(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372662
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】研磨パッド固定用テープおよび研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/12 20120101AFI20180806BHJP
B24B 37/22 20120101ALI20180806BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
B24B37/12 D
B24B37/22
H01L21/304 622F
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-205167(P2014-205167)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2016-74052(P2016-74052A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 智浩
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0002027(US,A1)
【文献】
米国特許第7549914(US,B2)
【文献】
特開平8−203849(JP,A)
【文献】
特開2000−306870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/11 − 37/26
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドと研磨装置との間に設けられてこれらを接着固定する研磨パッド固定用テープであって、
弾力性を有する素材によって構成されたシート状のテープ基材と、当該テープ基材の表面に設けられて研磨パッドに接着されるパッド側接着層と、テープ基材の裏面に設けられて研磨装置に接着される装置側接着層とを有する研磨パッド固定用テープにおいて、
上記装置側接着層に上記当該装置側接着層の側部まで連続する溝を形成し、
上記装置側接着層を上記研磨装置に接着すると、上記溝が解消されて当該装置側接着層全体が研磨装置に密着することを特徴とする研磨パッド固定用テープ。
【請求項2】
上記テープ基材における上記装置側接着層側の面に、上記装置側接着層の溝と同じ位置に溝を設け、
上記装置側接着層を上記研磨装置に接着すると、上記テープ基材が変形して上記溝が解消されることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド固定用テープ。
【請求項3】
上記テープ基材は、内部に厚み方向に延びる無数の縦長気泡が形成された発泡構造を有する軟質ポリウレタンからなり、
上記装置側接着層を上記研磨装置に接着すると、上記気泡が研磨装置側に伸びて上記テープ基材の変形を許容することを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド固定用テープ。
【請求項4】
上記テープ基材は、湿式凝固法により得られた軟質ポリウレタンであることを特徴とする請求項3に記載の研磨パッド固定用テープ。
【請求項5】
上記溝がエンボス加工によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の研磨パッド固定用テープ。
【請求項6】
被研磨物を研磨する研磨面とは反対側の面に研磨パッド固定用テープが装着された研磨パッドにおいて、
上記請求項1ないし請求項5のいずれかに記載された研磨パッド固定用テープを備えることを特徴とする研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッド固定用テープおよび研磨パッドに関し、詳しくは研磨パッドと研磨装置との間に設けられてこれらを接着固定させる研磨パッド固定用テープおよび当該研磨パッド固定用テープを備えた研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウエハなどの被研磨物を研磨する研磨装置には樹脂製の研磨パッドが設けられ、この研磨パッドは作業者の手作業によって研磨装置に装着されるようになっている。
上記研磨パッドにおける被研磨物を研磨する研磨面とは反対側の面には、上記研磨装置に接着固定するための研磨パッド固定用テープが設けられ、このような研磨パッド固定用テープとして、弾力性を有する素材によって構成されたシート状のテープ基材と、当該テープ基材の表面に形成されて研磨パッドと接着されるパッド側接着層と、テープ基材の裏面に形成されて研磨装置と接着される装置側接着層とを有したものが知られている(特許文献1、2)。
上記研磨パッドは研磨パッド固定用テープが予め接着固定された状態で研磨装置に装着されるようになっており、その際作業者は上記装置側接着層の端部より気泡が入り込まないように研磨装置に密着させる必要がある。
しかしながら、上記研磨パッドと研磨装置との接触面積は広く、上記気泡による空気溜まりを発生させずに研磨パッドを研磨装置に装着するのは困難となっている。
そこで上記特許文献1の研磨パッド固定用テープは、その表面および裏面に溝を備え、また特許文献2の研磨パッド固定用テープでは上記テープ基材から装置側接着層に貫通する貫通孔を備えており、これらによって上記空気溜まりの発生を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−100155号公報
【特許文献2】特許第5213204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1にかかる研磨パッド固定用テープの場合、上記パッド側接着層側にも溝が形成されているため、パッド側接着層における研磨パッドとの接着面積が少なく、研磨作業中に研磨パッドがパッド側接着層より剥離してしまう恐れがある。
一方、特許文献2にかかる研磨パッド固定用テープの場合、装置側接着層の貫通孔によって研磨装置との接着面積が少なくなってしまい、研磨作業中に装置側接着層が研磨装置から剥離してしまう恐れがある。
このような問題に鑑み、本発明は空気溜まりの発生を防止しつつ、研磨パッドをより強固に研磨装置に接着固定することが可能な研磨パッド固定用テープおよび当該研磨パッド固定用テープを備えた研磨パッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1の発明にかかる研磨パッド固定用テープは、研磨パッドと研磨装置との間に設けられてこれらを接着固定する研磨パッド固定用テープであって、
弾力性を有する素材によって構成されたシート状のテープ基材と、当該テープ基材の表面に設けられて研磨パッドに接着されるパッド側接着層と、テープ基材の裏面に設けられて研磨装置に接着される装置側接着層とを有する研磨パッド固定用テープにおいて、
上記装置側接着層に上記当該装置側接着層の側部まで連続する溝を形成し、
上記装置側接着層を上記研磨装置に接着すると、上記溝が解消されて当該装置側接着層全体が研磨装置に密着することを特徴としている。
また請求項6の発明にかかる研磨パッドは、被研磨物を研磨する研磨面とは反対側の面に研磨パッド固定用テープが装着された研磨パッドにおいて、
上記請求項1ないし請求項5のいずれかに記載された研磨パッド固定用テープを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1の発明によれば、上記研磨パッド固定用テープの上記装置側接着層を上記研磨装置に接着すると、当該装置側接着層に形成された溝が解消されるため、装置側接着層全体が研磨装置に密着するため、空気溜まりの発生を防止しつつ接着面積を確保することができ、一方ではパッド側接着層が研磨パッドに密着するため、研磨パッドの剥離を防止することができる。
また請求項6の発明によれば、上記請求項1ないし請求項5のいずれかに記載された研磨パッド固定用テープを備えているため、空気溜まりの発生を防止しつつ接着面積を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施例にかかる研磨パッドおよび研磨パッド固定用テープの断面図。
【
図2】研磨パッド固定用テープを装置側接着層側より見た底面図。
【
図3】
図1に示す研磨パッドおよび研磨パッド固定用テープを研磨定盤に装着した状態を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1は半導体基板等の被研磨物の表面を研磨する研磨装置に装着される研磨パッド1を示し、当該研磨パッド1は研磨装置に固定するための研磨パッド固定用テープ2を備えている。
上記研磨パッド固定用テープ2は研磨パッド1における被研磨物を研磨する研磨面とは反対側の面に接着されており、上記研磨装置を使用する際には上記研磨パッド固定用テープ2が研磨装置に接着固定されるようになっている。
上記研磨パッド1は例えば直径500mm程度の円盤状を有した樹脂製の部材であって、従来公知のものを使用可能であることから詳細な説明については省略する。
【0009】
上記研磨パッド固定用テープ2は上記研磨パッド1と同径に形成された円盤状を有しており、弾力性を有する素材によって構成されたシート状のテープ基材3と、当該テープ基材3の表面に設けられて研磨パッド1に接着されるパッド側接着層4と、テープ基材3の裏面に設けられて研磨装置に接着される装置側接着層5とから構成されている。
上記テープ基材3は柔軟性を有する軟質ウレタンによって構成されており、特開2011−51074号公報に記載されるような無数の気泡3aが形成された微多孔構造を有する軟質ウレタンシートを利用することが望ましく、さらにはA硬度を10〜50、厚みを50〜500μmの範囲で設定することがより好ましい。なお、本明細書中において、A硬度は、JIS K 7311に記載の方法に準じて測定した値を用いており、厚みは、JIS K 6550に記載の方法に準じて測定した値を用いている。
上記公報に記載された素材からなるテープ基材3の内部では、上記気泡3aが厚み方向に縦長に形成され、テープ基材3を厚さ方向に圧縮変形させた場合に、元の形状に復帰する際の戻り幅を大きくすることができる。
なお上記テープ基材3として上記軟質ウレタンを例示したが、適度な弾力性を有していればポリエステルやポリエチレン等を用いることも可能である。ただし、適度な弾力性を考慮すれば、湿式凝固法により形成される、厚み方向に延びる無数の縦長気泡が形成された発泡構造を有することが好ましい。
【0010】
本実施例におけるパッド側接着層4および装置側接着層5はいずれも両面テープによって構成され、これらパッド側接着層4および装置側接着層5の厚みを25〜60μmの範囲とすることが好ましい。
本実施例のパッド側接着層4は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる芯材11の表面および裏面に、それぞれアクリル系粘着剤等の感圧型の粘着剤12が形成されたものとなっており、上記装置側接着層5は芯材を用いない両面テープとなっている。
そして上記研磨パッド固定用テープ2を製造する際、上記テープ基材3に上記パッド側接着層4および装置側接着層5を構成する両面テープを貼り合わせる作業は、機械によって行われるようになっており、これらの間にいわゆる空気溜まりは形成されないようになっている。
またパッド側接着層4および装置側接着層5における上記テープ基材3とは反対側の粘着剤12は剥離紙で覆われており、上記研磨パッド1や研磨装置に接着される際に除去されるようになっている。
なお、本実施例のパッド側接着層4は、上記機械による貼り合わせ作業に用いやすくするため、PET製の芯材11を有する両面テープとし、装置側接着層5はテープ基材3に追従しやすく、後述する溝6の成形が施しやすい芯材を用いない両面テープとしているが、その他の構成を有したものであってもよい。
例えば、上記芯材11として不織布を用いた両面テープを使用することも可能である。また、パッド側接着層4を芯材を用いない両面テープとすることや、装置側接着層5をPET製の芯材11を有する両面テープとしてもよい。
【0011】
そして、本実施例にかかる研磨パッド固定用テープ2は、上記テープ基材3に形成した上記装置側接着層5に、当該装置側接着層5の側部にまで連続する溝6を形成したものとなっている。
上記溝6は後述するようにエンボス加工によって装置側接着層5ごと上記テープ基材3を変形させることによって形成され、これによりテープ基材3における装置側接着層5側の面にも溝が形成されるようになっている。
また上記溝6の平面形状は、
図2(a)に示す放射状のものや、(b)に示す格子状のものとすることができ、そのほかにも上記溝6の端部が装置側接着層5の側部まで連続して形成されていれば、他のパターンを有していてもよい。
そして上記溝6は、深さを20〜100μmの範囲、幅を100〜500μmの範囲で形成するのが好ましく、さらに溝6を格子状に形成する場合、各溝6のピッチを1〜10mmの範囲で形成するのが好ましい。
【0012】
本実施例の溝6はエンボス加工によって成形することができ、上記テープ基材3に上記パッド側接着層4及び装置側接着層5としての両面テープを装着した状態で、上記装置側接着層5側の面を上記溝6のパターンが凸状に形成された治具に密着させる。
その状態で、平坦な押圧部材を上記パッド側接着層4側から所定の圧力で押圧し、これにより上記装置側接着層5と一体的に上記テープ基材3における装置側接着層5側の面を圧縮変形させ、上記溝6を形成する。
このとき、上記テープ基材3におけるパッド側接着層4側の面は、上記押圧部材が平坦であることから、押圧しても平坦を維持するようになっている。
【0013】
このようにして上記溝6の形成された上記研磨パッド固定用テープ2は、上記パッド側接着層4によって上記研磨パッド1に接着され、その際上記研磨パッド1と研磨パッド固定用テープ2とは機械によって厚さ方向に圧縮されながら端部より接着されるようになっており、これらの間に空気溜まりが形成されないようになっている。
一方、研磨パッド固定用テープ2の装着された研磨パッド1は、作業者の手作業によって研磨装置の研磨定盤13(
図3参照)に装着されるようになっており、研磨パッド固定用テープ2の装置側接着層5を、その端部から徐々に研磨装置の研磨定盤に接着させる。
その際、作業者は研磨パッド1を研磨定盤13に押し当てて、研磨パッド固定用テープ2と研磨定盤13との間の空気を排出しながら接着させ、これにより上記空気が上記装置側接着層5の側部まで連続して形成された上記溝6より排出され、空気溜まりの発生が可及的に防止されるようになっている。
【0014】
一方、研磨パッド固定用テープ2を研磨定盤13に押し当てることで、研磨パッド固定用テープ2が厚さ方向に圧縮されて変形し、特に上記テープ基材3と装置側接着層5とに形成された溝6の周囲が変形することにより当該溝6の底部だった部分が上記研磨定盤13に接触し、当該溝6が解消される。
その後、作業者からの圧力が解消されることでテープ基材3は元の形状に復帰しようとするが、上記装置側接着層5における溝6の形成されていた部分が研磨定盤13に接着された状態を維持しようとするため、上記溝6が解消された状態が維持されることとなる。
具体的には、上記テープ基材3における上記溝6の形成されていた部分では、上記テープ基材3を構成する素材が溝6の形状を復元させようとする力と、上記装置側接着層5が研磨定盤13に接着した状態を維持しようとする力とが作用し、上記溝6の形成されていた部分には厚さ方向に引っ張り応力が発生する。
特に本実施例のテープ基材3は厚さ方向に延びる気泡3aを多数備えており、上記溝6の形成された部分における気泡3aは上記エンボス加工によって厚さ方向に圧縮されていることから厚さ方向に伸びやすく、上記溝6が良好に解消されるようになっている。
そして、このように上記研磨パッド固定用テープ2に形成した溝6が解消されることにより、
図3に示すように研磨パッド固定用テープ2と研磨定盤13との間に空気溜まりを発生させることなく、その全面を上記研磨定盤13に密着させることが可能となっている。
【0015】
上記構成を有する研磨パッド固定用テープ2、もしくは当該研磨パッド固定用テープ2が装着された研磨パッド1によれば、上記パッド側接着層4および装置側接着層5の全面が研磨パッド1および研磨装置に密着するため、接着面積を広く確保して強固に接着固定することができる。
これに対し、上記特許文献1、2の研磨パッド固定用テープでは、研磨パッドとの接着面や研磨装置との接着面に溝や貫通孔が形成されているため、空気溜まりの発生を防止することができるものの、接着面積が狭くなるため、研磨作業中に研磨パッド固定用テープから研磨パッドが剥離したり、研磨パッド固定用テープごと研磨パッドが研磨装置から脱落する恐れがあった。
【0016】
なお、上記実施例における溝6はエンボス加工によって形成したものとなっているが、上記溝形状を形成できるものであれば加工方法は問わない。
また、予めテープ基材3に切削等によって溝を形成し、当該溝に沿って上記装置側接着層5を装着することによっても上記溝6を形成することができる。このような構成とした場合であっても、上記装置側接着層5を研磨装置に接着することにより、当該研磨装置に密着した装置側接着層5によってテープ基材3が厚さ方向に伸び、上記溝6を解消することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 研磨パッド 2 研磨パッド固定用テープ
3 テープ基材 3a 気泡
4 パッド側接着層 5 装置側接着層
6 溝