有する非水電解質とを備えている。
非水電解質二次電池を構成する正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、負極活物質としてはグラファイトに代表される炭素材料が、非水電解質としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネートとジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを主構成成分とする非水溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を溶解したものが広く知られている。
【0004】
ところで、今後の中型・大型、特に大きな需要が見込まれる産業用途への展開を考えた場合、産業用途では小型民生用では使用されないような高温環境において電池が使用される用途も存在するため、電池の安全性が非常に重要視される。
しかしながら、従来非水溶媒に用いられてきた有機溶媒は一般に揮発しやすく、引火性を有するため、可燃性物質に分類されるものである。
【0005】
そこで、非水電解質二次電池の電解液の難燃性向上や、高温充放電サイクル特性及び高温保存特性向上のために、非水電解質中にリン系化合物、例えば、フッ素化ホスホン酸エステル、アルコキシカルボニル基を有するホスホン酸エステル等を添加する技術が知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0006】
特許文献1には、「電解質塩を有機溶媒に溶解した電解液において、該有機溶媒が下記〔化1〕の一般式(I)で表されるリン化合物の少なくとも一種を含むことを特徴とする難燃性電解液。
【化1】
(式中、R1は炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、または−CH2−COOR3−を示し、R2はメチル基、エチル基または炭素原子数1〜8のハロゲン化アルキル基を示す。R3は炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン化アルキル基を示す。但しR1、R2、R3のうち、一つ以上がハロゲン化アルキル基である。mおよびnはそれぞれ1または2を示し、mおよびnの合計は3である。)」(請求項1)の発明が記載され、その実施例には、ジ−(2,2,2−トリフルオロエチル)メタンホスホネート、ジ−(2,2,2−トリフルオロエチル)エタンホスホネート、 ジ−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)メタンホスホネート、ジ−メチルパーフルオロエタンホスホネート、ジメチルホスフィン酸−2,2,2−トリフルオロエチル等(段落[0017])が示されている。
また、特許文献1には、この発明の目的として「電気特性に悪影響がなく、優れた難燃性を有する難燃性電解液およびこれを用いた非水電解液二次電池を提供すること」(段落[0008])が記載されている。
【0007】
特許文献2には、「電解質及び非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、下記一般式(1)で表される化合物を含有していることを特徴とする非水系電解液電池用非水系電解液。
【化2】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜12の一価の置換基のいずれかを示し、Rはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数7〜12のアラルキル基のいずれかを示す。nは0〜6の整数を示す。但し、R、Rが共にアルコキシ基である場合、nは1〜6の整数を示し、R及びRの少なくとも一つは水素原子以外の基を示す。)」(請求項1)の発明が記載され、その実施例には、トリエチル−2−ホスホノプロピオネート、トリエチル−2−ホスホノブチレート、トリエチルホスホノフルオロアセテート、エチル(ジエチルホスフィニル)アセテートが示されている(段落[0117]、[0119]〜[0122])。
また、特許文献2には、この発明の目的として「ガス発生が少なく、高容量で、保存特性及びサイクル特性に優れた非水系電解液電池を実現することができる非水系電解液と、この非水系電解液を用いた非水系電解液電池を提供すること」(段落[0010])が記載されている。
【0008】
特許文献3には、上記[化2]と同様の一般式で表される化合物を含有している非水系電解液電池用非水系電解液の発明が記載され、その実施例には、ジエチルアセチルホスホネート、ジメチル(2−オキソプロピル)ホスホネートが示されている(段落[0110]、[0112]〜[0114])。
また、特許文献3には、この発明の目的として、特許文献1と同様の記載がある(段落[0008])。
【0009】
特許文献4には、上記[化2]と同様の一般式で表される化合物を含有している非水系電解液電池用非水系電解液の発明が記載され、その実施例には、トリエチルホスホノフォルメート、トリエチルホスホノアセテート、トリエチル−3−ホスホノプロピオネートが示されている(段落[0127]、[0129]〜[0138])。
また、特許文献4には、この発明の目的として、特許文献1と同様の記載がある(段落[0011])。
【0010】
特許文献5には、上記[化2]と同様の一般式で表される化合物を含有している非水系電解液電池用非水系電解液の発明が記載され、その実施例には、トリエチルホスホノアセテートが示されている(段落[0134]〜[0136])。
また、特許文献5には、この発明の効果として「高容量で、保存特性及びサイクル特性に優れた非水系電解液電池を提供することができ、非水系電解液電池の小型化、高性能化を達成することができる」(段落[0016])ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4407847号公報
【特許文献2】特許第5169091号公報
【特許文献3】特許5223258号公報
【特許文献4】特許5223395号公報
【特許文献5】特開2013−080727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1〜5に具体的に記載されているようなホスホン酸エステルを添加した従来の非水電解質二次電池では、難燃性、低電圧作動時の充放電サイクル性能や保存特性が改善されるものの、正極作動電位が4.3Vvs.Li/Li以上に達する高電圧作動時に、充放電サイクル性能の低下が大きかった。そこで、本発明は、上記のような従来技術に鑑み、高電圧作動時においても、充放電サイクル性能の低下が起こらない非水電解質二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)正極、負極、セパレータ及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、前記非水電解質は、下記一般式(1)
【化3】
(式中、R及びRは水素原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示し、かつ、R、R、及びRのうち少なくともいずれか1つは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されており、nは0〜6の整数を表す。)
で表される含フッ素ホスホン酸エステルを含み、前記負極は負極活物質が黒鉛であり、充電電圧4.35V以上に達する高電圧で作動されることを特徴とする非水電解質二次電池。
(2)R及び/又はRの水素原子がフッ素原子で置換されていることを特徴とする前記(1)の非水電解質二次電池。
(3)前記非水電解質中の含フッ素ホスホン酸エステルの含有量は、非水電解質を構成する有機溶媒の全質量に対して0.5〜5質量%である、前記(1)又は(2)の非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、特定の構造を有する含フッ素ホスホン酸エステルを非水電解質に含有させることにより、ホスホン酸エステルを含有した非水電解質二次電池の基本性能(非水電解質の難燃性等)を維持しながら、充放電サイクル性能の低下を抑え、ホスホン酸エステルを含有しない場合と同等以上の性能を発揮する非水電解質二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を示す外観斜視図
図2】本発明に係る非水電解質二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態である矩形状の非水電解質二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
【0017】
ここで、セパレータに保持されている非水電解質は、非水溶媒と該非水溶媒に溶解した電解質塩とを含むものであるが、本発明においては、さらに、特定の含フッ素ホスホン酸エステルを含む点に特徴を有する。
【0018】
本発明者らは、アルコキシカルボニル基を有するホスホン酸エステルの−OR基のうち少なくともいずれか1つのRがフッ素化アルキル基であるものを選択することにより、アルコキシカルボニル基を有するホスホン酸エステルを含有した非水電解質二次電池の基本性能は維持しながらも、サイクル性能の低下を抑え、含有していない場合と同等以上の性能を発揮させることができることを知見して、本発明に到達した。
すなわち、本発明に係る前記一般式(1)で表される含フッ素ホスホン酸エステルは、−OR基のR(R、R、及びR)のうち少なくともいずれか1つは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されているものであり、特にPと直接結合する−OR基のR(R及び/又はR)の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていることが好ましい。なお、特許文献2の実施例に記載されているような、−OR基のRの水素原子がフッ素原子で置換されておらず、他のR(R及び/又はR)の水素原子がフッ素原子で置換されている含フッ素ホスホン酸エステルを選択しても、本発明の効果は奏さない。
【0019】
上記一般式(1)で表される含フッ素ホスホン酸エステルが有する、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−フルオロプロピル基、3−フルオロプロピル基、2,2−ジフルオロプロピル基、3,3−ジフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−フルオロブチル基、3−フルオロブチル基、4−フルオロブチル基、2,2−ジフルオロブチル基、3,3−ジフルオロブチル基、4,4−ジフルオロブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、2,2,3,3−テトラフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2−フルオロペンチル基、3−フルオロペンチル基、4−フルオロペンチル基、5−フルオロペンチル基、2,2−ジフルオロペンチル基、3,3−ジフルオロペンチル基、4,4−ジフルオロペンチル基、5,5−ジフルオロペンチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、1H,1H,5H,5H,5H−ヘキサフルオロペンチル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H−ノナフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル基、1H,1H−トリデカフルオロヘプチル基、1H,1H,8H−トリデカフルオロオクチル基、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチル基等が挙げられる。これらのうち、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H−ノナフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル基、1H,1H−トリデカフルオロヘプチル基から選択されることが好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される含フッ素ホスホン酸エステルとしては、メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、エチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、メチルビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、エチルビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、メチルビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、エチルビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)ホスホノフォルメート、メチルビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、エチルビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、メチルビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、エチルビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)ホスホノフォルメート、メチルビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)ホスホノフォルメート、エチルビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)ホスホノフォルメート、メチルビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)ホスホノフォルメート、エチルビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)ホスホノフォルメート、プロピルビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)ホスホノフォルメート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−ノナフルオロペンチル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H,7H−ドデカフルオロへプチル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(1H,1H−トリデカフルオロヘプチル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(プロポキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(ブトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(メトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(エトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(エトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルエチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(プロポキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(ブトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(メトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(エトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(エトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルプロピル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(プロポキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(ブトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(メトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(エトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(エトキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルブチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルブチル)ホスホネート、等があり、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(プロポキシカルボニルメチル)ホスホネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(ブトキシカルボニルメチル)ホスホネート等が好ましい。
【0021】
上記一般式(1)で表される含フッ素ホスホン酸エステルの含有量は、高温充放電サイクル性能及び高温保存特性を低下させないために、非水電解質を構成する有機溶媒の全質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、特に効果を得るためには、0.5〜5質量%であることがより好ましく、なかでも1〜2質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、非水電解質を構成するその他の有機溶媒は、限定されるものではなく、一般に非水電解質二次電池用非水電解質に使用される有機溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。特に、エチレンカーボネート等の環状カーボネート及びジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを含有するものが好ましい。また、これらの有機溶媒は、任意の割合で混合して用いることができる。
【0023】
本発明の非水電解質は、上記一般式(1)で表される含フッ素ホスホン酸エステルと上記有機溶媒とを含有するものであるが、必要に応じて他の化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の量で含有させることができる。
【0024】
このような他の化合物としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の正極保護剤等が挙げられる。
【0025】
非水電解質中におけるこれら他の化合物の含有割合は特に限定はないが、非水電解質全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を含有させることにより、安全性をより向上させたり、高温保存後の容量維持性能やサイクル性能を向上させたりすることができる。
【0026】
本発明の非水電解質を構成する電解質塩(リチウム塩)は、限定されるものではなく、一般に非水電解質二次電池に使用される広電位領域において安定であるリチウム塩が使用できる。例えば、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23、LiC(C25SO23等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0027】
非水電解質における電解質塩の濃度としては、優れた高率放電特性を有する非水電解質二次電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5.0mol/lが好ましく、さらに好ましくは、1.0mol/l〜2.0mol/lである。
【0028】
本発明の非水電解質二次電池を構成する正極に使用する正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能なものであれば、特に制限はなく、一般に非水電解質二次電池用正極活物質に使用される正極活物質が使用できる。例えば、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有ポリアニオン金属複合化合物等が挙げられる。遷移金属酸化物としては、マンガン酸化物、鉄酸化物、銅酸化物、ニッケル酸化物、バナジウム酸化物、遷移金属硫化物としては、モリブデン硫化物、チタン硫化物等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。リチウム含有ポリアニオン金属複合化合物としては、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム等が挙げられる。さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられる。
【0029】
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0030】
本発明の非水電解質二次電池を構成する負極に使用する負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能なものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。 炭素質材料としては、天然グラファイト、人造グラファイト、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。中でも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
【0031】
負極の集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0032】
セパレータとして、微多孔性膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。中でもポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂を主成分とする微多孔性膜であることが好ましい。
【0033】
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
【0034】
本発明に係る非水電解質二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の非水電解質二次電池を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
1mol/LのLiPFを含有するエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)が体積比で30:70の混合溶媒に、以下の化学式を有するビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートを2質量%添加して、実施例1に係る非水電解質を作製した。
【化4】
【0037】
(実施例2)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートの代わりに、以下の化学式を有するビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネートを添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る非水電解質を作製した。
【化5】
【0038】
(比較例1)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートを添加していないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る非水電解質を作製した。
【0039】
(比較例2)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートの代わりに、以下の化学式を有するトリエチルホスホノアセテートを添加したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る非水電解質を作製した。
【化6】
【0040】
(比較例3)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートの代わりに、以下の化学式を有するメチルジエチルホスホノアセテートを添加したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る非水電解質を作製した。
【化7】
【0041】
(非水電解質二次電池の作製)
実施例1、2の非水電解質、及び比較例1〜3の非水電解質を用いて、非水電解質二次電池を作製した。実施例に係る非水電解質二次電池は、正極活物質を正極集電体に塗布して得た正極と、負極活物質を負極集電体に塗布して得た負極とを、セパレータを介して積層し、扁平形状に捲回することにより形成された電極群が、電池ケースに収納されてなる。
【0042】
次に、上記構成の非水電解質二次電池の製造方法を説明する。
正極は次のようにして得た。まず、LiNi1/3Co1/3Mn1/3と、導電剤であるアセチレンブラックを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物(正極合剤)をアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布した後、乾燥し、正極合剤の厚さが所定の厚さとなるようにプレスした。以上の工程により正極を得た。
【0043】
負極は、次のようにして得た。まず、負極活物質である黒鉛(エックス線広角回折法による(002)面の面間隔0.336nm)と、結着剤であるスチレン−ブタジエン・ゴム及びカルボキシメチルセルロースの水溶液を混合し、この混合物(負極合剤)を銅箔からなる負極集電体の両面に塗布した後、乾燥し、負極合剤の厚さが所定の厚さとなるようにプレスした。以上の工程により負極を得た。
【0044】
セパレータは、ポリエチレン製微孔膜を用いた。電極群は、正極合剤と負極合剤とを対向させ、その間にセパレータを配し、正極、セパレータ、負極の順に積層して捲回することにより、構成した。次に、電極群をアルミニウム製の電池ケースに収納し、正負極端子を取り付けた。この電池ケース内部に実施例1、2の非水電解質、及び比較例1〜3の非水電解質をそれぞれ注入したのちに封口した。以上のようにして、実施例1、2の非水電解質二次電池、及び比較例1〜3の非水電解質二次電池をそれぞれ作製した。
【0045】
(充放電試験)
これらの実施例1、2の電池、及び比較例1〜3の電池について、充放電試験を行った。
まず、25℃において、電流0.2CmA、終止電圧4.35Vの定電流定電圧充電と、電流0.2CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とを1サイクル、電流1.0CmA、終止電圧4.35Vの定電流定電圧充電と、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とを1サイクル行い、25℃における0.2C放電容量と1C放電容量とを測定し、1C/0.2C放電容量比を求めた。
次に、45℃において、電流1CmA、終止電圧4.35Vの定電流定電圧充電と、電流1CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とを50サイクル行い、45℃における45℃における1サイクル目、25サイクル目及び50サイクル目の1C放電容量を測定した。
【0046】
(電池厚さの測定)
上記した充放電試験において、25℃における1C放電容量を測定した後及び45℃における25サイクル目及び50サイクル目の放電容量を測定した後の電池厚さを、ノギスを用いて測定した。
【0047】
以上の結果をまとめて表1に示す。なお、表1において、45℃における1サイクル目、25サイクル目及び50サイクル目の1C放電容量は、比較例1の1サイクル目の1C放電容量の値を100%として表記した。表2において、電池厚さは、比較例1の25℃における1C放電容量を測定した後の電池厚さの値を100%として表記した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1及び表2に示すように、上記一般式(1)で表される含フッ素ホスホン酸エステルにおいて、R及びRの水素原子がフッ素原子で置換されている含フッ素ホスホン酸エステルを含有した非水電解質を有する実施例1及び2の非水電解質二次電池は、含フッ素ホスホン酸エステルを含有しない非水電解質を有する比較例1の非水電解質二次電池と比較して、高電圧作動時の25℃における放電性能が同等以上であり、電池厚さの増加や高温充放電サイクル性能の低下が抑制されていることがわかる。これに対して、R、R及びRの水素原子がフッ素原子で置換されていないホスホン酸エステルを添加した比較例2及び3の非水電解質二次電池は、比較例1の非水電解質二次電池と比較して、高電圧作動時の25℃における放電性能が低く、高温充放電サイクル性能が低下し、電池厚さの増加が大きい。したがって、高電圧作動時の25℃における放電性能を維持し、高温充放電サイクル性能の低下や電池厚さの増加を抑制するためには、アルコキシカルボニル基を有するホスホン酸エステルの−OR基のRであるR、R、及びRのうち少なくともいずれか1つは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている必要があるといえ、特にPと直接結合する−OR基のRであるR及び/又はRの少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていることが好ましいといえる。なお、実施例1及び2の非水電解質二次電池も、ホスホン酸エステルを添加した非水電解質二次電池の基本性能は維持されているから、比較例1の非水電解質二次電池よりも難燃性は高い。
【0051】
(実施例1−2)
次に、非水電解質中の含フッ素ホスホン酸エステルの含有量について検討した。ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートを0.5質量%添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例1−2に係る非水電解質を作製した。
【0052】
(実施例1−3)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートを1.0質量%添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例1−3に係る非水電解質を作製した。
【0053】
(実施例1−4)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(メトキシカルボニルメチル)ホスホネートを5.0質量%添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例1−4に係る非水電解質を作製した。
【0054】
(実施例2−2)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネートを0.5質量%添加したこと以外は実施例2と同様にして、実施例2−2に係る非水電解質を作製した。
【0055】
(実施例2−3)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネートを1.0質量%添加したこと以外は実施例2と同様にして、実施例2−3に係る非水電解質を作製した。
【0056】
(実施例2−4)
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(エトキシカルボニルメチル)ホスホネートを5.0質量%添加したこと以外は実施例2と同様にして、実施例2−4に係る非水電解質を作製した。
【0057】
(非水電解質二次電池の作製)
実施例1−2〜1−4及び2−2〜2−4の非水電解質を用いて、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0058】
(充放電試験)
これらの実施例1−2〜1−4及び2−2〜2−4の電池について、実施例1、2及び比較例1の電池とともに、上記と同様にして、充放電試験を行った。
【0059】
以上の結果をまとめて表3に示す。なお、表1と同様に表3においても、45℃における1サイクル目、25サイクル目及び50サイクル目の1C放電容量は、比較例1の1サイクル目の1C放電容量の値を100%として表記した。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示すように、非水電解質中の含フッ素ホスホン酸エステルの含有量を0.5質量%、1.0質量%、又は2.0質量%とすることによって、含フッ素ホスホン酸エステルを含有しない非水電解質を有する比較例1の非水電解質二次電池と比較して、高温充放電サイクル性能の低下が抑制され、5.0質量%ではその効果はやや低下することがわかる。以上の結果から、非水電解質中の含フッ素ホスホン酸エステルの含有量は、非水電解質を構成する有機溶媒の全質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、特に効果を得るためには、0.5〜5質量%であることがより好ましく、なかでも1〜2質量%であることがさらに好ましい。
【0062】
(符号の説明)
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る非水電解質二次電池は、充放電サイクル性能が優れているので、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の自動車用電源として有用である。
図1
図2