特許第6372743号(P6372743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6372743-車室空気のアルデヒド低減装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372743
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車室空気のアルデヒド低減装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20180806BHJP
   B60H 3/02 20060101ALI20180806BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B60H3/00 Z
   B60H3/02 A
   A61L9/16 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-120564(P2014-120564)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-548(P2016-548A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】達 晃一
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−125085(JP,A)
【文献】 特開2008−132814(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0283626(US,A1)
【文献】 特開2001−286752(JP,A)
【文献】 特開2005−329750(JP,A)
【文献】 特開昭50−048744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/00
A61L 9/16
B60H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室の空気に含まれるアルデヒドの濃度を低減する車室空気のアルデヒド低減装置であって、
前記車室の空気中のアルデヒド濃度を検出するアルデヒド濃度検出手段と、
前記車室を加湿することによって、前記車室で気化したアルデヒドを捕捉する空気中の水蒸気を増大させる加湿手段と、
前記車室の空気を冷却することによって、アルデヒドを捕捉した水蒸気をアルデヒドを含む凝縮水として前記車室外に排出するアルデヒド排出手段と、
前記アルデヒド濃度検出手段が検出したアルデヒド濃度が所定の第1閾値を超えたか否かを判定し、前記検出されたアルデヒド濃度が前記第1閾値を超えたと判定した場合に、前記加湿手段による加湿と前記アルデヒド排出手段による冷却とを機能させる制御手段と、を備え
前記制御手段は、前記検出されたアルデヒド濃度が前記第1閾値を超えたと判定して前記加湿手段による加湿を機能させた後に、前記検出されたアルデヒド濃度が前記第1閾値よりも低い値である所定の第2閾値より低下したか否かを判定し、前記検出されたアルデヒド濃度が前記第2閾値よりも低くなるまで前記加湿手段による加湿を継続して機能させる
ことを特徴とする車室空気のアルデヒド低減装置。
【請求項2】
車両の車室の空気に含まれるアルデヒドの濃度を低減する車室空気のアルデヒド低減装置であって、
前記車室の空気中のアルデヒド濃度を検出するアルデヒド濃度検出手段と、
前記車室を加湿することによって、前記車室で気化したアルデヒドを捕捉する空気中の水蒸気を増大させる加湿手段と、
前記車室の空気を冷却することによって、アルデヒドを捕捉した水蒸気をアルデヒドを含む凝縮水として前記車室外に排出するアルデヒド排出手段と、
前記アルデヒド濃度検出手段が検出したアルデヒド濃度が所定の閾値を超えたか否かを判定し、前記検出されたアルデヒド濃度が前記所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記加湿手段による加湿と前記アルデヒド排出手段による冷却とを機能させる制御手段と、を備え、
前記加湿手段は、収容空間の一部に水を貯留するタンクと、前記車室と前記タンクとを連通し、前記タンク側の先端が前記タンク内の水中で開口する第1の連通路と、前記車室と前記タンクとを連通し、前記タンク側の先端が前記タンク内の空気中で開口する第2の連通路と、前記第1の連通路、前記タンク、及び前記第2の連通路の順序で前記車室の空気を循環させるポンプと、を有し
前記アルデヒド排出手段は、周囲の空気を冷却するエバポレータと、前記エバポレータの周囲に前記車室の空気を送風する送風ファンと、前記空気の冷却によって生じた凝縮水を前記車室外に排出する排出路と、を有する、
ことを特徴とする車室空気のアルデヒド低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内の空気に含まれるアルデヒドの濃度を低減する車室空気のアルデヒド低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−246040号公報には、車両用空調装置に用いる吸着処理用部材が記載されている。この空調装置では、送風機と、送風機の下流側に設けられたエバポレータとの間にフィルタ取付部が形成され、枠状部材で支持されたシート状のフィルタ部材(吸着処理用部材)がフィルタ取付部に取付けられている。フィルタ部材は物理的吸着剤と化学的吸着剤とによって形成され、フィルタ部材を空調用空気が一方向に通過することによって、空気中のアルデヒド等の被吸着成分が吸着処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−246040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なVOC(揮発性有機化合物)の場合、車室を構成する物体からの揮発による物体のVOC含有量の減少に応じて車室内のVOC濃度も同様に低減する。これに対し、アルデヒドは、アルコールの酸化や酢ビニルの加水分解によって生成するともいわれており、長期にわたり車室内でアルデヒドが継続して生成される可能性がある。このため、車室内のアルデヒドを長期間継続して除去する必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の上記装置では、吸着剤で形成されるフィルタ部材を用いて車室の空気中のアルデヒドを吸着して除去しているため、フィルタ部材に吸着されたアルデヒドの蓄積量が増大するにつれてフィルタ部材の吸着性能が低下する可能性がある。このため、車室内の空気中のアルデヒドを所望の濃度以下に継続して低減するためにはフィルタ部材の交換等のメンテナンス作業が必要となり、装置の維持費用の増大を招くおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、フィルタ等の交換を必要とせずに車室の空気中のアルデヒドの濃度を所望の濃度以下に継続して低減可能な車室内のアルデヒド低減装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様車両の車室の空気に含まれるアルデヒドの濃度を低減する車室空気のアルデヒド低減装置であって、アルデヒド濃度検出手段と、加湿手段と、アルデヒド排出手段と、制御手段とを備える。アルデヒド濃度検出手段は、車室の空気中のアルデヒド濃度を検出する。加湿手段は、車室を加湿することによって、車室で気化したアルデヒドを捕捉する空気中の水蒸気を増大させる。アルデヒド排出手段は、車室の空気を冷却することによって、アルデヒドを捕捉した水蒸気をアルデヒドを含む凝縮水として車室外に排出する。制御手段は、アルデヒド濃度検出手段が検出したアルデヒド濃度が所定の第1閾値を超えたか否かを判定し、検出されたアルデヒド濃度が第1閾値を超えたと判定した場合に、加湿手段による加湿とアルデヒド排出手段による冷却とを機能させる。制御手段は、検出されたアルデヒド濃度が第1閾値を超えたと判定して加湿手段による加湿を機能させた後に、検出されたアルデヒド濃度が第1閾値よりも低い値である所定の第2閾値より低下したか否かを判定し、検出されたアルデヒド濃度が第2閾値よりも低くなるまで加湿手段による加湿を継続して機能させる。
【0008】
上記構成では、車室で気化した空気中のアルデヒドの濃度がアルデヒド濃度検出手段によって検出され、アルデヒド濃度が所定の閾値を超えると、制御手段が加湿手段による加湿とアルデヒド排出手段による冷却とを機能させる。加湿手段が機能すると、車室が加湿されて空気中の水蒸気量が増大する。気化したアルデヒドは水に容易に溶解するため、空気中の水蒸気量が増大すると水蒸気に溶解して補足されるアルデヒド量が増大する。また、アルデヒド排出手段が機能すると、車室の空気が冷却され、空気の温度が空気中の水蒸気の露点以下になるとアルデヒドを捕捉した水蒸気が凝縮し、アルデヒドを含む凝縮水として車室外に排出されて車室の空気のアルデヒド濃度が所定の閾値以下に低下する。
【0009】
このように、車室を加湿して増大した水蒸気によって空気中のアルデヒドを補足し、空気を冷却してアルデヒドを含む凝縮水として車室外に排出するので、車室内で長期にわたり継続して生成されるアルデヒドに対して、アルデヒド濃度を継続して低減することができる。このため、例えばフィルタ等を用いてアルデヒドを吸着させる場合と比べて、フィルタ交換等のメンテナンス作業が不要であり、装置の維持費用が低減できる。
【0010】
また、車室の空気のアルデヒド濃度を検出して所定の閾値を超えたか否かを判定するので、所定の閾値に所望のアルデヒド濃度を設定しておくことによって車室のアルデヒド濃度を確実に所望の濃度以下に継続して低減することが可能である。また、所定の閾値を超えたときのみに加湿手段の加湿及びアルデヒド排出手段の冷却を機能させるので、装置の過剰なエネルギ消費の抑制が可能である。また、車室を加湿するので、空気が乾燥する冬季においても車室の空気の湿度が保持される快適な車室空間を提供することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、車両の車室の空気に含まれるアルデヒドの濃度を低減する車室空気のアルデヒド低減装置であって、アルデヒド濃度検出手段と、加湿手段と、アルデヒド排出手段と、制御手段とを備える。アルデヒド濃度検出手段は、車室の空気中のアルデヒド濃度を検出する。加湿手段は、車室を加湿することによって、車室で気化したアルデヒドを捕捉する空気中の水蒸気を増大させる。アルデヒド排出手段は、車室の空気を冷却することによって、アルデヒドを捕捉した水蒸気をアルデヒドを含む凝縮水として車室外に排出する。制御手段は、アルデヒド濃度検出手段が検出したアルデヒド濃度が所定の閾値を超えたか否かを判定し、検出されたアルデヒド濃度が上記所定の閾値を超えたと判定した場合に、加湿手段による加湿とアルデヒド排出手段による冷却とを機能させる。加湿手段は、収容空間の一部に水を貯留するタンクと、車室とタンクとを連通し、タンク側の先端がタンク内の水中で開口する第1の連通路と、車室とタンクとを連通し、タンク側の先端がタンク内の空気中で開口する第2の連通路と、第1の連通路、タンク、及び第2の連通路の順序で車室の空気を循環させるポンプとを有する。アルデヒド排出手段は、周囲の空気を冷却するエバポレータと、エバポレータの周囲に車室の空気を送風する送風ファンと、空気の冷却によって生じた凝縮水を車室外に排出する排出路とを有する

【0012】
上記構成では、加湿手段のポンプが作動すると、車室の空気が第1の連通路、タンク、及び第2の連通路の順序で循環する。第1の連通路のタンク側の先端はタンクの水中で開口しているので、空気が水中を気泡となって通過し、空気が水と接触することによって空気中の水蒸気量が増大する。また、第1の連通路のタンク側の先端はタンクの空気中で開口しているので、水蒸気量が増大した空気が車室へ循環して車室が加湿される。また、アルデヒド排出手段の送風ファンが作動すると、送風ファンが車室の空気をエバポレータに送風し、送風された空気がエバポレータによって露点以下に冷却されると水蒸気が凝縮し、凝縮水として排水路から車室外に排出される。
【0013】
このような加湿手段とアルデヒド排出手段とを機能させることによって、車室の空気中の水蒸気量を増大させて空気中のアルデヒドを捕捉し、アルデヒドを捕捉した空気を冷却してアルデヒドを凝縮水とともに車室外に排出する。このため、車室のアルデヒド濃度を所望に濃度以下に継続して低減するためには、車室の加湿に必要なタンクの水の補給をすればよく、例えばフィルタ等を用いてアルデヒドを吸着させる場合と比べて、フィルタ交換等のメンテナンス作業が不要であり、装置の維持費用が低減できる。また、車室の空気を気泡として水中を通過させることによって、水蒸気によって捕捉されずに車室の空気中に残留しているアルデヒドが水に溶解するので、より効率よく車室の空気のアルデヒドの濃度を低減することができる。また、車室の温度を調節する空調装置を備えた車両においては、空調装置のエバポレータと送風ファンと排水路とをアルデヒド排出手段として利用することができるので、設備費用の増大を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルタ等の交換を必要とせずに車室の空気中のアルデヒドの濃度を所望の濃度以下に継続して低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係わる車室空気のアルデヒド低減装置を備える車両の主要部を示す模式図である。
図2】アルデヒド低減処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のアルデヒド低減装置1を搭載する車両2は、キャブ3と荷台(図示省略)とを有する貨物車両である。アルデヒド低減装置1は、図1に示すように加湿ユニット7と、空調ユニット17と、ガスセンサ5と、制御部31とを有している。
【0017】
キャブ3は、略箱状体であり、内部に車両の乗員を収容する車室4を区画する。
【0018】
加湿ユニット7は、図1に示すように、第1管路(第1の連通路)8とポンプ12と第2管路(第1の連通路)9とタンク13と気泡発生部(第1の連通路)14と第3管路(第2の連通路)10と脱臭フィルタ15と第4管路(第2の連通路)11と配水管路16とを有する。第1管路8は車室4とポンプ12とを連通し、第2管路9はポンプ12とタンク13とを連通する。また、第3管路10はタンク13と脱臭フィルタ15とを連通し、第4管路11は脱臭フィルタ15と車室4とを連通する。タンク13は、第2管路9、第3管路10及び配水管路16との接続口を有する密閉構造であり、配水管路16から供給される水を所定の水位に維持するようにタンク13内に水を貯留する。第2管路9のタンク側の先端には気泡発生部14が連結されタンク13の水面と並行して水中に突出している。気泡発生部14は、例えば第2管路9の先端に連結された一端と封止された他端とを有する略円筒状であり、筒内部と筒外部とが連通する多孔質部材で形成されている。
【0019】
ポンプ12は、第1管路8と第2管路9との間に配置され、ポンプ12が作動することによって第1管路8、第2管路9、気泡発生部14、第3管路10、脱臭フィルタ15、及び第4管路11の順序で車室4の空気が循環する。ポンプ12が作動して車室4の空気が気泡発生部14の円筒内へ送りこまれると、送り込まれた空気は気泡発生部14の円筒外周面から微細な気泡となってタンク13の水中へ放出される。脱臭フィルタ15は、例えば活性炭等によって形成され、脱臭フィルタ15を通過する空気に含まれる臭気成分を吸着して除去する。なお、脱臭フィルタ15及び第4管路の設置を省略し、第3管路によってタンク13と車室4とを連通してもよい。
【0020】
空調ユニット17は、ケース18と送風ファン19とエバポレータ20と流路区画部材21とエアミックスダンパ22とヒータコア23と凝縮水排出路24とを有する。また、空調ユニット17は、空調ユニット17を制御し車室4の室温を調節する空調制御ユニット(図示省略)を有しており、空調制御ユニットには所望の車室温度が可変に設定される。ケース18は、中空の略箱形部材であり、内周面が空気の流路25を区画する。ケース18には、ケース18の外部と流路25とを連通するユニット流入口26及びユニット流出口27が形成されている。ユニット流入口26及びユニット流出口27は、空調用ダクト(図示省略)を経由して車室4内と連通する。
【0021】
送風ファン19は、流路25のユニット流入口26の近傍に設けられる。送風ファン19は、モータによって駆動され、車室4の空気をユニット流入口26から流路25へ流入させ、ユニット流出口27へ向かって流通させる。エバポレータ20は、流路25の送風ファン19の下流側に、流れ方向に直交して設けられる。エバポレータ20は、冷媒(エアコンガス)が流通するチューブを有し、エバポレータ20を通過する空気を冷却する。送風ファン19のモータは、空調制御ユニットによって駆動されるほか、アルデヒド低減装置1の制御部31によっても駆動される。
【0022】
流路区画部材21は、板状部材であり、流路25のエバポレータ20の下流側に、空気の流れ方向に沿って設けられ、流路25を加熱流路28と通過流路29とに区画する。エアミックスダンパ22は、流路区画部材21の上流端に回転自在に支持される。エアミックスダンパ22は、モータによって駆動され、設定位置を変更されることによって、加熱流路28と通過流路29とへの空気の流入量を調節する。
【0023】
ヒータコア23は、加熱流路28に空気の流れ方向に直交して設けられる。ヒータコア23は、エンジンを冷却した冷却水が流通するチューブを有し、ヒータコア23を通過する空気を加熱する。また、流路区画部材21の下流側であって、流路25の下流端のユニット流出口27の近傍には、加熱流路28を流通した空気と通過流路29を流通した空気とを合流させるチャンバー部30が設けられる。
【0024】
上記のように構成された空調ユニット17では、空調制御ユニットに設けられた空調スイッチ(図示省略)がONに設定されると、空調制御ユニットが送風ファン19を作動させる。送風ファン19が作動すると、車室4の空気が、ユニット流入口26から流路25へ流入し、エバポレータ20を通過することによって冷却される。冷却された空気(冷風)は、エアミックスダンパ22の設定位置に応じて、加熱流路28と通過流路29とに分かれて流入する。加熱流路28に流入した冷風は、ヒータコア23を通過することによって加熱される。加熱流路28を流通して加熱された空気(温風)と通過流路29を流通した冷風とはチャンバー部30において合流して混合され、空調風としてユニット流出口27から流出する。空調制御ユニットは、エアミックスダンパ22の設定位置を変更して、ユニット流出口27から流出する空調風の温度が空調制御ユニットに設定された車室温度となるように加熱流路28と通過流路29とへの空気の流入量を調節する。
【0025】
また、流路25に流入した空気がエバポレータ20によって露点温度以下に冷却されると空気中の水蒸気が凝縮し、凝縮水として凝縮水排出路24を経由して車室4外へ排出される。
【0026】
ガスセンサ5は、車室4内に設置されて車室4の空気中のアルデヒドの濃度Qrを検出し、検出結果をECU6へ出力する。ガスセンサ5は、例えば半導体ガス検出素子等を用いて形成される。
【0027】
ECU6は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備える。CPUは、ROMに格納されたアルデヒド低減処理プログラムを読み出して処理を実行し、制御部31として機能する。RAMは、ガスセンサ5が出力したアルデヒド濃度Qrを記憶する。また、RAMは、予め設定されるアルデヒド濃度の第1閾値Qh1及び第2閾値Qh2の設定領域、及びCPU演算結果の一時記憶領域としても機能する。
【0028】
制御部31は、ガスセンサ5が出力する車室4の空気のアルデヒド濃度Qrを取得し、アルデヒド濃度の第1閾値Qh1(所定の閾値)及び第2閾値Qh2と比較する。アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1よりも大きい場合は、加湿ユニット7のポンプ12及び空調ユニット17の送風ファン19を作動する。また、アルデヒド濃度Qrが第2閾値Qh2以下の場合には加湿ユニット7のポンプ12及び空調ユニット17の送風ファン19を停止する。すなわち、制御部31は、制御手段として機能する。なお、アルデヒド濃度の第2閾値Qh2は、アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1の付近にあるときに制御部31による加湿ユニット7及び空調ユニット17の頻繁な作動及び停止の操作を抑制するために設けられ、第1閾値Qh1の近傍であって第1閾値Qh1よりも小さい値に設定される。
【0029】
次に、図2に示すフローチャートに基づいてアルデヒド低減処理を説明する。本処理は、例えば車両2のエンジンキーがONである状態において所定の時間ごとに繰り返し実行される。ECU6は、まずガスセンサ5が検出したアルデヒド濃度Qrを取得する(ステップS1)。次にアルデヒド濃度Qrと、アルデヒド濃度の第1閾値Qh1とを比較し、アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1よりも大きい場合はステップS3へ進む(ステップS2)。ステップS3では、ECU6は加湿ユニット7のポンプ12を作動させ、車室4の空気をタンク13の水中を通過させて循環させる。次にECU6はステップS4へ進み、空調制御ユニットの空調スイッチがONか否かを判定する。空調スイッチがOFFの場合はステップS5へ進み空調ユニット17の送風ファン19を作動させ、車室4の空気を空調ユニット17のエバポレータ20へ送風する。空調スイッチがONの場合は、空調ユニット17が空調制御ユニットによって稼働しており、送風ファン19はすでに作動しているので処理を終了する。
【0030】
ステップS2において、アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1以下である場合はステップS6へ進む。ステップS6では、アルデヒド濃度Qrと、アルデヒド濃度の第2閾値Qh2とを比較し、アルデヒド濃度Qrが第2閾値Qh2以下の場合はステップS7へ進む。ステップS7では、ECU6は加湿ユニット7のポンプ12を停止して車室4の空気の循環を停止する。次にECU6はステップS8へ進み、空調スイッチがONか否かを判定する。空調スイッチがOFFの場合は、ステップS9へ進んで送風ファン19を停止し、車室4の空気のエバポレータ20への送風を停止する。空調スイッチがONの場合は、空調ユニット17が空調制御ユニットによって作動中であるので、送風ファン19を停止せずに処理を終了する。
【0031】
ステップS6において、アルデヒド濃度Qrが第2閾値Qh2よりも大きい場合、すなわちアルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1以下であり、且つアルデヒド濃度Qrが第2閾値Qh2よりも大きい場合は処理を終了し、加湿ユニット7及び空調ユニット17の現在の作動状態又は停止状態を継続する。
【0032】
本実施形態では、車室4で気化したアルデヒド濃度Qrがガスセンサ5によって検出され、アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1を超えると、制御部31が加湿ユニット7のポンプ12と空調ユニット17の送風ファン19とを作動させる。
【0033】
加湿ユニット7のポンプ12が作動すると、車室4の空気は第1管路8及び第2管路9を経由して気泡発生部14に流入し、水中を微細な気泡となって通過し、第3管路、脱臭フィルタ15及び第4管路11を経由して車室へ循環する。空気が水中を気泡となって通過するときに空気と水とが接触して空気中の水蒸気量が増大し、水蒸気量が増大した空気が車室4へ循環することによって車室4が加湿される。気化したアルデヒドは水に容易に溶解するので車室4の空気中のアルデヒドは車室4の空気中の水蒸気に捕捉されるが、水蒸気量が増大すると、水蒸気に溶解して捕捉されるアルデヒド量も増大する。
【0034】
また、空調ユニット17の送風ファン19が作動すると、水蒸気量が増大した車室4の空気が空調ユニット17のエバポレータ20に送風される。送風された空気がエバポレータ2によって露点温度以下に冷却されると空気中の水蒸気が凝縮し、水蒸気に捕捉されたアルデヒドは凝縮水として空調ユニット17の凝縮水排出路24から車室4外に排出される。この結果、車室4の空気中のアルデヒドの濃度が第1閾値Qh1以下に低下する。
【0035】
このように、車室4を加湿して増大した水蒸気によって空気中のアルデヒドを補足し、空気を冷却してアルデヒドを含む凝縮水を車室外に排出するので、車室4で長期にわたり継続して生成されるアルデヒドに対して、アルデヒド濃度を継続して低減することができる。また、車室4のアルデヒド濃度を継続して低減するために車室4の加湿に必要なタンク13の水の補給をすればよく、例えばフィルタ等を用いてアルデヒドを吸着させる場合と比べて、フィルタ交換等のメンテナンス作業が不要であり、装置の維持費用が低減できる。
【0036】
また、車室4の空気のアルデヒド濃度Qrを検出して第1閾値Qh1を超えたか否かを判定するので、第1閾値Qh1に所望のアルデヒド濃度を設定しておくことによって車室4のアルデヒド濃度Qrを確実に所望の濃度以下に継続して低減することが可能である。
【0037】
また、第1閾値Qh1を超えたときのみ加湿ユニット7のポンプ12及び空調ユニット17の送風ファン19を作動させるので、装置の過剰なエネルギ消費の抑制が可能である。また、車室4を加湿するので、空気が乾燥する冬季においても車室4の空気の湿度が保持される快適な車室空間を提供することができる。
【0038】
また、車室4の空気をタンク13の水中を気泡として通過させることによって、水蒸気によって捕捉されずに車室4の空気中に残留していたアルデヒドがタンク13の水に溶解するので、より効率よく車室4の空気中のアルデヒド濃度Qrを低減することができる。また、車室4の温度を調節する空調ユニット17の送風ファン19、エバポレータ20及び凝縮水排出路24をアルデヒド低減装置1の構成要素の一部として利用しているので装置費用の増大を抑制することが可能となる。
【0039】
なお、車室4の加湿は、空気中の水蒸気量を増大させるものであれば本実施形態の加湿ユニット7に限定されず、例えば水を霧化して車室4の空気中に噴霧して加湿するもの等であってもよい。
【0040】
また、車室4の空気の冷却は、本実施形態の車両1の空調ユニット17を利用するものに限定されず、例えばペルチェ素子で形成される冷却機器を別途設けて冷却するもの等であってもよい。
【0041】
また、本実施形態のアルデヒド低減装置は、車室4の空気に含まれるアルデヒドの濃度低減に限定されず、例えばメタノール等のような水溶性のVOC(揮発性有機化合物)の濃度低減にも適用が可能である。
【0042】
また、制御部31は、車室4のアルデヒド濃度Qrを低減するために第1閾値Qh1及び第2閾値Qh2を用いたが、第1閾値Qh1(所定の閾値)だけを用いてもよい。この場合制御部は、アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1を超えたときに加湿ユニット7及び空調ユニット17を作動させ、アルデヒド濃度Qrが第1閾値Qh1以下になったときに加湿ユニット7及び空調ユニット17の作動を停止する。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車両の車室空気のアルデヒド低減装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 アルデヒド低減装置
2 車両
4 車室
5 ガスセンサ(アルデヒド濃度検出手段)
6 ECU
7 加湿ユニット(加湿手段)
8 第1管路(第1の連通路)
9 第2管路(第1の連通路)
10 第3管路(第2の連通路)
11 第4管路(第2の連通路)
12 ポンプ
13 タンク
14 気泡発生部(第1の連通路)
17 空調ユニット(アルデヒド排出手段)
19 送風ファン
20 エバポレータ
24 凝縮水排出路(排出路)
31 制御部(制御手段)
図1
図2