特許第6372757号(P6372757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372757
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】異物検出装置およびコイル装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20180806BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20180806BHJP
【FI】
   H02J50/60
   H02J50/10
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-50347(P2015-50347)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-171687(P2016-171687A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】淺野 篤史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠彦
(72)【発明者】
【氏名】降矢 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 淳
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−135491(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013699(WO,A1)
【文献】 特開2014−027102(JP,A)
【文献】 特開2013−034292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で第1コイルへ送電または前記第1コイルから受電するための第2コイルを備えるコイル装置用の異物検出装置であって、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に位置する異物検出コイルと、
前記異物検出コイルの上部を覆うカバーであって、前記カバーの上面は、前記第2コイルのコイル面に対して傾いた少なくとも1つの傾斜面を含み、前記傾斜面は、前記異物検出コイルの検出感度が相対的に低い低感度領域から、前記異物検出コイルの検出感度が相対的に高い高感度領域へ向かって下方に傾斜している前記カバーと、を備える異物検出装置。
【請求項2】
前記カバーの上面は、前記上面の端まで下方に傾斜している端部傾斜面を含む、請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの傾斜面は、互いに向きの異なる複数の傾斜面を含む、請求項1又は2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記異物検出コイルは、前記傾斜面と平行に配置されている、請求項1、2又は3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記カバーを振動させる振動装置を更に備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項6】
前記異物検出コイルは、導線をループ状に形成した検出ループを含み、
前記低感度領域は、前記検出ループの中心軸の方向に、前記導線と重複し、前記高感度領域は、前記検出ループの前記中心軸の方向に、前記検出ループの内側部分と重複している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の異物検出装置と、前記第2コイルとを備えるコイル装置であって、
前記カバーは前記第2コイルを更に覆う、コイル装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムに設けられる異物検出装置およびコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電システムは、送電コイルおよび受電コイルを備える。送電コイルは、受電コイルに非接触で給電する。この非接触給電時に、受電コイルと送電コイルとは、隙間を隔てて上下に配列される場合が多い。この隙間に、導電性材料の異物(例えば、硬貨、鉄くぎなど)が入り込むと、非接触給電の効率は、低下する可能性がある。
【0003】
このような異物を検出するために、下記の特許文献1の非接触給電システムは、図1の構成を採用している。図1は、鉛直面による断面図である。
【0004】
図1の非接触給電システムは、上述したような送電コイル31および受電コイル33と、カバー35と、検出ループ37と、異物検出部39とを備える。送電コイル31および受電コイル33の各々は、図1の紙面に直交する同一平面内で渦巻き状に形成されている。検出ループ37は、図1のように鉛直方向に配列された送電コイル31と受電コイル33との間に位置する。カバー35は、下側の送電コイル31および検出ループ37を上部から覆う。検出ループ37は、図1の紙面に直交する平面に複数配置されている。検出ループ37には、送電コイル31に流れる電流(以下、送電用電流という)により生じる磁束が貫通する。検出ループ37を貫通する磁束は、カバー35の上面に導電性材料の異物が載ることにより変化する。異物検出部39は、この変化を検出することにより、カバー35の上面に異物が存在することを検出する。また、特許文献2には、異物検出コイルの種々の形状について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−249401号公報
【特許文献2】特開2014−526871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は、送電用電流による磁力線を示す。図2に示すように、送電用電流による磁力線は、カバー35の水平な上面の位置によって異なるため、カバー35上の異物を貫通する磁束(以下、鎖交磁束という)は、その位置によって異なる。鎖交磁束が小さいほど、異物による磁束の乱れが小さくなる。異物が、鎖交磁束の小さくなる位置でカバー35上面に載った場合には、検出ループ37の貫通磁束がこの異物により変化する量は小さくなる。したがって、この異物の検出精度が低くなる。
【0007】
これは、送電コイルが上側に位置し受電コイルが下側に位置する場合も同様である。すなわち、下側の受電コイルを上方から覆うカバーを設けた場合においても、異物が、鎖交磁束の小さくなる位置でカバー上面に載ったときにも、検出ループによる異物の検出精度が低くなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、送電コイルまたは受電コイルを覆うカバーに載った異物の検出精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の一態様によると、非接触で第1コイルへ送電または前記第1コイルから受電するための第2コイルを備えるコイル装置用の異物検出装置であって、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に位置する異物検出コイルと、
前記異物検出コイルの上部を覆うカバーであって、前記カバーの上面は、前記第2コイルのコイル面に対して傾いた少なくとも1つの傾斜面を含み、前記傾斜面は、前記異物検出コイルの検出感度が相対的に低い低感度領域から、前記異物検出コイルの検出感度が相対的に高い高感度領域へ向かって下方に傾斜している前記カバーと、を備える異物検出装置が提供される。
【0010】
本発明の一態様の異物検出装置は、例えば以下のように構成される。
【0011】
前記カバーの上面は、前記上面の端まで下方に傾斜している端部傾斜面を含むことができる。
【0012】
前記少なくとも1つの傾斜面は、互いに向きの異なる複数の傾斜面を含むことができる。
【0013】
前記異物検出コイルは、前記傾斜面と平行に配置されうる。
【0014】
前記異物検出装置は、前記カバーを振動させる振動装置を更に備えることができる。
【0015】
前記異物検出コイルは、導線をループ状に形成した検出ループを含むことができ、この場合、
前記低感度領域は、前記検出ループの中心軸の方向に、前記導線と重複し、前記高感度領域は、前記検出ループの前記中心軸の方向に、前記検出ループの内側部分と重複している。
【0016】
本発明の別態様によると、上述の異物検出装置と、前記第2コイルとを備えるコイル装置であって、
前記カバーは前記第2コイルを更に覆う、コイル装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、カバー上面の傾斜面が、異物検出コイルによる検出感度が相対的に低い低感度領域から、異物検出コイルによる検出感度が相対的に高い高感度領域へ向かって下方に傾斜しているので、傾斜面上の異物を重力により高感度領域へ移動させることができる。したがって、異物検出コイルによる異物検出の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の非接触給電システムを示す。
図2図1の場合における磁力線を示す。
図3】本発明の第1実施形態による構成を示す。
図4】(A)は、図3の4A−4A線矢視図であり、(B)は、図3の4B−4B線矢視図であり、(C)は、図3の4C−4C線矢視図である。
図5】送電コイルに流れる電流により発生する磁力線を示す。
図6】異物検出コイルの低感度領域と高感度領域を示す。
図7図3のVII−VII線矢視図である。
図8】本発明の第2実施形態の構成を示す。
図9】本発明の第3実施形態による構成を示す。
図10】第3実施形態の別の構成例を示す。
図11】本発明の第4実施形態による構成を示す。
図12】本発明の第4実施形態の説明図である。
図13】本発明の第5実施形態による構成を示す。
図14】本発明の第6実施形態による構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態の構成を示す。図3は、鉛直面による断面図である。図4(A)は、図3の4A−4A線矢視図であり、送電コイル3とコア7のみを示している。図4(B)は、図3の4B−4B線矢視図であり、受電コイル5とコア9のみを示している。図4(C)は、図3の4C−4C線矢視図であり、検出ループ19aのみを示している。
【0021】
図3の非接触給電システム20は、送電用のコイル装置(以下、送電コイル装置という)30A及び受電用のコイル装置(以下、受電コイル装置という)30Bを備える。送電コイル装置30Aは、送電コイル3及びコア7を備え、受電コイル装置30Bは、受電コイル5及びコア9を備えている。送電コイル装置30Aは、本発明の第1実施形態によるカバー10を備える。また、送電コイル装置30Aは、送電コイル3を支持するコイル支持体11を備える。
【0022】
送電コイル3と受電コイル5の一方は、本発明の第1コイルに対応し、送電コイル3と受電コイル5の他方は、本発明の第2コイルに対応する。
【0023】
送電コイル3は、非接触で受電コイル5に送電する。送電コイル3が受電コイル5へ非接触で給電する時(以下、単に非接触給電時という)に、図3に示すように、送電コイル3と受電コイル5とは、鉛直方向に間隔をおいて配置される。送電コイル3の中心軸Ctと、受電コイル5の中心軸Crとは、水平方向を向いており、互いに対して平行である。
【0024】
送電コイル3と受電コイル5は、それぞれ、磁性材料で形成されたコア7,9に巻かれた導線である。第1実施形態では、送電コイル3及び受電コイル5は、ソレノイド型コイルである。図3では、コア7,9は板状である。図3に示す非接触給電時に、板状のコア7の面のうち最も広い面である上面は、板状のコア9の面のうち最も広い面である下面に鉛直方向に対向している。
【0025】
送電コイル装置30Aにおいて、磁界を遮蔽可能な材料(例えばアルミニウム)で形成された磁界遮蔽部が設けられる。この磁界遮蔽部は、送電コイル3を下方から覆う。図3の例では、コイル支持体11が、上述の磁界遮蔽部となっている。
【0026】
受電コイル5は、カバー13に下方から覆われている。図3において、受電コイル5の上方には、磁界を遮蔽可能な材料(例えばアルミニウム)で形成されたコイル支持部15が設けられている。コイル支持部15は、受電コイル5を上方から覆う。コイル支持部15は、図3の例では、カバー13に取り付けられている。
【0027】
カバー10は、送電コイル3と受電コイル5との間に位置するように設けられる。カバー10は、送電コイル3と受電コイル5の一方(図3の例では、送電コイル3)の上部を覆う。すなわち、カバー10は、鉛直方向に重なるように配置された送電コイル3と受電コイル5のうち、下側のコイル(この例では、送電コイル3)の上部を覆うように、下側のコイルを支持するコイル支持体11に設けられる。
【0028】
送電コイル装置30Aは、本発明の第1実施形態によるコイル装置用の異物検出装置17を備える。
【0029】
異物検出装置17は、カバー10と異物検出コイル19と異物検出部21を有する。カバー10は、異物検出コイル19と異物検出部21のうち、図3のように異物検出コイル19のみを覆ってもよいし、図示を省略するが異物検出コイル19と異物検出部21の双方を覆ってもよい。また、本実施形態では、送電コイル装置30Aが、異物検出コイル19を含んでいるため、送電コイル装置30Aのカバー10と異物検出装置17のカバー10とは、一体となっている。図3の例では、カバー10が、送電コイル装置30Aのカバーと、異物検出装置17のカバーとの両方を兼ねている。カバー10の上面(受電コイル5に対向する対向面)に異物が存在すると、送電コイル3を流れる交流電流(以下、送電用電流という)によって発生する磁場が乱れる。異物検出装置17は、この乱れを検出することにより、異物の有無を判断する。
【0030】
異物検出コイル19は、1つ又は複数の検出ループ19aで実現される。各検出ループ19aは、導線をループ状に形成したものである。図4(C)の例では、1本の導線を8の字状に配置することにより形成された2つの検出ループ19aを1対として、複数対(20対)の検出ループ19aが設けられている。複数の検出ループ19aは、送電コイル3に関して、送電コイル装置30Aの上述の磁界遮蔽部(図3では、コイル支持体11)の反対側に位置する。また、複数の検出ループ19aは、カバー10と送電コイル3の間に位置する。つまり、異物検出コイル19は、送電コイル3と受電コイル5との間に位置する。
【0031】
検出ループ19aを用いて、次のように異物を検出する。カバー10の上面(以下、単にカバー上面ともいう)に、導電性材料の異物(例えば、硬貨、鉄くぎなど)が載ると、検出ループ19aを貫通する磁束が変化する。検出ループ19aに磁束が貫通すると、検出ループ19aは電気信号(誘起電圧、誘起電流)を異物検出部21に出力するが、磁束の変化により、検出ループ19aからの出力信号が変化する。異物検出部21は、この変化を検出し、この変化に基づいて、カバー上面に異物が存在するかを判断する。例えば、異物検出部21は、検出ループ19aを貫通する磁束の変化による検出ループ19aの電流変化、または、この電流変化による電圧変化に基づいて、上述の異物検出信号を出力する。異物検出部21は、例えばプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータである。なお、異物検出部21は、異物検出装置17の構成要素ではなく、送電コイル装置30Aに設けられてもよい。
【0032】
カバー10の上面は、少なくとも1つの傾斜面10a,10bを含む。第1実施形態によると、傾斜面10a,10bは、送電コイル3のコイル面に対して傾いている。送電コイル3のコイル面は、送電コイル3を構成する導線の巻軸方向(すなわち、中心軸Ctの方向)と平行に延びている面(水平面)であり、板状のコア7の面のうち最も広い面に対応する。なお、カバー10は、傾斜面を複数含むことに限定されず、少なくとも1つの傾斜面を含めばよい。
【0033】
なお、送電コイル3のコイル面に平行に、各検出ループ19aが配置されている。図3では、各検出ループ19aは、同じ平面内に配置されている。
【0034】
各傾斜面10a,10bは、図3では平面であるが、曲面であってもよい。
【0035】
図5(A)は、図3において、送電コイル3に流れる送電用電流により発生する磁力線を示している。図5(B)は、図5(A)の部分拡大図である。
【0036】
異物(例えば、板状の異物)がカバー上面に載る時、多くの場合、安定性の観点から、この異物は、その面積が最も大きい最大面をカバー上面に接触させて静止する。この場合、カバー上面が水平であるときには、異物のより小さい面が水平方向を向く。図5(B)において、実線で示す異物X1は、その最大面を傾斜面10aに接触させて静止している。図5(B)において、一点鎖線は、その最大面を水平なカバー上面に接触させて静止した場合の異物X2を示す。異物X1と異物X2とは同じものである。図5(A)のように、カバー10の付近では、磁力線の向きは、水平に近づくため、カバー10が傾斜面10aを有していない場合、異物X2の小さい面に磁束(図5(B)では1本の磁力線)が鎖交することになる。カバー10が傾斜面10aを有することにより、異物X1の大きい面に磁束が鎖交することになる(異物において磁束が鎖交する面積を大きくすることができる)。図5(B)では、異物X1に4本の磁力線が鎖交するようになる。このように異物を鎖交する磁力線の数が増えるので、異物によって検出ループ19aを鎖交する磁束の変化が大きくなり、その結果、異物検出装置17(検出ループ19a)による異物検出の精度が向上する。
【0037】
棒状の異物が傾斜面10a,10bに載った場合にも、この異物を貫通する磁力線の数は、この異物が水平なカバー上面に載った場合よりも多くなる。したがって、棒状の異物についても、傾斜面10a,10bにより、異物検出装置17(検出ループ19a)による異物検出の精度が向上する。
【0038】
図6(A)は、図4(C)において、検出ループ19aによる検出感度が相対的に低い低感度領域RLSと、検出ループ19aによる検出感度が相対的に高い高感度領域RHSを示した図である。図6(B)は、図6(B)の部分拡大図であり、1本の導線で形成された1対の検出ループ19aを示す。図6(C)は、図6(B)において、異物がカバー上面に載った状態を示す。
【0039】
第1実施形態によると、傾斜面10a,10bは、検出ループ19aによる検出感度が相対的に低い低感度領域RLSから、検出ループ19aによる検出感度が相対的に高い高感度領域RHSに向かって下方に傾斜している。
【0040】
低感度領域RLSとして、第1の低感度領域RLS1と第2の低感度領域RLS2がある。
【0041】
第1の低感度領域RLS1は、図6(A)(B)において編み目が描かれている領域と、各検出ループ19aの中心軸方向(鉛直方向)に重複している。すなわち、各検出ループ19aの中心軸方向から見た場合に、第1の低感度領域RLS1は、1本の導線で形成された複数個(好ましくは、偶数個)の検出ループ19aのうち、同じ向き(例えば、図6(A)(B)の紙面裏側から紙面表側への向き)の磁束が貫通した場合に互いに打ち消し合う電流が流れることになる検出ループ19a同士の境界、または、この境界とその近傍である。このような低感度領域が存在することは、例えば上記特許文献2にも示されている。
【0042】
第2の低感度領域RLS2は、図6(A)(B)においてハッチングした領域と、各検出ループ19aの中心軸方向(図7では鉛直方向)に重複している。すなわち、第2の低感度領域RLS2は、検出ループ19aを構成する導線と、この検出ループ19aの中心軸方向(図6(A)(B)では、この図の紙面に垂直な方向)に重複している。ただし、第1の低感度領域RLS1が存在する場合には、第2の低感度領域RLS2は、第1の低感度領域RLS1を除いた領域である。
【0043】
高感度領域RHSは、各検出ループ19aの内側の領域と、この検出ループ19aの中心軸方向に重複している。
【0044】
図6(C)に示すように、第1の低感度領域RLS1に異物X1が存在する場合、検出ループ19aの中心軸方向に見て、この異物X1の位置が、互いに隣接する検出ループ19aの境界またはその近傍であるので、この異物X1が、これらの検出ループ19aを貫通する磁束に略同じ影響を与える。したがって、これらの影響による検出ループ19aの電流変化も打ち消されて、異物を検出できない可能性がある。
【0045】
図6(C)に示すように、第2の低感度領域RLS2に異物X2(実線で示す異物X2)が存在する場合に、この異物X2が検出ループ19aを貫通する磁束に与える影響は、同じ異物(一点鎖線で示す異物X3)が高感度領域RHSに存在する場合に、この異物X3が検出ループ19aを貫通する磁束に与える影響よりも小さい。したがって、第2の低感度領域RLS2に異物が存在する場合には、この異物が高感度領域RHSに存在する場合よりも、異物の検出精度が低くなる。
【0046】
図7は、図3のVII−VII線矢視図である。図7において、網目が描かれた領域は、第1の低感度領域RLS1であり、ハッチングされた領域は、第2の低感度領域RLS2である。
【0047】
図7の構成例では、各傾斜面10a,10bは、図7の左右方向において高感度領域RHSに整合している第1の低感度領域RLS1から高感度領域RHSまで、送電コイル3の中心軸Ct方向(水平方向)に下方へ傾斜している。より具体的には、各傾斜面10aは、図3の紙面と垂直な方向に直線状に延びる頂部2から、図3の紙面と垂直な方向に直線状に延びる底部4まで図3の左下方に傾斜している。各傾斜面10bは、図3の紙面と垂直な方向に直線状に延びる頂部2から、図3の紙面と垂直な方向に直線状に延びる底部4まで図3の右下方に傾斜している。各頂部2は、低感度領域RLSにあり、各底部4は、高感度領域RHSにある。また、各頂部2は、隣接する傾斜面10a,10bに共有され、各底部4は、隣接する傾斜面10a,10bに共有されている。
【0048】
図7の構成例によると、第1または第2の低感度領域RLS1,RLS2において、図7の左右方向に高感度領域RHSに整合している位置で、異物が傾斜面10a,10bに載った場合に、この異物は、自重により、傾斜面10aまたは10bに沿って高感度領域RHSへ移動して高感度領域RHSの底部4または底部4近傍で静止する。
【0049】
また、図3において、各傾斜面10a,10bに異物が載った場合、図5(B)のように、この異物に鎖交する磁力線(磁束)が多くなる。したがって、異物が、これらの傾斜面10a,10bのいずれかに載った状態で、高感度領域RHSで静止すると、さらに、異物の検出精度が向上する。
【0050】
また、図3において、カバー10の上面は、互いに向きの異なる多数の傾斜面10a,10bを有し、これらの傾斜面10a,10bは、カバー10の上面に(規則正しい)多数の凹凸(頂部2と底部4)を形成している。これにより、カバー10の上面に、重いもの(例えば、人)が載った場合に、カバー10に作用する力が分散されるので、カバー10の強度が高まる。
【0051】
[第2実施形態]
図8(A)は、本発明の第2実施形態による異物検出装置17と送電コイル装置30Aを示す。図8(A)は、鉛直面による断面図である。第2実施形態において、以下で説明しない点は、上述の第1実施形態の場合と同じである。
【0052】
図8(B)は、図8(A)のB−B線矢視図である。図8(B)において、網目が描かれた領域は、第1の低感度領域RLS1であり、ハッチングされた領域は、第2の低感度領域RLS2である。
【0053】
図8では、4つの傾斜面10c,10d,10e,10fを1組として、各組の傾斜面10c,10d,10e,10fは、対応する1つの検出ループ19aの中心軸方向(図8では、鉛直方向)に、この検出ループ19aの内側領域と重なる位置に設けられている。各組において、傾斜面10c,10d,10e,10fは、それぞれ、水平方向に直線状に延びる頂部2から検出ループ19aの中心軸上にある底部4まで下方に傾斜している。傾斜面10c,10d,10e,10fの各々は、図8(B)のように、検出ループ19aの中心軸方向(図8では、鉛直方向)から見た場合に三角形状である。
【0054】
上述の各組において、図8の例では、傾斜面10cは、図8(B)において右側の頂部2から左側の底部4まで下方に傾斜し、傾斜面10dは、図8(B)において左側の頂部2から右側の底部4まで下方に傾斜し、傾斜面10eは、図8(B)において上側の頂部2から下側の底部4まで下方に傾斜し、傾斜面10fは、図8(B)において下側の頂部2から上側の底部4まで下方に傾斜している。
【0055】
第2実施形態によると、カバー上面のどの傾斜面10c,10d,10e,10fに異物が載っても、異物は、自重により傾斜面10c,10d,10e,10fに高感度領域の底部4へ案内されて、底部4に静止する。したがって、カバー上面のどの傾斜面10c,10d,10e,10fに異物が載っても、異物を高い感度で検出できる。
【0056】
また、好ましくは、図8のように、隣接する上述の組同士の間に間隔をおくことなく、カバー10の上面全体を、隙間なく多数の組の傾斜面10c,10d,10e,10fで形成する。
【0057】
図8において、カバー10の上面は、互いに向きの異なる多数の傾斜面10c,10d,10e,10fを有し、これらの傾斜面は、カバー10の上面に(規則正しい)多数の凹凸(頂部2と底部4)を形成している。これにより、カバー10の強度が高まる。
【0058】
[第3実施形態]
図9(A)は、本発明の第3実施形態の構成を示す図である。図9(A)は、鉛直面による断面図である。第3実施形態において、以下で説明しない点は、上述の第1実施形態の場合と同じである。
【0059】
図9(B)は、図9(A)のB−B線矢視図である。図9(B)において、網目が描かれた領域は、第1の低感度領域RLS1であり、ハッチングされた領域は、第2の低感度領域RLS2である。
【0060】
第3実施形態では、各傾斜面10aは、図9(A)の紙面と垂直な方向に直線状に延びる頂部2から、図9(A)の紙面と垂直な方向に直線状に延びる底部4まで図9(A)の左下方に傾斜している。各傾斜面10aは、1つの検出ループ19aの全体または複数の検出ループ19aを跨ぐように、送電コイル3の中心軸Ct方向(図9(A)の左方向)に対して下方へ傾斜している。すなわち、各傾斜面10aの中心軸Ct方向の寸法は、1つの検出ループ19aの中心軸Ct方向における寸法よりも大きく、または、複数の検出ループ19aの中心軸Ct方向における寸法の合計よりも大きい。隣接する傾斜面10aのうち、一方の頂部2と、他方の底部4とは、鉛直面6により結合されている。
【0061】
第3実施形態において、送電コイル装置30Aのカバー10の上面は、送電コイル3のコイル面に対して傾いた端部傾斜面10gを含む。端部傾斜面10gは、カバー10の上面の端まで下方に傾斜している。端部傾斜面10gは、その斜め下方端(図9(A)の左端)において水平方向に開放されている。したがって、この端部傾斜面10gに載った異物を、その自重により端部傾斜面10g上を斜め下方に移動させ、端部傾斜面10gにおける図9(A)の左端から落下させることができる。
【0062】
図10は、図9(A)の送電コイル装置30Aにおいて、一部の検出ループ19aを省略した構成を示す。
【0063】
第3実施形態において、図10のように、鉛直方向から見た場合に、各傾斜面10aの底部4に重複する検出ループ19a以外の検出ループ19aを省略してもよい。例えば、鉛直方向から見た場合に、各傾斜面10aの底部4に重複する位置にのみ検出ループ19aを設けてもよい。
【0064】
第3実施形態においても、異物が傾斜面10aに載った場合に、この異物は、自重により、傾斜面10aに沿って高感度領域RHSへ移動して高感度領域RHSの底部4で静止する。したがって、この異物を高精度に検出できる。
【0065】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4実施形態による構成を示す。図11(A)は、鉛直面による断面図である。図11(B)は、図11(A)のB−B線矢視図であり、送電コイル3と検出ループ19aのみを示している。図11(C)は、図11(B)における多数の検出ループ19aのうちの一部のみを図示している。第4実施形態において、以下で説明しない点は、上述の第1実施形態の場合と同じである。
【0066】
第4実施形態では、送電コイル3と受電コイル5の各々は、渦巻き状の導線である。例えば、送電コイル3と受電コイル5の各々は、同一平面内で渦巻き状に形成されている。
【0067】
図11(B)(C)に示すように、1本の導線を略8の字状に配置することにより形成された2つの検出ループ19aを1対として、複数対(8対)の検出ループ19aが設けられている。図11(C)において、実線は、1対の検出ループ19aを示し、破線は、別の1対の検出ループ19aを示し、他の対の検出ループ19aの図示を省略している。検出ループ19aの各対において、2つの検出ループ19aは、図11(B)(C)のように、中心軸Ctの方向から見た場合に、互いに点対称である。ここで、点対称の中心は、中心軸Ct上に、または、中心軸Ctの近傍に位置する。ただし、検出ループ19aの配置や形状は、図11の例に限定されず、任意である。
【0068】
図12(A)は、図11(A)において、送電コイル3を流れる送電用電流による磁力線を示した図である。図12(B)は、図12(A)の12B−12B線矢視図であり、図12(C)は、図12(B)のC−C線断面図である。
【0069】
第4実施形態では、送電コイル3のコイル面は、送電コイル3の中心軸Ctと直交する面(図11(A)では水平面)である。第4実施形態によると、カバー10の上面は、送電コイル3のコイル面に対して傾いた傾斜面10hを含む。
【0070】
低感度領域RLSは、図12(B)のハッチング部分である。第1実施形態と同様、各検出ループ19aの中心軸方向から見た場合に、図12(B)のハッチング部分で示すように、図11(B)における各対の検出ループ19a同士の境界、または、この境界とその近傍(つまり、本実施形態では中心軸Ctの近傍領域)は、低感度領域RLSとなる。また、各検出ループ19aの中心軸方向から見た場合に、図12(B)のハッチング部分で示すように、中心軸Ct回りの水平な周方向において、図11(B)における隣接する検出ループ19a同士の境界、または、この境界とその近傍は、低感度領域RLSとなる。
【0071】
傾斜面10hは、検出ループ19aによる検出感度が相対的に低い低感度領域RLS図12(B)のハッチング部分)から、検出ループ19aによる検出感度が相対的に高い高感度領域RHSに向かって下方へ傾斜している。低感度領域RLSは、各検出ループ19aを形成する導線と、この検出ループ19aの中心軸方向に重複する。高感度領域RHSは、各検出ループ19aの内側部分と、この検出ループ19aの中心軸方向に重複する。
【0072】
第4実施形態によると、各傾斜面10hは、低感度領域RLSに位置する頂部2から高感度領域RHSに位置する底部4まで、中心軸Ct回りの水平な周方向に対して送電コイル3側(図12(A)では、下方)へ傾斜している。各頂部2と各底部4は、中心軸Ctに対する半径方向(径方向)に直線状に延びる。各頂部2は、互いに隣接する傾斜面10hに共有されている。互いに隣接する傾斜面10hは、共有する頂部2から別々の底部4まで互いに反対側に延びている。
【0073】
第4実施形態では、図11(A)のように、カバー10の上面は、送電コイル3のコイル面に対して傾いた傾斜面10iを含む。傾斜面10iは、円錐面である。傾斜面10iに異物が載ると、高感度領域RHSが周方向に間隔をおいて存在する径方向外側へ異物を案内する。すなわち、傾斜面10iの上記円錐面は、中心軸Ct上に位置する頂点を有し、傾斜面10iは、この頂点の低感度領域RLSから、高感度領域RHSが周方向に間隔をおいて存在する径方向外側まで下方に傾斜している。
【0074】
[第5実施形態]
第5実施形態によると、第1〜第4実施形態において、送電コイル装置30Aは、カバー10を振動させる振動装置23を有する。
【0075】
図13は、第1実施形態の図3において振動装置23を設けた場合を示す。以下、図13に基づいて説明するが、第2〜第4実施形態において振動装置23を設けた場合も以下と同様である。
【0076】
振動装置23は、カバー10に取り付けられた振動発生機構(例えば、偏心モータ)23aと、電源から振動発生機構23aへ電力を供給させる閉状態と、電源から振動発生機構23aへ電力を供給させない開状態と間で切り替えられるスイッチ23bとを有する。スイッチ23bは、手動または自動で切り換えられる。
【0077】
手動の場合、スイッチ23bを閉状態と開状態との間で切り換えるための操作部が設けられる。この操作部(ボタンやレバーなど)を人が操作することにより、スイッチ23bは、閉状態と開状態との間で切り換えられる。
【0078】
自動の場合、送電コイル3への電流供給を開始する時に、スイッチ23bは、自動的に、開状態から閉状態に切り換えられる。例えば、送電コイル3への電流供給を開始するための操作部が設けられる。この操作部(ボタンやレバーなど)を人が操作することにより、送電コイル3への送電用電流の供給が開始されるとともに、スイッチ23bが、自動的に、開状態から閉状態に切り換えられる。このようにスイッチ23bが構成されている。
【0079】
第5実施形態によると、カバー10に取り付けられた振動発生機構23aに電力を供給すると、振動発生機構23aが振動してカバー10が振動する。これにより、カバー上面の異物を、より確実に底部4へ移動させ、または、カバー上面から落下させることができる。
【0080】
[第6実施形態]
第6実施形態によると、第3実施形態において、検出ループ19aを傾斜面と平行に配置する。
【0081】
図14(A)は、図9(A)に示す送電コイル装置30Aにおいて、各検出ループ19aを傾斜面10aと平行に配置した場合を示す。
図14(B)は、図10に示す送電コイル装置30Aにおいて、各検出ループ19aを傾斜面10aと平行に配置した場合を示す。
図14(A)において、各検出ループ19a(検出ループ19aの中心軸に直交する平面)は、この検出ループ19aと鉛直方向に重複する傾斜面10aまたは端部傾斜面10gに平行になっている。図14(B)において、各検出ループ19aは、この検出ループ19aと鉛直方向に重複する傾斜面10aに平行になっている。
【0082】
第6実施形態によると、傾斜面に載った異物と検出ループ19aとの距離を減らすことができる。したがって、傾斜面上の異物により、検出ループ19aを貫通する磁束の変化が大きくなり、検出ループ19aによる検出精度が向上する。
【0083】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1〜3のいずれかを採用してもよいし、以下の変更例1〜3の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、他の点は上述と同じである。
【0084】
(変更例1)
上述では、送電コイル3が受電コイル5の下方に位置し、カバー10は、送電コイル3を上方から覆うように設けられていた。しかし、本発明によると、受電コイル5が送電コイル3の下方に位置し、カバー10が、受電コイル5を上方から覆うように設けられていてもよい。この場合、上述の内容や各図面の内容は、送電コイル3と受電コイル5の位置が互いに入れ替えられて適用される。
したがって、送電コイル3と受電コイル5の一方を第1コイルとし、送電コイル3と受電コイル5の他方を第2コイルとして、本発明のコイル装置は、非接触で第1コイルへ送電または第1コイルから受電するための第2コイルを備えるものである。
【0085】
(変更例2)
上述では、送電コイル装置30Aのカバー10が異物検出装置17のカバー10と一体となっているが、本発明はこの態様に限定されない。例えば、送電コイル装置30Aと異物検出装置17とが別体で実現されていてもよい。この場合、送電コイル装置30Aの上方に、もしくは送電コイル装置30Aのカバー10の上面に、異物検出装置17(異物検出コイル19)が配置されることになる。
【0086】
(変更例3)
上述した実施形態と各図の構成は、本発明の例示に過ぎない。本発明は、送電コイルと受電コイルと異物検出コイルの間の様々な位置関係に適用できる、すなわち、本発明によると、カバー10の上面に含まれる傾斜面は、異物検出コイルの検出感度が相対的に低い低感度領域から、異物検出コイルの検出感度が相対的に高い高感度領域へ向かって下方に傾斜してさえいればよい。
【符号の説明】
【0087】
2 頂部、3 送電コイル、4 底部、5 受電コイル、6 鉛直面、7 コア、9 コア、10 カバー、10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i 傾斜面、11 コイル支持体、13 カバー、15 コイル支持部、17 異物検出装置、19 異物検出コイル、19a 検出ループ、20 非接触給電システム、21 異物検出部、23 振動装置、23a 振動発生機構、23b スイッチ、30A 送電コイル装置、30B 受電コイル装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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