特許第6372679号(P6372679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000002
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000003
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000004
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000005
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000006
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000007
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000008
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000009
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000010
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000011
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000012
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000013
  • 特許6372679-レトルト食品用容器 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372679
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】レトルト食品用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/04 20060101AFI20180806BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20180806BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20180806BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20180806BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B65D77/04 B
   B65D81/26 C
   B65D81/24 K
   B65D77/20 E
   B65D1/02 111
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-247828(P2013-247828)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105116(P2015-105116A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】 田口 傑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−099377(JP,A)
【文献】 特開2001−146260(JP,A)
【文献】 特表平09−504253(JP,A)
【文献】 特開2012−206736(JP,A)
【文献】 特開2004−231277(JP,A)
【文献】 特開2006−341857(JP,A)
【文献】 特開平10−211972(JP,A)
【文献】 特開2002−362611(JP,A)
【文献】 特開2008−290746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00 − 79/02
B65D 1/02
B65D 81/24 − 81/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立可能な有底筒状の容器本体(1)と、該容器本体(1)の上端の開口部(6)を密閉する蓋体(13)を有するレトルト食品用の合成樹脂製容器であって、前記容器本体(1)を、筒状の主体部(2)と該主体部(2)の下端を塞ぐ底部(3)で構成し、前記主体部(2)と底部(3)の壁の一部の範囲に、前記容器本体(1)内に発生した減圧を吸収する減容機能部分(8)を形成し、該減容機能部分(8)は、撓み変形し易い内壁層(9)と自己形状保持能力を有する外壁層(10)の間に、それらの少なくとも一方に対して接着しない剥離層(11)を設けた離反可能な二重壁構造であると共に、該減容機能部分(8)における内壁層(9)の下端部に対向する外壁層(10)部分に、該内壁層(9)との間に浸入した湯水を排出可能な連通孔(12)を開孔させた構成であることを特徴とするレトルト食品用容器。
【請求項2】
離層(11)を、減容機能部分(8)に要求される減圧吸収量に合わせて設定した範囲として設けた請求項1に記載のレトルト食品用容器。
【請求項3】
連通孔(12)を、延伸成形された底部(3)の脚部(4)の外壁層(10)に開設した請求項1または2に記載のレトルト食品用容器。
【請求項4】
脚部(4)に開設した連通孔(12)を、前記脚部(4)の下端部である接地部分(4a)から主体部(2)に向かって立ち上がるヒール部分(4b)にかけて設けた請求項3に記載のレトルト食品用容器。
【請求項5】
脚部(4)に開設した連通孔(12)を、複数個とした請求項3に記載のレトルト食品用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品である内容物をレトルト処理する、さらにはレトルト処理した内容物を収容保持する合成樹脂製のレトルト食品用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のレトルト食品用容器の従来技術として、例えば特許文献1に示されているものがある。この従来技術のレトルト食品用容器は、カップ状の容器本体の上端開口部に密に組み付けられる蓋材を、中央の平板状部分と、周端の密着部分との間の壁部分を、蛇腹壁構造の減容機能部分に構成している。容器内に減圧が発生した場合には、蓋材の減容機能部分が延び変形して、蓋材の中央部分が容器本体の内方に陥没変位し、これにより密閉された容器本体内を減容させて、容器本体内に発生した減圧を吸収し、もって容器本体に不良変形が発生しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−109132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載された従来技術にあっては、容器内の減圧が発生した場合、確かに蓋材の減容機能部分の延び変形により、容器本体に不良変形を生じさせることなく、発生した減圧を吸収することができるのであるが、蓋材の変形、すなわち蓋材の中央部分の陥没変形が容器の外観として現出され、これが商品としての容器の外観体裁に違和感を生じる、と云う問題があった。
【0005】
この問題点を解消する手段として、容器を内層と外層の積層構造として、内層が外層から剥がれて、容器内に発生した減圧を減容により吸収すると云う案があった。この案は、確かに減圧吸収のために容器の外観体裁に変化を生じさせると云うことを無くすことができるのであるが、剥がれた内層と外層の間に、レトルト処理時およびレトルト処理後等に湯水が浸入してしまい、この湯水の排出が困難となると云う不具合があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点や不具合を無くすべく創案されたもので、容器内に発生した減圧を、容器下端からの外気の吸入による、一定した減容変形により吸収することを技術的課題とし、もって容器の外観体裁を変化させることなく、発生した減圧を吸収し、かつ浸入した湯水の確実で速やかな排出を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の手段の主たる構成は、
自立可能な有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端の開口部を密閉する蓋体を有するレトルト食品用の合成樹脂製容器であること、
容器本体を、筒状の主体部とこの主体部の下端を塞ぐ底部で構成し、主体部と底部の壁の一部の範囲に、容器本体内に発生した減圧を吸収する減容機能部分を形成すること、
この減容機能部分は、撓み変形し易い内壁層と自己形状保持能力を有する外壁層の間に、それらの少なくとも一方に対して接着しない剥離層を設けた離反可能な二重壁構造であると共に、減容機能部分における内壁層の下端部に対向する外壁層部分に、該内壁層との間に浸入した湯水を排出可能な連通孔を開孔させた構成であること、
にある。
【0008】
合成樹脂製の容器本体および蓋体は、レトルト処理される食品等の内容物を収容する耐熱容器を構成するものであるので、いずれも耐熱性をる合成樹脂材料で製作されている。
【0009】
容器本体を構成する主体部と底部の壁の一部の範囲に形成された減容機能部分は、レトルト処理後の内容物の収縮等により容器内に発生した減圧を、この減容機能部分の容器内における容量変化により吸収するものである。すなわち、容器内で減容機能部分の容量が増大変化すると、減容機能部分以外の、減圧が発生している容器内部容量が相対的に減少し、これにより発生した減圧が吸収されて消滅する。
【0010】
減容機能部分は、下端部に設けた連通孔を通して、内壁層と外壁層の間に生じる空間を容器本体に開放させているので、容器内に減圧が発生すると、この減圧に従って内壁層と外壁層の間に空気を吸入しながら、内壁層が外壁層から離れて内方に変形変位して容器内の内容物収容空間の容量を減少させる。この収容空間の容量減少により、容器内部に発生した減圧を吸収する。
【0011】
この減容機能部分の減圧吸収状態、すなわち内壁層が外壁層から離れて両者の間に空間が形成された状態において、内壁層と外壁層の間の空間にレトルト処理に伴う湯水が浸入したとしても、この浸入した湯水は、減容機能部分の下端に位置する連通孔を通して、自重により確実に外部へ流出するので、この湯水の排出ができなくなると云う不具合は発生しない。
【0012】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、減容機能部分における内壁層と外壁層の間に、内壁層と外壁層の少なくとも一方に対して接着しない剥離層を、要求される減圧吸収量に合わせて設定した範囲として設けたことを、加えたものである。
【0013】
減容機能部分の内壁層と外壁層の間に、上記のように設定した範囲で剥離層を設けたものにあっては、簡単な構成で減容機能部分における内壁層と外壁層の層間剥離を確実に生じさせることができる。そして、容器本体内減圧が発生した際に、この減圧に対応して減容機能部分における内壁層と外壁層の層間剥離が確実に引き起こされて容器本体減容化容器本体の内部に発生した減圧状態を消滅させることができる。
【0014】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、連通孔を、延伸成形された底部の脚部の外壁層に開設したことを、加えたものである。
【0015】
伸成形された脚部の外壁層に連通孔を開設したものにあっては、脚部自立機能を有する容器本体の最下端部に配置される部分であるので、この脚部に開設された連通孔は、必然的に容器本体の下端部に位置することになり、これにより減容機能部分に浸入した湯水の確実な排出を得ることができる。
【0016】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、延伸成形された底部の脚部の外壁層に開設する連通孔を、脚部の下端部である接地部分から主体部に向かって立ち上がるヒール部分にかけて設けたことを、加えたものである。
【0017】
部の接地部分からヒール部分にかけて連通孔を設けたものにあっては、接地部分に位置する連通孔部分と、ヒール部分に位置する連通孔部分の間に高低差が生じることになり、湯水と空気の比重差により、連通孔の下位に位置する開孔部分、すなわち接地部分に位置する開孔部分からは比重の大きい湯水が流出し、反対に連通孔の上位に位置する開孔部分、すなわちヒール部分に位置する開孔部分からは比重の小さい置換空気が吸入されるので、流出する湯水と吸入される置換空気とが互いに邪魔し合うことがなく、これにより減容機能部分内からの湯水の排出が円滑に行われる。
【0018】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、延伸成形された底部の脚部の外壁層に開設する連通孔を、複数個としたことを、加えたものである。
【0019】
脚部に開設する連通孔を複数個としたものにあっては、減容機能部分に浸入した湯水が排出される連通孔と、減容機能部分に置換空気を吸入する連通孔とが、別々にるので、減容機能部分内からの湯水の排出を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明におけるレトルト食品用容器の主たる構成においては、減容機能部分の作用により、容器本体内に発生した減圧を吸収して消滅させるので、発生した減圧により容器本体の外観体裁が劣化することがなく、容器として予め設定した適正な外観体裁を安定して維持することができる。
【0021】
減容機能部分の減容空間にレトルト処理に伴う湯水が浸入したとしても、この浸入した湯水は、下端に位置する連通孔を通して、自重により確実に排出されるので、この湯水の排出ができなくなると云う不具合は発生せず、これにより減容機能部分の減容空間内に湯水を残留させたまま、格納、搬送そして販売した際における、汚れの発生とか取扱い時に不快感を受けると云う不都合の発生を未然に防止することができる。
【0022】
減容機能部分を構成する内壁層と外壁層の間に、容器本体に要求される減圧吸収量に合わせて設定した範囲として剥離層を設けたものにあっては、簡単な構成で減容機能部分における内壁層と外壁層の層間剥離を確実に引き起こして容器本体減容化させ、これにより発生した減圧を消滅させることができるので、簡単にかつ安定した減圧吸収動作られる。
【0023】
伸成形された脚部の外壁層に連通孔を開設したものにあっては、減容機能部分の減容空間に浸入した湯水確実排出されるので、残留した湯水による不都合の発生のない良質な容器を得ることができる。
【0024】
部の接地部分からヒール部分にかけて連通孔を設けたもの、および脚部に開設する連通孔を複数個としたものにあっては、減容機能部分の減容空間に浸入した湯水の排出が円滑に行われるので、この浸入した湯水の排出処理を速やかにかつ確実に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態例の、斜め上からの全体斜視図である。
図2図1に示した実施形態例の、斜め下からの部分斜視図である。
図3図1に示した実施形態例の、全体縦断面図である。
図4図3中、A−A線に沿って切断矢視した平断面図である。
図5図1に示した実施形態例の、底面図である。
図6】本発明の第2の実施形態例の、全体縦断面図である。
図7図6中、B−B線に沿って切断矢視した平断面図である。
図8図6に示した実施形態例の、底面図である。
図9】本発明の第3の実施形態例の、全体縦断面図である。
図10図9中、丸印した部分の、拡大断面図である。
図11図9中、C−C線に沿って切断矢視した平断面図である。
図12図9に示した実施形態例の、底面図である。
図13図9に示した実施形態例の、動作状態の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態例を、図1図13を参照しながら説明する。
なお、本発明の各実施形態例では、容器本体1において、蓋体13を取り付け開口部6が位置する側を上方とし、その反対側(脚部4もしくは脚片5が位置する側)を下方とする。
【0027】
レトルト食品である内容物を収容保持する容器本体1は、自立可能な有底筒形状をしており、上端の開口部6には、この開口部6を密閉する蓋体13が取り付けられている。この容器本体1は、レトルト処理される内容物を支障なく収容することができるように、耐熱性を有するポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等の合成樹脂材料で成形されており、筒状の主体部2と、この主体部2の下端を塞ぐ底部3から構成されている。主体部2の上端には蓋体13で密閉される開口部6が形成されており、また底部3の下面には自立機能部分である脚部4(図3および図6参照)もしくは脚片5(図9参照)が形成されている。
【0028】
主体部2から底部3にかけての容器壁の一部の範囲(領域)に、密封状態の容器本体1内に発生した減圧を吸収する機能を担う部分として形成された減容機能部分8は、撓み変形し易い内壁層9と自己形状保持能力を有する外壁層10との二重壁構造となっている。この減容機能部分8における内壁層9と外壁層10は、両層の間に所定の面積からなる剥離層11を介在させる(図3図4図6図7図9図13参照)ことにより、剥離可能となっている。そして、内壁層9が撓み変形しながら外壁層10から分離することにより、この内壁層9と外壁層10の間、すなわち減容機能部分8内に減容空間形成され、この減容空間分だけ、容器本体1の収容内容積を減少させる。剥離層11は、内層壁9および外層壁10を成形している樹脂材料に対して相溶性の無い、もしくは相溶性の低い樹脂材料として、例えば、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、さらにはポリエチレンテレフタレート樹脂等で成形されている。この剥離層11は、図示実施形態例にあっては、内壁層9が少しでも撓み変形し易いように、外壁層10に付着したまま、内壁層9から剥離するようにしている。
【0029】
容器本体1の下端部でもある、減容機能部分8の下端部の内壁層9に対向する外壁層10部分には、連通孔12が開孔されているので、レトルト処理により減容空間に浸入した湯水は、この連通孔12を通して容器本体1外部に排出され、代わりに置換空気が吸入される。すなわち、減容機能部分8の開口部である連通孔12は、容器本体1の下端部に位置しているので、減容機能部分8の減容空間内に浸入した湯水は、その自重が排出力として作用することになるのである。それゆえ、減容機能部分8の減容空間内に浸入した湯水は、容器本体1が起立姿勢となっている限りにおいて、必然的にかつ確実に外部に排出されることになる。
【0030】
図1ないし図5に示した第1の実施形態例は、容器本体1を、積層ボトルとして構成した例を示したもので、相溶性を有する樹脂材料からなる内壁層9および外壁層10と、内壁層9に対して剥離性を有する樹脂材料からなる幅広な縦帯状の剥離層11(この剥離層11の幅は、要求される減圧吸収量に合わせて設定される)を、一体に積層状態で押し出して円筒状のパリソンを成形し、このパリソンを剥離層11が位置する側方向からピンチオフしてブロー成形したものである。この第1の実施形態例において、剥離層11が位置する領域である減容機能部分8は、底部3のピンチオフ部(図3参照)から主体部2の開口部6上端までの全高さ範囲に亘って形成されている。この場合、減容機能部分8の減圧吸収量は、剥離層11の幅と底部3の中央から開口部6に至る長さの積である面積に応じて決まる。して、剥離層11の一部は、底部3の延伸成形された脚部4に位置している。この脚部4は容器本体1の自立機能部分を構成する部分であるので、容器本体1の下端部に位置することになる。なお、第1の実施形態例において、蓋体13の本体部分はねじキャップ構造をしており、パッキン14と組み合わさって蓋体13を構成している。
【0031】
脚部4に位置した減容機能部分8の外壁層10には、内壁層9を強制的に剥離させた状態で、底部3の下端部である接地部分4aから、主体部2に向かって立ち上がるヒール部分4bにかけての部分に、孔加工刃(図3に仮想線図示)等を用いて連通孔12が開設されている。このように、第1の実施形態例における連通孔12は、脚部4の接地部分4aからヒール部分4bにかけて設けられているので、その開孔部分内では上下方向に高低差が生じる(図1図2図3参照)ことになる。このため、内壁層9が外壁層10から剥離した減容機能部分8の動作状態(図4の太い仮想線図示状態を参照)時に、減容空間に浸入した湯水は、自重により流出する際に、比重の軽い置換空気を開孔部分の上部側から内部に吸引させながら、開孔部分の下部側から流出することになる。
【0032】
図6ないし図8に示した第2の実施形態例は、容器本体1を、シート成形手段によりカップ状容器として成形した例を示したもので、容器本体1は、内壁層9と外壁層10の二層構造の積層シートの中央に、幅広帯状の剥離層11を中間層として積層したシート体によりシート成形されたものである。主体部2の上端の開口部6に外鍔状の口鍔部7形成され、その全体が内壁層9と外壁層10の積層構造(図7の下側の円内の部分拡大図参照)からなり、底部3の中央部分を横断するように、減容機能部分8(図7の右側の円内の部分拡大図参照)を構成する帯状の剥離層11が、主体部2の対向位置においてそれぞれ開口部6にまで到達するように設けられている。この剥離層11は、その幅が、主体部2および底部3における長さを加味した面積として、減容機能部分8に要求される減圧吸収量に合わせて設定されている。底部3の脚部4の左右の接地部分4aには、その外壁層10部分にそれぞれ連通孔12(図6図8参照)が、ポンチの様なものを用いて開設されている。そして、上端の口鍔部7には、シート製の蓋体13がヒートシール等の手段により、密に溶着されて開口部6を密閉している。
【0033】
この第2の実施形態例において、減容機能部分8は、底部3から側面の対向位置で主体部2の全高さ範囲に亘った領域に形成されており、底部3での長さに主体部2の全高さ範囲の両側分を合わせた長さと幅の積である剥離層11の面積に応じて減圧吸収量が決まる。そして、内壁層9が外壁層10から剥離して発揮される減容動作は、図6および図7に太い仮想線で示した内壁層9の撓み変形により発揮される。この減容機能部分8の減容動作状態において、減容機能部分8が形成した減容空間に浸入した湯水は、二つ形成した連通孔12の一方から置換空気を吸入させながら、他方から流出することができるので、「息つき」をすることなく、円滑に流出することになる。
【0034】
図9ないし図13に示した第3の実施形態例は、容器本体1を、積層インジェクション成形によりカップ状容器として構成した例を示したものである。容器本体1は、主体部2の上端の開口部6に、外鍔状の口鍔部7形成され、主体部2の下側の部分で所定の高さ位置から底部3までの部分(領域)が、容器壁の内部に設けた剥離層11(図9図13参照)により減容機能部分8に成形されている。この減容機能部分8が形成される範囲(領域)は、これに特定されることはなく、要求される減容程度に応じて、剥離層11の上端位置を上下に調整することにより、所望程度に設定することができる。この第3の実施形態例は、容器本体1を成形するキャビティ内に、内壁層9および外壁層10を成形する所定量の主樹脂材料を射出してから、この主樹脂材料と剥離層11を成形する剥離性の樹脂材料を同時に射出して成形される。それゆえ、容器本体1の減容機能部分8以外の部分は、単層構造となっており、減容機能部分8の部分だけが、剥離層11と、この剥離層11により内側と外側に分けられた内壁層9と外壁層10の積層構造(図10参照)となっている。
【0035】
底部3の下面周端には短円筒状の脚片5が垂下設されており、底部3の中央部分は、脚片5の下端よりも上位に位置する範囲内で、わずかに下方に湾曲した壁面を形成している。この底部3の中央部分の下端部の外壁層10部分には、連通孔12(図9図12図13参照)が、ポンチの様なものを用いて開設されている。そして、上端の口鍔部7には、シート製の蓋体13がヒートシール等の手段により、密に溶着されて開口部6を密閉している。
【0036】
この第3の実施形態例において、減容機能部分8は、主体部2の下側の部分を含む容器本体1の下端部分に形成されており、内壁層9が外壁層10から剥離して発揮される減容動作は、内壁層9の撓み変形(図13参照)により発揮される。この減容機能部分8の減容動作状態において、減容機能部分8が形成した減容空間に浸入した湯水は、連通孔12の開孔の大きさを、湯水の流出と置換空気の吸入を一緒に行うことができる程度に大きくすれば、「息つき」をすることなく、円滑にそして確実に流出することになる。
【0037】
以上、実施形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態例に限定されるものではない。例えば、減容機能部分8を形成するのに、相溶性の無い樹脂材料により内壁層9と外壁層10を接着層により剥離不能に積層し、この接着層を設けない部分を減容機能部分8とすることができる。また、減容機能部分8における剥離層11は、内壁層9の撓み変形のし易さを大きく低下させない限り、外壁層10から剥離して内壁層9に付着させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のレトルト食品用容器は、減容機能部分に形成される減容空間内に、レトルト処理後に浸入した湯水を、確実にかつ速やかに排出させることができるので、レトルト食品用容器として広い分野での適用を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ;容器本体
2 ;主体部
3 ;底部
4 ;脚部
4a;接地部分
4b;ヒール部分
5 ;脚片
6 ;開口部
7 ;口鍔部
8 ;減容機能部分
9 ;内壁層
10;外壁層
11;剥離層
12;連通孔
13;蓋体
14;パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13