【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本願発明は、間を空けて躯体に固定して対向するように配した状態で少なくとも2本一組で用いられるものとされ、それらの間にシートである第1シート、及び前記第1シートよりも難燃性の高いシートである第2シートを共に略水平に張り渡すことができるようになっている、長尺の固定材である。
そして、少なくとも2本の前記固定材はともにその下方に、前記第1シートの一辺と、それに対向する辺をそれぞれ固定するために用いられる第1固定手段を備えているとともに、2本の前記固定材はともにその前記第1固定手段よりも上方に、前記第2シートの一辺と、それに対向する辺をそれぞれ固定するために用いられる第2固定手段を備えており、2本の前記固定材の前記第1固定手段のそれぞれに前記第1シートの一辺とその対向する辺を固定させ、且つ2本の前記固定材の前記第2固定手段のそれぞれに前記第2シートの一辺とその対向する辺を固定させることで、少なくとも2本の固定材の間に、前記第1シートよりも所定の高さだけ上に前記第2シートが位置するようにして、前記第1シート、及び前記第2シートを張り渡したシート構造体を得られるようになっている。
この固定材を用いると、長尺の2本の固定材の間に、上から第2シートと第1シートが略平行な状態で配されることになる。特に、第1シートと第2シートを含むシート構造体を天井に用いる場合、人からは通常、下側に位置する難燃性を持たない第1シートが見える。これにより、人に、例えば美観上好ましいことが多い第1シートを見せられるようになる。他方、第1シートの上方に張り渡される難燃性の相対的に高い(好ましくは、難燃性を有する)第2シートにより、シート構造体の難燃性が担保されることになる。
なお、本願における第1シートと、第2シートにおける「シート」という文言は、樹脂単体でできたものが典型であるフィルムや、例えば繊維で織られた或いは編まれた織布或いは編布や、上記織布或いは編布である基材の少なくとも片側の面を樹脂やゴムでコーティングしたものが典型である膜材、或いは樹脂等で多層に構成されたシートなど、シート状のものを特に限定なく含む意味で用いる。
第1シートと第2シートの一辺とそれに対向する辺はいずれも、多くの場合は直線であり、第1シートと第2シートは多くの場合矩形である。
【0006】
本発明の固定材は、上述のように第1固定手段と第2固定手段とを備えている。第1固定手段は、それ単体で第1シートを固定するものとなっていても良いし、別の部材と併せて第1シートを固定するものとなっていても良い。第2固定手段は、それ単体で第2シートを固定するものとなっていても良いし、別の部材と併せて第2シートを固定するものとなっていても良い。 本発明の固定材は、その長さ方向の全体にわたる、固定材の使用時において略水平(或いは水平)となる板状である板状体を前記第2固定手段として備えていても良い。この場合、前記第2シートは、その一辺及びその対向する辺の近傍をビス等の打込み材により前記板状体ごと貫かれることで、その一辺及びその対向する辺を少なくとも2本の前記固定材の前記第2固定手段に固定されるようになっていても良い。
固定材が板状体を備える場合、前記板状体の外側縁には、垂直に上方に延びる上板材が設けられていても良い。なお、本願では、固定材の内側、外側の概念は、2つの固定材の他方の固定材に近い側を内側、他方の固定材から遠い側を外側として定義される。
固定材は建築物の柱、梁、天井、壁などの躯体に固定される必要があるところ、上板材を持つ固定材であれば、上板材の外側面を例えば壁である躯体の内側面に添わせた状態で、上板材を内側から貫いた釘、ビス等の打込み材を躯体に打込むことにより、簡単に固定材を躯体に固定できるようになる。
【0007】
第1固定手段は、固定材の所々に存在するようになっていても良い。他方、前記第1固定手段は、前記固定材の長さ方向の全長にわたるようになっていても良い。更に言えば、固定材は、その長さ方向の全長にわたって、その長さ方向に垂直に切った場合の断面形状が同じになるようになっていても良い。固定材のその長さ方向に垂直に切った場合の断面形状がその長さ方向のすべての部分で同じになるようになっているのであれば、固定材を押し出し成形で製造することが容易になる。第1固定手段が固定材の長さ方向の全長にわたって存在することは、固定材のその長さ方向に垂直に切った場合の断面形状がその長さ方向のすべての部分で同じになるようにするに好適である。
前記第1固定手段は、例えば、前記板状体の下側に設けられていても良い。第1固定手段が前記板状体の下側に設けられている場合、前記板状体の下側且つ前記板状体の前記第1固定手段よりも内側には、前記板状体の全長にわたる、前記板状体の下方に延びる下板材が設けられており、前記下板材の下端に当接して上方に曲折された前記第1シートの一辺及びその対向する辺が、前記第1固定手段により固定されるようになっていても良い。第1シートは、上述のように、第2シートよりも下側に位置する。上述の如き下板材を設ければ、下板材の下端の位置を第1シートの上側の面の高さとすることができるので、第1シートの高さを位置決めするに便利である。第1シートは、主に美観の観点から、その全体を水平にするのが好ましいので、一の固定材の下板材の下端の高さは一定にされるべきであり、また、2つの固定材の下板材の下端の高さも一定にされるべきである。
板状体を有する固定材における前記第1固定手段は、前記板状体の下方に位置し下方に向けて開口するようになっている、前記板状体の全長にわたる開口部と、前記第1シートの一辺又はその対向する辺と固定できるようになっており、且つ前記開口部に挿入することができるようになっている、前記板状体の全長にわたる固定体とを備えていても良い。この場合、前記開口部の内部には、前記開口部の内部に前記固定体を挿入することを妨げない一方で、前記開口部から前記固定体が脱落するのを防止する抜止手段が設けられていても良い。このような第1固定手段によれば、固定材の長さ方向の全長にわたって、第1シートの一辺又はその対向する辺を容易に固定することができるようになるとともに、第1シートの一辺又はその対向する辺を2つの固定材に固定するのと同時に、第1シートに対して、2つの固定材の幅方向に、ある程度の張力を入れることも可能となる。これは、シート構造体の、特にはシート構造材のうちの第1シートの美観を向上させるに好適である。
シート構造体の美観を更に高めるには、第1固定手段、例えば、上述の開口部を隠すための、第1シートの下面と略面一になる長尺の下面を有し、第1固定手段による第1シートの一辺又はその対向する辺の固定が終わった後に、第1固定手段を隠すようにして固定材に対して固定できるようにされた化粧材を、固定材が備えているのが好ましい。
【0008】
本願発明者は、また、本願発明の一態様として以下の如き部品をも提案する。かかる部品は、本願発明が、第1固定手段と下板体とを備えている場合における上述の固定材を構成するものであり、前記第1固定手段と、前記下板とを一部材にしたものである。
この場合の固定材における部品の残部は、板状体、又は板状体と上板材を一体にしたものである。この場合の板状体は長尺の単なる板で良く、板状体と上板材を一体にしたものは長尺のL字の部材であっても良い。
固定材を上述の如く、部品とその残部に分けることにより、特にその残部については汎用品が多いからその選択の幅を広げることができ、また、その残部に対する上述の部品の位置決めの幅が広がる。
固定材の部品と、その残部は、ともに長尺であり、それらの長さ方向のすべての部分において、それらの長さ方向に垂直な断面が同一の形状となるようにすることができ、そうすることにより、例えば押出成形によるその製造が容易となる。
【0009】
本願発明者は、また、本願発明の一態様として以下の如きシート構造体をも提案する。以下のシート構造体は、上述した固定材と同様の構成を採用することにより、各固定材が奏する既述の作用効果を奏する。
本願のシート構造体の一例は、シートである第1シートと、前記第1シートよりも難燃性のシートである第2シートと、間を空けて躯体に固定して平行に配した状態で少なくとも2本一組で用いられるものとされ、それらの間に前記第1シート、及び前記第2シートを共に略水平に張り渡すことができるようになっている、長尺の固定材であり、2本の前記固定材はともにその下方に、前記第1シートの一辺と、それに対向する辺をそれぞれ固定するために用いられる第1固定手段を備えているとともに、2本の前記固定材はともにその前記第1固定手段よりも上方に、前記第2シートの一辺と、それに対向する辺をそれぞれ固定するために用いられる第2固定手段を備えており、2本の前記固定材の前記第1固定手段のそれぞれに前記第1シートの一辺とその対向する辺を固定させ、且つ2本の前記固定材の前記第2固定手段のそれぞれに前記第2シートの一辺とその対向する辺を固定させることで、2本の固定材の間に、前記第1シートよりも所定の高さだけ上に前記第2シートが位置するようにして、前記第1シート、及び前記第2シートを張り渡すことができるようになっている、もの2つと、かならる、2本の固定材の間に、前記第1シートよりも所定の高さだけ上に前記第2シートが位置するようにして、前記第1シート、及び前記第2シートを張り渡された、シート構造体である。
【0010】
前記シート構造体は、例えば天井である。
前記第1シートが、単一の樹脂でできているフィルムである場合、その素材は例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリウレタン樹脂(PU)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、ナイロン樹脂(PA)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC),メチルペンテン樹脂(TPX)などの合成樹脂とすることができる。例えば、上述の樹脂の中の1つであるPVCでできたフィルムは難燃性を持たないが、そのような塩化ビニル樹脂フィルムであっても、より難燃性の高い、望ましくは難燃性を持つ第2シート組合せることにより、本願のシート構造体における第1シートとして用いることができるようになる。
第1シートはまた、例えば天然繊維や合成繊維で織られた或いは編まれた織布或いは編布であってもよく、さらに、前記織布或いは編布である基材の少なくとも片側の面を樹脂でコーティングしたものが典型である膜材である場合もあるが、その場合における基材をコーティングする樹脂としては、上述したものを用いることができる。
また、第1シートは、樹脂等で多層に構成されている場合もあり得るが、そのうちの樹脂で構成されている層を構成する樹脂としては、上述したものを用いることができる。
第2シートは、第1シートよりも難燃性が高い。好ましくは第2シートは難燃性を持つ。第2シートは例えば、ガラスクロスである。他の例としては、第2シートはカーボン繊維でできたカーボンクロスであったり、フッ素繊維でできたフッ素繊維布、フッ素樹脂フィルム等が利用できる。
【0011】
本願発明者は、また、本願発明の一態様として以下の如きシート構造体の施工方法をも提案する。以下のシート構造体の施工方法は、上述した固定材と同様の構成を採用することにより、各固定材が奏する既述の作用効果を奏する。
本願のシート構造体の施工方法の一例は、間を空けて躯体に固定して平行に配した状態で少なくとも2本一組で用いられるものとされ、それらの間に第1シート、及び前記第1シートよりも難燃性の第2シートを共に略水平に張り渡すことができるようになっている、長尺の固定材であり、2本の前記固定材はともにその下方に、前記第1シートの一辺と、それに対向する辺をそれぞれ固定するために用いられる第1固定手段を備えているとともに、2本の前記固定材はともにその前記第1固定手段よりも上方に、前記第2シートの一辺と、それに対向する辺をそれぞれ固定するために用いられる第2固定手段を備えているもの、少なくとも2本が、前記躯体に固定されている場合に、少なくとも2本の前記固定材の前記第1固定手段のそれぞれに前記第1シートの一辺とその対向する辺を固定させる過程、2本の前記固定材の前記第2固定手段のそれぞれに前記第2シートの一辺とその対向する辺を固定させる過程、を実行することで、2本の固定材の間に、前記第1シートよりも所定の高さだけ上に前記第2シートが位置するようにして、前記第1シート、及び前記第2シートを張り渡す、シート構造体の施工方法である。
この施工方法の前に、上述した固定材2本を、間をあけ平行に躯体に対して固定する過程が含まれていても良い。
【0012】
本願のシート構造体の施工方法では、前記固定材として、その長さ方向の全体にわたる、前記躯体の下向きの面である取付面にその上側の面が当接させられる板状である板状体を前記第2固定手段として備えているものを用いるとともに、前記板状体と、前記第2シートの一辺及びその対向する辺の近傍とをまとめて貫かせた状態で、前記躯体の下側の面に打込み材を打込むことにより、前記躯体の前記取付面に前記板状体を取付けるとともに、前記第2シートの一辺及びその対向する辺を2本の前記固定材の前記第2固定手段に固定しても良い。
板状の第2固定手段の上面を例えば梁や天井の下面に当接させ、釘、ネジ等の打込み材を打込むことで固定材を躯体に固定することとするとともに、その打込み材を用いて第2シートを固定することで、第2シートの固定の手間を軽減することが可能となる。
本願のシート構造体の施工方法は、また、前記第2シートの一辺を固定する固定材に打込まれた打込み材と、前記第2シートの一辺に対向する辺を固定する固定材に打込まれた打込み材との間に線条体を張り渡すことにより、前記線条体により前記第2シートを下から支えられるようにする過程、を更に含んでも良い。
第2シートを打込み材を用いて固定材に固定する場合には、第2シートに張力を入れるのが難しい。上述の線条体を第2シートの下からの支えに用いることとすれば、張力を入れずとも第2シートが下方向に撓むことを防止できる。なお、線条体の打込み材への固定は、接着剤等を用いた不可逆な固定であっても、線条体を打込み材に巻き付けてそれらの間の摩擦力によって両者を固定するような不可逆でない固定であっても良い。後者の方が作業の負荷が小さく、またそれでも上述の作用効果を得るには十分である。
前記線条体を、平面視した場合に、2本の前記固定材の間に、頂点で連続した複数の菱型が連続して描かれるようにして、前記打込み材の間にジグザグに張り渡すとともに、前記菱型の前記固定材と接触する部分における2本の前記線条体がなす角が33.4°以下となるようにしても良い。線条体で第2シートを下支えすることにより第2シートの下方向の撓み及び落下を防止できるのは上述の通りであるが、線条体の間隔が広いと第2シートの下方向への撓みが生じるおそれがある。かかるおそれを防止するには、上述のように線条体を張るようにして線条体と線条体の間の間隔を狭めるのが効果的である。
なお、線条体としては、釣り糸、ピアノ線等糸状のものであれば利用可能である。