(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372844
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)由来ペプチド及びこれを含む抗アレルギー組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20180806BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20180806BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20180806BHJP
A61K 38/08 20060101ALI20180806BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20180806BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20180806BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20180806BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20180806BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20180806BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20180806BHJP
C12N 9/02 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
C07K14/47ZNA
C07K7/06
A61K38/44
A61K38/08
A61P37/08
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q19/10
A23L33/18
!C12N9/02
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-251205(P2013-251205)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-107931(P2015-107931A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】513306419
【氏名又は名称】株式会社バイオサイエンスリンク
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】川原 浩治
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐一
(72)【発明者】
【氏名】塩見 均
【審査官】
上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0027720(US,A1)
【文献】
特開2005−272445(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/144501(WO,A1)
【文献】
特開2012−233873(JP,A)
【文献】
特開2000−139404(JP,A)
【文献】
Gene,1995年,Vol.163,p.325-326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/47
C07K 7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
IgE生産抑制活性を有する、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項4】
抗アレルギー剤である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
食品組成物である、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
化粧用組成物である、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
以下の(a)〜(d)のペプチドを含む、ペプチドの配合組成物:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b) 配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(c) 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(d) 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項8】
IgE生産抑制活性を有する、請求項7記載のペプチド配合組成物。
【請求項9】
抗アレルギー剤である、請求項8記載のペプチド配合組成物。
【請求項10】
食品組成物である、請求項8記載のペプチド配合組成物。
【請求項11】
化粧用組成物である、請求項8記載のペプチド配合組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー効果を有するペプチドに関する。本発明のペプチドは、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素の、抗アレルギー効果を有する部分に由来する。本発明によって提供されるペプチドは、医薬品及び食品、化粧品の分野で有用である。
【0002】
近年、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を有する患者数は、世界中で急速に増大している。特に、日本では三人に一人がアレルギー様症状を有しており、社会問題になっている。しかしながら、アレルギーの発症メカニズムは完全に解明されておらず、適切な治療手段の開発は難航している。実際に、症状の激しい患者には、炎症抑制作用を有するステロイド薬を導入することにより治療業績は改善されているが、これらの治療は炎症反応を抑制する緩和治療であり、アレルギーの根本治療の決め手となる治療法は確立されていない。また、ステロイド薬に関しては、生体内のステロイドホルモンと類似した構造を有することから、ホルモンバランスの乱れ等の副作用が報告されており、服用期間に制限を伴う場合が多い。
【0003】
一方、機能性食品は日常の食生活に取り入れることにより、疾病の予防や症状の緩和といった健康増進機能が期待できるため、健康志向の広がりに伴い市場を拡大させている。加えて、本来、機能性食品は医薬のように根本治療を目指すものではないが、近年の研究で特定成分の食べ合わせにより、医薬品と同等の効果を発揮する可能性が示唆されており、新規疾病治療法としても大きな期待が寄せられている。
【0004】
ところで、花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギーは医学的にI型アレルギーに分類される。これまでの多くの研究により、このI型アレルギーの発症においてIgE型の抗体が重要な役割を担っていることが報告されている。具体的には、まず、生体内に侵入した花粉やハウスダストといったアレルゲンは、マスト細胞や好塩基球の細胞膜上に存在する高親和性IgE受容体(FcεR I)に結合したIgEを架橋して凝集させる。これによりマスト細胞や好塩基球は脱顆粒を起こし、ヒスタミンやセロトニン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質を放出する。最終的にこれらの物質が平滑筋収縮や粘膜浮腫、血管透過性亢進を引き起こし、アレルギー症状が現れる。したがって、IgE量を減少させることはアレルギー症状の抑制に繋がる。
【0005】
本願発明者らは、これまでに健常者の末梢血リンパ球を種々の免疫賦活剤及び抗原を添加した培養液中で培養することにより、生体外でアレルギー発症環境を再現した培養系を構築し、イチゴ成分中のグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(glyceraldehyde‐3‐phosphate dehydrogenase、以下「GAPDH」と称することもある)がIgEの生産量を減少する効果を有することを見出した(特許文献1並びに非特許文献1及び2)。このGAPDHは、解糖系を構成する主要酵素として知られており、動物細胞や植物細胞、微生物中に多量に存在する。そのため、GAPDHの、抗アレルギー作用を有する医薬品及び食品、化粧品への応用は極めて現実的であり、早急な開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2012/144501号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Immunol.Methods 233(2000)pp.33−40
【非特許文献2】Cytotechnology 64(2012) pp.309−314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したようにGAPDHの医薬品及び食品、化粧品への応用はアレルギーの治療及び予防、緩和に有用であるが、GAPDHは高次構造を有するタンパク質であるため、変性等により機能を失活する可能性があった。また、GAPDHは生物の代謝に関わる酵素として知られているが、生物種によりアミノ酸配列が異なるため、特定の生物種由来のものではIgE生産抑制効果が消失している可能性が懸念される。
【0009】
一方で、本願発明者達らは、最近、GAPDHのIgE生産抑制効果はイチゴ由来のものだけでなく、ウサギ筋肉由来のものや乳酸菌由来のものも同様に有することを見出し、これらのGAPDH中の保存領域がIgE生産を抑制することを突き止めた。
【0010】
したがって、これらのGAPDH中のIgE生産を抑制するアミノ酸配列を特定することにより、抗アレルギー効果を有するGAPDHを効率的に特定できるのではないかとの考えに至った。
【0011】
また、特定したアミノ酸配列を指標に、これを含むペプチド、タンパク質をスクリーニングすることにより新たな抗アレルギー成分の同定も可能である。
【0012】
そして本願発明者らは、GAPDH中の配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び該アミノ酸配列を含むペプチド、並びにこれらのペプチドを有効成分として含む抗アレルギー組成物がIgEの生産を抑制することを突き止め、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、前述の課題を解決するために、まず、トリプシン処理により断片化したGAPDHからIgE生産を抑制する画分の精製を行った。逆相カラムクロマトグラフィーを用いて精製した結果、GAPDHのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド結合領域を含む配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドがIgEの生産を抑制することを突き止めた。
【0014】
さらに、配列番号1のアミノ酸配列に基づいて合成した配列番号2〜6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのIgE生産への影響を確かめたところ、配列番号2と6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドがIgEの生産を抑制することを突き止めた。また、配列番号2と配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせて添加した場合は、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを単独で添加した場合よりもIgEの生産を強く抑制することを明らかにした。
【0015】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 以下の(i)〜(iii)のいずれかのペプチド
(i) 配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(ii) 配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[2] IgE生産抑制活性を有する、[1]のペプチド。
[3] [1]又は[2]のペプチドを含む、組成物。
[4] 抗アレルギー剤である、[3]の組成物。
[5] 食品組成物である、[3]の組成物。
[6] 化粧用組成物である、[3]の組成物。
[7] 以下の(a)のペプチドと(b)〜(d)のペプチドの少なくとも1つのペプチドを含む、ペプチドの配合組成物:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(b) 配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c) 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(d) 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[8] IgE生産抑制活性を有する、[7]のペプチド配合組成物。
[9] 抗アレルギー剤である、[8]のペプチド配合組成物。
[10] 食品組成物である、[8]のペプチド配合組成物。
[11] 化粧用組成物である、[8]のペプチド配合組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び該アミノ酸配列を含むペプチド、並びにこれらのペプチドを含む抗アレルギー組成物はIgE生産を抑制するため、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのI型アレルギー症状の治療及び改善、予防を目的とした抗アレルギー剤(医薬品)、食品組成物、及び化粧用組成物として有用である。また、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは該アミノ酸配列を含むペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは該アミノ酸配列を含むペプチドを組み合わせた組成物は、より抗アレルギー作用に優れた組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】GAPDH断片の精製画分のIgE生産抑制作用の効果を確認した結果を示したグラフである。
【
図2】配列番号2〜5(
図2A〜D)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのIgE生産抑制作用の効果を確認したグラフである。
【
図3】配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのIgE生産抑制作用の効果を確認したグラフである。
【
図4】配列番号2〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせた場合のIgE生産抑制作用の効果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、GAPDHタンパク質の断片ペプチドであって、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる断片ペプチドである。好ましくは、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなる断片ペプチドであって、単独でIgE生産抑制作用を有するペプチドである。該断片ペプチドは、ウサギ筋肉から精製したGAPDHの断片ペプチドである。上記断片ペプチドは、ウサギ筋肉から精製したGAPDHからタンパク質分解酵素処理等の公知の方法によって切り出すことにより得ることができる。さらに、アミノ酸配列情報に基づいて合成することもでき、Fmoc法等の化学合成方法や遺伝子組換え発現等の方法により得ることもできる。本発明のペプチドを構成するアミノ酸は、L−体であってもD−体であってもよいが、好ましくはL−体である。
【0019】
また、本発明は、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチドである。好ましくは、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列を含むIgE生産抑制作用を有するペプチドである。このようなペプチドとして、GAPDHタンパク質の断片ペプチドであって、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むIgE生産抑制作用を有するペプチドが挙げられ、好ましくは、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列を含むIgE生産抑制作用を有するペプチドが挙げられる。IGRL(配列番号6)で表される4アミノ酸からなるペプチドは、IgE生産抑制作用を有しており、IGRL(配列番号6)を含む、配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドもIgE生産抑制作用を有している。従って、GAPDHタンパク質の断片ペプチドであって、少なくともIGRL(配列番号6)で表されるアミノ酸配列を含むペプチドもIgE生産抑制作用を有している。配列番号7〜9にウサギ(Oryctolagus cuniculus)の筋肉由来の334アミノ酸からなるGAPDHの全長アミノ酸配列を示す。配列番号7に表されるアミノ酸配列をコードするDNAにおいて第124番目のアミノ酸をコードする塩基は変異を有しgcc又はtccである。このため、第124番目のアミノ酸はAla又はSerとなる。配列番号8は第124番目のアミノ酸がAlaであるアミノ酸配列を表し、配列番号9は第124番目のアミノ酸がSerであるアミノ酸配列を表す。GAPDHタンパク質の断片ペプチドであって、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むIgE生産抑制作用を有するペプチドとして、配列番号7で表されるアミノ酸配列の連続した一部のアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。GAPDHタンパク質の断片ペプチドであって、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチドのアミノ酸長は、5〜333、好ましくは5〜200、さらに好ましくは5〜100、特に好ましくは5〜39である。これらのペプチドにおいて、IGRL(配列番号6)で表されるアミノ酸配列は、N末端に含まれていても、それ以外の部分に含まれていてもよい。GAPDHタンパク質がIgEの生産を抑制することは報告されており(国際公開第WO2012/144501号)、本発明はGAPDHタンパク質中のIgE生産抑制活性を有する部位を明らかにしたものである。従って、IgE生産抑制活性を有する断片ペプチドのアミノ酸配列(配列番号1、2又は6)を含む、GAPDHタンパク質の断片ペプチドはいずれもIgE生産抑制活性を有する。本発明において、GAPDHタンパク質の断片ペプチドという場合、GAPDHの全長アミノ酸配列からなるGAPDHタンパク質は含まない。
【0020】
また、上記のように配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは単独でIgE生産抑制作用を有するが、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの1つ、2つ又は3つを組み合わせたペプチド混合物は、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド単独よりもはるかに強いIgE生産抑制作用を発揮する。配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせたペプチド混合物の組み合わせとして、配列番号2と配列番号3の組み合わせ、配列番号2と配列番号4の組み合わせ、配列番号2と配列番号5の組み合わせ、配列番号2と配列番号3と配列番号4の組み合わせ、配列番号2と配列番号3と配列番号5の組み合わせ、配列番号2と配列番号4と配列番号5の組み合わせ、並びに配列番号2と配列番号3と配列番号4と配列番号5の組み合わせが挙げられる。配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列を含むペプチドの上記組み合わせもIgE生産抑制作用を有し、そのような組み合わせとして、GAPDHタンパク質の断片ペプチドであって、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列を含むペプチドの組み合わせが挙げられる。配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせたペプチド混合物、あるいは配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列を含むペプチドを組み合わせたペプチド混合物をペプチド配合組成物という。具体的には、例えば、以下の(a)のペプチドと(b)〜(d)のペプチドの少なくとも1つのペプチドを含む、ペプチドの配合組成物が挙げられる。
【0021】
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(b) 配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c) 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(d) 配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、若しくは配列番号7〜9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質の断片ペプチドであって、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【0022】
本発明のペプチドは、そのアミノ酸配列からなるペプチド又はそのアミノ酸配列を含むペプチドがIgE生産抑制作用を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。電荷、極性等の性質の似たアミノ酸への置換等であれば、多数のアミノ酸が置換されても、機能は消失しないものと示唆される。
【0023】
例えば、配列番号1で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号1で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。また、配列番号2〜6で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜3個、好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2〜6で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜5個、好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2〜6で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜5個、好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
【0024】
このような配列番号1〜6で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号2で表されるアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。
【0025】
このような配列番号1〜6で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するペプチドは、それぞれ配列番号1〜6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと実質的に同一である。
【0026】
本発明のペプチドは、ペプチドの薬理学的に許容された塩も含む。ペプチドの塩は有機塩も無機塩も含み、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、ピクリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等)等が挙げられる。本発明のペプチド又はその塩は、水和物又は無水和物であってもよく、溶媒和物又は無溶媒和物であってもよい。
【0027】
さらに、本発明は上記のペプチドを含む組成物である。該組成物は、上記のペプチドを有効成分として含むIgE生産を抑制するための抗アレルギー組成物である。該組成物には、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる断片ペプチド、あるいは配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチドが含まれ、好ましくは、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなる断片ペプチド、あるいは配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる。配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなる断片ペプチド、あるいは配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列を含むペプチドの複数のペプチドが含まれていてもよい。さらに、前記組成物には、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせたペプチド混合物、あるいは配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列を含むペプチドを組み合わせたペプチド混合物が含まれていてもよい。ペプチドがIgE生産抑制作用を有するか否かは、例えば、in vitroのアレルギー発症モデル細胞培養系にペプチドを添加して、IgE生産が抑制されるか否かを検定すればよい。in vitroのアレルギー発症モデル細胞培養系として、ヒト末梢血リンパ球にムラミルジペプチド(MDP)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)及びスギ花粉抗原(Cryj1)等のアレルゲンを添加した系が挙げられる。IgE生産はELISA等の免疫学的検出方法により測定することができる。
【0028】
本発明のペプチドを含むIgE生産を抑制するための組成物は生体に投与することにより、生体内でのIgE生産を抑制することができ、IgE依存性のI型アレルギーを抑制し、IgE依存性のI型アレルギー疾患を予防又は治療することができる。また、本発明のペプチドを含むIgE生産を抑制するための組成物は生体に投与することにより、IgE依存性のI型アレルギー疾患の症状を改善することができる。IgE依存性のI型アレルギー疾患としては、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、食物アレルギー等が挙げられる。ここで、投与とは、医薬品としての投与も、食品組成物の摂取も、化粧用組成物の適用も含む。
【0029】
該組成物は例えば、医薬組成物、食品組成物若しくは飼料組成物、又は化粧用組成物として用いることができる。
【0030】
医薬組成物としては、アレルギーを抑制し、アレルギー疾患を予防又は治療し、アレルギー疾患の症状を改善するためのIgE生産抑制剤あるいは抗アレルギー剤として使用することができる。医薬組成物は被験体に投与すればよく、被験体としてはヒトのみならず、イヌ、ネコ等のペット動物やウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等の家畜を含む。
【0031】
本発明のペプチドを有効成分として含む医薬組成物は、製薬上許容される担体や希釈剤等を含んでいてもよい。担体としては、限定されないが、生理的食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコース液、及び緩衝生理食塩水等が挙げられる。
【0032】
投与経路は、経口投与、又は皮膚、皮下、筋肉内及び静脈内などの非経口投与が挙げられるが、好ましくは経口投与である。投与形態としては、種々の形態で投与することができ、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、細粒剤、噴霧剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏等が挙げられる。医薬組成物には種々の製剤添加物を添加することができ、例えば、一般的に医薬の製剤添加物として用いられるソルビトール、ゼラチン、乳糖、ブドウ糖、デンプン、クエン酸などが挙げられる。
【0033】
本発明のペプチドを有効成分として含む医薬組成物の投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜50gであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。体重1kg当たりでは、1日約0.002mg〜1gである。また、皮膚に投与する場合の皮膚への適用量は、1ng〜500μg/cm
2、好ましくは0.01〜50μg/cm
2、さらに好ましくは0.1〜10μg/cm
2である。
【0034】
食品組成物としては、アレルギーを抑制し、アレルギー疾患を予防又は治療し、アレルギー疾患の症状を改善するための食品組成物として使用することができる。本発明の食品組成物は、IgE生産抑制作用を有する本発明のペプチド、あるいは該ペプチドを含む抗アレルギー剤を含む。本発明の食品組成物は、健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品、健康補助食品等を含む。特定保健用食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取をし、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品をいう。これらの食品には、上記のような用途に用いられるものである旨の表示を付すことができる。そのような表示として、例えば、アレルギーを抑制するために用いられるものである旨の表示、アレルギー症状を改善するために用いられるものである旨の表示等が挙げられる。食品は飲料も含む。さらに、食品組成物は飼料組成物も含み、例えば、イヌ、ネコ等のペット動物やウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等の家畜におけるアレルギーを抑制し、アレルギー疾患を予防又は治療し、アレルギー疾患の症状を改善するための飼料組成物として使用することができる。
【0035】
食品組成物として使用する場合、本発明のペプチドを固体、液体、ゲル状の形状の食品に配合して用いればよい。食品としては、例えば、パン、麺、惣菜、食肉加工食品(例えば、ハム、ソーセージなど)、水産加工食品、調味料(例えば、ドレッシングなど)、乳製品、菓子(例えば、アイスクリーム、チョコレート、キャンディー、ビスケット、ゼリーなど)、スープ、飲料(例えば、清涼飲料水など)等が挙げられる。
【0036】
化粧用組成物としては、アレルギーを抑制し、アレルギー疾患を予防又は治療し、アレルギー疾患の症状を改善するための化粧用組成物として使用することができる。本発明の化粧用組成物は、IgE生産抑制作用を有する本発明のペプチド、あるいは該ペプチドを含む抗アレルギー剤を含む。
【0037】
化粧料としては、例えば、ローション、乳液、クリーム、オイル、パック等の基礎化粧料、またファンデーション、頬紅、口紅等のメーキャップ化粧料、さらに洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の洗浄料、入浴剤等の任意の形態で使用され得る。
【0038】
以下に本発明の実施例を例示するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
<GAPDHのIgE生産抑制活性を有する部分の特定>
[リンパ球の分離]
ヒト末梢リンパ球を取得するために健常者の末梢血を密度勾配遠心法により、血液分離した。まず、健常人から末梢血をヘパリン入り真空管に採集し、あらかじめ15ml遠心管に分注しておいた4mlの血液分離剤(Ficoll; GE Healthecare)の上に液面を乱さないように5mlの末梢血を重層し、400g、30minの条件で遠心した。そして、最上層の血漿の層を取得し、−20℃で保存した。次に、血漿層とFicoll層の間にあるリンパ球を回収後、基本合成培地ERDF(Kyokuto)で洗浄し、400g、5minの条件で遠心、洗浄を3回繰り返した。取得したリンパ球は、−85℃で凍結保存し、解凍後はリンパ球をERDF培地で洗浄して使用した。
【0040】
[生体外アレルギー発症モデル細胞培養系]
5%ウシ胎児血清(FBS; Hyclone)及び10%ヒト血漿を含むERDF培地中に、生体外に取り出した2.0×10
6cells/mlのヒト末梢血リンパ球と免疫賦活剤としてムラミルジペプチド(MDP; Sigma)を10μg/ml、インターロイキン−4、−6(IL−4、−6; R&D)を10ng/ml、さらにスギ花粉抗原(Cryj1; Hayashibara)を100ng/mlの終濃度で加え、生体外アレルギー発症モデル細胞培養系とした。添加した免疫賦活剤の主な働きは、MDPによる抗原への免疫応答を高めるアジュバンド活性、IL−4によるIgEクラススイッチ誘導、IL−6によるB細胞の分化誘導である。これらの免疫賦活剤とCryj1を加えたヒト末梢血リンパ球を96穴プレートに各200ml分注し、37℃の5%CO
2インキュベータにて10日間培養してIgE抗体生産を誘導した。なお、この培養系に含まれるヒト血漿とヒト末梢血リンパ球は同一個体のものを使用した。
【0041】
[活性画分の精製]
ウサギ筋肉由来GAPDH(Sigma)をリン酸生理食塩水(PBS)で1mg/mlに調整した。これに10μg/mlになるようにブタ膵臓トリプシン(Sigma)を添加し、37℃で12時間静置した。その後、限界濾過カラム(Millipore)を用いて10kDa以下のペプチド断片を含む溶液を得た。これを逆相液体クロマトグラフィーカラムSOURCE 15RPC ST 4.6/100(Amersham bioscience)を用いて分画し、フラクション1〜5を回収し、溶媒をPBSに置換したものを、終濃度1%(v/v)で生体外アレルギー発症モデル細胞培養系に添加して、抗アレルギー効果を検討した。
【0042】
[酵素抗体法によるIgE抗体生産量の測定]
培養上清中のIgE抗体生産量を酵素抗体法(ELISA;enzyme‐linked immunosorbent assay)を用いて測定した。96穴イムノプレートにヤギ抗ヒトIgE抗体(Biosource)を炭酸緩衝液で2,000倍に希釈し、100μl/wellで分注してプレートコートした。37℃で1時間静置した後、非特異的反応を防ぐために、PBSにウシ血清アルブミン(BSA;ICN)を1%に希釈した溶液(1%BSA/PBS)を300μl/wellで分注し、ブロッキングを行った。その後、37℃で1時間静置し、定量するIgE抗体を含む培養上清を1%BSA/PBSで1/50に希釈し50μl/wellで分注した。また、同様に1μg/mlから1/3ずつ1/3
8μg/mlまで段階希釈した標準溶液を50μl/wellずつ分注し、37℃で1時間静置した。その後、ビオチン標識ヤギ抗ヒトIgE抗体(Biosource)を1%BSA/PBSで2,000倍に希釈し、100μl/wellで分注した後、37℃で1時間静置した。その後、西洋わさび由来ペルオキシターゼが標識されたストレプトアビジン(Funakoshi)を1%BSA/PBS溶液で1,000倍に希釈し、100μl/wellで分注して37℃で1時間静置した。発色液として0.006% H
2O
2‐0.2 Mクエン酸緩衝液(pH4.0)、6mg/ml ABTS‐(NH
4)
2(Wako)、超純水をそれぞれ10:1:9の割合で混合した溶液を100μl/wellで分注し、30分後に414nmの波長により吸光度を測定した。各反応の間ではPBSにポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20; Wako)を0.05%濃度に希釈した溶液で3回洗浄した。
【0043】
図1は、液体クロマトグラフィーにより分画したフラクション1〜5のGAPDH断片のIgE生産への影響を検討した結果を示すグラフである。
図1中、「None」はGAPDH断片を添加しないコントロールである。この結果から、特にFraction1がIgE生産を抑制したため、GAPDH中のIgE生産を抑制する作用を有するアミノ酸配列はこの画分に含まれているものと考えられた。そこで、この画分に含まれるペプチドのアミノ酸配列を解析したところ、N末端側からIGRで表されるアミノ酸配列を有することが分かった。また、質量分析を行ったところ、このペプチドの分子量は4,372.7であることが明らかになった。これらの条件をもとに、タンパク質データベースを用いてウサギGAPDHのアミノ酸配列を調べた結果、IgE生産を抑制するペプチドはIGRLVTRAAFNSGKVDVVAINDPFIDLHYMVYMFQYDST(配列番号1)であることを突き止めた。
【0044】
(実施例2)
[合成ペプチドの活性確認]
特定した配列番号1で表されるアミノ酸配列をもとにIGRLVTRAAF(配列番号2)、AAFNSGKVDV(配列番号3)、VDVVAINDPFI(配列番号4)、またはYMVYMFQYDST(配列番号5)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを合成し、生体外アレルギー発症モデル細胞培養系に添加して、抗アレルギー効果を検討した。
図2A〜Dは配列番号2〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのIgE生産への影響を検討した結果を示したグラフである。この結果から、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを添加した場合にIgE生産が抑制されることが分かった。したがって、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは抗アレルギー効果を有することを突き止めた。
【0045】
また、配列番号2で表されるアミノ酸配列をもとにIGRL(配列番号6)を合成し、生体外アレルギー発症モデル細胞培養系に添加し、抗アレルギー効果を検討した。
図3は配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのIgE生産への影響を検討した結果を示したグラフである。
図3に示すように、濃度依存的にIgE生産を抑制した。この結果から、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドがIgE生産を抑制することを明らかにし、抗アレルギー効果を有することを突き止めた。
【0046】
さらに、配列番号2〜5で表されるアミノ酸配列からなる総てのペプチドを組み合わせて生体外アレルギー発症モデル細胞培養系に添加した場合についても抗アレルギー効果を検討した。
図4は配列番号2〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせて添加した場合のIgE生産抑制作用を検討した結果を示したグラフである。この結果から、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを単独で添加した場合ではIgE生産の抑制率が37〜49%であったのに対し、配列番号2〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを組み合わせて添加した場合は63〜100%であることが分かった。したがって、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの組み合わせは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの単独での使用よりも高い抗アレルギー効果を有することを突き止めた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、配列番号1、2又は6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び該アミノ酸配列を含むペプチド、並びにこれらのペプチドを含む抗アレルギー組成物は、IgE生産を抑制するため、抗アレルギー剤(医薬品)、食品、及び化粧品として提供可能である。また、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは該アミノ酸配列を含むペプチドと配列番号3〜5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは該アミノ酸配列を含むペプチドを組み合わせて使用することにより、より抗アレルギー効果の高い抗アレルギー剤(医薬品)、食品組成物、及び化粧用組成物が提供可能である。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]