特許第6372959号(P6372959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372959
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】アクチュエータユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20180806BHJP
   F16H 21/02 20060101ALI20180806BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   F16H25/20 Z
   F16H21/02
   H02K7/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-199640(P2014-199640)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-70351(P2016-70351A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正俊
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 祐資
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 有範
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−195152(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 21/02
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータによって駆動される可動部材と、
前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれを連結する連結部材と、
を備え
前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれに、前記複数のアクチュエータの軸方向と直交する方向に複数の貫通孔が形成されており、
前記連結部材は、前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に挿通されると共に、前記複数の貫通孔のそれぞれに設けられた軸受を介し、前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれに支持されていることを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項2】
前記軸受は、調心機能を有していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータユニット。
【請求項3】
前記連結部材および前記軸受によって、前記複数のアクチュエータのそれぞれの推力を合算した合力を、前記可動部材に伝達することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータユニット。
【請求項4】
前記軸受は、前記複数のアクチュエータの推力差に基づいて傾斜する前記連結部に追随可能であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のアクチュエータユニット。
【請求項5】
前記アクチュエータは、
筒状部材と、
前記筒状部材に取り付けられたプラグと、
を備え、
前記筒状部材および前記プラグのそれぞれを連通するように、前記貫通孔が形成されており、
前記プラグに形成された前記貫通孔に、前記軸受が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアクチュエータユニット。
【請求項6】
前記プラグの前記貫通孔の内周面上には、前記軸受の抜けを防止するホルダが装着されていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータユニット。
【請求項7】
前記筒状部材の前記貫通孔の径は、前記プラグに装着された前記軸受の外径よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクチュエータユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療、介護の分野において、患者や要介護者の寝食等の負担を軽減するため、ベッドの背ボトムや膝ボトムを傾斜、昇降可能に構成した電動式ベッドが知られている。この種の電動式ベッドにおける背ボトムや膝ボトムの傾動動作、昇降動作には、送りねじ式のリニアアクチュエータが用いられている。
【0003】
送りねじ式のリニアアクチュエータは、電動モータと、電動モータの回転軸に連結され、この回転軸の回転力を受けて回転する雄ねじシャフトと、雄ねじシャフトに螺合するスクリューナットと、スクリューナットに固定された筒状のピストンと、スクリューナットやピストンが雄ねじシャフトと共回りしてしまうのを防止するハウジングと、を備えている。
そして、電動モータの回転軸と共に雄ねじシャフトが回転すると、スクリューナットが雄ねじシャフトの軸方向に沿って移動する。これに伴い、ピストンが進退運動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−67771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、背ボトムや膝ボトムの推力を高めるために、リニアアクチュエータの規格を大きくすることが考えられるが、単純にリニアアクチュエータの規格を大きくしようとすると、仕様に応じて各部品を設計し直す必要があり、製造コストがかかる。このため、既存のリニアアクチュエータを複数個同時に使用することで(複数のリニアアクチュエータをユニット化することで)、これらリニアアクチュエータの合力により背ボトムや膝ボトムの推力を高めることが考えられる。
【0006】
しかしながら、規格の同じリニアアクチュエータであっても、製造誤差によってリニアアクチュエータごとに僅かに推力が若干異なっているのが実情である。推力が異なると、リニアアクチュエータのピストンの進退速度も異なってしまう。このため、規格の同じリニアアクチュエータを複数個同時に使用してその合力を得ようとしても、推力差によって各ピストンがスムーズに動作しなくなり、所望の合力を得られないという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、複数のリニアアクチュエータを同時に使用しても各ピストンをスムーズに動作させて所望の合力を得ることができるアクチュエータユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータユニットは、複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータによって駆動される可動部材と、前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれを連結する連結部材と、を備え、前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれに、前記複数のアクチュエータの軸方向と直交する方向に複数の貫通孔が形成されており、前記連結部材は、前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に挿通されると共に、前記複数の貫通孔のそれぞれに設けられた軸受を介し、前記複数のアクチュエータおよび前記可動部材のそれぞれに支持されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、簡素な構造で複数のアクチュエータを同時に使用しても、各アクチュエータのピストンをスムーズに動作させることができる。このため、各アクチュエータのそれぞれの推力の合力を効率よく得ることができ、安価なアクチュエータユニットを提供できる。
本発明に係るアクチュエータユニットは、前記軸受は、調心機能を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るアクチュエータユニットでは、前記連結部材および前記軸受によって、前記複数のアクチュエータのそれぞれの推力を合算した合力を、前記可動部材に伝達することを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、複数のアクチュエータに推力差が生じた場合であっても、各アクチュエータの推力を合算した合力を、確実に可動部材に伝達させることができる。
【0014】
本発明に係るアクチュエータユニットでは、前記軸受は、前記複数のアクチュエータの推力差に基づいて傾斜する前記連結部材に追随可能であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るアクチュエータユニットでは、前記アクチュエータは、小貫通孔が形成された筒状部材と、前記筒状部材に取り付けられ、前記小貫通孔に連通するように前記貫通孔が形成されたプラグと、を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るアクチュエータユニットでは、前記プラグの前記貫通孔の内周面上には、前記軸受の抜けを防止するホルダが装着されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るアクチュエータユニットは、前記筒状部材の前記小貫通孔の径は、前記プラグに装着された前記軸受の外径よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡素な構造で複数のアクチュエータを同時に使用しても、各アクチュエータのピストンをスムーズに動作させることができる。このため、各アクチュエータのそれぞれの推力の合力を効率よく得ることができ、安価なアクチュエータユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態における移乗器の斜視図である。
図2】本発明の実施形態におけるアクチュエータユニットの概略構成図である。
図3】本発明の実施形態におけるリニアアクチュエータの側面図である。
図4図3のA−A線に沿う断面図である。
図5】本発明の実施形態における伝達機構の概略構成図である。
図6】本発明の実施形態におけるプラグの拡大図である。
図7】本発明の実施形態における伝達機構の作用説明図であって、(a),(b)は、2つのリニアアクチュエータの推力が異なっている状態を示す。
図8】本発明の実施形態における移乗器の挙動説明図である。
図9】本発明の変形例におけるアクチュエータユニットの概略平面図である。
図10図9のB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(移乗器)
図1は、本発明に係るアクチュエータユニット1が搭載された移乗器100の斜視図である。
同図に示すように、移乗器100は、例えば、車椅子に搭乗している要介護者をベッドに移動する際の補助器として使用されるものであって、円板状のベース部101を備えている。ベース部101の外周部には、径方向中央を中心にして両側に車輪102が設けられており、ベース部101が走行できるようになっている。
なお、移乗器100は、車輪102を床面(不図示)上に置いた状態で用いられる。以下の説明では、車輪102を床面上に置いた状態において、重力方向の上下を単に上側、下側などと称して説明する。
【0026】
ベース部101上には、このベース部101に対して回転可能なターンテーブル103が設けられている。ターンテーブル103の外径は、ベース部101の外径とほぼ同一に設定されている。
ターンテーブル103の径方向中央には、上方に向かって突出する支柱104が設けられている。支柱104の上部には、ブラケット105が一体成形されている。このブラケット105にアクチュエータユニット1を介してシート106が設けられている。
【0027】
シート106は、要介護者が腹這いになって乗るものである。シート106の下面106aにおけるほぼ中央に、アクチュエータユニット1が連結されるブラケット107が設けられている。また、シート106の下面106aにおける一側には、ハンドル108が設けられている。ハンドル108は、シート106に腹這いになった要介護者が把持するものであって、略コの字状に形成されている。すなわち、ハンドル108は、シート106の下面106aから突出する一対のアーム部108aと、これらアーム部108aの先端同士に跨るハンドル本体108bとが一連に形成されたものである。
【0028】
さらに、ハンドル108の一対のアーム部108aの間には、リンク部109の一端が接続されている。リンク部109の他端は、支柱104のブラケット105に連結されている。リンク部109は、アクチュエータユニット1によって稼働するシート106の動きを規制するためのものであって、第1リンク109aと第2リンク109bとにより構成されている。そして、第1リンク109aの一端が支柱104のブラケット105に接合されている。さらに、第1リンク109aの他端と第2リンク109bの一端とが連結ピン112を介して回動可能に連結されている。また、第2リンク109bの他端がシート106の下面106aに接合されている。
【0029】
(アクチュエータユニット)
図2は、アクチュエータユニット1の概略構成図、図3は、アクチュエータユニット1を構成するリニアアクチュエータ2の側面図、図4は、図3のA−A線に沿う断面図である。
図2に示すように、アクチュエータユニット1は、2つのリニアアクチュエータ2を備えている。なお、2つのリニアアクチュエータ2は、同一機種であるので、一方のリニアアクチュエータ2のみ説明し、他方のリニアアクチュエータ2の説明を省略する。
【0030】
(リニアアクチュエータ)
図3図4に示すように、リニアアクチュエータ2は、モータ装置3と、モータ装置3に連結されている減速装置4と、この減速装置4を介してモータ装置3の動力が伝達される直動装置5と、を備えている。
モータ装置3の減速装置4とは反対側には、リニアアクチュエータ2の基端を支柱104のブラケット105に連結するためのブラケット部14が一体成形されている。このブラケット部14が、連結ピン111(図1参照)を介して支柱104のブラケット105に回動可能に連結されている。
【0031】
直動装置5は、筒状のケース7と、このケース7内に収納された直動機構10と、を有している。ケース7は、減速装置4に直動装置5を連結するためのジョイントケース部6と、このジョイントケース部6よりも減速装置4とは反対側に設けられ、ジョイントケース部6よりも縮径形成された補強筒ケース部8と、が一体化されたものである。補強筒ケース部8には、補強筒9が内嵌固定されている。この補強筒9は、直動機構10をガイドするものであって、補強筒ケース部8の先端から突出している、
【0032】
直動機構10は、減速装置4を介してモータ装置3の回転力が伝達される雄ねじシャフト11を有している。雄ねじシャフト11には、スクリューナット12が螺合されている。スクリューナット12は、補強筒9に対する回転を規制する不図示の回り止めが形成されている案内部12aと、案内部12aより段差により縮径形成され補強筒9の先端側(図5における下側)に向かって延出された連結部12bとにより構成されている。そして、案内部12aおよび連結部12bの内周面側に、雄ねじシャフト11と螺合する雌ねじ部12cが刻設されている。連結部12bの外周面には、直動筒13の基端が外嵌固定されている。
【0033】
このような構成のもと、モータ装置3の駆動に伴い雄ねじシャフト11が回転すると、スクリューナット12が雄ねじシャフト11の軸方向に沿って進退移動する。そして、スクリューナット12と一体化された直動筒13が進退(伸縮)移動する。
ここで、直動筒13の先端には、この直動筒13の動力をシート106(ブラケット107)に伝達するための伝達機構15が設けられている。
【0034】
(伝達機構)
図5は、伝達機構15の概略構成図、図6は、伝達機構15を構成するプラグ16の拡大図である。
図5に示すように、伝達機構15は、直動筒13の先端に取り付けられるプラグ16を有している。プラグ16は、直動筒13に内嵌されるプラグ本体17とプラグ本体17の位置決めを行うフランジ部18とが一体成形されたものである。プラグ本体17には、軸方向と直交する方向に沿って貫通孔19が形成されている。この貫通孔19に、筒状の軸受スリーブ21が設けられている。
【0035】
軸受スリーブ21は、例えば焼結材により形成されたものであって、調心機能を有している。すなわち、軸受スリーブ21の外周面は、ビヤ樽状に膨出した弧状面21aになっている。
一方、プラグ本体17に形成された貫通孔19は、軸受スリーブ21の弧状面21aに対応するように、段差部19aを有している。この段差部19aにより、軸受スリーブ21の一方側への移動が規制されている。また、貫通孔19には、この貫通孔19に軸受スリーブ21を設けた状態で、この軸受スリーブ21の他方側への抜けを防止するためのホルダ22が設けられている。
これにより、図6に示すように、軸受スリーブ21は、貫通孔19内において、貫通孔19の軸方向に対して傾動可能に収納された状態になる。また、直動筒13には、軸受スリーブ21に対応箇所に貫通孔13aが形成されている。
【0036】
一方、シート106に設けられたブラケット107には、2つのリニアアクチュエータ2の直動筒13の間に臨まされる連結壁31が立設されている。連結壁31には、リニアアクチュエータ2に設けられたプラグ16の貫通孔19に対応する位置に、この貫通孔19と同軸となるように貫通孔32が形成され、さらに貫通孔32に軸受スリーブ33が設けられている。これら貫通孔32と軸受スリーブ33の構成は、プラグ16の貫通孔19および軸受スリーブ21の構成と基本的に同一である。
【0037】
すなわち、軸受スリーブ33は調心機能を有しており、外周面がビヤ樽状に膨出した弧状面33aになっている。
一方、連結壁31に形成された貫通孔32は、軸受スリーブ33の弧状面33aに対応するように、段差部32aを有している。この段差部32aにより、軸受スリーブ33の一方側への移動が規制されている。また、貫通孔32には、この貫通孔32に軸受スリーブ33を設けた状態で、この軸受スリーブ33の他方側への抜けを防止するためのホルダ34が設けられている。これにより、軸受スリーブ33は、貫通孔32内において、貫通孔32の軸方向に対して傾動可能に収納された状態になる。
【0038】
また、各軸受スリーブ21,33には、連結シャフト41が挿通されている。これにより、リニアアクチュエータ2の直動筒13とシート106の連結壁31とが、連結シャフト41を中心にして相対回転可能に連結される。連結シャフト41は、一端(図5における右端)に頭部41aが一体成形され、他端(図5における左端)が直動筒13から突出するようになっている。そして、連結シャフト41の他端には、止め輪42が装着される。これにより、リニアアクチュエータ2および連結壁31からの連結シャフト41の抜けが防止される。
【0039】
このように、直動筒13(プラグ16)に設けられた軸受スリーブ21と、連結壁31に設けられた軸受スリーブ33と、これら軸受スリーブ21,33に挿通される連結シャフト41は、各リニアアクチュエータ2(アクチュエータユニット1)と、連結壁31(シート106)とを連結する連結部材43として構成される。そして、各軸受スリーブ21,33の弧状面21a,33aは、それぞれプラグ16および連結壁31と連結部材43とが当接する当接部44として構成される。
【0040】
(移乗器の動作)
次に、図7図8に基づいて、移乗器100の動作について説明する。
図7は、伝達機構15の作用説明図であって、(a),(b)は、2つのリニアアクチュエータ2の推力が異なっている状態を示す。図8は、移乗器100の挙動説明図である。
ここで、前述したように、2つのリニアアクチュエータ2は、規格が同じであっても、各々の製造誤差により、それぞれの推力が若干異なっているのが実情である。推力が異なると、各リニアアクチュエータ2における直動筒13の進退速度も異なってしまう。
【0041】
より具体的には、図7(a)に示すように、2つのリニアアクチュエータ2のうちの一方(図7(a)における右側のリニアアクチュエータ2)の直動筒13の進退速度が、他方(図7(a)における左側のリニアアクチュエータ2)の直動筒13の進退速度よりも若干速い場合において、直動筒13を伸長させる方向に駆動させると、一方のリニアアクチュエータ2が他方のリニアアクチュエータ2よりも前方(シート106側)に突出する。すると、この2つのリニアアクチュエータ2の進退速度差に応じて連結シャフト41が傾動しようとする。
【0042】
ここで、連結シャフト41は、各貫通孔19,32に設けられた軸受スリーブ21,33によって支持されているので、これら軸受スリーブ21,33が連結シャフト41の傾動に追随するように傾動する。これに加え、貫通孔19,32に軸受スリーブ21,33を介して連結シャフト41を挿入することにより、貫通孔19,32と連結シャフト41との間に、この連結シャフト41の傾動を許容する空隙部(許容部)Kが形成される。
【0043】
このため、連結シャフト41はスムーズに傾動し、この連結シャフト41に、2つのリニアアクチュエータ2のそれぞれの推力が確実に伝達される。そして、連結シャフト41に伝達された2つのリニアアクチュエータ2の推力を合算した合力は、殆ど損失されずに連結壁31に伝達される。換言すれば、2つのリニアアクチュエータ2の推力が、同時に連結壁31に伝達される。
【0044】
このことについては、2つのリニアアクチュエータ2のうちの一方の直動筒13の進退速度が、他方の直動筒13の進退速度よりも若干遅い場合でも同様である。すなわち、図7(b)に示すように、直動筒13を伸長させる方向に駆動させた際、他方のリニアアクチュエータ2(図7(b)における左側のリニアアクチュエータ2)が一方のリニアアクチュエータ2(図7(b)における右側のリニアアクチュエータ2)よりも前方(シート106側)に突出した場合であっても、連結シャフト41と各軸受スリーブ21,33がスムーズに傾動する。そして、連結シャフト41に、2つのリニアアクチュエータ2のそれぞれの推力が確実に伝達される。そして、連結シャフト41に伝達された2つのリニアアクチュエータ2の推力を合算した合力は、そのまま連結壁31に伝達される。
【0045】
図8に示すように、各リニアアクチュエータ2の直動筒13を伸長動作させると(図7における矢印Y11参照)、連結壁31と一体化されているシート106が、リンク部109の連結ピン112を中心に回動して(図8における矢印Y21参照)起き上がる(図8における2点鎖線で示す状態)。反対に、各リニアアクチュエータ2の直動筒13を縮退動作させると(図8における矢印Y12参照)、連結壁31と一体化されているシート106が、リンク部109の連結ピン112を中心に回動して(図8における矢印Y22参照)倒れ込む(図8における実線で示す状態)。
【0046】
なお、例えば、要介護者が車椅子からベッドに移る際には、まずシート106を倒した状態でこのシート106に要介護者が腹這いになって覆いかぶさる。続いて、アクチュエータユニット1を駆動させてシート106を起す。そして、その状態でターンテーブル103を回転させて要介護者の背中側をベッドへ向ける。さらに、アクチュエータユニット1を駆動させ、シート106を倒し、要介護者をベッド上へ降ろす。なお、移乗器100のベース部101には、車輪102が設けられているので、移乗器100の移動を容易に行うことができる。
【0047】
このように、上述の実施形態では、2つのリニアアクチュエータ2のそれぞれの直動筒13とシート106の連結壁31とを、連結部材43で連結している。そして、連結部材43を、直動筒13(プラグ16)に設けられた軸受スリーブ21と、連結壁31に設けられた軸受スリーブ33と、これら軸受スリーブ21,33に挿通される連結シャフト41とにより構成している。さらに、プラグ16の貫通孔19に軸受スリーブ21を設けると共に、連結壁31の貫通孔32に軸受スリーブ33を設け、各貫通孔19,32と連結シャフト41との間に形成される空隙部Kを、連結シャフト41の傾動を許容する許容部として構成している。このため、2つのリニアアクチュエータ2を同時に使用し、且つこれらリニアアクチュエータ2の推力に微差がある場合であっても、各リニアアクチュエータ2をスムーズに動作させることができる。つまり、各リニアアクチュエータ2の推力を同時に連結壁31に伝達することができる。
【0048】
また、各軸受スリーブ21,33の弧状面21a,33aは、それぞれプラグ16および連結壁31と連結部材43とが当接する当接部44として構成されるので、各リニアアクチュエータ2の推力を、効率よく連結シャフト41に伝達させることができる。そして、さらに各リニアアクチュエータ2の推力を合算した合力を、効率よく連結壁31に伝達させることができる。
【0049】
さらに、各リニアアクチュエータ2の推力をシート106の連結壁31に伝達するための伝達機構15を、連結シャフト41と、各軸受スリーブ21,33と、直動筒13の貫通孔19、および連結壁31の貫通孔32と、により構成している。このため、伝達機構を簡素な構成とすることができ、製品コストを低減できる。
また、各軸受スリーブ21,33によって、各リニアアクチュエータ2および連結壁31と、連結シャフト41との間の衝撃を吸収することができる。このため、連結シャフト41の経年劣化を抑制することができる。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、アクチュエータユニット1を移乗器100に用いた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、リニアアクチュエータ2の推力を得て可動する部材が設けられたさまざまな装置(例えば、電動ベッド等)に上述のアクチュエータユニット1を適用することができる。
【0051】
また、上述の実施形態では、各リニアアクチュエータ2に対して連結シャフト41をスムーズに傾動させるために、軸受スリーブ21,33を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、連結シャフト41の傾動を許容できるものであればよい。例えば、軸受スリーブ21,33に代わってゴム製のスリーブを設けてもよい。このように構成した場合であっても、連結シャフト41の傾動に追随するようにゴム製のスリーブが弾性変形するので、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
また、上述の実施形態では、2つのリニアアクチュエータ2を用いて、これら2つのリニアアクチュエータ2の推力を合算した合力を得るアクチュエータユニット1について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、リニアアクチュエータ2の個数を2つ以上の複数個設け、これらリニアアクチュエータ2を連結部材43で連結するように構成してもよい。以下、図面を参照してより具体的に説明する。
【0053】
(変形例)
図9は、変形例におけるアクチュエータユニット201の概略平面図、図10は、図9のB矢視図である。なお、図9図10において、上述の実施形態と同一態様には同一符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、アクチュエータユニット201は、3つのリニアアクチュエータ2を備えている。これら3つのリニアアクチュエータ2の直動筒(図9では不図示)の先端には、それぞれプラグ16が設けられている。各プラグ16には、それぞれ貫通孔19が形成され、これら貫通孔19に軸受スリーブ21が設けられている。
【0054】
各軸受スリーブ21には、連結シャフト241が挿通されている。連結シャフト241は、3つのシャフト本体241aを三つ又状(Y字状)に配置してなる。そして、各シャフト本体241aの先端側からそれぞれリニアアクチュエータ2の直動筒(プラグ16)を差し込むようになっている。
また、各シャフト本体241aには、それぞれ直動筒からの抜けを防止するための止め輪242が設けられている。
【0055】
さらに、図10に示すように、連結シャフト241には、中央部(各シャフト本体241aの接続部)に連結凸部245が設けられている。この連結凸部245に、可動部材(例えば、シート)のブラケット246が連結ピン247を介して回動可能に連結されている。これにより、3つのリニアアクチュエータ2の推力を合算した合力が、連結シャフト241を介してブラケット246に伝達される。
【0056】
ここで、連結シャフト241は、各リニアアクチュエータ2に設けられた軸受スリーブ21を介して直動筒(プラグ16)に連結された状態になっているので、3つのリニアアクチュエータ2の推力に微差がある場合であっても、各リニアアクチュエータ2をスムーズに動作させることができる。
したがって、上述の変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、3つのリニアアクチュエータ2を連結することにより、アクチュエータユニット201の推力を、上述の実施形態のアクチュエータユニット1の推力よりも大きくすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1,201…アクチュエータユニット
2…リニアアクチュエータ(アクチュエータ)
13…直動筒(筒状部材)
13a,19,32…貫通孔
15…伝達機構
16…プラグ
21,33…軸受スリーブ(軸受
21a,33a…弧状
22…ホルダ
31…連結壁(可動部材)
41…連結シャフト(連結部材)
43…連結部材
106…シート(可動部材)
107…ブラケット(可動部材)
K…空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10