(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373011
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】プローブカード
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20180806BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
G01R1/073 E
H01L21/66 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-25573(P2014-25573)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-152393(P2015-152393A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507000589
【氏名又は名称】エス・ブイ・プローブ・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SV PROBE PTE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】森山 光広
(72)【発明者】
【氏名】八木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】西田 諭
(72)【発明者】
【氏名】宮本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】新 博昭
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】岩下 尚典
(72)【発明者】
【氏名】瀬上 恭史
【審査官】
永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−142437(JP,A)
【文献】
特開平10−319044(JP,A)
【文献】
特開昭60−82866(JP,A)
【文献】
米国特許第4901013(US,A)
【文献】
特開2001−108708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/073
G01R 31/26
G01R 31/28
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置に接続される配線を含む基板と、
前記基板の下方側で前記基板に平行に配置されるガイド板であって、板表面に垂直に貫通する複数の円形貫通孔を有するガイド板と、
前記基板と前記ガイド板とを接続する接続部材と、
一方端が前記基板の外周側で針接続部に接続されて、前記基板の中央側に向かって前記接続部材を経由して延伸し、次いで針中間固定部を経由して、さらに前記基板の中央側に向かって延伸し、前記一方端から他方端までの全長に亘って一様な直径を有する複数の針と、
を備え、
前記各針は、
前記針中間固定部で固定され、前記針中間固定部の前記中央側の端面から突き出す梁部と、
前記梁部の先端から前記ガイド板側に曲げられ、前記円形貫通孔との間の隙間寸法が所定の値に設定された直径を有し、先端部が前記円形貫通孔を垂直に通る針先部と、
を含み、
前記針の直径の大きさは、隣接する針先部の間の最短ピッチに基づいて設定され、
前記中央側の端面から前記梁部の先端までの前記梁部の長さは、目標針圧値と、前記針の直径に応じて設定されることを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブカードにおいて、
前記目標針圧値の下で、前記梁部の長さは、前記直径が細くなるにしたがって短く設定されることを特徴とするプローブカード。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプローブカードにおいて、
前記針先部は、前記針先部の先端部と前記梁部の先端との間に屈曲部を有し、前記屈曲部の先端から前記先端部までの間の部分が前記円形貫通孔の貫通方向に平行であることを特徴とするプローブカード。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプローブカードにおいて、
前記接続部材は、前記基板の下面と前記針先部の先端部との間を予め設定された針高さ寸法とする針高さ調整部材であることを特徴とするプローブカード。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプローブカードにおいて、
前記針中間固定部は、前記ガイド板または前記基板に設けられることを特徴とするプローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
プローブカードは、テスタ装置に信号線等によって電気的に接続される基板と、この基板に接続されて被測定物であるLSIチップのパッドに接触するプローブと呼ばれる針とを備えて構成される。プローブカードの種類として、カンチ型プローブカードと垂直型プローブカードが知られている。
【0003】
カンチ型プローブカードは、基板の外周側で針の一方端が固定されて、この針が基板の中央側に向けて斜め方向に延び、パッドに向けて斜め方向に曲げられた片持ち梁として構成されており、簡単な構造である。例えば、特許文献1には、先端側に向けて針径が細くなるプローブを備えたカンチ型プローブカードが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、針の先端部が、針の動く方向を規制するガイド板に設けられたガイド孔を貫通するカンチ型プローブカードが開示されている。このガイド孔は長孔形状を有する。
【0005】
さらに、特許文献3には、ガイドシートの貫通孔を貫通して、針の先端がパッドに押圧されて接触するプローブを備えたカンチ型プローブカードが開示されている。このガイドシートの貫通孔は、上面から下面に向けて孔面積が小さくなる逆円錐型形状を有する。
【0006】
また、垂直型プローブカードは、基板からパッドに向けて垂直に下りる針を取り付けて、パッドとの接触の際における針の滑りを防止している。垂直型プローブカードの例として、特許文献4には、湾曲部を有するピン形状で先端が被検査基板であるウエハの電極に電気的に接触するプローブ針と、複数のプローブ針を垂下して固定する上側ガイド板と、プローブ針が貫通するガイド孔を有する下側ガイド板とを備える垂直型プローブカードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−108708号公報
【特許文献2】特開2011−99698号公報
【特許文献3】特開平7−183341号公報
【特許文献4】特開平11−038044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、カンチ型プローブカードの針は、基板の中央側に向けて斜め方向に延びているため、パッドの表面に対して斜めに当たる。このため、針とパッドの接触時に針が滑って所定のパッド領域を超える場合がある。
【0009】
一方で、垂直型プローブカードは、上記のような心配はないが、可撓性を有する湾曲部を備えた針を上側ガイド板と下側ガイド板の両方に通すような複雑な構造であるため、プローブカードの製造工程における作業工数や部材費用が増加する。
【0010】
本発明の目的は、カンチ型の構造を採りつつ、パッドとの接触の際における針先部がパッドの表面上を滑ることを防止することを可能とするプローブカードを提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、垂直型プローブカードに比べて簡単な構造を有するカンチ型に近いプローブカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るプローブカードは、外部装置に接続される配線を含む基板と、前記基板の下方側で前記基板に平行に配置されるガイド板であって、板表面に垂直に貫通する複数の円形貫通孔を有するガイド板と、
前記基板と前記ガイド板とを接続する接続部材と、一方端が基板の外周側で針接続部に接続されて、基板の中央側に向かって
前記接続部材を経由して延伸し、
次いで針中間固定部を経由して、さらに基板の中央側に向かって延伸し、
前記一方端から他方端までの全長に亘って一様な直径を有する複数の針と、を備え、前記各針は、前記針中間固定部で固定され、前記針中間固定部の前記中央側の端面から突き出す梁部と、前記梁部の先端から前記ガイド板側に曲げられ、前記円形貫通孔との間の隙間寸法が所定の値に設定された直径を有し、先端部が前記円形貫通孔を垂直に通る針先部と、を含み、前記針の直径の大きさは、隣接する針先部の間の最短ピッチに基づいて設定され、前記中央側の端面から前記梁部の先端までの前記梁部の長さは、目標針圧値と、前記針の直径に応じて設定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプローブカードにおいて、前記目標針圧値の下で、前記梁部の長さは、前記直径が細くなるにしたがって短く設定されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るプローブカードにおいて、前記針先部は、前記針先部の先端部と前記梁部の先端との間に屈曲部を有し、前記屈曲部の先端から前記先端部までの間の部分が前記円形貫通孔の貫通方向に平行であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るプローブカードにおいて、
前記接続部材は、前記基板の下面と前記針先部の先端部との間を予め設定された針高さ寸法とする針高さ調整部材
であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るプローブカードにおいて、前記針中間固定部は、前記ガイド板または前記基板に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、針先部の先端部は、ガイド板の円形貫通孔を垂直に通って、パッドと接触する。これにより、針先部の先端部がパッドの表面に対してほぼ又は、限りなく垂直に接触するため、針先部の滑りを抑制することができる。
【0018】
また、上記構成によれば、針先部の先端部と円形貫通孔との隙間寸法は所定の値に設定されている。これにより、針先部のパッドへの接触時に針先部の先端部がパッドの表面に対して傾いてしまうことを抑制することができ、針先部の滑りを抑制することができる。
【0019】
また、上記構成によれば、従来の垂直型プローブカードのように上側ガイド板と下側ガイド板の2枚のガイド板を用いておらず、針先部を複数のガイド板の貫通孔に通す必要がないため、部材の点数を減らすことができ、より簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施形態のプローブカードを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、プローブカード10の側面図である。
図2は、
図1におけるプローブカード10のA−A線断面図である。なお、
図1の右下には、点線Bの部分拡大図を示している。
【0023】
プローブカード10は、基板12と、基板12の下方側で基板12に平行に配置されるガイド板14と、一方端が基板12の外周側で接続されて、基板12の中央側に向かって延伸し、針中間固定部22を経由して基板12の中央側に向かってさらに延伸する針16とを備える。なお、基板12に電気的に接続されるテストヘッド6は、プローブカード10の構成要素ではないが、図示しないテスタ装置に取り付けられる。
図1及び
図2では、基板12の面に平行な面内で直交する2軸をX軸、Y軸とし、基板12の面に垂直な軸をZ軸とする。
【0024】
基板12は、円形または角形の外形形状を有する配線基板である。基板12は、ガラスエポキシ樹脂等によって構成される。基板12は、テストヘッド6に接続される複数の電極が配置される上面と、複数の針16が取り付けられる下面とを有する。
【0025】
針接続パッド20は、基板12の下面の外周側において、所定の位置に配置される。針接続パッド20は、銅等を用いて構成される。針接続パッド20は、図示しない導電性部材を介して基板12の上面の配線に電気的に接続される。針接続パッド20には、複数の針16の一方端が固定される。
【0026】
ガイド板14は、円形または角形の外形形状を有する板部材である。ガイド板14は、基板12の下方側で基板12に平行に配置される。ガイド板14は、絶縁性が高い材料で構成されており、例えば、セラミックやガラス等を用いて構成される。ガイド板14は、板表面に垂直に貫通する複数の円形貫通孔18を有する。
【0027】
円形貫通孔18は、所定の直径d
2を有する。円形貫通孔18は、所定のピッチpでY方向に沿って並んで形成される。
【0028】
針高さ調整部材19は、環状の外形形状を有し、ガイド板14と基板12とを接続する機能を有する。針高さ調整部材19は、基板12の外周側と中央側のほぼ中間に配置される。針高さ調整部材19は、エポキシ系樹脂やセラミック、ガラス等の絶縁材料を用いて構成される。
【0029】
針高さ調整部材19は、基板12の下面と針先部26の先端部28との間を予め設定された距離となるように高さ寸法が設定される。針高さ調整部材19は、針16を通すための貫通孔17を有する。なお、貫通孔17は、針16を通すために予め形成されたものでもよく、針16の周囲をエポキシ系樹脂で固めた際に結果的に形成される孔であってもよい。
【0030】
針16は、基板12の中央側に向かって延伸して、LSIチップのパッドに向けて曲げられた形状を有するプローブである。針16は、タングステン、ベリリウム銅、貴金属合金等の材料で構成される。
【0031】
針16は、基板12の外周側で針接続パッド20に接続される一方端である固定端と、LSIチップのパッドと接触する他方端である針先部26とを有する。針16は、一方端から他方端までの全長に亘って一様な直径d
1を有する。直径d
1の大きさは、隣接する針16の間の最短ピッチpに基づいて定められる。ここで、一様な直径d
1とは、針16の一方端から他方端までの全長に亘って同一の直径であることを意味するが、針先部26の先端については、仕様に合わせて形状や直径を変更するものも含まれる。
【0032】
針16は、針中間固定部22で固定され、針中間固定部22の端面のうち基板12の中央側の端面から突き出す梁部24を有する。針16は、梁部24の先端からガイド板14側に曲げられて形成された針先部26を有する。針先部26は、円形貫通孔18を垂直に通る先端部28を有する。
【0033】
ここで、針先部26において、針中間固定部22の端面のうち基板12の中央側の端面から梁部24の先端までの梁部24の長さLは、目標針圧値T
Pと、針16の直径d
1に応じて設定される。ここで、梁部24のたわみ量をδとし、Eを弾性係数とし、針圧をP
nとすると、たわみ量δは、δ=(P
n×L
3)/(3×E×d
14×π/64)の式で求められる。この式において、たわみ量δ、弾性係数E、直径d
1を一定とすると、針圧P
nは長さL
の3乗に反比例することが分かる。すなわち、Lを長くすれば針圧P
nは下がり、Lを短くすれば針圧P
nは上がる。そして、目標針圧値T
Pの下で、梁部24の長さLは、直径d
1が細くなるにしたがって短く設定される。
【0034】
針中間固定部22は、エポキシ系樹脂やセラミック、ガラス等の絶縁材料を用いて構成される。針中間固定部22は、針16の全長が長くなる場合であっても、長さLを短くすることで針圧P
nを高めることができるように設けられている。針中間固定部22は、ガイド板14の中央側に配置されて、複数の針16を固定する。なお、針中間固定部22は、基板12側に配置されてもよい。なお、ここでは、針中間固定部22と針高さ調整部材19は別部材として記載しているが、これを一体として形成することも可能である。
【0035】
続いて、上記構成のプローブカード10の作用について説明する。プローブカード10の針16において、針先部26の先端部28は、ガイド板14の円形貫通孔18を垂直に通って、パッドと接触する。これにより、針先部26の先端部28がパッドの表面に対してほぼ又は、限りなく垂直に接触するため、先端部28がパッドに接触した際の針先部26の滑りを抑制することができる。
【0036】
また、上記プローブカード10によれば、針先部26の先端部28と円形貫通孔18との隙間寸法は所定の値に設定されている。これにより、針先部26のパッドへの接触時に針先部26の先端部28が傾く力が作用した場合であっても円形貫通孔18によって先端部28の動きが止められる。したがって、針先部26がパッドの表面に対して傾いてしまうことを抑制することができる。
【0037】
さらに、プローブカード10では、従来の垂直型プローブカードのように上側ガイド板と下側ガイド板の2枚のガイド板を用いておらず、一枚のガイド板14のみを用いて構成されている。したがって、針先部26を複数のガイド板の貫通孔に通す必要がないため、従来の垂直型プローブカードに比べて、より簡単に製造することができ、また、部材の点数を減らすことができる。
【0038】
プローブカード10では、上記のように、梁部24の長さLは、目標針圧値T
Pの下で、直径d
1が細くなるにしたがって短く設定される。このため、隣接する針先部26の間のピッチpを狭ピッチとするために直径d
1を細くする場合にも長さLを調整することで針16の針圧P
nを目標針圧値T
Pに合わせることができる。
【0039】
次に、プローブカード10の第1変形例であるプローブカード10aについて説明する。
図3は、プローブカード10aにおいて、
図1の点線Bの部分拡大図に対応する図である。プローブカード10aとプローブカード10の相違点は、屈曲部25である。以下では、この相違点を中心に説明する。
【0040】
屈曲部25は、梁部24との間のなす角度が所定の角度θ
1となり、先端部28との間のなす角度が所定の角度θ
2となるように折り曲げ加工されている。一般的に、梁部24の長さLが短くなるほど、針16がパッドに接触した際の針圧が高くなるため、針16は撓み易いことが好ましい。プローブカード10aは、上記のように折り曲げ加工がなされているため、折り曲げ加工が無い場合に比べて、針16がパッドに接触した際に撓み易くなるという利点がある。また、
θ2を180°に近づけたり、針先部26の長さを長くすることで、より撓み易くすることも可能である。
【0041】
なお、プローブカード10,10aでは、LSIチップのパッドは、Y方向に沿って一列に並んで配置されるものとして説明したが、パッドが二列に千鳥配置される場合がある。
図4は、パッドが二列に千鳥配置されたプローブカード10bを示す図である。プローブカード10,10a,10bでは、千鳥配置されたパッドを狭ピッチとする場合に、
図4に示されるように針16が上下2段に分けて取り付けられることがある。このような場合、上段の針16のうち梁部24の先端から先端部28までの長さがプローブカード10,10aに比べてより長くなるため、屈曲部25を設けることで好適に座屈の発生を抑制することができる。また、プローブカード10では、針16は
図2に示されるように2辺に配置されるものとして説明したが、この例に限らず、例えば、4辺に配置されるものであってもよい。プローブカード10では、
図2に示されるように針16は、直線状に延伸するものとして説明したが、
図5に示されるように折り曲げ形状を有するものを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
6 テストヘッド、10,10a,10b プローブカード、12 基板、14 ガイド板、16 針、17 貫通孔、18 円形貫通孔、19 針高さ調整部材、20 針接続パッド、22 針中間固定部、24 梁部、25 屈曲部、26 針先部、28 先端部。