(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1に示す本発明の実施の形態にかかる空調システム1は、建物内に形成された空調領域10に冷気を供給して、空調領域10を冷房空調するものである。空調領域10として、変圧器などの発熱源が内部に設置された室、すなわち電気室やボイラー室が例示される。空調領域10の内部は、機器の効率や寿命のためには極力低い温度であることが好ましい。また、在室人員に対する室内温熱環境を維持するために、空調領域10内は、例えば40℃以下に温度設定される。
【0017】
空調領域10の外部には、空気熱源機11を内部に収納した筐体12が設置されている。筐体12は、空調領域10と同じ建物内に設けられている。筐体12は、空気吸込口と空気吹出口の両開口を有し、ダクト、フランジを介する等して空調領域10に接続される。筐体12の内部は、壁体15によって上下に仕切られ、後述する還気RAと冷気(給気SA)が混合しないようになっている。空気熱源機11の内部において、壁体15の下側は還気空間16になっており、壁体15の上側は冷気空間17になっている。還気空間16内の空気は、空気熱源機11を通過して冷気空間17に抜けるようになっている。
【0018】
筐体12の還気空間16には、還気ダクト20の一端が接続され、この還気ダクト20の他端が、空調領域10に接続されている。還気ダクト20には還気ファン21が設けられており、この還気ファン21の稼働により、空調領域10から排出された空気(還気RA)が還気ダクト20を通って還気空間10に導入される。
【0019】
同様に、筐体12の冷気空間17には、給気ダクト22の一端が接続され、この給気ダクト22の他端が、空調領域10に接続されている。給気ダクト22には給気ファン23が設けられており、この給気ファン23の稼働により、冷気空間17に溜められた冷気(給気SA)が給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。
【0020】
図2に示すように、空気熱源機11は、蒸発器30と凝縮器31との間に設けられた熱媒配管32に熱媒を循環させて熱サイクルを行う温水ヒートポンプ33を備えている。この温水ヒートポンプ33は、熱媒配管32に、蒸発器30、圧縮器35、凝縮器31、膨張弁36を順に配置した構成を有する。蒸発器30には、送風ファン37が取り付けてある。この送風ファン37の稼動により、筐体12の還気空間16に導入された空気(還気RA)が、温水ヒートポンプ33の蒸発器30に引き込まれる。
【0021】
温水ヒートポンプ33の凝縮器31には、温水を循環させる温水往き配管40と温水戻り配管41が接続されている。温水往き配管40と温水戻り配管41は、建物に敷設された貯湯槽や給湯設備などの2次側負荷(図示せず)に適宜接続されている。温水戻り配管41には、送水ポンプ45が設けられている。この送水ポンプ45の稼動により、温水往き配管40と温水戻り配管41を通じて、温水ヒートポンプ33の凝縮器31と建物内の貯湯槽や給湯設備などといった2次側負荷との間で温水が循環させられる。
【0022】
図1に示すように、温水往き配管40と温水戻り配管41の間には、流量調整弁46を備えたバイパス流路47が設けられている。この流量調整弁46を開方向に動作させると、バイパス流路47を流れる温水の量が増加し、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が減少する。逆に、この流量調整弁46を閉方向に動作させると、バイパス流路47を流れる温水の量が減少し、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が増加する。
【0023】
空調領域10には、空調領域10内の空気の温度(室温)を測定する温度センサ50が設けられている。この温度センサ50の測定値に基づいて、流量調整弁46の開度が調整されるようになっている。
【0024】
以上のように構成された本発明の実施の形態にかかる空調システム1において、空気熱源機11が備える温水ヒートポンプ33の作用により作られた冷気(給気SA)が筐体12の冷気空間17に溜められる。そして、給気ファン23の稼働により、冷気空間17に溜められた冷気(給気SA)が給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。これにより、空調領域10内は、機器の効率や寿命のために適した冷熱環境に維持される。
【0025】
一方、空調領域10において、発熱機器などの発熱源に熱的に接触することにより高温となった空気(還気RA)が、還気ファン21の稼働により空調領域10から排出され、還気ダクト20を通って筐体12の還気空間10に導入される。
【0026】
そして、筐体12の内部では、空気熱源機11に設けられた送風ファン37の稼動により、還気空間16に導入された空気(還気RA)が、温水ヒートポンプ33の蒸発器30に引き込まれる。これにより、蒸発器30では、温水ヒートポンプ33の熱媒が、空気(還気RA)から温熱を回収して、蒸発させられる。そして、空気(還気RA)から温熱を回収して蒸発した温水ヒートポンプ33の熱媒(ガス)は、圧縮器35で圧縮された後、凝縮器31にて、温水往き配管40と温水戻り配管41を通じて導入された温水と熱交換し、温水を加熱させる。こうして温水を加熱させることにより冷却されて凝縮させられた温水ヒートポンプ33の熱媒(液)は、膨張弁36を経て、再び蒸発器30に循環供給される。
【0027】
そして、蒸発器30では、上述のように、温水ヒートポンプ33の熱媒(液)が空気(還気RA)から温熱を回収して蒸発させられ、この熱交換により、空気(還気RA)は冷却されて冷気となる。こうして低温となった冷気(給気SA)が筐体12の冷気空間17に溜められた後、給気ファン23の稼働により、給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。
【0028】
こうして、空気熱源機11によって、空調領域10内を冷房空調し、機器の効率や寿命のために適した冷熱環境に維持する一方で、空調領域10から排出される高温の空気(還気RA)から温熱を回収して温水を加熱する。このように、温水ヒートポンプ33の凝縮器31では、空調領域10内からの廃熱を活用して温水を加熱することにより、2次側負荷で要求される加熱エネルギーの削減を行うことができる。また同時に、温水ヒートポンプ33の蒸発器30では、熱媒(液)を蒸発させて空気(還気RA)から温熱を回収することにより、空気(還気RA)を冷却して冷気(給気SA)を作り出すことができる。つまり、これまで外部へ廃熱として捨てていた熱エネルギーを有効活用することで、省エネルギーと省コストを達成することが可能となる。特に、電気室など発熱源を有する空調領域10からの廃熱は、年間を通じてほぼ一定に得られ、安定した温熱源の活用が可能となる。
【0029】
また、この空調システム1では、空調領域10内の空気の温度(室温)を温度センサ50で測定して、流量調整弁46の開度を調整することにより、室温を一定に制御することが可能である。すなわち、温度センサ50の測定値が高い(室温が高い)場合には、流量調整弁46の開度が小さくなり、バイパス流路47を流れる温水の量が減少し、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が増加させられる。これにより、凝縮器31における温水の加熱負荷が増加し、空調領域10から排出される高温の空気(還気RA)から回収される温熱の量が増加する。その結果、温水ヒートポンプ33の蒸発器30では、熱媒(液)の入り口温度が下がり、より冷たい冷気(給気SA)を作り出すことができる。一方、温度センサ50の測定値が低い(室温が低い)場合には、流量調整弁46の開度が大きくなり、バイパス流路47を流れる温水の量が増加し、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が減少させられる。これにより、凝縮器31における温水の加熱負荷が減少し、空調領域10から排出される高温の空気(還気RA)から回収される温熱の量が減少する。その結果、温水ヒートポンプ33の蒸発器30では、熱媒(液)の入り口温度が上がり、比較的高温の冷気(給気SA)を作り出すことができる。このように空調領域10内の空気の温度(室温)に応じて凝縮器31における温水の加熱負荷が調整され、室温が一定に維持される。
【0030】
なお、流量調整弁46の開度の調整に代えて、送水ポンプ45の送液量を変えることにより、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷を増減させることもできる。このように送水ポンプ45の送液量を変えて温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷を増減させる場合、流量調整弁46とバイパス流路47を省略しても良い。なお、送水ポンプ45として定流量ポンプを用いた場合は、流量調整弁46の開度の調整によって、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷を増減させる手段が有効である。また、ブリードイン制御を採用することもできる。
【0031】
このように、本発明の実施の形態にかかる空調システム1によれば、空調領域10内を常に一定に冷房空調することにより、電気室に配置される種々の機器などの効率や寿命を向上させることが可能となる。加えて、壁体15によって還気空間16と冷気空間17に仕切られた筐体12の内部に空気熱源機11が設けられているので、空調領域10から還気空間16に導入された高温の空気(還気RA)が、冷気空間17に直接流れ込むことがなく、温水ヒートポンプ33の蒸発器30で冷却した冷気(給気SA)を確実に空調領域10内に供給することができる。このため、いわゆる空気のショートカットが回避され、空調領域10内を安定して冷房空調することができる。なお、還気ダクト20に還気ファン21を設けて、空調領域10から空気(還気RA)を還気空間10に導入し、給気ダクト22に給気ファン23を設けて冷気(給気SA)を空調領域10に供給することにより、空調領域10と筐体12との間で安定した空気の循環を行うことができる。但し、空気熱源機11の蒸発器30に設けられた送風ファン37の動力のみで空気の循環が可能であれば、これら還気ファン21、給気ファン23の一方もしくは両方を省略することもできる。また、筐体12の内部には、空気熱源機11を複数台設置しても良い。
【0032】
次に、本発明の空調システムについて、別の実施の形態を例示する。なお、以下は例示であり、本発明の空調システムを限定するものではない。また、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
図3に示す空調システム2は、共通の空気熱源機11から複数の空調領域10に冷気を供給して冷房空調するものである。この空調システム2にあっては、給気ダクト22に温度センサ51が設けられており、この温度センサ51の測定値に基づいて、流量調整弁46の開度が調整されるようになっている。この空調システム2にあっては、温度センサ51の測定値が高い(冷気(給気SA)の温度が高い)場合には、流量調整弁46の開度が小さくなり、バイパス流路47を流れる温水の量が減少し、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が増加させられる。これにより、凝縮器31における温水の加熱負荷が増加し、空調領域10から排出される高温の空気(還気RA)から回収される温熱の量が増加する。その結果、温水ヒートポンプ33の蒸発器30では、熱媒(液)の入り口温度が下がり、より冷たい冷気(給気SA)を作り出すことができる。一方、温度センサ51の測定値が低い(冷気(給気SA)の温度が低い)場合には、流量調整弁46の開度が大きくなり、バイパス流路47を流れる温水の量が増加し、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が減少させられる。これにより、凝縮器31における温水の加熱負荷が減少し、空調領域10から排出される高温の空気(還気RA)から回収される温熱の量が減少する。その結果、温水ヒートポンプ33の蒸発器30では、熱媒(液)の入り口温度が上がり、比較的高温の冷気(給気SA)を作り出すことができる。このように空調領域10内の空気の温度(室温)に応じて凝縮器31における温水の加熱負荷が調整され、空調領域10に供給される冷気(給気SA)の温度が一定に維持される。
【0034】
図4に示す空調システム3では、温水往き配管40を温水往きヘッダ55に接続し、温水戻り配管41を温水戻りヘッダ56に接続している。そして、建物に敷設された貯湯槽や給湯設備などといった2次側負荷57に対して、温水往きヘッダ55から温水往き主配管58を介して温水を供給し、2次側負荷57で熱を消費した温水を、温水戻り主配管59を介して温水戻りヘッダ56に戻す構成になっている。また、この空調システム3では、温水戻りヘッダ56から抜出配管60に抜き出した温水を熱源装置61に導入し、熱源装置61で温度調節した温水を、供給配管62を介して温水往きヘッダ55に注入する構成になっている。熱源装置61には、例えばボイラー、熱交換器、冷凍機などが用いられる。抜出配管60にはポンプ63が設けられており、温水ヒートポンプ33の凝縮器31と2次側負荷57の間で循環している温水の一部が、このポンプ63の稼働で温水戻りヘッダ56から抜出配管60に抜き出され、その温水が、熱源装置61で温度調節された後、供給配管62を通って温水往きヘッダ55に注入される。
【0035】
この空調システム3によれば、2次側負荷57に循環させる温水の温度を熱源装置61によって所望の温度に調整することが可能である。上述のように、空調領域10の室温を一定に保つために、流量調整弁46の開度の調整や送水ポンプ45の送液量の調整により、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の負荷が増減される場合がある。かかる場合、2次側負荷57に循環される温水の量の増減に伴う温水の温度の変動を、熱源装置61の稼働で補うことにより、2次側負荷57に循環させる温水の温度を一定に保つことができる。また、2次側負荷57の要望に応じて、温水の温度を調整することができる。
【0036】
また、
図4に示すように、温水往きヘッダ55から配管65を介して吸収式冷凍機66に温水を導入し、吸収式冷凍機66から配管67を介して温水戻りヘッダ56に温水を戻す構成としても良い。かかる構成によれば、温水ヒートポンプ33で加熱された温水から吸収式冷凍機66で温熱を回収することも可能となる。このように、温水ヒートポンプ33で加熱された温水を活用する手段として、貯湯槽や給湯設備などの他、吸収式冷凍機66を用いても良い。
【0037】
吸収式冷凍機66の使用例としては、例えば次のような場合が挙げられる。すなわち夏季は電気室等を冷却する必要もエネルギーも大きく、一方で暖房や給湯の需要は少ない。そのため冷気供給が大きく多くなるにつれ、空気熱源機11で放出する温水の熱量も大きくなる。この温水を吸収式冷凍機66の再生器に直接導くか、または予熱源として利用することで、夏季に必要とされる冷熱生成のエネルギーを節約できることになる。
【0038】
図5に示す空調システム4では、筐体70の内部が、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の通気性部材71によって上空間72と下空間73に区切られている。さらに、これら上空間72の内部と下空間73の内部は、壁体74によってそれぞれ上下に仕切られており、下空間73において、壁体74の下側は第1の還気空間75になっており、壁体74の上側は第1の冷気空間76になっている。同様に、上空間72において、壁体74の下側は第2の還気空間77になっており、壁体74の上側は第2の冷気空間78になっている。また、上空間72と下空間73には、先に説明したものと同様の温水ヒートポンプ33を備えた空気熱源機11がそれぞれ設置されており、下空間73において、第1の還気空間75の空気は、下空間73に設置された空気熱源機11を通過して第1の冷気空間76に抜けるようになっている。同様に、上空間72において、第2の還気空間77の空気は、上空間72に設置された空気熱源機11を通過して第2の冷気空間78に抜けるようになっている。
【0039】
なお、下空間73の第1の冷気空間76と上空間72の第2の還気空間77は通気性部材71を介して連通している。このため、下空間73において第1の還気空間75から空気熱源機11を通過して第1の冷気空間76に抜けた空気は、通気性部材71を通過して上空間72の第2の還気空間77に略同温度で導入される。
【0040】
この空調システム4では、下空間73の第1の還気空間75に還気ダクト20が接続されており、還気ファン21の稼働により、空調領域10から排出された空気(還気RA)が、下空間73の第1の還気空間75に導入される。また、上空間72の第2の冷気空間78に給気ダクト22が接続されており、給気ファン23の稼働により、上空間72の第2の冷気空間78に溜められた冷気(給気SA)が給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。
【0041】
この空調システム4にあっては、空調領域10から排出された高温の空気(還気RA)が、還気ファン21の稼働により還気ダクト20を通って筐体70内の下空間73の第1の還気空間75に導入される。そして先ず、下空間73に設置された空気熱源機11の蒸発器30で冷却された中間空気MAが、下空間73の第1の冷気空間76に導入される。そして、この中間空気MAが、通気性部材71を通過して上空間72の第2の還気空間77に導入される。
【0042】
次に、上空間72の第2の還気空間77に導入された中間空気MAが、上空間73に設置された空気熱源機11の蒸発器30でさらに冷却され、冷気となって上空間72の第2の冷気空間78に導入される。こうして低温となった冷気(給気SA)が、給気ファン23の稼働により、上空間72の第2の冷気空間78から給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。
【0043】
この空調システム4によれば、空調領域10から排出された高温の空気(還気RA)を、筐体70の内部において、上下2段に配置された二つの空気熱源機11によって連続して冷却することにより、より低温の冷気(給気SA)を作り出すことができ、空調領域10に対する冷房能力が向上する。
【0044】
図6に示す空調システム5では、2次側負荷(図示せず)から空気熱源機11(温水ヒートポンプ33)の凝縮器31に温水を供給する温水戻り配管41の途中に熱交換器80を設けている。熱交換器80には、温水戻り配管41を流れる温水と熱交換して温水を温度調節する熱媒が、熱媒配管81を介して供給されている。また、熱媒配管81には熱媒流量調整弁82が設けられており、この熱媒流量調整弁82の開度が、空調領域10内の室温を測定する温度センサ50の測定値に基づいて調整されるようになっている。
【0045】
この空調システム5では、例えば、2次側負荷側に負荷が無く、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の温度が高い場合、熱交換器80で温水を冷却することで、温水ヒートポンプ33の熱媒を凝縮器31で確実に凝縮させることが可能となる。その結果、温水ヒートポンプ33の蒸発器30では、空気(還気RA)が有効に冷却され、空調領域10に対する冷房能力を担保できるようになる。このように、この空調システム5によれば、2次側負荷側の負荷の変動によらずに、空調領域10に対する冷房能力を有効に維持することができる。
【0046】
図7に示す空調システム6は、先に
図5で説明した空調システム4と同様に、筐体70の内部を通気性部材71によって上空間72と下空間73に区切り、さらに、これら上空間72の内部と下空間73の内部を、壁体74によって第1の還気空間75と第1の冷気空間76、第2の還気空間77と第2の冷気空間78に仕切った構成である。また、上空間72と下空間73には、先に説明したものと同様の空気熱源機11がそれぞれ設置されている。さらにこの空調システム6では、先に
図6で説明した空調システム5と同様に、2次側負荷(図示せず)から空気熱源機11(温水ヒートポンプ33)の凝縮器31に温水を供給する温水戻り配管41の途中に熱交換器80を設けている。熱交換器80には、温水戻り配管41を流れる温水と熱交換して温水を温度調節する熱媒が、熱媒配管81を介して供給されている。また、熱媒配管81には熱媒流量調整弁82が設けられている。この熱媒流量調整弁82の開度は、給気ダクト22に設けられた温度センサ51の測定値に基づいて調整されるようになっている。
【0047】
この空調システム6によれば、先に
図5で説明した空調システム4と同様に、空調領域10から排出された高温の空気(還気RA)を、筐体70の内部において、上下2段に配置された二つの空気熱源機11によって連続して冷却することにより、より低温の冷気(給気SA)を作り出すことができ、空調領域10に対する冷房能力が向上する。また、先に
図6で説明した空調システム5と同様に、例えば、2次側負荷側に負荷が無く、温水ヒートポンプ33の凝縮器31に供給される温水の温度が高い場合、熱交換器80で温水を冷却することで、温水ヒートポンプ33の熱媒を凝縮器31で確実に凝縮させることが可能となり、2次側負荷側の負荷の変動によらずに、空調領域10に対する冷房能力を有効に維持することができる。
【0048】
図8に示す空調システム7は、給気ダクト22に外気ダクト90が接続され、還気ダクト20に排気ダクト91が接続されている。また、これら給気ダクト22、外気ダクト90、還気ダクト20、排気ダクト91には、開閉ダンパ92がそれぞれ設けられている。
【0049】
この空調システム7によれば、給気ダクト22に設けられた開閉ダンパ92を開いて外気ダクト90に設けられた開閉ダンパ92を閉じ、還気ダクト20に設けられた開閉ダンパ92を開いて排気ダクト91に設けられた開閉ダンパ92を閉じれば、先に
図1で説明した空調システム1と同様に、空気熱源機11によって、空調領域10内を冷房空調しつつ、空調領域10から排出される高温の空気(還気RA)から温熱を回収して温水を加熱することができる。
【0050】
また一方、例えば冬季などのように外気温が低い場合は、給気ダクト22に設けられた開閉ダンパ92を閉じて外気ダクト90に設けられた開閉ダンパ92を開き、還気ダクト20に設けられた開閉ダンパ92を閉じて排気ダクト91に設けられた開閉ダンパ92を開く。これにより、空調領域10内を外気冷房することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態を例示して説明したが、本発明はここに示した形態に限定されない。例えば、空気熱源機11が備える温水ヒートポンプ33として、
図2に示した構成の他、「第12版 空気調和・衛生工学便覧 3 空気調和設備設計篇 編集・発行/社団法人 空気調和・衛生工学会 第194ページ
図4・17各種ヒートポンプ方式の比較」に記載されたような各種の方式のヒートポンプを用いることができる。また、
図5に示した空調システム4や
図7に示した空調システム6のように、二つの空気熱源機11を上下2段に配置するヒートポンプとして、東芝キヤリア株式会社製の循環加温ヒートポンプCAONSなどが利用できる。例えば
図7に示した空調システム6によれば、2次側負荷から戻される温水の水温が83℃で、下空間73の第1の還気空間75に導入される空気(還気RA)の温度(室温)が34.8℃の場合、中間空気MAの温度は28.4℃で、冷気空間78に導入される冷気(給気SA)の温度は22.0℃となり、2次側負荷に供給される温水の水温が88℃となる。
【0052】
また、以上の実施の形態ではいずれも空調領域10を冷房空調し、空調領域10から排出された空気から回収した温熱を利用して温水を加熱する例を説明したが、ヒートポンプの特性上、空調領域10を暖房空調し、空調領域10から排出された空気から回収した冷熱を利用して水を冷却するといった、逆の形態も同様に実現できる。
【0053】
図9に示す本発明の実施の形態にかかる空調システム8は、建物内に形成された空調領域10に暖気を供給して、空調領域10を暖房空調するものである。空調領域10として、電池製造工程などで利用される各種熱処理室、エイジングなどに利用される恒温室が例示される。
【0054】
この空調システム8では、筐体12の内部が、壁体15によって下側の還気空間16と、上側の暖気空間100に分かれている。還気空間16内の空気は、空気熱源機101を通過して暖気空間100に抜けるようになっている。還気空間16には、還気ダクト20の一端が接続され、この還気ダクト20の他端が、空調領域10に接続されている。還気ダクト20には還気ファン21が設けられており、この還気ファン21の稼働により、空調領域10から排出された空気(還気RA)が還気ダクト20を通って還気空間10に導入される。暖気空間100には、給気ダクト22の一端が接続され、この給気ダクト22の他端が、空調領域10に接続されている。給気ダクト22には給気ファン23が設けられており、この給気ファン23の稼働により、暖気空間100に溜められた暖気(給気SA)が給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。
【0055】
図10に示すように、この空調システム8の空気熱源機101は、蒸発器102と凝縮器103との間に設けられた熱媒配管104に熱媒を循環させて熱サイクルを行う冷水ヒートポンプ105を備えている。この冷水ヒートポンプ105は、熱媒配管104に、蒸発器102、圧縮器106、凝縮器103、膨張弁107を順に配置した構成を有する。凝縮器103には、送風ファン108が取り付けてある。この送風ファン108の稼動により、筐体12の還気空間16に導入された空気(還気RA)が、冷水ヒートポンプ105の凝縮器103に引き込まれる。
【0056】
冷水ヒートポンプ105の蒸発器102には、水を循環させる冷水往き配管110と冷水戻り配管111が接続されている。冷水往き配管110と冷水戻り配管111は、建物に敷設された冷却設備などの2次側負荷(図示せず)に適宜接続されている。冷水戻り配管111には、送水ポンプ112が設けられている。この送水ポンプ112の稼動により、冷水往き配管110と冷水戻り配管111を通じて、冷水ヒートポンプ105の蒸発器102と建物内の冷却設備などといった2次側負荷との間で水が循環させられる。
【0057】
図9に示すように、冷水往き配管110と冷水戻り配管111の間には、流量調整弁115を備えたバイパス流路116が設けられている。この流量調整弁115を開方向に動作させると、バイパス流路116を流れる水の量が増加し、冷水ヒートポンプ105の蒸発器102に供給される水の負荷が減少する。逆に、この流量調整弁115を閉方向に動作させると、バイパス流路116を流れる水の量が減少し、冷水ヒートポンプ105の蒸発器102に供給される水の負荷が増加する。
【0058】
空調領域10には、空調領域10内の空気の温度(室温)を測定する温度センサ50が設けられている。この温度センサ50の測定値に基づいて、流量調整弁115の開度が調整されるようになっている。
【0059】
以上のように構成された本発明の実施の形態にかかる空調システム8において、空気熱源機101が備える冷水ヒートポンプ105の作用により作られた暖気(給気SA)が筐体12の暖気空間100に溜められる。そして、給気ファン23の稼働により、暖気空間100に溜められた暖気(給気SA)が給気ダクト23を通って空調領域10に供給される。これにより、空調領域10内は、各種熱処理やエイジングなどに適した温熱環境に維持される。
【0060】
一方、空調領域10において、各種熱処理やエイジングなどに利用されて低温となった空気(還気RA)が、還気ファン21の稼働により空調領域10から排出され、還気ダクト20を通って筐体12の還気空間10に導入される。
【0061】
そして、筐体12の内部では、空気熱源機101に設けられた送風ファン108の稼動により、還気空間16に導入された空気(還気RA)が、冷水ヒートポンプ105の凝縮器103に引き込まれる。これにより、凝縮器103では、冷水ヒートポンプ105の熱媒が、空気(還気RA)から冷熱を回収して凝縮させられる。そして、空気(還気RA)から冷熱を回収して凝縮した冷水ヒートポンプ105の熱媒(液)は、膨張弁107を経て蒸発器102に循環供給される。そして、蒸発器102では、温水往き配管40と温水戻り配管41を通じて導入された水と熱交換し水を冷却する。これにより、冷水ヒートポンプ105の熱媒は蒸発させられる。こうして、水から温熱を回収して蒸発した温水ヒートポンプ105の熱媒(ガス)は、圧縮器106で圧縮された後、再び凝縮器103に循環供給される。
【0062】
こうして、空気熱源機101によって、空調領域10内を暖房空調し、各種熱処理やエイジングなどに適した温熱環境に維持する一方で、空調領域10から排出される低温の空気(還気RA)から冷熱を回収して水を冷却する。このように、冷水ヒートポンプ105の圧縮器102では、空調領域10内からの廃熱を活用して水を冷却することにより、2次側負荷で要求される冷熱エネルギーの削減を行うことができる。また同時に、温水ヒートポンプ105の凝縮器103では、熱媒(ガス)を凝縮させて空気(還気RA)から冷熱を回収することにより、空気(還気RA)を加熱して暖気(給気SA)を作り出すことができる。つまり、これまで外部へ廃熱として捨てていた熱エネルギーを有効活用することで、省エネルギーと省コストを達成することが可能となる。例えば、液化天然ガスを気化させる施設が港湾周辺にみられる。この冷排熱をダクトで導き暖房等の加熱源とすることができる。そのほか、以下の実施形態も提示できる。
【0063】
この空調システム8でも同様に、空調領域10内の空気の温度(室温)を温度センサ50で測定して、流量調整弁115の開度を調整することにより、室温を一定に制御することが可能である。さらに、この空調システム8でも同様に、先に
図3〜8で説明した場合と同様な設計変更を適宜行うことが可能である。