特許第6372895号(P6372895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンヨー化成株式会社の特許一覧

特許6372895美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤
<>
  • 特許6372895-美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤 図000002
  • 特許6372895-美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤 図000003
  • 特許6372895-美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤 図000004
  • 特許6372895-美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372895
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20180806BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20180806BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20180806BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/02
   A61Q3/02
   A45D29/00
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-210363(P2016-210363)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2018-70479(P2018-70479A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2017年10月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595029244
【氏名又は名称】サンヨー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171435
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】澤 正明
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−048774(JP,A)
【文献】 特開昭49−035544(JP,A)
【文献】 特開2004−131690(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199966(WO,A1)
【文献】 特開2013−124227(JP,A)
【文献】 特開2000−038315(JP,A)
【文献】 特開昭60−081119(JP,A)
【文献】 特開2002−138010(JP,A)
【文献】 特開昭61−030511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A45D 29/00、31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムを粉砕して分級、打ち抜き及び切断のいずれかによって所定の大きさの小片を作製し、
作製した小片と樹脂及び顔料並びに溶剤を少なくとも含有する塗料とを攪拌混合して、前記小片の作製時に生じる断面を含む外周面の全てに着色層を形成する美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項2】
前記塗料は、前記小片に対し2重量%以上20重量%以下の割合で配合される請求項1記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項3】
前記塗料は、前記樹脂を20重量%以上49.5%重量%以下、前記顔料を0.5重量%以上20重量%以下、前記溶剤を30重量%以上75重量%以下含有する請求項2記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項4】
前記小片の大きさは、0.05mm以上20mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、4,4’−イソプロピリデンジフェノールとエピクロルヒドリンからなる共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂は、ポリウレタン−11である請求項1〜4のいずれかに記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項7】
前記合成樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするフィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項8】
前記フィルムは、その表面に金属を蒸着させた金属層を有する請求項7記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項9】
前記合成樹脂フィルムは、異なる2種以上の合成樹脂フィルムを積層させたものである請求項1〜6のいずれかに記載の美爪料用ラメ剤の製造方法。
【請求項10】
合成樹脂よりなる小片の作製時に生じる断面を含む前記小片の外周面の全てに樹脂及び顔料並びに溶剤を少なくとも含有する塗料よりなる着色層を有する美爪料用ラメ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料用ラメ剤の製造方法として、合成樹脂フィルムを着色した後に所定形状に切断して製造する方法が知られている。この方法では、ロールに巻かれた合成樹脂フィルムをロール印刷機でコーティング着色するので、製造ロットが大きくなり、少量多品種に対応することが困難であった。また、着色後直ちに巻き取らなければならず、十分な加熱ができずに着色(塗装)面の硬化が不十分で色の定着が不十分となり、耐溶剤性が低下する虞があった。そのため、特に有機溶剤を含有する美爪料においては、耐溶剤性(着色の定着性)の向上が望まれていた。
【0003】
また、例えば特許文献1(明細書段落0017)に記載の如き蛍光ラメ剤が知られている。この蛍光ラメ剤は、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウムを真空蒸着し、金属皮膜を保護するエポキシ樹脂で被覆した後、裁断したものを熱水中に蛍光染料イルミナールとともに分散させ、染色を施してある。しかし、染色は、染料が対象物(樹脂)に染み込むことで着色するものであるため、濃い色を表現することが困難であった。また、染料は耐溶剤性がなく、有機溶剤を含有する美爪料では染料が溶け出してしまい、着色した色を維持することができなかった。
【0004】
一方、近年、美爪料として、紫外線(UV)照射等により硬化する光硬化性樹脂を用いたジェルネイル(人工爪)も開発されている。しかし、紫外線には退色効果があるため、樹脂硬化時の退色を抑制する必要が生じていた。また、ジェルネイルは長期間爪に装着でき且つ水に不溶であるため、水仕事にも適している。上述の如く染料を用いたラメ剤では、例えば石けん、シャンプー、洗剤等による退色を抑制し難いため、退色を抑制し着色の持続性も求められていた。また、ジェルネイルにも有機溶剤を含有するものがあり、耐溶剤性の向上も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−346025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡便な製法ながら生産効率がよく且つ色の定着性及び持続性が高い美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る美爪料用ラメ剤の製造方法の特徴は、合成樹脂フィルムを粉砕して分級、打ち抜き及び切断のいずれかによって所定の大きさの小片を作製し、作製した小片と樹脂及び顔料並びに溶剤を含有する塗料とを攪拌混合して、前記小片の作製時に生じる断面を含む外周面の全てに着色層を形成することにある。
【0008】
上記構成によれば、合成樹脂フィルムを粉砕して分級、打ち抜き及び切断のいずれかによって所定形状の小片を作製し、作製した小片と、樹脂及び顔料並びに溶剤を含有する塗料とを攪拌混合して小片を着色するので、小片(フィルム)の表面のみならず作製時に生じる断面にも顔料を含む塗料を行き渡らせることができ、小片の作製時に生じる断面を含む全ての外周面を着色することができる。よって、濃い鮮やかな色を表現することが可能となる。また、必要量の小片を作製すればよく、少量生産も可能である。しかも、小片と、樹脂及び顔料並びに溶剤を含有する塗料とを攪拌混合するので、着色時に小片を移動させながら十分な加熱を行うことができ、小片同士がくっつきダマになることを防止すると共に、塗料中の樹脂が小片の外周面に着色層を形成し顔料を合成樹脂フィルムの小片の作製時に生じる断面を含む全ての外周面に強固に定着(硬化)させる。加えて、顔料は耐溶剤性を有するので、ラメ剤から顔料が美爪料中の有機溶剤に溶け出すことはない。しかも、樹脂は顔料を合成樹脂製の小片表面に強固に接着させるバインダーとして機能するので、小片の作製時に生じる断面を含む全ての外周面に顔料が定着、維持される。従って、美爪料に添加した後であっても長期に渡って色彩、色調を維持され、色落ちの低下を防止することが可能となる。
【0009】
前記塗料は、前記小片に対し2重量%以上20重量%以下の割合で配合されるとよい。この数値範囲内であれば、小片の全外周面に渡って顔料を付着させ着色層を形成することができる。係る場合、前記塗料は、前記樹脂を20重量%以上49.5%重量%以下、前記顔料を0.5重量%以上20重量%以下、前記溶剤を30重量%以上75重量%以下含有するとよい。
【0010】
前記小片の大きさ(粒径)は、0.05mm以上20mm以下であるとよい。前記樹脂は、4,4’−イソプロピリデンジフェノールとエピクロルヒドリンからなる共重合体であるとよい。また、前記樹脂は、ポリウレタン−11であってもよい。
【0011】
また、前記合成樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするフィルムであるとよい。係る場合、前記フィルムは、金属を蒸着させた金属層を有していてもよい。また、前記合成樹脂フィルムは、異なる2種以上の合成樹脂フィルムを積層させたものであってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る美爪料用ラメ剤の特徴は、合成樹脂よりなる小片の作製時に生じる断面を含む前記小片の外周面の全てに樹脂及び顔料並びに溶剤を少なくとも含有する塗料よりなる着色層を有することにある。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明に係る美爪料用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤の特徴によれば、簡便な製法ながら生産効率がよく且つ色の定着性及び持続性を向上させることが可能となった。
【0014】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る美爪料用ラメ剤の製造工程を説明する図である。
図2】粉砕機の概略図である。
図3】本発明に係る美爪料用ラメ剤の拡大写真である。
図4】従来の製造方法によるラメ剤の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る美爪料用ラメ剤1の製造方法は、図1に示すように、例えば、合成樹脂フィルム100を粉砕機10に投入し粉砕するフィルム粉砕工程(同図(a))と、粉砕した粉砕フィルムを分級して所定粒径の小片を生成する分級工程(同図(b))と、得られた小片を着色する着色工程(同図(c))よりなる。本実施形態では、美爪料としてマニキュア液を例に説明するが、美爪料としては、マニキュア液(ネイルエナメル)やペディキュア液等の爪に直接塗布するものの他、UV照射等により硬化させて爪に装着(接着)する人工爪(ジェルネイル)、人工爪の表面に塗布するコート剤を含む。
【0017】
ところで、特に、リップ、口紅、グロス、アイシャドウ、チーク、ファンデーション等のポイントメイクアップ化粧料においても、従来よりラメ剤を含有するものが知られている。しかし、ポイントメイクアップ化粧料は、通常、1日持てば十分であり、マニキュアやネイルのように、数日や数週間という長い期間つけることを想定していない。また、目や口に塗布することが多いため、有機溶剤等の使用は控えられている。すなわち、美爪料用ラメ剤には、他のポイントメイクアップ化粧料に用いるラメ剤とは異なり、数日や数週間という長期間での色の定着性・持続性や、有機溶剤等に対する耐溶剤性、耐薬品性を満足しなければならない。
【0018】
合成樹脂フィルム100としては、例えばポリエチレンテレフタレートを主成分とするフィルムが用いられる。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂よりなる単一層のフィルムや、フィルム表面に例えばアルミニウム等の金属を蒸着させた積層フィルムなどが挙げられる。
【0019】
図1(a)のフィルム粉砕工程では、例えば、図2の如き粉砕機が用いられる。
粉砕機10は、フレームに駆動回転自在に支持された回転刃12と、篩い13と、回転刃12との間で合成樹脂フィルム100を切断する複数の固定刃14とを有している。投入口15から投入された合成樹脂フィルム100を粉砕部16で攪拌切断し、篩い13を通して落下させることで粉砕フィルム2を得る。粉砕フィルム2は、ブロア20及び搬送路21を介して回収容器22に収集される。粉砕フィルム2の粒径は、合成樹脂フィルム100の投入量、回転刃12の回転スピード、固定刃14の個数によって調整が可能である。主たる粒径を中心に、大径、小径の粒径分布をなすこととなる。合成樹脂フィルム100を粉砕して小片3を作製するので、端布等の無駄が生じず生産効率がよい。
【0020】
図1(b)の分級工程では、篩い機30の荒メッシュ篩い31aと細メッシュ篩い31bとを利用して中央の材料容器32に目標粒径分布の小片3を粉砕フィルム2から回収する。補助容器33a,33bはそれぞれ荒メッシュ篩い31aの先端及び細メッシュ篩い31bの下方に位置させる。荒メッシュ篩い31aと細メッシュ篩い31bは、小片3の目標粒径によって適宜選択する。小片3の粒径(大きさ)は、0.05mm以上20mm以下である。
【0021】
図1(c)の着色工程では、攪拌機(タンブラー)40のドラム42内に小片3と塗料を投入し、羽根41及びドラム42により回転攪拌混合を行う。ここで、塗料は樹脂、顔料4及び溶剤を少なくとも含有してなり、小片3に対し2重量%以上20重量%以下の割合で配合される。下限値を下回ると、小片3に対し塗料が少なくなり、各々の小片3の全面に塗料が行き渡らずに十分に着色できず、色ムラが生じる。一方、上限値を上回ると、塗料が多くなり過ぎ、着色層の形成(特に乾燥)に時間が掛かり生産効率が低下する。また、小片3同士がくっつきダマ(ブロック)が形成されやすくなり、粒径が不均一となり、ラメ剤としての意匠性も低下する。なお、塗料は、ディスパーで顔料を分散させ、さらにガラスビーズを投入してより一層分散させた後、その顔料を樹脂及び溶剤に混ぜ、ディスパーで攪拌させて製造される。
【0022】
塗料には、樹脂が20重量%以上49.5重量%以下含有してある。下限値を下回ると、バインダーとして十分に機能せず、顔料を小片に定着・維持することが困難となり、耐溶剤性が低下すると共に色落ちしやすくなる。一方、上限値を上回ると、樹脂が小片同士を接着させてブロック(塊)を形成してしまい、微小な小片各々を分散させて着色することが困難となる。本実施形態では、例えば、エポキシ樹脂として、4,4’−イソプロピリデンジフェノールとエピクロルヒドリンからなる共重合体を用いる。この共重合体は、日本化粧品工業連合会が作成する化粧品の成分表示名称リストに開示されたものであり、化粧品材料として安全性が高く好適に用いられる。しかも、耐薬品性、耐溶剤性に優れ、密着性も高いので、ポリエチレンテレフタレート樹脂(小片)に顔料4を強固に接着(定着)させる塗膜を形成することができる。
【0023】
また、塗料には、顔料を0.5重量%以上20重量%以下含有してある。下限値を下回ると、十分な発色を確保できない。一方、上限値を上回ると、顔料が多くなり過ぎ、樹脂によって小片表面に定着できなかった顔料が溶出(色落ち)してしまう。顔料4には、例えば、赤色3号、赤色201号、赤色202号、青色1号、青色201号、黄4号、黄5号などの耐溶剤性を有するものが用いられる。
【0024】
また、塗料には、溶剤を30重量%以上75重量%以下含有してある。下限値を下回ると、顔料及び樹脂を塗料中で十分に分散させて存在させることが困難となり、小片3の全面に着色しずらくなり、色ムラが生じやすい。一方、上限値を上回ると、塗料の一部がタンブラーの底に溜まってしまい、小片3に顔料を定着させにくくなる。また、着色層の形成(特に乾燥)に時間が掛かり生産効率も低下する。なお、溶剤には、酢酸エチル、トルエン、アセトン、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル等を用いる。
【0025】
この着色工程により、十分な加熱を行うことで、小片3の外周面の表面への塗料中の顔料4の定着(硬化)を促進させる。ここで、顔料4は、耐溶剤性を有する。よって、着色された小片3(すなわち、美爪料用ラメ剤1)からマニキュア液の有機溶剤に溶け出すことはなく、ラメ剤の色落ちを防止できる。また、小片3はドラム42内で移動(攪拌)しながら着色されるので、小片3同士がくっつきダマとなることも防止される。しかも、回転攪拌混合によって、小片3の外面全てに顔料4を含む塗料を行き渡らせることができ、小片3の全ての外面上に着色層(塗膜)が形成され着色される。その後、攪拌機40から取り出されて乾燥させ溶剤を揮発させ、美爪料用ラメ剤1となる。なお、マニキュア液の有機溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0026】
本発明は、上述したように、合成樹脂フィルム100を着色した後に粉砕(切断)するのではなく、合成樹脂フィルム100を粉砕(切断)して得た小片3に対して顔料4を含む塗料で着色するものである。図3に本発明のマニキュア液(美爪料)用ラメ剤1の拡大写真、図4に比較例として、着色した合成樹脂フィルム100を粉砕(切断)して得たラメ剤1’を示す。
【0027】
図3に示すように、合成樹脂フィルム100を粉砕(切断)して得た美爪料用ラメ剤1の表面1a(粉砕(切断)前の合成樹脂フィルム100の表面に相当)及び断面1bには、顔料4が小片3の各面全体にわたって点々と付着、定着しており、全ての外面で着色層が形成され着色されている。また、顔料4は、染料のように合成樹脂フィルム100(小片3)に染み込まないので、色が薄くなることはない。さらに、顔料4は、塗料に含有した樹脂により小片3表面に強固に接着され、樹脂により着色層(塗膜)が形成されるので、紫外線や洗剤等に起因する退色(色落ち、色あせ)を抑制でき、着色を持続させることができる。このように、美爪料用ラメ剤1は、小片3が顔料4及び樹脂により形成される着色層を有することになり、顔料4の色調を明瞭に再現でき、耐溶剤性を有するので色落ちも防止される。
【0028】
一方、図4に示す比較例では、ラメ剤1’の表面1’a(合成樹脂フィルムの表面に相当)には顔料4が均一に塗布され着色されているが、断面1’bには顔料4が付着しておらず、裁断傷dが見られる。このように、断面1’bが着色されないため、ラメ剤1’全体及びマニキュア液(美爪料)に添加した状態において、色の明瞭性に欠ける。
【0029】
最後に他の実施形態の可能性について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、合成樹脂フィルム100を粉砕機10で所定の粒径に粉砕して粉砕フィルム2を作製し分級して小片3を得た。しかし、小片3の作製はこれに限られるものではない。例えば、合成樹脂フィルム100を所定の形状、大きさに打ち抜いて小片3を作製してもよく、合成樹脂フィルム100を所定の形状、大きさに切断して小片3を作製してもよい。小片3の形状は特に限定されれないが、例えば三角、四角、六角等の多角形、丸、楕円、星形等がある。もちろん、ランダムに切断や打ち抜きされて形成される形状でも構わない。
【0030】
上記実施形態において、塗料に含有する樹脂として、4,4’−イソプロピリデンジフェノールとエピクロルヒドリンからなる共重合体を用いた。しかし、これに限らず、例えば、ポリウレタン−11(アジピン酸、1,4−ブタンジオール、イソフタル酸、メチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアナート)、ネオペンチルグリコール及びメチロールプロパンからなる共重合体)を用いることも可能である。これら樹脂は、日本化粧品工業連合会が作成する化粧品の成分表示名称リストに開示されたものであり、化粧品材料として安全性が高い。しかも、耐薬品性、耐溶剤性、密着性に優れているので、小片3の外周面に顔料4を強固に定着、維持させる着色層(塗膜)を形成することができる。なお、これらの共重合体に限らず、日本化粧品工業連合会が作成する化粧品の成分表示名称リストに開示され、且つ、耐溶剤性、密着性が高く、顔料を強固に定着させ維持できる樹脂であれば適用可能である。
【0031】
上記実施形態において、合成樹脂フィルム100として、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするフィルムを用いたが、これに限られるものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウム等の金属を蒸着させたフィルム等であってもよい。また、異なる2種以上の合成樹脂フィルムを積層させたものであってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリオレフィンフィルムとを積層させた積層フィルム等が挙げられる。なお、合成樹脂フィルム100及び顔料4の材料にも、上述の塗料に含まれる樹脂と同様に日本化粧品工業連合会が作成する化粧品の成分表示名称リストに開示されているものを用いることで、化粧料として安全性を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、マニキュア液(ネイルエナメル)やペディキュア液等の爪に直接塗布するものの他、UV照射等により硬化させて爪に装着(接着)するジェルネイル(人工爪)を含む美爪料(爪用化粧料)用ラメ剤の製造方法及び美爪料用ラメ剤として利用することができる。また、人工爪(ジェルネイル、スカルプチュア)の表面に塗布するコート剤にも添加することが可能である。さらに、マニキュア液やジェルネイルのジェル等に添加する場合の他、例えば、人工爪の表面に装飾としてラメ剤を直接接着して用いることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1:美爪料用ラメ剤、1a:表面、1b:断面、2:粉砕フィルム、3:小片、4:顔料、10:粉砕機、11:、12:回転刃、13:篩い、14:固定刃、15:投入口、16:粉砕部、20:ブロア、21:搬送路、22:回収容器、30:篩い機、31a:荒メッシュ篩い、31b:細メッシュ篩い、32:材料容器、33a,33b:補助容器、40:攪拌機、41:羽根、42:ドラム、100:合成樹脂フィルム、d:裁断傷
図1
図2
図3
図4