(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングのカバー部は、前記ロータホルダの径方向外側に配置され、前記ロータホルダとの間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の自冷式モータ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本明細書では、便宜上、モータの回転軸Jの方向を上下方向として説明するが、本発明によるモータの使用時における姿勢を限定するものではない。また、モータの回転軸Jの方向を単に「軸方向」と呼び、回転軸Jを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。
【0016】
実施の形態1.
(A)オーブンレンジ500
図1は、本発明の実施の形態1によるモータ100を備えたオーブンレンジ500の一構成例を示した図である。オーブンレンジ500は、高温室501を内蔵する加熱調理装置であり、高温室501は、金網504で仕切られた加熱室502及び攪拌室503によって構成される。
【0017】
加熱室502は、被加熱物としての食品を収容する空間であり、その上部及び下部には、加熱装置510が配置されている。加熱装置510は、高温室501内の食品を加熱する手段であり、例えば、ヒータやマイクロ波発生装置が用いられる。攪拌室503は、攪拌用ファン511が配置された空間であり、攪拌用ファン511を回転させて空気を攪拌することにより、加熱室502内の温度分布を変化させる。攪拌用ファン511は、攪拌室503の側壁に取り付けられたモータ100によって駆動される。金網504は、加熱室502内の食品と攪拌用ファン511との干渉を防止し、また、ユーザの安全確保のために設けられたものであり、空気は、金網504を自在に通過することができる。
【0018】
モータ100は、攪拌用ファン511の駆動源であり、シャフト1を高温室501内に突出させた状態で、高温室壁面505の外面に取り付けられている。つまり、モータ100は、高温室501外に配置され、シャフト1は、高温室501側に向かって延び、高温室壁面505に形成された貫通孔506を貫通し、攪拌室503内に配置されたシャフト1の先端付近に攪拌用ファン511が取り付けられる。
【0019】
(B)モータ100の構成
図2は、実施の形態1によるモータ100の断面図であり、回転軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。
図3は、モータ100を構成する各部品を軸方向に分解した展開斜視図である。
【0020】
モータ100は、取付面としての高温室壁面505側に、シャフト1とともに回転する羽根車6を備えた自冷式モータであり、シャフト1が回転すれば、羽根車6が取付面近傍の高温空気を径方向外方へ排出する。このため、モータ100内部の温度上昇を抑制することができる。また、羽根車6が取付面からの輻射熱を遮蔽することにより、モータ100内部の温度上昇を抑制することができる。さらに、モータ100内を軸方向に貫通する流路を備え、取付面とは反対側から外気を取り入れ、モータ100内を取付面に向かって軸方向に貫通し、取付面近傍において径方向に排出される気流を生じさせることができる。このため、モータ100内の空気を低温の外気に入れ替えて、モータ100内部を冷却することができる。
【0021】
モータ100は、シャフト1にロータ2が固定され、ロータ2の径方向内方に間隙を介してステータ3を対向させたアウターロータ型モータである。モータ100は、オーブンレンジ500の高温室壁面505に固定される静止部と、当該静止部により回転可能に支持される回転部とにより構成される。回転部には、シャフト1、ロータ2及び羽根車6が含まれる。一方、静止部には、ステータ3、回路基板4、ハウジング5、軸受10及び軸受保持部11が含まれる。以下、これらの各部品について詳しく説明する。
【0022】
<シャフト1>
シャフト1は、軸方向(上下方向)に延びる略円柱状の部材であり、2つの軸受10により支持され、回転軸Jを中心として回転する。シャフト1の下端部は、ハウジング5から下方へ突出している。当該突出部は、高温室壁面505の貫通孔506に挿通され、高温室壁面505よりも先端側の位置に攪拌用ファン511が取り付けられる。
【0023】
<ロータ2>
ロータ2は、シャフト1とともに回転する部材であり、ロータホルダ20及びロータマグネット21により構成される。ロータホルダ20は、円筒部22及び底板部23により構成され、軸方向上方に上部開口25を有する有底円筒形状を有する。円筒部22は、略円筒形状を有し、ステータ3の径方向外側に配置される。底板部23は、円筒部22の下端から径方向内方に延びる板状の部材であり、ステータ3の下方に配置され、シャフト1に固定されている。ロータマグネット21は、ロータホルダ20の円筒部22の内周面に固定された永久磁石である。
【0024】
ロータホルダ20の底板部23には、シャフト1に対応する貫通孔2jが形成されるとともに、シャフト1よりも径方向外側にロータ通気口24が形成されている。ロータ通気口24は、例えば、径方向に延びる細長い形状を有する開口であり、2以上のロータ通気口24が周方向に等間隔で配置されている。このようなロータ通気口24を設けることにより、底板部23を貫通する軸方向の空気の移動が可能になり、ロータホルダ20内の空気を羽根車6側に排出することが可能になる。
【0025】
特に、ロータマグネット21の内周面よりも径方向内側に、ロータ通気口24を形成することにより、ロータホルダ20内を軸方向に流れる空気が、ロータ通気口24をスムーズに通過できる。また、ステータ3のコアバック30bの外周面よりも径方向外側に、ロータ通気口24を形成することにより、ロータホルダ20内を軸方向に流れる空気が、ロータ通気口24をスムーズに通過できる。
【0026】
<ステータ3>
ステータ3は、モータ100の電機子であり、ステータコア30及びコイル31により構成され、ロータ2の径方向内側に配置される。ステータ3は、略円環形状を有し、その外周面は間隙を介してロータマグネット21と径方向に対向する。
【0027】
ステータコア30は、例えば、ケイ素鋼板などの磁性鋼板を軸方向に積層した積層鋼板からなる。また、ステータコア30は、円環状のコアバック30bと、当該コアバック30bの外周面から径方向外方に突出する複数本のティース30tとを備えている。各ティース30tには、巻線が巻回され、コイル31が形成されている。コイル31に駆動電流を供給すれば、磁芯であるティース30tに径方向の磁束が発生する。このため、ティース30tとロータマグネット21との間に周方向のトルクが発生し、シャフト1が回転軸Jを中心として回転する。
【0028】
<回路基板4>
回路基板4は、コイル31に駆動電流を供給するための電子回路(不図示)を搭載した基板であり、略円形の板状体からなり、半導体素子を含む電子部品が搭載されている。また、磁気センサやコネクタを搭載することもできる。回路基板4は、その外径がロータホルダ20の外径よりも大きく、ロータ2の軸方向上側に配置され、ロータホルダ20の上部開口25と対向している。
【0029】
回路基板4には、シャフト1に対応する貫通孔4jが形成されるとともに、シャフト1よりも径方向外側に基板通気口4hが形成されている。例えば、周方向に延びる細長い開口が基板通気口4hとして形成される。このような基板通気口4hを設けることにより、回路基板4を貫通する軸方向の空気の移動が可能になる。
【0030】
基板通気口4hは、ロータホルダ20の円筒部22よりも径方向内側に配置され、ロータ2の上部開口25と対向する。このため、ロータ2の上部において良好な通気性を確保することができる。つまり、軸方向から見て、少なくともその一部がロータ2の上部開口25と重複するように基板通気口4hが形成されていれば、ロータ2の内部と、回路基板4の上側との間で、軸方向の通気性を確保することができる。
【0031】
また、回路基板4と、ロータホルダ20との間には、僅かな隙間しか設けられておらず、当該隙間を通る径方向の空気の流れが形成されるのを抑制している。例えば、ロータマグネット21の径方向の厚さよりも短い距離を隔てて、回路基板4をロータホルダ20の円筒部22の上端と対向させている。回路基板4及びロータホルダ20の隙間を狭小にし、当該隙間を通る径方向の空気の流れを抑制することにより、基板通気口4hを通る軸方向の空気の流れを優先させることができる。
【0032】
<軸受10>
軸受10は、シャフト1を回転自在に支持する部材であり、例えば、玉軸受が用いられる。2つの軸受10は、いずれもシャフト1に対して圧入固定され、軸受保持部11に対して隙間嵌めされる。これらの軸受10は、軸受保持部11内に固定されたスペーサ12を挟んで軸受保持部11内に収容される。
【0033】
<軸受保持部11>
軸受保持部11は、軸受10を収容するブラケットであり、亜鉛メッキ鋼板などの金属板をプレス加工することにより得られる。軸受保持部11は、ステータ3の内周面に圧入固定される円筒部11cと、円筒部11cの上端から径方向外方に延びるフランジ部11fとによって構成される。円筒部11c内には、略円筒形状のスペーサ12が収容されている。スペーサ12を軸受保持部11内に圧入することにより、2つの軸受10が軸受保持部11によって支持される。フランジ部11fは、ハウジング5の基部50よりも上方に配置されている。フランジ部11fの下面には、軸方向下方に延びるボス部11bが設けられ、当該ボス部11bがハウジング5の基部50の貫通孔50b内に配置されている。このため、フランジ部11fは、ハウジング5に対し回転不能に支持されている。
【0034】
<ハウジング5>
ハウジング5は、回路基板4よりも軸方向上方に配置される基部50と、ロータ2の径方向外側に配置されるカバー部51と、羽根車6よりも軸方向下方の高温室壁面505に取り付けられる取付部52とにより構成される。ハウジング5は、下方を開口させた有蓋円筒形状を有し、例えば、アルミニウム板等の金属板をプレス加工することによって容易に製作することができる。
【0035】
基部50は、カバー部51の上端から径方向内方に延びる略円形の板状体である。基部50は、軸受保持部11を介して、ステータ3及び2つの軸受10を支持している。基部50は、軸方向下方に突出する支持突起50pを有し、当該支持突起50pが回路基板4を支持している。回路基板4の上面は、隙間を介して、基部50の下面と対向する。支持突起50pは、例えば、基部50の切り起こし加工によって形成される。また、基部50には、軸受保持部11に対応する貫通孔5jが形成されるとともに、軸受保持部11よりも径方向外側に吸気口54が形成されている。基部50に吸気口54を設けることにより、外気をハウジング5内に取り入れることができる。
【0036】
カバー部51は、ロータ2及び回路基板4よりも径方向外側に配置された略円筒体である。カバー部51の内周面は、隙間を介して、ロータホルダ20の円筒部22の外周面と対向する。同様にして、カバー部51の内周面は、隙間を介して、回路基板4の外周面と対向する。カバー部51の上端は、基部50に連結されている。また、カバー部51の下端には、2以上の取付部52が設けられている。つまり、カバー部51は、2以上の取付部52を基部50と連結している。また、カバー部51の下方には、2以上の主排気口55が周方向に形成されている。さらに、カバー部51は、周方向の一部を径方向に開口させた副排気口57が形成されている。なお、本明細書では、基部50及び取付部51が、略円筒形のカバー部51によって連結される例について説明するが、カバー部51は円筒形以外の任意の形状であってもよい。また、ハウジング5がカバー部51を備えず、取付部51が基部50の外周縁部から軸方向下方に延びるように形成することもできる。
【0037】
取付部52は、取付面としての高温室壁面505に固定される部材であり、カバー部51の下端から径方向外方に延びる板状体からなる。例えば、2以上の取付部52が、周方向において等間隔となるように配置されている。取付部52には、ねじ孔52hが形成され、ねじを用いて、取付部52を高温室壁面505に固定することができる。つまり、取付部52の下面が高温室壁面505の外面に接触している状態で、モータ100は高温室壁面505に取り付けられる。
【0038】
<羽根車6>
羽根車6は、2以上の羽根60が形成された回転板61によって構成され、ロータ2の軸方向下方に配置され、その外径はハウジング5のカバー部51の内径よりも小さい。羽根車6は、取付部52の下端よりも軸方向上方に位置し、羽根車6がシャフト1とともに回転することにより、ロータ2及び高温室壁面505の間において、径方向外方に向かう気流を生じさせる。羽根車6は、例えば、金属板に対する打ち抜き加工等によって容易に製作することができる。
【0039】
回転板61は、シャフト1に固定された略円形の板状体である。回転板61の下面には2以上の羽根60が設けられ、シャフト1とともに、羽根60を回転させることができる。また、回転板61は、その外径がロータホルダ20の外径よりも大きく、軸方向に隙間を介して、ロータホルダ20の底板部23と対向するように配置されている。このため、高温室壁面505からの輻射熱を遮蔽し、ロータ2及び回路基板4の温度上昇を抑制することができる。また、回転板61には、シャフト1に対応する貫通孔6jが形成されるとともに、シャフト1よりも径方向外側に、通気用の開口63が形成されている。このような開口63を介して、回転板61を貫通する軸方向の空気の移動が可能になる。
【0040】
羽根60は、回転板61から軸方向下方に突出する略矩形の板状体であり、例えば、回転板61の切り起こし加工により形成される。当該加工によって回転板61に形成される切り起こし穴は開口63として利用することができる。羽根車6の回転板61上には、2以上の羽根60が、周方向に等間隔となるように配置されている。各羽根60は、回転軸Jと平行な板状体であり、径方向に延びるように配置されている。このため、シャフト1が回転すると、回転軸Jを中心として羽根60が回転し、遠心力を利用して径方向外方に向かう気流を生じさせることができる。また、当該気流は、シャフト1の回転方向にかかわらず、常に径方向外方に向かって流れる。さらに、径方向外方に向かう気流が発生することにより、羽根60の径方向内側は負圧になる。
【0041】
リブ62は、回転板61の強度を増大させるために、回転板61を部分的に湾曲させて形成された突起部であり、例えば、回転板61のプレス加工によって形成される。回転板61上には、2以上のリブ62が周方向において等間隔に整列配置されている。また、リブ62は、隣接する羽根60の間に配置され、回転板61に対し羽根60と同じ方向に突出し、径方向に延びる細長い形状を有している。このため、リブ62は、羽根60による径方向外方への気流の生成を促進させることができる。
【0042】
(C)モータ100の外観
図4〜
図8は、本実施の形態によるモータ100の一構成例を示した外観図である。
図4は、モータ100の正面図であり、副排気口57を径方向外側から見た様子が示されている。
図5は、モータ100の左側面図であり、
図4における左側から見た様子が示されている。
図6は、モータ100の平面図であり、軸方向上側から見た様子が示されている。
図7は、モータ100の底面図であり、軸方向下側から見た様子が示されている。
図8は、軸方向下方から見たときの羽根車6及びロータ2の位置関係が示されている。なお、
図4及び
図6のA−A切断線は、
図2の断面図を見ることができる切断線である。
【0043】
<ハウジング5の吸気口54>
図6を参照して、吸気口54について説明する。吸気口54は、ハウジング5の基部50に形成される開口である。例えば、2以上の略台形形状の開口が、吸気口54として形成される。また、支持突起の50pの切り起こし穴も吸気口54として利用することができる。このような吸気口54を設けることにより、基部50を貫通する軸方向の空気の移動が可能になり、軸方向上方の外気をハウジング5内に取り入れることができる。
【0044】
特に、基部50と回路基板4との間に隙間を形成することにより、吸気口54と基板通気口4hとの間において良好な通気性を確保することができる。また、吸気口54を基板通気口4hと対向させることにより、さらに良好な通気性を確保することができる。例えば、軸方向から見て、少なくとも一部が基板通気口4hと重複するように、基部50に吸気口54を形成すれば、吸気口54と基板通気口4hとの間において、良好な通気性を確保することができる。なお、基部50と回路基板4との間に隙間がない場合であっても、吸気口54を基板通気口4hと対向させれば、軸方向の通気性を確保することができる。
【0045】
<ハウジング5の主排気口55>
図4及び
図5を参照し、主排気口55について説明する。主排気口55は、ハウジング5のカバー部51の下方に形成される開口である。主排気口55は、モータ100を高温室壁面505に取り付けた状態における排気縁部56と高温室壁面505との隙間として形成される。排気縁部56は、カバー部51の下縁部であり、隣接する取付部52に挟まれた周方向の位置に形成される。つまり、主排気口55は、ハウジング5のカバー部51と、高温室壁面505との隙間として形成され、周方向において隣接する取付部52の間に位置し、ハウジング5の径方向内側と径方向外側とを連通する。このような主排気口55を設けることにより、羽根60によって生成された径方向外方に向かう気流を利用して、ハウジング5内の空気を主排気口55から外部へ排出し、ハウジング5内を冷却することができる。
【0046】
排気縁部56は、例えば、カバー部51の下端の切り欠き部として形成される。この場合、排気縁部56が取付部52の下端よりも軸方向上方に位置するため、取付部52を高温室壁面505に接触させた状態において、排気縁部56と、高温室壁面505との間に隙間が生じ、当該隙間が主排気口55となる。
【0047】
主排気口55からの排気を効率的に行うためには、主排気口55が、周方向に延びる細長い形状であることが望ましい。特に、取付部52の周方向の長さに比べ、主排気口55の周方向の長さをより大きくし、主排気口55の周方向の長さを増大させることが望ましい。また、カバー部51の周方向に2以上の排気縁部56を形成し、主排気口55の総面積を増大させることが望ましい。また、羽根60の外縁を排気縁部56と対向させることが望ましい。例えば、排気縁部56を羽根60の下端よりも軸方向上側に設ければ、羽根60の外縁の少なくとも一部を主排気口55と対向させることができ、排気を容易化することができる。
【0048】
さらに、モータ100を効率的に冷却するためには、排気縁部56に径方向外方に延びる鍔部を形成することが望ましい。当該鍔部を設けることにより、排出された高温の空気をモータ100から遠ざけることができ、ハウジング5の吸気口54、副排気口57等を介して、排気された高温空気がモータ100内に還流するのを抑制することができる。
【0049】
<ハウジング5の副排気口57>
図4及び
図6を参照し、ハウジング5の副排気口57について説明する。副排気口57は、ハウジング5の周方向の一部を破断させた開口として形成される。ハウジング5のカバー部51には、周方向に一定の幅を有し、軸方向に延びる副排気口57が形成される。このような副排気口57を設けることにより、ロータ2の回転を利用して、ロータ2よりも径方向外側のハウジング5内の空気を外部に排出し、ハウジング5内を冷却することができる。
【0050】
副排気口57の下端は、カバー部51の排気縁部56に達し、副排気口57は、主排気口55の一つと繋がっている。つまり、副排気口57は、周方向において隣接する取付部52の間に位置している。また、副排気口57の上端は、カバー部51の上端に達した後、さらに基部50に回り込み、吸気口54の一つと繋がっている。
【0051】
副排気口57による排気を効率的に行うためには、副排気口57の幅を周方向の半分未満にすることが望ましい。つまり、カバー部51の上端は、周方向の半分以上において基部50と連結されていることが望ましい。また、副排気口57は、周方向において1つだけ形成されていることが望ましい。
【0052】
<羽根車6の羽根60>
図7を参照して、羽根車6の羽根60について説明する。羽根60は、遠心力を利用して、径方向外方に向かう気流を発生させる。このため、羽根60の外周端は、より径方向外側に位置するほど、当該気流をより効率的に生成することができる。このため、羽根60の外周端は、より径方向外側に位置していることが望ましい。例えば、ロータホルダ20の円筒部22の外周面よりも径方向外側に位置していることが望ましい。図中では、羽根60の外縁を回転板61の外周縁と一致させている。
【0053】
また、負圧は、羽根60の外周端よりも径方向内側において発生する。このため、当該負圧を利用して、ロータ2内において軸方向の空気の移動を生じさせるためには、羽根60の外周端は、少なくともロータ通気口24よりも径方向外側に位置している必要がある。
【0054】
<羽根車6の開口63>
図7及び
図8を参照して、羽根車6の開口63について説明する。開口63は、羽根車6の回転板61に形成された通気用の開口であり、2以上の開口63が周方向において等間隔に配置されている。このような開口63を設けることにより、回転板61を貫通する軸方向の空気の移動が可能になる。
【0055】
開口63は、径方向に延びる細長い形状を有し、その一端は羽根60よりも径方向内側に位置する。例えば、羽根60が切り起こし加工により形成されている場合、羽根60の切り欠き穴は、羽根60に対し周方向に隣接して形成される。この場合、開口63は、当該切り欠き穴をさらに径方向内方に広げた形状にすることが望ましい。このような開口63を設けることにより、羽根60が回転して負圧が発生した場合に、回転板61を貫通し、軸方向下方に向かう気流を効果的に生じさせることができる。
【0056】
軸方向から見て、ロータ通気口24と重複するように開口63を形成すれば、ロータ通気口24と開口63との間において、良好な通気性を確保することができる。一方、両者が重複しないように開口63を形成すれば、高温室壁面505からの輻射熱を効果的に遮蔽することができる。このため、通気性を優先する場合には、両者が重複領域を有するように開口63が形成され、輻射熱の遮断を優先する場合には、両者が重複領域を有しないように開口63が形成される。
【0057】
図中では、軸方向から見て、開口63及びロータ通気口24が、概ね互いに隣接して配置され、通気性の確保と、輻射熱の遮断とをバランスさせている。具体的には、開口63は、ロータ通気口24よりも径方向外側に配置され、両者は、径方向において互いに隣接している。また、開口63及びロータ通気口24は、僅かに重複する領域を有しているが、ロータ通気口24の面積の半分以上が、回転板61により覆われているため、十分な遮蔽効果を得ることができる。
【0058】
(D)モータ100の冷却原理
図9〜
図13は、本実施の形態によるモータ100の冷却原理を説明するための図である。
図9〜
図12は、羽根車6の回転によって生じる気流F1〜F3を説明するための図であり、シャフト1、ロータホルダ20及び羽根車6による構成が簡略化して示されている。
図9及び
図10には、比較例の構成が示され、
図11及び
図12には、本実施の形態による構成例が示されている。
【0059】
ロータホルダ20及び羽根車6は、いずれもシャフト1に固定され、回転軸Jを中心として回転する。ロータホルダ20は、その底板部23にロータ通気口24が形成されている。また、当該底板部23の下方には、羽根車6が配置されている。羽根車6は、2以上の羽根60が設けられた回転板61からなり、各羽根60は、回転軸Jに平行、かつ、径方向に延びる形状を有している。また、回転板61には、図示しない開口63が形成されている。
【0060】
図9には、第1の比較例として、ロータ通気口24が羽根60よりも径方向外側に形成され、羽根車6の軸方向下方が開放されている構成が示されている。羽根車6が回転すれば、羽根60間の空気も回転し、その遠心力によって径方向外方に向かう気流F1が形成される。その結果、羽根60よりも径方向内側の気圧が低下し、羽根車6の中心付近が負圧になる。
【0061】
当該負圧により、羽根車6の軸方向上方又は下方の空気が、羽根車6の中心付近へ吸い込まれることになる。しかしながら、羽根車6の上方は、ロータホルダ20の底板部によって閉鎖されている。このため、開放されている軸方向下方から羽根車6の中心付近へ空気が流れ込む。つまり、羽根車6に向かって、シャフト1の近傍を軸方向上方へ流れる気流F2が形成される。ロータ通気口24は、羽根60よりも径方向外側に形成されているため、径方向外側に向かう気流F1の一部が、ロータ通気口24を介して、ロータホルダ20内に流れ込む。
【0062】
図10には、第2の比較例として、ロータ通気口24が羽根60よりも径方向内側に形成され、羽根車6の軸方向下方が開放されている構成が示されている。羽根車6が回転すれば、径方向外方に向かう気流F1が形成され、羽根車6の中心付近が負圧になる点は、
図9の場合と同様である。
【0063】
このとき、羽根車6の中心付近は、軸方向上方又は下方のいずれからも空気を吸い込むことができる。しかしながら、ロータ通気口24を介して空気を吸い込むのに比べ、開放された軸方向下方から空気を吸い込む方が容易である。このため、
図9の場合と同様、羽根車6に向かって、シャフト1の近傍を軸方向上方へ流れる気流F2が形成される。このとき、気流F2の一部が、ロータ通気口24を介して、ロータホルダ20内に流れ込む。
【0064】
図11には、本実施の形態による第1の構成例として、ロータ通気口24が羽根60よりも径方向内側に形成され、羽根60の軸方向下方が高温室壁面505で閉鎖されている構成が示されている。羽根車6が回転すれば、径方向外方に向かう気流F1が形成され、羽根車6の中心付近が負圧になる点は、
図9及び
図10の場合と同様である。
【0065】
シャフト1は、高温室壁面505の貫通孔506内に収容されているが、シャフト1の外周面と貫通孔506の内周面には、隙間が形成されていない。つまり、羽根車6の軸方向下方は、高温室壁面505によって閉鎖されている。このため、羽根車6の中心付近の負圧により、ロータ通気口24から軸方向下方へ流れる気流F2が形成される。
【0066】
つまり、ロータホルダ20内の空気が高温室壁面505側へ移動し、羽根車6に到達すれば、径方向外側へ向きを変えてハウジング5外へ排出される。高温室壁面505は高温になるため、その近傍には高温の空気が存在している。しかしながら、このような気流F1,F2を形成することにより、高温室壁面505近傍の空気がロータホルダ20内に流入するのを抑制することができる。また、ロータホルダ20内に軸方向上方から新たな外気を取り入れることができる。さらに、ロータ2内の空気とともに、高温室壁面505近傍の高温の空気をハウジング5外へ排出することができる。
【0067】
図12には、本実施の形態による第2の構成例として、ロータホルダ20よりも大きな外径を有する羽根車6を備える構成が示されている。ロータ通気口24、羽根60及び高温室壁面505の位置関係は、
図11の場合と同様であるため、気流F1及びF2は、
図11の場合と同様である。
【0068】
回転板61の外径は、ロータホルダ20の外径よりも大きいため、羽根車6の負圧によって、ロータホルダ20の径方向外側においても、軸方向下方へ流れる気流F3が形成される。負圧は、羽根60の外周端よりも内側において発生する。このため、羽根60の外周端が、ロータホルダ20の外周面よりも径方向外側にあれば、ロータホルダ20の径方向外側にも軸方向下方へ流れる気流F3を形成することができる。また、羽根車6の回転板61と、ロータホルダ20の底板部23との間に隙間があれば、当該隙間を径方向内方へ流れ、気流F2と合流する空気の流れとして気流F3が形成される。
【0069】
ただし、気流F3の流量や速度は、気流F2に比べて小さくなる。負圧は、羽根60の外周端よりも内側において発生し、羽根60の回転中心に近づくほど大きくなる。また、ロータホルダ20及び回転板61の隙間を径方向内方に移動する経路は複雑であり、空気が円滑に流れることができない。このため、ロータホルダ20外の気流F3は、ロータホルダ20内の気流F2に比べて、弱い空気の流れとして形成される。
【0070】
図13は、ロータ2の回転によって生じる気流F4を説明するための図であり、
図4のB−B切断線による切断面が簡略化して示されている。ロータホルダ20は、径方向の隙間を介して、ハウジング5と対向しており、ロータ2の径方向外側には、円筒形状の空間が形成されている。すなわち、軸方向において、回路基板4及び羽根車6で挟まれ、径方向において、ロータホルダ20の円筒部22とハウジング5のカバー部51で挟まれた円筒形状の空間が形成されている。
【0071】
当該円筒空間の空気は、ロータ2ととともに回転する。このため、ハウジング5のカバー部51に副排気口57が設けられていれば、遠心力によって、回転している空気の一部が、副排気口57を介して、ハウジング5外へ排出される。このため、ロータホルダ20の径方向外側の空気を冷却することができる。
【0072】
(E)モータ100内の空気の流れ
図14は、モータ100内における空気の流れの一例を示した説明図であり、モータ100内を軸方向に流れる気流Fa1及びFa2と、モータ100内を周方向に流れる気流Fbが示されている。
【0073】
<気流Fa1>
まず、軸方向の気流Fa1について説明する。気流Fa1は、モータ100の上部から取り込まれた外気が、ロータ2内を通り、軸方向下方に向かって移動し、高温室壁面505に沿って径方向外方へ排出される空気の流れであり、羽根車6の回転に起因して発生する。
【0074】
外気は、基部50の吸気口54を通って、ハウジング5内に取り込まれる。基部50は、高温室壁面505とは反対側に配置されているため、基部50に設けられた吸気口54から外気を導入することにより、高温室壁面505から離れた低温の外気をモータ100内に取り込むことができる。ハウジング5内に取り込まれた空気は、回路基板4の基板通気口4hを通って、上部開口25からロータホルダ20に入り、ロータホルダ20内を軸方向に移動する。
【0075】
ロータホルダ20内では、ロータマグネット21及びコアバック30bの間を軸方向下方に向かって空気が流れる。ロータマグネット21及びコアバック30bの間には、2以上のティース30tが配置されており、気流Fa1は、これらのティース30tの間に形成される。そして、ロータホルダ20の底板部23に到達した空気は、ロータ通気口24を通ってロータホルダ20から出る。
【0076】
ロータホルダ20から出た空気は、羽根車6の開口63を通って、羽根車6の軸方向下側に移動した後、径方向外方へ向きを変え、ハウジング5の主排気口55からモータ100外へ排出される。このとき、高温室壁面505に沿って移動するため、高温室壁面505近傍の高温の空気も主排気口55から排出される。
【0077】
基部50の吸気口54から羽根車6の開口63までの軸方向の空気の流れは、モータ100内を軸方向に貫通する経路が確保され、かつ、羽根車6が当該経路の軸方向下端に負圧を発生させることによって生成される。すなわち、モータ100では、吸気口54から入り、ロータホルダ20内を軸方向に貫通し、羽根車6の開口63を通る空気の経路が確保されている。また、羽根60が回転することにより、羽根60の外周端よりも径方向内側に負圧が発生する。このため、上記負圧により、上記経路を通って、上記軸方向下方に向かう気流が生じる。
【0078】
径方向外方に向かう空気の流れは、羽根車6が回転することによって生成される。高温室壁面505に沿って径方向外方へ空気が流れることにより、モータ100内を貫通した空気を主排気口55から排出することができる。また、高温室壁面505近傍の高温の空気も径方向外側へ排出することができ、高温の空気が軸方向上方に向かって移動し、ロータ2、回路基板4等の温度を上昇させるのを抑制することができる。
【0079】
<気流Fa2>
次に、軸方向の気流Fa2について説明する。気流Fa2は、モータ100の上部から取り込まれた外気が、ロータ2の径方向外側を軸方向下方に向かって移動した後、高温室壁面505に沿って径方向外方へ排出される空気の流れであり、羽根車6の回転に起因して発生する。
【0080】
回路基板4の上面は、基部50との間に隙間が形成されている。また、回路基板4の外周端も、カバー部51との間に隙間が形成されている。このため、基部50の吸気口54を通って、ハウジング5内に取り込まれた外気は、これらの隙間を通って、ロータホルダ20及びカバー部51によって挟まれた空間に入り、ロータホルダ20外を軸方向に移動する。そして、羽根車6に到達した空気は、羽根車6の開口63を通って、羽根車6の軸方向下側に移動した後、径方向外方へ向きを変え、ハウジング5の主排気口55からモータ100外へ排出される。つまり、気流Fa1と合流する。この様にして、低温の外気をモータ100内に取り入れ、ロータ2の径方向外側を軸方向に貫通させることにより、モータ100内を冷却することができる。
【0081】
<気流Fb>
次に、周方向の気流Fbについて説明する。気流Fbは、ロータ2の径方向外側で周方向に移動し、ハウジング5の側面から径方向へ排出される空気の流れであり、ロータ2の回転に起因して発生する。ロータホルダ20の円筒部22の径方向外側に供給される空気が、モータ100の上部から取り込まれる外気であることは、気流Fa2について説明した通りである。
【0082】
ロータ2が回転すれば、ロータホルダ20の円筒部22と、ハウジング5のカバー部51との隙間の空気が周方向に移動する。つまり、回転軸Jを中心として回転する。そして、副排気口57に到達した空気の一部は、遠心力により、副排気口57からハウジング5外へ排出される。
【0083】
(F)本実施の形態による作用効果
本実施の形態によるモータ100の構成及び動作は、上述した通りである。以下では、このような構成又は動作によって生じる作用効果について詳しく説明する。
【0084】
1−1)冷却構造
本実施の形態によるモータ100は、高温室壁面505に取り付けて使用するアウターロータ型モータであり、シャフト1とともに回転し、径方向外方に向かう気流を生じさせる羽根60が、ロータ2よりも高温室壁面505側に配置されている。また、ハウジング5は、高温室壁面505との間に主排気口55を形成する排気縁部56を備えている。さらに、高温室壁面505側に形成されるロータホルダ20の底板部23には、ロータ通気口24が形成されている。
【0085】
このような構成を採用することにより、モータ100内を効果的に冷却することができる。シャフト1が回転すれば、ロータ2及び高温室壁面505で挟まれた空間内の空気が主排気口55から排出されるとともに、羽根60の外周端よりも径方向内側の空間が負圧になる。このため、ロータホルダ20の底板部23に形成されたロータ通気口24を通って、ロータホルダ20内の空気が前記負圧空間へ移動する。つまり、ロータホルダ20内の空気は、ロータ通気口24を通って、高温室壁面505側へ流れ、高温室壁面505近傍の高温の空気とともに、主排気口55から径方向外方へ排出される。従って、高温室壁面505近傍の高温の空気がロータホルダ20内に侵入するのを防止するとともに、ロータホルダ20内に軸方向下方に向かう空気の流れを発生させ、モータ100内を冷却することができる。
【0086】
1−2)羽根60及びロータ通気口24の関係
本実施の形態によるモータ100は、羽根60の外周端がロータ通気口24よりも径方向外側に配置される。このような構成を採用することにより、羽根60の外周端よりも径方向内側に生じる負圧を利用して、ロータホルダ20内の空気を高温室壁面505側へ移動させることができる。
【0087】
1−3)羽根60及びロータホルダ20の関係
本実施の形態によるモータ100は、羽根60の外周端がロータホルダ20の円筒部22の外周面よりも径方向外側に配置されている。このような構成を採用することにより、径方向外方に向かう気流の速度を増大させ、モータ100内を効率的に冷却することができる。羽根60は、径方向外側に配置するほど回転時の周速が速くなる。このため、羽根60とともに回転する羽根60周辺の空気に作用する遠心力も大きくなり、径方向外方に向かう気流の流速も速くなる。従って、羽根60の外周端をロータホルダ20の外周面よりも径方向外側に配置することにより、モータ100内を効率的に冷却することができる。
【0088】
1−4)羽根60の形状
本実施の形態によるモータ100では、羽根60が、回転軸Jに平行な平板からなり、径方向に配置される。このような構成を採用することにより、遠心力を利用して径方向外方に向かう気流を形成することができる。また、シャフト1の回転が正回転及び逆回転のいずれであっても、径方向外方に向かう気流を形成することができる。
【0089】
1−5)ロータマグネット21とロータ通気口24の関係
本実施の形態によるモータ100は、ロータ通気口24が、ロータマグネット21よりも径方向内側に形成される。このような構成を採用することにより、ロータ通気口24に向かってロータホルダ20内を軸方向に移動する空気の流れを円滑にすることができる。
【0090】
ロータマグネット21は、ロータホルダ20の円筒部22の内周面に固定されている。このため、ロータホルダ20内における軸方向の空気の流れは、ロータマグネット21の内周面よりも径方向内側に形成される。従って、ロータ通気口24をロータマグネット21よりも径方向内側に形成すれば、ロータホルダ20内における空気の流路が直線的になり、空気を円滑に移動させることができる。
【0091】
1−6)ロータマグネット21とコアバック30bの関係
本実施の形態によるモータ100は、ステータ3が、環状のコアバック30bと、コアバック30bから径方向外方に延びる2以上のティース30tとを有し、ロータ通気口24が、コアバック30bよりも径方向外側に形成される。このような構成を採用することにより、ロータ通気口24に向かってロータホルダ20内を軸方向に移動する空気の流れを円滑にすることができる。
【0092】
コアバック30bは、軸受保持部11の外周面に固定されている。このため、ロータホルダ20内における軸方向の空気の流れは、コアバック30bの外周面よりも径方向外側、つまり、ティース30tの径方向内端よりも径方向外側に形成される。従って、ロータ通気口24をコアバック30bよりも径方向外側に形成すれば、ロータホルダ20内における空気の流路が直線的になり、空気を円滑に移動させることができる。
【0093】
1−7)ロータ通気口24の数
本実施の形態によるモータ100は、2以上のロータ通気口24が周方向に設けられている。このような構成を採用することにより、ロータホルダ20の底板部23を貫通する軸方向の空気の移動がスムーズになり、ロータホルダ20から羽根車6へ空気を円滑に移動させることができる。
【0094】
1−8)羽根車6の回転板61
本実施の形態によるモータ100は、羽根60及び回転板61によって構成される羽根車6を備えている。回転板61は、ロータホルダ20よりも軸方向下方に配置され、回転軸Jに垂直な平板形状を有し、シャフト1とともに回転する。羽根60は、回転板61から軸方向に突出している。このような構成を採用することにより、回転板61により、高温室壁面505からの輻射熱を遮断することができる。このため、輻射熱によってロータホルダ20が高温になるのを抑制することができる。
【0095】
1−9)回転板61とロータホルダ20の関係
本実施の形態によるモータ100は、回転板61が、ロータホルダ20の底板部23から離間して配置される。このような構成を採用することにより、回転板61及びロータホルダ20の間に隙間が形成され、輻射熱を遮断する回転板61の熱がロータホルダ20に伝わり難くすることができる。また、ロータ通気口24を通る空気の流れをスムーズにすることができる。
【0096】
1−10)羽根車6の加工方法
本実施の形態によるモータ100は、回転板61が打ち抜き加工された金属板からなり、羽根60が、回転板61の切り起こし加工により形成される。このような構成を採用することにより、1枚の金属板から羽根車6を容易に製作することができる。
【0097】
1−11)回転板61のリブ62
本実施の形態によるモータ100は、回転板61において、隣接する羽根60の間にリブ62が形成されている。このような構成を採用することにより、回転板61の強度を向上させることができる。また、リブ62は、径方向外方に向かう気流の生成にも寄与する。
【0098】
1−12)羽根60と回転板61の関係
本実施の形態によるモータ100は、羽根60が、回転板61から軸方向下方に突出している。このような構成を採用することにより、径方向外方に向かう気流を回転板61よりも高温室壁面505側に生じさせることができる。このため、高温室壁面505近傍の高温空気がロータホルダ20に近づくのを抑制することができる。
【0099】
1−13)羽根60と開口63の関係
本実施の形態によるモータ100は、回転板61において、羽根60の内周端よりも径方向内側に開口63が形成されている。このような構成を採用することにより、羽根60の回転によって生じる負圧を利用して、ロータホルダ20内の空気を高温室壁面505側へ移動させることができる。特に、開口63の内周端を羽根60の内周端よりも径方向内側に形成することにより、羽根60の外周端よりも径方向内側において、開口63としてより広い面積を確保することができる。従って、回転板61を貫通する空気の流量を増大させることができ、モータ内を効果的に冷却することができる。
【0100】
例えば、回転板61の一部を周方向に切り起こすことによって羽根60を形成する場合、羽根60に対し周方向に隣接して切り欠き穴が形成される。当該切り欠き穴を、さらに径方向内側に延ばして開口63として利用することにより、広い面積の開口63を確保することができる。
【0101】
1−14)羽根60と排気縁部56の関係(1)
本実施の形態によるモータ100は、羽根60の下端が、ハウジング5の排気縁部56よりも軸方向下方に位置する。つまり、羽根60の外周端の少なくとも一部が、主排気口55と対向する。このため、高温室壁面505に沿って径方向外方に向かう空気を円滑に移動させることができ、モータ100を効果的に冷却することができる。
【0102】
1−15)羽根60と排気縁部56の関係(2)
本実施の形態によるモータ100は、羽根60の上端が、ハウジング5の排気縁部56よりも軸方向下方に位置する。つまり、羽根60の外周端の全てが、主排気口55と対向する。このため、高温室壁面505に沿って径方向外方に向かう空気を円滑に移動させることができ、モータ100を効果的に冷却することができる。
【0103】
1−16)羽根60から高温室壁面505までの距離
本実施の形態によるモータ100は、羽根60の下端から取付部52の下端までの距離が、ロータホルダ20から回転板61までの距離よりも短い。このような構成を採用することにより、羽根60から高温室壁面505までの距離を短くすることにより、径方向外方に向かう気流によって、高温室壁面505近傍の高温空気を効果的に排出することができる。
【0104】
1−17)ロータ通気口24と開口63の関係
本実施の形態によるモータ100は、軸方向下方から見て、ロータ通気口24の面積の半分以上が、回転板61によって覆われている。つまり、軸方向下方から見て、開口63とロータ通気口24が重複する領域は、ロータ通気口24の面積の半分未満である。このような構成を採用することにより、高温室壁面505からの輻射熱を効果的に遮蔽することができる。特に、高温室壁面505からの輻射熱をより効果的に遮蔽しようとする場合であれば、ロータ通気口24の全体が、回転板61によって覆われるように構成することが望ましい。
【0105】
2−1)冷却構造
本実施の形態によるモータ100は、高温室壁面505に取り付けて使用するモータであり、シャフト1とともに回転し、径方向外方に向かう気流を生じさせる羽根60が、ロータ2よりも高温室壁面505側に配置されている。また、ハウジング5は、ロータ2よりも軸方向上方に配置された基部50と、羽根車6よりも軸方向下方の高温室壁面505に取り付けられる2以上の取付部と、基部50及び取付部52を連結するカバー部51とを備えている。さらに、基部50には吸気口54が形成されている。
【0106】
このような構成を採用することにより、モータ100内を効果的に冷却することができる。シャフト1が回転すれば、ロータ2及び高温室壁面505で挟まれた空間内の空気が主排気口55から排出される。このため、ハウジング5の基部50に形成された吸気口54から外気が取り込まれ、取り込まれた外気が、高温室壁面505に向かってハウジング5のカバー部51内を軸方向に移動する。従って、高温室壁面505近傍の高温空気を高温室壁面505に沿って径方向へ排出するとともに、高温室壁面505とは反対側の基部50から低温の外気を取り入れ、ロータホルダ20内に軸方向下方に向かう空気の流れを発生させ、モータ100内を冷却することができる。
【0107】
2−2)基板通気口4h
本実施の形態によるモータ100は、基部50及びロータ2の間に回路基板4を備え、当該回路基板4には、基板通気口4hが形成されている。このような構成を採用することにより、回路基板4を貫通する空気の経路を確保することができる。従って、吸気口54から取り込まれた外気は、高温室壁面505に向かって、ハウジング5のカバー部51内を軸方向に移動することができる。
【0108】
2−3)回路基板4と基部50の関係
本実施の形態によるモータ100は、回路基板4及び基部50の間に隙間が形成されている。このため、基部50の吸気口54から取り込まれた外気を回路基板4の基板通気口4hへ円滑に移動させることができる。特に、軸方向から見て、吸気口54及び基板通気口4hが十分な重複領域を有していない場合に好適である。
【0109】
2−4)基板通気口4hと吸気口54の関係
本実施の形態によるモータ100は、基板通気口4hが、軸方向上方から見て、吸気口54と少なくとも一部が重複する。このような構成を採用することにより、吸気口54から取り込まれた外気を基板通気口4hへ円滑に移動させることができる。
【0110】
2−5)基板通気口4hとロータホルダ20の関係
本実施の形態によるモータ100は、基板通気口4hの少なくとも一部が、ロータホルダ20の円筒部22よりも径方向内側に位置する。このような構成を採用することにより、吸気口54からハウジング5内に取り入れられ、基板通気口4hを貫通した外気をロータホルダ20内に導入することができる。従って、ロータホルダ20内を軸方向に貫通する空気の流れを形成することができ、モータ100内を効果的に冷却することができる。
【0111】
2−6)回路基板4とロータホルダ20の関係
本実施の形態によるモータ100は、回路基板4とロータホルダ20の隙間がロータマグネット21の径方向の幅よりも狭い。このような構成を採用することにより、回路基板4とロータホルダ20の隙間を通って、径方向外方からロータホルダ20内に空気が導入されるのを抑制することができる。
【0112】
外気は、吸気口54及び基板通気口4hを介して、ロータホルダ20内に導入される。このため、径方向外方から空気の導入を抑制し、軸方向上方からの空気の導入を促進することにより、モータ100を効果的に冷却することができる。特に、吸気口54は、高温室壁面505から離れた比較的低温の空気を取り込むことができるため、当該外気をロータホルダ20内に取り入れることにより、モータ100を効果的に冷却することができる。
【0113】
2−7)ロータホルダ20とカバー部51の関係
本実施の形態によるモータ100は、ハウジング5のカバー部51が、ロータホルダ20の径方向外側に配置され、ロータホルダ20との間に隙間が設けられている。このような構成を採用することにより、径方向外側の外気からロータホルダ20を遮断し、主排気口55から排出された高温空気がロータホルダ20に還流しづらくし、冷却効果を向上させることができる。
【0114】
2−8)基部50とカバー部51の関係
本実施の形態によるモータ100は、ハウジング5のカバー部51の上端は、周方向の半分以上において、基部50と連続している。このような構成を採用することにより、主排気口55から排出された高温空気がロータホルダ20に還流しづらくなり、冷却効果を向上させることができる。
【0115】
2−9)副排気口57
本実施の形態によるモータ100は、ハウジング5のカバー部51が、周方向の一部に副排気口57を有する。この様な構成を採用することにより、副排気口57を介して、ロータホルダ20の円筒部22及びハウジング5のカバー部51の間の空気をハウジング5の外部へ排出することができる。
【0116】
ロータ2の回転にともなって、ロータホルダ20の径方向外側の空気が周方向に回転する。このため、ハウジング5のカバー部51に副排気口57を形成することにより、遠心力を利用して、ロータホルダ20の径方向外側の空気をハウジング5の外部に排出することができる。例えば、主排気口55から排出されなかった高温空気をハウジング5の外部へ排出することができる。このため、モータ100内を効果的に冷却することができる。
【0117】
2−10)副排気口57と主排気口55の関係
本実施の形態によるモータ100は、ハウジング5の副排気口57が、ハウジング5の主排気口55と繋がっている。このような構成を採用することにより、副排気口57の軸方向の長さを長くすることができ、副排気口57からの排気をより効果的に行うことができる。
【0118】
2−11)副排気口57の数
本実施の形態によるモータ100は、ハウジング5の副排気口57が、周方向に1つだけ形成されている。このような構成を採用することにより、モータ100内を効果的に冷却することができる。周方向に1つの副排気口57のみを形成することにより、2以上の副排気口57を形成する場合に比べて、容易に排気を行うことができる。また、排出される空気の流速を増大させることができる。このため、高温の空気をより遠くに排出することができ、モータ100をより効果的に冷却することができる。
【0119】
2−12)副排気口57とロータホルダ20の関係
本実施の形態によるモータ100は、ハウジング5の副排気口57が、ロータホルダ20の円筒部22と径方向に対向する。副排気口57からの排気は、ロータホルダ20の外周上に位置する空気が周方向に回転することによって生じる遠心力を利用している。このため、副排気口57がロータホルダ20の円筒部22と径方向に対向することにより、副排気口57からの排気を効果的に行うことができる。
【0120】
2−13)羽根車6とカバー部51の関係
本実施の形態によるモータ100は、羽根車6の外径が、ハウジング5のカバー部51の内径よりも小さい。このような構成を採用することにより、モータ100を小型化することができる。
2−14)主排気口55と取付部52の関係
本実施の形態によるモータ100は、主排気口55の周方向の幅が、ハウジング5の取付部52の周方向の幅よりも広い。このような構成を採用することにより、主排気口55の周方向の幅を長くし、排気を効率的に行うことができる。また、取付部52の周方向の幅を短くすることにより、高温室壁面505との接触面積を減少させ、ハウジング5に伝わる熱を減少させることができる。
【0121】
実施の形態2.
上記実施の形態では、ハウジング5に副排気口57が形成されたモータ100の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、ハウジング5に副排気口57が形成されていないモータ101について説明する。
【0122】
図15は、本発明の実施の形態2によるモータ101の一構成例を示した図であり、モータ101を回転軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。本実施の形態にによるモータ101は、副排気口57を備えていない点を除き、実施の形態1によるモータ100と同一である。このため、対応する構成部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0123】
モータ101は、ハウジング5のカバー部51に副排気口57が形成されていない。このため、
図14に示した気流Fa1、Fa2及びFbのうち、軸方向の気流Fa1及びFa2は形成されるが、周方向の気流Fbは形成されない。すなわち、径方向においてロータホルダ20及びハウジング5で挟まれた空間では、ロータ2の回転に伴って、空気が周方向に回転するが、副排気口57を介して、空気が外部へ排出されることはない。
【0124】
本実施の形態によるモータ101は、副排気口57を備えておらず、ロータホルダ20の円筒部22は、全周にわたってハウジング5のカバー部51と対向する。つまり、ロータホルダ20の円筒部22は、ハウジング5のカバー部51により覆われている。
【0125】
実施の形態3.
上記実施の形態では、羽根60が回転板61から軸方向下方に突出するように形成されたモータ100,101の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、羽根60が回転板61から軸方向上方に突出するように形成されたモータ102について説明する。
【0126】
図16は、本発明の実施の形態3によるモータ102の一構成例を示した図であり、モータ102を回転軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。本実施の形態にによるモータ102は、羽根車6の形状を除き、実施の形態1によるモータ100と同一である。このため、対応する構成部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0127】
モータ102の羽根車6は、羽根60が回転板61から軸方向上方に突出している。このため、羽根車6が回転すれば、径方向外方に向かう気流が、回転板61の軸方向上側に形成される。従って、ロータ通気口24を介して、軸方向下方に向かって移動する空気は、回転板61の開口63を通ることなく、径方向外方へ向きを変え、主排気口55から排出される。このため、羽根車6の開口63を通って排出されるモータ100の場合に比べ、軸方向の空気の移動をより円滑にすることができる。
【0128】
実施の形態4.
上記実施の形態では、ロータホルダ20及び羽根車6が軸方向に隙間を介して配置されたモータ100〜102の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、羽根車6がロータホルダ20の底板部23と接触しているモータ103について説明する。
【0129】
図17は、本発明の実施の形態4によるモータ103の一構成例を示した図であり、モータ103を回転軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。本実施の形態にによるモータ103は、軸方向における羽根車6の位置を除き、実施の形態1によるモータ100と同一である。このため、対応する構成部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0130】
モータ103の羽根車6は、ロータホルダ20に接触させた状態でシャフト1に固定されている。つまり、羽根車6の回転板61と、ロータホルダ20の底板部23との間に隙間が形成されていない。このため、モータ103は、モータ100に比べて、軸方向の長さを短くすることができ、小型化することができる。なお、羽根車6及びロータホルダ20の間に隙間が形成されていないため、羽根車6の開口63は、ロータ通気口24と重複する領域を有するように形成される。このような構成を採用することにより、モータ103内を効果的に冷却しつつ、モータ103の軸方向の長さを短くすることができ、モータ103を小型化することができる。
【0131】
実施の形態5.
上記実施の形態では、羽根車6が1枚の回転板61により構成されるモータ100〜103の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、羽根車6が、2枚の回転板61a,61bにより構成されるモータ104について説明する。
【0132】
図18は、本発明の実施の形態5によるモータ104の一構成例を示した図であり、モータ104を回転軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。本実施の形態にによるモータ104は、羽根車6の形状を除き、実施の形態1によるモータ100と同一である。このため、対応する構成部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0133】
モータ104の羽根車6は、ロータ2側に配置された上回転板61aと、高温室壁面505側に配置された下回転板61bと、上回転板61a及び下回転板61bに挟まれた2以上の羽根60により構成される。
【0134】
上回転板61a及び羽根60は、実施の形態1によるモータ100の羽根車6に相当する。例えば、羽根60は、上回転板61aを切り起こし加工することにより形成され、開口63が形成される。
【0135】
一方、下回転板61bは、遮蔽板として使用される。つまり、高温室壁面505からの輻射熱は、上回転板61a及び下回転板61bによって遮蔽される。下回転板61bにも開口63を形成する場合、軸方向から見て、上回転板61aの開口63と重複しないように形成することにより、効果的に輻射熱を遮蔽することができる。また、下回転板61bに開口63を形成しなければ、より効果的に輻射熱を効果的に遮蔽することができる。
【0136】
本実施の形態によるモータ104は、羽根車6が、2以上の羽根60を上回転板61a及び下回転板61bで挟んで形成される。このような構成を採用することにより、高温室壁面505からの輻射熱をより効果的に遮蔽することができる。
【0137】
実施の形態6.
上記実施の形態では、羽根60が回転板61に設けられているモータ100〜104の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、羽根60が、ロータホルダ20に設けられているモータ105について説明する。
【0138】
図19は、本発明の実施の形態6によるモータ105の一構成例を示した図であり、モータ105を回転軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。本実施の形態にによるモータ105は、羽根車6を備えておらず、羽根60がロータホルダ20に設けられている点を除き、実施の形態1によるモータ100と同一である。このため、対応する構成部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0139】
モータ105は、回転板61を備えておらず、羽根60がロータホルダ20の円筒部22の外周面に取り付けられている。このため、ロータ2の回転に伴って羽根60も回転し、径方向外方に向かう気流が発生する。
【0140】
羽根60の下端は、羽根60の外周端の一部は、主排気口55と対向している。このため、径方向外方に向かう気流は、主排気口55を通って、ハウジング5外へ円滑に移動することができる。また、ロータホルダ20の底板部23よりも軸方向下方に配置されているため、当該気流は、ロータホルダ20よりも軸方向下方に形成され、ロータホルダ20の底板部23の下側に負圧が発生する。従って、ロータ通気口24を介して、ロータホルダ20内に軸方向の空気の流れを生じさせることができる。
【0141】
本実施の形態によるモータ105は、羽根60が、ロータホルダ20の円筒部22の外周面に設けられ、その下端がロータホルダ20の底板部23の下面よりも軸方向下方に位置している。このような構成を採用することにより、モータ103内を効果的に冷却しつつ、軸方向の長さを短くすることができ、モータ103を小型化することができる。
【0142】
なお、上記実施の形態では、モータ100〜105をオーブンレンジ500の攪拌用ファン511の駆動源として使用する場合の例について説明するが、本発明によるモータは、このような用途のみに限定されない。すなわち、本発明は、高温環境下において使用される種々のモータ、特に、高温の取付面に取り付けられるモータに適用することができる。また、取付面は平坦でなくてもよく、取付面への取付方法も任意であり、上記実施の形態における例示に限定されない。
【0143】
また、本実施の形態では、アウターロータ型モータの例について説明したが、本発明は、ロータ2の径方向外方に間隙を介してステータ3を対向させたインナーロータ型モータにも適用することができる。