特許第6372851号(P6372851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6372851-避難支援設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372851
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】避難支援設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20180806BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20180806BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20180806BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G08B25/04 F
   G08B23/00 510A
   G08B21/10
   G08B17/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-167718(P2014-167718)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-45579(P2016-45579A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢三
【審査官】 石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−178483(JP,A)
【文献】 特開2013−186555(JP,A)
【文献】 特開2002−349094(JP,A)
【文献】 特開平04−358300(JP,A)
【文献】 特開2002−279566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 1/00−9/20
17/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物での火災から防護されるように耐火壁で区画され、あらかじめ特定されたフロア内の一画に設けられるとともに、前記建物の垂直方向への避難経路に接続されており、火災が発生した際の前記フロア内での一時待避場所として活用される一時避難エリアと、
前記一時避難エリアの出入口部分に設置され、該出入口部分を通過する個人を識別して検出する入退室識別部と、
監視センタ内に設置され、前記入退室識別部の検出結果に基づいて、前記一時避難エリア内に在室中の個人を特定する在室者情報を含む表示情報を生成して、前記監視センタ内でモニタ表示させる監視部と
前記フロア内における前記一時避難エリア以外の各部屋の出入口部分に設置され、前記各部屋内での人の在不在を検出する個別在室状況識別部と、
前記各部屋の出入口部分の外側に設けられ、人が在室している状態を識別表示する在室表示灯と
を備え
前記監視部は、前記個別在室状況識別部の検出結果に基づいて、前記各部屋のそれぞれについて、在室状態であるか否かを特定し、火災が発生した際に在室状態である部屋について未避難者在室状態と判定して未避難者情報を含むように前記表示情報を生成して前記監視センタ内でモニタ表示させるとともに、前記各部屋について特定された前記在室状態に基づいて、人が在室しているそれぞれの部屋の前記在室表示灯を識別表示させる
避難支援設備。
【請求項2】
建物での火災から防護されるように耐火壁で区画され、火災が発生した際のフロア内での一時待避場所として活用される一時避難エリアと、
前記フロア内における前記一時避難エリア以外の各部屋の出入口部分に設置され、前記各部屋内での人の在不在を検出する個別在室状況識別部と、
前記各部屋の出入口部分の外側に設けられ、人が在室している状態を識別表示する在室表示灯と
を備え、
前記個別在室状況識別部の検出結果に基づいて、人が在室しているそれぞれの部屋の前記在室表示灯を識別表示させる
避難支援設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等の発生時に、建物内における避難状況を把握することのできる避難支援設備に関する。
【背景技術】
【0002】
避難安全対策として、歩行困難者等の災害弱者のために、非常用エレベータを避難に用いることができるようになり、高層の病棟にも導入された実績がある。このような避難設備では、出火階などでの水平方向の避難に一時避難エリアを利用し、建物の垂直方向の避難に非常用エレベータを利用する。
【0003】
さらに、このような高層の病棟などでは、フロアを二分する水平防火区画が設定されているとともに、加圧排煙を利用して、煙の動きを制御できるようになっている。
【0004】
また、建物の同一階に設けられた複数の防火区画の中に、一時避難所として利用できる安全区画を設ける従来技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。この特許文献1では、安全区画を、耐火ガラスを用いて区画することで視認性を良くするとともに、防火区画壁と引き戸との間の隙間に熱感応型発泡剤を使用し、火災発生時の熱によりこの発泡剤が膨張することで、煙や炎が安全区画に進入することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
上述した一時避難エリアは、水平方向の避難経路上に設けられており、災害弱者が滞留すると、実際に火災が発生した際には、避難者、および消火作業や救助作業を行う作業員の通行を阻害し、渋滞を招くおそれがある。
【0007】
また、救助作業員が一時避難エリアに到着するまでには、時間を要し、その時間は、長時間にわたる場合もあり得る。従って、災害弱者を保護するための一時避難エリアは、安全性が高ければ高い方が良く、必要な人員を、長時間に渡って、効率よく確実に保護できる設備が望まれている。さらに、火災発生時の避難活動を円滑に行うためには、避難者(特に、要避難介護者、歩行困難者を含む災害弱者)の避難状況を的確に把握することが非常に重要となる。
【0008】
特許文献1においては、防火防煙対策に関する技術は開示されているが、避難状況の把握に関しては、特に言及されていない。
【0009】
一方、各種建物において入退室を管理するために、各種のシステムが利用されており、IDカードや生体認証を用いて個人を識別することはよく知られている。そこで、避難活動を円滑に進めるために、避難状況(特に、災害弱者の避難状況)を、適切に把握することが望まれている。
【0010】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、火災発生時において、災害弱者が一時待避場所として利用する一時避難エリアを備えた建物において、避難状況を的確に把握し、避難活動の円滑化を図ることのできる避難支援設備を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る避難支援設備は、建物での火災から防護されるように耐火壁で区画され、あらかじめ特定されたフロア内の一画に設けられるとともに、建物の垂直方向への避難経路に接続されており、火災が発生した際のフロア内での一時待避場所として活用される一時避難エリアと、一時避難エリアの出入口部分に設置され、該出入口部分を通過する個人を識別して検出する入退室識別部と、監視センタ内に設置され、入退室識別部の検出結果に基づいて、一時避難エリア内に在室中の個人を特定する在室者情報を含む表示情報を生成して、監視センタ内でモニタ表示させる監視部と、フロア内における一時避難エリア以外の各部屋の出入口部分に設置され、各部屋内での人の在不在を検出する個別在室状況識別部と、各部屋の出入口部分の外側に設けられ、人が在室している状態を識別表示する在室表示灯とを備え、監視部は、個別在室状況識別部の検出結果に基づいて、各部屋のそれぞれについて、在室状態であるか否かを特定し、火災が発生した際に在室状態である部屋について未避難者在室状態と判定して未避難者情報を含むように表示情報を生成して監視センタ内でモニタ表示させるとともに、各部屋について特定された在室状態に基づいて、人が在室しているそれぞれの部屋の在室表示灯を識別表示させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、災害弱者の一時待避場所となる一時避難エリアの在室状況を、個人識別して管理できる構成を備えている。この結果、火災発生時において、災害弱者が一時待避場所として利用する一時避難エリアを備えた建物において、避難状況を的確に把握し、避難活動の円滑化を図ることのできる避難支援設備を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1における避難支援設備を説明するための、建物内の1フロアの一部を示すレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の避難支援設備の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0015】
実施の形態1.
まず始めに、本実施の形態1に係る発明のポイントについて説明する。本実施の形態1に係る避難支援設備は、以下の要件を組み合わせる点に技術的特徴を有するものである。
要件A:建物の1つのフロア内の一画に設けられ、耐火壁等で区画されており、避難経路に接続されている一時避難エリア(一時待避場所)を備える。
要件B:建物のフロア内の廊下から一時避難エリアへの出入口部分に設置され、出入口部分を通過する避難者を個別に識別して検出する入退室識別部を備える。
要件C:入退室識別部の検出結果から、一時避難エリア内に在室中の個人を特定する在室者情報を含む表示情報を生成して、監視センタ内でモニタ表示させる監視部を備える。
【0016】
このような要件A〜要件Cを兼ね備えることにより、建物内の各避難者のうち、一時避難エリアまで到達している状況や一時避難エリアに在室中の避難者の人数等を、監視センタ(防災センタ)等に設けた監視部にモニタ表示させることができ、一時避難エリアを中心とした避難活動を、実際の状況に応じて円滑に行うことが可能となる。
【0017】
なお、監視部では、各避難者の情報として、避難者の総数や避難時での在室者の総数等を事前に保有することで、一時避難エリアに留まっている避難者だけでなく、未だ一時避難エリアに到達できていない避難者も判別できる。さらに、以下の要件Dを追加することができる。
要件D:避難者が平常時に所在する部屋での在不在を、個人を識別して検出する個別在室状況識別部を備える。
【0018】
この要件Dをさらに備えることによって、監視部は、一時避難エリアまで到達していない避難者のうち、まだ居室から出ることもできず在室中の人を、個人を識別して把握できる。
【0019】
このようなシステムにおいて、入退室識別部は、あらかじめ各自に配布され、個人ごとに所持しているIDタグの情報を、非接触で読み込む方式を採用することができる。また、出入口を監視するカメラを設置し、そのカメラの画像から顔認識によって個人を特定する方式を採用することもできる。
【0020】
また、さらに、避難活動の円滑化を図るためには、以下の要件Eを追加することができる。
要件E:一時避難エリアの内外の一方または双方に監視部からの情報を表示する統括情報表示器を備える。
【0021】
この要件Eをさらに備えることによって、一時避難エリア内に一時待避している避難者は、自分たちの存在が認識されていることを知り、安心感を与えることができる。また、表示器を一時避難エリアの外側に設けると、救援に来た者が状況を把握することができる。
【0022】
特に、監視部は、火災発生時における一時避難エリア内に在室する災害弱者を、個人を特定して表示することができる。さらに、火災発生時における各部屋の在室状況を、各部屋のレイアウトと合わせて表示することができる。このような表示機能により、個人を特定することで、歩行困難者等の存在を健常者と分けて把握することができ、避難活動に有用な情報を得ることが可能となる。
【0023】
次に、上述した技術的特徴を有する本実施の形態1に係る避難支援設備の具体的な動作について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態1における避難支援設備を説明するための、建物内の1フロアの一部を示すレイアウト図である。
【0024】
図1に示した避難支援設備のレイアウトには、廊下1、各部屋2、一時待避場所である一時避難エリア3、垂直方向避難経路前に設けられる附室4、一時避難エリア3と附室4とを接続する水平方向避難経路となるバルコニー5、垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、および避難階段12が含まれている。
【0025】
また、図1中には、各部屋2の出入口20と、他の5つの出入口21〜25が配置されている。さらに、各部屋の出入口20、および他の出入口21〜25のそれぞれには、入退室管理、あるいは一時避難エリア3内の在室管理を行うために、個人が所持する認識タグの情報を非接触で読み取る読取り部であるRFIDセンサ27、27(1)〜27(5)が設けられ、廊下1には、監視カメラ28が設けられている。さらに、各部屋2の出入口20部分の外側には、在室状況を示す在室表示灯29が設けられている。
【0026】
このような図1の構成に基づいて、要件A〜要件Eについて、具体的に説明する。
(1)要件A(一時避難エリア3)について
一時避難エリア3は、出入口21を介して、水平方向避難経路である廊下1と接続し、廊下1との出入りが可能であり、出入口22を介してバルコニー5と接続し、バルコニー5との出入りが可能となっている。この一時避難エリア3は、図1に示したように、フロアの一画に設けられるとともに、建物の垂直方向の避難経路の役目を果たす非常用エレベータ11あるいは避難階段12にアクセス可能な位置に設けられている。
【0027】
さらに、一時避難エリア3の周囲は、耐火壁Wで覆われており、一時避難エリア3内に一時待避した人たちを、火災から防護できる構造が採用されている。そして、一時避難エリア3は、耐火壁Wで区画されることにより、火災により発生する炎、煙、あるいは有毒ガスを遮断できる構成となっていることが望ましい。一時避難エリア3の広さは、予め消防計画等で想定される災害弱者が占有するスペースを考慮して適宜決定される。このようにして、あらかじめ特定されるフロアの一画に、防護スペースとしての一時避難エリア3を確保することで、水平方向の避難における一時待避を確実に行うことができる。
【0028】
さらに、一時避難エリア3は、垂直避難経路である非常用エレベータ11あるいは避難階段12にアクセス可能な位置に設けられるとともに、垂直避難経路である非常用エレベータ11あるいは避難階段12に至る防護された経路を有するように設けられ、例えば、非常用エレベータ11から避難が可能となるまでの間、災害弱者を火災から確実に守ることが可能となる。
【0029】
さらに、図示していないが、一時避難エリア3が火災の影響を受けた場合に動作する音声警報付き煙CO複合センサを、一時避難エリア3内に設置することも可能である。音声警報付き煙CO複合センサが動作した場合には、一時避難エリア3内に一時待避している人々に対して、避難が必要である状況をいち早く知らせるとともに、特に、要介護避難者(災害弱者)を優先して、一時避難エリア3から脱出させることを促すことができる。
【0030】
(2)要件B、C(入退室識別部、監視部)について
共用の一時避難エリア3は、火災発生時における避難者の一時待避場所として使用される。従って、火災発生時の避難活動を円滑に行うためには、避難者(特に、災害弱者)の、一時避難エリア3内での在室者情報を的確に把握することが重要となる。
【0031】
出入口21、22に設ける入退室識別部に相当するRFIDセンサ27(1)、(2)は、出入口21、22部分で通過する方向を検出できるものが望ましい。通過方向を検出できるとともに非接触で個人を特定できるものであれば、RFIDセンサ27(1)、(2)と認識タグ(RFIDタグ)の組合せから成る在室管理に限るものではない。例えば、出入口21、22のRFIDセンサ27(1)、(2)に代えてカメラを設置し、このカメラによって撮像される画像に対して、顔認識処理を施すことによって個人を特定し、さらに移動方向を判別することによって、その人物が一時避難エリア3に入室したか退室したかを判断することも可能である。
【0032】
また、RFIDセンサ27(1)、(2)が通過する認識タグの情報を検出するものであって、通過方向まで把握できないような場合であっても、検出された認識タグ毎の通過回数を計数し、その計数値が奇数であれば在室、偶数であれば退室と判断することによって、在室管理を行うことが可能となる。
【0033】
RFIDセンサ27(1)、(2)に代えてカメラを設置し、このカメラによって撮像される画像に対して、画像処理を施すことによって、監視部のデータベースに登録されていない者、例えば避難困難者の避難を支援する人、が在室している状況や在室人数を把握することも可能である。また、性別、年齢、歩行動作等により避難困難者であるか否かを予測することも可能となる。そして、監視部が設置された防災センタ等で一時避難エリア3に在室している避難困難者を把握し、適切な避難支援を行うことができるようになる。
【0034】
RFIDセンサ27(1)、(2)、または、これらに代えて設置するカメラは、詳細に説明しないが、火災感知器等と火災受信機との伝送線に接続され、火災感知器等と同様に、火災受信機がRFIDセンサ27(1)、(2)、または、これらに代えて設置するカメラから情報を収集してもよく、火災発生時には、その結果に基づいて、後述する統括情報表示器による表示を開始するように、火災受信機からの制御信号に基づいて制御してもよい。
【0035】
以下では、説明を簡略化するために、避難者が、出入口21を経由して、廊下1から一時避難エリア3に入室し、出入口22を経由して、一時避難エリア3からバルコニー5へ退室する場合を例に、在室管理について説明する。
【0036】
個人識別を行うべき人たちには、個人識別情報が記憶されている認識タグ(RFIDタグ)があらかじめ配布されている。そして、出入口21の近傍に設けられたRFIDセンサ27(入退室識別部に相当)は、一時避難エリア3に入室する人がRFIDタグを所持している場合には、そのRFIDタグに記憶された個人識別情報を非接触で読み取る。同様に、出入口22の近傍に設けられたRFIDセンサ27(入退室識別部に相当)は、一時避難エリア3から退室する人がRFIDタグを所持している場合には、そのRFIDタグに記憶された個人識別情報を非接触で読み取る。
【0037】
そして、図1には図示されていない監視部は、出入口21の近傍に設けられたRFIDセンサ27により読み取られた個人識別情報に基づいて、一時避難エリア3内に入室した個人を特定し、一時避難エリア3内の在室者情報を更新する。また、監視部は、同様にして、出入口22の近傍に設けられたRFIDセンサ27により読み取られた個人識別情報に基づいて、一時避難エリア3外に退室した個人を特定し、一時避難エリア3内の在室者情報を更新する。
【0038】
なお、監視部は、出入口23〜25の近傍に設置されたRFIDセンサ27(3)〜27(5)により読み取られた個人識別情報を時系列的に集計することで、一時避難エリア3内の在室者情報ばかりでなく、避難経路を経由して脱出した個人を特定することもできる。すなわち、個人別に、個人識別情報が読み取られたRFIDセンサを時系列順に集計して表示させることで、避難経路と現在の居場所を個人ごとに特定することが可能となる。
【0039】
RFIDセンサ27は、詳細に説明しないが、火災感知器等と火災受信機との伝送線に接続され、火災感知器等と同様に、火災受信機がRFIDセンサ27から情報を収集してもよく、その結果に基づいて、各部屋の在室表示灯29の点灯消灯を火災受信機からの制御信号に基づいて制御してもよい。
【0040】
(3)要件D(個別在室状況識別部)について
各部屋2の出入口20のそれぞれの近傍にもRFIDセンサ27(個別在室状況識別部に相当)が設けられている場合には、監視部は、これらのRFIDセンサ27によって読み取られた認識タグ(RFIDタグ)の個人識別情報を元に、各部屋2における、個人別の各部屋2の在室者情報を生成し、更新することができる。
【0041】
この結果、監視部は、一時避難エリア3まで到達していない避難者のうち、まだ部屋2から出ることもできず在室中の人を、個人を識別して把握できる。また、監視部は、部屋2から退室した避難者が避難する経路、例えば、一時避難エリア3、附室4、避難階段12のいずれにも到達していない状況を把握することも可能となる。例えば、部屋2から退室した避難者が、あらかじめ定めた上限時間を経過しても、RFIDセンサ27(1)、27(3)を通過していないことを以て、当該避難者が逃げ遅れている、あるいは行方不明になっていると判断することができる。このように、監視部は、入退室識別部としてのRFIDセンサ27(1)、27(2)による検出結果と、個別在室状況識別部としてのRFIDセンサ27による検出結果とに基づいて、個人識別情報を時系列的に集計することで、避難状況および最新の居場所を個人ごとに特定できるように表示することができる。そして、監視部が設置された防災センタ等で部屋2から退室したままになっているような避難者を把握し、適切な避難支援を行うことができるようになる。
【0042】
なお、出入口20に設けるRFIDセンサ27は、出入口20で通過する方向を検出できるものが望ましい。通過方向を検出できるとともに非接触で個人を特定できるものであれば、RFIDセンサ27と認識タグとの組合せから成る在室管理に限るものではない。例えば、出入口20のRFIDセンサ27に代えてカメラを設置し、このカメラによって撮像される画像に対して、顔認識処理を施すことによって個人を特定し、さらに移動方向を判別することによって、その人物が部屋2に入室したか退室したかを判断することも可能である。
【0043】
また、RFIDセンサ27が通過する認識タグの情報を検出するものであって、通過方向まで把握できないような場合であっても、検出された認識タグ毎の通過回数を計数し、その計数値が奇数であれば在室、偶数であれば退室と判断することによって、在室管理を行うことが可能となる。
【0044】
また、出入口20に設けるRFIDセンサ27に代えてカメラを設置し、このカメラによって撮像される画像に対して、画像処理を施すことによって、監視部のデータベースに登録されていない者、例えば避難困難者の避難を支援する人、が在室している状況や在室人数を把握することも可能である。また、性別、年齢、歩行動作等により避難困難者であるか否かを予測することも可能となる。そして、監視部が設置された防災センタ等では、部屋2に在室中の避難困難者を把握し、適切な避難支援を行うことができるようになる。
【0045】
さらに、監視部は、RFIDセンサ27に基づいて更新した在室者情報の結果から、部屋2内に在室している人がいる場合には、在室表示灯29を点灯するなどして識別表示させることができる。この結果、火災発生時において、救助作業員は、各部屋2内の在室者情報を迅速に把握することができ、火災発生時の避難活動の円滑化の一助となる。
【0046】
(4)要件E(統括情報表示器)について
監視部は、入退室識別部による識別結果に基づいて更新した一時避難エリア3内の在室者情報、および個別在室状況識別部による識別結果に基づいて更新した各部屋2の在室者情報を、一時避難エリア3の近傍に設けられた統括情報表示器30に表示させることができる。
【0047】
ここで、統括情報表示器30は、一時避難エリア3内、あるいは一時避難エリア3外の一方または双方に設置することができる。図1においては、一時避難エリア3外の附室4の壁面に統括情報表示器30(1)が設置され、一時避難エリア3内の壁面に統括情報表示器30(2)が設置されている状態を例示している。
【0048】
また、統括情報表示器30に表示させる情報は、単に、監視部により更新された在室者情報だけには限られず、図1に示したようなフロアのレイアウト表示に合わせて、在室状況を表示させることも可能である。
【0049】
また、監視部で生成された在室者情報は、建物の管理センタばかりでなく、他の警備センタに送信させることも可能である。従って、火災発生時において、個人を特定した在室者情報を的確に把握することが、外部においても可能となる。
【0050】
統括情報表示器30は、火災発生時に、詳細に説明しない火災受信機からの火災信号を受信した監視部から表示を開始するようにしても制御してもよい。また、統括情報表示器30は、詳細に説明しない火災受信機から信号伝送される情報を表示するようにしてもよく、このとき、監視部の役割を火災受信機が行うことになり、入退室識別部から情報を、火災受信機が収集して在室者情報を作成する。そして、防災センタ内にも一時避難エリアと同じ情報を表示させるようにする。
【0051】
以上のように、実施の形態1によれば、災害弱者の一時待避場所となる一時避難エリアの在室状況を、個人識別して管理できる構成を備えている。この結果、火災発生時において、災害弱者を考慮して、避難活動の円滑化を図ることのできる避難支援設備を実現できる。
【0052】
また、一時避難エリア以外の各部屋の在室状況も管理することで、フロア全体、あるいは建物全体として、取り残されている人たちの状況を個人を特定して的確に把握でき、避難活動のさらなる円滑化を図ることのできる避難支援設備を実現できる。
【0053】
また、監視部で生成された情報を、表示器に表示させる構成を備えている。この結果、救助作業者が、各部屋あるいは一時避難エリアの在室状況を、個人を特定して迅速に把握することが可能となる。
【0054】
さらに、個人を識別するためのIDとして、健常者、要避難介護者、歩行困難者等を識別するための属性情報を、個識別情報に含めて、あらかじめデータベースに記憶しておくことで、監視部は、表示させるデータを属性別に生成することが可能である。また、監視部は、在室者の属性に応じて、色や点灯/点滅状態等を区別して在室表示灯29の表示を行うことも可能である。このように、属性別に在室者情報を生成して、表示器や表示灯に識別表示させることで、避難活動のさらなる円滑化を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1 廊下、2 各部屋、3 一時避難エリア、4 附室、5 バルコニー、11 非常用エレベータ、12 避難階段、20〜25 出入口、26 人感センサ、27、27(1)〜27(5) RFIDセンサ、28 監視カメラ、29 在室表示灯、30 統括情報表示器。
図1