(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明に係る減速機構付きモータの平面図を、
図2は
図1のA−A線に沿う断面図を、
図3は
図1の減速機構付きモータの分解斜視図を、
図4はギヤケースの詳細構造を示す斜視図を、
図5はウォームホイールの詳細構造を示す斜視図を、
図6はドライブプレートの詳細構造を示す斜視図を、
図7はロックプレートの詳細構造を示す斜視図を、
図8はクラッチ機構の動作を説明する
図1のB−B線に沿う断面図をそれぞれ示している。
【0016】
図1に示すように、モータ装置としての減速機構付きモータ10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置(図示せず)の駆動源として用いられ、ウィンドガラスを昇降させるウィンドレギュレータ(図示せず)を駆動するものである。減速機構付きモータ10は、車両のドア(図示せず)の内部に形成される幅狭の空間内に設置されるため、
図2の上下方向の厚み寸法が薄くされている。減速機構付きモータ10は、モータ部20とギヤ部30とを備え、モータ部20およびギヤ部30は、複数の締結ネジ(図示せず)により取り付けられることで一体化されている。
【0017】
駆動源としてのモータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたヨーク21を備えている。
図3に示すように、ヨーク21の内側には6個の板状のマグネット22が固定されており、各マグネット22はヨーク21の周方向に沿って等間隔(60度間隔)で配置されている。また、各マグネット22の内側には、コイル(図示せず)が所定の巻き方および巻き数で巻装されたアーマチュア23が回転自在に設けられている。なお、アーマチュア23のスロット数は9個となっている。
【0018】
アーマチュア23の回転中心には、アーマチュア軸24が貫通して固定されている。アーマチュア軸24のアーマチュア23に近接する部分には、コンミテータ25が固定されている。コンミテータ25には、アーマチュア23に巻装されたコイルの端部が電気的に接続されている。コンミテータ25の外周部分には、ブラシホルダ26に移動自在に設けられた一対のブラシ(図示せず)が摺接するようになっている。各ブラシは、ブラシホルダ26に設けられたバネ部材(図示せず)によりコンミテータ25に所定圧でそれぞれ押圧されている。これにより、各ブラシにコントローラ(図示せず)から駆動電流を供給することでアーマチュア23に電磁力が発生し、アーマチュア軸24が所定の回転方向および回転数で回転される。
【0019】
ここで、ブラシホルダ26には、一対の導電部材27が装着されており、各導電部材27の一端側は、各ブラシにそれぞれ電気的に接続されている。一方、各導電部材27の他端側はオス型端子とされ、車両側コネクタのメス型端子(図示せず)に電気的に接続されるようになっている。ブラシホルダ26の断面形状は略小判形状に形成され、これにより減速機構付きモータ10の薄型化が図られている。ブラシホルダ26は、ギヤケース31のブラシホルダ収容部33に収容される。なお、ブラシホルダ収容部33とヨーク21との間には、略小判形状に形成されたシール部材Sが設けられている。これにより、ヨーク21の内部やブラシホルダ収容部33の内部に、雨水等の異物が進入するのを防止できる。
【0020】
アーマチュア軸24の軸方向基端側(
図3中左側)は、ヨーク21の小径底部21aの内側に固定された第1軸受(ラジアル軸受)B1によって回転自在に支持されている。アーマチュア軸24の軸方向先端側(
図3中右側)には、ギヤケース31の内部に収容される減速機構SD(
図2参照)を形成するウォームギヤ28が一体に設けられている。ウォームギヤ28は、アーマチュア軸24の軸方向先端側に転造加工等によって螺旋状に形成されている。
【0021】
また、アーマチュア軸24のコンミテータ25とウォームギヤ28との間には、第2軸受B2が固定されている。この第2軸受B2は、内輪,外輪および複数の鋼球(何れも図示せず)を備えたボールベアリング(玉軸受)とされ、第2軸受B2の内輪がカシメや止め輪等(図示せず)によりアーマチュア軸24の外周部分に固定されている。なお、第2軸受B2の外輪は、ギヤケース31の軸受固定部36に、ストッパプレート29によって抜け止めされた状態で固定されている。
【0022】
ギヤ部30は、ハウジングとしてのギヤケース31を備えている。ギヤケース31は、
図4に示すように、アルミニウム等の金属材料を鋳造成形することで略椀状に形成され、第1開口部32aを有するケース本体部32と、第2開口部33aを有するブラシホルダ収容部33とを備えている。ケース本体部32は、略円盤状に形成された底部32bと、底部32bを囲うようにして立設された壁部32cとを有している。ここで、第2開口部33aの開口方向は、第1開口部32aの開口方向に対して直交する方向となっている。
【0023】
ケース本体部32における底部32bの略中央部分には、軸部材としてのセンターシャフト34が一体に設けられている。センターシャフト34は、ギヤケース31を鋳造成形する際に、ギヤケース31に一体成形されるものである。センターシャフト34は、壁部32cが立ち上がる方向(図中上方)に向けて延びており、その基端側は底部32bに連結されている。センターシャフト34の長さ寸法は、壁部32cの高さ寸法よりも長い長さ寸法に設定されている。そのため、センターシャフト34の先端側は、ケース本体部32の外部に配置されている(
図2参照)。
【0024】
センターシャフト34は、ウォームホイール41およびドライブプレート42(
図2参照)を回転自在に支持するもので、センターシャフト34の先端側には、固定ナットNT(
図2参照)がネジ結合されている。これにより、ウォームホイール41およびドライブプレート42のセンターシャフト34からの抜け止めがなされる。つまり、センターシャフト34は、固定ナットNTと協働して、ウォームホイール41およびドライブプレート42の軸方向への移動を規制している。
【0025】
センターシャフト34の基端側の径方向外側で、かつ底部32bの略中央部分には、押付部としての環状の傾斜面35が設けられている。この傾斜面35においても、センターシャフト34とともに、ギヤケース31を鋳造成形する際に、ギヤケース31に一体成形されるものである。つまり、センターシャフト34および傾斜面35は、互いに一体成形されて単一部材を形成する。傾斜面35は、底部32bを、第1開口部32a側とは反対側(図中下側)に窪ませることにより形成されている。傾斜面35は、第1開口部32a側に向かうにつれて徐々に拡開するように、略すり鉢状に形成されている。センターシャフト34と傾斜面35とは同軸上に配置され、傾斜面35には、センターシャフト34の軸方向に延びるようにして複数の溝部35aが設けられている。これらの溝部35aは、傾斜面35の周方向に沿って等間隔で設けられ、その内部にはグリス(図示せず)が保持されている。つまり、溝部35aはグリス溜めとして機能する。これにより、ロックプレート43の摺動面43d(
図2参照)が、傾斜面35に対して長期に亘りスムーズに摺動可能となっている。ここで、傾斜面35はクラッチ機構CL(
図8参照)を形成しており、当該クラッチ機構CLは、減速機構付きモータ10の逆転防止機能を発揮する。
【0026】
図2に示すように、センターシャフト34の基端側、および傾斜面35の第1開口部32a側とは反対側には、断面形状が略円弧形状に形成された第1円弧部34aおよび第2円弧部35bがそれぞれ設けられている。つまり、センターシャフト34と傾斜面35との間の断面形状は略円弧形状となっている。これらの第1円弧部34aおよび第2円弧部35bは、センターシャフト34の基端側、および傾斜面35の第1開口部32a側とは反対側に応力が集中するのを緩和(応力を分散)させる機能を有し、当該部分に亀裂(クラック)等が発生するのを防止する役割を果たしている。
【0027】
第1円弧部34aは、底部32bのウォームホイール摺動面SLを基準として、第1開口部32a側とは反対側に配置されている。これにより、センターシャフト34の外周部分をストレート形状として、ウォームホイール41のセンターシャフト34に対するスムーズな回転を確保している。また、第2円弧部35bは、傾斜面35の第1開口部32a側とは反対側に配置されている。これにより、傾斜面35を平坦面形状として、ロックプレート43の傾斜面35に対するスムーズな摺動を確保している。
【0028】
図4に示すように、ケース本体部32の側方には、断面形状が略小判形状に形成されたブラシホルダ収容部33が一体成形されている。これにより、断面形状が略小判形状に形成されたブラシホルダ26(
図3参照)が、ブラシホルダ収容部33の内部にがたつくこと無く収容される。ケース本体部32の内部で、かつブラシホルダ収容部33と対向する部分には、軸受固定部36が設けられている。この軸受固定部36においてもケース本体部32に一体成形されている。
【0029】
また、軸受固定部36のブラシホルダ収容部33側(図中左側)には、ストッパプレート29(
図3参照)が差し込まれる差込孔36aが設けられている。これにより、アーマチュア軸24に固定された第2軸受B2(
図3参照)を軸受固定部36の内部に装着した状態のもとで、ストッパプレート29を差込孔36aに差し込むことで、アーマチュア軸24がギヤケース31に対して回転自在に支持される。
【0030】
ケース本体部32における壁部32cの第1開口部32a寄りの部分には、カバー装着凹部37が設けられている。カバー装着凹部37には、カバー部材39の外周縁部39a(
図2参照)が入り込むようになっている。なお、カバー装着凹部37と外周縁部39aとの間には、減速機構付きモータ10の組み立て時において、ゴム等の弾性材料よりなるシール部材(図示せず)が組み込まれるようになっている。これにより、ギヤケース31のシール性(密閉性)が確保される。
【0031】
また、ケース本体部32における壁部32cの第1開口部32a寄りの部分には、3つの固定部38が一体に設けられている。これらの固定部38においても、ケース本体部32に一体成形されている。各固定部38は、ケース本体部32の外側に突出して設けられ、センターシャフト34および傾斜面35を囲うようにして略等間隔(120度間隔)で配置されている。各固定部38には、固定ボルト(図示せず)が貫通する貫通孔38aがそれぞれ設けられている。これにより、減速機構付きモータ10が、車両のドア内にある固定部(図示せず)に強固に固定される。
【0032】
図2および
図3に示すように、ケース本体部32の第1開口部32aは、カバー部材39によって閉塞されている。カバー部材39は、プレス加工された鋼板、もしくは樹脂によって略円盤状に形成されている。カバー部材39の外周部分には、略直角に折り曲げて形成された外周縁部39aが設けられている。また、カバー部材39の略中央部分には、ドライブプレート42が挿通される挿通孔39bが設けられ、当該挿通孔39bの径方向内側には、ゴム等の弾性材料よりなる環状シール40が装着されている。環状シール40は、例えば、加硫接着等の接着手段により挿通孔39bに装着されている。なお、環状シール40は、カバー部材39とドライブプレート42の本体部42aとの間を密閉しており、これにより、ギヤケース31のシール性(密閉性)が確保される。
【0033】
図2に示すように、ギヤケース31に回転自在に収容される減速機構SDは、アーマチュア軸24に一体に設けたウォームギヤ28と、プラスチック等の樹脂材料により略円盤状に形成されたウォームホイール41とから形成されている。ウォームホイール41は、本発明における第1回転体を構成しており、ウォームホイール41の外周部分には、ウォームギヤ28が噛み合わされる歯部41aが形成されている。これにより、アーマチュア軸24の回転速度が減速されて、高トルク化された回転力がウォームホイール41から出力される。
【0034】
図5に示すように、ウォームホイール41の回転中心には、センターシャフト34(
図2参照)が摺動自在に挿通される挿通孔41bが設けられている。また、
図2に示すように、ウォームホイール41の底部32bと対向する部分には、底部32bのウォームホイール摺動面SL上を摺動する環状突起41cが設けられている。環状突起41cは、ウォームホイール摺動面SLに対して略線接触するようになっている。これにより、ウォームホイール41のギヤケース31に対する摺動抵抗の増大が抑えられて、ウォームホイール41はスムーズに回転することができる。
【0035】
ウォームホイール41の径方向に沿う歯部41aと挿通孔41bとの間には、
図5に示すように、略扇形形状に形成された3つの貫通孔41dが設けられている。各貫通孔41dは、ウォームホイール41の周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。各貫通孔41dには、
図8に示すように、ウォームホイール41の周方向に互いに対向する一対の第1当接面41eが設けられている。これらの第1当接面41eは、ウォームホイール41の軸方向に沿う環状突起41c側とは反対側に配置されている。また、各貫通孔41dには、ウォームホイール41の周方向に互いに対向する一対の第2当接面41fが設けられている。これらの第2当接面41fは、ウォームホイール41の軸方向に沿う環状突起41c側に配置されている。
【0036】
ここで、各第1当接面41eの離間距離は、各第2当接面41fの離間距離よりも短く設定されている。そして、各第1当接面41eは、ドライブプレート42に設けた動力伝達突起42cの各第3当接面42dに当接され、各第2当接面41fは、ロックプレート43に設けたロックプレート突起43bの各第4当接面43eに当接されるようになっている。なお、
図8においては、カバー部材39の図示を省略している。
【0037】
ウォームホイール41は、モータ部20のアーマチュア軸24(
図3参照)によって回転され、ドライブプレート42は、ウォームホイール41によって回転される。ドライブプレート42は、本発明における第2回転体を構成しており、その一部がギヤケース31に回転自在に収容されている。ドライブプレート42は、プラスチック等の樹脂材料により、段付きの略円盤状に形成されている。ドライブプレート42は、
図6に示すように、大径の本体部42aと、本体部よりも小径のピニオン部42bとを備えている。
【0038】
また、
図2に示すように、本体部42aのウォームホイール41側(図中下側)には、3つの動力伝達突起42c(図示では1つのみ示す)が一体に設けられている。これらの動力伝達突起42cは、ウォームホイール41に設けた各貫通孔41dに対応して設けられ、本体部42aの周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。ドライブプレート42の周方向に沿う各動力伝達突起42cの幅寸法は、ウォームホイール41の周方向に沿う各第1当接面41eの離間距離よりも短い寸法に設定されている。つまり、
図8に示すように、動力伝達突起42cは貫通孔41dに対して余裕を持って入り込むことができ、ドライブプレート42およびウォームホイール41は、互いの回転方向に「遊び」を有している。そして、本体部42aの周方向に沿う動力伝達突起42cの両側には、貫通孔41dの各第1当接面41eにそれぞれ当接し得る第3当接面42dが設けられている。
【0039】
動力伝達突起42cの先端側、つまりドライブプレート42の軸方向に沿う本体部42a側とは反対側は、断面が略V字形状(楔形状)に形成されている。動力伝達突起42cの先端側には、一対の傾斜カム面42eが設けられている。各傾斜カム面42eは、動力伝達突起42cを先端側に向かうに連れて徐々に先細り形状とするようにそれぞれ傾斜されている。ここで、各傾斜カム面42eを備える動力伝達突起42cは、クラッチ機構CL(
図8参照)を形成している。
【0040】
ピニオン部42bには、ウィンドレギュレータを形成するギヤ(図示せず)が噛み合わされる。これにより、ドライブプレート42の回転力がウィンドレギュレータに伝達され、ひいてはウィンドガラス(図示せず)が昇降される。ピニオン部42bの先端側、つまりピニオン部42bの軸方向に沿う本体部42a側とは反対側には、本体部42a側に窪んだナット凹部42fが設けられている。このナット凹部42fには、固定ナットNT(
図2参照)の一部が入り込むようになっている。これによっても、減速機構付きモータ10の薄型化が図られている。
【0041】
また、ドライブプレート42の回転中心には、センターシャフト34(
図2参照)が摺動自在に挿通される挿通孔42gが設けられている。挿通孔42gは、本体部42aおよびピニオン部42bの双方を貫通するようにして設けられている。
【0042】
ウォームホイール41の軸方向に沿う底部32b側には、略円盤状に形成されたロックプレート43が設けられている。ロックプレート43は、
図7に示すように、鋼材を切削加工等することにより所定形状に形成され、環状のロックプレート本体43aと、3つのロックプレート突起43bとを備えている。ここで、ロックプレート43は、傾斜面35(
図4参照)および動力伝達突起42c(
図6参照)とともに、クラッチ機構CLを形成している。
【0043】
ロックプレート本体43aの径方向内側には、センターシャフト34が貫通する大径孔43cが設けられている。大径孔43cは、センターシャフト34の直径寸法よりも大径となっており、センターシャフト34が余裕を持って貫通できるようになっている。
図2に示すように、減速機構付きモータ10を組み立てた状態のもとで、大径孔43cには、センターシャフト34とともに、第1円弧部34aの一部も余裕を持って入り込んでいる。つまり、ロックプレート43のギヤケース31に対する回転時において、ロックプレート43は、センターシャフト34および第1円弧部34aの双方に干渉することが無い。
【0044】
ロックプレート本体43aの径方向外側には、ギヤケース31に設けた傾斜面35に摺接する摺動面43dが設けられている。摺動面43dは、
図2に示すように、傾斜面35に対して略全面で摺接するように傾斜されている。ここで、溝部35aにはグリスが溜められている。したがって、摺動面43dが傾斜面35に押し付けられていない場合には、ロックプレート43はギヤケース31に対してスムーズに回転することができる。
【0045】
ロックプレート本体43aには、当該ロックプレート本体43aの軸方向に向けて突出する3つのロックプレート突起43bが一体に設けられている。具体的には、各ロックプレート突起43bは、ロックプレート43の軸方向に沿う摺動面43d側とは反対側に突出されている。各ロックプレート突起43bは、ドライブプレート42の各動力伝達突起42c(
図6参照)と同様に、ウォームホイール41に設けた各貫通孔41dに対応して設けられ、ロックプレート本体43aの周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。ロックプレート43の周方向に沿う各ロックプレート突起43bの幅寸法は、ウォームホイール41の周方向に沿う各第2当接面41fの離間距離よりも短い寸法に設定されている。つまり、
図8に示すように、ロックプレート突起43bは貫通孔41dに対して余裕を持って入り込むことができ、ロックプレート43およびウォームホイール41は、互いの回転方向に「遊び」を有している。そして、ロックプレート本体43aの周方向に沿うロックプレート突起43bの両側には、貫通孔41dの各第2当接面41fにそれぞれ当接し得る第4当接面43eが設けられている。
【0046】
ロックプレート突起43bには、減速機構付きモータ10を組み立てた状態のもとで、動力伝達突起42cの先端側が、センターシャフト34の軸方向から突き合わされている。つまり、ロックプレート43は、ドライブプレート42とギヤケース31との間に設けられている。ロックプレート突起43bのドライブプレート42側には、一対の傾斜ロックプレート面43fが設けられ、各傾斜ロックプレート面43fは、動力伝達突起42cの各傾斜カム面42eが略全面で接触するようになっている。したがって、ロックプレート突起43bは、動力伝達突起42c(係合凸部)が係合される係合凹部として機能する。各傾斜ロックプレート面43fの傾斜角度と、各傾斜カム面42eの傾斜角度とは、同じ傾斜角度に設定されている。これにより、
図8に示すように、互いの中心線Cが一致したクラッチ機構CLの「中立状態」においては、各傾斜カム面42eと各傾斜ロックプレート面43fとが、それぞれ互いに略全面で接触した状態とされる。
【0047】
次に、以上のように形成した減速機構付きモータ10の動作、特にクラッチ機構CLの動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0048】
[通常動作]
例えば、ウィンドガラスを閉じるために減速機構付きモータ10を正回転させると、ウォームギヤ28の回転がウォームホイール41に伝達される。これにより、
図8に示すように、ウォームホイール41が破線矢印Rの方向に回転される。すると、ウォームホイール41が、ドライブプレート42およびロックプレート43に対して相対回転し、ウォームホイール41の第1当接面41eがドライブプレート42の第3当接面42dに当接し、ウォームホイール41の第2当接面41fがロックプレート43の第4当接面43eに当接する。このとき、動力伝達突起42cの中心線Cと、ロックプレート突起43bの中心線Cとは、
図8に示すように一致した状態、つまり「中立状態」となっており、各傾斜カム面42eと各傾斜ロックプレート面43fとが、それぞれ互いに略全面で接触した状態となっている。これにより、減速機構付きモータ10によってウォームホイール41が回転されるとドライブプレート42およびロックプレート43は、互いに最も近付いた位置関係に保たれた状態で同時に回転される。よって、ロックプレート43の摺動面43dはギヤケース31の傾斜面35に押し付けられることが無いので、ロックプレート43はギヤケース31に対してスムーズに回転できる。このように、減速機構付きモータ10の通常動作時には、ウォームホイール41の回転力がドライブプレート42に効率良く伝達されて、ウィンドガラスがスムーズに閉じられる。なお、ウィンドガラスを開けるときの減速機構付きモータ10の逆回転時においても、上述と同様にウィンドガラスはスムーズに開けられる。
【0049】
[外力負荷状態]
例えば、閉じられたウィンドガラスに、こじ開けるように外力が加えられると、その外力は、ウィンドレギュレータ(図示せず)を介してドライブプレート42に伝達される。すると、破線矢印Rの方向とは逆の方向にドライブプレート42が回転しようとする。このとき、ウォームホイール41とドライブプレート42とは互いの回転方向に遊びを有しており、また、ウォームホイール41とロックプレート43とも互いの回転方向に遊びを有しているため、ウォームホイール41より先にドライブプレート42が回転しようとする。そして、これにより、ドライブプレート42がロックプレート43に対して相対回転する。このとき、ドライブプレート42の一方側(図中左側)の傾斜カム面42eが、ロックプレート43の一方側(図中左側)の傾斜ロックプレート面43fに対して摺動し、かつ一方側の傾斜ロックプレート面43fを登ろうとする。すると、センターシャフト34の軸方向に向けて、ドライブプレート42からロックプレート43に押圧力F1が作用して、ひいてはロックプレート43の摺動面43dが傾斜面35に対して押圧力F2で押し付けられる。これにより、ロックプレート43とギヤケース31との間の摩擦力が大きくなり、ロックプレート43にブレーキ力が発生する。このように、ドライブプレート42に外力が負荷されると、ロックプレート43のギヤケース31に対する相対回転ができなくなる。このように、ロックプレート43はドライブプレート42の外力による回転を規制する。したがって、ドライブプレート42の逆転が防止されて、ウィンドガラスの無理なこじ開けを未然に防ぐことができる。
【0050】
ドライブプレート42に外力が負荷されている状態においては、ドライブプレート42からロックプレート43に作用する押圧力F1の反力F3(F1≒F3)が、固定ナットNTに作用する。これにより、センターシャフト34は、図中上方に引っ張られることになる。このとき、反力F3が作用するセンターシャフト34と、押圧力F2が作用する傾斜面35とは、アルミニウム製のギヤケース31に一体成形されているため、ギヤケース31の剛性は十分であり、ギヤケース31が変形するようなことが無い。
【0051】
また、センターシャフト34と傾斜面35との間には、応力を分散させる第1円弧部34aと第2円弧部35bとが配置されているため(
図2参照)、反力F3によって、センターシャフト34の基端部分周辺や傾斜面35の周辺に、亀裂等が発生するようなことも無い。
【0052】
以上詳述したように、本実施の形態に係る減速機構付きモータ10によれば、ウォームホイール41およびドライブプレート42を回転自在に支持し、かつウォームホイール41およびドライブプレート42の軸方向への移動を規制するセンターシャフト34と、ドライブプレート42への外力の負荷によりセンターシャフト34の軸方向からロックプレート43が押し付けられる傾斜面35とを一体成形したので、ギヤケース31の厚み寸法を厚くすること無く、ロックプレート43の作動時におけるギヤケース31の変形を抑制できる。
【0053】
また、本実施の形態に係る減速機構付きモータ10によれば、ギヤケース31をアルミニウム製とし、センターシャフト34および傾斜面35をギヤケース31に一体成形したので、ギヤケース31に対するセンターシャフト34および傾斜面35の周辺の剛性を高めて、ギヤケース31に対するセンターシャフト34および傾斜面35のブレやがたつきを抑制できる。したがって、従前のようなセンターシャフトとギヤケースとが別体の場合に比して、部品点数の削減は勿論のこと、モータ作動音を大幅に低減することができる。
【0054】
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図9は実施の形態2に係るギヤケースの詳細構造を示す斜視図を、
図10(a),(b)は
図9の単一部材を示す斜視図および平面図をそれぞれ示している。
【0056】
実施の形態2においては、実施の形態1に比して、
図9に示すように、ギヤケース(ハウジング)50をプラスチック等の樹脂材料で形成するとともに、
図10に示すように、センターシャフト(軸部材)61と傾斜面(押付部)62とを有する単一部材60を備えた点が異なっている。具体的には、ギヤケース50は、溶融したプラスチック材料を射出成形等することで所定形状に形成され、実施の形態1と同様に、ケース本体部32とブラシホルダ収容部33とを備えている。
【0057】
単一部材60は、
図10に示すように、鋼材(金属材料)を切削加工等することにより所定形状に形成され、センターシャフト61と傾斜面62との間には、環状の基部63が設けられている。この環状の基部63は、センターシャフト61と傾斜面62とを連結する役割を果たしており、このように実施の形態2においても、センターシャフト61と傾斜面62とが一体成形されている。
【0058】
なお、単一部材60には、実施の形態1と同様に、傾斜面62に複数の溝部35aが設けられている。また、センターシャフト61と傾斜面62とを連結する基部63には、第1円弧部34aおよび第2円弧部35bがそれぞれ設けられている。
【0059】
基部63には、その周方向に沿うようにして、3つの貫通孔63aが設けられている。これらの貫通孔63aは、基部63の周方向に沿って等間隔(120度間隔)で配置され、各貫通孔63aの内部には、単一部材60をギヤケース50にインサート成形した後に、樹脂材料がそれぞれ配置されるようになっている。これにより、各貫通孔63aの内部で硬化された樹脂材料がアンカーとして機能し、ギヤケース50に対して単一部材60が強固に固定されて、ギヤケース50に対する単一部材60のがたつきが確実に防止される。このように、実施の形態2においては、センターシャフト61と傾斜面62とを一体化してなる単一部材60の一部、つまり基部63の部分が、ギヤケース50にインサート成形により埋設されている。
【0060】
ここで、
図9においては単一部材60に網掛けを施しており、ギヤケース50と単一部材60との材質の違い(樹脂材料または鋼材)を判り易くしている。なお、基部63に設ける貫通孔63aの数は3つに限らず任意であって、貫通孔63aの数は、単一部材60に十分な剛性が得られ、かつ上述のアンカー効果が十分に得られるように設定する。
【0061】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。つまり、実施の形態2においてクラッチが作動する場合には、単一部材60のみに反力が作用する。したがって、ギヤケース50を撓ませようとする力は作用しない。よって、ギヤケース50の厚み寸法を厚くすること無く、クラッチの作動時におけるギヤケース50の変形を抑制できる。
【0062】
次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態2と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
図11(a),(b)は実施の形態3に係る単一部材を示す斜視図および平面図を示している。
【0064】
実施の形態3においては、実施の形態2に比して、
図11に示すように、センターシャフト61と傾斜面62とを有する単一部材70の形状のみが異なっている。具体的には、実施の形態2の単一部材60(
図10参照)では、基部63に3つの貫通孔63aを設けて「アンカー効果」を発揮させていたが、実施の形態3の単一部材70では、各貫通孔に替えて、傾斜面62の外周側に、基部63の径方向外側に突出させるように複数の突起71を設けている。これらの突起71は、ギヤケース50にインサート成形により埋設され、実施の形態2の各貫通孔63aと同様に「アンカー効果」を発揮する。
【0065】
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態2と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態3においては、ギヤケース50に単一部材70をインサート成形する際に、基部63のセンターシャフト61側に樹脂材料が流れ込まないため、実施の形態2に比して使用する樹脂材料を少なくできる。よって、材料費および重量の低減を図ることができる。
【0066】
次に、本発明の実施の形態4について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態2と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
図12(a),(b)は実施の形態4に係る単一部材を示す斜視図および平面図を、
図13は実施の形態4に係るギヤケースの詳細構造を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0068】
実施の形態4においては、実施の形態2に比して、
図12に示すように、センターシャフト61と傾斜面62とを有する単一部材80の形状が異なり、さらには単一部材80のギヤケース50への固定構造が異なっている。実施の形態2の単一部材60(
図10参照)では、基部63に3つの貫通孔63aを設けていたが、実施の形態4の単一部材80では、各貫通孔に替えて、傾斜面62の外周側に、例えば、ローレット加工等により無数の凹凸を備えた凹凸面81を設けている。また、
図13に示すように、ギヤケース50の底部32bには、固定凹部82が設けられている。そして、この固定凹部82に凹凸面81を圧入することで、単一部材80がギヤケース50にがたつくこと無く強固に固定される。
【0069】
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態2と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態4においては、ギヤケース50に単一部材80を圧入により固定するので、インサート成形機等の大掛かりな成形装置が不要となり、製造コストをより低減することが可能となる。また、実施の形態3と同様に、使用する樹脂材料を少なくでき、ひいては材料費および重量の低減を図ることができる。なお、実施の形態4においてクラッチが作動する場合においても、単一部材80のみに反力が作用する。そのため、ギヤケース50から単一部材80が外れるようなことは無い。
【0070】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、モータ装置としての減速機構付きモータ10を、車両に搭載されるパワーウィンド装置の駆動源として用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置やパワーシート装置等の駆動源としても用いることができる。要は、開閉体やシート等の駆動対象物を所定の基準位置で固定する必要がある装置の駆動源、つまり逆転防止機能を必要とする装置の駆動源として用いることができる。
【0071】
また、上記各実施の形態においては、モータ部(駆動源)20として、ブラシ付きの電動モータを採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ブラシレスの電動モータ等を採用することもできる。