特許第6372946号(P6372946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6372946イーサネット(登録商標)PoDLシステムにおける絶縁地絡の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372946
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】イーサネット(登録商標)PoDLシステムにおける絶縁地絡の検出
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20180806BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20180806BHJP
   H04B 3/46 20150101ALI20180806BHJP
【FI】
   H04L25/02 K
   G01R31/02
   H04L25/02 301B
   H04B3/46
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-526883(P2017-526883)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2018-503288(P2018-503288A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】US2015061661
(87)【国際公開番号】WO2016081759
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】62/081,724
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/945,260
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593219551
【氏名又は名称】リニアー テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー, アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒース, ジェフリー エル.
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−307793(JP,A)
【文献】 特開平01−295617(JP,A)
【文献】 特開平02−064474(JP,A)
【文献】 特表2008−529350(JP,A)
【文献】 特開平06−188975(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/127915(WO,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第2442462(EP,A2)
【文献】 米国特許第7426374(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
G01R 31/02
H04B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーオーバーデータラインシステム、すなわちPoDLシステムであって、
前記システムは、ワイヤペア(18)を介して受電デバイス(12)、すなわちPDに結合された給電機器(10)、すなわちPSEを含み、前記PSEは、DC電圧源(20)を含み、前記DC電圧源は、前記DC電圧源が前記DC電圧源の最大電圧(VPSE)を前記PDに供給することを可能にするために、前記ワイヤペアにおける一方のワイヤ(14)に選択的に結合された正の端子と、前記ワイヤペアにおける他方のワイヤ(16)に選択的に結合された基準端子とを有し、差動データ信号およびDC電力は、前記DC電圧源が前記ワイヤペアを横断して接続されたときに、同じワイヤ対を経由して伝導され、
前記システムは、
前記DC電圧源(20)が前記ワイヤペアを横断して接続される前に、前記PDと前記PSEの接地との間の絶縁地絡に起因する電流ループ内の漏洩電流に関連する第1の信号を感知するように結合された前記PSE内の感知回路(26、28、34、38、42、48)
をさらに備え、
前記DC電圧源(20)が前記ワイヤペアを横断して接続されていない間に、前記絶縁地絡の感知中に、前記DC電圧源(20)の前記正の端子は、前記ワイヤペア(18)における前記ワイヤ(14、16)のうちのつのみに給電し、
前記電流ループは、電流の全てを供給する前記DC電圧源(20)の前記正の端子と、前記DC電圧源(20)の前記正の端子によって給電される前記ワイヤペアにおける前記ワイヤのうちの前記つと、前記絶縁地絡との間に形成され、
前記感知回路は、前記絶縁地絡を示す感知された漏洩電流がある閾値を上回るかどうかを識別するために、前記電流ループに結合され、前記電流ループにおける前記漏洩電流のレベルを測定する、システム。
【請求項2】
前記PSEにおける前記DC電圧源(20)は、1つまたはそれを上回る電力スイッチ(21、22)を介して前記ワイヤペアに結合され、前記感知回路は、前記1つまたはそれを上回る電力スイッチが開にされると、前記電流ループにおける前記漏洩電流を感知する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記PSEにおける前記DC電圧源(20)は、1つまたはそれを上回る電力スイッチ(21、22)を介して前記ワイヤペアに結合され、前記感知回路は、
前記ワイヤペア(18)におけるワイヤのうちの1つを通して、かつ任意の絶縁地絡を通して、前記DC電圧源(20)の前記正の端子と前記PSEの接地との間の電流ループを完成させるために、前記1つまたはそれを上回る電力スイッチが開である間、一時的に閉にされる、漏電試験スイッチ(40)と、
前記電流ループを通した電流に対応する第1の信号のレベルを検出し、前記電流ループにおける電流が、前記PSEと前記PDとの間の絶縁地絡を示す閾値レベルを上回るときを識別する、検出器回路(26、28、34、48)と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記漏電試験スイッチ(40)および任意の絶縁地絡と直列の感知抵抗器(Rsense)と、
前記電流ループを通した電流に対応する、前記感知抵抗器を横断する電圧降下を検出するように結合される、差動増幅器(42)と
をさらに備え、
前記検出器回路(28)は、前記差動増幅器の出力が絶縁地絡を示す閾値外であるかどうかを判定するために、前記差動増幅器の出力に結合される請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
1つまたはそれを上回る電力スイッチ(21、22)を介して前記ワイヤペア(18)に結合される、前記PSE内の前記DC電圧源(20)と、
前記DC電圧源(20)の前記正の端子に結合される、電流源(32、46)であって、前記電流源は、前記電流ループを通して一時的な試験電流を供給する、電流源と
をさらに含み、
前記感知回路は、
前記試験電流が供給されている間、前記絶縁地絡の抵抗に関連する電圧差を検出するように結合される、差動増幅器(34、48)と、
前記差動増幅器の出力が絶縁地絡を示す閾値外であるかどうかを判定するために、前記差動増幅器の出力に結合される、検出器回路(28)と、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電流ループは、前記ワイヤペア(18)におけるワイヤのうちの1つを介して、PD負荷(RPD)を通した経路を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記電流ループは、前記ワイヤペア(18)におけるワイヤのうちの1つを介して、PD負荷(RPD)を通した経路を含まない、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記感知回路は、
前記電流ループにおける電流に対応する値を出力する、電流センサ(38)と、
前記電流ループにおける電流が前記PSEと前記PDとの間の絶縁地絡を示す閾値レベルを上回るかどうかを検出するように結合される、検出器回路(28)と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記DC電圧源(20)と前記ワイヤペア(18)との間に接続される結合インダクタ(L1−L4)をさらに備え、前記電流ループは、前記結合インダクタのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、Andrew J.GardnerおよびJeffrey L.Heathによる2014年11月19日に出願された米国仮出願第62/081,724号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、給電機器(PSE)からの電力が、また、差動データ信号、典型的には、イーサネット(登録商標)信号を伝導するためにも使用される、単一ワイヤペアを経由して受電デバイス(PD)に伝送される、パワーオーバーデータライン(PoDL)システムに関する。本発明は、特に、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出することに関する。
【背景技術】
【0003】
遠隔の電力機器にパワーオーバーデータラインを伝送することが、公知である。パワーオーバーイーサネット(登録商標)(PoE)は、1つのそのようなシステムの実施例である。PoEでは、制限された電力が、イーサネット(登録商標)スイッチからイーサネット(登録商標)に接続された機器(例えば、VoIP電話、WLAN伝送機、セキュリティカメラ等)に伝送される。スイッチからのDC電力が、標準CAT−nケーブル内の2つまたはそれを上回るツイストワイヤペアを経由して伝送される。ワイヤペアのうちの1つまたはそれを上回るものはまた、DCコモンモード電圧がデータに影響を及ぼさないため、差動データ信号を伝送する。このように、受電デバイス(PD)のために任意の外部電源を提供する必要性は、排除されることができる。
【0004】
より新しい技術は、パワーオーバーデータライン(PoDL)であり、電力が、差動データとともに、単一のツイストワイヤペアを経由して伝送される。本開示の日付において、IEEEは、IEEE802.3buとしてPoDLに関する規格を開発中である。PoDLは、PoEよりも柔軟性があり得、1つのワイヤペアのみを要求するため、特に、自動車において一般的な技法となる可能性が高い。
【0005】
PoDL用途は、接地ループの形成を防止する、またはその影響を最小限にするために、PD接地とPSE接地との間にある様式の絶縁を要求するであろうことが想定される。接地は、PSEおよびPDのためのそれぞれの基準ノードであり、必ずしも、絶対的な接地ではない、または相互に等しくない。PD接地とPSE接地の絶縁不良は、PoDLリンクの完全な機能不良をもたらさない場合があるが、結果として生じる電流フロー(漏出電流)は、イーサネット(登録商標)データの完全性を実質的に劣化させ得る。したがって、PD接地とPSE接地との間の絶縁不良を検出する能力が、PoDLイーサネット(登録商標)リンクにおけるデータ完全性を確実にするために重要である。
公報WO2006/127915およびEP2442262A2は、電力およびデータが同一のワイヤを経由して供給されるシステムを説明している。絶縁地絡を検出するために、1つのワイヤ上の源電流が、別のワイヤ上のリターン電流と比較されることにより、これらが同一である場合を決定する。電流が同一でない場合、地絡漏洩電流の可能性がある。これは、地絡遮断回路において使用される従来のアプローチである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/127915号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2442262号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、かつPoDL電圧がPDに印加された後、PSEとPDとの間の地絡漏洩電流を検出するための回路および技法が、説明される。
【0008】
一実施形態では、PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、漏電試験スイッチが、PSE電圧源の正の端子と、PSEとPDとの間の任意の漏電経路との間の電流ループの一部を横断して電圧降下を感知するために、一時的に閉にされる。漏電経路の抵抗がある閾値を下回る場合、漏電信号が、生成される。
【0009】
別の実施形態では、類似する試験が、試験スイッチを伴わずに、電流ループを通して既知の試験電流を一時的に供給し、電圧降下を感知することによって実施され、漏電経路の抵抗がある閾値を下回るかどうかを判定してもよい。
【0010】
別の実施形態では、PSE電圧源の正の端子は、一時的に電流ループに接続され、結果として生じる電流が、感知される。
【0011】
他の回路も、説明される。
【0012】
全PoDL電圧がPDに印加された後、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するために、源およびリターンPSE電流が、リンクが給電されている間に絶縁地絡を検出するために、感知され、差をとられ、ウィンドウと比較される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による、PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む、PoDLシステムを例証する。
図2図2は、本発明の第2の実施形態による、PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む、PoDLシステムを例証する。
図3図3は、本発明の第3の実施形態による、PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む、PoDLシステムを例証する。
図4図4は、本発明の第4の実施形態による、PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む、PoDLシステムを例証する。
図5図5は、本発明の第5の実施形態による、PoDL電圧がPDに印加されることに先立って、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む、PoDLシステムを例証する。
図6図6は、本発明の第6の実施形態による、PoDL電圧がPDに印加された後に、PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む、PoDLシステムを例証する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
種々の図における同一または同等の要素は、同一の番号を用いて標識化される。
【0015】
PSEとPDとの間の絶縁地絡を検出するための回路を含む種々のPoDLシステムが、説明される。概して、そのような地絡は、PDの負の基準電圧端子とPESの接地端子との間に意図されない電流経路(ループ)を生成する。そのような漏洩の量は、開示される回路によって検出され、漏洩がある閾値を上回る場合、地絡が判明する。この漏電信号は、次いで、イーサネット(登録商標)データが損なわれ得るため、PoDLシステムを無効にするように使用され得る。
【0016】
PoDLの従来の側面が、最初に、図1に関して説明される。
【0017】
図1は、ツイストワイヤペア18における第1のワイヤ14および第2のワイヤ16を介して接続される、PSE10およびPD12の関連する部分を例証する。
【0018】
結合/減結合ネットワークが、コンデンサC1−C4と、インダクタL1−L4とを備える。比較的に高周波数のイーサネット(登録商標)差動データが、コンデンサC1−C4によってパスされる一方、インダクタL1−L4は、データ信号を遮断する。イーサネット(登録商標)送受信機は、PHYと称され、これらは、データ経路内の物理層である。データは、図に示されない従来の機器によって処理される。
【0019】
PD12に給電するPoDL DC電圧は、電圧VPSEを生成するPSE電圧源20によって生成される。いったん電力スイッチ21および22が閉にされると、DC電圧は、インダクタL1およびL2によってワイヤペア18に結合され、DC電圧は、減結合インダクタL3およびL4を介して、抵抗器RPDによって表される、PD負荷に結合される。コンデンサC1−C4は、DC電圧を遮断する。コンデンサCPDは、DC電圧を平滑化する。
【0020】
典型的には、PoDLシステムでは、低電力検出および分類ルーチンが、実施され、PDがPoDLと互換性があるかどうかを検出し、PDの電力要件を伝達する。この低電力ルーチンは、ハンドシェイクと称され、PoDLに関するIEEE規格に説明される。そのようなルーチンは、状態マシン、プロセッサ、または他の公知の回路によって実行され得、検出/分類回路23によって表される。
【0021】
正常なハンドシェイクに先立って、PSE電圧源20とツイストワイヤペア18との間の電力スイッチ21および22が、開にされる。正常なハンドシェイク後、電力スイッチ21および22は、閉にされ、全PoDL電圧VPSEをPD12に供給する。
【0022】
PD12の負の端子がPSE10の接地に短絡される、またはPSE10の接地に対してある他のレベルの漏洩を有し得ることが、可能性として考えられる。PD12の負の端子とPSE10の接地との間のそのような電流漏洩は、イーサネット(登録商標)データの完全性を実質的に劣化させ得る。したがって、電流漏洩が、イーサネット(登録商標)データが信頼性のない状態になるほどのレベルである場合、絶縁地絡が識別されることが重要である。
【0023】
イーサネット(登録商標)PoDLにおけるPSEとPDとの間の地絡電流漏洩ループを検出するための3つの可能性として考えられるシナリオ、すなわち、1)PDへのPoDL電力の印加に先立つ検出、2)PDに印加されているPoDL電力の存在の検出、または3)その両方が存在する。
【0024】
図1−5は、PoDL電圧がPD12に印加されることに先立って、絶縁地絡を検出するための代替回路およびスキームを例証する。
【0025】
図1では、開始後、電力スイッチ21および22が閉にされることに先立って、漏電試験スイッチ24が、一時的に閉にされ、プルアップ試験抵抗器RtestをPSE電圧源20の正の端子とインダクタL2との間に結合する。試験抵抗器Rtestを横断する電圧は、差動増幅器26によって感知され、これは、電圧感知信号Vsenseを出力する。Vsenseは、次いで、ヒステリシス比較器28によって固定電圧閾値Vthと比較される。VsenseがVthを上回る場合、ヒステリシスを考慮して、絶縁地絡信号が、生成される。この漏電信号は、次いで、本システムが絶縁地絡を修正するために保守点検を必要とすることを示すように使用され得る。漏電信号はまた、電力スイッチ21および22が閉にされることを防止するために、本システムを無効にし得る。
【0026】
絶縁地絡漏洩抵抗は、抵抗Rleakによって表される。Rleak抵抗が低いほど、PD12接地とPSE10接地との間により多くの電流漏洩が存在する。漏電試験スイッチ24が閉にされると、電流ループが、抵抗器Rtest、インダクタL2、ワイヤ16、インダクタL4、およびRleakによって、PSE10接地に対して生成される。抵抗RtestおよびRleakは、漏洩電流ループにおいて分圧器を形成する。
【0027】
senseは、Vsense=VPSE×Rtest/(Rtest+Rleak)によって与えられ、インダクタL2、L4、およびワイヤ16からの無視できる抵抗が存在すると仮定する。Rleakの値が減少するにつれて、Vsenseの値は、完全な接地短絡の場合にVPSEの最大値まで増加するであろう。VsenseをVPSEと0Vとの間に設定される閾値電圧Vthと比較することによって、PSE接地と負の電圧PD端子との間の漏洩抵抗Rleakが臨界値を下回って減少したとき、これが検出される。臨界値は、イーサネット(登録商標)データを十分に劣化させるために必要とされる漏洩抵抗によって判定され得る。漏電信号は、次いで、アサートされる。漏電信号は、オンにされないように電力スイッチ14および16を無効にし得る。
【0028】
インダクタL2およびL4ならびにワイヤ16からの抵抗が実質的である場合、これは、許容可能なレベルのVsenseを選択するときに考慮される必要がある。
【0029】
開PSE源ならびにリターン電力スイッチ21および22を伴うPDとPSEとの間の漏洩経路抵抗または電流の試験および測定のための付加的実施形態が、図2−5に例証される。
【0030】
図2では、電圧源20の正の端子とインダクタL2との間に接続される漏電試験電流源32が、一時的にオンにされ、インダクタL2、ワイヤ16、インダクタL4、およびRleakによって生成された電流ループを通して固定電流をPSE接地に供給する。抵抗RleakインダクタL2およびL4ならびにワイヤ16の直列組み合わせを横断する電圧降下は、差動増幅器34によって検出され、Rleakの値と既知の関係を有する電圧感知信号Vsenseを生成する。Vsenseは、次いで、図1に示される様式における閾値電圧との比較のためにヒステリシス比較器に印加され、Rleakの値が閾値を下回る場合、漏電信号を生成する。
【0031】
図3は、電力スイッチ21および22がオンにされることに先立って、漏電試験スイッチ36が一時的に閉にされると、インダクタL2およびL4、ワイヤ16、ならびに抵抗Rleakを介して、電圧源20の正の端子とPSE接地との間の漏洩電流を直接感知する実施形態を例証する。電流Isenseは、電流経路と直列の低値感知抵抗器によって感知され得、感知抵抗器を横断する電圧降下は、電流に関連する。そのような従来の電流感知回路は、値Isenseを出力する電流感知回路38によって表される。Isenseに対応する電圧が、次いで、図1に示されるものと同一の様式において閾値電圧と比較され、漏洩電流が、イーサネット(登録商標)データを十分に劣化させるであろう閾値を上回る場合、漏電信号が、比較器によってアサートされる。
【0032】
図4は、電力スイッチ21および22が開にされているときに漏電試験スイッチ40が一時的に閉にされると、PSE電圧源20の正の端子が感知抵抗器Rsenseを介してインダクタL1およびワイヤ14に結合される実施形態を例証する。正の端子とPSE接地との間の電流ループは、したがって、感知抵抗器Rsense、インダクタL1、ワイヤ14、インダクタL3、PD負荷RPD、および地絡抵抗Rleakを通る。感知抵抗器Rsenseを横断する電圧降下は、差動増幅器42によって検出され、Vsenseを生成し、Vsenseは、図1に示される様式において閾値電圧と比較され、漏電信号がアサートされるべきかどうかを判定する。
【0033】
図5は、電圧源20の正の端子に結合される電流源46が、一時的にオンにされ、インダクタL1と、ワイヤ14と、インダクタL3と、PD負荷RPDと、地絡抵抗Rleakとを含む第1の電流ループを通して、かつ同時にインダクタL4と、ワイヤ16と、インダクタL2とを含む第2の電流ループを通して固定電流Itestを供給する実施形態を例証する。
【0034】
絶縁地絡漏洩抵抗Rleakが高い(例えば、開回路)場合、全ての電流は、インダクタL4と、ワイヤ16と、インダクタL2とを含む第2のループを通して流れるであろう。その結果、差動増幅器48への入力における電圧差は、主として、PD負荷RPDを横断する電圧降下によって判定され、予期される値であろう。Vsenseの値は、次いで、図1に示される様式において閾値と比較され、いかなる漏電信号も、アサートされないであろう。しかしながら、抵抗Rleakを通して実質的漏洩電流が存在する場合、第1の電流ループは、漏洩電流を引き込み、差動増幅器48の入力における電圧差は、Vsenseが閾値を上回り、漏電信号がアサートされるようにするであろう。
【0035】
正常な漏電試験およびハンドシェイクルーチン後、電力スイッチ21および22は、閉にされ、全VPSEをPD負荷RPDに供給する。
【0036】
PoDLワイヤペア18を伴う分路における漏洩経路を感知するための異なるアプローチが、PSE電力スイッチ21および22が閉にされ、リンクがすでに給電されている場合のために要求される。
【0037】
図6は、リンクが給電されている間に絶縁地絡を検出するために、源およびリターンPSE電流が同時に感知され、差をとられ、許容可能な差異と比較されるPoDL回路を例証する。電力スイッチは、閉であるため、示されない。PD負荷RPDは、電圧源20によって給電されている。漏電検出回路は、常時、動作している。
【0038】
等しい値の低値感知抵抗器RSNS1およびRSNS2が、源およびリターン電流経路と直列である。通常動作中、両方の感知抵抗器を通したPD負荷電流は、いかなる絶縁地絡漏洩も存在しない場合、ほぼ等しい。感知抵抗器を横断する電圧降下は、差動増幅器50および52によって増幅される。源およびリターン電流が等しい場合、差動増幅器50および52の出力は、等しいであろう。差動増幅器50および52の出力は、減算器54によって減算され、源電流とリターン電流との間の差異を表す信号を生成する。減算器54の出力は、ヒステリシス比較器56および58を介して、差異の許容可能範囲を表す、高基準電圧refhiおよび低基準電圧refloと比較される。差異が許容可能範囲内である場合、両方の比較器56/58は、論理ゼロを出力し、いかなる漏電も、起きていないであろう。比較器56/58は、ウィンドウ比較器と称され得る。
【0039】
有意な絶縁地絡漏洩電流が存在する場合、感知抵抗器RSNS2を通したリターン電流は、感知抵抗器RSNS1を通した源電流を下回り、したがって、差動増幅器52の出力は、差動増幅器50の出力よりも低いであろう。その結果、減算器54の出力は、refhiよりも高く、比較器56に論理1を出力させ得る。ORゲート60は、次いで、漏電信号をアサートする。漏電信号はまた、ワイヤペアの正の導体を伴う分路における漏洩経路に起因して、減算器54の出力がレベルrefloを下回る場合にもアサートされる。
【0040】
類似する検出回路が、差動増幅器50ならびに52のうちの1つの反転および非反転入力を逆転させ、減算器の代わりに加算器を使用することによって使用され、源電流とリターン電流との間の差異を検出し得る。
【0041】
上記に説明される実施形態に関連する種々の他の回路およびスキームも、使用され得る。
【0042】
本発明の特定の実施形態が示され、説明されたが、変更および修正が、そのより広い側面において、本発明から逸脱することなく成され得、したがって、添付される請求項は、全てのそのような変更および修正をそれらの範囲内に包含すべきであることが、当業者に明白となるであろう。
本明細書は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
パワーオーバーデータライン(PoDL)システムであって、
ワイヤペアを介して受電デバイス(PD)に結合され、差動データ信号およびDC電力が、上記同一のワイヤペアを経由して伝導される、給電機器(PSE)と、
電流ループ内の漏洩電流に関連する第1の信号を感知するように結合された上記PSE内の感知回路であって、上記電流ループは、上記PSEとPDとの間にワイヤペアにおける少なくとも1つのワイヤを含み、上記漏洩電流は、上記PDと上記PSEの接地との間の絶縁地絡を示す、感知回路と、
を備え、上記感知回路は、上記絶縁地絡を示す感知された漏洩電流がある閾値を上回るかどうかを識別する、パワーオーバーデータライン(PoDL)システム。
(項目2)
1つまたはそれを上回る電力スイッチを介して上記ワイヤペアに結合される、DC電圧源を上記PSE内にさらに備え、上記感知回路は、上記1つまたはそれを上回る電力スイッチが閉にされると、上記電流ループにおける漏洩電流を感知する、項目1に記載のシステム。
(項目3)
1つまたはそれを上回る電力スイッチを介して上記ワイヤペアに結合される、DC電圧源を上記PSE内にさらに備え、上記感知回路は、上記1つまたはそれを上回る電力スイッチが開にされると、上記電流ループにおける漏洩電流を感知する、項目1に記載のシステム。
(項目4)
1つまたはそれを上回る電力スイッチを介して上記ワイヤペアに結合される、DC電圧源を上記PSE内にさらに備え、上記感知回路は、
上記ワイヤペアにおけるワイヤのうちの1つを通して、かつ任意の絶縁地絡を通して、上記DC源の正の端子と上記PSEの接地との間の電流ループを完成させるために、上記1つまたはそれを上回る電力スイッチが開である間、一時的に閉にされる、漏電試験スイッチと、
上記電流ループを通した電流に対応する第1の信号のレベルを検出し、上記電流ループにおける電流が、上記PSEと上記PDとの間の絶縁地絡を示す閾値レベルを上回るときを識別する、検出器回路と、
を備える、項目1に記載のシステム。
(項目5)
上記漏電試験スイッチおよび任意の絶縁地絡と直列の感知抵抗器と、
上記電流ループを通した電流に対応する、上記感知抵抗器を横断する電圧降下を検出するように結合される、差動増幅器と、
上記差動増幅器の出力が絶縁地絡を示す閾値外であるかどうかを判定するために、上記差動増幅器の出力に結合される、上記検出器回路と、
をさらに備える、項目4に記載のシステム。
(項目6)
1つまたはそれを上回る電力スイッチを介して上記ワイヤペアに結合される、上記PSE内のDC電圧源と、
上記DC電圧源の正の端子に結合される、電流源であって、上記電流ループを通して一時的な試験電流を供給する、電流源と、
上記試験電流が供給されている間、上記絶縁地絡の抵抗に関連する電圧差を検出するように結合される、差動増幅器と、
上記差動増幅器の出力が絶縁地絡を示す閾値外であるかどうかを判定するために、上記差動増幅器の出力に結合される、上記検出器回路と、
をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目7)
上記電流ループは、上記ワイヤペアにおけるワイヤのうちの1つを介して、PD負荷を通した経路を含む、項目6に記載のシステム。
(項目8)
上記電流ループは、上記ワイヤペアにおけるワイヤのうちの1つを介して、PD負荷を通した経路を含まない、項目6に記載のシステム。
(項目9)
上記電流ループにおける電流に対応する値を出力する、電流センサと、
上記電流ループにおける電流が上記PSEと上記PDとの間の絶縁地絡を示す閾値レベルを上回るかどうかを検出するように結合される、検出器回路と、
をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目10)
上記DC電圧源と上記ワイヤペアとの間に接続される結合インダクタをさらに備え、上記電流ループは、上記結合インダクタのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のシステム。
(項目11)
1つまたはそれを上回る電力スイッチを介して上記ワイヤペアに結合される、上記PSE内のDC電圧源をさらに備え、
上記感知回路は、
上記1つまたはそれを上回る電力スイッチが閉にされると、PD負荷への給電電流レベルを感知する、第1の電流感知回路と、
上記1つまたはそれを上回る電力スイッチが閉にされると、上記PD負荷からのリターン電流レベルを感知する、第2の電流感知回路と、
上記給電電流レベルおよび上記リターン電流レベルに対応する信号を検出し、漏出電流によって上記リターン電流が十分に変化し、絶縁地絡を示すかどうかを判定する、検出器回路と、
を備える、項目1に記載のシステム。
(項目12)
上記第1の電流感知回路は、上記給電電流レベルを示す第1の信号を出力する第1の差動増幅器を備え、
上記第2の電流感知回路は、上記リターン電流レベルを示す第2の信号を出力する第2の差動増幅器を備え、
コンバイナが、上記第1の信号および上記第2の信号を受信するように結合され、
上記検出器回路は、上記コンバイナの出力が絶縁地絡を示すかどうかを判定する比較器を備える、項目11に記載のシステム。
(項目13)
上記コンバイナは、加算器を含む、項目12に記載のシステム。
(項目14)
上記コンバイナは、減算器を含む、項目12に記載のシステム。
(項目15)
上記比較器は、ウィンドウ比較器を含む、項目12に記載のシステム。
(項目16)
上記検出器回路は、上記コンバイナの出力が、漏洩経路が上記ワイヤペアにおける正の導体を伴う分路に存在することを示すかどうかを判定する、比較器を備える、項目12に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6