(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態であるワイパシステムの全体構成を示す説明図である。
図1のワイパシステムは対向払拭型の装置構成となっており、運転席側(DR側)のワイパアーム1aと、助手席側(AS側)のワイパアーム1bが対向するように配置されている。各ワイパアーム1a,1bには、ワイパブレード2a,2b(以下、ブレード2a,2bと略記する)がそれぞれ取り付けられている。ブレード2a,2bは、ワイパアーム1a,1b内に内装された図示しないばね部材等によりフロントガラス3に弾圧的に接触している。
【0018】
車体には2つのワイパ軸(ピボット軸)4a,4bが設けられている。ワイパアーム1a,1bは、その基端部でワイパ軸4a,4bにそれぞれ取り付けられている。なお、符号における「a,b」は、それぞれ運転席側と助手席側に関連する部材や部分等であることを示している。ワイパアーム1a,1bを揺動運動させるため、当該システムにはPWM duty制御される2つ電動モータ6a,6b(以下、モータ6a,6bと略記する)が設けられている。モータ6a,6bは、モータ本体7と減速機構8とによって構成されている。
【0019】
モータ6a,6bは、ワイパ制御装置(制御手段)10a,10bによって駆動制御され正逆回転する。モータ6aを駆動制御するワイパ制御装置10aは、車両側のコントローラであるECU11と車載LAN12を介して接続されている。ECU11からワイパ制御装置10aに対しては、ワイパスイッチのON/OFFや、Lo,Hi,INT(間欠作動)などのスイッチ情報やエンジン起動情報などがLAN12を介して入力される。ワイパ制御装置10a,10b同士の間は通信線13にて接続されている。
【0020】
図1のワイパシステムでは、ブレード2a,2bの位置情報に基づいてモータ6a,6bがフィードバック制御(PI制御)される。ここでは、ブレード2a,2bの位置に対応して、両ブレードの目標速度が設定されており、予めマップ等の形でワイパ制御装置10a,10b内に格納されている。ワイパ制御装置10a,10bは、ブレード2a,2bの現在位置を検出すると共に、ワイパ軸4a,4bの回転速度からブレード2a,2bの移動速度を検出する。そして、現在のブレード2a,2bの速度と、当該位置におけるブレード2a,2bの目標速度とを比較し、目標速度と現在速度との差に応じて、適宜、モータ6a,6bを制御する。
【0021】
このようなフィードバック制御を行うため、モータ6a,6bには、第1センサマグネット31を有する第1センサ部14と、第2センサマグネット32を有する第2センサ部15が設けられている(以下、第1センサマグネット31はマグネット31、第2センサマグネット32はセンサマグネット32と略記する)。
図2は、モータ6aの構成を示す説明図である。なお、モータ6bも同様の構成となっている。
図2に示すように、モータ6aのモータ本体7には、ロータ33が回転自在に配されている。ロータ33の回転軸34には、ウォーム35が形成されている。ウォーム35は、減速機構8に配されたウォームホイール(減速ギヤ)36と噛合している。ウォームホイール36は、ワイパアーム1aに接続されたワイパ軸4aに取り付けられている。
【0022】
第1センサ部14のセンサマグネット31はリング状に形成されており、回転軸34に取り付けられている。センサマグネット31には、周方向に沿って、複数個の磁極(N,S極)が等分に形成されている。第1センサ部14では、センサマグネット31の外周近傍に、径方向に離間して2個の第1磁気センサ37,38(以下、磁気センサ37,38と略記する)が配置されている。磁気センサ37,38は、センサマグネット31の周方向に沿って、90°離れた位置に設けられている。磁気センサ37,38には、交番磁界検出用のホールICが使用され、両センサからは90°位相のずれたパルス信号が送信される(A相・B相)。磁気センサ37,38から出力されるパルスのカウント数からは、ワイパアーム1a,1bの作動量(作動角度)が算出される。また、信号の出力順序からは、回転軸34の回転方向が検出され、ワイパアーム1a,1b(ブレード2a,2b)の動作方向(往路か復路か)が把握される。
【0023】
第2センサ部15のセンサマグネット32もまたリング状に形成されており、ウォームホイール36に取り付けられている。センサマグネット32には、周方向に沿って、2個の磁極32Nと32Sが形成されている。センサマグネット32は不等ピッチに着磁されており、磁極32Nが300°、磁極32Sが60°に形成されている。第2センサ部15では、センサマグネット32の端面近傍に、軸方向に離間して、2個の第2磁気センサ39,40(以下、磁気センサ39,40と略記する)が配置されている。磁気センサ39,40は、センサマグネット32の周方向に沿って30°離れた位置に設けられている。磁気センサ39,40には、一方向磁界検出用のホールICが使用され、例えば、S極が近接したとき所定の検出信号が出力される。ウォームホイール36が回転すると、それと共にセンサマグネット32も回転し、磁気センサ39,40に対向するセンサマグネット32の磁極が変化する。磁気センサ39,40からはその極性(N極orS極)に応じた信号が出力される(C相・D相)。
【0024】
当該ワイパシステムでは、磁気センサ39,40から出力されるC相・D相の信号の組み合わせにより、両モータ6a,6bのセンサマグネット32の回転位置、すなわち、ブレード2a,2bが存在する位置(エリア)が検出される。
図3は、磁気センサ39,40からの出力(極性判定)とブレード2a,2bが存在するエリアとの関係を示す表である。
図3に示すように、磁気センサ39,40による極性判定の組み合わせには、(N,S),(S,S),(S,N),(N,N)の4組が存在する。前述のように、ウォームホイール36はワイパ軸4aに取り付けられており、センサマグネット32はワイパ軸4aと共に回転する。すなわち、センサマグネット32の回転角度は、ワイパアーム1a,1b(ブレード2a,2b)の動作角度に対応している。
【0025】
そこで、ブレード2a,2bの動作角度に対応して4つのエリアを設け、各エリアごとに磁気センサ39,40によって検出される極性の組み合わせが変化するようセンサマグネット32の磁極を設定する。
図3はその対応関係を示したものである。
図1に示すように、ここでは、ブレード2a,2bが存在するエリアとして次の4つの領域が設定されている。
(1)格納位置S〜下反転位置L
(2)下反転位置L〜中央位置C
(3)中央位置C〜上反転手前位置PU
(4)上反転手前位置PU〜上反転位置U
この場合、エリア(1),(2)では、ブレード2a,2bの払拭範囲が重複しており、両者が干渉する可能性がある。これに対し、エリア(3)(4)では、ブレード2a,2bの払拭範囲は重複しておらず、両者は干渉しない。また、エリア(3)(4)の境界には、ブレード2a,2bの絶対位置を検出するため、リセットポジションRが設けられている。
【0026】
各エリア(1)〜(4)では、センサマグネット32にて検出される極性の組み合わせが異なっている。
図3に示すように、エリア(1)では(N,S)、同(2)では(S,S)、同(3)では(S,N)、同(4)では(N,N)が磁気センサ39,40にて検出される。従って、磁気センサ39,40の出力信号を見ることにより、ブレード2a,2bが現在どのエリアにいるのかを把握することができる。これにより、当該システムでは、システム再起動時などにおいても、ブレード2a,2bの存在位置を把握でき、ブレード2a,2bが通常の停止位置(格納位置,下反転位置,上反転位置)に止まっているか否かを推定することができる。
【0027】
一方、ブレード2a,2bは、ワイパシステムが正常に作動している状態では、両者が同じエリアに存在するか、AS側がDR側よりも下(格納位置側)に存在する。そこで、ブレード2a,2bのそれぞれがどのエリアに存在するかを検出し、ブレードの入れ替わりが生じていないかどうかを検知する。
図4は、各ブレード2a,2bが存在するエリアの組み合わせを示す表であり、
図4においてハッチングが施されている関係の場合、DR側とAS側のブレード2a,2bが入れ替わっていることになる。
【0028】
モータ6a,6bの制御情報は、通信線13を介してワイパ制御装置10a,10bの間で交換され、双方のブレードの位置関係に基づいて、モータ6a,6bが同期制御される。すなわち、ワイパ制御装置10a,10bは、まず、自身の側のブレード位置に基づきモータ6a,6bを正逆転制御する。同時にワイパ制御装置10a,10bは、両ブレード2a,2bのブレード位置情報に基づいてモータ6a,6bを制御し、ブレード同士が干渉したり、角度差が拡大したりしないようにワイパシステムを制御する。これにより、ブレード2a,2bが、払拭範囲5内の下反転位置Lと上反転位置Uとの間を揺動運動し、フロントガラス3に付着した雨や雪などが払拭される。
【0029】
図5は、本発明によるワイパ制御装置10の制御系の構成を示すブロック図である。なお、ワイパ制御装置10a,10bは同一構成となっているため、
図5及び以下の記載では、ワイパ制御装置10aについてのみ説明する。
図5に示すように、ワイパ制御装置10aには、CPU21と、データ送受信部22が設けられている。ワイパ制御装置10aは、LAN12を介してECU11と接続されている。ワイパ制御装置10aには、ECU11から、ワイパスイッチの設定状態(ON/OFFやLo,Hi,INT等の動作モード設定)、エンジン起動信号等の各種車両情報が入力される。ワイパ制御装置10a内にはさらに、制御プログラムや各種制御情報が格納されたROM23と、モータ回転数やブレード現在位置などの制御上のデータを格納しておくRAM24が設けられている。
【0030】
CPU21は中央演算処理装置であり、ここでは、ECU11と接続されたCPU21がマスタ側となっており、図示しないワイパ制御装置10bのCPUがスレーブ側となっている。ワイパ制御装置10aのCPU21は、データ送受信部22と通信線13を介してワイパ制御装置10bのCPUと接続されている。両CPUは、通信線13を通じて位置情報や動作指示を互いにやり取りしている。マスタ側のCPU21は、ワイパスイッチの状態に従って、ワイパ制御装置10bから送られてきたブレード2bの位置情報や自ら(ブレード2a)の位置情報に基づいてモータ6aの動作を制御する。スレーブ側のCPUは、ワイパ制御装置10aからの指示に従って、ワイパ制御装置10aから送られてきたブレード2aの位置情報や自ら(ブレード2b)の位置情報に基づいてモータ6bの動作を制御する。
【0031】
CPU21には、磁気センサ37,38や磁気センサ39,40からのセンサ信号に基づいて、ブレード2aの現在位置を検出するブレード位置検出部25が設けられている。また、CPU21には、ブレード位置検出部25の結果に基づき、ブレード2aが、通常の停止位置に停止しているか否かを判定するブレード停止位置判定部26と、ブレード2bとの位置関係を検討し、ブレード2a,2bの入れ替わりを判断するブレード順判定部27が設けられている。さらに、CPU21には、モータ6aの駆動電流に基づき、モータロック発生の有無を判断するモータロック判定部28と、モータ6aに対し回転方向やDuty等を指示し、ブレード2aを上下反転位置間で適宜動作させる駆動制御指示部29が設けられている。
【0032】
このような構成を備えた本発明によるワイパシステムでは、ワイパスイッチをオンした後、最初の上方向への動作の際に、ブレード2a,2bの停止位置やブレードの入れ替わりを判定し、以後の動作にてブレードの干渉が生じないようにシステムを制御する。
図6は、最初の上方向動作における制御手順を示すフローチャートである。
図6に示すように、ここではまず、モータロック判定部28により、モータ6a,6bのロック判定が行われる(ステップS1)。ブレード2a,2bがエリア(1),(2)に存在しており、そこでブレードの入れ替わりが生じていると、先に作動したDR側ブレード2aが、AS側ブレード2bに当たり、モータ6aがロック状態となる。モータロック状態は、モータの駆動電流値によって判断され、電流値が所定値を超えた場合は、モータロック発生と判断する。
【0033】
ステップS1にてモータロックが検出された場合、それは、ブレード2a,2bがエリア(1),(2)に存在し、しかも、ブレードの入れ替わりが生じていることを意味する。そこで、その場合はステップS2に進み、駆動制御指示部29により、AS側ブレード2bを先行作動させて上反転位置に退避させ、その後、DR側ブレード2aを上反転位置に移動させ、ルーチンを抜ける。上反転位置に両ブレード2a,2bを退避させた後は、通常の制御を行い、通常動作に復帰させる。
【0034】
ステップS1にてモータロックが検出されなかった場合はステップS3に進み、ブレードの入れ替わりが生じているかどうかを判断する。S3の判断は、ブレード順判定部27により、DR側とAS側にて、
図4のハッチング部分のような関係が生じているかどうかを見ることによって行われる。例えば、DR側がエリア(1)のとき、AS側がエリア(3)と検出された場合、先行するはずのDR側よりもAS側が先に存在しており、「入れ替わり」と判断される。この場合、ブレード干渉によるモータロックが生じるエリア((1),(2))での入れ替わりは既にS1にて判定されており、ここでは、エリア(3),(4)での入れ替わりや、DR側とAS側の差が大きい場合(例えば、DR側:(1);AS側:(3))の入れ替わりが判断される。なお、同エリア内でのブレードの入れ替わりは、エリア(3),(4)の場合は、ブレードの干渉を生じないため特に判断しなくとも支障はなく、(1),(2)の場合は、ロック検出によって判定される。
【0035】
ステップS3にて、ブレードの入れ替わりが生じている、と判断された場合はステップS4に進み、S2と同様に、AS側ブレード2bを先行作動させて上反転位置に退避させ、その後、DR側ブレード2aを上反転位置に移動させる。上反転位置に両ブレード2a,2bを退避させた後は、通常の制御を行い、通常動作に復帰させる。これに対し、ステップS3にて、ブレードの入れ替わりが生じていない、と判断された場合はステップS5に進み、ブレード停止位置判定部26により停止位置の適否が判断される。
【0036】
ブレード2a,2bがエリア(3)内で停止している場合、それは、ブレードが通常停止位置(格納位置,下反転位置,上反転位置)以外の場所で停止していることを意味する。そこで、ステップS5では、ブレード2a,2bがエリア(3)に存在しているか否か、すなわち、最初の上方向動作にて当初からブレード2a,2bがエリア(3)にいるかどうかが確認される。S5にて、ブレード2a,2bがエリア(3)にいる場合は、異常停止位置での停止と判断し、ステップS6に進む。この場合、S1→S3→S5と進み、ステップS6に進んでいるため、ブレードの入れ替わりは発生していない。従って、ここでは、通常動作と同様に、DR側ブレード2aを先行作動させて上反転位置に退避させ、その後、AS側ブレード2bを上反転位置に移動させる。上反転位置に両ブレード2a,2bを退避させた後は、通常の制御を行い、通常動作に復帰させる。
【0037】
このように、本発明によるワイパシステムでは、ワイパ軸4a,4b上に、不等ピッチに着磁されたエリア検出用のセンサマグネット32を配し、その極性を2つの磁気センサ39,40によって検出する。その際に検出される4つの磁極の組み合わせと対応して、ブレード払拭領域を4エリアに分けることにより、ブレード2a,2bの停止位置(エリア)を検出でき、ブレードが通常の停止位置に止まっているか否かを推定できる。その際、ブレード2a,2bが通常の停止位置に停止していない場合は、DR側、AS側の順に上反転方向にブレードを一旦退避させた後、復路動作から通常の制御に戻す。これにより、異常位置に停止した場合も、違和感のないスムーズな動作で通常動作への復帰が図られる。
【0038】
また、エリア認識により、ブレードの順序が入れ替わっていると判断された場合は、AS側、DR側の順に上反転方向にブレードを退避させる。そして、復路動作から通常の制御に戻す。これにより、ブレード同士の干渉を回避しつつ、通常動作への復帰が図られる。なお、通常停止位置の範囲で入れ替わりが発生していた場合は、モータロック検出により、ロック状態が検出された後、AS側、DR側の順に上反転方向にブレードを退避させ、ブレード同士の干渉を回避しつつ、通常動作への復帰を図る。
【0039】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2として、エリア検出用のセンサマグネットとして、不等ピッチの磁極を複数対称に配したものを使用した構成について説明する。
図7(a)は、本発明の実施の形態2であるワイパシステムに使用されるセンサマグネット41の構成を示す説明図である。なお、センサマグネット41関連の構成以外は実施の形態1のワイパシステムと同様であり、実施の形態1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0040】
図7(a)に示すように、センサマグネット41もまたリング状に形成されており、ウォームホイール36に取り付けられている。180°ずつ左右等分に設けられた磁極群42,43を備えている。磁極群42,43は、複数個の磁極(N極とS極)が不等ピッチで交互に配列されており、中心線CLに対し左右対称(線対称)となっている。磁極群42は、N極から始まり、磁極幅が徐々に狭まる形で180°分設けられている。一方、磁極群43は、S極から始まり、磁極幅が徐々に狭まる形で磁極群42とは反対側に180°分設けられている。磁極群42,43にはそれぞれ8個ずつ磁極が形成されている。
【0041】
センサマグネット41の端面近傍には、軸方向に離間して、2個の第2磁気センサ44,45(以下、磁気センサ44,45と略記する)が配置されている。磁気センサ44,45は、センサマグネット41の周方向に沿って180°離れた位置に設けられており、中心線CLに沿って、センサマグネット41の中心Oに対し対称に配置されている。磁気センサ44,45には、交番磁界検出用のホールICが使用され、対向する磁極の極性が切り替わると検出信号が出力される。ウォームホイール36が回転すると、それと共にセンサマグネット41も回転し、磁気センサ44,45に対向するセンサマグネット32の磁極が変化する。磁気センサ44,45からは、極性が変化するごとに検出信号が出力される(C相・D相)。
【0042】
この場合、
図7(a)のような、対称不等ピッチのセンサマグネット41と、対称配置の磁気センサ44,45の組み合わせでは、磁気センサ44側と磁気センサ45側でセンサマグネット41の極性変化のタイミングに差異が生じる。例えば、センサマグネット41が
図7(a)の状態でウォームホイール36が回転すると(ワイパアームが作動すると)、磁気センサ44側(C相側)よりも磁気センサ45側(D相側)の方が極性の変化が早い。すなわち、C相側が切り替わらないタイミングで、D相側が切り替わる。一方、
図7(a)の状態からウォームホイール36が90°回転し、
図7(b)のような状態となると、その近傍では、C相側とD相側はほぼ同タイミングにて切り替わる。
【0043】
このように、ウォームホイール36の回転角度(すなわち、ワイパアーム1a,1bの動作角度)と、C相側とD相側の切り替わり時間の組み合わせとの間には相関関係があり、C,D相が切り替わる時間はワイパアーム位置によって変化する。一方、磁気センサ37,38からのA相,B相のパルスは、モータ(ロータ33)の回転に伴って出力される。従って、C,D相が切り替わる間に出力されるA,B相のパルス数もまた、ワイパアーム位置によって変化する。そこで、実施の形態2のシステムでは、C,D相それぞれの切替りに際し出力されるA相(又はB相)のパルス数を用いて、ワイパアーム1a,1bの現在位置を検出する。
【0044】
実施の形態2のシステムでは、
図7(b)に示すように、ウォームホイール36が90°回転した状態では、C相とD相の範囲(角度)が等しく、C,D相の切り替わりの間に出力されるA相パルス数も等しい。これに対し、ウォームホイール36の回転角度が90°より小さい場合はC>D、90°より大きい場合はC<Dとなり、相変化の間に検出されるA相パルス数も同様の関係となる。すなわち、ウォームホイール36の回転角度と、磁気センサ44,45からの出力信号の時間間隔との間には一定の相関関係が存在する。従って、C相切り替わりの際に出力されるA相パルス数をα、D相切り替わりの際に出力されるA相パルス数をβとし、αとβの差を見ることにより、ウォームホイール36の回転角度を検出することが可能となる。
【0045】
ここでは、下式のように、αとβの差に所定の角度算出係数γ(A相のパルス幅(分解能)によって決まる定数)を乗じてセンサマグネット41の動作角度を算出し、これを90°から引くことにより、ブレード2a,2bの現在位置(途中停止の場合の初期角度X)を算出する。
X=90°―(α―β)×γ (式(1))
α:C相変化対応A相パルス数
β:D相変化対応A相パルス数
γ:角度算出係数
式(1)による算出値は、予めマップ化してROM23に格納しておいても良く、この場合、CPU21は、αとβの検出値からマップを参照して角度Xを決定する。
【0046】
図8は、実施の形態2におけるエリア認識処理の手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、ここではまず、ステップS11にてC相・D相の切り替わり状態を見る。C相・D相の何れか一方に切り替わりがなかった場合はルーチンを抜ける。これに対し、C相・D相共に切り替わりがあった場合には、ステップS12に進み、C相の切り替わりの有無を見る。このとき、C相に切り替わりがあった場合は、ステップS13に進み、C相切り替わりの間に出力されたA相(又はB相)のパルス数が検出される(α)。
【0047】
一方、C相に切り替わりがなかった場合や、ステップS13にてαを検出した後は、ステップS14に進み、D相の切り替わりの有無を見る。このとき、D相に切り替わりがあった場合は、ステップS15に進み、C相切り替わりの間に出力されたA相(又はB相)のパルス数が検出される(β)。この場合、ステップS12以下の処理は、C相・D相共に切り替わりがあった状態で実行されるため、ステップS14,S15を経ることによりαとβが把握される。
【0048】
αとβを取得した後、ステップS16に進み、これらの値から式(1)に基づいて、ブレードの現在位置(角度X)を算出する。前述のように、ステップS16の処理は、ROM23に格納された角度算出マップを参照して行われる。ウォームホイール36の角度Xは、ワイパアーム1a,1bの動作角度と相関関係があり、これにより、ブレード2a,2bの移動量を算出でき、その現在位置を把握することが可能となる。
【0049】
このように、実施の形態2のシステムでは、N極から始まり、180°の範囲でN極とS極の間隔が徐々に狭まる磁極を線対称に配置したリングマグネットを使用し、180°対称位置に配した磁気センサにてその磁束変化を検出する。そして、2つの磁気センサにて検出される極性の切り替わりタイミングに基づいて、ブレードの存在位置を検出する。従って、高価な角度センサ等を使用することなく、安価な素子や回路構成により、ワイパ再起動時におけるブレード初期位置の角度検出が可能となり、システムコストの低減が図られる。
【0050】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、前述の実施の形態では、2つの電動モータをフロントガラス3に対して左右対称に配置し、運転席側と助手席側のワイパアームを対向するよう払拭動作させる対向払拭型のワイパ装置に本発明を適用した例を示したが、運転席側と助手席側のワイパアームを略同一方向に払拭動作させるタンデム型のワイパ装置にも適用可能である。
【0051】
また、前述の実施の形態では、モータ6a,6bの回転角度を検出する手段として、センサマグネットとホールICの組み合わせを示したが、ロータリーエンコーダやMRセンサによって回転軸34の回転角度を検出しても良い。さらに、ワイパ軸4a,4bの回転角度も、ロータリーエンコーダやMRセンサなどの回転角度センサを用いて検出しても良いが、前述のような不等ピッチ着磁のマグネットとホールICの組み合わせの方が安価であり、故障も少ない。
【0052】
一方、前述の実施の形態では、磁気センサ37,38を、センサマグネット31の周方向に90°離れた位置に設けたものを示したが、その角度は適宜変更可能である。また、前述の実施の形態では、磁極32Nが300°、磁極32Sが60°に不等ピッチに着磁されたセンサマグネット32を示したが、その角度も適宜変更可能である。