特許第6372908号(P6372908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6372908カテーテル湾曲ブレース及び該ブレースの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372908
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】カテーテル湾曲ブレース及び該ブレースの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   A61M25/00 560
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-107836(P2013-107836)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-244407(P2013-244407A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2016年5月20日
(31)【優先権主張番号】13/478,487
(32)【優先日】2012年5月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517377938
【氏名又は名称】インテグラ・ライフサイエンシーズ・スイッツァランド・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Integra LifeSciences Switzerland Sarl
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100184402
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 康記
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】アラン・デクストラデア
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−099088(JP,A)
【文献】 特開2001−137346(JP,A)
【文献】 実開平02−149253(JP,U)
【文献】 米国特許第06197003(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0091170(US,A1)
【文献】 米国特許第06569150(US,B2)
【文献】 特開2007−301363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の脳室カテーテル湾曲ブレースであって、
ワイヤで形成され、遠位端及び近位端を有し、第1の弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの第1の湾曲部を備えて形成されている細長いフレームと、
前記フレームに接続され、それぞれがワイヤで形成され、カテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、
を備え、
少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記第1の弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されており、前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、第1の脳室カテーテル湾曲ブレース。
【請求項2】
前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、請求項1に記載の第1の脳室カテーテル湾曲ブレース。
【請求項3】
前記連結要素の少なくとも1つが、C型部材として形成されている、請求項1に記載の第1の脳室カテーテル湾曲ブレース。
【請求項4】
前記連結要素の少なくとも1つが、前記フレームの連続として形成されている、請求項1に記載の第1の脳室カテーテル湾曲ブレース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の第1の脳室カテーテル湾曲ブレースと、
少なくとも1つの第2のカテーテル湾曲ブレースと、
を含み、
前記第2のカテーテル湾曲ブレースが、第2の弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの第2の湾曲部を有し、前記第2の湾曲部が、前記第1の湾曲部とは異なることを除いて、前記第2のカテーテル湾曲ブレースが前記第1の脳室カテーテル湾曲ブレースと実質的に同一である、カテーテル湾曲ブレースの組み合わせ。
【請求項6】
患者の脳の脳室内に埋め込むために好適な流体管理カテーテルアセンブリであって、
遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有するカテーテルであって、前記シャフトが、実質的に前記シャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定し、前記シャフトが、前記シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、前記流体管理開口部が、前記ルーメンと流体連通している、カテーテルと、
前記シャフトの前記遠位部分に取り付けられたカテーテル湾曲ブレースであって、前記カテーテル湾曲ブレースが、ワイヤで形成され、遠位端及び近位端を有し、かつ弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部を備えて形成される細長いフレームと、前記フレームに接続され、それぞれがワイヤで形成され、前記カテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有する、カテーテル湾曲ブレースと、
を備え、
少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、前記カテーテルを湾曲させて前記弛緩した湾曲構成に実質的に一致させており、前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、流体管理カテーテルアセンブリ。
【請求項7】
前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、請求項6に記載の流体管理カテーテルアセンブリ。
【請求項8】
前記連結要素の少なくとも1つが、前記フレームの連続として形成されている、請求項6に記載の流体管理カテーテルアセンブリ。
【請求項9】
流体管理キットであって、
遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有する脳室カテーテルであって、前記シャフトが、実質的に前記シャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定し、前記シャフトが、前記シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、前記流体管理開口部が、前記ルーメンと流体連通している、脳室カテーテルと、
前記シャフトの前記遠位部分に取り付け可能な少なくとも第1及び第2の脳室カテーテル湾曲ブレースであって、各ブレースが、ワイヤで形成され、遠位端及び近位端を有し、かつ弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部を備えて形成される細長いフレームと、前記フレームに接続され、それぞれがワイヤで形成され、前記脳室カテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有し、少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、前記脳室カテーテルを湾曲させて前記弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる、少なくとも第1及び第2の脳室カテーテル湾曲ブレースと、
を備え、
前記第1の脳室カテーテル湾曲ブレースの前記少なくとも1つの湾曲部が、前記第2の脳室カテーテル湾曲ブレースの前記少なくとも1つの湾曲部とは異なっており、前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、流体管理キット。
【請求項10】
前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、請求項9に記載の流体管理キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者内に配置されるカテーテルの適切な曲率を確実にするための装置及び方法に関し、より詳細には、湾曲した弾性ブレースを有する埋め込み可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の付加又は引き出しが望まれる患者の状態は多くある。いくつかの流体管理状態には哺乳類の脳が関わる。頭蓋内において、灰白質及び白質は、脳脊髄液に浮遊しており、脳動脈を通して送達される血液により栄養分を与えられている。灰白質は、大脳皮質等の、接近して離間しているニューロンの細胞体を有し、下層の白質は、信号を他のニューロンに伝える密に詰まっている軸索を含んでいる。ヒトの脳組織は、異なる密度を有し、約80パーセントの頭蓋内容物を含み、血液及び脳脊髄液は、それぞれ通常約10パーセント含まれる。
【0003】
脳脊髄液は、脳室として知られているいくつかの連結されたチャンバ内の脈絡叢により生成され、典型的には、1日あたり4回〜5回一新される。健常なヒトの脳脊髄液は、脳動脈の脈動によって推進され、脳室を通じてゆっくりと連続して流れている。その流体は脳組織及び脊柱の周囲を流動し、次いで小さな開口部を通じて、脳実質及び脳室を取り囲む髄膜の中層であるくも膜に流れ、そこで脳脊髄液は最終的に血流に再吸収される。
【0004】
正常な状態では、流体体積のわずかな増加が頭蓋内圧を増大させることがないように、頭蓋内の流体体積の変化は、組織の弾力を通じて、及び血液と脳脊髄液の合計体積の調節によって、身体機構が補正する。同様に、頭蓋内圧の増大につれた頭蓋内体積の増加を最小限にするために、健常な脳は頭蓋内圧の増加を補正する。この体積と圧力の関係は、脳コンプライアンスの観点から説明でき、本明細書においては、脳コンプライアンスという用語は、用語エラスタンス及び頭蓋内コンプライアンスを含むものとする。
【0005】
脳は、ヒトの自己調節機構が体積のいかなる変化も補正できる限り、適合する。脳の自動調節又は補正機構の不良が生じるやいなや、血液及び脳脊髄液の移動はできなくなり、脳は流体体積のいかなる増加にも適応できなくなる。脳コンプライアンスの低下は、やがて、水頭症としても知られる望ましくない頭蓋内圧の増大につながる。流体体積が更に増すにつれて、限界に達し、この限界を超すと、体積のわずかな増加が頭蓋内圧の劇的かつ不健康な増大につながる。
【0006】
水頭症のような流体状態を治療する典型的な装置は、Watsonらによる米国特許第5,738,666号に開示されている脳室カテーテルである。一実施形態において、脳室カテーテル22は、スリット60を有する遠位先端部58の付近に、流体流開口部56と称される複数の流体管理開口部を有する。「遠位」先端部は、カテーテルの埋め込み中、外科医から最も遠い末端部である。脳室カテーテルの最終的な配置中、剛性のイントロデューサーカニューレ34の末端40がスリット60を通して挿入される。Tuohy−Borstアダプター32は、イントロデューサーカニューレ34の近位端に固定される。設定中、内視鏡の光ファイバーシャフト66は、光ファイバー末端28が脳室カテーテル末端58を通過してイントロデューサー末端40と整列するまでアダプター32及びカニューレ34を通って前進する。次いで、光ファイバーシャフト66はイントロデューサーカニューレ34と相互固定される。次いで、光ファイバーシャフト66及びイントロデューサーカニューレの整列した先端部は、選択された脳室に達するまで組織を通って進む間に、カテーテル22の内部で近位方向に格納される。
【0007】
残念なことに、脳室シャントとしても既知の、埋め込まれた脳室カテーテル内への脈絡叢の内殖に関連した合併症は、よくあることである。水頭症の処置中の脳室シャント機能不全の最もよくある原因は、時には近位シャント閉塞と称される閉塞であり、流体管理開口部が脈絡叢及び/又は脳実質によって頻繁に封鎖される。カテーテルの正確な配置は、適切な挿入軌道と、脳室構成に相対するカテーテル先端部の適切な位置付けとの両方に依存する。外科医は、多くの場合、脳室カテーテルの遠位先端部をモンロー孔の前方に配置して、脈絡叢を避けるよう試みる。しかしながら、前側領域への直接通路の形成は、脳室への外科医のアプローチを制限する。発作リスク、脈絡叢妨害、標的の脳室腔(ventricular chamber)のサイズ及び形状、並びに感染の発生率に基づいてどのようにアプローチが異なるかに関する理論は、依然として議論の余地がある。
【0008】
予め湾曲されたカテーテルが、一般的により大きい外径が許容される多様な用途に使用されてきた。Wendell Longによる米国特許第3,867,945号は、半剛性の、最適な曲率を有する十分堅いスタイレットを有して、挿入中にカテーテルを誘導する、Foley尿道カテーテルを開示している。
【0009】
弾性部材を有する補強維持構造は、Teagueらにより米国特許第6,569,150号に開示されている。この維持構造は、腎臓及び尿管内などの患者の身体内でカテーテルを定位置に維持する繋留形状を提供する。したがって、カテーテルを位置付けて体液、特に脳脊髄液を管理するための、より多目的な装置及び技術を有することが望ましい。特により困難な後頭部アプローチが用いられる際、脳の脳室内での最終的なカテーテル位置付けを容易にすることによって、シャントシステムの閉塞及び不具合を最小限にする装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、流体管理カテーテルの遠位部分を、患者内にて所望通り配置できるようにすることである。
【0011】
本発明の別の目的は、カテーテル内の開口部を覆い隠し得る脈絡叢などの組織に対するカテーテルの遠位部分の曝露を最小限にすることである。
【0012】
本発明の更なる別の目的は、特に小さい又はスリット状の脳室を有する子供での、シャントカテーテルの軌道及び最終位置を最適化することである。
【0013】
なお更なる目的は、埋め込まれたカテーテルの修復及び/又は交換の必要性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、カテーテルのシャフトの遠位部分に取り付け可能であり、遠位端及び近位端を有する細長いフレームを有する、カテーテル湾曲ブレースに関する。フレームは、弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成されている。少なくとも2つの連結要素がフレームに接続され、各連結要素は、カテーテルの外側表面と係合するように構成されている。少なくともこのフレームは、力によって真っ直ぐにされた後、力が除去された後に弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、カテーテルを湾曲させて弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる。用語「遠位」は、埋め込み中、外科医又は他のユーザーから最も遠い末端部を指す一方、「近位」は、ユーザーに最も近い末端部を指す。
【0015】
好ましい実施形態では、弾性の生体適合性材料は、ニチノール合金である。いくつかの実施形態では、連結要素の少なくとも1つがリングであり、別の実施形態では、連結要素の少なくとも1つがC型部材である。特定の実施形態では、連結要素の少なくとも1つが、フレームの連続として形成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1及び第2のカテーテル湾曲ブレースが存在し、第2のブレースの曲率は、第1のブレースの曲率とは異なる。
【0017】
本発明は、患者の脳の脳室内への埋め込みに好適な流体管理カテーテルアセンブリとして表現することができ、前記アセンブリは、遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有するカテーテルであって、前記シャフトが、実質的にシャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定し、前記シャフトが、該シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、流体管理開口部がルーメンと流体連通している、カテーテルを含む。アセンブリは、シャフトの遠位部分に取り付けられたカテーテル湾曲ブレースを更に含み、前記ブレースは、遠位端及び近位端を有し、かつ弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成される細長いフレームと、フレームに接続され、それぞれがカテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有する。少なくともこのフレームは、力によって真っ直ぐにされた後、力が除去された後に弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、カテーテルを湾曲させて弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる。
【0018】
本発明は、更に、上述したカテーテルを少なくとも第1及び第2のカテーテル湾曲ブレースと共に有する流体管理キットとして表現することができる。第2のカテーテルブレースの少なくとも1つの湾曲部は、第1のカテーテルブレースの少なくとも1つの湾曲部とは異なる。
【0019】
本発明はまた、遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有するカテーテルを選択することを含む、患者内で流体を管理するための方法として表現することができる。シャフトは、実質的に該シャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定する。シャフトは、シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、流体管理開口部は、ルーメンと流体連通している。本方法は、シャフトの遠位部分に取り付け可能なカテーテル湾曲ブレースを選択することであって、ブレースが、遠位端及び近位端を有し、かつ所望の弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成される細長いフレームと、フレームに接続され、それぞれがカテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有し、少なくともフレームが、力によって真っ直ぐにされた後、力が除去された後に所望の弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されている、ことを更に含む。カテーテルブレースを、カテーテルの遠位部分に取り付けてカテーテルアセンブリを形成し、カテーテルルーメン内にスタイレットを配置して力を付与して、カテーテルアセンブリを真っ直ぐにし、カテーテルアセンブリは、患者の脳の脳室などの、患者の標的位置内に挿入される。次いで、スタイレットを除去して、カテーテルの遠位部分を所望の弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
図1】本発明による第1のカテーテル湾曲ブレースの概略側面図。
図2図1のブレースとは異なる曲率を有する、本発明による第2のカテーテル湾曲ブレースの概略側面図。
図3】複合曲率を有する、本発明による更なる別のカテーテル湾曲ブレースの概略側面図。
図4図3のブレースの遠位端の拡大図。
図5】脳室カテーテルに取り付けられてカテーテルアセンブリを形成する、図1のブレースの概略側面図。
図6】脳室カテーテルに取り付けられてカテーテルアセンブリを形成する、図1のブレースの概略側面図。アセンブリは、該アセンブリを真っ直ぐな状態に強制するスタイレットを更に含む。
図7】脳の脳室内に埋め込まれた後の図5の脳室カテーテルアセンブリを示す、患者の頭部の上部部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、カテーテルのシャフトの遠位部分に取り付け可能であり、遠位端及び近位端を有する細長いフレームを有する、カテーテル湾曲ブレースにより達成することができる。フレームは、弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成されている。少なくとも2つの連結要素がフレームに接続され、各連結要素は、カテーテルの外側表面と係合するように構成されている。少なくともこのフレームは、力によって真っ直ぐにされた後、力が除去された後に弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、カテーテルを湾曲させて弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる。
【0022】
図1は、フレーム12と、リング形状の連結要素14及び16とを有する第1の湾曲ブレース10を示す。フレーム12は、近位端22、遠位端24を有し、この構成では、近位端22の長手方向軸線20に対しておよそ20度の、矢印18で示される角度で、第1の湾曲部内で形成されている。同様に、図2は、フレーム32と、リング形状の連結要素34及び36とを有する第2の湾曲ブレース30を示す。フレーム32は、近位端42、遠位端44を有し、この構成では、近位端42の長手方向軸線40に対しておよそ30度の、矢印38で示される角度で、第2の湾曲部内で形成されている。
【0023】
図3に、複数の湾曲部54及び56を有する弛緩した複合曲率にて形成されたフレーム52を有する、第3の湾曲ブレース50が示されている。いくつかの構成では、フレーム52は、単一の面に沿って多数の湾曲部を有し、他の構成では、多面湾曲部を有する。湾曲した脚59及び61を有する第1のC形状の連結要素58は、近位端60においてフレーム52に接続され、第2のリング形状の連結要素62は、遠位端64においてフレーム52に接続され、湾曲した脚68及び70を有する第3のC形状の連結要素66は、中間位置67においてフレーム52に接続されている。
【0024】
好ましい構成では、少なくともフレーム12、32及び52は、ニチノール合金又は超弾性ポリマーなどの超弾性材料から形成されている。様々な好適な超弾性材料が、例えばTeagueらによる米国特許第6,569,150号に記載されている。弾性材料を十分高い温度に加熱した後、該材料を所望の形状に湾曲させるなどの既知の技術を用いて、所望の曲率を付与することができる。
【0025】
いくつかの構成では、連結要素14、16、34、36、58、62及び66のうちの1つ以上は、対応するフレーム12、32及び52と同一の材料から形成され、他の構成では、異なる材料から形成されている。連結要素が、連結要素14、16、34、36及び62に関して図示したようなリング形状の場合、それぞれ対応するフレーム12、32及び52を形成する材料の連続として形成することが好ましい。連結要素62に関する1つのリング形状の構成が図4に図示されており、フレーム52及び連結要素62を形成しているニチノールワイヤが末端部63にて終結し、該末端部63は、フレーム52の遠位端64に物理的に接続されていない。連結要素62は、開環形状を有すると言うこともできる。あるいは、開環又は閉環形状の材料を、ろう接又は他の好適な生体適合性材料の取り付け技術により取り付けてもよい。同様に、いくつかの構成では、脚59、61、68及び70は個々の脚として取り付けられ、また別の構成では連続した対の脚として取り付けられる。
【0026】
図1のカテーテル湾曲ブレース10は、図5及び6において脳室カテーテル82と嵌合されてカテーテルアセンブリ80を形成するよう示されている。カテーテル82は少なくとも1つのルーメン84を有し、該ルーメン内にスタイレット86を図6に示すように挿入して、この構成では真っ直ぐであるスタイレット86の配向と一致するようにカテーテルアセンブリ80を強制することが可能である。遠位部分92内に複数の流体管理開口部90が形成され、この遠位部分92は遠位先端部94で終結している。好適な脳室カテーテル及びスタイレットは、例えばRaynham,MassachusettsのCodman & Shurtleffから市販されている。
【0027】
カテーテルアセンブリ80は、例えばスタイレット86を除去することによって力を絶った後、図1及び5に示す弛緩した湾曲構成に戻る。換言すれば、遠位部分92は、カテーテル82の長手方向軸線96及び遠位先端部94の中心の軸線98対して、図5に示した矢印18で示される角度に実質的に戻る。ブレース10は一般に、所望の湾曲部の「外側」に配置され、連結要素は、開口部90の封鎖を最小限にするようにカテーテル82に沿って配置される。
【0028】
1つのアセンブリ技術では、外科医又は他の医療専門家は、適切な流体管理カテーテルを選択し、患者の特定の流体管理手技に所望の弛緩した湾曲構成を有する本発明による湾曲ブレースを選択する。所望の曲率を有することに加えて、ブレースはまた、選択されたカテーテルの外径に適したサイズを有する複数の連結要素を有するように選択される。次いで、医療専門家は、カテーテルを押しつぶす又は引き伸ばすことによって、カテーテルの遠位先端部を連結要素に通させる。本発明の一技術において、脳室カテーテルは、剛性スタイレットを用いて該カテーテルを連結要素に通して押すことにより、連結要素を通して導入される。スリーブ、プライヤー又はその他のツールを用いて、アセンブリプロセスを援助することができる。拡張装置を用いて、図4に示すような開環形状の連結要素、又は図3に図示するようなC形状の連結要素を一時的に拡大してもよい。
【0029】
図7は、穿頭孔BHを通して、また患者Pの脳Bの組織を通して配置した後のカテーテルアセンブリ80を示す。遠位部分92は、脳室V内に配置されて示されている。ブレース10は、従来の様式でカテーテルアセンブリ80を配置するのに用いられたスタイレット、内視鏡、又はその他の送達装置がルーメン84から除去された後に、遠位部分92を所望の湾曲構成に湾曲させ保持している。カテーテル82の近位端99は、一般に、ポンプ又はその他の流体管理装置に接続されるように患者Pの頭蓋骨の外部に残留する。溝、対比色のドット若しくは縞、及び/又はより暗色の材料などの配向マーク104が、マーク104に対するブレース10の回転位置を示すことが好ましい。
【0030】
図7の点線の円100は、図5に示すような遠位先端部94の位置合わせ軸線98を達成するための、実質的に真っ直ぐの軌道102に沿った従来のカテーテルの配置に必要な、より前方の穿頭孔の位置を示す。しかしながら、そのような従来のカテーテルの従来の配置自体は、図7の脳室Vの曲率と理想的に一致するような本発明により達成される湾曲構成を達成せず、流体管理開口部90を脳室の脈絡叢CPのライニング部分から離れて維持する。
【0031】
したがって、本発明の好ましい実施形態に適用されるように本発明の基本的な新規特徴を図示し、説明し、また指摘してきたが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、当業者が、図示した装置の形態及び詳細、並びにその装置の操作において種々の削除、置換、及び変更を行い得ることが理解される。例えば、本発明の範囲内と同様の結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行う要素及び/又は工程の全ての組み合わせが明確に意図される。ある記載された実施形態の要素を別の実施形態の要素に置き換えることも十分意図され、想到される。また、図面は必ずしも縮尺通りではないが、本来は単に概念的なものである。したがって、本明細書に付属する特許請求の範囲の記載のみに基づいて限定がなされるものとする。
【0032】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献は、その全文全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0033】
〔実施の態様〕
(1) 第1のカテーテル湾曲ブレースであって、
遠位端及び近位端を有し、第1の弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの第1の湾曲部により形成されている細長いフレームと、
前記フレームに接続され、それぞれがカテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、
を備え、
少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記第1の弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されている、カテーテルブレース。
(2) 前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、実施態様1に記載のカテーテルブレース。
(3) 前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、実施態様1に記載のカテーテルブレース。
(4) 前記連結要素の少なくとも1つが、C型部材として形成されている、実施態様1に記載のカテーテルブレース。
(5) 前記連結要素の少なくとも1つが、前記フレームの連続として形成されている、実施態様1に記載のカテーテルブレース。
【0034】
(6) 少なくとも1つの第2のカテーテル湾曲ブレースを更に含み、前記第2のカテーテルブレースが、第2の弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの第2の湾曲部を有し、前記第2の湾曲部が、前記第1の湾曲部とは異なることを除いて、前記第2のカテーテル湾曲ブレースが前記第1のカテーテルブレースと実質的に同一である、実施態様1に記載のカテーテルブレース。
(7) 患者の脳の脳室内に埋め込むために好適な流体管理カテーテルアセンブリであって、
遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有するカテーテルであって、前記シャフトが、実質的に前記シャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定し、前記シャフトが、前記シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、前記流体管理開口部が、前記ルーメンと流体連通している、カテーテルと、
前記シャフトの前記遠位部分に取り付けられたカテーテル湾曲ブレースであって、前記ブレースが、遠位端及び近位端を有し、かつ弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成される細長いフレームと、前記フレームに接続され、それぞれが前記カテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有する、カテーテル湾曲ブレースと、
を備え、
少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、前記カテーテルを湾曲させて前記弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる、流体管理カテーテルアセンブリ。
(8) 前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、実施態様7に記載のカテーテルブレース。
(9) 前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、実施態様7に記載のカテーテルブレース。
(10) 前記連結要素の少なくとも1つが、前記フレームの連続として形成されている、実施態様7に記載のカテーテルブレース。
【0035】
(11) 流体管理キットであって、
遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有するカテーテルであって、前記シャフトが、実質的に前記シャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定し、前記シャフトが、前記シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、前記流体管理開口部が、前記ルーメンと流体連通している、カテーテルと、
前記シャフトの前記遠位部分に取り付け可能な少なくとも第1及び第2のカテーテル湾曲ブレースであって、各ブレースが、遠位端及び近位端を有し、かつ弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成される細長いフレームと、前記フレームに接続され、それぞれが前記カテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有し、少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されることによって、前記カテーテルを湾曲させて前記弛緩した湾曲構成に実質的に一致させる、カテーテル湾曲ブレースと、
を備え、
前記第1のカテーテルブレースの前記少なくとも1つの湾曲部が、前記第2のブレースの前記少なくとも1つの湾曲部とは異なる、流体管理キット。
(12) 前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、実施態様11に記載のカテーテルブレース。
(13) 前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、実施態様11に記載のカテーテルブレース。
(14) 患者の流体を管理するための方法であって、
遠位端及び近位端を有する細長いシャフトを有するカテーテルを選択することであって、前記シャフトが、実質的に前記シャフトを通って延びる少なくとも1つのルーメンを画定し、前記シャフトが、前記シャフトの遠位部分に沿って複数の流体管理開口部を更に画定し、前記流体管理開口部が、前記ルーメンと流体連通している、ことと、
前記シャフトの前記遠位部分に取り付け可能なカテーテル湾曲ブレースを選択することであって、前記ブレースが、遠位端及び近位端を有し、かつ所望の弛緩した湾曲構成にある少なくとも1つの湾曲部により形成される細長いフレームと、前記フレームに接続され、それぞれが前記カテーテルの外側表面と係合するように構成されている少なくとも2つの連結要素と、を有し、少なくとも前記フレームが、力によって真っ直ぐにされた後、前記力が除去された後に前記所望の弛緩した湾曲構成に戻ることが可能な弾性の生体適合性材料から形成されている、ことと、
前記カテーテルブレースを前記カテーテルの前記遠位部分に取り付けてカテーテルアセンブリを形成し、前記カテーテルの前記遠位部分を湾曲させて、前記所望の弛緩した湾曲構成に実質的に一致させることと、
前記カテーテルルーメン内にスタイレットを配置して前記力を付与して、前記カテーテルアセンブリを真っ直ぐにすることと、
前記カテーテルアセンブリを前記患者内に挿入して、前記遠位部分を標的位置内に埋め込むことと、
前記スタイレットを除去して、前記カテーテルの前記遠位部分を前記所望の弛緩した湾曲構成に実質的に一致させることと、
を含む、方法。
(15) 前記弾性の生体適合性材料がニチノール合金である、実施態様14に記載の方法。
【0036】
(16) 前記連結要素の少なくとも1つが、実質的に円形のリングとして形成されている、実施態様14に記載の方法。
(17) 前記連結要素の少なくとも1つが、前記フレームの連続として形成されている、実施態様14に記載の方法。
(18) 前記カテーテルが、前記患者の前記脳内への埋め込みに好適なように選択される、実施態様14に記載の方法。
(19) 前記カテーテルを前記患者内に挿入することが、前記遠位部分を、前記標的位置としての前記患者の前記脳の脳室内に位置付けることを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記カテーテルブレースを選択することが、埋め込み後の前記カテーテルの前記遠位部分に好ましい曲率を決定し、その後、異なる弛緩した湾曲構成を有する複数のカテーテルブレースの中から、前記カテーテルブレースを選択することを含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7