【文献】
井上祐樹,アンモニア水溶液中レーザー照射による4H-SiC中への窒素ドーピング,第74会応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集,日本,2013年 9月16日,2013秋,19a-P9-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パワー半導体としてシリコンカーバイド(SiC)、特に4Hのシリコンカーバイド(4H−SiC)を用いた半導体素子が期待されている。4H−SiCの半導体素子は、通常、所望の濃度でエピタキシャル成長させた4H−SiC結晶層が形成された半導体基板に、リン(P)やアルミニウム(Al)等の不純物元素のイオンをドーピングして製造される。具体的には、例えば、加速させた不純物元素のイオンを半導体基板に照射することで注入するとともに、その後、イオンが注入された半導体基板の結晶構造の回復及び不純物元素の活性化のために半導体基板を加熱する処理(アニール)が行われる。
【0003】
ここで半導体基板が4H−SiCの場合、4H−SiCの(0001)面((000−1)面)に対して高ドーズ(例えば10
15/cm
2程度以上)のイオン注入を行うにあたり、半導体基板を事前に300〜800度程度に昇温させる加熱処理を行う必要がある。事前の加熱処理が無い場合、4H−SiCの再結晶化及び不純物元素の活性化が有効に行われないからである。
【0004】
また半導体基板がSiCの場合のアニールは、1600〜1800度程度と、シリコン(Si)の場合より高温で行われる。この高温アニールによって半導体素子の表面からSiが脱落することや、マイグレーションにより半導体素子の表面が荒れることが知られている。そこで、半導体素子の表面に窒化アルミニウム(AlN)や炭素(C)等の保護膜を形成した上でアニールするという方法があるが、保護膜の形成及び除去のための処理工程が増加し、処理コストが増大するという問題がある。またアルミニウム(Al)や炭素(C)による周辺の汚染という問題も懸念される。また半導体基板がSiの場合のアニールであっても、活性化させる不純物元素によっては800度以上の高温で行われることがある。すなわち、半導体素子の製造においては、高温処理が用いられることが多い一方、高温処理が半導体基板の特性変動や製造プロセスへの制約等様々な影響を与えるという問題がある。
【0005】
上記した問題を解決する手段として、非特許文献1に記載のレーザードーピングの技術が考えられる。非特許文献1は、高濃度の不純物元素の化合物を含む水溶液である溶液中に4H−SiCの半導体基板を浸漬し、半導体基板の表面と溶液との界面領域にレーザ光をパルス照射することで、半導体基板に対し局所的な加熱を行い、溶液中の不純物元素をドーピングする。具体的には、不純物元素の窒素(N)をアンモニア(NH
3)の形で化合物として水に溶解させたアンモニア水溶液の中に半導体基板を浸漬してレーザードーピングを行う。照射されるレーザ光は、SiCにおいて吸収係数の大きい紫外域の波長の光が用いられる。非特許文献1によれば、室温相当の環境下であっても不純物元素の注入と半導体基板の活性化とを同時に行うことが可能であり、半導体基板に対する上記した事前の加熱処理及び不純物元素注入後のアニールを行う必要がないとされている。
【0006】
しかし非特許文献1の技術の場合、レーザ光の照射中に、半導体基板を浸漬する溶液中に含まれる不純物元素以外の化合物塩や溶媒構成材料が、レーザ光の熱で分解される。そして、分解された化合物塩や溶媒構成材料が半導体基板の表面に吸着して汚染を生じさせたり、半導体基板の結晶層中に取り込まれたりすることで、半導体素子の特性に悪影響が生じるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0014】
まず、本発明の実施形態に係る不純物導入方法及び半導体素子の製造方法が用いられる不純物導入装置を、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1及び
図2では、説明のため半導体基板2、不純物液槽5が断面視で示されている。半導体基板2は、例えば4H−SiCであり、
図1に示すように、不純物液槽5の内側で底面上に配置され固定されている。半導体基板2上には、所定の濃度の4H−SiCエピタキシャル成長層が形成されている。そして半導体基板2は、不純物液槽5の内側に貯留された不純物液1中に浸漬され、半導体基板2のレーザ光6が照射される側の面を、4H−SiCの結晶層の(0001)面((000−1)面)としている。不純物液槽5は、支持台3に下方から支持されるとともに、支持台3は更にX−Y移動ステージ8に搭載されている。
【0015】
不純物液1は、不純物元素の分子が液相とされた液体である。本発明の実施形態に係る不純物元素としては液体窒素が用いられる。液体窒素は、例えば図示しないタンクに液相を保持されて蓄えられており、レーザードーピングの際、
図2に示すように、タンクから不純物液槽5に供給される。窒素の沸点はマイナス約196度と比較的低温であり、液体窒素に接触する半導体基板2及び不純物液槽5は、低温に耐性を有する材料で構成されている。尚、半導体基板2にドーピングさせる不純物元素としては、窒素に限定されることなく他の元素であってもよいが、例えばn型の半導体領域を形成する場合には、窒素は工業的に安価に量産可能であるとともに、安全性が比較的高いため好ましい。
【0016】
不純物液槽5の内側には、不純物液1が、半導体基板2の上面上に不純物液1の層が存在する領域が形成されるように、半導体基板2の厚み(
図1中の上下方向の長さ)よりも大きい液位となる量で貯留されている。また不純物液槽5は、X−Y移動ステージ8によって支持台3が移動する場合であっても、支持台3からずれることがないように、支持台3上の所定位置に固定されている。また不純物液槽5の底面には、例えば不図示の基準マークが複数形成されている。基準マークは、半導体基板2に予め設定されたレーザ光6の照射目標位置に対応する、不純物液槽5側の照射目標位置として用いられるものである。
【0017】
X−Y移動ステージ8は、支持台3を下方から水平に支持するとともに、不図示の駆動装置に接続され、半導体基板2を、水平面内の方向(X−Y方向)にそれぞれ自在に移動可能に構成されている。尚、例えば、支持台3とX−Y移動ステージ8との間に、支持台3をZ方向に移動させる図示しないZ移動ステージを設けることにより、支持台3を、更にX−Y方向に垂直なZ方向に移動可能に構成してもよい。支持台3をXYZの3軸移動可能に構成することにより、半導体基板2をレーザ光6の照射目標位置に応じた所定の位置に自在に移動させ、半導体基板2の所望の位置に、所望の不純物元素を導入することができる。
【0018】
レーザ光6は、
図1に示すように、レーザ光学系10により照射される。レーザ光学系10は、レーザ光6を照射するレーザ光源11と、照射されたレーザ光6を所定形状に成形する可変スリット12と、成形されたレーザ光6を反射して集光装置15に導く2枚の反射ミラー13、14とを備える。集光装置15は、例えば集光レンズであり、集光されたレーザ光6は半導体基板2と不純物液1との界面領域に照射される。またレーザ光学系10には、不純物液槽5の基準マークを撮像するCCDカメラ等からなる撮像装置18、照明光を照射する照明光発光装置16、照明光を反射及び透過させるミラー17が設けられている。またレーザ光学系10には不図示のアライメント機構等が別途設けられてよい。レーザ光学系10は、不図示の駆動装置に接続された上でX及びY方向に移動可能に構成されてよい。
【0019】
レーザ光学系10は、半導体基板2の禁制帯幅よりも大きなエネルギーとなる波長のレーザ光を照射するように構成されることが好ましい。例えば、KrF(=248nm)レーザやArF(=193nm)レーザ等の紫外線領域のレーザ光を照射するレーザ光源11を用いるようにすればよい。紫外線領域の光エネルギーで励起させることにより、不純物元素を4H−SiCの格子間位置に移動させることを容易にすることができる。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る不純物導入方法を説明する。まず
図1に示すように、半導体基板2を、上面を支持台3と反対側に向けて不純物液槽5の内側の底面上に載置し固定する。次に、半導体基板2上で不純物元素をドーピングさせる照射目標領域に応じた基準マークの位置を、レーザ光6の光軸に合致させるように、X−Y移動ステージ8を用いて支持台3をX及びY方向に所定量移動させる。このとき支持台3の移動に替えて、レーザ光学系10をX及びY方向に所定量移動させてもよい。
【0021】
次に、不純物液槽5の内側に不純物液1を供給して貯留させた上で、貯留した不純物液1中に半導体基板2を浸漬させる。或いは、不純物液槽5の内側の底面上に半導体基板2を載置した上で、不純物液1を不純物液槽5の内側に供給して貯留させてもよい。不純物液1の供給により、不純物元素の分子の液相が、半導体基板2の上面上に形成される。すなわち不純物元素の濃度が100%又は100%に極めて近似する状態の液体を半導体基板2に接触させる。
【0022】
次に、不純物液1を介して半導体基板2の上面上の照射目標位置にレーザ光6を照射する。レーザ光6の照射により、照射位置の下側の領域に不純物元素がドーピングされる。ここで
図1に示すように、不純物導入装置は常温環境とされた室内に配置されているが、不純物液槽5には断熱容器を用いて、不純物液1が揮発して発生した気泡によりレーザ光6が散乱されることを抑制している。タンクから不純物液槽5に移動した不純物液1は、直ちに周囲から蒸発潜熱を奪い、
図2中の複数の上向き矢印で示すように、不純物液1の液面から揮発する。そして揮発した不純物液1は、不純物液槽5の周囲から大気を排除し、不純物液1の液面には不純物と同組成の気体(揮発した不純物液1)のみが接するような構成としている。この様にして、空気中の酸素などが不純物液1に溶け込み、不純物液1の純度が低下することを防止している。尚、
図2中では説明のため、集光装置15以外のレーザ光学系10の構成の図示は省略されている。
【0023】
不純物液1の揮発に伴い不純物液1と空気との置換が進行すると、不純物液槽5中の不純物液1の貯留量は漸減する。しかし本発明の実施形態では、不純物液1の揮発が進行する一方で、不純物液槽5の内側に、レーザードーピングを継続可能な量の不純物液1を、
図2中の白抜きの下向き矢印で示すように、供給して貯留する。すなわち、レーザードーピング処理中は、不純物液1の貯留量の減少が抑制され、半導体基板2の内部に所望の濃度の不純物元素を所望の深さまで導入可能な量の不純物液1が、半導体基板2の上面に存在する。レーザードーピング中における不純物液1の貯留量は、不純物液1の単位時間あたりの揮発量や、レーザ光6の照射開始から終了までの処理時間等を考慮して設定されている。そのため、レーザードーピングの途中で不純物元素が不足してドーパントの導入濃度が低下するという事態を回避できる。
【0024】
またレーザードーピングの際、レーザ光6が照射された半導体基板2の表面は、局所的に加熱され昇温するが、半導体基板2の表面には、常温より遥かに低温の液体窒素が接触することにより、昇温した半導体基板2の冷却が促進され速やかに降温する。通常、シリコンの安定性が比較的高いとされるSiCの半導体基板であっても、千数百度以上の高温レベルで加熱処理が施されると、半導体基板の表面が溶発(アブレーション)し、表面からシリコンが脱落することが知られている。本発明の実施形態では、液体窒素を不純物液1として用いることにより、SiCの半導体基板2の表面のアブレーションを抑制できる。
【0025】
尚、常温より低い沸点を有し本発明の実施形態に係る不純物導入方法のドーパントとして使用可能な他の不純物元素として、例えば水素(H、沸点:マイナス約252度)、酸素(O、沸点:マイナス約183度)、フッ素(F、沸点:マイナス約188度)、塩素(Cl、沸点:マイナス約34度)等が好適に用いられる。
【0026】
次に、ある照射目標位置におけるレーザ光6の照射が終了した後、支持台3又はレーザ光学系10を、所望の方向に所定量移動させることにより、レーザ光6の照射位置を次の照射目標位置に移動させる。そして新たな照射目標位置に対してレーザ光6を照射し、照射が終了した後、レーザ光6の照射位置を次の照射目標位置に移動させ…の処理を繰り返し、半導体基板2の内部の一部に不純物元素を導入する。レーザ光6の照射及び照射位置の移動を繰り返すことにより、半導体基板2の上面上に複数の照射領域を重ね合わせたパターンを形成し、不純物元素のドーピング面を形成する。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る不純物導入方法を用いた半導体素子の製造方法を説明する。まず、第1導電型又は第2導電型の半導体基板2の上面の一部に、不純物元素の分子の液相を形成する。ここで第1導電型はp型又はn型であり、第2導電型は第1導電型の反対の導電型である。次に、液相を介して半導体基板2の上面にレーザ光6を照射して、半導体基板2の上部に、第1導電型(p型又はn型)の第1の半導体領域を形成する。次に、第1の半導体領域が形成されていない半導体基板2の上面にオーミックコンタクト電極層を接合させ、半導体素子を製造する。
【実施例1】
【0028】
図3及び
図4には、第2導電型(p型)の半導体基板2の上面に、第1導電型(n型)の第1の半導体領域2aを形成する実施例が示されている。尚、
図3中では説明のため、レーザ光6及び集光装置15以外のレーザ光学系10の構成の図示は省略されている。まず濃度10
17/cm
3のアルミニウム(Al)をドーピングしたp型エピタキシャル層を厚さ2μmで形成した4H−SiCの半導体基板2を、
図3に示すように、不純物液槽5の内側に貯留させた不純物液1中に浸漬した。不純物液1は液体窒素を用いた。
【0029】
次に、不純物液1を介して半導体基板2の上面にKrF(=248nm)エキシマレーザをパルス照射した。レーザ光6のビームは130μm×330μmの矩形状に形成した。パルス照射は、レーザ光6のパワー密度を4J/cm
2とするとともに、パルス幅を55ns、繰り返し周波数を100Hzとした。そして半導体基板2の上面のある照射目標位置に対してレーザ光6の照射を1000回繰り返して第1の半導体領域2aを形成し、半導体基板2に窒素をドーピングした。
【0030】
レーザードーピング終了後、半導体基板2を酸素プラズマに曝し、表面に堆積したカーボンコンタミネーションを除去した。次に半導体基板2の表面上にチタン(Ti)、続けてアルミニウム(Al)を、それぞれスパッタリングにより成膜形成した後、Ti/Al膜が、半導体基板2の第1の半導体領域2a以外のレーザ光6を照射していないp型領域に残るようにパターニングした。その後、半導体基板2に対し窒素(N
2)雰囲気中で1000度/2分のアニールを行い、Ti/Al膜を合金化し、
図4に示すように、半導体基板2のp型層上にオーミックコンタクト電極層Cを形成した。
【0031】
図4中の半導体基板の上側には、n型の第1の半導体領域2aと、第1の半導体領域2aが形成されていないp型の半導体基板2の上面に接合されたオーミックコンタクト電極層Cとの間を接続した回路が模式的に例示されている。
図4に示す回路を用いて、第1の半導体領域2aとオーミックコンタクト電極層Cとの間の電流‐電圧特性を確認したところ、約2.8Vで、回路に電流が流れ始めた。2.8Vの値は、SiCにおけるpn接合のビルトインポテンシャル近傍の値であるので、n型の第1の半導体領域2aとp型領域との間にpn接合が形成されていることが確認された。
【0032】
また実施例で得られた半導体基板2中にドーピングされた窒素は、SIMSを用いた分析により、
図5中のNで示す曲線のように、ピーク濃度が、半導体基板2の表面近傍で4×10
21/cm
3程度であった。また窒素の侵入深さについては、
図5中の「N」で示す曲線の略水平な領域で表されるように、SIMSによる検出限界濃度が3×10
18/cm
3程度であったため、
図5に示すプロファイルからは1μm程度以上の深さにおける正確な濃度は不明であった。しかし、少なくとも1μm程度の深さまでは濃度3×10
18/cm
3以上でドーピングされたことが確認できた。
【0033】
尚、
図5中には、ドーピングされた窒素の濃度プロファイルとともに、半導体基板2に含まれるシリコン(Si)及び炭素(C)のそれぞれのイオン強度(a.u
.)の深さ方向分布が、
図5中の「Si」で示す曲線及び「C」で示す曲線によって表されている。「Si」で示す曲線と「C」で示す曲線とが略平行に現れる状態で示されるように、SiCの結晶構造の維持が、半導体基板2の表面から0.3〜0.4μm程度以上深い領域で達成されている。そして、SiCの結晶構造が維持された領域に、窒素が深く導入されていることがわかる。
【0034】
また比較例として、実施例と同様のp型エピタキシャル層を形成した4H−SiCの半導体基板2を、85%リン酸水溶液中に浸漬させ、実施例と同様の条件でレーザ光6を照射し、半導体基板の内部にリンをドーピングしてn型の半導体領域を形成した半導体基板を製造した。
図5中には、比較例における半導体基板の内部のリンの濃度のプロファイルが、「P」で示す曲線で表されている。リンのピーク濃度は、半導体基板の表面近傍で1×10
21/cm
3程度であった。また侵入深さについては、上限が0.4μm程度であるとともに、0.1〜0.4μm程度の深さにおけるドーピング濃度は2×10
15/cm
3程度であった。よって本発明の実施例は、比較例に比べて、不純物元素のピーク濃度及び侵入深さのいずれについても上回った。
【0035】
本発明の実施形態に係る不純物導入方法によれば、レーザードーピングを行う際に、不純物元素の分子の液相である不純物液1を半導体基板2の表面に存在させ、不純物液1を介してレーザードーピングを行う。不純物液1に含まれる不純物元素は分子単体であり、不純物元素を溶解させるための化合物塩や溶媒を用いないため、不純物元素以外の化合物塩や溶媒構成材料が半導体基板の表面に接触しない。よって、これらの化合物塩や溶媒構成材料が、半導体基板の表面に吸着して汚染が生じたり、半導体基板の結晶層中に取り込まれたりすることを回避できる。
【0036】
また通常、不純物元素を溶媒に溶解させて溶液を作成し、作成した溶液を用いてSiCの半導体基板に対して行うレーザードーピングの場合、不純物元素の注入効率の観点から、溶液中の不純物元素の分子又は不純物元素の化合物は、溶液中に溶解度限界付近の高濃度で溶解されることが多い。そのため、溶液の温度が僅かに低下しただけで、不純物元素の分子又は不純物元素を含む化合物が析出する状態が生じる場合がある。本発明の実施形態では、不純物元素を溶媒に溶解させた溶液を使用せず、不純物元素の分子の液相を選択的に用いるので、所望の不純物元素を高濃度で半導体基板2の内部に導入するとともに、レーザードーピング中に不純物元素の分子や不純物元素を含む化合物が析出することがない。
【0037】
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。すなわち本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。例えば、本実施例では不純物液槽5に断熱容器を用いたが、これに限ることはなく、不純物液槽5を液体ヘリウムなど不純物液の沸点以下の温度の液体やクライオスタットなどで冷却して不純物液の揮発を抑制する構造を用いても良い。