(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置決め部は、前記偏心方向と正反対の方向が、周方向に隣り合う前記ティース間のスロットの幅方向の中心線と一致するように、前記偏心軸とコンミテータとの位置決めを行うことを特徴とする請求項1に記載の減速装置付き電動モータ。
前記位置決め部は、前記偏心軸の前記軸方向の端面に突設された凸部と、前記コンミテータの前記軸方向の端面に形成されて前記偏心軸側の凸部の嵌まる凹部とから構成され、
前記凸部の数は、前記ティースの数の約数に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の減速装置付き電動モータ。
前記偏心軸の偏心方向と反対方向の前記アーマチュアコア上に、前記偏心軸の偏心した質量とバランスをとるためのバランス重りが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の減速装置付き電動モータ。
前記ティースの外周部における軸方向の端部、および周方向の端部の少なくとも何れか一方に、前記バランス重りを支持する支持壁が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の減速装置付き電動モータ。
前記偏心軸に、該偏心軸の偏心した質量とバランスをとるためのバランス重りが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の減速装置付き電動モータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで近年、自動車の小型、軽量化、高性能化に伴い、自動車に搭載される減速装置付き電動モータの偏平化が求められていると共に、高出力な減速装置付き電動モータが求められている。
ここで、上述の特許文献1にあっては、アーマチュア1020の支持部材1025に形成した凹部1027の中に、コンミテータのセグメント1030とブラシ1045と片方の軸受1032とが収容されている。しかも、凹部1027の内周壁にコンミテータのセグメント1030が中心軸側にブラシ当接面を向けて配置され、ブラシ1045が内周側から外周側に向かってブラシ当接面に当接する構成になっている。このように、凹部1027にブラシ1045や軸受1032を配置することから、これらブラシ1045や軸受1032のレイアウトが窮屈であり、電動モータ1010の偏平化に限界があるという課題がある。
【0010】
また、特許文献2にあっては、偏心回転体を用いた減速装置を電動モータと一体的に組み合わせることにより、小型化で高出力な減速装置付き電動モータを提供できるという点では優れているが、偏心回転体の重量バランスが悪いので駆動時の振動が大きくなりやすいという課題がある。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、偏平化を図りつつ、高出力で駆動時の振動を抑えることができる減速装置付き電動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る減速装置付き電動モータは、巻線が巻回される複数のティースを有するアーマチュアコアと、前記巻線が接続され、且つ前記巻線に電流を供給するためのブラシが摺接される複数のセグメントを有するコンミテータと、前記アーマチュアコアおよび前記コンミテータの回転を受け、該回転を減速させて出力する減速装置と、を備え、前記減速装置は、減速歯車群と、前記減速歯車群の回転を出力する出力部材と、前記コンミテータにおける回転軸線の軸方向の端部に連結されて前記コンミテータと同軸に回転する偏心軸と、を有し、前記偏心軸は、前記回転軸線から偏心した位置に中心を持つ偏心回転部を有し、該偏心回転部の偏心回転により前記減速歯車群に前記回転を入力するように構成され、前記コンミテータおよび前記偏心軸に、互いの周方向の位置決めを行う位置決め部を設け、前記位置決め部は、前記偏心方向と正反対の方向が、周方向に隣り合う前記ティース間のスロット内と一致するように、前記偏心軸とコンミテータとの位置決めを行
い、前記アーマチュアコアは、径方向中心に形成された中心開口部を有し、前記中心開口部の内周面に、コア側凹部とコア側凸部を形成し、前記コンミテータは、前記コア側凹部に内嵌固定されるボス部材を有し、前記コア側凸部の突出幅の寸法は、前記ティースの周方向の幅の約半分に設定されていることを特徴とする。
【0013】
このように、コンミテータと減速装置の偏心軸とを連結することにより、減速装置付き電動モータ内のコンミテータと偏心軸との占有スペースをできる限り小さくすることができる。この結果、減速装置付き電動モータの偏平化を図ることができる。
また、偏心軸を用いた減速装置を用いることにより、減速装置付き電動モータの出力を高めることができる。
【0014】
さらに、偏心軸の偏心方向と正反対の方向にスロットが位置するように偏心軸が位置決めされるので、スロットのデッドスペースを有効利用して、例えば、樹脂ペースト状のバランス重り(カウンタウエイト)をアーマチュアコアに取り付けることができる。したがって、偏心軸を回転させた際には回転軸線に対して偏心した質量部分の回転による振動が発生するが、バランス重りの取り付けにより、その振動を抑制することが可能となる。
【0015】
ここで、バランス重りの設置場所にアーマチュアコアのスロットを利用できることから、バランス重りを設置するための他の余分なスペースを必要としない。すなわち、例えば、ティースの軸方向端部にバランス重りを取り付けることになると、この分、アーマチュアコアの軸方向の占有スペースが大きくなってしまう。このため、上記構成とすることにより、減速装置付き電動モータの偏平化を図りつつ、減速装置付き電動モータの出力を高めることができる。
【0016】
本発明に係る減速装置付き電動モータにおける前記位置決め部は、前記偏心方向と正反対の方向が、周方向に隣り合う前記ティース間のスロットの幅方向の中心線と一致するように、前記偏心軸とコンミテータとの位置決めを行うことを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、多少の製造誤差が生じた場合であっても、確実にスロット内にバランス重りを取り付けて偏心軸とのバランスをとることができる。このため、確実に偏平化を図り、且つ確実に駆動時の振動を抑えることができる。
【0018】
本発明に係る減速装置付き電動モータにおける前記位置決め部は、前記偏心軸の前記軸方向の端面に突設された凸部と、前記コンミテータの前記軸方向の端面に形成されて前記偏心軸側の凸部の嵌まる凹部とから構成され、前記凸部の数は、前記ティースの数の約数に設定されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、凸部と凹部の嵌合位置に拘わらず、偏心回転部の偏心方向とスロットとの位置関係を一定に管理することができる。したがって、バランス重りの取り付けが容易であり、アーマチュアコアの占有スペースが大きくなってしまうことも確実に防止できる。
【0020】
本発明に係る減速装置付き電動モータは、前記偏心回転部の前記偏心方向側に、視認可能なマークを設けることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、回転軸線に対する偏心回転部の偏心量が僅かであっても、作業者が偏心回転部の偏心方向を容易に確認することができる。そして、バランス重りを取り付けるべきスロットも容易に認識することができ、減速装置付き電動モータの組み立て作業性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る減速装置付き電動モータは、前記偏心軸の偏心方向と反対方向の前記アーマチュアコア上に、前記偏心軸の偏心した質量とバランスをとるためのバランス重りが設けられていることを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、偏心軸の回転による振動を抑制することができる。
【0024】
本発明に係る減速装置付き電動モータは、前記ティースの外周部における軸方向の端部、および周方向の端部の少なくとも何れか一方に、前記バランス重りを支持する支持壁が設けられていることを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、ティースの外周部の支持壁を基準にして、パテ等のバランス重り(カウンタウエイト)を取り付けることが容易にできる。また、例えば製造誤差等の都合上、ティースの軸方向端部にバランス重りを取り付けることになった場合であっても、アーマチュアコアの回転時にバランス重りに遠心力が作用して、このバランス重りがアーマチュアコアから脱落(飛散)してしまうことを、支持壁によって防止できる。
【0026】
本発明に係る減速装置付き電動モータは、前記偏心軸に、該偏心軸の偏心した質量とバランスをとるためのバランス重りが設けられていることを特徴とする。
【0027】
このように構成することで、偏心軸の回転による振動の抑制効果を上げることができる。
【0028】
本発明に係る減速装置付き電動モータは、周壁および底壁を有し、前記周壁の内周面にモータマグネットが配置されているモータハウジングと、前記底壁に回転不能に主軸部材を固定し、前記コンミテータに前記主軸部材を挿入可能な孔を設け、前記アーマチュアコアと一体化した前記コンミテータを、前記主軸部材に対して回転可能に設けたことを特徴とする。
【0029】
このように構成することで、主軸部材を回転させる必要がないので、アーマチュアコアの軸方向両端に主軸部材を回転自在に支持するための軸受等が必要なくなる。このため、軸受を配置することにより電動モータの軸方向寸法が長くなってしまうことを防止でき、電動モータを確実に偏平化できる。
【0030】
本発明に係る減速装置付き電動モータは、前記減速装置は、前記主軸部材の固定側とは反対側の先端部に対応する箇所を囲むように配置されると共に、円環形状に形成された前記出力部材が、前記主軸部材と同軸に配置されていることを特徴とする。
【0031】
このように構成することで、軸方向にコンパクトな偏平構造の減速装置付き電動モータとすることができる。
【0032】
本発明に係る減速装置付き電動モータにおける前記減速歯車群は、前記偏心軸に相対回転可能に連結され、外歯と内歯とを有する揺動歯車と、前記モータハウジングに固定され、前記回転軸線と同心の内歯を有するリングギヤと、前記出力部材に一体回転するように設けられ、前記回転軸線と同心の外歯を有する出力歯車と、を備え、前記偏心軸に形成された円筒外周面に回転自在に、前記揺動歯車を嵌合することで、前記揺動歯車を前記回転軸線回りに公転自在且つ前記円筒外周面の中心回りに自転自在とし、前記リングギヤの内歯に、前記揺動歯車の外歯を内接噛合させると共に、前記揺動歯車の内歯に、前記出力歯車の外歯を内接噛合させたことを特徴とする。
【0033】
このように構成することで、偏平構造の減速装置でありながら大減速比の出力を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、コンミテータと減速装置の偏心軸とを連結することにより、減速装置付き電動モータ内のコンミテータと偏心軸との占有スペースをできる限り小さくすることができる。この結果、減速装置付き電動モータの偏平化を図ることができる。
また、偏心軸を用いた減速装置を用いることにより、減速装置付き電動モータの出力を高めることができる。
【0035】
さらに、偏心軸の偏心方向と正反対の方向にスロットが位置するように偏心軸が位置決めされるので、スロットのデッドスペースを有効利用して、例えば、樹脂ペースト状のバランス重り(カウンタウエイト)をアーマチュアコアに取り付けることができる。したがって、偏心軸を回転させた際には回転軸線に対して偏心した質量部分の回転による振動が発生するが、バランス重りの取り付けにより、その振動を抑制することが可能となる。
そして、スロットのデッドスペースを有効利用して、バランス重りを取り付けることができるので、さらに減速装置付き電動モータを偏平化できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態の減速装置付き電動モータを図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における減速装置付き電動モータの断面図、
図2は、電動モータ部の斜視図、
図3は、電動モータ部の分解斜視図である。
図4〜
図19は、第1実施形態の減速装置付き電動モータの各部の詳細を示す図である。
【0039】
(減速装置付き電動モータ)
図1に示すように、この減速装置付き電動モータ1は、DCブラシ付きモータとして構成された偏平形状の電動モータ部(電動モータ)10と、電動モータ部10の回転出力を減速して出力軸(出力部材)110から出力するハイポサイクロイド減速装置として構成された減速機構部(減速装置)100と、からなる。電動モータ部10の回転中心(後述するアーマチュアの回転中心)であるモータ軸線Lは、出力軸110の回転中心(軸線)と一致している。また、ここでは、出力軸110から出力を取り出す側を上側(
図1の上側)と称し、その反対側を下側(
図1の下側)と称して以降の説明を行う。
【0040】
減速装置付き電動モータ1は、外殻体として、底壁11aおよび周壁11bを有するモータハウジング11と、このモータハウジング11に結合された減速機構部カバー101と、を有している。そして、モータハウジング11と減速機構部カバー101とにより囲まれた空間内部に、ほぼ全ての機構要素が収容されている。
【0041】
モータハウジング11の周壁11bの内周面には、円筒形状のヨーク12が配置され、このヨーク12の内周面には、円筒状にモータマグネット(永久磁石)13が配置されている。モータマグネット13は、内周面に形成された6個の磁極であるN極とS極が円周方向に交互に配列されたものである。
【0042】
ここでは、ヨーク12とモータマグネット13とによりステータが構成され、モータマグネット13の内周側に、モータ軸線L回りに回転自在のアーマチュア20(ロータ)が配置されている。また、アーマチュア20の上側には、アーマチュア20に給電するための一対のブラシ45を備えた給電装置40が配置されている。
なお、モータマグネット13は円筒状に形成されていてもよし、瓦状に形成されたものを周方向に沿って並べて配置してもよい。
【0043】
モータハウジング11の底壁11aの中心部には、基端2aが底壁11aの中央支持部11cに固定された状態で、円柱状の主軸部材2が立設されている。この主軸部材2は、アーマチュア20の中心部を貫通して、減速機構部カバー101の中央開口から先端2bが突き出しており、中心線がモータ軸線Lと同軸に設定されている。
【0044】
(アーマチュア)
電動モータ部10の主要素であるアーマチュア20は、主軸部材2と同軸に配置されており、主軸部材2を囲んだ状態でモータハウジング11内に配置されている。
図2、
図3に示すように、アーマチュア20は、アーマチュアコア21と、下側と上側のインシュレータ22、23と、アーマチュアコイル24と、コンミテータ30と、を備えている。
【0045】
(アーマチュアコア)
図7に示すように、アーマチュアコア21は、同一形状にプレス成形された複数の鋼板を軸方向に積層することで構成されている。アーマチュアコア21は、略円環状のコア本体21aを有しており、コア本体21aの径方向外側には、軸方向平面視略T字状のティース21bが周方向に等間隔で放射状に形成されている。ティース21bは、先端部に形成され、周方向に沿って延出する鍔部21btを備えている。この鍔部21btによって、ティース21bは、軸方向平面視略T字状になっている。
また、隣接するティース21b間には、スロット21sがティース21bと同数個設けられている。本例では、ティース21bおよびスロット21sの数は9個である。コア本体21aの中央には、円形の中心開口部21cが設けられている。
【0046】
そして、スロット21sにエナメル被覆の巻線が通され、ティース21bに装着された各インシュレータ22、23の上から巻線Wがティース21bに集中巻きで巻回されている。これにより、
図6に示すように、アーマチュアコア21の外周面に複数のアーマチュアコイル24が形成されている。なお、巻線Wの巻回構造についての詳細は後述する。
【0047】
(インシュレータ)
図6に示すように、インシュレータは、それぞれ絶縁性樹脂で成形された下側インシュレータ22と上側インシュレータ23とに分割構成されている。そして、インシュレータは、アーマチュアコア21に装着されたとき、下側インシュレータ22と上側インシュレータ23とが、アーマチュアコア21のティース21bの先端外周面を除くほとんどの部分を覆うことができるように、ティース21bの外形形状に合わせて形成されている。
【0048】
下側インシュレータ22と上側インシュレータ23は、同形状のものである。ここでは、上側インシュレータ23の形状について簡単に述べ、下側インシュレータ22については説明を省略する。
上側インシュレータ23は、アーマチュアコア21のティース21bの軸方向端面、つまり、
図1〜
図3における上面23aは、アーマチュアコイル24を構成する巻線W(
図12参照)が巻き付けられる面であり、全体にわたりフラットな面として形成されている。この上面23aの中央には、
図3に示すように、円形の中央開口部23bが設けられている。
【0049】
(コンミテータ)
図3、
図5に示すように、コンミテータ30は、絶縁樹脂で構成された円筒状の樹脂ボス部材31と、樹脂ボス部材31に装着された複数(本例では9枚)のセグメント金属片32と、から構成されている。
【0050】
樹脂ボス部材31の下半部(基部)は、アーマチュアコア21の円形の中心開口部21cに圧入嵌合される圧入嵌合部33として構成されており、その上側に円筒壁35が設けられている。圧入嵌合部33の外径は、円筒壁35の外径よりも倍程度に大きく設定されている。圧入嵌合部33と円筒壁35の境界には、圧入嵌合部33の外径よりも大きなフランジ34が設けられている。
フランジ34は、外径が、上側インシュレータ23の中央開口部23bの内周に嵌まる大きさに形成されている。なお、軸方向における外径に変化はあるものの、樹脂ボス部材31の円筒壁35の内周面35aから圧入嵌合部33の内周面31aまでの間は、同径でストレートな円筒面として連続している。
【0051】
(樹脂ボス部材のアーマチュアコアへの圧入)
そして、
図6に示すように、樹脂ボス部材31の圧入嵌合部33の外周面が、アーマチュアコア21と同軸となるように、アーマチュアコア21の中心開口部21cに圧入嵌合(内嵌固定)されている。そして、
図1に示すように、樹脂ボス部材31の内周面が、軸受メタル3を介して主軸部材2の外周面に回転自在に嵌合されている。したがって、アーマチュア20が、主軸部材2と同軸のモータ軸線L回りに回転自在に支持されている。なお、アーマチュアコア21と樹脂ボス部材31の圧入嵌合部の詳細については後述する。
また、このように、アーマチュアコア21の中心開口部21cにフランジ34の下側の圧入嵌合部33が嵌合されたとき、
図8に示すように、アーマチュアコア21の軸方向端面(上面)にフランジ34の下面が当接し、樹脂ボス部材31が軸方向に位置決めされている。
【0052】
(セグメント金属片)
図5、
図6に示すように、各セグメント金属片32は、ブラシ45が摺接する円弧筒状のセグメント32aと、セグメント32aからL字状に折り曲げて形成されたライザ32bとを一体に有する。セグメント32aは、アーマチュアコア21から軸方向に突出した樹脂ボス部材31の円筒壁35の外周面に、ブラシ当接面を径方向外方に向けて配設されている。そして、周方向に互いに絶縁された状態で、一定ピッチで並んで配列されている。セグメント32aおよびライザ32bは、ティース21bの数と同じ数だけ設けられており、ティース21bの幅方向の中心線上に位置を揃えて配置されている。換言すれば、ティース21bおよびライザ32bは、ティース21bの幅方向の中心線とライザ32bの幅方向の中心線とが径方向に沿う同一直線上に位置するように配置されている。
【0053】
(ライザおよびライザ配置面とインシュレータ上面が同一面)
ライザ32bは、アーマチュアコイル24の引出線(巻線W)を接続するフッキング部分であり、樹脂ボス部材31のフランジ34の上面34aに設定されたライザ配置面に載置固定されている。ライザ配置面が設定されたフランジ34の上面34aは、円筒壁35の外周面に対して直交する平面として形成されている。そして、
図8に示すように、アーマチュアコア21に樹脂ボス部材31が圧入嵌合されたとき、上側インシュレータ23の上面23aと同一平面(面一)となるように構成されている。
また、ライザ32bの先端はU字状に上側に折り返されており、アーマチュアコイル24の端部(巻線Wの端部)を接続しやすくなっている。このライザ32bの折り返し部の長さは、2本以上の電線を引っ掛けられる長さに設定されている。
【0054】
(ライザ配置面とインシュレータ上面が同一面による利点)
このように、上側インシュレータ23の上面23aの高さと樹脂ボス部材31のフランジ34の上面34aの高さが同一平面上に設定されていることにより、アーマチュアコイル24を構成する巻線Wを集中巻きした際、巻線Wの始線部および終線部の高さをライザ32bの高さに揃えることができる。したがって、渡り線や均圧線の高さが膨らむのを抑えることが可能となる。また、ライザ32bをティース21bに対応した位置に配置したことにより、巻線Wの端部(ティース21bから巻線Wが引き出された箇所)とライザ32bとを最短経路で繋ぐことができる。よって、アーマチュアコイル24の端部が巻き太りしなくなると共に、渡り線や均圧線の高さが膨らむのを確実に抑えることが可能になる。
【0055】
(偏心軸)
次に、コンミテータ30に連結され、減速機構部100を構成する偏心軸120について述べる。
図2、
図3、
図5に示すように、偏心軸120は、コンミテータ30の樹脂ボス部材31における円筒壁35の先端に相対回転不能に連結されるもので、
図4(a)〜
図4(c)に単体部品としての詳細を示すように、偏心回転部121と、偏心回転部121の下面に突設された3つの回転力伝達用の嵌合凸部122と、を備えている。
偏心軸120は、全体が筒状に構成されており、軸方向に貫通する中心孔の内周面121bは、モータ軸線Lを中心とした円筒面で形成されている。そして、偏心回転部121の外周面が、モータ軸線Lと同心の中心O1に対して偏心した位置を中心O2とする円筒外周面121aとして形成されている。したがって、偏心回転部121の円筒外周面121aが、モータ軸線L(中心O1)に対して偏心回転する。
【0056】
3つの嵌合凸部122は、モータ軸線Lと同心の円筒壁に3つの切欠を設けることにより形成され、周方向に120°間隔で配置されている。3つの嵌合凸部122のうち、1の嵌合凸部122は、偏心方向Hと正反対の位置に幅方向の中心を合わせて配置され、それに対し各々逆方向に120°離れた2つの位置に、残りの2つの嵌合凸部122が配置されている。これらの嵌合凸部122は、セグメント32aやティース21bの数(9個)の約数(3個)だけ形成されている。ここで、
図4(c)に示すように、偏心回転部121の嵌合凸部122とは反対側の面12cには、微妙な偏心方向Hが簡単に分かるように、偏心軸120には、偏心方向Hを示す目印マーク125が設けられている。
【0057】
(偏心軸と嵌合する樹脂ボス部材の構成)
一方、樹脂ボス部材31の円筒壁35の先端には、偏心軸120の嵌合凸部122が嵌まる3つの嵌合凹部36が設けられている。これら偏心軸120側の嵌合凸部122と樹脂ボス部材31側の嵌合凹部36は、回転力を伝達するためのものである。また、偏心軸120側の嵌合凸部122と樹脂ボス部材31側の嵌合凹部36は、偏心軸120と樹脂ボス部材31の周方向の連結位置を規定することにより、円筒外周面121aの中心O2の偏心方向Hとアーマチュアコア21のティース21bやスロット21sの位置とを関連付けるためのものである。
【0058】
ここでは、偏心軸120側の嵌合凸部122と樹脂ボス部材31側の嵌合凹部36は、円筒外周面121aの偏心した中心O2が、
図24に参考図を示すように、アーマチュア20の中心O1(モータ軸線Lに一致)から偏心方向Hと反対方向に位置するアーマチュアコア21の1つのスロット21sの幅方向中心を通るように引いた半径線の延長上に位置するように、偏心軸120と樹脂ボス部材31との周方向位置決めを行っている。換言すれば、偏心軸120側の嵌合凸部122および樹脂ボス部材31側の嵌合凹部36の幅方向の中心とは正反対の位置に、1つのスロット21sの幅方向中心が位置している。
【0059】
また、
図1、
図5に示すように、円筒状の樹脂ボス部材31の内周面31aと、円筒状の偏心軸120の内周面121bには、軸受メタル4の下部と上部が共通圧入されており、これにより、樹脂ボス部材31と偏心軸120の芯出しが行われている。
【0060】
(樹脂ボス部材とアーマチュアの圧入嵌合部の詳細)
次に、樹脂ボス部材31とアーマチュアコア21の圧入嵌合部の詳細について述べる。
図7に示すように、アーマチュアコア21の中心開口部21cの内周面には、軸線方向に貫通させて、コア側凹部21dとコア側凸部21eとが周方向に交互に配置されている。コア側凹部21dとコア側凸部21eは、ティース21bのピッチと同じピッチで、且つコア側凹部21dの位置をティース21bの位置に揃え、コア側凸部21eの位置をスロット21sの位置に揃えて配置されている。
【0061】
一方、樹脂ボス部材31の圧入嵌合部33の外周面には、アーマチュアコア21のコア側凹部21dに嵌まるボス側凸部33aと、アーマチュアコア21のコア側凸部21eに嵌まるボス側凹部33bとが、ティース21bのピッチと同じピッチで形成されている。
そして、
図10に示すように、コア側凹部21dの底面21dsとボス側凸部33aの頂面33atとを圧入嵌合することにより、アーマチュアコア21と樹脂ボス部材31とが径方向に位置決めされている。一方、コア側凸部21eの頂面21etと、ボス側凹部33bの底面33bsとの間には、互いの干渉を逃げる隙間δ1が敢えて確保されている。
【0062】
また、ボス側凹部33bのうち、少なくとも1つのボス側凹部33b(本実施形態では120°間隔の3箇所のボス側凹部33b)の周方向における両内側面33bhに、周方向位置規制突起33bkが設けられている。周方向位置規制突起33bkは、ボス側凹部33bがコア側凸部21eと嵌合した際、コア側凸部21eの周方向の外側面21ehに圧接される。これにより、アーマチュアコア21と樹脂ボス部材31とを、周方向に位置規制、且つ回転止めすることができる。
【0063】
この場合、周方向位置規制突起33bkが設けられた3箇所のボス側凹部33bの他の6箇所のボス側凹部33bについては、これらボス側凹部33bの周方向の両内側面33bhと、コア側凸部21eの周方向の外側面21ehとの間に、互いの干渉を逃げる隙間δ2が確保されている。つまり、ボス側凹部33bとコア側凸部21eの9箇所の嵌合部のうち、周方向の圧入箇所が3つ、応力逃がし箇所を6つとなっている。
ここで、周方向位置規制突起33bkが設けられた3箇所のボス側凹部33bの近傍の樹脂ボス部材31の下端面には、周方向位置規制突起33bkの設けられたボス側凹部33bであることを示す目印マーク33mが設けられている。
【0064】
(凹部と凸部による利点)
次に、このように樹脂ボス部材31とアーマチュアコア21の圧入嵌合部に、それぞれ凹部33b、21dと凸部33a、21eを設けたことの意義について簡単に述べる。各凹部33b、21dと各凸部33a、21eは、もともとは樹脂ボス部材31とアーマチュアコア21を嵌合した際の周方向の位置決めおよび回転止めのためのものであるが、それ以外の役目も担っている。
【0065】
まず、アーマチュアコイル24に電流を流したときに発生する磁路を考えてみると、
図11(a)に示すように、その磁路Gは、例えば、1つのティース21bを先端から基端に進み、そのティース21bの基端から隣のティース21bの基端に進み、更に隣のティース21bを基端から先端に進み、隣のティース21bの先端からティース21b外部のモータマグネット13(
図2参照)を経て、元のティース21bの先端に戻るというルートを辿る。その際、
図11(b)に示すように、隣り合うティース21bの基端同士の間に十分な磁路スペースGsが確保されていないと、磁気飽和してしまうので磁気効率が悪化する。
【0066】
そこで、十分な磁路を確保するという要請からは、アーマチュアコア21の中心開口部21cの径をできるだけ小さくして、中心開口部21cの内周縁とティース21bの基端との間の距離を大きくしたい。しかしながら、アーマチュアコア21の中心開口部21cの径を小さくすると、樹脂ボス部材31の嵌合強度や剛性を高くすることができない。特に樹脂ボス部材31の内周面には軸受メタル3、4を嵌合する関係で、樹脂ボス部材31をアーマチュアコア21の中心開口部21cに圧入嵌合した際に、できるだけ縮径方向の変形が生じないようにしたい。したがって、その点からの要請によれば、中心開口部21cの径をできるだけ大きくしたい。
【0067】
そこで、本実施形態では、ティース21bの基端周辺のうち、所望の箇所に十分な大きさの磁路スペースGsを確保しながら実質的な圧入嵌合部の径を大きくするという、相反する2つの要請に応えるようにしている。すなわち、中心開口部21cの内周面に形成したコア側凹部21dの位置をティース21bの位置(ティース21b間を避けた位置)に揃える共にコア側凸部21eの位置を隣り合うティース21b間の位置に揃えている。したがって、特に磁気飽和しやすい磁路スペースDsである周方向で隣り合うティース21bの基端と基端の間に、コア側凸部21eを配置することにより、その部分のスペースを大きくとっている。
【0068】
また、磁路確保の点では問題の少ないティース21bの基端の内周側の位置にコア側凹部21dがあることで、コア側凹部21dの底面21dsの径21dpを、樹脂ボス部材31の圧入嵌合径として大きくとっている。また、磁路確保の点で重要なティース21bの基端間の内周側にコア側凸部21eがあることで、コア側凸部21eの頂面21esの径21epを、樹脂ボス部材31の圧入嵌合を逃げる部分の径として小さくとっている(21ep<21dp)。
【0069】
つまり、アーマチュアコア21の中心開口部21cの全体の内径を小さくしなくても、一部(コア側凸部21eのある箇所)の内径を小さくするだけで、磁束密度の高くなる部分のスペースを大きくとれるようにした。これにより、磁路が狭くなるのを回避しながら、樹脂ボス部材31の圧入嵌合部の剛性アップを図ることができる。
【0070】
また、樹脂ボス部材31とアーマチュアコア21の芯出し(径方向の位置決め)については、樹脂ボス部材31の全箇所のボス側凸部33aの頂面33at(外径の大きい部分)で行うので、その精度を高く維持することができる。一方、周方向の位置決めについては、全9箇所のボス側凹部33bではなく、その3分の1の3箇所の凹部33bのみで行うので、寸法の管理がしやすくなる。したがって、センタリング性(芯出し性)と回りトルク確保と周方向位置精度確保のバランスをとることが可能になる。因みに全部を同じような圧入で行うと、実際のところ反って精度確保が難しくなる可能性がある。
【0071】
なお、
図11(b)に示すように、コア側凸部21eの突出幅H1の寸法は、ティース21bの周方向の幅の約半分程度に設定されていることが望ましい。これは、1周する磁路で使用するティース21bの幅は、ティース21bの全幅の半分だからである。このように設定することにより、磁路スペースGsを十分に確保することができる。
また、
図11(b)中のA1の円で囲った部分に示すように、コア側凸部21eの周方向の両外側面21ehを互いに平行なストレート面に設定することにより、圧入部寸法の管理がしやすくなる。また、
図11(b)中のA2の円で囲った部分に示すように、コア側凹部21dの内隅に傾斜部21fを設けたことにより、磁路スペースGsを広げる上で有効になる。
【0072】
(偏心方向とティースおよびスロットとの関係)
ところで、偏心軸120を回転させた場合、偏心回転部121を含めた回転体の質量のアンバランスから振動が発生する可能性がある。その対策として、まず、偏心軸120の偏心回転部121の偏心方向Hとアーマチュアコア21の周方向の位置関係とが次のように規定されている。
【0073】
前述したように、樹脂ボス部材31の円筒壁35の先端部と偏心軸120との連結部には、
図4(a)〜
図4(c)、
図5に示すような、周方向の位置決めを兼ねた嵌合凸部122と嵌合凹部36とが位置決め部として設けられている。この場合の嵌合凸部122と嵌合凹部36は、偏心回転部121の偏心方向Hと正反対の方向が、アーマチュアコア21の1つのティース21bまたは1つのスロット21sの幅方向の中心線と一致するように、偏心軸120と樹脂ボス部材31とを周方向に位置決めしている。
【0074】
したがって、偏心軸120の偏心方向Hと正反対の方向にスロット21sがあると、そのスロット21sのスペース(このスペースは、特に利用されていないデッドスペースである)を有効利用して、アーマチュアコア21に、偏心回転による振動を打ち消すための(揺動歯車103の偏心運動とのバランスをとるための)バランス重り(カウンタウエイト)を取り付けることができる。
【0075】
その際、偏心軸120の偏心方向Hと正反対の方向が、1つのスロット21sの幅方向の中心線と一致しているので、偏心方向Hに対して容易にバランスよくバランス重り(カウンタウエイト)を取り付けることができる。したがって、バランス重りの取り付けにより、偏心回転による振動を抑制することが可能となる。また、バランス重りの設置場所にアーマチュアコア21のスロット21sを利用できることから、バランス重りを設置するための他の余分なスペースを確保する必要がなくなる。さらに、偏心軸120の偏心方向Hと正反対の方向が、1つのスロット21sの幅方向の中心線と一致していることにより、アーマチュアコア21等の製造誤差や巻線Wの巻回状態(バランス)により、バランス重りを取り付けるべき場所が多少ずれたとしても、スロット21s内にバランス重りを取り付けることができる。
【0076】
なお、アーマチュアコア21上にバランス重りを取り付けるにあたり、このバランス重りの位置を特定できないようになっていると、アーマチュアコア21の軸方向端面上(例えば、ティース21bの軸方向端面上)にバランス重りを取り付けることになる場合もある。このような場合、結果的にアーマチュアコア21の軸方向の占有スペースが大きくなってしまい、電動モータ部10の偏平化を阻害してしまう。このため、ティース21b間のスロット21sのスペースを利用して、バランス重りをアーマチュア20に取り付けることができるようにすることで、電動モータ部10を確実に偏平化できる。
【0077】
ここで、バランス重りとしては、例えば、注入時にペースト状で時間の経過により硬化するタイプの樹脂重り(パテ等)などを利用することができる。このようなバランス重りは、ティース21bにインシュレータ22、23を介して巻回したアーマチュアコイル24の周方向の側面などに、ティース21bの先端の鍔部21bt(
図7参照)を支持壁として、容易に且つ安全に配置することができる。
【0078】
また、偏心軸120側の嵌合凸部122と樹脂ボス部材31側の嵌合凹部36の嵌合する場合、複数の嵌合凸部122と嵌合凹部36のどの組み合わせでも嵌合が可能であるが、嵌合凸部122と嵌合凹部36の数がティース21bやスロット21sの数の約数である3つに設定されているので、嵌合凸部122と嵌合凹部36の嵌合の組み合わせに拘わらず、偏心軸120の偏心方向Hとスロット21sとの位置関係を一定に管理することができる。したがって、バランス重りの取り付けが容易であり、アーマチュアコアの占有スペースが大きくなってしまうことも確実に防止できる。
【0079】
(巻線の巻回手順)
次に、アーマチュアコイル24の巻線Wの巻回手順について述べる。
図12は、アーマチュアの巻線構造を示す展開図、
図13は、巻線構造を軸方向から見た図、
図14は巻線の巻回手順の説明図である。
【0080】
以下においては、コンミテータ30の各セグメント32a、アーマチュアコア21の各ティース21b、および巻回されたアーマチュアコイル24にそれぞれ符号を付して説明する。セグメント32aの番号とティース21bの番号は、周方向の同じ位置にあるものを示している。アーマチュアコイル24は、巻線Wを集中巻き方式でティース21bに巻回することにより形成されている。なお、以下の1番、4番、7番ティース21bには、U相が割り当てられ、2番、5番、8番ティース21bには、V相が割り当てられ、3番、6番、9番ティース21bには、W相が割り当てられているものとする。
【0081】
図12〜
図14を参照しながら、巻き始め端(始線)から順番に述べると、まず、巻線Wを1番、4番、7番のセグメント32aのライザ32bにこの順で引き回して均圧線を形成した後、7番、1番、4番のティース21bにこの順で巻線Wを巻回する。そして、U相のアーマチュアコイル24を形成する。
次に、巻線Wを5番、8番、2番のセグメント32aのライザ32bにこの順で引き回して均圧線を形成した後、2番、5番、8番のティース21bにこの順で巻線Wを巻回する。そして、V相のアーマチュアコイル24を形成する。
【0082】
次に、巻線Wを9番、3番、6番のセグメント32aのライザ32bにこの順で引き回して均圧線を形成した後、6番、9番、3番のティース21bにこの順で巻線Wを巻回する。そして、W相のアーマチュアコイル24を形成する。そして、巻き終わり(終線)は、4番のセグメント32aのライザ32bに接続する。
【0083】
以上により、アーマチュアコイル24が形成されている。この際、
図14に示すように、ティース21b間に跨る巻線Wの渡り線W1が、コンミテータ30の外周部において引き回される。ここで、上側インシュレータ23の上面23aの内周部には、渡り線W1を引っ掛けるためのフック28が形成されており、渡り線W1が径方向内側に入り込んでしまうことを防止している。
【0084】
(フック)
次に、フック28について述べる。
図6に示すように、フック28は、上側インシュレータ23の上面23aにおけるティース21bの根元(径方向内側の基端)に対応する位置で、且つアーマチュアコア21の各スロット21sの内周側の位置(ティース21bとティース21bの間の位置)に配置されている。したがって、ライザ32bの位置と周方向に重ならない。
図13、
図14、
図16に示すように、各フック28は、渡り線W1を外側から引っ掛けることで、渡り線W1が径方向内側に入り込んでしまうことを防止していると共に、引っ掛けた渡り線W1が外れないようになっている。
【0085】
例えば、
図15(a)に示すフック28Aは、上側インシュレータ23の上面23aに上向きに突設され、先端28aが径方向外方に向けて折れ曲がっている。したがって、先端28aの内側に渡り線W1を引っ掛けることにより、渡り線W1が容易に外れないように構成されている。
【0086】
また、
図15(b)に示すフック28Bは、上側インシュレータ23の上面23aに上向きに突設され、径方向外方の側面がオーバーハング状に傾斜面28bとなっている。換言すれば、フック28Bの傾斜面28bは、フック28Bの先端に向かうに従って径方向外方に向かうように傾斜している。したがって、傾斜面28bに渡り線W1を引っ掛けることにより、渡り線W1に下向きの力が作用し、渡り線W1が容易に外れないように構成されている。
【0087】
これらのフック28は、ティース21b間に位置し、ライザ32bへの配線処理の邪魔にならない位置に配置されている。そして、渡り線W1が、フック28によって内側に移動しないように規制されることにより、渡り線W1のライザ32bとの接触や絡みつきを容易、且つ確実に避けることができ、絶縁性を高めることができる。また、渡り線W1を軸方向にも飛び出さないように押さえることができるので、配線の膨らみによるブラシ45等との無用な干渉も有効に回避することができる。また、巻線の巻回作業もスムーズに行うことができることになる。
【0088】
(給電装置、ブラシ)
次に、給電装置40について述べる。
図17は、給電装置の斜視図である。
同図に示すように、給電装置40は、絶縁樹脂製の給電ハウジング41に、ブラシホルダ42を介して、ブラシ45(
図1および
図2参照)やバネ43を支持させたもので、一対のブラシ45はコネクタ48の端子に電気接続されている。
【0089】
この場合の一対のブラシ45は、
図1に示すように、コンミテータ30の樹脂ボス部材31の円筒壁35の外周側で、アーマチュアコア21の軸方向に隣接した上側の位置に配置されており、アーマチュア20のセグメント32aの径方向外方を向いたブラシ当接面に、径方向外方から径方向内方に向けて摺接している。
【0090】
以上の説明のように、本実施形態の電動モータ部10は、モータマグネット13の磁極数が6個、アーマチュア20のスロット21sが9個、コンミテータ30のセグメント32aが9個のいわゆる6極9スロット9セグメントの集中巻き直流モータとして構成されている。
【0091】
(減速機構部)
次に、減速機構部100について述べる。
図1に示すように、減速機構部100は、主軸部材2の先端2bに対応する位置を囲むように配置されている。また、円環形状に形成された出力軸110が、主軸部材2を囲んでモータ軸線Lと同軸に配置されている。
【0092】
減速機構部100は、ハイポサイクロイド減速機構として構成されており、上述した偏心軸120の他に、減速機構部カバー101の内周面に固定されたリングギヤ102と、偏心軸120に取り付けられた揺動歯車103と、円筒ボス111を有する出力軸110の下端に一体に形成された出力歯車104と、を有している。
【0093】
図18に示すように、リングギヤ102は、モータ軸線Lと同心の内歯102aを有している。揺動歯車103は、外歯103aと内歯103bとを有するもので、
図1に示すように、偏心軸120の偏心回転部121の円筒外周面121a(
図5参照)に、軸受メタル6を介して回転自在に嵌合されている。したがって、揺動歯車103は、モータ軸線L回りに公転自在、且つ偏心軸120の円筒外周面121aの中心O2(
図4(b)参照)回りに自転自在に支持されている。
【0094】
また、出力軸110は、内周側の軸受メタル5と外周側の軸受メタル7を介して、主軸部材2と減速機構部カバー101とに回転自在に支持されている。その出力軸110に一体化されている出力歯車104は、
図18に示すように、モータ軸線Lと同心の外歯104aを有している。
【0095】
そして、これらの歯車は、
図19に示すように、揺動歯車103の外歯103aを、リングギヤ102の内歯に内接噛合させている。また、揺動歯車103の内歯103bに、出力歯車104の外歯104aを内接噛合させた状態で、減速機構部カバー101の内部に収容されている。2つの内接噛合点PA、PBは、
図19に示すように、モータ軸線Lを挟んで対向する反対側の位置である。
【0096】
以上の構成の減速装置付き電動モータ1では、ブラシ45およびセグメント32aを介してアーマチュアコイル24に給電が行われると、アーマチュアコア21に所定の磁界が発生する。そして、この磁界と、モータマグネット13との間に磁気的な吸引力や反発力が作用し、アーマチュア20が回転する。この回転によって、ブラシ45が摺接するセグメント32aが順次変更され、アーマチュアコイル24に流れる電流の向きが切替えられる、いわゆる整流が行われ、アーマチュア20が継続的に回転する。アーマチュア20の回転により偏心軸120が回転すると、その回転を受けて減速機構部100の揺動歯車103が公転および自転することにより、出力軸110が減速回転を出力する。
【0097】
(第1実施形態の作用効果)
上記第1実施形態の減速装置付き電動モータ1のアーマチュア20は、アーマチュアコア21の中心開口部21cに、コンミテータ30のセグメント32aを配設した樹脂ボス部材31を圧入嵌合している。このため、コンミテータ30の樹脂モールド本体をアーマチュアコア21に軸方向に隣接して配置する場合と比べて、アーマチュア20の軸方向寸法を小さくすることができ、電動モータ部10を偏平化できる。また、アーマチュアコア21にコンミテータ30をインサート成形して埋設する必要がないので、製造コストを低減できる。
【0098】
さらに、コンミテータ30の樹脂ボス部材31の内周面に、軸受メタル3,4を設けることにより、主軸部材2に対して樹脂ボス部材31が回転可能に支持されている。このように、主軸部材2を固定してコンミテータ30およびアーマチュアコア21を一体に回転させる構成としている。換言すれば、従来のようにシャフト(主軸部材2)を介してアーマチュアコア21を回転させるのではなく、コンミテータ30を介してアーマチュアコア21を回転させている。このため、アーマチュアコア21の軸方向両端にシャフト(主軸部材2)を回転支持するための軸受を配置する必要がなくなる。よって、主軸部材2の軸長を短くすることができ、この結果、電動モータ部10をさらに偏平化できる。
【0099】
また、アーマチュアコア21およびコンミテータ30が偏平化されているので、アーマチュアコア21の軸方向に隣接した箇所に、スペースに余裕をもった状態で、ブラシ45を配置することができ、ブラシ45の配置の自由度を高めることができる。さらに、アーマチュアコア21から軸方向に突出した樹脂ボス部材31の円筒壁35の外周面に、ブラシ当接面を径方向外方に向けて、コンミテータ30のセグメント32aを配設している。すなわち、主軸部材2に対して直交した方向にブラシ45が延在することになるので、このブラシ45が電動モータ部10の偏平化を阻害してしまうことを防止できる。
【0100】
また、アーマチュアコア21にコンミテータ30(樹脂ボス部材31)を圧入嵌合するにあたり、アーマチュアコア21の中心開口部21cの内周面にコア側凹部21dとコア側凸部21eとを形成する一方、樹脂ボス部材31の圧入嵌合部33の外周面に、コア側凹部21dとコア側凸部21eとに嵌まるボス側凹部33bとボス側凸部33aを形成している。このため、アーマチュアコア21の磁路が狭くなるのを回避しながら、樹脂ボス部材31の圧入嵌合部の剛性アップを図ることができる。
【0101】
また、アーマチュアコア21と樹脂ボス部材31とを圧入嵌合する箇所を、アーマチュアコア21側のコア側凹部21dの底面21dsと樹脂ボス部材31側のボス側凸部33aの頂面33atとに限定している。そして、アーマチュアコア21側のコア側凸部21eの頂面21etと樹脂ボス部材31側のボス側凹部33eの底面33bsとの間には、互いの干渉を逃げる隙間δ1を敢えて確保している。
【0102】
このため、径の大きな圧入嵌合面(径21dp上の嵌合面)でアーマチュアコア21と樹脂ボス部材31を結合することができる。したがって、結合力を高めることができると共に、実際に圧入による応力がかかる部分の樹脂ボス部材31側の肉厚を大きくとることができ、樹脂ボス部材31の剛性を高めることができる。よって、円筒状の樹脂ボス部材31の内周面に軸受メタル3、4を嵌合する際に、特に樹脂ボス部材31が樹脂製であるが故の圧入による縮径方向の変形の影響が出にくくなる。
【0103】
また、周方向位置規制突起33bkを設けたボス側凹部33bだけ、アーマチュアコア21と樹脂ボス部材31を周方向に嵌合しており、周方向位置規制突起33bkがない位置のボス側凹部33bは、アーマチュアコア21側のコア側凸部21eとの間に敢えて逃げ隙間(遊び)δ2を設けている。したがって、無用な嵌合負荷が掛からない状態で、アーマチュアコア21と樹脂ボス部材31を周方向に位置規制(つまり回り止め)することができる。
【0104】
さらに、上側インシュレータ23の上面23aの高さと樹脂ボス部材31のフランジ34の上面34a(ライザ配置面)の高さが同一平面上に設定されていることにより、巻線Wの端部(ティース21bから巻線Wが引き出された箇所)とライザ32bとを近接配置することができる。このため、引出線の引き回し(配線)経路の設計が簡単で引き回しが容易になり、引出線の無駄な引き回しも抑えることができる。また、アーマチュアコイル24を構成する巻線Wを集中巻きした際、巻線Wの始線部および終線部の高さをライザ32bの高さに揃えることができる。したがって、渡り線や均圧線の高さが膨らむのを抑えることが可能になる。
【0105】
また、セグメント32aおよびライザ32bは、ティース21bの数と同じ数だけ設けられており、ティース21bの幅方向の中心線上に位置を揃えて配置されている。このため、巻線Wの端部(ティース21bから巻線Wが引き出された箇所)とライザ32bとを最短経路で繋ぐことができる。よって、アーマチュアコイル24の端部が巻き太りしなくなると共に、渡り線や均圧線の高さが膨らむのを確実に抑えることが可能になる。
【0106】
また、樹脂ボス部材31をアーマチュアコア21の中心開口部21cに圧入した際に、樹脂ボス部材31のフランジ34の下面がアーマチュアコア21の軸方向端面に当接するようになっている。このため、樹脂ボス部材31の軸方向位置を適正に決めることができる。
【0107】
さらに、樹脂ボス部材31のフランジ34の外周部がアーマチュアコア21の中心開口部21cの内周部に嵌まるようになっている。このため、アーマチュアコア21とライザ32bとが樹脂で確実に遮断されるので、ライザ32bやそれに係止するアーマチュアコイル24の引出線とアーマチュアコア21との接触を確実に回避することができ、絶縁性を高めることができる。また、アーマチュアコア21に樹脂ボス部材31が圧入嵌合されたとき、上側インシュレータ23の上面23aとフランジ34の上面34aとを同一平面(面一)とすることができる。このため、不要な段差を抑えて電動モータ部10を効率よく偏平化できる。
【0108】
さらに、上側インシュレータ23の上面23aの内周部には、渡り線W1を引っ掛けるためのフック28が形成されており、渡り線W1が径方向内側に入り込んでしまうことを防止している。このため、ライザ32b周辺の混雑する配線を整然と行うことができ、不要な短絡も防止して絶縁性を高めることができる。
また、ティース21b間の位置にフック28を配置したことにより、ライザ32bに接続する配線に邪魔にならないように渡り線W1や均圧線を配索することができ、絶縁性を高めながら引出線の引き回しの容易化を図ることができる。
【0109】
そして、上記実施形態の電動モータ部(電動モータ)10によれば、上述のアーマチュア20を使用していることにより、軸方向の偏平化を図ることができると共に、ブラシ45の配置の自由度が増すことで、構造が簡単になって、設計・製作・組立の容易化が図れる。
【0110】
また、上記実施形態の減速装置付き電動モータ1によれば、減速機構部100を主軸部材2を囲むように配置すると共に、円環形状の出力軸110を、主軸部材2を囲んでモータ軸線Lと同軸に配置しているので、軸方向にコンパクトな偏平構造の減速装置付き電動モータ1とすることができる。
【0111】
さらに、電動モータ部10の出力を、減速機構部100を介して出力するように構成しており、さらに、この減速機構部100を、偏心軸120の回転を揺動歯車103に伝え、揺動歯車103とリングギヤ102の協働による揺動歯車103の自転を出力歯車104に伝えて、出力軸110を回転させるようにしている。このため、偏平構造の減速機構部100を持ちながら、大減速比の出力を取り出すことができる。
【0112】
そして、減速機構部100を構成する偏心軸120と、コンミテータ30の樹脂ボス部材31における円筒壁35とが、偏心軸120に形成された嵌合凸部122と円筒壁35に形成された嵌合凹部36とを介して連結されている。このため、電動モータ部10と減速機構部100との間に余分なスペースが形成されず、減速装置付き電動モータ1をさらに偏平化できる。
【0113】
また、嵌合凸部122と嵌合凹部36は、偏心回転部121の偏心方向Hと正反対の方向が、アーマチュアコア21の1つのティース21bまたは1つのスロット21sの幅方向の中心線と一致するように、偏心軸120と樹脂ボス部材31とを周方向に位置決めしている。このため、スロット21sを有効利用して、アーマチュアコア21に、偏心回転による振動を打ち消すためのバランス重り(カウンタウエイト)を取り付けることができる。よって、アーマチュアコア21が、バランス重りを取り付けることによってその占有スペースが大きくなることがなく、減速装置付き電動モータ1の偏平化を図りつつ、減速装置付き電動モータ1の駆動時の振動を抑制できる。
【0114】
さらに、偏心軸120の偏心方向Hと正反対の方向が、1つのスロット21sの幅方向の中心線と一致していることにより、アーマチュアコア21等の製造誤差や巻線Wの巻回状態(バランス)により、バランス重りを取り付けるべき場所が多少ずれたとしても、スロット21s内にバランス重りを取り付けることができる。
そして、嵌合凸部122と嵌合凹部36の数がティース21bやスロット21sの数の約数である3つに設定されているので、嵌合凸部122と嵌合凹部36の嵌合の組み合わせに拘わらず、偏心軸120の偏心方向Hとスロット21sとの位置関係を一定に管理することができる。したがって、バランス重りの取り付けが容易であり、アーマチュアコアの占有スペースが大きくなってしまうことも確実に防止できる。
【0115】
そして、偏心軸120における偏心回転部121の嵌合凸部122とは反対側の面12cには、微妙な偏心方向Hが簡単に分かるように、偏心方向Hを示す目印マーク125が設けられている(
図4(c)参照)。このため、複数のスロット21sのうち、どのスロット21sにバランス部材150を設ければよいかが一目瞭然なので、バランス部材150の取り付け作業を容易化できる。
【0116】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、
図20〜
図22に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
図20は、第2実施形態におけるアーマチュアの分解斜視図、
図21は、アーマチュアの斜視図、
図22は、アーマチュアの断面図である。
図20〜
図22に示すように、この第2実施形態のアーマチュア220では、上側インシュレータ223に設けたフック(突起)228の位置が、第1実施形態のフック28の位置と異なる。なお、下側インシュレータ222は、上側インシュレータ223と同一構成であるので、上側インシュレータ223についてのみ説明し、下側インシュレータ222については説明を省略する。
【0117】
この第2実施形態のアーマチュア220では、第1実施形態と同様に、上側インシュレータ223の上面223aに上向きに突出したフック228を設けている。しかしながら、そのフック228を、中央開口部223bの内周縁よりも内方に突出させて配置している。
そして、
図21、
図22に示すように、アーマチュアコア21に圧入嵌合した樹脂ボス部材31のフランジ34の上面にフック228が張り出して、フック228がフランジ34の上面34aを押さえることにより、アーマチュアコア21からの樹脂ボス部材31の抜けを防止を果たすようになっている。
【0118】
この場合のフック228には、樹脂ボス部材31のフランジ34を押さえるフランジ押さえ部228aと、フック機能を果たすように径方向外方に曲がった先端部228bと、先端部228bの首下の電線保持凹所228cとが設けられている。
【0119】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、アーマチュアコア21の中心開口部21cにコンミテータ30(樹脂ボス部材31)を圧入嵌合した後、インシュレータ222、223の上から巻線Wを巻回することによって、フック228で、アーマチュアコア21からコンミテータ30が抜けてしまうことを防止できる。
【0120】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、
図23に基づいて説明する。
図23は、第3実施形態におけるアーマチュアの斜視図である。
ここで、上記第1実施形態および第2実施形態では、樹脂成形品であるインシュレータ23、223にフック28、228を形成した場合を示したが、コンミテータ30の樹脂ボス部材も樹脂成形品であるから、樹脂ボス部材に容易にフックを形成することができる。
【0121】
図23に示すように、この第3実施形態のアーマチュア320では、コンミテータ30の樹脂ボス部材331におけるフランジ34の上面の外周部に、渡り線の引き回し用のフック328を形成している。フック328の先端部328aは、径方向外方へ向けて曲折延出されている。樹脂ボス部材331にフック328を設けたので、インシュレータとしては、フックを持たないインシュレータ322、323を用いている。それ以外は、第1実施形態と同様である。
【0122】
したがって、上述の第3実施形態によれば、インシュレータ322、323にフック328を設けない分、インシュレータ322、323の形状を簡素化でき、インシュレータ322、323の製造コストを低減できる。
【0123】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を、
図24〜
図27に基づいて説明する。
図24は、第4実施形態におけるアーマチュアと偏心軸の関係を示す軸方向から見た図、
図25は、アーマチュアの軸方向から見た要部拡大図、
図26は、アーマチュアの要部側断面図、
図27は、上側インシュレータの斜視図である。
【0124】
上記第1実施形態では、偏心軸120を回転させた場合の振動抑制対策として、偏心方向Hと正反対の方向にあるスロット21sにバランス重りを配置する場合について説明したが、この第4実施形態では、そのバランス重りをより具体的に配置する場合の例を示している。
【0125】
第1実施形態で述べたように、樹脂ボス部材31の円筒壁35の先端部と偏心軸120との連結部には、
図4(a)〜
図4(c)、
図5に示すような、周方向の位置決めを兼ねた嵌合凸部122と嵌合凹部36とが設けられている。
ここで、第4実施形態では、
図24〜
図27に示すように、ティース21bの周囲を覆うインシュレータ423の軸方向の端部(上面423a)に、パテ等の充填スペースを確保するための支持壁423tが設けられている。また、インシュレータ423の鍔部21btに対応する位置の内周面側に、軸方向に沿う凸条部423uが設けられている。
【0126】
支持壁423tにより、この支持壁423tを基準にして、パテ等のバランス部材(樹脂によるカウンタウエイト)160を取り付けることが容易にできる。また、アーマチュア420が回転することにより、バランス部材150、160が遠心力により、アーマチュア420から脱落(飛散)してしまうことを、支持壁423tによって防止することができる。
さらに、凸条部423uにより、スロット21sにバランス部材150を取り付けることが容易にできる。また、凸条部423uも、遠心力によりバランス部材150、160がアーマチュア420から脱落(飛散)してしまうことを防止する支持壁として機能する。
【0127】
なお、上述の第4実施形態では、あくまでスロット21sにバランス部材150を設けることを目的としているが、アーマチュアコア21等の製造誤差や巻線Wの巻回状態によって、ティース21bの軸方向端部に対応する位置に、バランス部材を取り付けることもあり得る。このような場合を想定して、インシュレータ423の軸方向の端部(上面423a)にも支持壁423tを設けてある。
【0128】
また、樹脂ボス部材31の円筒壁35に連結する偏心軸120の端面には、セグメント32aの約数の数(3個)の嵌合凸部122を設けているので、嵌合凸部122の配置の仕方によっては、偏心軸120の回転による振動を低減することが可能である。つまり、偏心軸120自体に、当該偏心軸120の偏心した質量と揺動歯車103の質量とをバランスするバランス部材150を設けておくこともできる。また、嵌合凸部122を偏心方向Hとは反対側のみに設け、嵌合凸部122自体をバランス部材として機能させることも可能である。
【0129】
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を、
図28に基づいて説明する。
図28は、第5実施形態のアーマチュアの側断面図である。
ここで、上述の第1実施形態では、コンミテータ30のセグメント32aおよびライザ32bを、樹脂ボス部材31の上側に共に配置していた。これに対し、この第5実施形態のアーマチュア520では、
図28に示すように、コンミテータ530のセグメント金属片532のライザ32bを、樹脂ボス部材531の下面側まで延ばして露出させている。セグメント532aは、第1実施形態と同様に、樹脂ボス部材531の円筒壁535の外周面に配置している。
【0130】
このように、アーマチュアコア21の軸方向一方の面(上側の面)にセグメント532aを配置する一方、このセグメント532aとは反対側となるアーマチュアコア21の軸方向他方の面(下側の面)にライザ532aを配置している。このため、巻線W(アーマチュアコイル24の引出線)とライザ532aとの接続作業を、セグメント532aと反対側で行うことができる。よって、セグメント532aと巻線Wの無用な接触や干渉を避けることができ、節煙性確保に有利となる。
【0131】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速装置付き電動モータ1を構成する電動モータ部10は、モータマグネット13の磁極数が6個、アーマチュア20のスロット21sが9個、コンミテータ30のセグメント32aが9個のいわゆる6極9スロット9セグメントの集中巻き直流モータとして構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータマグネット13の磁極数、スロット数、およびセグメント数は、任意に設定することが可能である。
【0132】
また、上述の実施形態では、アーマチュアコア21は、複数の鋼板を軸方向に積層することで構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、軟磁性粉を加圧成形することにより、アーマチュアコア21を形成してもよい。
さらに、上述の実施形態では、コンミテータ30、540は、アーマチュアコア21から軸方向に突出した樹脂ボス部材31、331、531の円筒壁35、535の外周面に、セグメント32aが配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、円板状のコンミテータの一面にセグメントが放射状に配置される、いわゆるディスク型コンミテータにも、上述の実施形態を適用することが可能である。