特許第6372846号(P6372846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372846
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】中栓及び中栓付き振り出し容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   B65D47/06 400
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-17877(P2014-17877)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-145255(P2015-145255A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】田口 佐知子
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−022348(JP,U)
【文献】 実公昭11−012459(JP,Y1)
【文献】 実公昭06−011955(JP,Y1)
【文献】 特開2004−256149(JP,A)
【文献】 実開平04−016161(JP,U)
【文献】 特開平08−169458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(2)の口頸部内へ嵌合するための栓筒部(36)と、
栓筒部(36)の上面を閉塞するように栓筒部(36)の上端に連結されるとともに、中心部に栓孔(24)を開口した栓盤部(22)を有し、かつ栓孔(24)を囲む囲壁部(26)を栓盤部(22)の上面から起立してなる閉塞部(20)と、
を具備する中栓であって、
上記閉塞部(20)は、上記栓孔(24)の外側の栓盤部分が、栓孔を開口する箇所を除く栓筒部(36)の上端面部分を塞ぐように設けるとともに、この栓盤部分を、栓孔(24)から離れるに従って隆起させて、この隆起部(28)が囲壁部(26)に連続するように形成し、栓孔(24)の孔縁から囲壁部(26)の上端面(26a)に至る閉塞部の内面を、略椀状の凹曲面(30)として、凹曲面(30)の最も低い場所に栓孔(24)が位置するように形成されていることを特徴とする、中栓。
【請求項2】
上記凹曲面(30)の少なくとも外半部は、栓孔(24)側から囲壁部(26)の上端面(26a)付近まで下外方へ弯曲する断面円弧形状であることを特徴とする、請求項1記載の中栓。
【請求項3】
上記凹曲面(30)は、栓孔(24)の孔縁から囲壁部(26)の上端面(26a)内縁に亘る全体で下外方への断面円弧状に弯曲していることを特徴とする、請求項2記載の中栓。
【請求項4】
上記凹曲面(30)のうち断面円弧状の部分の曲率半径が4mmから8mmの範囲であることを特徴とする、請求項2又は請求項3記載の中栓。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかの中栓(10)を、容器本体(2)の口頸部(6)に装着してなる、中栓付き振り出し容器。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中栓及び中栓付き振り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料容器の口頸部に上方へ栓孔を開口する栓筒を有する中栓を嵌合させてなり、振り出し操作により内容液を取り出すものが知られている(特許文献1の段落0002参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−309557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、例えば手のひらに向けて逆さまにした容器を振って内容液を振り出そうとすると、内容液をうまく受け止められずに内容液が飛び散るおそれがあった。また栓筒の栓孔がむき出しになっており、振り出し操作の際に手の平が当たると栓孔の衛生を保つことができない。なお、化粧水などの容器はガラス瓶が多く、指で押すことができないために、振り出して内容液を吐出させるが、高齢者などが使用する場合には容器が重く、これを持つ腕への負担が大きい。
【0005】
本発明の第1の目的は、振り出し操作により液が飛び散ること及び栓孔に手が触れることを回避することが可能な中栓及び中栓付き振り出し容器を提供することである。
本発明の第2の目的は、使い勝手がよい中栓及び中栓付き振り出し容器を提供することである。
本発明の第3の目的は、振り出し操作をしたときの内面への液体の付着量が少ない中栓及び中栓付き振り出し容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、容器本体2の口頸部内へ嵌合するための栓筒部36と、
栓筒部36の上面を閉塞するように栓筒部36の上端に連結されるとともに、中心部に栓孔24を開口した栓盤部22を有し、かつ栓孔24を囲む囲壁部26を栓盤部22の上面から起立してなる閉塞部20と、
を具備する中栓であって、
上記閉塞部20は、上記栓孔24の外側の栓盤部分が、栓孔を開口する箇所を除く栓筒部36の上端面部分を塞ぐように設けるとともに、この栓盤部分を、栓孔24から離れるに従って隆起させて、この隆起部28が囲壁部26に連続するように形成し、栓孔24の孔縁から囲壁部26の上端面26aに至る閉塞部の内面を、略椀状の凹曲面30として、凹曲面30の最も低い場所に栓孔24が位置するように形成されている。

【0007】
本手段では、図1に示すように中栓10の閉塞部20において栓盤部22の栓孔24の回りを囲壁部が囲む構成を提案している。これにより、栓孔24に手が触れることを回避できる。また閉塞部20の内面を、略椀状の凹曲面30としたから、飛散液体が付着しにくい。なお、凹曲面といっても、面の全ての部分が弯曲していなくともよい。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記凹曲面30の少なくとも外半部は、栓孔24側から囲壁部26の上端面26a付近まで下外方へ弯曲する断面円弧形状である。
【0009】
本手段では、図3又は図6に示すように凹曲面の少なくとも外半部を断面円弧状としている。これにより、参考例である図8(B)に示すように閉塞部の外側に垂直面がある場合に比べて飛散液体が付着しにくい。
【0010】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記凹曲面30は、栓孔24の孔縁から囲壁部26の上端面26a内縁に亘る全体で下外方への断面円弧状に弯曲している。
【0011】
本手段では、図3に示すように凹曲面30が栓孔24の孔縁から囲壁部26の上端面26a内縁に亘る全体で下外方へ弯曲する形状を提案している。この構成では、曲率半径を大きくとることができる。実験結果からはこの形態は液が付着しにくいという点で最も優れている。
【0012】
第4の手段は、第2の手段又は第3の手段を有し、かつ上記凹曲面30のうち断面円弧状の部分の曲率半径が4mmから8mmの範囲である。
【0013】
本手段では、曲率半径の好適な数値の具体例を提案している。
【0014】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかの中栓10を、容器本体2の口頸部6に装着してなる、中栓付き振り出し容器である。
【0015】
本手段は、上記各手段に記載した構成の中栓を、振り出し容器に適用することを提案している。これにより栓孔に触れずに中栓を手のひらに当てて振り出し操作ができるので、使い勝手がよい。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段及び第5の手段に係る発明によれば、栓孔24を囲む囲壁部26を設けたので、栓孔24が手に触れることを防止することができ、囲壁部の先端面に手のひらを当てることで栓孔24から注出される液体の飛散を防止することができ、かつ閉塞部20の内面を、略椀状の凹曲面30としたから液体が付着しにくい。
第2の手段に係る発明によれば、凹曲面30の少なくとも外半部は、栓孔24側から囲壁部26の上端面26a付近まで下外方へ弯曲する断面円弧形状であるから、栓孔を囲む垂直壁部に液体が当たる場合に比べて液の勢いが減殺されず、液体が付着しにくい。
第3の手段に係る発明によれば、凹曲面30は、栓孔24の孔縁から囲壁部26の上端面26a内縁に亘る全体で下外方へ弯曲しているから、曲率半径を大きくとることができる。
第4の手段に係る発明によれば、凹曲面30のうち断面円弧状の部分の曲率半径が4mmから8mmの範囲であるから、液体の付着量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る中栓付き振り出し容器の一部断面正面図である。
図2図1の振り出し容器の中栓の平面図である。
図3図2の中栓の縦断面図である。
図4図2の中栓の変形例の縦断面図である。
図5図1の中栓付き振り出し容器の作用の説明図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る中栓の縦断面図である。
図7】本発明に係る中栓付き振り出し容器の実験に関する説明図である。
図8】本発明の参考例の断面図であり、同図(A)は、閉塞部の内面をテーパ状面にした態様、同図(B)は、閉塞部の内面の角部付近に中程度の円弧状弯曲面を形成した形態、同図(C)は、閉塞部の内面の角部付近に小さな円弧状弯曲面を形成した形態をそれぞれ示している。
図9図8(A)及び図8(B)の態様の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から図5は、本発明の第1の実施形態に係る中栓付き振り出し容器を示している。この容器は、容器本体2と、中栓10と、キャップ40とで構成されている。容器本体は合成樹脂、陶器、金属及びガラス等で構成され、それ以外の部材は合成樹脂で形成することができる。
【0019】
容器本体2は、胴部4と胴部4の上端から肩部を介して起立する口頸部6とを有する。
【0020】
中栓10は、装着部12と閉塞部20と栓筒部36とで構成される。
【0021】
上記装着部12は、容器本体2の口頸部6の外面へ嵌合可能な装着筒部14の上端から内向きフランジ16を突出している。上記装着筒部14の内面には抜け止め用リブ15が形成されている。
【0022】
上記閉塞部20は、上記内向きフランジ16と連続しかつ中央部に栓孔24を有する栓盤部22と、この栓盤部22の外周から起立する囲壁部26とを具備し、上記栓盤部22を、栓孔24の孔縁から離れるに従って隆起させて、この隆起部28が囲壁部26に連続するようにしている。尚、前記隆起部28は、閉塞部20の内面を形成している。
【0023】
上記閉塞部20の内面は、栓孔24の孔縁から囲壁部26の上端面26aに至るまで略椀状の凹曲面30に形成している。凹曲面30の上端部と前記上端面26との接続部分は、凸曲面に形成されている。栓孔24は凹曲面30の最も低い場所に位置する。本実施形態において、凹曲面30は、栓孔24の孔縁から囲壁部26の上端面26a内縁に亘る全体で下外方への断面円弧状に弯曲している。
【0024】
本実施形態では、凹曲面30の曲率半径Rは栓孔24から囲壁部26の上端までの高さHより大きくなっている。
【0025】
上記栓筒部36は、栓盤部22の外周部に連結されており、口頸部6内面に液密に嵌合することが可能に形成されている。
【0026】
キャップ40は、頂壁部42の外周部から垂下するキャップ周壁部44を、口頸部6の外面に嵌合(図示例では螺合)させるとともに、頂壁部42から垂下する係止突起48を、上記栓孔24内に液密に嵌合させている。図示例では上記キャップ周壁部44の上下方向中間部内面に下向きの第1係止段部46が形成されており、この第1係止段部46と口頸部6の上端との間に内向きフランジ16を挟持できるようにしている。
【0027】
図4は、本実施形態の変形例であり、栓筒部36の内側に栓盤部22から隆起部28に亘る肉抜き部23を設けている。
【0028】
上記構成において、キャップ40を口頸部6から外し、容器本体2を逆さまにして振り、栓孔24から液体を振り出すことができる。その際には中栓10の閉塞部20の囲壁部26を手のひらに当てて振り出すとよく、これにより内容物の飛散が防止できる。また中栓10に当てた手によって、振り出し容器を持つ腕の上下運動を補助することができ、片腕にかかっていた負担を軽減することができる。もちろん中栓に手を当てずに振り出しても従来品と変わらない吐出が可能である。また上記操作において、囲壁部26が栓孔24を囲んでいるので、栓孔24を清潔に保つことができる。
【0029】
さらに閉塞部20の内面は、図3に示す凹曲面30であり、その上部が上外方へ直線状または凸曲面状に傾斜する形状となっており、上記振り出し操作の際に内容液Lが凹曲面30に浅く当たるから(図5参照)、凹曲面30の液の付着量を低減できる。これに対して、参考例である図8(B)(C)のように閉塞部20の上側部分の内面を垂直とし、この垂直部分と栓盤部22との接続部分である基端部の曲率半径を小さくした場合と比較すると、この垂直部分に対して液体が深い角度で当たり(図9(B)参照)、勢いが減殺されるので、付着量が多くなる。また、閉塞部20の内面を凹曲面とせず、図8(A)に示すようにテーパ状とした場合は付着量が多くなる。これは、飛散液体が閉塞部の内面に対して浅い角度で接することで内面への液体の粘着力の寄与が強く作用するためと推測される(図9(A)参照)。
【0030】
以下本発明の他の実施形態を説明する。その説明において、第1実施形態と同じ構造に関しては解説を省略する。
【0031】
図6は、本発明の第2実施形態に係る中栓10を示している。本実施形態では、閉塞部20の凹曲面30を、栓孔24の孔縁と連続する環状の平坦面部30aと、凹曲面30の過半部を占める、下外方へ膨らむ第1弯曲面部30bと、囲壁部26の上端面26aと連続し、上内方へ膨らむ第2弯曲面部30cとで形成している。第1弯曲面部30bは断面円弧状である。第1弯曲面部30bの曲率半径は、栓孔24から囲壁部26の上端までの高さHよりも小さく、その高さの半分よりも大きい。
【0032】
以下、本発明に係る中栓付き振り出し容器に関して行った実験に関して説明する。実験の目的は、中栓の形状条件(凹曲面の曲率半径の大きさ)及び使用条件を変えて、振り出し操作をしたときの凹曲面への液体の付着量を調べることである。
【0033】
中栓の形状条件に関しては、図3に示す閉塞部内面の曲率半径が7.5mmのもの(試験体4)、及び、図6に示す第1弯曲面部30bの曲率半径が4mmのもの(試験体3)の他に、比較例として、図8(B)に示す基端部の曲率半径が2mmのもの(試験体2)、図8(C)に示す基端部の曲率半径が0.2mmのもの(試験体1)、及び、図8(A)に示す閉塞部内面がテーパ状であるもの(試験体5)を用いた。なお、栓孔24から囲壁部の上端部までの高さは、試験体1、2が約4mm、試験体3〜5が約5mmである。
【0034】
使用条件として、図7に示す如く、傾け角度を45°と90°とした場合、振り出し速度が速い場合と遅い場合、吐出方法として手のひらに当てながら吐出する場合と手のひらに当てずに吐出する場合を採用した。
【0035】
これらの条件を組み合わせて、振り出し操作を行い、中栓付近に付着した水滴の重量を測定した。測定値は各種の組み合わせそれぞれに関して10回の測定の平均値を算出した。その結果を次の表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
その結果として、本願の試験体3(本願第2実施形態)及び試験体4(本願第1実施形態)では他の試験体より水滴の付着量が少なく、とくに試験体4が最適であることが判った。これにより、曲率半径の範囲は、4mmから8mmが良好であると考えられる。
【符号の説明】
【0038】
2…容器本体 4…胴部 6…口頸部
10…中栓 12…装着部 14…装着筒部 15…抜け止め用リブ
16…内向きフランジ
20…閉塞部 22…栓盤部 23…肉抜き部
24…栓孔 26…囲壁部 26a…上端部
27…突部 28…隆起部
30…凹曲面 30a…平坦面部 30b…第1弯曲面部 30c…第2弯曲面部
36…栓筒部
40…キャップ 42…頂壁部 44…キャップ周壁部
46…第1係止段部
48…係止突起
C…コーナー F…内面 O…曲率中心 R…曲率半径 H…囲壁部上端の高さ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9