【文献】
Metabolism of 3-indolylalkane carboxylic acids, and their amides, nitriles, and methyl esters in plant tissues,Proceedings of the Royal Society of London, Series B: Biological Sciences,1960年,152, p231-254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の植物成長調整剤は、一般式(1):
【0027】
[式中、R
1〜R
4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、又は置換されていてもよいアリール基;R
5〜R
6は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアリール基、又は−R
9−COR
10(R
9はアルキレン基、R
10は−NH
2又は−NHOR(Rは水素原子又はアルキル基);Xは−NH−又は一般式(2):
【0029】
(式中R
7及びR
8は同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は置換されていてもよいアリール基である)
で示される基;ただし、R
5及びR
6の双方が水素原子となることはない。]
で示される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む。
【0030】
塩としては、塩基付加塩が好ましく採用できる。
【0031】
具体的には、本発明の化合物における酸性基である末端カルボキシル基に対して、農学的に許容される塩基性化合物と塩を形成することができる。このような塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニアとの塩、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
【0032】
つまり、本発明で対象とする化合物は、カルボキシアルキル基を有するインドール化合物又はナフタレン化合物中の末端カルボキシル基を、亜鉛に配位し得るヒドロキサム酸由来の基又はその類似基としたものであり、この一般式(1)で示される化合物群には、上記一般式(1)からも理解できるように、インドール誘導体とナフタレン誘導体とを含む。なお、各置換基R
1〜R
8については後に詳述する。
【0033】
1.インドール誘導体
本発明の植物成長調整剤において、有効成分として含まれるインドール誘導体は、一般式(1A):
【0035】
[式中、R
1〜R
6は前記に同じである。]
で示される化合物である。
【0036】
一般式(1A)において、R
1〜R
4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は置換されていてもよいアリール基である。
【0037】
アリール基としては、特に制限されないが、炭素数が6〜50のものが好ましく、炭素数が6〜30のものがより好ましく、炭素数が6〜20のものがさらに好ましい。このようなアリール基としては、具体的には、フェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が好ましい。
【0038】
アリール基が有していてもよい置換基としては、特に制限されないが、水酸基、ハロゲン原子(F、Br、Cl等)、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、ヘテロ原子含有基、−COOR” (R”は水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。以下、アリール基が有していてもよい置換基について説明する。
【0039】
置換されていてもよいアルキル基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6のアルキル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0〜6個が好ましく、0〜3個がより好ましい。このような置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0040】
置換されていてもよいアルコキシ基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、又は分岐鎖状の炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6のアルコキシ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0〜6個が好ましく、0〜3個がより好ましい。このような置換されていてもよいアルキル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、パーフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基等が挙げられる。
【0041】
置換されていてもよいアルケニル基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0〜6個が好ましく、0〜3個がより好ましい。このような置換されていてもよいアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0042】
置換されていてもよいアルキニル基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6のアルキニル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0〜6個が好ましく、0〜3個がより好ましい。このような置換されていてもよいアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、フェニルアセチニル基等が挙げられる。
【0043】
ヘテロ原子含有基としては、ヘテロ原子として窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、ホウ素原子(B)、リン原子(P)、ケイ素原子(Si)等の少なくとも1つ、特に窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)等の少なくとも1つを有する直鎖状、分岐鎖状又は環状の基が好ましい。具体的には、シアノ(−CN)基、ニトロ(−NO
2)基等や、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の複素環から水素原子を1つ脱離させてなる基等が挙げられる。また、上記複素環同士又はこれらとベンゼン環等との縮合環(チエノチオフェン環、キノリン環等)から水素原子を1つ脱離させてなる基も使用できる。
【0044】
−COOR”におけるR”は水素原子又は炭化水素基であり、水素原子又は上記説明したアルキル基が好ましい。具体的には、−COOR”としては、−COOH、−COOCH
3、−COOC
2H
5、−COOC
3H
7、−COOC(CH
3)
2、−COOC
4H
9、−COOCH(CH
3)C
2H
5、−COOCH
2CH(CH
3)
2、−COOC(CH
3)
3等が挙げられる。
【0045】
このようなR
1〜R
4としては、具体的には、水素原子の他、
【0048】
一般式(1A)において、R
5〜R
6は、同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアリール基、又は−R
9−COR
10(R
9はアルキレン基、R
10は−NH
2又は−NHOR(Rは水素原子又はアルキル基))である。特に、植物成長活性の観点からは、R
5を水素原子又は置換されていてもよいアリール基(特に水素原子)、R
6を−R
9−COR
10とすることが好ましい。また、植物枯死抑制の観点からは、R
5を−R
9−COR
10、R
6を水素原子又は置換されていてもよいアリール基(特に水素原子)とすることが好ましい。
【0049】
−R
9−COR
10において、R
9はアルキレン基であり、炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6のアルキレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0050】
また、−R
9−COR
10において、R
10は−NH
2又は−NHOR(Rは水素原子又はアルキル基)である。Rは水素原子又はアルキル基であり、アルキル基としては上述したものが挙げられる。具体的には、−R
9−CONH
2、−R
9−CONHOH、−R
9−CONHOCH
3等が好ましく、−CH
2−CONH
2、−CH
2−CONHOH、−CH
2−CONHOCH
3、−C
2H
4−CONHOH等がより好ましい。特に、植物成長活性の観点からは、−CH
2−CONHOH等が好ましく、オーキシン植物成長活性阻害の観点からは、−C
2H
4−CONHOH等が好ましく、植物枯死抑制の観点からは、−CH
2−CONH
2、−CH
2−CONHOH、−CH
2−CONHOCH
3、−C
2H
4−CONHOH等が好ましい。
【0051】
また、R
5〜R
6としての、置換されていてもよいアリール基は、上記R
1〜R
4にて例示したものが挙げられる。
【0052】
ただし、本発明では、亜鉛に配位し得るヒドロキサム酸由来の基又はその類似基とすることにより、植物枯死を抑制することができるため、R
5及びR
6の双方が水素原子となることはない。
【0053】
特に、上記のとおり、R
5〜R
6のいずれかを、−R
9−CONH
2、−R
9−CONHOH、−R
9−CONHOCH
3、好ましくは−CH
2−CONH
2、−CH
2−CONHOH、−CH
2−CONHOCH
3、−C
2H
4−CONHOH等とした場合には、植物の枯死をさらに効率的に抑制することができる。
【0056】
等は、植物枯死抑制剤として有用である。
【0057】
また、上記のとおり、R
5〜R
6のいずれかを、−CH
2−CONHOH等とした場合には、優れた植物成長活性を有するため、植物成長促進剤として有用である。
【0060】
等は、植物成長促進剤として特に有用である。
【0061】
さらに、上記のとおり、R
5〜R
6のいずれかを、−C
2H
4−CONHOH等とした場合には、オーキシン応答性遺伝子の発現を誘導し得るオーキシンと競合することにより、植物の枯死を抑制できるため、オーキシン植物成長活性阻害剤として有用である。
【0064】
等は、オーキシン植物成長活性阻害剤として有用である。
【0065】
2.インドール誘導体の製造方法
インドール誘導体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、オーキシンを出発材料として、エステル化剤及び第1塩基により、オーキシンが有するカルボキシル基をエステル化し(第1反応)、その後、所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物と反応させ、且つ必要に応じて第2塩基により中和させ、上記説明したインドール誘導体を得る(第2反応)ことができる。これらの反応は別々に行ってもよいし、連続して行ってもよい。
【0066】
エステル化剤としては、特に制限されないが、カルボジイミド化合物(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)等)の他、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、o−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、o−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU)等が挙げられる。なお、エステル化剤としてHOBtを使用する場合はカルボジイミド化合物と併用することが好ましいが、HATU、HBTU、HCTU、TBTU、TCTU等を使用する場合は単独でも使用できるし、他のエステル化剤と併用してもよい。
【0067】
エステル化剤の使用量は、製造条件等により異なるが、オーキシン1モルに対して、0.01〜10モルが好ましく、0.5〜7モルがより好ましく、0.7〜5モルがより好ましい。なお、HOBtとカルボジイミド化合物とを併用する場合は、各エステル化剤を前記使用量の範囲内とすることが好ましい。
【0068】
第1塩基としては、オーキシンが有するカルボキシル基をエステル化できるものであれば特に制限はないが、具体的には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン(NMM)、ピリジン、ルチジン、コリジン、イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等が挙げられる。そのなかでもトリエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン(NMM)、ピリジン、ルチジン、イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等が好ましく、特にN−メチルモルホリン(NMM)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等がより好ましい。これらの第1塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0069】
第1塩基の使用量は、製造条件等により異なるが、オーキシン1モルに対して、0.01〜10モルが好ましく、0.5〜7モルがより好ましく、0.7〜5モルがより好ましい。なお、第1塩基として2種以上使用する場合は、合計量が前記範囲内となるように調整すればよい。
【0070】
第1反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、特に制限されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等の環状エーテル類;塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、アミド類(特にジメチルホルムアミド)等が好ましい。
【0071】
第1反応における反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。反応時間は特に制限されないが、通常3分〜48時間程度、好ましくは5分〜24時間程度とすればよい。
【0072】
また、第1反応における反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。
【0073】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物としては、特に制限されないが、水溶性化合物が好ましい。具体的には、アンモニア(NH
3)、アンモニア水(NH
4OH)等のアンモニア類;ヒドロキシアミン(NH
2OH)、塩酸ヒドロキシアミン(NH
2OH・HCl)、硫酸ヒドロキシアミン(NH
2OH・H
2SO
4)等のヒドロキシアミン類;o−メチルヒドロキシアミン(NH
2OCH
3)、塩酸o−メチルヒドロキシアミン(NH
2OCH
3・HCl)、硫酸o−メチルヒドロキシアミン(NH
2OCH
3・H
2SO
4)等のアルキルヒドロキシアミン類等が挙げられる。
【0074】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物の使用量は、製造条件等により異なるが、オーキシン1モルに対して、0.01〜10モルが好ましく、0.5〜7モルがより好ましく、0.7〜5モルがより好ましい。
【0075】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物として、上記例示した塩酸塩や硫酸塩等の酸性塩を使用する際には、第2塩基を用いて中和することが好ましい。
【0076】
第2塩基としては、特に制限はないが、具体的には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン(NMM)、ピリジン、ルチジン、コリジン、イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等が挙げられ、N−メチルモルホリン(NMM)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等がより好ましい。これらの第2塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0077】
第2塩基の使用量は、製造条件等により異なるが、オーキシン1モルに対して、0.01〜10モルが好ましく、0.5〜7モルがより好ましく、0.7〜5モルがより好ましい。なお、第2塩基として2種以上使用する場合は、合計量が前記範囲内となるように調整すればよい。
【0078】
第2反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、特に制限されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等の環状エーテル類;塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、アミド類(特にジメチルホルムアミド)等が好ましい。
【0079】
第2反応における反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。反応時間は特に制限されないが、通常1〜48時間程度、好ましくは2〜24時間程度とすればよい。
【0080】
また、第2反応における反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。
【0081】
なお、R
5を−R
9−COR
10とする場合には、オーキシンではなく、1H−インドール−2−酢酸を出発物質として用い、同様の反応を行えばよい。1H−インドール−2−酢酸は公知の方法で合成することができる。
【0082】
また、オーキシンではなく、一般式(3):
【0084】
[式中、R
11はアルキレン基;R
12はアルキル基である。]
で示される化合物を用いて、必要に応じて塩基の存在下、所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物と反応させても、R
5を−R
9−COR
10とした本発明のインドール誘導体が得られる。
【0085】
一般式(3)において、R
11は、上記したアルキレン基、R
12は上記したアルキル基が挙げられ、その具体例も同様である。つまり、一般式(3)で示される化合物としては、
【0088】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物としては、上記したものが挙げられる。好ましい具体例も同様である。
【0089】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物の使用量は、製造条件等により異なるが、一般式(3)で示される化合物1モルに対して、0.1〜20モルが好ましく、1〜10モルがより好ましく、3〜8モルがより好ましい。
【0090】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物として、上記例示した塩酸塩や硫酸塩等の酸性塩を使用する際には、塩基を用いて中和することが好ましい。
【0091】
塩基としては、特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム等がより好ましい。これらの塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0092】
塩基の使用量は、製造条件等により異なるが、一般式(3)で示される化合物1モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、1〜20モルがより好ましく、5〜15モルがより好ましい。なお、塩基として2種以上使用する場合は、合計量が前記範囲内となるように調整すればよい。
【0093】
上記反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒は、上記したものが挙げられ、本工程では、アルコール類等が好ましく、メタノール等がより好ましい。
【0094】
反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。反応時間は特に制限されないが、通常5分〜24時間程度、好ましくは10分〜12時間程度とすればよい。
【0095】
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。
【0096】
さらに、置換されていてもよいアリール基を導入する場合は、公知の方法で導入することができる。
【0097】
また、インドール誘導体が公知化合物の場合は、市販のインドール誘導体を使用することもできる。
【0098】
3.ナフタレン誘導体
本発明の植物成長調整剤において、有効成分として含まれるナフタレン誘導体は、一般式(1B):
【0100】
[式中、R
1〜R
8は前記に同じである。]
で示される化合物である。
【0101】
一般式(1B)において、R
1〜R
4及びR
7〜R
8は、同じか又は異なり、いずれも水素原子又は置換されていてもよいアリール基であり、その具体例は上記したものが挙げられる。好ましいものも同様である。
【0102】
一般式(1B)において、R
5〜R
6は、同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアリール基、又は−R
9−COR
10(R
9はアルキレン基、R
10は−NH
2又は−NHOR(Rは水素原子又はアルキル基)である。特に、植物成長活性の観点からは、R
5を水素原子又は置換されていてもよいアリール基(特に水素原子)、R
6を−R
9−COR
10とすることが好ましく、植物枯死抑制活性の観点からは、R
5を−R
9−COR
10、R
6を水素原子又は置換されていてもよいアリール基(特に水素原子)とすることが好ましい。
【0103】
R
5及びR
6において、−R
9−COR
10及び置換されていてもよいアリール基としては、上記したものが挙げられる。好ましいものも同様である。
【0104】
ただし、本発明では、オーキシン中の末端カルボキシル基を、亜鉛に配位し得るヒドロキサム酸由来の基又はその類似基とすることにより、植物枯死を抑制することができるため、R
5及びR
6の双方が水素原子となることはない。
【0105】
特に、R
5〜R
6のいずれかを、−R
9−CONH
2、−R
9−CONHOH、−R
9−CONHOCH
3、好ましくは−CH
2−CONH
2、−CH
2−CONHOH、−CH
2−CONHOCH
3、−C
2H
4−CONHOH等とした場合には、植物の枯死をさらに効率的に抑制することができる。
【0108】
等は、植物枯死抑制剤として有用である。
【0109】
また、上記のとおり、R
5〜R
6のいずれかを、−CH
2−CONHOH等とした場合には、優れた植物成長活性を有するため、植物成長促進剤として有用である。
【0112】
等は、植物成長促進剤として特に有用である。
【0113】
さらに、上記のとおり、R
5〜R
6のいずれかを、−C
2H
4−CONHOH等とした場合には、オーキシン応答性遺伝子の発現を誘導し得るオーキシンと競合することにより、植物の枯死を抑制できるため、植物成長抑制剤(特に、オーキシン誘導性植物成長調整剤)として有用である。
【0116】
等は、オーキシン植物成長活性阻害剤として有用である。
【0117】
4.ナフタレン誘導体の製造方法
ナフタレン誘導体を製造する場合は、上記したインドール誘導体と同様の方法で製造してもよい。また、以下の製造方法を採用してもよい。
【0118】
具体的には、ナフタレン酢酸(1−ナフタレン酢酸又は2−ナフタレン酢酸)を出発物質として、ハロゲン化剤を用いて末端カルボキシル基をカルボン酸ハライド基(COX;Xはハロゲン原子(F、Cl、Br、I等))とし(第1反応)、その後、所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物と反応させ、且つ必要に応じて塩基により中和させ、上記説明したナフタレン誘導体を得る(第2反応)ことができる。これらの反応は別々に行ってもよいし、連続して行ってもよい。
【0119】
ハロゲン化剤としては、ナフタレン酢酸(1−ナフタレン酢酸又は2−ナフタレン酢酸)の末端のカルボキシル基をカルボン酸ハライド基に変換できるものであれば特に制限はされず、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が挙げられ、塩化オキサリルを使用することが一般的である。
【0120】
ハロゲン化剤の使用量は、製造条件等により異なるが、ナフタレン酢酸1モルに対して過剰量とすることが好ましく、0.01〜10モルが好ましく、0.5〜7モルがより好ましく、0.7〜5モルがより好ましい。
【0121】
第1反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、特に制限されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等の環状エーテル類;塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、アミド類(特にジメチルホルムアミド)等が好ましい。
【0122】
第1反応における反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。反応時間は特に制限されないが、通常5分〜48時間程度、好ましくは10分〜24時間程度とすればよい。
【0123】
また、第1反応における反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。
【0124】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物は、上記したインドール誘導体において使用できるものを使用することができる。好ましい具体例や使用量等も同様である。
【0125】
所望の基(−NH
2又は−NHOR)を有する化合物として、上記例示した塩酸塩や硫酸塩等の酸性塩を使用する際には、塩基を用いて中和することが好ましい。
【0126】
塩基としては、特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム等が挙げられる。これらのうち、炭酸カリウム等が好ましい。これらの塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0127】
第2塩基の使用量は、製造条件等により異なるが、ナフタレン酢酸1モルに対して、0.01〜10モルが好ましく、0.5〜5モルがより好ましく、0.7〜3モルがより好ましい。なお、塩基として2種以上使用する場合は、合計量が前記範囲内となるように調整すればよい。
【0128】
第2反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、特に制限されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等の環状エーテル類;塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、環状エーテル類(特にジエチルエーテル)等が好ましい。
【0129】
第2反応における反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。反応時間は特に制限されないが、通常30分〜48時間程度、好ましくは1〜24時間程度とすればよい。
【0130】
また、第2反応における反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。
【0131】
さらに、置換されていてもよいアリール基を導入する場合は、公知の方法で導入することができる。
【0132】
なお、ナフタレン誘導体が公知化合物の場合は、市販のナフタレン誘導体を使用することもできる。
【0133】
5.用途
本発明の化合物は、オーキシン過剰施用による枯死の原因である、オーキシン応答性遺伝子の発現誘導活性が、オーキシンよりも低い(若しくは無い)。したがって、過剰施用による対象植物(成長を調整したい植物)の枯死の危険性を低減しつつ、効率的に植物の成長(特に、伸長)を調整できる「植物成長調整剤(特に、植物伸長調整剤)」の有効成分として用いることができる。
【0134】
本発明の化合物は、植物の成長を促進することができるので、「植物成長調整剤」の中でも特に「植物成長促進剤」の有効成分として好適である。一方、本発明の化合物は、植物の成長(例えばオーキシンによる植物の成長)を抑制することもできるので、「植物成長調整剤」の中でも特に「植物成長抑制剤」の有効成分として好適であり、さらに「植物成長抑制剤」の中でも「オーキシン誘導性植物成長調整剤」の有効成分として好適である。
【0135】
また、本発明の化合物は、オーキシン応答性遺伝子の発現を誘導し得るオーキシンと競合することにより、植物の枯死を抑制できる「植物枯死抑制剤」の有効成分としても用いることができる。
【0136】
本発明の植物成長調整剤又は植物枯死抑制剤の対象植物は、特に限定されない。例えば、被子植物(双子葉植物、単子葉植物等)、裸子植物、コケ植物、シダ植物等の植物に対して広く適用できる。具体例としては、トマト、ピーマン、トウガラシ、ナス等のナス類、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ類、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ等の菜類、セルリー、パセリー、レタス等の生菜・香辛菜類、ネギ、タマネギ、ニンニク等のネギ類、ダイズ、ラッカセイ、インゲン、エンドウ、アズキ等の豆類、イチゴ等のその他果菜類、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等の直根類、サトイモ、キャッサバ、バレイショ、サツマイモ、ナガイモ等のイモ類、アスパラガス、ホウレンソウ、ミツバ等の柔菜類、トルコギキョウ、ストック、カーネーション、キク等の花卉類、イネ、トウモロコシ等の穀物類、ベントグラス、コウライシバ等の芝類、ナタネ、ラッカセイ等の油料作物類、サトウキビ、テンサイ等の糖料作物類、ワタ、イグサ等の繊維料作物類、クローバー、ソルガム、デントコーン等の飼料作物類、リンゴ、ナシ、ブドウ、モモ等の落葉性果樹類、ウンシュウミカン、レモン、グレープフルーツといった柑橘類、サツキ、ツツジ、スギ等の木本類等が挙げられる。
【0137】
本発明の植物成長調整剤又は植物枯死抑制剤の対象器官は、植物体を構成する器官である限り特に限定されない。対象器官としては、好ましくは茎、芽、根、子房、及び果実が挙げられ、より好ましくは茎、芽、及び根が挙げられ、さらに好ましくは茎が挙げられる。
【0138】
本発明の植物成長調整剤によれば、例えば対象器官の成長を促進することにより、対象器官(茎や果実等)の収量を増大させること等が可能となる。一方、例えば対象器官の成長を抑制することにより、植物を特定の方向に屈曲させる、或いは側芽の成長を抑制すること等が可能となる。さらに、本発明の植物成長調整剤によれば、使用量に厳密な注意を払うことなく、より簡便に植物の成長を調整することができる。
【0139】
本発明の植物成長調整剤及び植物枯死抑制剤は、本発明の化合物そのものでもよいが、本発明の化合物に加えて、剤形、施用態様等に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。植物成長調整剤中の本発明の化合物の含有割合は、特に限定されない。具体的には、0.0001〜100重量%、好ましくは0.01〜50重量%程度が例示される。
【0140】
本発明の植物成長調整剤及び植物枯死抑制剤の剤形は、農学的に許容される剤形である限り特に限定されない。例えば、液剤、固形剤、粉剤、顆粒剤、粒剤、水和剤、フロアブル剤、乳剤、ペースト剤、分散剤等が挙げられる。
【0141】
添加剤は、農学的に許容される添加剤である限り特に限定されない。例えば、担体、界面活性剤、増粘剤、増量剤、結合剤、ビタミン類、酸化防止剤、pH調整剤、揮散抑制剤、色素等が挙げられる。
【0142】
本発明の植物成長調整剤及び植物枯死抑制剤の施用態様は、農薬の使用態様として公知の態様(或いは将来開発される態様)である限り特に限定されない。例えば、散布、滴下、塗布、植物生育環境中(土壌中、水中、固形培地中、液体培地中等)への混合や溶解等が挙げられる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0144】
特に断りのない限り、乾燥溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF))を含むすべての材料は、商業的供給業者から入手し、さらに精製することなく用いた。特に断りのない限り、全ての反応は、標準的な真空ライン技法を用いて、フレームドライしたガラス容器でアルゴン雰囲気下に乾燥溶媒を用いて行った。後処理及び精製手順は、空気中で試薬グレードの溶媒を用いて行った。
【0145】
融点はMPA100 Optimelt自動融点測定システムで測定した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL JNM-ECA-600(
1H 600 MHz、
13C 150MHz)分光計で記録した。
1H NMRの化学シフトはCHCl
3(δ7.26 ppm)の相対的な百万分率(ppm)で表した。
13C NMRの化学シフトはCDCl
3(δ77.0 ppm)の相対的な百万分率(ppm)で表した。
【0146】
1.化合物の準備
下記表1に示される化合物を準備した(実施例1〜8及び比較例1〜4)。表1の構造式中に化合物の略称も併記した。各化合物の合成方法等について下記に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
1-1.実施例1
【0149】
【化22】
【0150】
DMF(3 mL)に、3-インドール酢酸(176.5 mg, 1.00 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(151.0 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)(211.2 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)を添加し、室温で5分間撹拌した。次に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(12.2 mg, 0.10 mmol, 0.10 eq.)を添加し、室温で14時間撹拌した。さらに、N-メチルモルホリン(NMM)(124.0 mg, d = 0.92, 1.10 mmol, 1.10 eq.)を添加し、室温で2時間撹拌した。そこへ、塩酸ヒドロキシルアミン(92.3 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)を添加し、室温で14時間撹拌した。水を添加後、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール(10/1, R
f= 0.25))で精製し、淡黄色固体の目的物(Y-005)を得た(収率18%)。
【0151】
1-2.実施例3
適当な出発物質を用いて、実施例1と同様の方法に従って合成した(収率:54%)。
【0152】
1-3.実施例2
【0153】
【化23】
【0154】
メチレンクロライド(1.6 mL)に1-ナフタレン酢酸(185.6 mg, 1.00 mmol)、及び触媒量のDMFを添加し、撹拌しながら、さらに塩化オキサリル(0.17 mL, 2.00 mmol, 2.00 eq.)を滴下し、さらに室温下で15分間撹拌した。得られた溶液を真空下で濃縮後、ジエチルエーテル(5 mL)に溶解した。溶解液に塩酸ヒドロキシルアミン(76.2 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)、及び無水炭酸カリウム(156.0 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)を添加し、0℃まで冷却した。蒸留水(1.0 mL)を添加し、2時間撹拌した。水を添加後、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。エタノールを添加して得られた溶液から再結晶し、白色固体の目的物(Y-003)を得た(収率43%)。
【0155】
1-4.実施例4及び6
適当な出発物質及びアミン化合物を用いて、実施例2と同様の方法に従って合成した。
収率:Y-009(28%)、Y-006(54%)。
【0156】
1-5.実施例5
【0157】
【化24】
【0158】
別々に、ヒドロキシルアミン溶液(塩酸ヒドロキシルアミン(541.3 mg, 7.80 mmol, 7.80 eq.)及びメタノール(2.7 mL))、並びに水酸化ナトリウム溶液(水酸化ナトリウム(475 mg, 11.5 mmol, 11.5 eq)及びメタノール(1.6 mL))を調製した。ヒドロキシルアミン溶液に水酸化ナトリウム溶液を加え、0℃で45分間撹拌した。得られた溶液をろ過後、ろ液をエチル-2-(1H-インドール-2-イル)アセテート(199.5 mg, 1.00 mmol, 1.00 eq.)に加え、室温下で15分間撹拌した。酢酸を添加後、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び塩水で洗浄後、無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール(10/1, R
f= 0.20))で精製し、薄茶色固体の目的物(Y-011)を得た(収率66%)。
【0159】
1-6.実施例7
【0160】
【化25】
【0161】
メチレンクロライド(1.6 mL)に1-ナフタレン酢酸(187.5 mg, 1.00 mmol)、及び触媒量のDMFを添加し、撹拌しながら、さらに塩化オキサリル(131.5 mg, 1.00 mmol, 1.00 eq.)を滴下し、さらに室温下で30分間撹拌した。得られた溶液を真空下で濃縮後、ジエチルエーテル(1.5 mL)に溶解した。溶解液にO-メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(95.3 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)、及び無水炭酸ナトリウム(117.8 mg, 1.10 mmol, 1.10 eq.)を添加し、0℃まで冷却した。蒸留水(1.5 mL)を添加し、室温下で15分間撹拌した。水を添加後、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール(10/1, R
f= 0.65))で精製し、白色固体の目的物(Y-016)を得た(収率85%)。
【0162】
1-7.実施例8
【0163】
【化26】
【0164】
メチレンクロライド(0.8 mL)に1-ナフタレン酢酸(93.5 mg, 0.50 mmol)、及び触媒量のDMFを添加し、撹拌しながら、さらに塩化オキサリル(135.6 mg, 1.00 mmol, 2.00 eq.)を滴下し、さらに室温下で15分間撹拌した。得られた溶液を真空下で濃縮後、テトラヒドロフラン(0.8 mL)に溶解した。溶解液に0℃のアンモニア水(28%, 450.4 mg, 7.50 mmol, 15.0 eq.)を添加し、それから室温下で10分間撹拌した。得られた溶液を真空下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール(10/1, R
f= 0.50))で精製し、白色固体の目的物(Y-015)を得た(収率72%)。
【0165】
2.化合物の評価
2-1.試験例1(枯死誘導活性(遺伝子発現誘導活性)の評価)
植物にオーキシンを摂取させると、その濃度によっては枯死してしまうことが知られている。そして、これは、オーキシンがTIR1受容体を介したオーキシン応答性遺伝子の発現変化が原因であることが解明されている。そこで、被検化合物を作用させた際のオーキシン応答性遺伝子の発現変化を調べることにより、被検化合物の枯死誘導活性を評価した。概要としては、オーキシン応答性プロモーターの下流にレポーター遺伝子(β-グルクロニダーゼ遺伝子)を配置したプラスミドで形質転換された植物を作製し、該植物に対して被検化合物を作用させた際のレポーター遺伝子の発現量を測定した。具体的には次のように行った。
【0166】
<形質転換体の作製>
まず、非特許文献(The Plant Cell, Vol.9, 1963-1971, November 1997)に記載の方法に従って、5’側から順に、オーキシン応答配列(5’-TGTCTC)を含む配列(5’-CCTTTTGTCTC)がタンデムに7つ連結されたオーキシン応答領域(配列番号1)、カリフラワーモザイクウィルスの35S RNAのプロモーター配列(CaMV 35S プロモーター)、β-グルクロニダーゼをコードする配列(GUS)が配置された転写カセットを有するプラスミド(
図1)を作成した。次に、該プラスミドを、上記非特許文献に記載の方法に従ってシロイヌナズナに形質転換し、得られた形質転換体を下記のGUS染色アッセイに用いた。
【0167】
<GUS染色アッセイ>
上記形質転換体の種子をムラシゲスクーグ寒天培地に播種した。暗所で2日間培養し、得られた黄化芽生えから胚軸を切り出した。胚軸切片を成長測定用寒天培地(1 mM Mes-KOH, pH 6.0, 10 mM KCl, 0.8% agar)上で120分間静置培養することにより、内在性オーキシンを除去した。その後、胚軸切片を、被検化合物(100μM)を含む成長測定用寒天培地に移し、該培地上で16時間静置培養した。培養後の胚軸切片を90%アセトンに浸して4℃で3時間処理することにより、組織固定を行った。固定された胚軸切片を蒸留水で洗浄後、GUS染色液(100 mM sodium phosphate, pH 7.0, 10 mM EDTA, 5 mM potassium ferricyanide, 5 mM potassium ferrocyanide, 0.1% TritonX-100, 0.5 mg/mL 5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide)に浸して25℃で16時間処理することによって染色した。染色後の胚軸切片を蒸留水で洗浄後、実体顕微鏡で撮像した。得られた画像から、胚軸切片の着色度を、被検化合物としてオーキシンを用いた場合の着色度を基準として、0〜3(0:着色無し、1:オーキシンを用いた場合よりも着色が薄い、2:オーキシンを用いた場合と着色が同程度、3:オーキシンを用いた場合よりも着色が濃い)の4段階で評価した。評価が0又は1であれば、オーキシンに比べて、オーキシン応答性遺伝子の発現誘導活性が低いこと、すなわち枯死誘導活性が低いことを示す。結果を下記表2に示す。
【0168】
2-2.試験例2(植物の伸長に対する影響の評価)
ムラシゲスクーグ寒天培地にシロイヌナズナ種子を播種した。暗所で2日間培養し、得られた黄化芽生えから胚軸を4 mm切り出した。胚軸切片を成長測定用寒天培地上で120分間静置培養することにより、内在性オーキシンを除去した。その後、胚軸切片を、被検化合物(100μM)を含む成長測定用寒天培地(培地1)、被検化合物(100μM)及びオーキシン(3-インドール酢酸、1 μM)を含む成長測定用寒天培地(培地2)、オーキシン(100μM)を含む成長測定用寒天培地(培地3)、オーキシン(1μM)を含む成長測定用寒天培地(培地4)、又は1%ジメチルスルホキシド(被検化合物およびオーキシンの溶媒)を含む成長測定用寒天培地(培地5)に移し、該培地上で30分間静置培養した。培養後の胚軸切片の長さを測定し、各培地で培養した場合それぞれについて、培養後の伸長量(mm)(=培養後の胚軸切片の長さ−培養前の胚軸切片の長さ)を求めた。該伸長量に基づいて、下記式に従って、各被検化合物の伸長促進活性及び伸長阻害活性を求めた。結果を下記表2に示す。伸長促進活性の値が高いほど、被検化合物の伸長促進活性が高いことを示し、伸長阻害活性の値が低いほど、被検化合物の伸長阻害活性が高いことを示す。
【0169】
伸長促進活性=[(培地1で培養した場合の伸長量−培地5で培養した場合の伸長量)/(培地3で培養した場合の伸長量−培地5で培養した場合の伸長量)]×100。
【0170】
伸長阻害活性=[(培地2で培養した場合の伸長量−培地5で培養した場合の伸長量)/(培地4で培養した場合の伸長量−培地5で培養した場合の伸長量)]×100。
【0171】
2-3.試験例1及び2の評価結果
試験例1の評価結果(遺伝子発現誘導活性)及び試験例2の評価結果(伸長促進活性及び伸長阻害活性)を下記表2に示す。
【0172】
【表2】