特許第6372927号(P6372927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372927
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】抵抗器、特に低抵抗電流測定抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/00 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   H01C13/00 J
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-518877(P2015-518877)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-521802(P2015-521802A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2013001648
(87)【国際公開番号】WO2014000854
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】102012013036.8
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】593116434
【氏名又は名称】イザベレンヒュッテ ホイスラー ゲー・エム・ベー・ハー ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】ヘッツラー,ウルリッヒ
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−039571(JP,A)
【文献】 特開2010−123693(JP,A)
【文献】 特開2007−189000(JP,A)
【文献】 特開平05−067501(JP,A)
【文献】 特開平10−070001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R15/00−17/22
H01C 1/00− 7/00
11/00−17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗器(6)あって、
a)電流(I)を抵抗器(6)へと流入させるための導電材料で形成される第一接続部分(1)と、
b)電流(I)を抵抗器(6)から流出させるための導電材料で形成される第二接続部分(2)と、
c)抵抗材料で形成され、前記第一接続部分(1)と前記第二接続部分(2)との間で電流の方向に配置される抵抗素子(3)と、
d)腐食保護のため、及び/又は半田付け特性の改善のための金属材料で形成される抵抗器(6)の被膜(7)と
を備える抵抗器において、
e)前記金属被膜(7)は、絶縁体層(5)が塗布されることなく抵抗素子(3)の全露出面に直接形成されており、
f)前記金属被膜(7)は前記抵抗素子(3)と共に前記二つの接続部分間に電気的迂回路(IN)を形成しており、
g)前記金属被膜(7)を通る前記迂回路(IN)は電気固有コンダクタンス値を有し、
h)前記二つの接続部分間の前記抵抗素子(3)は電気固有コンダクタンス値を有し、
i)前記迂回路のコンダクタンス値は、前記抵抗素子(3)のコンダクタンス値の10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満又は0.2%未満であることを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗器(6)において、
a)前記金属被膜(7)の膜厚が50μm未満、20μm未満、10μm未満、5μm未満、1μm未満、500nm未満又は200nm未満である、且つ/又は
b)前記被膜(7)の金属材料の電気固有抵抗が前記抵抗素子(3)の抵抗材料より大きいことを特徴とする抵抗器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抵抗器(6)において、
前記被膜(7)の金属材料は、
a)ニッケル、
b)燐含有量が6〜8%であるニッケル燐
c)金
d)銀、
e)パラジウム、
f)上記材料の合金
のうちの少なくとも一を含んでいることを特徴とする抵抗器。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一に記載の抵抗器(6)において、
a)前記金属被膜(7)が形成されていない前記抵抗器(6)の電気抵抗値は特定の温度係数を有し、
b)前記金属被膜(7)が形成されている前記抵抗器(6)の電気抵抗値は特定の温度係数を有し、
c)前記被膜(7)が形成されている場合の温度係数と、前記被膜(7)が形成されていない場合の温度係数との差が20%未満、10%未満、5%未満又は1%未満であることを特徴とする抵抗器。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一に記載の抵抗器(6)において、
前記金属被膜(7)は、前記接続部分(1,2)と前記抵抗素子(3)とを含めて前記抵抗器(6)を完全に覆っていることを特徴とする抵抗器。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一に記載の抵抗器(6)において、
前記金属被膜(7)は、半田付け可能、溶接可能、接着可能且つ/又は耐腐食性であることを特徴とする抵抗器。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一に記載の抵抗器(6)において、
a)前記接続部分(1,2)の導電材料は銅又は銅合金である、且つ/又は
b)前記抵抗素子(3)の抵抗材料は銅合金ある、且つ/又は
c)前記抵抗素子(3)の抵抗材料はニッケル合金ある、且つ/又は
d)前記抵抗素子(3)は、電気的且つ機械的に前記二つの接続部分(1,2)に接続される、且つ/又は
e)前記二つの接続部分(1,2)は前記抵抗素子(3)の両端部に配置される、且つ/又は
f)前記接続部分(1,2)並びに/或いは抵抗素子(3)は板状である、且つ/又は
g)前記板状の接続部分(1,2)並びに/或いは板状の抵抗素子(3)は平坦或いは湾曲状である、且つ/又は
h)前記抵抗材料の電気固有抵抗の温度係数は5・10-4-1未満、2・10-4-1未満、1・10-4-1未満或いは5・10-5-1である、且つ/又は
i)前記抵抗材料の電気固有抵抗(6)は、2・10-4Ω・m未満、2・10-5Ω・m未満或いは2・10-6Ω・m未満である、且つ/又は
j)前記導電材料の電気固有抵抗(6)は、10-5Ω・m未満、10-6Ω・m未満或いは10-7Ω・m未満であることを特徴とする抵抗器。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一に記載の抵抗器(6)を被膜形成(7)する被覆方法であって、
a)腐食保護のため、及び/又は半田付け特性の改善のため金属被膜(7)を前記電気抵抗器(6)の抵抗素子(3)に形成する工程を備える方法において、
b)前記金属被膜(7)は、絶縁体層(5)が塗布されることなく抵抗素子(3)の全露出面に直接形成されていることを特徴とする被覆方法。
【請求項9】
請求項に記載の被覆方法において、
前記金属被膜(7)は、前記抵抗器(6)に電気化学的に形成された被膜としてバレル鍍金方法を用いて形成されることを特徴とする被覆方法。
【請求項10】
請求項に記載の被覆方法において、
前記金属被膜(7)は、抵抗器(6)に化学的に形成されてなることを特徴とする被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器(特に低抵抗電流測定抵抗器)、及びこの抵抗器を被覆するため被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電材料(例えば銅)からなる二つの板状接続部分と、接続部分の間に挿入される抵抗材料(例えばマンガン銅ニッケル合金)と、から構成される低抵抗電流測定抵抗器が欧州特許出願公開EP0605800A1(特許文献1)に開示されている。測定抵抗器を流れる電流は、オームの法則に基づいて抵抗素子における電圧降下から測定される。
【0003】
このような電流測定抵抗器では、被膜がないと、接続部分や抵抗素子の材料が酸化し、電流測定抵抗器が茶色に変色して見た目が悪くなり、また、酸化によって半田付け特性が悪化するという問題がある。
【0004】
この問題を解決する既知の方法では、上記の電流測定抵抗器から裁断された複合材料片を電気化学的に錫鍍金又はニッケル鍍金することにより、完成品としての裁断された電流測定抵抗器上の抵抗素子の少なくとも上側及び下側に被膜を配し、前記被膜が支障となる酸化を防止する。しかしながら、裁断前に被膜を施す場合、裁断側面つまり抵抗素子の端部は被覆されず、したがって引き続き酸化を受けるという欠点がある。
【0005】
顧客からの表面保護に対する厳しい要求に対応して、以前は図6に示すように、電流測定抵抗器全体を電気化学的に鍍金していた。この図から判る通り、電流測定抵抗器が、二つの接続部分1,2と、二つの接続部分1,2の間で電流の方向に挿入された抵抗素子3と、を有する。接続部分1,2及び抵抗素子の酸化は、この構成においては、電気化学鍍金により電流測定抵抗器に形成される金属被膜4によって防止される。ここでは、電気化学的に形成された被膜4が導電性であるので、被膜4によって形成される電気的な迂回路により抵抗素子3の電気抵抗に誤差が生じてしまう虞があるという問題がある。このような抵抗値の誤差を回避するために、金属被膜4によって障害となる迂回路が形成されるのを防止する電気的絶縁被膜5で、抵抗素子の露出表面の周辺を被覆する。この方法では、接続部分1,2及び抵抗素子3の面の障害となる酸化は十分に防止されるが、被膜5の塗布は非常に面倒であり、これまでは手作業で行われなければならなかった。
【0006】
さらに、他のタイプの抵抗器を開示するドイツ特許19780905C2(特許文献2)を従来技術として説明する。この構成において、抵抗素子は電気的絶縁基板に固定され、上面には金属被膜が被覆されている。しかしながら、第一に、この構成における金属被膜は抵抗素子より低抵抗値を有し、したがって実質的に電気的迂回路が形成される。第二に、この構成における抵抗素子の横方向端部は被覆されておらず、したがって酸化する虞がある。
【0007】
さらに、米国特許出願公開US2003/0016118A1(特許文献3)、ドイツ特許出願公開DE19814388A1(特許文献4)、及びドイツ特許出願公開DE2634232A1(特許文献5)を従来技術として挙げておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 605 800 A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第197 80 905 C2号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0016118 A1号明細書
【特許文献4】ドイツ特許公出願開第198 14 388 A1号明細書
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第26 34 232 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、以上に対応した改良抵抗器を提供することにある。この目的は、本発明に係る抵抗器、及び従属請求項に係る被覆方法によって達成される。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の技術的教示には概して、金属被膜を絶縁体層(例えば塗料)が塗布されることなく抵抗素子の全露出面に直接形成することが含まれる。これにより、金属被膜と抵抗素子との間に電気的絶縁塗料被膜を塗布する面倒な手作業を不要にでき、本発明に係る抵抗器の製造を極めて簡単化できるという特長がある。本発明においては、金属被膜を通じて抵抗素子を迂回する上述の障害となる電気的迂回路を、種々の技術的方法によって防止することができる、又は障害とならないレベルまで低減できる。
【0011】
以上の目的を達成するために、本発明の好ましい態様においては、被膜には、十分に低い導電率、すなわち十分に高い電気固有抵抗の特定の材料が選択される。好ましくは、ニッケル燐(NiP)、特に燐含有量約6〜8%のニッケル燐が、金属被膜の材料として用いられる。ただ、本発明においては、他の金属被覆を用いることもできる。他の金属被覆には、例えば、ニッケル、金(特に金薄膜(フラッシュゴールド)、銀、パラジウム又はこれらの材料の合金を含めることができる。
【0012】
いずれの場合も、被膜に用いられる金属材料の電気固有抵抗は抵抗素子の抵抗材料より大きいことが好ましい。
【0013】
さらに、金属被膜を通る、障害となる電気的迂回路も、比較的薄い金属被膜を用いることにより最小化できる。したがって、本発明の好ましい態様においては、厚さが約3μmのニッケル燐層が用いられる。一方、金薄膜を有する被膜では、金属被膜の層の厚さは2未満μmであることが好ましい。一般的な場合では、金属被膜の膜厚が50μm未満、20μm未満、10μm未満、5μm未満、1μm未満、500nm未満又は200nm未満であることが好ましい。また、金属被膜を二つの機能層(例えばNiPと金薄膜)で構成できる。
【0014】
上述の通り、金属被膜により、金属被膜を通って抵抗素子を迂回する電気的迂回路が形成される。この構成において、金属被膜を通る迂回路のコンダクタンス値が、抵抗素子のコンダクタンス値の10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満又は0.2%未満となるよう、本発明に係る抵抗器は構成されることが好ましい。このように、金属被膜を通る迂回路の抵抗は、迂回路により測定に誤差が生じないよう、抵抗素子の抵抗値に対して高いことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、金属被膜は、抵抗値の温度に対する安定性を損なわない、又は許容範囲とすることが望ましい。したがって、好ましくは、本発明に係る抵抗器は、被膜が形成されている場合の抵抗素子の温度係数が金属被膜が形成されていない場合の温度係数との差異が小さくなるよう、構成される。この差異は、20%未満、10%未満、5%未満又は1%未満であることが好ましい。
【0016】
さらに、金属被膜は、抵抗素子の周辺を、つまり横方向端部を含む全露出表面を被覆することが好ましいことを付言しておく。完成品としての電流定抵抗器を裁断する前に複合材料片が錫鍍金又はニッケル鍍金される既知の抵抗器では、完成品としての電流測定抵抗器の裁断面が被覆されない状態となるので、上に説明した本発明に係る抵抗器は既知の抵抗器とは異なる。
【0017】
好ましくは、金属被膜は、実際上、接続部分と抵抗素子とを含めて抵抗器全体を被覆しており、抵抗器の周辺と、横方向端部及び端面とを含めて被覆することが好ましい。
【0018】
金属被膜は、半田付け可能、溶接可能、接着可能且つ/又は耐腐食性である材料で形成されることが好ましいことを付言しておく。
【0019】
本発明の好ましい実施態様においては、接続部分の電気抵抗をできるだけ低くするために、導電材料が銅又は銅合金である。この構成は、4線測定(特許文献1参照)の場合、測定結果に接続部分内の電圧降下により誤差が生じないので、有効である。
【0020】
さらに、抵抗材料は、銅合金、特に銅マンガンニッケル合金、例えばCu84Ni4Mn12(マンガニン(登録商標))であることが好ましいことを付言しておく。ただ他の態様として、抵抗素子の抵抗材料をニッケル合金、例えばNiCr又はCuNiとすることもできる。
【0021】
さらに、導電材料と抵抗材料に関して、抵抗素子の抵抗材料の電気固有抵抗は接続部分の導電材料より大きいことが好ましいことを付言しておく。
【0022】
本発明に係る抵抗器の設計に関して、抵抗素子は、抵抗素子は、電気的且つ機械的に、特に溶接接続によって、二つの隣接する接続部分に接続され、特許文献1に記載されているように電子ビーム溶接が特に適当であることを付言しておく。
【0023】
本発明の好ましい態様においては、二つの接続部分は抵抗素子の両端部に配置され、電流が抵抗素子の両端部で流出入する。
【0024】
ただ、二つの接続部分を抵抗素子の同じ側端部に配置し、電流を抵抗素子の同じ側で流出入させることも可能である。
【0025】
上述の二つの態様は特許文献1に詳細に記載されており、この公報の内容全体を本願の説明に援用する。
【0026】
またここで、例えば特許文献1に記載されているように、複合材料から安価に製造できるよう、接続部分及び/又は抵抗素子は板状として構成されることが好ましいことを付言しておく。
【0027】
板状接続部分及び板状抵抗素子は平坦で同じ面上に配置され、本発明に係る抵抗器が全体的に平坦であることが好ましい。
【0028】
ただ、他の態様では、板状接続部分及び/又は板状抵抗素子を湾曲させることも、裁断工程の際に湾曲させることも、必要に応じて湾曲させることもできる。この場合、組み立て状態において、抵抗素子がプリント基板から離間されるので、抵抗素子のよく冷却できる、又は部品を容易に設置することが可能である。
【0029】
さらに、本発明に係る抵抗器は好ましくはバスバーに実装される抵抗器であることを付言しておく。ただ、方法を、プリント基板上への表面実装に適しているSMD抵抗器(SMD:表面実装部品)にも適用可能である。
【0030】
既知の通り、電流測定抵抗器として使用するには、抵抗値の温度に対する安定性をできるだけ良好にすることが望ましい。したがって、使用される抵抗材料の電気固有抵抗の温度係数は非常に小さいことが好ましく、5・10-4-1未満、2・10-4-1未満、1・10-4-1未満或いは5・10-5-1であることが好ましい。
【0031】
既に説明した通り、抵抗材料は好ましくは低抵抗性抵抗材料であるので、導電材料の電気固有抵抗は、2・10-4Ω・m未満、2・10-5Ω・m未満又は2・10-6Ω・m未満であることが好ましい。
【0032】
一方、接続部分の導電材料は、10-5Ω・m未満、10-6Ω・m未満又は10-7Ω・m未満のさらに低い電気固有抵抗であることが好ましい。
【0033】
最後に、本発明は、完成部品としての本発明に係る抵抗器に限定されず、これに対応した被覆方法に対しても権利保護を主張することを付言しておく。本発明に係る被覆方法の工程はすでに上記に説明しており、繰り返しを避けるために、上記説明を参照されたい。
【0034】
被覆方法に関して、さらに、金属被膜を、電気化学的に又は化学的に、特に基本的には従来技術から知られているバレル鍍金方法で被覆することができることを付言しておく。この方法では、被覆されていない抵抗器を、バレル内で回転させながら電気化学的に又は化学的に被覆する。また、スパッタリング又はCVD(化学蒸着)等の他の被覆方法も当然可能である。
【0035】
本発明の他の有用な態様は、従属請求項に記載する、あるいは以下の図面を参照して好ましい例示的な実施形態の説明を用いて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明に係る電流測定抵抗器の平面図である。
図2図2は、図1の電流測定抵抗器の側面図である。
図3図3は、図1及び図2の電流測定抵抗器の拡大断面図である。
図4図4は、抵抗素子の金属被膜を通る電気的迂回路を示す、本発明に係る電流測定抵抗器の等価回路図である。
図5図5は、温度による抵抗の変化を示すグラフである。
図6図6は、従来の電流測定抵抗器の図3に対応する拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1図4に、本発明に係る電流測定抵抗器6を示す。本発明に係る電流測定抵抗器は多くが、上述し図6に示した従来の電流測定抵抗器と同じであり、重複を避けるため、対応する部材に同じ参照符号を付し、上述の説明を参照する。
【0038】
この構成において、二つの接続部分1,2はそれぞれ、板状に構成されており、銅又は銅合金で形成されている。
【0039】
抵抗素子3もまた、板状に構成されており、マンガン銅ニッケル合金、例えばCu84Ni4Mn12(マンガニン(登録商標))で形成されている。
【0040】
他の点では、本発明に係る電流測定抵抗器1の製造及び組み立てに関しては、特許文献1を参照されたい。したがって、この公報の内容全体を本願の説明に援用する。
【0041】
この構成において、接続部分1は電流測定抵抗器6へと電流Iを流入させる機能を有し、接続部分2は、電流測定抵抗器6から電流Iを流出させる機能を有する。
【0042】
この構成において、抵抗素子3の露出表面の周辺は、金属被膜7で被覆される。本実施形態において、金属被膜は燐含有量6〜8%のニッケル燐で形成される。
【0043】
ここで、金属被膜7は、抵抗素子3だけでなく、二つの接続部分1,2を含めて電流測定抵抗器6全体を被覆していることを付言しておく。
【0044】
一方、金属被膜7は、接続部分1,2及び抵抗素子3の表面の障害となる酸化を防止している。しかも、金属被膜7は半田付け特性を改善する。
【0045】
この構成において、金属被膜7が、接続部分1,2及び抵抗素子3の表面に直接的に、つまり図6のように塗料被膜5を介在させることなく、形成されている点で、本発明に係る電流測定抵抗器6は、図6に示す従来の電流測定抵抗器とは異なることを付言しておく。これにより、塗料被膜5を塗布する面倒な手作業を不要にでき、本発明に係る電流測定抵抗器6の製造を簡単化できるという特長がある。
【0046】
この構成においては、この構成でなければ金属被膜7を通って抵抗素子3を迂回する障害となる電気的な迂回路を種々の技術的方法で防止する。
【0047】
一方では、金属被膜7は、導電率が十分に低いニッケル燐で形成されており、金属被膜7を通る迂回路電流は大きく低減される。
【0048】
さらに、金属被膜7の厚さはd≒3μmと非常に小さく、よって迂回路電流はさらに低減される。
【0049】
図4は、接続部分1,2に対する抵抗器RAと、抵抗素子3に対する抵抗器RHと、金属被膜7を通って抵抗素子3を迂回する迂回路に対する抵抗器RNと、を有する本発明に係る電流測定抵抗器6の等価電気回路図を示している。したがって、流入した電流Iは、抵抗素子を通る主電流IHと、金属被膜7を通るすなわちより正確には金属被膜7の抵抗器RNを通る迂回路電流INとに分かれる。この構成において、迂回路電流INが主電流IHの10の数乗小さくなるように、本発明に係る電流測定抵抗器6は構成される。
【0050】
最後に、金属被膜7が形成されていない第一の状態、及びここではニッケルから成る金属被膜7が形成されている第二の状態における、本発明に係る電流測定抵抗器の全体抵抗の温度変化を、図5に示す。この図から判る通り、金属被膜7による温度安定性に対する影響は殆ど見られない。
【0051】
本発明は、上述の好ましい実施形態には限定されない。むしろ、本発明の概念を用いた種々の変形及び変更が可能であり、これら変形及び変更は本発明の範囲内である。さらに本発明は、引用している請求項の特徴を含んでいる従属請求項の技術事項の保護も請求するものである。
【符号の説明】
【0052】
1…接続部分
2…接続部分
3…抵抗素子
4…金属被膜
5…塗料
6…電流測定抵抗器
7…金属被膜
d…金属被膜の膜厚
RA…接続部分の抵抗
RN…迂回路の抵抗
RH…抵抗素子の抵抗
IH…抵抗素子を流れる主電流
IN…金属被膜を通る迂回路を流れる電流
I…合計電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6