【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
「サンプルの作成」
以下の方法で、本発明の多孔質機能材料等の作成をおこなった。
【0030】
[原料]
1.担体(多孔質担体)
(1a)活性炭“ヤシガラ”(ナカライテスク社製、ヤシ殻炭 4−10mesh)
(1b)発泡ガラス“スーパーソル「L1」”((株)荒木セメント工業社製、絶乾比重0.3〜0.6、吸水率30%以上)
(1c)発泡ガラス“スーパーソル「L4」”((株)トリム社製、絶乾比重1.0〜1.6、吸水率5%以上)
(1d)発泡ガラス“ポーラスα「P−310」”((株)ジーライト社製、粒径3〜10mm)
【0031】
なお、前記担体のうち、担体(1b)、担体(1c)のみかけ密度の測定結果を表1に記す。
【0032】
【表1】
【0033】
2.溶液
(2a)リモナイト溶液(リモナイト系湧水)
阿蘇狩野地区のリモナイト産出土壌の近辺で得られる湧水(日本リモナイト本社工場敷地内)をリモナイト系湧水として使用した。なお、試験をおこなった平成25年7月の当該リモナイト系湧水のリン濃度(PO
43-)は、1.85mg/Lであり、全鉄濃度は11mg/Lであった。
(2b)硫酸鉄溶液
硫酸鉄(II)七水和物(FeSO
4・7H
2O、和光純薬工業社製)9.50gを100mLの水に溶かして、硫酸鉄溶液を調製した。
(2c)水酸化ナトリウム水溶液
NaOH(水酸化ナトリウム、キシダ化学社製、特級)2.736gを30mLの水に溶かして、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
【0034】
[調製]
多孔質機能材料は、以下の接触工程、乾燥工程を組み合わせて調製した。適宜、さらに焼成工程をおこなった。
【0035】
3.多孔質機能材料の調製
3.1 接触工程
(接触法A)湧水かけ流し浸漬
1)リモナイト系湧水が湧出する場所で、リモナイト系湧水をかけ流す方式で行った。20L容量のバケツを反応槽とし,メッシュ生地の袋に多孔質担体を所定量分散して反応槽内に設置した。シャワーを用いて空気と接触させながらリモナイト湧水を反応槽に滴下し下部より濾し出す流通式で接触処理させた。
【0036】
(接触方法B)浸漬方式
リモナイト系湧水を容器に貯め、多孔質担体を20時間浸漬させた。
【0037】
(接触方法C)浸漬方式(水酸化鉄成分の担持)
多孔質担体30mLを硫酸鉄溶液(2b)30mLに5時間浸漬させた(鉄担持処理)。その後、上澄みを除去して得られた多孔質担体に、水酸化ナトリウム溶液(2c)30mLを加え、さらに17時間浸漬させた(水酸化鉄化処理)。この後、上澄みを除去することで浸漬処理した。
【0038】
3.2 乾燥工程
定温乾燥器 DX602(ヤマト科学社製)を用いて、乾燥を行った。具体的な乾燥温度、時間については、サンプル毎に後述する。
【0039】
3.3 焼成工程
電気マッフル炉 KM−160(ADVANTEC社製)を用いて、焼成を行った。具体的な乾燥温度、時間については、サンプル毎に後述する。なお、担体として活性炭を用いて製造する機能材料の焼成にあたっては、焼成を行うるつぼに担体を投入した後、蓋をして空気との接触をできるだけ避けるように焼成をおこなった。他の担体を用いた機能材料の焼成にあたっては、るつぼの蓋は開けた状態で焼成した。
【0040】
「評価項目」
本発明にかかる、多孔質機能材料等の性能を以下の方法で評価した。
【0041】
「多孔質機能材料中の金属成分担持量」
多孔質機能材料中に担持された鉄およびマンガンといった金属成分の担持量を測定するために、以下の試験を行った。乳鉢により粉末状に調製した各試料約0.1g(試料毎に秤量)に、20mLの塩酸(6規定)を加え、混合した。その後、濾紙(ADVANTEC社製、No.5,φ110mm)を用いて、濾過した。濾液にさらに90mLの塩酸(6規定)を加え、全量を110mLとして、金属成分の濃度測定液とした。
金属成分の濃度の測定は、原子吸光光度計(日本ジャーレルアッシュ(株)製、“AA−890”)を用いて、標準試験液を用いた検量線法にて測定した。なお、金属成分の濃度測定液中の濃度が高く、検出上限を超える場合、適宜、蒸留水にて100倍希釈、あるいは1000倍希釈して測定を行った。この測定液中の金属濃度から、多孔質機能材料の金属成分担持量を求めた。また、多孔質機能材料以外の担体等についても、この方法に準じてその金属成分量を求めた。
【0042】
[リン除去効果]
(試験方法)
(リン含有液の循環式フロー実験1)
Na
2HPO
4・12H
2O(りん酸水素二ナトリウム・12水、和光純薬工業社製試薬特級)0.347gを3Lの水に溶かして、PO
43-の濃度が30mg/Lのリン含有液を調製した。多孔質機能材料(粒径5mm〜1cm程度)30mLをガラスカラムに充填し、前述のリン含有液150mLをダウンフローで通液させ(流速SV=5h
-1)循環させた。所定の通液時間ごとに、サンプリングし後述する方法でリン濃度を測定することで、リン除去効果を評価した。なお、通液中は、貯留槽の液は濃度を均一にするためにスターラーを用いて撹拌した。
この循環式フロー実験1は、比較的粒径が小さい多孔質機能材料の評価を行うときの条件とした。循環式フロー実験1の装置の模式図を
図1に記す。
【0043】
(リン含有液の循環式フロー実験2)
Na
2HPO
40.347gを3Lの水に溶かして、PO
43-の濃度が約30mg/Lのリン含有液を調製した。多孔質機能材料(粒径約5cm)をビーカーに2〜3個加え、前述のリン含有液250mLをダウンフローで通液させ(流速SV=5h
-1)循環させた。所定の通液時間ごとに、サンプリングし後述する方法でリン濃度を測定することで、リン除去効果を評価した。循環式フロー実験2の装置の模式図を
図2に記す。
【0044】
(分析方法)
(リン濃度の分析方法)
試験液1mLをホールピペットで採取し、蒸留水で希釈し20mLとした(20倍希釈)。この希釈した液10mLをセルに測りとり、HACH社製のリン酸濃度測定試薬“Phos Ver3”を用いてアスコルビン酸法の反応をさせ測定液とした。この反応中の測定液を用いて、吸光光度計(HACH社製“DR2400”)を用いて吸光光度分析法により、試験液のリン酸濃度を求めた。
【0045】
[塩素除去効果]
(試験方法)
(塩素含有液の循環式フロー試験1)
NaClO(次亜塩素酸ナトリウム溶液 和光純薬工業社製試薬、有効塩素(Cl):5.0%) 1mLを1Lの蒸留水に溶かした溶液(残留塩素濃度87mg/L:調製時の実測値)50mLをビーカーに採取し、次に、測定対象とする多孔質機能材料(粒径約5cm)をビーカー内に加えた。ローラーポンプを用いて、ビーカー内の液を循環処理した。この循環時の平均流量は910mL/hとした。なお、循環させるとき、ビーカーの下部から吸い上げビーカーの上部から吐出することで出口の溶液が基材に接触するような構成とした。
【0046】
(残留塩素濃度の分析)
一定時間循環させた後に溶液の残留塩素濃度を残留塩素分析計(TANITA EW―510)を用いて測定した。この分析計の、測定範囲は0.00〜2.00mg/Lのため、上限を超えた場合は、適宜10倍もしくは100倍に、蒸留水で希釈して測定した。
【0047】
[実施例1〜7、比較例1〜3、参考例1〜2]
表2に作成した多孔質機能材料に関する、前述の多孔質担体とリモナイト溶液との組み合わせ、およびその製造方法等について記載する。実施例にかかる機能材料のように、本発明によればリモナイト様の多孔質機能材料を短時間で効率よく製造することができる。これは、従来のリモナイトを製造する工程である熟成等の長期間を要する作業の必要性がなくなるため、非常に効率的である。
【0048】
【表2】
【0049】
[多孔質機能材料に担持される金属成分量]
前述の実施例等により得られた代表的な多孔質機能材料等に担持される金属成分を測定した結果を表3に示す。本発明の多孔質機能材料の製造方法により、各多孔質担体である、担体(1b)や、担体(1c)に、鉄成分やマンガン成分が担持されていることを確認することができた。
【0050】
【表3】
【0051】
[多孔質機能材料の機能評価]
表2に記す多孔質機能材料を用いて、水中のリン除去効果、塩素除去効果を評価した。
【0052】
[評価例1(リン除去効果)]
機能材料(A1)、機能材料(A2)、活性炭(1)、発泡ガラス(1)、リモナイト(1)、機能材料(α1)を用いて、前述の「リン含有液の循環式フロー実験1」を行い、リン濃度の経時変化を評価した。結果を
図3に示す。
図3に示すように、本発明の実施例にかかる機能材料は、比較例、参考例のサンプルと比し、優れたリン除去効果を示した。
【0053】
[評価例2(リン除去効果)]
機能材料(B1)、機能材料(B2)、機能材料(B3)、機能材料(C1)を用いて、前述の「リン含有液の循環式フロー実験2」を行い、リン濃度の経時変化を評価した。結果を
図4に示す。
【0054】
[評価例3(塩素除去効果)]
機能材料(B4)、発泡ガラス(2)を用いて、前述の「塩素含有液の循環式フロー試験」を行い、塩素濃度の経時変化を評価した。なお、この試験に用いた機能材料(B4)の質量は5.718g、発泡ガラス(2)は4.315gである。また、ブランクとして、これらの機能材料や基材を加えず、何の操作も加えない状態で定期的に残留塩素濃度の測定のみを行った。評価結果を、表4に示す。本発明の実施例7にかかる機能材料(B4)は、発泡ガラス単体よりも優れた塩素除去効果を示した。
【0055】
【表4】