(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような自溶合金被覆鋼板においては下記のような問題がある。
【0005】
(1)自溶合金被覆層は硬質の皮膜であるために割れ感受性が高い。
そして、自溶合金被覆層に割れが生じて基材の表面が露出すると、そこから錆が発生して製品寿命が短くなる。
また、自溶合金被覆層に最初に生じた割れが小さなものであっても、自溶合金被覆層の形成面の全域に成長してしてしまう。
【0006】
(2)自溶合金被覆層を形成する際の加熱処理によって、プレートにおいて寸法上無視できない程度の歪が発生し、製品としての適用を著しく阻害する要因となる。
なお、歪を低減するために鋼板の肉厚を増加させると、製品重量が増大して実用性が損なわれる。
【0007】
(3)加熱処理を実施するための処理炉のサイズにより、形成可能な自溶合金被覆層の面積が制限され、大面積(例えば5m
2 以上)の耐摩耗プレートを製造することができない。
【0008】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、割れ感受性が低くて耐割れ性および耐衝撃性に優れ、製品の品質を損なうような歪みがなく、軽量で、大面積のものであっても確実に製造することができる耐摩耗プレートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐摩耗プレート
の製造方法は、一方側および他方側にそれぞれ平面を有する金属基材の前記一方側平面に自溶合金被覆層が形成されてなり、互いに間隙を介して平面状に配列された複数のチップ部材と、
前記間隙に充填されて前記複数のチップ部材を結着し、前記自溶合金被覆層の表面を露出させた状態で
後記耐摩耗プレートの一面を形成するとともに前記複数のチップ部材の他方側平面を被覆して
後記耐摩耗プレートの他面を形成するバインダとを備えている
耐摩耗プレートを製造する方法であって、
前記複数のチップ部材の各々を、型枠内において、前記自溶合金被覆層を下側にして、間隙を介して平面状に配列する工程と、
バインダ形成用の材料(以下、「バインダ形成材料」という。)を前記間隙に充填するとともに前記バインダ形成材料によって前記複数のチップ部材の他方側平面を覆うよう、前記型枠内に前記バインダ形成材料を投入する工程と、
投入した前記バインダ形成材料を硬化または溶融固化させることにより、前記自溶合金被覆層の表面を露出させた状態で前記複数のチップ部材を結着させて前記耐摩耗プレートの一面を形成するとともに、前記バインダ形成材料を硬化または固化してなる前記バインダにより前記複数のチップ部材の他方側平面を被覆して前記耐摩耗プレートの他面を形成する工程と
を含むことを特徴とする。
【0010】
このような構成の耐摩耗プレートは、比較的面積の小さな自溶合金面(自溶合金被覆層の表面)が配列されて当該耐摩耗プレートの一面が構成されているとともに、この耐摩耗プレートは、自溶合金被覆層を備えた複数のチップ部材がバインダに埋設されてなる複合材であるために柔軟性(フレキシブル性)に優れ、与えられた衝撃をバインダによって吸収することができることにより、割れ感受性が低くて、耐割れ性および耐衝撃性に優れている。
【0011】
また、複数のチップ部材の各々に形成された自溶合金被覆層の周囲にはバインダが存在し、耐摩耗プレートの一面に露出する複数の自溶合金面が互いに独立しているので、あるチップ部材に形成されている自溶合金被覆層に割れが生じたとしても、この割れは、当該チップ部材の自溶合金被覆層に止まり、他のチップ部材に形成されている自溶合金被覆層に及ぶことはない。
【0012】
また、このような構成の耐摩耗プレートを製造するときに、従来公知の自溶合金被覆鋼板を製造(自溶合金被覆層を形成)する際の加熱処理によって生じるような歪みを生じることはない。
また、このような構成の耐摩耗プレートによれば、従来公知の自溶合金被覆鋼板と比較して大幅な軽量化を図ることができる。
また、このような構成の耐摩耗プレートによれば、チップ部材の配列枚数によりプレート面積を調整することができるので、処理炉のサイズによってプレート面積が制限されるようなことはなく、大面積のプレートであっても、確実に製造することができる。
【0013】
本発明の耐摩耗プレート
の製造方法において、前記チップ部材は、自溶合金被覆層が形成された直方体状の金属片であ
り、自溶合金被覆層が形成された平角棒を所定の長さに切断して前記チップ部材を作製する工程を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の耐摩耗プレート
の製造方法において
、自溶合金被覆層が形成された型鋼材を所定の長さに切断
して前記チップ部材を作製する工程を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の耐摩耗プレート
の製造方法において、前記チップ部材は、前記一方側平面と前記他方側平面との間に、前記一方側平面および前記他方側平面の面積より狭い断面積(一方側平面および他方側平面と平行な断面の面積)を有する括れ部を有することが好ましい。
【0017】
このような構成の耐摩耗プレートによれば、チップ部材の括れ部の周囲の空間に充填されているバインダによって、チップ部材の引き抜き抵抗が高くなり、耐摩耗プレートにおけるチップ部材の脱落を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の耐摩耗プレートは、割れ感受性が低くて耐割れ性および耐衝撃性に優れ、製品の品質を損なうような歪みがなく、軽量で、大面積であっても製造することができる。
本発明の製造方法によれば、割れ感受性が低くて耐割れ性および耐衝撃性に優れ、製品の品質を損なうような歪みのない軽量の耐摩耗プレートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図1に示すこの実施形態の耐摩耗プレート100は、断面(同図(2)に示した同図(1)のA−A断面)が矩形である直方体状の金属基材111の一面(一方側平面)に自溶合金被覆層112が形成されてなり、互いに間隙G1を介して平面状に配列された複数のチップ部材110と、間隙G1に充填されて複数のチップ部材110を結着し、自溶合金被覆層112の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート100の一面100Aを形成するとともに、複数のチップ部材110の他面(他方側平面)を被覆して耐摩耗プレート100の他面100Bを形成するバインダ120とを備えている。
【0024】
本実施形態の耐摩耗プレート100を構成するチップ部材110は、金属基材111の一面(一方側平面)に自溶合金被覆層112が形成されてなり、複数のチップ部材110が、バインダ120中において、自溶合金被覆層112の表面を露出させた状態で互いに間隔G1を介して平面状に配列されている。
チップ部材110を構成する金属基材111のサイズは特に限定されるものではないが、例えば、幅(W1)が10〜100mm、長さ(L1)が10〜100mm、高さ(H1)が5〜20mmとされる。
【0025】
金属基材111の構成金属材料としても特に限定されるものではなく、例えば炭素鋼、CrMo鋼などの低合金鋼、鋳鉄、ステンレスなどの金属材料を挙げることができる。
【0026】
金属基材111の一面には自溶合金被覆層112が形成されている。
この自溶合金被覆層112は、金属基材111の一面または金属基材111を形成するための鋼材(平角棒)の一面に自溶合金粉末を溶射して溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜を再溶融することにより形成することができる。
【0027】
ここに、使用する自溶合金としては、金属材料(基材)に耐摩耗性を付与しうる公知の自溶合金を挙げることができるが、好ましい自溶合金として、Bの割合が1〜5質量%、Siの割合が1〜5質量%、Crの割合が10〜40質量%、Moの割合が0.0〜4質量%、Cの割合が1質量%以下であるNi基合金を挙げることができる。
溶射方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
なお、必要に応じて、溶射皮膜を形成する基材面にショットブラストなどの表面処理を施してもよい。
【0028】
溶射皮膜の再溶融温度としては、通常1000〜1100℃程度とされる。
溶射皮膜の再溶融によって緻密な皮膜(自溶合金被覆層)が形成され、その耐摩耗性が向上する。
【0029】
なお、金属基材111を形成するための鋼材(平角棒)の一面に自溶合金被覆層を形成した場合には、自溶合金被覆層112が形成された鋼材を所定の長さ(L1)に切断することによってチップ部材110を作製することができる。
【0030】
金属基材111の一面に形成された自溶合金被覆層112の厚さとしては、0.5〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは1〜3mmとされる。
なお、自溶合金被覆層112は、再溶融されていない溶射皮膜の状態であってもよい。
【0031】
図1(1)に示すように、自溶合金被覆層112を備えた複数のチップ部材110は、バインダ120が充填された間隙G1を介して、平面状に配列されている。
図1(1)において、チップ部材110の配列個数は80(10行×8列)であるが、勿論これに限定されるものでなく、配列個数は、耐摩耗プレートの面積などに応じて適宜変更することができる。
【0032】
隣り合うチップ部材110間の間隙G1の幅は、良好な耐摩耗性等が維持される範囲で任意に調整することができるが、通常10mm以下とされ、好ましくは0.1〜0.5mmとされる。
この間隙が過大であると、自溶合金被覆層による耐摩耗性を十分に発現することができない。
【0033】
本実施形態の耐摩耗プレート100を構成するバインダ120は、隣り合うチップ部材110間の間隙G1に充填されてチップ部材110を結着し、自溶合金被覆層112の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート100の一面100Aを形成するとともに、チップ部材110の他面を被覆して耐摩耗プレート100の他面100Bを形成している。
これにより、複数のチップ部材110の各々は、自溶合金被覆層112の表面を露出させた状態でバインダ120に埋設されることになる。
【0034】
本実施形態の耐摩耗プレート100に良好な耐割れ性および耐衝撃性を付与する観点から、バインダ120には一定の柔軟性が要求される。
ここに、JIS K 7161に準拠して測定されるバインダ120の引張強度としては10〜100MPaであることが好ましく、破断伸びは30〜1000%であることが好ましい。
【0035】
また、JIS K7215に準拠して測定されるバインダ120の硬さ(デュロメータ硬さ試験機(D型)による)は10以上であることが好ましく、更に好ましくは30〜60である。
バインダの硬さが過大である場合には、耐摩耗プレートの耐割れ性および耐衝撃性に劣るものとなる。
一方、バインダの硬さが過小である場合には、チップ部材の脱落を生じたり、プレートとしての形状を維持することができなかったりする。
【0036】
耐摩耗プレート100を構成するバインダ120は、硬化性のバインダ形成材料を硬化させ、あるいは、熱可塑性のバインダ形成材料を溶融固化させることにより形成することができる。
ここに、硬化性のバインダ形成材料は熱硬化性であっても光硬化性であってもよく、一液硬化型であっても二液硬化型であってもよい。
【0037】
バインダ120を形成するために好適に使用可能な硬化性のバインダ形成材料としては、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0038】
また、バインダ120を形成するために好適に使用可能な熱可塑性のバインダ形成材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメタクリル酸メチル、変性アクリル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、BS樹脂、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、VC、PVC、PVA、PVAC、ポリ塩化ビニリデン、塩素化塩化ビニル、プロピレン塩化ビニル共重合体、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、アイオノマー樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶プラスチック、ポリスルフォン、ポリウレタン、テトラフルオロエチレン(PTFE)、トリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、四フッ化エチレンエチレン共重合体、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、硝酸セルロースなどを挙げることができる。
【0039】
また、バインダ120は、ゴム状弾性を有するものであってもよい。
具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴムなどの各種ゴム、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
また、バインダ120は、シリコーンゲルなどのゲルであってもよい。
【0040】
本実施形態の耐摩耗プレート100は、以下のようにして好適に製造することができる。
先ず、所定の幅(W1)の平角棒の一面にブラストなどの表面処理を行った後、自溶合金粉末を溶射・再溶融して自溶合金被覆層を形成し、自溶合金被覆層が一面に形成された当該平角棒を所定の長さ(L1)に切断することにより、直方体状の金属基材111の一面に自溶合金被覆層112が形成されてなる複数のチップ部材110を作製する。
【0041】
次に、上記のようにして得られた80個のチップ部材110の各々を、型枠内において自溶合金被覆層112を下側にして(すなわち、自溶合金被覆層112の表面を当該型枠の底面に当接させて)、間隙G1を介して平面状に配列する。
【0042】
次に、
図7(1)に示すように、例えば、粉末状の熱可塑性のバインダ形成材料120’を、隣り合うチップ部材110間の間隙に充填されるとともにチップ部材110の他面側が十分に覆われるように、型枠(下型)M1内に投入する。
【0043】
次に、
図7(2)に示すように、型枠(下型)M1上に板状の上型M2を載置し、型枠M1内に投入したバインダ形成材料120’をプレス装置(図示省略)によって加圧環境下で加熱する。
これにより、バインダ形成材料120’が溶融固化してバインダ120となり、型枠M1から取り出すことにより、
図1に示したような構造の耐摩耗プレート100を得ることができる。
【0044】
本実施形態の耐摩耗プレート100は、比較的面積の小さな複数の自溶合金面(自溶合金被覆層112の表面)が平面状に配列されて一面100Aが構成されている。
また、耐摩耗プレート100は、自溶合金被覆層112を備えた複数のチップ部材110がバインダ120に埋設されて構成される複合材であり、従来公知の自溶合金被覆鋼板と比較して格段に優れた柔軟性(フレキシブル性)を有し、耐摩耗プレート100の一面100Aに何らかの衝撃を受けたとしても、この衝撃はバインダ120により吸収緩和される。
従って、本実施形態の耐摩耗プレート100は、割れ感受性が低く、耐割れ性および耐衝撃性に優れている。
【0045】
また、複数のチップ部材110の各々に形成されている自溶合金被覆層112の周囲にはバインダ120が存在し、耐摩耗プレート100の一面100Aに露出する自溶合金面(自溶合金被覆層122の表面)は、バインダ120に仕切られてそれぞれ独立しているので、あるチップ部材110に形成されている自溶合金被覆層112に割れが生じたとしても、この割れは、当該チップ部材110の自溶合金被覆層112に止まり、他のチップ部材110に形成されている自溶合金被覆層112まで延びて成長するようなことはない。
【0046】
また、本実施形態の耐摩耗プレート100を製造するときに、従来公知の自溶合金被覆鋼板を製造(自溶合金被覆層を形成)する際の加熱処理によって生じるような歪みを生じることはない。
また、本実施形態の耐摩耗プレート100によれば、従来公知の自溶合金被覆鋼板と比較して大幅な軽量化を図ることができる。
また、本実施形態の耐摩耗プレート100によれば、チップ部材110の配列枚数によりプレート面積を調整することができるので、処理炉のサイズによってプレート面積が制限されるようなことはなく、大面積(例えば5m
2 以上)の耐摩耗プレートであっても、確実に製造することができる。
【0047】
<第2実施形態>
図2に示すこの実施形態の耐摩耗プレート200は、断面(同図(2)に示した同図(1)のB−B断面)が「H」形または「I」形である金属基材211におけるフランジ面の一方(一方側平面)に自溶合金被覆層212が形成されてなり、互いに間隙G2を介して平面状に配列された複数のチップ部材210と、チップ部材210間の間隙G2および金属基材211のウエブの周りの空間に充填されて複数のチップ部材210を結着し、自溶合金被覆層212の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート200の一面200Aを形成するとともに、複数のチップ部材210におけるフランジ面の他方(他方側平面)を被覆して耐摩耗プレート200の他面200Bを形成するバインダ220とを備えている。
【0048】
本実施形態の耐摩耗プレート200を構成するチップ部材210は、金属基材211におけるフランジ面の一方(一方側平面)に自溶合金被覆層212が形成されてなる。
ここに、『フランジ』とは、断面が「H」形である場合には、「H」の文字を構成する左右の縦棒をいい、断面が「I」形である場合には、「I」の文字を構成する上下の横棒をいう。
また、『ウエブ』とは、断面が「H」形である場合には、「H」の文字を構成する横棒をいい、断面が「I」形である場合には、「I」の文字を構成する縦棒をいう。
また、『フランジ面』とはフランジの外側(ウエブが位置する側とは反対側)の平面をいう。
【0049】
チップ部材210を構成する金属基材211のサイズは特に限定されるものではなく、フランジ面の幅(W2)が10〜100mm、フランジ面の長さ(L2)が10〜100mm、高さ(H2)が5〜100mmとされる。
金属基材211の構成金属材料としては、第1実施形態における金属基材111を構成するものと同様の金属材料を挙げることができる。
【0050】
金属基材211に形成される自溶合金被覆層212は、金属基材211のフランジ面の一方または金属基材211を形成するための鋼材(H形鋼またはI形鋼)のフランジ面の一方に、第1実施形態で示した自溶合金被覆層112の形成方法と同様にして形成することができる。
【0051】
なお、金属基材211を形成するための鋼材(H形鋼またはI形鋼)におけるフランジ面の一方に自溶合金被覆層を形成した場合には、自溶合金被覆層212を形成した当該鋼材を所定の長さ(L2)に切断することによりチップ部材210を作製することができる。
【0052】
図2(1)に示すように、本実施形態の耐摩耗プレート200では、80個のチップ部材210が、バインダ220が充填された間隙G2を介して平面状(10行×8列)に配列されている。なお、チップ部材210の配列個数は80個に限定されるものではなく、耐摩耗プレートの面積などに応じて適宜変更可能である。
ここに、隣り合うチップ部材210間の間隙(耐摩耗プレート200の一面200Aにおける間隙G2)の幅は、良好な耐摩耗性等が維持される範囲で任意に調整することができる。
【0053】
本実施形態の耐摩耗プレート200を構成するバインダ220は、第1実施形態で示したバインダ120と同様に、硬化性のバインダ形成材料を硬化させ、あるいは、熱可塑性のバインダ形成材料を溶融固化させることにより形成することができる。
なお、本実施形態の耐摩耗プレート200では、チップ部材210を構成する金属基材211のウエブの周りの空間にもバインダ220が充填されているので、所謂アンカー効果によって、当該バインダ220からのチップ部材210の引き抜き抵抗を高くすることができる。
【0054】
<第3実施形態>
図3に示すこの実施形態の耐摩耗プレート300は、断面(同図(2)に示した同図(1)のC−C断面)が「コ」の字形状である金属基材311におけるフランジ面の一方(一方側平面)に自溶合金被覆層312が形成されてなり、互いに間隙G3を介して平面状に配列された複数のチップ部材310と、チップ部材310間の間隙G3および金属基材311の内側の空間(金属基材311の2つのフランジとウエブとに囲まれた空間)に充填されて複数のチップ部材310を結着し、自溶合金被覆層312の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート300の一面300Aを形成するとともに、複数のチップ部材310におけるフランジ面の他方(他方側平面)を被覆して耐摩耗プレート300の他面300Bを形成するバインダ320とを備えている。
【0055】
本実施形態の耐摩耗プレート300を構成するチップ部材310は、金属基材311におけるフランジ面の一方(一方側平面)に自溶合金被覆層312が形成されてなる。
ここに、『フランジ』とは、「コ」の文字を構成する上下の横棒をいう。
また、『ウエブ』とは、「コ」の文字を構成する縦棒をいう。
また、『フランジ面』とはフランジの外側(ウエブが位置する側とは反対側)の平面をいう。
【0056】
チップ部材210を構成する金属基材311のサイズは特に限定されるものではなく、フランジ面の幅(W3)が10〜100mm、フランジ面の長さ(L3)が10〜100mm、高さ(H3)が5〜100mmとされる。
金属基材311の構成金属材料としては、第1実施形態における金属基材111を構成するものと同様の金属材料を挙げることができる。
【0057】
金属基材311に形成される自溶合金被覆層312は、金属基材311のフランジ面の一方または金属基材311を形成するための鋼材(C形鋼)のフランジ面の一方に、第1実施形態で示した自溶合金被覆層112の形成方法と同様にして形成することができる。
【0058】
なお、金属基材311を形成するための鋼材(C形鋼)におけるフランジ面の一方に自溶合金被覆層を形成した場合には、自溶合金被覆層312を形成した当該鋼材を所定の長さ(L3)に切断することによりチップ部材310を作製することができる。
【0059】
図3(1)に示すように、本実施形態の耐摩耗プレート300では、80個のチップ部材310が、バインダ320が充填された間隙G3を介して平面状(10行×8列)に配列されている。なお、チップ部材310の配列個数は80個に限定されるものではなく、耐摩耗プレートの面積などに応じて適宜変更可能である。
ここに、隣り合うチップ部材310間の間隙(耐摩耗プレート300の一面300Aにおける間隙G3)の幅は、良好な耐摩耗性等が維持される範囲で任意に調整することができる。
【0060】
本実施形態の耐摩耗プレート300を構成するバインダ320は、第1実施形態で示したバインダ120と同様に、硬化性のバインダ形成材料を硬化させ、あるいは、熱可塑性のバインダ形成材料を溶融固化させることにより形成することができる。
なお、本実施形態の耐摩耗プレート300では、チップ部材310を構成する金属基材311の内側の空間にもバインダ320が充填されているので、所謂アンカー効果によって、当該バインダ320からのチップ部材310の引き抜き抵抗を高くすることができる。
【0061】
<第4実施形態>
図4に示すこの実施形態の耐摩耗プレート400は、同図(2)に示した同図(1)のD1−D1断面が2つの同じ台形の上底同士を重ね合わせたような形状であり、同図(3)に示した同図(1)のD2−D2断面が矩形状である角柱状の金属基材411の一面(一方側平面)に自溶合金被覆層412が形成されてなり、互いに間隙G4を介して平面状に配列された複数のチップ部材410と、チップ部材410間の間隙G4に充填されて複数のチップ部材410を結着し、自溶合金被覆層412の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート400の一面400Aを形成するとともに、複数のチップ部材410における他面(他方側平面)を被覆して耐摩耗プレート400の他面400Bを形成するバインダ420とを備えている。
【0062】
本実施形態の耐摩耗プレート400を構成するチップ部材410は、金属基材411における一面(一方側平面)に自溶合金被覆層412が形成されてなる。
チップ部材410を構成する金属基材411は、2つの同じ台形の上底同士を重ね合わせたような形状の底面および断面(D1−D1断面)を有する角柱状の基材である。
【0063】
チップ部材210を構成する金属基材411のサイズは特に限定されるものではなく、一面および他面の幅(W4)が10〜100mm、一面および他面の長さ(L4)が10〜100mm、高さ(H4)が5〜100mmとされる。
金属基材411の構成金属材料としては、第1実施形態における金属基材111を構成するものと同様の金属材料を挙げることができる。
【0064】
金属基材411に形成される自溶合金被覆層412は、金属基材411の一面または金属基材411を形成するための鋼材の一面に、第1実施形態で示した自溶合金被覆層112の形成方法と同様にして形成することができる。
なお、金属基材411を形成するための鋼材の一面に自溶合金被覆層を形成した場合には、自溶合金被覆層412が形成された鋼材を所定の長さ(L4)に切断することによってチップ部材410を作製することができる。
【0065】
図4(1)に示すように、本実施形態の耐摩耗プレート400では、80個のチップ部材410が、バインダ420が充填された間隙G4を介して平面状(10行×8列)に配列されている。なお、チップ部材410の配列個数は80個に限定されるものではなく、耐摩耗プレートの面積などに応じて適宜変更可能である。
ここに、隣り合うチップ部材410間の間隙(耐摩耗プレート400の一面400Aにおける間隙G4)の幅は、良好な耐摩耗性等が維持される範囲で任意に調整することができる。
【0066】
本実施形態の耐摩耗プレート400を構成するバインダ420は、第1実施形態で示したバインダ120と同様に、硬化性のバインダ形成材料を硬化させ、あるいは、熱可塑性のバインダ形成材料を溶融固化させることにより形成することができる。
なお、本実施形態の耐摩耗プレート400では、チップ部材410を構成する金属基材411の高さ方向の中間部分が括れており、この括れ部の周囲の空間にもバインダ420が充填されているので、所謂アンカー効果によって、当該バインダ420からのチップ部材410の引き抜き抵抗を高くすることができる。
【0067】
<第5実施形態>
図5に示すこの実施形態の耐摩耗プレート500は、同図(2)に示した同図(1)のE1−E1断面および同図(3)に示した同図(1)のE2−E2断面が、何れも2つの同じ台形の上底同士を重ね合わせたような形状である金属基材511の一面(一方側平面)に自溶合金被覆層512が形成されてなり、互いに間隙G5を介して平面状に配列された複数のチップ部材510と、チップ部材510間の間隙G5に充填されて複数のチップ部材510を結着し、自溶合金被覆層512の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート500の一面500Aを形成するとともに、複数のチップ部材510における他面(他方側平面)を被覆して耐摩耗プレート500の他面500Bを形成するバインダ520とを備えている。
【0068】
本実施形態の耐摩耗プレート500を構成するチップ部材510は、金属基材511における一面(一方側平面)に自溶合金被覆層512が形成されてなる。
チップ部材510を構成する金属基材511は、2つの同じ四角錐台の上面同士を重ね合わせたような立体形状を有する基材である。
【0069】
チップ部材510を構成する金属基材511のサイズは特に限定されるものではなく、一面および他面の幅(W5)が10〜100mm、一面および他面の長さ(L5)が10〜100mm、高さ(H5)が5〜100mmとされる。
金属基材511の構成金属材料としては、第1実施形態における金属基材111を構成するものと同様の金属材料を挙げることができる。
【0070】
金属基材511に形成される自溶合金被覆層512は、第1実施形態で示した自溶合金被覆層112の形成方法と同様にして金属基材511の一面に形成することができる。
【0071】
図5(1)に示すように、本実施形態の耐摩耗プレート500では、80個のチップ部材510が、バインダ520が充填された間隙G5を介して平面状(10行×8列)に配列されている。なお、チップ部材510の配列個数は80個に限定されるものではなく、耐摩耗プレートの面積などに応じて適宜変更可能である。
ここに、隣り合うチップ部材510間の間隙(耐摩耗プレート500の一面500Aにおける間隙G5)の幅は、良好な耐摩耗性等が維持される範囲で任意に調整することができる。
【0072】
本実施形態の耐摩耗プレート500を構成するバインダ520は、第1実施形態で示したバインダ120と同様に、硬化性のバインダ形成材料を硬化させ、あるいは、熱可塑性のバインダ形成材料を溶融固化させることにより形成することができる。
なお、本実施形態の耐摩耗プレート500では、チップ部材510を構成する金属基材511の高さ方向の中間部分が括れており、この括れ部の周囲の空間にもバインダ520が充填されているので、所謂アンカー効果によって、当該バインダ520からのチップ部材510の引き抜き抵抗を高くすることができる。
【0073】
<第6実施形態>
図6に示すこの実施形態の耐摩耗プレート600は、同図(2)に示した同図(1)のF−F断面が同じ台形の上底同士を重ね合わせたような形状である金属基材611の一面(一方側平面)に自溶合金被覆層612が形成されてなり、互いに間隙を介して平面状に配列された複数のチップ部材610と、チップ部材610間の間隙に充填されて複数のチップ部材610を結着し、自溶合金被覆層612の表面を露出させた状態で耐摩耗プレート600の一面600Aを形成するとともに、複数のチップ部材610における他面(他方側平面)を被覆して耐摩耗プレート600の他面600Bを形成するバインダ620とを備えている。
【0074】
本実施形態の耐摩耗プレート600を構成するチップ部材610は、金属基材611における一面(一方側平面)に自溶合金被覆層612が形成されてなる。
チップ部材610を構成する金属基材611は、2つの同じ円錐台の上面同士を重ね合わせたような立体形状(略鼓状)の基材である。
【0075】
チップ部材610を構成する金属基材611のサイズは特に限定されるものではなく、一面(一方側平面)および他面(他方側平面)における円の直径が5〜20mm、高さ(H6)が5〜20mmとされる。
金属基材611の構成金属材料としては、第1実施形態における金属基材111を構成するものと同様の金属材料を挙げることができる。
【0076】
金属基材611に形成される自溶合金被覆層612は、第1実施形態で示した自溶合金被覆層112の形成方法と同様にして金属基材611の一面に形成することができる。
【0077】
図6(1)に示すように、本実施形態の耐摩耗プレート600では、75個のチップ部材610が平面状に配列されている。なお、チップ部材610の配列個数は75個に限定されるものではなく、耐摩耗プレートの面積などに応じて適宜変更可能である。
ここに、同一の行で隣り合うチップ部材610間の間隙の幅は、良好な耐摩耗性等が維持される範囲で任意に調整することができる。
【0078】
本実施形態の耐摩耗プレート600を構成するバインダ620は、第1実施形態で示したバインダ120と同様に、硬化性のバインダ形成材料を硬化させ、あるいは、熱可塑性のバインダ形成材料を溶融固化させることにより形成することができる。
なお、本実施形態の耐摩耗プレート600では、チップ部材610を構成する金属基材611の高さ方向の中間部分が括れており、この括れ部(縮径部)の周囲の空間にもバインダ620が充填されているので、所謂アンカー効果によって、当該バインダ620からのチップ部材610の引き抜き抵抗を高くすることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものでなく、種々の変更が可能である。
例えば、チップ部材を構成する金属基材として、耐摩耗プレートの一面に露出する平面(一方側平面)を有する基材であれば特に限定されるものでなく、種々の形状のものを使用することができる。
【0080】
本発明の耐摩耗プレートは、産業用機械、輸送機器、工作機械、粉体搬送(機器・配管)、廃棄物処理設備などの種々の分野に利用することができる。
具体的な用途として、採石場の運搬装置、石材衝突部の保護板、金属スクラップ処理設備の運搬装置、落下物衝突箇所の床板、トラックの荷台の床板、粉体輸送配管、絶縁部材などを例示することができる。
本発明の耐摩耗プレートは、その柔軟性(フレキシブル性)を生かして、曲面に対して施工(貼付)することも可能である。