特許第6372922号(P6372922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6372922樹脂組成物、それを用いた被覆工法およびその方法により被覆された被覆構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372922
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、それを用いた被覆工法およびその方法により被覆された被覆構造体
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20180806BHJP
   C09D 167/06 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 163/10 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 175/16 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180806BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20180806BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C09D167/06
   C09D163/10
   C09D175/16
   C09D4/00
   C09D7/40
   C09D4/02
   C09D5/00
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-554382(P2014-554382)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2013084103
(87)【国際公開番号】WO2014103878
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-285455(P2012-285455)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】金山 潤
(72)【発明者】
【氏名】黒木 一博
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−521464(JP,A)
【文献】 特開2000−079617(JP,A)
【文献】 特表2012−521465(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/064125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C09D 4/00
C09D 4/02
C09D 163/10
C09D 167/06
C09D 175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂、(B)イタコン酸ジベンジル、(C)スチレン系モノマーを除くラジカル重合性単量体、および(D)ワックスを配合したことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分がグリシジルメタクリレート変性ポリエステルメタクリレート樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物、並びに繊維強化材、充填材および骨材の少なくとも1種から得られる樹脂複合組成物であって、該樹脂組成物100質量部に対して、繊維強化材、充填材および骨材を合計して1〜300質量部配合して得られる樹脂複合組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は請求項に記載の樹脂複合組成物を防水層として土木建築物に施工することを特徴とする、土木建築物の防水被覆工法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は請求項に記載の樹脂複合組成物を保護層として土木建築物に施工することを特徴とする、土木建築物のライニング被覆工法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は請求項に記載の樹脂複合組成物を用いて、防水層が施された被覆構造体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は請求項に記載の樹脂複合組成物を用いて、保護層が施された被覆構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライニング被覆材及び防水被覆材に適する樹脂組成物、該樹脂組成物を含有する被覆材および該被覆材を用いることを特徴とする被覆工法に関する。より詳しくは、低臭気性で塗膜乾燥性、二次接着性に優れ、ライニング材、防水材および繊維強化プラスチック等に使用可能な樹脂組成物であり、さらに、該樹脂組成物を含有する被覆材およびこの被覆材を用いることを特徴とするライニング被覆工法及び防水被覆工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋上、ベランダ、駐車場、工場などの床の防水施工や防食施工に、FRPの成形性と耐水性、機械的特性(強度など)などの利点を取り入れたFRP(防水)ライニングが利用されている。
【0003】
FRP防水に使用する樹脂としては、下地との密着性、下地への追従性、硬化収縮の歪みの緩和を考慮して、軟質樹脂を使用する。使用される軟質樹脂は、建築工事標準仕様書・同解説 JASS8防水工事に記載されているように、樹脂硬化物の引張り強度が10〜50MPa、引張り伸び率が25〜120%のもので、さらに耐熱、耐酸、耐アルカリ処理後においても同性能を有し、かつ規定の保持率を維持しているものが利用されている。これらの特性を有するFRP防水用樹脂として、ラジカル重合性モノマーにスチレンモノマーを使用した軟質不飽和ポリエステル樹脂が使用されている。
【0004】
FRP防水の施工作業において、ライニング作業工程で樹脂に含まれるラジカル重合性モノマーであるスチレンが揮発し、作業環境の悪化や臭気の問題を生じている。
さらに、前記臭気の問題を解決すべく、重合性モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルの低臭気樹脂が用いられているが、これらを利用した低臭気性樹脂は、利用する(メタ)アクリル酸エステルがスチレンより薄膜での硬化が悪い特性があるため、ライニング施工等で硬化不良が起こりやすい。
【0005】
更にこれらアクリル系樹脂の硬化においては、空気中の酸素が重合阻害剤として働くため、塗膜樹脂及びライニング樹脂の硬化過程において空気中の酸素の浸透を遮断する方法が取られる。このため、従来、樹脂組成物中にパラフィンワックスと重合性希釈剤とを含有させ、該重合性希釈剤を揮発させること及び塗膜中の重合が進むに連れて重合性希釈剤中のパラフィン濃度を高め、溶解できなくなったパラフィンワックスを樹脂表面層(塗膜表面やライニング表面)に析出させ、結果として薄いパラフィンワックス層を形成させ空気遮断材として機能させて、硬化を促進させる方法が採られている。
【0006】
しかしながら、(メタ)アクリル酸エステルを使用した樹脂の場合、嫌気性が非常に強いためパラフィンワックスを多量に添加しなければならず、塗膜の二次接着性に影響を与えることが多い。そのため、空乾性能を有する(メタ)アクリル酸エステルや樹脂を併用する技術、特定の(メタ)アクリル酸エステルを配合したものなどが提案されている(例えば特許文献1〜6参照)が、これら以外の解決策として(メタ)アクリル酸エステルよりも嫌気性の弱い重合性モノマーを使用することについても望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3278001号公報
【特許文献2】特許第3859857号公報
【特許文献3】特許第4973914号公報
【特許文献4】特開平05−295862号公報
【特許文献5】特開2004−10771号公報
【特許文献6】特開2005−120305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル以外の重合性モノマーも使用することで上記従来の問題点を解決し、低臭気性及び塗膜乾燥性、二次接着性に優れ、且つ硬化物の靭性及び耐久性に優れる樹脂組成物、これを含有する被覆材および該被覆材を用いた被覆工法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イタコン酸エステルを用いることで上記課題を解決することを見出した。
具体的に、本発明は、
[1](A)ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂、(B)イタコン酸ジベンジル、(C)スチレン系モノマーを除くラジカル重合性単量体、(D)ワックスを含むことを特徴とする樹脂組成物
[]前記(A)成分がグリシジルメタクリレート変性不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする[1]に記載の樹脂組成物、
[]前記(C)成分が(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の樹脂組成物、
[4][1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物、並びに繊維強化材、充填材および骨材のいずれかを少なくとも1種組合せて得られる樹脂複合組成物であって、該樹脂組成物100質量部に対して、繊維強化材、充填材および骨材のいずれかの少なくとも1種を合計して1〜300質量部配合して得られる樹脂複合組成物、
[5][1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物又は[]に記載の樹脂複合組成物を防水層として土木建築物に施工することを含む、土木建築物の防水被覆工法、
[6][1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物又は[]に記載の樹脂複合組成物を保護層として土木建築物に施工することを含む、土木建築物のライニング被覆工法、
[7][1]〜[]のいずれかに記載の樹脂組成物又は[]に記載の樹脂複合組成物を用いて、防水層が施された被覆構造体、および、
[8][1]〜[]のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は[]に記載の樹脂複合組成物を用いて、保護層が施された被覆構造体である。
【発明の効果】
【0010】
揮発性の高いモノマーの使用を控えることができるため、低臭気性であり、また、揮発性の高いモノマーの使用を控えても、塗膜表面乾燥性、二次接着性に優れ、さらに硬化させて得られる硬化物の強度特性、耐薬品性、耐熱性に優れ、防水被覆材等の土木建築材料の用途に大変有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(A)ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びビニルエステル樹脂の中から少なくとも1つ以上を使用する。好ましくは、分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートを使用する。
【0012】
本発明の(A)成分として使用されるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂とは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和若しくは不飽和ポリエステルであり、飽和若しくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させたものである。かかる樹脂の数平均分子量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは500〜5000である。
【0013】
本発明で用いられる飽和ポリエステルとは、飽和二塩基酸類と多価アルコール類との縮合反応、また、不飽和ポリエステルとはα,β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸類と多価アルコール類との縮合反応で得られるものである。
【0014】
ここでいう飽和二塩基酸類とは、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。
【0015】
また、多価アルコール類とは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等を挙げることができる。
【0016】
本発明の(A)として使用されるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂に用いる(メタ)アクリル化合物としては、不飽和グリシジル化合物、アクリル酸またはメタクリル酸の如き各種の不飽和一塩基酸、およびそのグリシジルエステル類等である。好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレートの使用が望ましい。
【0017】
本発明の(A)として使用されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ポリアルキレングリコール、ポリイソシアネート、1分子中に水酸基を1つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させ合成して得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。更により好ましくは、ポリアルキレングリコールのアルキレン基の繰返し単位の炭素数が2から4のポリアルキレングリコールであり、より好ましくはポリプロピレングリコールである。
また、かかる樹脂の数平均分子量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは500〜5000である。
【0018】
使用されるポリアルキレングリコール(好ましくは、ポリプロピレングリコール)としては、好ましくは重量平均分子量が200〜3000、より好ましくは300〜2000のものである。重量平均分子量が200以上であると、硬化物の柔軟性(伸び率)を十分に大きくすることができ、重量平均分子量が3000以下であると硬化物の強度を十分に保つことができる。ポリプロピレングリコール以外のポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(ポリテトラヒドロフラン)、ビスフェノールA及びビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させたポリオールなどのポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0019】
ポリアルキレングリコール以外に諸物性を損なわない範囲で、他のポリオールを併用できる。使用できるポリオールとしては、代表的にはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
又、ポリエステルポリオールとは、二塩基酸類と多価アルコール類の縮合重合体又はポリカプロラクトンの様に環状エステル化合物の開環重合体であり、使用する二塩基酸類、及び多価アルコールとしては、前記のポリエステル(メタ)アクリレートの項に示した化合物を挙げることができる。
【0020】
更に、ポリアルキレングリコールと併用できるポリオールとして、前記ポリエステルポリオールの原料として例示した各種の多価アルコール類を支障のない範囲で使用できる。
【0021】
本発明の(A)成分に使用されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂には、ポリイソシアネートを用いる。用いられるポリイソシアネートとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略す)2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体または異性体の混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができ、それらの1種または2種以上を使用することができる。上記ポリイソシアネートのうちジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0022】
さらに本発明の(A)成分に使用されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂には、1分子に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーが使用される。用いられる1分子に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー類を挙げることができる。
【0023】
(A)成分に使用されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、公知の方法で製造できる。その製造方法の例を挙げれば、(1)先ずポリイソシアネートとポリオールを好ましくはNCO/OH=1.3〜2で反応させ、末端イソシアネート化合物を生成させ、次いでそれに水酸基含有(メタ)アクリレート化合物をイソシアネート基に対して水酸基がほぼ等量になるように反応する方法と、(2)ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物をNCO/OH=2以上で反応させ、片末端イソシアネートの化合物を生成させ、次いでポリオールを加えて反応する方法等が挙げられる。これら合成は、50℃〜100℃の温度で反応し、更に公知のウレタン化触媒を使用して合成することもできる。
【0024】
本発明の(A)成分としてエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を使用できる。使用できるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、好ましくは1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するもので、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒の存在下で反応して得られるものである。
ここでいうエポキシ樹脂の例を挙げれば、ビスフェノールタイプまたはノボラックタイプのエポキシ樹脂単独、または、ビスフェノールタイプとノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合した樹脂などであって、その平均エポキシ当量が好ましくは150から450の範囲のものである。
また、かかる樹脂の数平均分子量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは500〜5000である。
【0025】
ここで、上記ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂として代表的なものを挙げれば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる実質的に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られるメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、あるいはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂などである。また、上記ノボラックタイプのエポキシ樹脂として代表的なものには、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などがある。
【0026】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に用いられる不飽和一塩基酸として代表的なものには、アクリル酸、メタアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノ(2−エチルヘキシル)あるいはソルビン酸などがある。なお、これらの不飽和一塩基酸は、単独でも、2種以上混合しても用いられる。上記エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、好ましくは60〜140℃、特に好ましくは80〜120℃の温度においてエステル化触媒を用いて行われる。
上記のエステル化触媒としては、たとえばトリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアンリン若しくはジアザビシクロオクタンなどの如き三級アミン、トリフェニルホスフィンあるいはジエチルアミン塩酸塩などの如き公知の触媒がそのまま使用できる。
【0027】
なお、本発明の樹脂組成物は、(A)〜(C)成分の樹脂中に、上記(A)成分の樹脂を30〜80質量%、好ましくは40〜60質量%含む。(A)〜(C)成分の樹脂中に(A)成分が30質量%以上であるとFRP防水層として十分な耐久性能を保持でき、80質量%以下であると良好なライニング作業性を保持することができる。
【0028】
本発明は、(B)成分としてイタコン酸エステルを必須成分として含有する。イタコン酸エステルの具体例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジベンジルなどが挙げられる。これらの中からモノマーの臭気などを考慮して選定して使用することが好ましい。好ましくは、イタコン酸ジベンジルを使用する。
これらのイタコン酸エステルを使用することで、表面乾燥性が向上し、ワックス類の使用量が低減され、二次接着性が向上する。イタコン酸エステルを使用しない場合には、表面乾燥性が低下し、ワックス類を多量に使用するため、二次接着性が低下する。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(C)成分の樹脂中に、(B)イタコン酸エステルを10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%含む。(A)〜(C)成分の樹脂中にイタコン酸エステルが10質量%以上であるとワックスを多量に添加することなく表面乾燥性が得られるので、二次接着性が良好であり、50質量%以下であると粘度が高くならず作業性が良好である。
【0030】
本発明は、(C)イタコン酸エステル以外のラジカル重合性単量体を含有する。この(C)成分としては、揮発性の低い、スチレン系モノマーを除くラジカル重合性単量体を使用する。この具体例として、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルである。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ( メタ) アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等の分子内に不飽和二重結合を有するモノマー、またはそれらのオリゴマー等が挙げられる。これらの中からモノマーの臭気を考慮して選定して使用することが好ましい。好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを使用する。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(C)成分の樹脂中に、上記(C)の単量体を10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%含む。(A)〜(C)成分の樹脂中に(C)成分が10質量%以上であるとワックスを多量に添加することなく表面乾燥性が得られるので、二次接着性が良好であり、50質量%以下であると粘度が高くならず作業性が良好である。
【0033】
本発明の効果を損なわない範囲で、上記の(B)(C)成分以外にスチレン系のモノマーも併用できる。スチレン系のモノマーとは、スチレンおよびスチレンにアルキル基やハロゲン原子、ビニルなどの置換基が結合したものであり、具体例としては、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
更に上記の(B)(C)成分以外にエチルビニルエーテル、メチルビニルケトンなどのビニルモノマーや、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレートなどのアリル化合物およびそれらのオリゴマーなどが挙げられる。これらのうち、樹脂組成物の低臭性を維持するためにはモノマーの揮発性及び臭気を考慮して選定することが好ましい。
しかしながら、上記のモノマーは極力使用を控えることが好ましく、使用しないことが更に好ましい。
【0034】
本発明では、(D)成分としてワックスを必須成分として含有する。使用されるワックスとしては、石油系ワックス、オレフィン系ワックス、極性ワックス、特殊ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
前記石油系ワックスとしては、たとえば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。前記オレフィン系ワックスとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。さらに極性ワックスとしては、これらの石油系ワックス、オレフィン系ワックスに極性基(水酸基・エステル基など)を導入したワックス類やオレイン酸・リノール酸・リノレン酸などの不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられる。特殊ワックスとしては、ビックケミー社製のByk S−750、Byk S−780などが挙げられる。
これらのワックスを使用することで、樹脂が硬化する際に塗膜表面やライニング層表面に析出して酸素遮断剤として有効に働き、塗膜やライニング層の表面乾燥性を得ることができる。これらのワックスを使用しないと、良好な表面乾燥性を得ることが難しい。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の樹脂中に、(D)ワックスを0.05〜0.80質量%、好ましくは0.10〜0.50質量%含む。(A)〜(D)成分の樹脂中にワックスが0.05質量%以上であると表面乾燥性が良好であり、0.80質量%以下であると二次接着性が良好である。
【0037】
本発明において、表面乾燥性を向上させる目的でコバルト系、バナジウム系、マンガン系等の有機酸金属石鹸類を併用することが好ましく、その中でもコバルトの有機酸塩が好適に使用できる。その添加量としては、(A)成分+(B)成分+(C)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.1〜3質量部である。
【0038】
本発明の組成物には、樹脂組成物を硬化させるため及び硬化速度を調整するために、ラジカル硬化剤、光ラジカル開始剤、硬化促進剤、重合禁止剤を使用することができる。
ラジカル硬化剤とは、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知公用のものが使用される。
【0039】
光ラジカル開始剤とは、光増感剤であり具体的にはベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。
【0040】
硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルブチルラクトン、ジメチルアセトアセタミドなどのβ-ジケトンなどが挙げられる。
【0041】
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン等を挙げることができる。好ましくは樹脂組成物に、10〜1000ppm添加しうるものである。
【0042】
硬化剤の添加量は、好ましくは樹脂組成物の合計量100質量部に対して、0.1〜6質量部である。本発明においてはジアシルパーオキサイド系のベンゾイルパーオキサイド、パーオキシエステル系及びハイドロパーオキサイド系のt−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイドを使用することが好ましい。又、硬化促進剤の添加量は、0.1〜5質量部の範囲で使用する。本発明においてはβ−ジケトン系促進剤、コバルト金属石鹸系促進剤と使用が好ましい。なお、硬化促進剤は、2種以上の組み合わせで使用しても良く、更に予め樹脂に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。
【0043】
また、本発明の樹脂組成物を被覆材として用いるときは、必要に応じて、揺変性付与剤、揺変性付与助剤、増粘剤、着色剤、可塑剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでいてもよい。
上記揺変性付与剤としては、具体的には、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。また、揺変性付与助剤としては、具体的には、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、有機4級アンモニウム塩、BYK−R−605(商品名;ビックケミージャパン(株)製)等が挙げられる。
増粘剤としては、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。
着色剤としては、具体的には、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、塩素化パラフィン、リン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。
【0044】
本発明では、成分(A)〜(D)を含む樹脂組成物に、繊維補強材、充填材、骨材の少なくとも1種を混合して樹脂複合組成物を調製する。使用される繊維補強材としては、例えば、ガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維或いはこれらの混合物を用いることができる。施工性、経済性を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維及び有機繊維であり、特に好ましいのはガラス繊維である。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット、ロービング、チョップ、編み物、組み物、これらの複合構造の物等があるが、施工法、厚み保持等によりマット状が好ましい。また、ガラスロービングを20〜100mmにカットしてチョップドストランドにして使用することも可能である。上記(A)〜(D)成分を含む樹脂組成物100質量部に対して、繊維補強材成分を1〜50質量部が好ましい。
【0045】
充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、フライアッシュ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス粉末など、骨材としては、珪砂・砂利・砕石などが挙げられる。これらをモルタル用として使用するときは、これらの粒径が5mm以下程度のものが好ましい。充填剤または骨材の配合量としては、上記(A)〜(D)成分を含む樹脂組成物100質量部に対して、充填剤及び骨材成分を合計1〜300質量部使用することが好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物からなる防水被覆構造体またはライニング被覆構造体は、防水材及びライニング材組成物または複合組成物を用いて土木建築物の基体上に、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系等種々のものから施工性、基体状況等を勘案して適宜選択されたプライマーを塗布する工程、プライマー乾燥後に、本発明の防水組成物、ライニング組成物または複合組成物をハンドレイアップやスプレーアップ法等で被覆施工する工程などからなる工程を経て形成される。
【0047】
本発明の樹脂組成物は目的用途に応じ、防水被覆構造体またはライニング被覆構造体の上に種々の材料と組合せて利用される。防水材として用いた場合には、防水被覆構造体の上に耐候性に優れるフッ素系、アクリル系、ウレタン系、アクリルシリコン系等の公知慣用のトップコートと称される上塗り塗料が塗布される。また表面を車両走行用として使う場合は走路表面に硅砂や壁砂等を散布して、すべり止め施工をする方法も採られる。
【0048】
本発明で基体とは、例えばセメントコンクリート、アスファルトコンクリート、ALC板、PC板、FRP、プラスチック、木質物、金属などの単独あるいは組み合わせて構成されたものを意味し、その形状はいずれのものでも良く、土木建築物の表面であれば球面、曲面、円柱面、平面、垂直面、斜面、天井面等のいずれでも良い。コンクリート、金属等の堅固な基体の場合には必要に応じて下地処理、プライマー処理等を行うと良い。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、反応性モノマーの揮散量を低く抑えて、臭気が少なくできるので施工時の臭気が問題となる住宅密集地での新設または補修工事、店舗等の新設または補修工事等の用途に適しており、またこれを用いた土木建築物の防水被覆構造体はFRPの耐久性を保持しているため、建築物の屋根、屋上、開放廊下、ベランダ、外壁、地下外壁、室内及び水槽類の防水構造体及びメンブレン防水構造体として適する。特に屋外防水では、人や車がその上を通行しても十分耐久性を保持するので、重歩行防水や駐車場等の被覆用材として利用できる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
[合成例1]ポリエステルメタアクリレート〔PMA―1〕の合成
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ジプロピレングリコール1142g、無水フタル酸1868gを仕込み、窒素雰囲気中205℃まで昇温し3時間反応し、100℃まで冷却した。空気下で、これにメチルハイドロキノン0.6g、グリシジルメタアクリレート1076gを加え、120〜130℃で2時間反応させて、冷却して数平均分子量1150のポリエステルメタアクリレート4000gを得た。この重合体を以下[PMA−1]とした。
【0052】
[合成例2]ウレタンメタアクリレート〔UMA−1〕の合成
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)1695g、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート847g、ライトエステルL−8(炭素数12〜15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物)847g、ハイドロキノン0.6gを仕込み、乾燥空気雰囲気中70℃まで昇温した。内温が70℃に達したら、触媒としてジブチルチンジラウレート1.5gを添加し、1時間攪拌した後、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)365g、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート456g、ジブチルチンジラウレート1.8gを添加し、攪拌を続け、1時間後及び1.5時間後に反応物のIRピークを測定し変化がないことを確認した後、ヒドロキシプロピルメタクリレート790gを30分かけて添加した。攪拌を続け、1時間後にIRにてイソシアネートのピークが消失したことを確認して冷却して、数平均分子量2400のウレタンメタアクリレート樹脂5000gを得た。この重合体を以下[UMA−1]とした。
【0053】
[合成例3]エポキシメタアクリレート樹脂〔EPMA−1〕の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量が189なるアラルダイトAER−2063(旭化成イーマテリアルズ株)製)2750g、メタクリル酸1251g、メチルハイドロキノン1.2gおよびトリエチルアミン12gを仕込み、130℃まで昇温させ、同温度で4時間反応させ、酸価10で冷却し、数平均分子量700のエポキシメタアクリレート樹脂4000gを得た。この重合体を以下[EPMA−1]とした。
【0054】
[合成例5]イタコン酸ジベンジルの調製
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、イタコン酸1660g、ベンジルアルコール2800g、触媒としてパラトルエンスルホン酸22.3gを加え、窒素雰囲気中120℃で25時間反応を行い、酸価6.8で冷却し、イタコン酸ジベンジル4000gを得た。
【0055】
[実施例1〜4]
合成例で合成したPMA−1を表2に示す配合比で混合溶解して樹脂液を得た。
塗膜の乾燥性、ライニング時の二次接着性を測定し、結果を表2に示す。
実施例4の硬化物の引張り試験結果及び促進劣化試験結果を表4に示す。
【0056】
[比較例1〜4]
実施例と同様に合成例で合成したPMA−1及びUMA−1、EPMA−1を表3に示す配合比で混合溶解した樹脂液を得た。塗膜の乾燥性、ライニング時の二次接着性を測定し、結果を表3に示す。
【0057】
以下に各評価方法及び評価基準を示す。
[塗膜乾燥時間(指触乾燥性)の測定]
25℃でゲル化時間が30分となるように調整された樹脂に下記に示す硬化剤、促進剤を混合し、組成物の一部を300mm×300mm(縦×横)の大きさで厚さ50mmのコンクリート板上に0.3mmの厚みに塗布した。指触乾燥性により、硬化物の塗膜乾燥性を確認し、タックフリーとなった時間を測定した。
【0058】
○硬化剤 328E(化薬アクゾ製) 1.5%
○促進剤 8%オクチル酸コバルト 1.0%
アセチルブチルラクトン 0.5%
【0059】
[二次接着性の評価]
300mm×300mm(縦×横)の大きさで厚さ50mmのコンクリート板に、プライマーとして低臭気ビニルエステル樹脂NSR−112(昭和電工製)を厚さ0.3mmとなるように硬化剤を混合して塗布し、2時間後に塗膜が乾燥した状態を確認してから、調整した樹脂組成物に硬化剤を混合して450g/m2のガラスマットを用いて1プライの積層(FRPライニング)を行った。乾燥してから3日後に表面処理を行わずに、そのまま調整した樹脂組成物に硬化剤、促進剤を混合して、450g/m2のガラスマットを用いて2層目の積層(FRPライニング)を行った。2層目の積層を行った翌日にピーリング式試験にて接着性を確認し、破壊モードを測定した。母材破壊を○、界面剥離を×とした。
【0060】
[硬化物の評価(引張り試験・促進劣化試験)]
調整した樹脂組成物に硬化剤を混合して脱気した後に、300mm×300mm×3mm(縦×横×厚)の大きさの離型処理した型に樹脂を注入し、室温で8時間硬化させた後、さらに40℃の硬化炉中で24時間後硬化させ、注形板を作成した。JISK7113に従って試験片を作製して、引張り強度及び伸び率を測定した。
更にJASS8記載の表1に示す促進劣化処理を行い、処理後の試験片についても引張り強度及び伸び率を測定し、耐久性の評価をした。結果を表4に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
なお、2012年12月27日に出願された日本特許出願2012−285455号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。