特許第6372704号(P6372704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6372704-電池モジュール 図000002
  • 特許6372704-電池モジュール 図000003
  • 特許6372704-電池モジュール 図000004
  • 特許6372704-電池モジュール 図000005
  • 特許6372704-電池モジュール 図000006
  • 特許6372704-電池モジュール 図000007
  • 特許6372704-電池モジュール 図000008
  • 特許6372704-電池モジュール 図000009
  • 特許6372704-電池モジュール 図000010
  • 特許6372704-電池モジュール 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372704
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20180806BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20180806BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/20 A
   H01M2/10 G
   H01M2/34 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-9282(P2015-9282)
(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公開番号】特開2016-134336(P2016-134336A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】草場 幸助
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸得
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 仁
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−191440(JP,A)
【文献】 特開2013−073864(JP,A)
【文献】 特開2014−110139(JP,A)
【文献】 特開2012−252811(JP,A)
【文献】 特開2011−233492(JP,A)
【文献】 特開2011−253779(JP,A)
【文献】 特開2006−222043(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/149668(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/035683(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/064888(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0036411(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、各前記電池セルの一方の端子部を電気的に接続する第1バスバーと、前記電池セルと前記第1バスバーとの間に介在する絶縁性の第1セパレータと、貫通孔状の電池保持部に各々の前記電池セルを収容するホルダと、を有し、
前記第1バスバーは、第1バスバー本体と前記第1バスバー本体から延び各々の前記電池セルの前記一方の端子部にそれぞれ溶接される複数の第1タブ部とを有し、
前記第1タブ部は、弾性変形した状態で前記一方の端子部に溶接され、弾性によって前記電池セルを前記第1バスバー本体に向けて引っ張り、
前記第1セパレータは、弾性体であり、前記電池セルにおける前記端子部の周縁部全周に当接し、前記第1バスバー本体および前記電池セルに圧接し弾性変形した状態で前記第1バスバー本体と前記電池セルとの間に介在し、前記電池セルの外周面と前記電池保持部の内周面との隙間を遮蔽し、
1つの前記第1セパレータが、前記第1バスバーと複数の前記電池セルとの間に介在する、電池モジュール。
【請求項2】
前記第1タブ部は
記第1バスバー本体から両端支持梁状に延び前記第1バスバー本体との境界部分が蛇腹形状をなすか、または、前記第1バスバー本体から片持ち梁状に延びる、請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の電池セルと当該電池セルを電気的に接続するバスバーとが溶着されてなる電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池モジュールは複数の電池セルを有し、当該電池セルがバスバーによって電気的に接続されてなる。この種の電池モジュールにおいては、電池セルの端子部はバスバーに溶着されるのが一般的であり、バスバーと電池セルとの電気的接続を充分に確保するために電池セルはバスバーに向けて付勢される。つまり、一般的な電池モジュールにおいては、電池セルは電池ケース等の保持部材に保持され、電池セルに対してバスバーの逆側には、圧縮状態のバネが配置される。そして、当該バネの弾性によって、電池セルはバスバーに向けて付勢され、バスバーに当接する。
【0003】
しかし、電池セルは比較的寸法のバラツキの多いものであり、上記した従来の電池モジュールでは、バスバーと電池セルとが信頼性高く接触し難い場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−64470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、バスバーと電池セルとの電気的接続の信頼性を向上させ得る電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の電池モジュールは、
複数の電池セルと、各前記電池セルの一方の端子部を電気的に接続する第1バスバーと、前記電池セルと前記第1バスバーとの間に介在する絶縁性の第1セパレータと、を有し、
前記第1バスバーは、第1バスバー本体と前記第1バスバー本体から延び前記電池セルの前記一方の端子部に溶接される第1タブ部とを有し、
前記第1タブ部は、弾性変形した状態で前記一方の端子部に溶接され、弾性によって前記電池セルを前記第1バスバー本体に向けて引っ張る、電池モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池モジュールは、バスバーと電池セルとの電気的接続の信頼性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の電池モジュールを模式的に表す斜視図である。
図2】実施例1の電池モジュールを模式的に表す分解斜視図である。
図3】実施例1の電池モジュールを図1中X−X位置で切断した様子を模式的に表す断面図であり、楕円内は該当する部分を拡大した様子を表す要部拡大図である。
図4】電池に溶接される前の実施例1の電池モジュールにおける第1バスバーを模式的に表す要部拡大図である。
図5】実施例1の電池モジュールの第1バスバーにおける第1タブ部の挙動を模式的に表す説明図である。
図6】実施例2の電池モジュールの第1バスバーにおける第1タブ部の挙動を模式的に表す説明図である。
図7】実施例3の電池モジュールの第1バスバーにおける第1タブ部の挙動を模式的に表す説明図である。
図8】実施例4の電池モジュールの第1バスバーにおける第1タブ部の挙動を模式的に表す説明図である。
図9】実施例5の電池モジュールの第1バスバーにおける第1タブ部の挙動を模式的に表す説明図である。
図10】実施例6の電池モジュールを模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、具体例を挙げて本発明の電池モジュールを説明する。
(実施例1)
【0010】
図1は実施例1の電池モジュールを模式的に表す斜視図である。図2は、図1に示す実施例1の電池モジュールの分解斜視図である。図3は実施例1の電池モジュールを図1中X−X位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。図3中の楕円内には、該当する部分を拡大した様子を表す。図4および図5は実施例1の電池モジュールにおける第1バスバーの挙動、より具体的には第1タブ部の挙動を模式的に表す説明図である。以下、実施例において、上、下、左、右、前、後とは図1に示す上、下、左、右、前、後を指す。実施例において、電池セルの軸方向Yとは図1に示す上下方向を指す。なお、電池セル以外の部材における軸方向Yとは、図1に示す組み付け状態において軸方向Yに一致する方向を指す。
【0011】
実施例1の電池モジュールは、図1および図2に示すように、電池セル1、第1バスバー2、第2バスバー3、第1セパレータ4、第2セパレータ5およびホルダ6で構成されている。
【0012】
図2に示すように、実施例1の電池モジュールは16個の電池セル1を持つ。各電池セル1は、略同形の円筒形セルであり、軸方向Yの両端にそれぞれ端子部7(正極端子部7a、負極端子部7b)を持つ。ホルダ6は略板状をなし、16個の電池保持部60を持つ。各電池保持部60は貫通孔状をなし、各電池保持部60の内径は各電池セル1の外径よりもやや大きい。各電池保持部60にはそれぞれ対応する電池セル1が挿入される。実施例1の電池モジュールにおいて、各電池セル1は、4本一組として第1バスバー2および第2バスバー3によって直列に接続される。具体的には、第1バスバー2は電池セル1の一方の端子部7に接続され、第2バスバー3は同じ電池セル1の他方の端子部7に接続される。
【0013】
より具体的には、各第1バスバー2は第1バスバー本体20と第1タブ部21とで構成されている。第1バスバー本体20および第1タブ部21は導電性材料からなり一体に形成されている。実施例1においては、第1バスバー2および後述する第2バスバー3に用いられる導電性材料は、導電性を有しかつ弾性を有するものであれば良く、特に限定しないが、金属、合金等の金属系材料を例示し得る。
【0014】
第1バスバー本体20は、略板状をなし、略円形の開口断面を有する貫通穴状の第1接続開口22を有する。第1タブ部21は、略短冊状をなし、第1接続開口22の周縁部から第1接続開口22の内部に向けて片持ち梁状に延出する。実施例においては、第1バスバー2は銅合金製であり、プレス加工および絞り加工によって、略平板状の第1バスバー本体20から屈曲形状の第1タブ部21が延びるように成形されている。
【0015】
各第1接続開口22は、ホルダ6の各電池保持部60に対向する位置に設けられている。したがって、ホルダ6の各電池保持部60に収容保持された各電池セル1における一方の端子部7は、各々対応する第1接続開口22に露出する。また、各第1接続開口22の内部に向けて延出する各第1タブ部21は、各々対応する端子部7に対面する。図3に示すように、各々対応する第1タブ部21と端子部7とは、溶接されて電気的に接続される。
【0016】
図3に示すように、第1バスバー本体20と電池セル1との間には、第1セパレータ4が介在している。第1セパレータ4は、各第1バスバー本体20と電池セル1との電気的接続を部分的に遮断したり、第1バスバー本体20とホルダ6との電気的接続を遮断することで、短絡を防ぐための部材である。第1セパレータ4は絶縁材で構成すれば良く、実施例1では硬質の絶縁樹脂製である。
【0017】
第1セパレータ4は略平板状をなし、一方の面(セル側面4aと呼ぶ)を電池セル1に向け、他方の面(バスバー側面4bと呼ぶ)を第1バスバー2に向けている。第1セパレータ4には、各第1接続開口22に対面する位置に、貫通孔状の第1連通開口42が設けられている。第1連通開口42は、第1接続開口22と同様に、略円形の開口断面を有する。第1連通開口42の孔径は、電池セル1の外径よりもやや小さい。したがって、第1連通開口42の開口周縁部42aは、電池セル1の軸方向の先側つまり電池セル1の上側において、電池セル1の外周側部分、つまり、電池セル1における端子部7bの周縁部1aを電池セル1の周方向の全周にわたって覆っている。また、セル側面4aにおける第1連通開口42の開口周縁部42aは、電池セル1の周方向の少なくとも一部において電池セル1における端子部7bの周縁部1aに当接している。
なお、第1接続開口22の孔径もまた電池セル1の直径よりもやや小さい。したがって、第1バスバー本体20における第1接続開口22の開口周縁部22aもまた、電池セル1の軸方向の先側つまり電池セル1の上側において、電池セル1における端子部7bの周縁部1aを周方向の全周にわたって覆っている。第1セパレータ4のバスバー側面4bは第1バスバー2に当接している。
【0018】
図4および図5に示すように、第1バスバー2における第1タブ部21の形状は、電池セル1の端子部7に溶接される前と当該端子部7に溶接された後とで異なっている。つまり第1タブ部21は、図4に示す溶接前の状態に比べて、端子部7側に近づくように弾性変形しつつ付勢力を蓄積した状態で、図5に示すように端子部7に溶接されている。
【0019】
より具体的には、図4および図5に示すように、電池モジュールにおいて端子部7の端面が配置されると想定される位置を想定位置Vとし、第1タブ部21における端子部7側の面をタブ部端面Wとすると、タブ部端面Wは溶接前と溶接後とで位置変化する。溶接後のタブ部端面Wは想定位置Vと略一致する。一方、溶接前のタブ部端面Wは、電池セル1の軸方向において想定位置Vから離間した位置にある。換言すると、電池セル1の軸方向におけるタブ部端面Wの位置は溶接前と溶接後とで異なり、溶接前のタブ部端面Wは想定位置Vよりも軸方向の先側にある。ここでいう「軸方向の先側」は、電池セル1から離れる側、ホルダ6から離れる側、または、第1セパレータ4におけるセル側面4aよりもバスバー側面4bに近い側、と言い換えることもできる。
【0020】
上述したように、第1タブ部21と端子部7とを溶接する際には、第1タブ部21を端子部7に向けて弾性変形させる。したがって、電池セル1は、第1タブ部21に溶接された端子部7を介して、第1タブ部21の弾力によって軸方向の先側つまり第1バスバー2側(より具体的には第1バスバー本体20側)に引っ張られる。換言すると、第1バスバー2と電池セル1との接点そのものによって、電池セル1の第1バスバー2に対する位置決めがなされる。このため、例え電池セル1の大きさにバラツキがあったとしても、電池セル1の端子部7と第1バスバー2とが信頼性高く電気的に接続する。
【0021】
図3に示すように、第2バスバー3は第2バスバー本体30と第2タブ部31とを有し、第2タブ部31の形状以外は第1バスバー2と同様に構成されている。第2バスバー3の第2タブ部31は、電池セル1における他方の端子部7aに溶接される。第2タブ部31は、溶接前においては電池セル1側つまり上側に向けて大きく突出し、電池セル1における他方の端子部7aに弾性的に圧接した状態で溶接される。したがって、第2バスバー3と第1バスバー2とは電池セル1を互いに同じ方向に付勢するといえ、第2バスバー3は電池セル1を第1バスバー2に向けて付勢するともいえる。このようにすることで、第1バスバー2と電池セル1とが信頼性高く電気的に接続するとともに、第2バスバー3と電池セル1ともまた信頼性高く電気的に接続する。
【0022】
実施例1の電池モジュールでは、電池セル1を挟んだ第1バスバー2の逆側から電池セル1を第1バスバー2に向けて付勢している点においては、従来の電池モジュールと同様である。しかし、単に電池セル1を第1バスバー2の逆側から第1バスバー2に向けて付勢するだけでは、第1バスバー2と端子部7との接点から最も離れた位置から、電池セル1を当該接点に向けて位置決めするだけである。したがって、この場合には、端子部7を第1バスバー2との接点に向けて信頼性高く位置決めするのが困難となる場合があった。
【0023】
しかし、本発明の電池モジュールにおいては、上記したように、第1バスバー2と電池セル1との接点そのものによって、電池セル1の第1バスバー2に対する位置決めがなされる。したがって、第2バスバー3による電池セル1の付勢方向や、電池セル1の形状のバラツキ等にかかわらず、電池セル1の端子部7と第1バスバー2とを信頼性高く電気的に接続し得る。
【0024】
本発明の電池モジュールにおいては、第2バスバー3について特に限定しないが、電池セル1の形状バラツキを吸収する為には、第2バスバー3の少なくとも一部が第1バスバー2に向けて弾性変形可能であるのが好ましい。但し、後述する実施例2〜実施例6の電池モジュールのように、第1セパレータ4と第2セパレータ5との少なくとも一方が弾性変形可能である場合には、第2バスバー3は弾性変形しなくても良い。この場合、例えば、第2バスバー3に第2タブ部31を設けず、第2バスバー3における第2接続開口32の周縁部と端子部7aとを導電性材料を用いたろう付け等で電気的に接続することも可能である。
【0025】
(実施例2)
実施例2の電池モジュールは、第1セパレータ4および第2セパレータ5が弾性変形可能であること、および、第1バスバー2の第1タブ部21に溶接される端子部7が凸状をなす正極端子部7aであること以外は、実施例1の電池モジュールと概略同じものである。実施例2の電池モジュールを模式的に表す要部拡大図を図6に示す。なお、図6は実施例2の電池モジュールを図1中X−X位置と同位置で切断した断面である。
【0026】
実施例2の電池モジュールにおいて、第1セパレータ4および図略の第2セパレータ5は弾性変形可能な絶縁材料で構成されている。このような材料としては、伸び率が10〜800%の範囲にあり、かつ、曲げ弾性率が20〜1500MPaの範囲にあるものが良い。例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム、エラストマが例示される。弾性変形可能な絶縁材料としては、これらから選ばれる少なくとも一種を用いれば良い。実施例2においては、当該弾性変形可能な絶縁材料として、熱可塑性エラストマの一種であるポリエステル系熱可塑性エラストマを用いた。
【0027】
第1セパレータ4および第2セパレータ5は、弾性変形可能な弾性体であること以外は、実施例1と同様である。したがって、第1セパレータ4は略平板状をなし、セル側面4aを電池セル1に当接させ、バスバー側面4bを第1バスバー2の第1バスバー本体20に当接させている。電池セル1は第1タブ部21の弾性によって第1バスバー本体20に向けて引っ張られる。このため、電池セル1と第1バスバー2との間に介在する第1セパレータ4は圧縮され、電池セル1および第1バスバー2に弾性的に当接する。
【0028】
したがって、第1セパレータ4の第1連通開口42の開口周縁部42aは、電池セル1の軸方向の先側において、電池セル1の外周側部分、つまり、電池セル1における端子部7aの周縁部1aに電池セル1の周方向の全周にわたって弾性的に当接している。つまり実施例2における第1セパレータ4はクッション材としても機能する。したがって、例えばホルダ6や第1バスバー2に寸法のバラツキが生じた場合にも、第1バスバー2に対する電池セル1の姿勢は安定し、電池セル1と第1バスバー2とはより安定して電気的に接続する。
【0029】
実施例2の電池モジュールにおいては、第1バスバー2の第1タブ部21に溶接される端子部7が凸状をなす正極端子部7aである。このため、図6中実線で示す溶接時において、端子部7は第1セパレータ4の第1連通開口42の内部に入り込む。したがって実施例2においては、想定位置Vは第1セパレータ4におけるセル側面4aよりもややバスバー側面4b寄りにある。このため、溶接時におけるタブ部端面Wも同様に、第1セパレータ4におけるセル側面4aよりもややバスバー側面4b寄りにある。しかし、図6中二点鎖線で示すように、溶接前のタブ部端面Wが第1セパレータ4におけるセル側面4aよりも軸方向の先側にあり、溶接後のタブ部端面Wが端子部7側に位置変化することに変わりはない。第1セパレータ4をこのように構成することで、端子部が正極端子部7aであろうが負極端子部7bであろうが関係なく、第1タブ部21の弾性によって電池セル1を第1セパレータ4本体に向けて引っ張ることができ、第1バスバー2と電池セル1とが信頼性高く電気的に接続し得る。
【0030】
(実施例3)
実施例3の電池モジュールは、第1バスバー2に電気的に接続される端子部7が実施例1と同様に平坦面状の負極端子部7bであること、および、第1タブ部21の形状以外は実施例2の電池モジュールと概略同じものである。実施例3の電池モジュールを模式的に表す要部拡大図を図7に示す。なお、図7は実施例3の電池モジュールを図1中X−X位置と同位置で切断した断面である。
【0031】
実施例3の電池モジュールにおいて、第1タブ部21における第1バスバー本体20との境界部分21aは、二つの山部と当該山部の間に配置される一つの谷部とを有する蛇腹状をなす。したがって、実施例3における第1タブ部21は、実施例1および実施例2における第1タブ部21に比べて、変形可能な箇所を多く持つ。このため、実施例3の電池モジュールにおいては、溶接の前後における第1タブ部21の弾性変形量、ひいては第1タブ部21による電池セル1の引張力を実施例1および実施例2に比べて大きくすることができる。また、実施例3の電池モジュールにおいても、第1セパレータ4はクッション材としても機能する。よって、実施例3の電池モジュールによると、第1バスバー2と電池セル1とがより信頼性高く電気的に接続する。
【0032】
(実施例4)
実施例4の電池モジュールは、第1タブ部21の形状以外は実施例3の電池モジュールと概略同じものである。実施例4の電池モジュールを模式的に表す要部拡大図を図8に示す。なお、図8は実施例4の電池モジュールを図1中X−X位置と同位置で切断した断面である。
【0033】
実施例4の電池モジュールにおいて、第1タブ部21における第1バスバー本体20との境界部分21aは、実施例3と同様の蛇腹状をなすが、第1タブ部21は第1バスバー本体20から両持ち梁状あるいは両端支持梁状に延出している。つまり第1タブ部21は二つの境界部分21aを持つ。第1タブ部21が両持ち梁状であるために、実施例4の電池モジュールにおいては、実施例3の電池モジュールに比べると、第1タブ部21の変形量が小さくなる。しかし境界部分21aが蛇腹状をなすために、実施例4の電池モジュールにおける第1タブ部21は、実施例1および実施例2と同程度の大きさには弾性変形可能であり、実施例1および実施例2と同程度の強さで電池セル1を引っ張り得る。
【0034】
両持ち梁状の第1タブ部21は、片持ち梁状の第1タブに比べて、電池セル1を軸方向に沿ってより安定して引っ張ることが可能である。したがって、実施例4の電池モジュールによると、電池セル1の姿勢をより安定させることができ、第1バスバー2と電池セル1とがより信頼性高く電気的に接続する。
【0035】
また、第1セパレータ4がクッション材としても機能することによっても、第1バスバー2に対する電池セル1の姿勢が安定し、第1バスバー2と電池セル1とがより信頼性高く電気的に接続する。
【0036】
(実施例5)
実施例5の電池モジュールは、第1タブ部21の形状以外は実施例3の電池モジュールと概略同じものである。実施例5の電池モジュールを模式的に表す要部拡大図を図9に示す。なお、図9は実施例5の電池モジュールを図1中X−X位置と同位置で切断した断面である。
【0037】
実施例5の電池モジュールにおいて、第1タブ部21は二つのタブ分体21b、21cで構成されている。各タブ分体21b、21cは、各々、片持ち梁状をなし、実施例1の第1タブ部21と同様に短冊状をなし、第1バスバー本体20から屈曲しつつ延出している。二つのタブ分体21b、21cは第1接続開口22に向けて互いに対称に延びている。各タブ分体21b、21cは、各々電池セル1の端子部7に溶接される。
【0038】
実施例5の電池モジュールにおいては、端子部7に対して対称に配置された二つのタブ分体21b、21cによって電池セル1を引っ張る。したがって、実施例5の電池モジュールは、実施例4の電池モジュールと同様に、電池セル1を軸方向に沿って安定して引っ張ることができ、電池セル1の姿勢をより安定させることができるために、第1バスバー2と電池セル1とがより信頼性高く電気的に接続する。また、実施例5の電池モジュールにおける第1セパレータ4もまたクッション材としての機能を有し、このことによっても実施例5の電池モジュールは、第1バスバー2と電池セル1とがより信頼性高く電気的に接続する。
【0039】
なお、各タブ分体21b、21cと第1バスバー本体20との境界部分21aを実施例3および実施例4と同様に蛇腹状にする場合には、第1タブ部21によって電池セル1を大きな力で軸方向に安定して引っ張ることができる。このためこの場合には、実施例5の電池モジュールにおける第1バスバー2と電池セル1とがより一層信頼性高く電気的に接続する。
【0040】
(実施例6)
実施例6の電池モジュールは、第1セパレータ4および第2セパレータ5が弾性変形可能であること、第1セパレータ4が第1バスバー2と一体に成形されていること、および、第2セパレータ5が第2バスバー3と一体に成形されていること以外は実施例1の電池モジュールと概略同じものである。実施例6の電池モジュールの断面を模式的に表す要部拡大図を図10に示す。なお、図10において楕円で囲まれた部分は、該当部分の要部拡大図である。また、図10は実施例5の電池モジュールを図1中X−X位置と同位置で切断した断面である。
【0041】
実施例6の電池モジュールにおいて、第1セパレータ4は第1バスバー2をインサート材とするインサート成形法により、第1バスバー2と一体に成形されている。同様に、図略の第2セパレータ5もまた第2バスバー3と一体に成形されている。このため、電池モジュールの組み付け工数が低減し、また、第1セパレータ4と第1バスバー2との位置決め精度および第2セパレータ5と第2バスバー3との位置決め精度が向上する。
【0042】
実施例6の電池モジュールにおいても、実施例1〜実施例5の電池モジュールと同様に、第1タブ部21が電池セル1を第1バスバー本体20に向けて引っ張る。したがって、第1バスバー2と電池セル1とが信頼性高く電気的に接続する。
【0043】
また、第1セパレータ4は弾性体であり、ホルダ6における電池保持部60の内周面60bと、当該電池保持部60に保持されている電池セル1の外周面1bと、の隙間Zを軸方向の先側つまり上側から弾性的にシールする。
【0044】
例えば、電池が熱暴走等した場合、電池から漏出したガスが電池保持部60の内周面60bと電池セル1の外周面1bとの隙間Zに流入することが予想される。しかし、実施例6の電池モジュールにおいては、当該隙間Zが第1セパレータ4で弾性的にシールされているため、第1セパレータ4とホルダ6との隙間Zから外部(例えば、電池モジュールを収容するケース9の内部)へのガス漏れが抑制される。したがって、意図せぬ箇所からのガス漏れを抑制し、ケース9における所定のガス抜き機構から信頼性高くガスを排出し得る。なお、これは実施例6の電池モジュールに限らず、弾性体からなる第1セパレータ4を有する実施例2〜実施例5の電池モジュールについても同様である。
【0045】
実施例1〜6の電池モジュールにおいて、電池セル1はホルダ6の電池保持部60に収容されているだけであるが、電池セル1とホルダ6とは接着等の方法によって一体化しても良い。この場合、電池セル1に伴ってホルダ6もまた、第1バスバー2における第1タブ部21の弾力によって、第1バスバー本体20に向けて引っ張られる。このため、この場合には、隙間Zをより信頼性高く第1セパレータ4でシールできる。
この場合には、電池セル1とホルダ6とを一体化しない場合に比べて、第1タブ部21に大きな弾力が要求される。したがって、例えばばね鋼などの比較的大きな弾性を発揮し得る材料で第1タブ部21を構成したり、上記した実施例3〜実施例5に例示したように比較的大きな弾性を発揮し得る形状に第1タブ部21を形成したりするのが好ましい。
【0046】
なお本発明の電池モジュールにおける第1タブ部21は、端子部7に溶接された後においても、弾性変形した状態、つまり、弾力を放出しきっていない状態であるのが好ましい。この場合には、第1タブ部21の弾性によって、電池モジュールにおける電池セル1を第1セパレータ4に圧接させることができ、上記したガス漏れ抑制の効果を信頼性高く発揮し得る。また、電池セル1の姿勢を安定した状態に保つことができ、ひいては電池モジュールの構造を保ち得るために、耐久性等の電池モジュールの各種性能を向上させ得る効果もある。勿論、溶接時において端子部7とバスバーとの接点を信頼性高く確保するとともに第1バスバー2に対する電池セル1の姿勢を安定した状態に整える、という面においては、第1タブ部21は、端子部7に溶接された後において弾性を放出しきっても良い。つまり第1タブ部21は、少なくとも溶接時において、弾性変形した状態であり、第1バスバー2の主たる部分、つまり、第1バスバー本体20に向けて端子部7を引っ張ることができれば良い。
【0047】
本発明の電池モジュールは、複数の電池セル1を有するものであり、本発明の電池モジュールにおける全ての電池セル1が第1タブ部21の弾性によって第1バスバー本体20に向けて引っ張られるのが好ましい。しかし、これに限らず、本発明の電池モジュールは、複数の電池セル1の少なくとも一つを第1タブ部21の弾性によって第1バスバー本体20に向けて引っ張ることができれば良い。
【0048】
第1タブ部21に引っ張られた電池セル1は、実際に第1バスバー本体20に向けて位置変化しても良いし、位置変化しなくても良い。例えば、第1タブ部21に溶接される端子部7に対して第1セパレータ4が非常に近接しており、かつ第1セパレータ4が硬質である場合等には、第1セパレータ4に干渉されて電池セル1自体は位置変化しない場合もある。このような場合にも、本発明の電池モジュールは、電池セル1の大きさのバラツキを吸収でき、電池セル1の端子部7と第1バスバー2とを信頼性高く電気的に接続し得る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電池モジュールの用途は特に限定されず、様々な装置や備品等に配設できる。具体例としては、車両用に搭載する組電池を挙げることができる。
(付記事項1)
【0050】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【0051】
(付記事項2)
本発明の電池モジュールは以下のとおりである。
(1)複数の電池セル1と、各前記電池セル1の一方の端子部7を電気的に接続する第1バスバー2と、前記電池セル1と前記第1バスバー2との間に介在する絶縁性の第1セパレータ4と、を有し、
前記第1バスバー2は、第1バスバー本体20と前記第1バスバー本体20から延び前記電池セル1の前記一方の端子部7に溶接される第1タブ部21とを有し、
前記第1タブ部21は、弾性変形した状態で前記一方の端子部7に溶接され、弾性によって前記電池セル1を前記第1バスバー本体20に向けて引っ張る、電池モジュール。
(2)前記第1セパレータ4は、前記電池セル1における前記端子部7の周縁部全周に当接する、(1)に記載の電池モジュール。
(3)前記第1セパレータ4は、弾性体であり、前記第1バスバー本体20および前記電池セル1に圧接し弾性変形した状態で前記第1バスバー本体20と前記電池セル1との間に介在する、(1)または(2)に記載の電池モジュール。
(4)貫通孔状の電池保持部60に各々の前記電池セル1を収容するホルダ6を有し、
前記第1セパレータ4は、前記電池セル1の外周面1bと前記電池保持部60の内周面60bとの隙間Zを遮蔽する、(3)に記載の電池モジュール。
【符号の説明】
【0052】
1:電池セル 1b:電池セルの外周面
2:第1バスバー 4:第1セパレータ
6:ホルダ 7:端子部
20:第1バスバー本体 21:第1タブ部
60:電池保持部 60b:電池保持部の内周面 z:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10