特許第6373017号(P6373017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6373017直流給電システム、電源供給装置、直流給電システムにおける給電制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373017
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】直流給電システム、電源供給装置、直流給電システムにおける給電制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20180806BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20180806BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20180806BHJP
   H02J 5/00 20160101ALI20180806BHJP
【FI】
   H02J1/00 309C
   H02J3/38 130
   H02J3/38 180
   H02J3/46
   H02J5/00
【請求項の数】10
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-39775(P2014-39775)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-164384(P2015-164384A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】則竹 政俊
(72)【発明者】
【氏名】津村 哲史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 英徳
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 圭一
(72)【発明者】
【氏名】早川 慶朗
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−083051(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/121618(WO,A1)
【文献】 特開2012−070536(JP,A)
【文献】 特開2011−083052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0209441(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/039601(WO,A1)
【文献】 特開2011−083058(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0001932(US,A1)
【文献】 特開2011−188607(JP,A)
【文献】 特開平10−028330(JP,A)
【文献】 特開2014−003796(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0092464(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0148213(US,A1)
【文献】 特開2004−266951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00− 1/16
H02J 3/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に直流電力を供給する直流給電システムであって、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出する検出部と、
前記検出された結果に基づいて前記給電経路への直流電力の供給を制御する制御部と、
前記制御部を含み、パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給する電源供給装置と、
前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を、前記パワーコンディショナと前記給電経路との間で遮断する第1遮断部と
を備え、
太陽光発電装置が発電した電力を前記パワーコンディショナが直流電力に変換して、前記パワーコンディショナが変換した後の直流電力が前記制御部の制御に応じて供給されるように前記給電経路が構成されており、
前記制御部は、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御し、
前記制御部は、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記電源供給装置の蓄電装置から前記給電経路に前記調整用電圧で給電を開始させて、
前記パワーコンディショナは、
前記調整用電圧を参照し、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整して起動し、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給する
ことを特徴とする直流給電システム。
【請求項2】
記制御部は、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出し、前記制御部による制御に応じて前記パワーコンディショナから前記給電経路に直流電力が供給される場合に、前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を前記第1遮断部によって遮断させる
ことを特徴とする請求項1に記載の直流給電システム。
【請求項3】
記商用電力系統の受電点から前記直流電源装置までの間に設けられ、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように、前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を遮断する第2遮断部
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直流給電システム。
【請求項4】
前記太陽光発電装置が発電した電力を変換して、前記変換した後の直流電力を前記給電経路に供給するという前記パワーコンディショナの動作を、前記直流電源装置から給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した後に、前記制御部が一旦停止させるとともに、
前記制御部は、前記パワーコンディショナの前記動作を一旦停止させた後に、前記商用電力系統に向けての電力の供給を遮断した状態にあることを検出して、前記電力の供給を遮断した状態にあることを検出した後に、前記動作が一旦停止した状態にあるパワーコンディショナが再起動するように当該パワーコンディショナを制御して、前記パワーコンディショナが再起動した後に前記パワーコンディショナから前記給電経路に前記直流電力を供給させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の直流給電システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、
前記パワーコンディショナの前記動作を一旦停止させるとともに、
前記パワーコンディショナの前記動作を一旦停止させた後に、前記パワーコンディショナの起動を指示する操作が行われたことを検出して、前記指示する操作の検出結果に応じて前記パワーコンディショナを再起動させる
ことを特徴とする請求項4に記載の直流給電システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記パワーコンディショナの起動を指示する操作が行われたことを検出した後に、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出することと、
前記太陽光発電装置から出力可能な電力が所定値以上の電力であることと、
がともに満たされる場合に前記パワーコンディショナを再起動させる
ことを特徴とする請求項5に記載の直流給電システム。
【請求項7】
前記検出部と、
前記直流電源装置と、
記太陽光発電装置と、
前記パワーコンディショナと、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の直流給電システム。
【請求項8】
商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に直流電力を供給する直流給電システムにおける電源供給装置であって、
前記給電経路への直流電力の供給を制御する制御部と、
を備え、
前記直流給電システムは、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出する検出部を備えており、
さらに、太陽光発電装置が発電した電力をパワーコンディショナが直流電力に変換して、前記パワーコンディショナが変換した後の直流電力が前記制御部の制御に応じて供給されるように前記給電経路が構成されており、
前記給電経路と前記パワーコンディショナが直流電力を出力する出力端子との間に第1遮断部が設けられており、
前記制御部は、
前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を前記第1遮断部に遮断させ、
前記制御部は、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御し、
前記制御部は、
前記直流電源装置から給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記電源供給装置の蓄電装置から前記給電経路に、前記パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧で給電を開始させて、
前記パワーコンディショナに、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整させて自らを起動させ、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給させる
ことを特徴とする電源供給装置。
【請求項9】
商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に直流電力を供給する直流給電システムにおける給電制御方法であって、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出部により検出する手順と、
パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給する手順と、
前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を、前記パワーコンディショナと前記給電経路との間で遮断する手順と、
太陽光発電装置が発電した電力を前記パワーコンディショナが直流電力に変換する手順と、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御する手順と、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給する手順と、
前記パワーコンディショナに、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整させて自らを起動させ、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給させる手順と
を含むことを特徴とする給電制御方法。
【請求項10】
商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に直流電力を供給するとともに、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出する検出部を備え、さらに、太陽光発電装置が発電した電力を変換するパワーコンディショナから、前記パワーコンディショナが変換した後の直流電力が供給されるように前記給電経路が構成される直流給電システムであって、前記給電経路と前記パワーコンディショナが直流電力を出力する出力端子との間に第1遮断部が設けられており、前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を前記第1遮断部に遮断させる直流給電システムのコンピュータに、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御するステップと、
前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給するステップと、
前記パワーコンディショナに、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整させて自らを起動させ、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給させるステップと
実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧の給電経路に接続された負荷装置に電力を供給する直流給電システム、電源供給装置、直流給電システムにおける給電制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンタや通信局舎などにおいては、ルータやサーバ等の各種負荷装置へ直流電力を供給する直流給電システムの構築が進められている。この直流給電システムは、交流電力系統(商用電力系統)を入力とする直流電源装置により、商用交流電力を所定の電圧の直流電力に変換し、給電経路(電力供給線)を介して複数の負荷装置へ供給する。
【0003】
この交流電力系統において系統事故等の異常が生じて、直流電源装置から負荷装置に直流電力を正常に出力できなくなる場合に備え、バックアップ用としてエンジン発電機を備えることが多い。しかし、このエンジン発電機は、排ガスに二酸化炭素や硫黄酸化物、窒素酸化物などを含み、環境保護の観点から自然エネルギーを利用した太陽光発電装置や排ガスのクリーンな燃料電池などの電源装置(分散形電源)の利用が望まれている。分散形電源は通常、商用電力系統と連系して動作するが、商用電力系統が停電となった場合は、商用電力系統側での保全・復旧作業の安全を図るために、分散形電源は動作を停止し、商用電力系統から電気的に切り離すことが定められている。このため、分散形電源をバックアップ電源として利用するためには、商用電力系統が停電した際には一旦分散形電源を停止して、商用系統から切り離し、再度立ち上げる必要があり、種々の技術開発が行われている。
【0004】
ところで、分散形電源の一つとして太陽光発電装置が注目され、各所で導入が進んでいる。太陽光発電装置は、燃料を必要とせず、太陽の日射が得られる限り、クリーンな発電が可能であるという特徴がある。このような太陽光発電装置は、自ら発電した電力を変換するパワーコンディショナ(Power Conditioning Subsystem)と併せて用いられる。このパワーコンディショナ(以下の説明において、単に「PCS」と呼ぶことがある。)は、太陽光発電装置の出力電圧を昇圧(または降圧)して給電システムの給電経路に供給する他、太陽光発電装置等の発電量に応じて出力電力を制御する制御機能を備えている。
【0005】
商用電力系統が停電した場合でも発電装置を動作させ、給電を継続するための技術のひとつとして自立運転支援装置が開示されている(特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の自立運転支援装置は、系統電源に連系して用いられる燃料電池システムを始動させて、燃料電池システムが自立運転するように必要な電力を供給する。
【0006】
また、関連する文献として「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」がある(非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−022650号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」、資源エネルギー庁、[online]、平成25年5月31日、[平成25年7月14日検索]<http://www.jhia.or.jp/pdf/keito_guideline.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の特許文献1に記載の自立運転支援装置は、系統電源の停止時などにおいて、パワーコンディショナにより、燃料電池などの分散型発電装置からの直流電力を系統電源に連系した交流電力に変換して出力するものであり、直流電力を給電経路に供給する方法について開示されていない。
また、上述の非特許文献1に記載の「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」には、直流電力を給電経路に供給する方法について開示されていない。
上記のように特許文献1と非特許文献1のいずれにも、交流電力系統を電源として、交流電力から変換した直流電力を給電経路に供給する直流給電システムの開示がなく、同直流給電システムにおいて、給電経路の停電状態を解消させる方法についても開示されていない。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであり、直流電源装置から給電経路に直流電力が供給されない停電状態において、太陽光発電装置から給電経路に直流電力を供給することができる直流給電システム、電源供給装置、直流給電システムにおける給電制御方法、及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、本発明の直流給電システムは、商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に前記直流電力を供給する直流給電システムであって、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出する検出部と、前記検出された結果に基づいて前記給電経路への直流電力の供給を制御する制御部と、前記制御部を含み、パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給する電源供給装置と、前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を、前記パワーコンディショナと前記給電経路との間で遮断する第1遮断部とを備え、太陽光発電装置が発電した電力を前記パワーコンディショナが直流電力に変換して、前記パワーコンディショナが変換した後の直流電力が前記制御部の制御に応じて供給されるように前記給電経路が構成されており、前記制御部は、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御し、前記制御部は、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記電源供給装置の蓄電装置から前記給電経路に前記調整用電圧で給電を開始させて、前記パワーコンディショナは、前記調整用電圧を参照し、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整して起動し、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給することを特徴とする。
【0012】
また、上記直流給電システムにおいて、記制御部は、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出し、前記制御部による制御に応じて前記パワーコンディショナから前記給電経路に直流電力が供給される場合に、前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を前記第1遮断部によって遮断させることを特徴とする。
【0013】
また、上記直流給電システム記商用電力系統の受電点から前記直流電源装置までの間に設けられ、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように、前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を遮断する第2遮断部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記直流給電システムにおいて、前記太陽光発電装置が発電した電力を変換して、前記変換した後の直流電力を前記給電経路に供給するという前記パワーコンディショナの動作を、前記直流電源装置から給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した後に、前記制御部が一旦停止させるとともに、前記制御部は、前記パワーコンディショナの前記動作を一旦停止させた後に、前記商用電力系統に向けての電力の供給を遮断した状態にあることを検出して、前記電力の供給を遮断した状態にあることを検出した後に、前記動作が一旦停止した状態にあるパワーコンディショナが再起動するように当該パワーコンディショナを制御して、前記パワーコンディショナが再起動した後に前記パワーコンディショナから前記給電経路に前記直流電力を供給させることを特徴とする。
【0015】
また、上記直流給電システムにおいて、前記制御部は、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの前記動作を一旦停止させるとともに、前記パワーコンディショナの前記動作を一旦停止させた後に、前記パワーコンディショナの起動を指示する操作が行われたことを検出して、前記指示する操作の検出結果に応じて前記パワーコンディショナを再起動させることを特徴とする。
【0016】
また、上記直流給電システムにおいて、前記制御部は、前記パワーコンディショナの起動を指示する操作が行われたことを検出した後に、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出することと、前記太陽光発電装置から出力可能な電力が所定値以上の電力であることと、がともに満たされる場合に前記パワーコンディショナを再起動させることを特徴とする。
【0018】
また、上記直流給電システムは、前記検出部と、前記直流電源装置と、記太陽光発電装置と、前記パワーコンディショナと、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の電源供給装置は、商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に前記直流電力を供給する直流給電システムにおける電源供給装置であって、前記給電経路への直流電力の供給を制御する制御部と、を備え、前記直流給電システムは、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出する検出部を備えており、さらに、太陽光発電装置が発電した電力をパワーコンディショナが直流電力に変換して、前記パワーコンディショナが変換した後の直流電力が前記制御部の制御に応じて供給されるように前記給電経路が構成されており、前記給電経路と前記パワーコンディショナが直流電力を出力する出力端子との間に第1遮断部が設けられており、前記制御部は、前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を前記第1遮断部に遮断させ、前記制御部は、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御し、前記制御部は、前記直流電源装置から給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記電源供給装置の蓄電装置から前記給電経路に、前記パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧で給電を開始させて、前記パワーコンディショナに、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整させて自らを起動させ、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の給電制御方法は、商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に前記直流電力を供給する直流給電システムにおける給電制御方法であって、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出部により検出する手順と、パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給する手順と、前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を、前記パワーコンディショナと前記給電経路との間で遮断する手順と、太陽光発電装置が発電した電力を前記パワーコンディショナが直流電力に変換する手順と、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御する手順と、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給する手順と、前記パワーコンディショナに、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整させて自らを起動させ、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給させる手順とを含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のプログラムは、商用電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置が設けられ、前記直流電源装置から給電経路を介して負荷装置に前記直流電力を供給するとともに、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を検出する検出部を備え、さらに、太陽光発電装置が発電した電力を変換するパワーコンディショナから、前記パワーコンディショナが変換した後の直流電力が供給されるように前記給電経路が構成される直流給電システムであって、前記給電経路と前記パワーコンディショナが直流電力を出力する出力端子との間に第1遮断部が設けられており、前記直流電源装置が前記給電経路への前記直流電力の供給を停止した際に、前記商用電力系統に逆潮流が発生しないように前記給電経路から前記商用電力系統に向けての電力の供給を前記第1遮断部に遮断させる直流給電システムのコンピュータに、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記パワーコンディショナの動作を一旦停止させて、前記パワーコンディショナと前記給電経路の間を遮断して、その後、前記太陽光発電装置が予め定められた下限値を上回る電力量を供給可能な場合に、前記パワーコンディショナからの直流電力を前記給電経路に供給するように制御するステップと、前記直流電源装置から前記給電経路に前記直流電力が供給されない状態を前記検出部が検出した場合に、前記動作を一旦停止した状態の前記パワーコンディショナが起動するように、前記パワーコンディショナが出力電圧を調整するための調整用電圧を前記給電経路に供給するステップと、前記パワーコンディショナに、前記調整用電圧に基づいて前記給電経路に出力する電圧を調整させて自らを起動させ、前記変換して得られた直流電力を前記給電経路に供給させるステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、直流電源装置から給電経路に直流電力が供給されない停電状態において、太陽光発電装置から給電経路に直流電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る直流給電システム1の概略構成を示す構成図である。
図2】スイッチ部の構成を示す構成図である。
図3】PCS40と電源供給装置50の構成例を示す構成図である。
図4】スイッチ制御信号CNTの例を示す説明図である。
図5】直流給電システム1の停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。
図6】コントロールパネル53の一例を示す説明図である。
図7】スイッチ部の制御回路の構成例を示す構成図である。
図8】直流給電システム1における電力供給処理の手順を示すフローチャートである。
図9】コントロールパネル53におけるPCS40の起動画面の一例を示す説明図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る直流給電システム1Aの概略構成を示す構成図である。
図11】直流給電システム1Aの停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。
図12】本発明の第3実施形態に係る直流給電システム1Bの概略構成を示す構成図である。
図13】直流給電システム1Bの停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の第4実施形態に係る直流給電システム1Cの概略構成を示す構成図である。
図15】直流給電システム1Cの停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。
図16】PCS40の起動処理の手順の第1の変形例を示すフローチャートである。
図17】PCS40の起動処理の手順の第2の変形例を示すフローチャートである。
図18】交流給電システム1Dの概略構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
(概要)
本発明の実施形態における直流給電システムは、商用電力系統から供給される交流電力を直流電源装置により直流電力に変換し、この直流電力を給電経路を介して負荷装置に電力を供給するとともに、太陽光発電装置がパワーコンディショナ(PCS)を介して給電経路に電力を供給する直流給電システムに関するものである。以下、本発明の幾つかの実施形態について説明するが、最初に、その概要について説明する。
【0026】
図1に示す本発明の第1実施形態に係る直流給電システム1は、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、パワーコンディショナ(PCS)40が、一旦その動作を停止する。その後に、パワーコンディショナ40の起動ボタンが操作されたことを電源供給装置50が検出した場合に、電源供給装置50は、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態にあることを検出し、この検出後に、パワーコンディショナ40を再起動し、パワーコンディショナ40から給電経路に直流電力を供給させる。
【0027】
また、図10に示す本発明の第2実施形態に係る直流給電システム1Aは、商用電力系統2からに電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、パワーコンディショナ(PCS)40が、一旦その動作を停止する。その後、電源供給装置50Aは、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態にあることを検出し、この検出後に、パワーコンディショナ40を再起動して、パワーコンディショナ40から給電経路に電力を供給させる。
つまり、第1実施形態の直流給電システム1では、商用電力系統2に停電状態が発生して一旦停止したパワーコンディショナ40を再起動させる条件に、起動ボタンが操作されることが含まれるが、第2実施形態の直流給電システム1Aでは、起動ボタンが操作されることを必要とせずに、パワーコンディショナ40が自動的に再起動する。
【0028】
また、図12に示す本発明の第3実施形態に係る直流給電システム1Bは、バックアップ用の電源装置として蓄電装置80がパワーコンディショナ(PCS)81を介して給電経路に接続される例である。この直流給電システム1Bでは、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、太陽光発電装置30のパワーコンディショナ(PCS)40が、一旦その動作を停止するとともに、蓄電装置80からパワーコンディショナ81を介して給電経路に直流電力の供給が開始される。
その後、パワーコンディショナ40の起動ボタンが操作されたことを電源供給装置50が検出した場合に、電源供給装置50は、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態にあることを検出し、この検出後に、パワーコンディショナ40を再起動して、パワーコンディショナ40から給電経路に直流電力を供給させる。
つまり、第3実施形態の直流給電システム1Bは、第1実施形態の直流給電システム1と同様に、パワーコンディショナ40を再起動させる条件に、起動ボタンが操作されることが含まれている。ただし、直流給電システム1Bは、蓄電装置80をバックアップ用の電源装置として備える点が、直流給電システム1の構成と異なっている。
【0029】
以下、第1実施形態の直流給電システム1と、第2実施形態の直流給電システム1Aと、第3実施形態の直流給電システム1Bと、その他の実施形態とについて順番に説明する。
【0030】
[第1実施形態]
(直流給電システム1の概略構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る直流給電システム1の概略構成を示す構成図である。この直流給電システム1は、例えば、データセンタや通信局舎等のビルに設備される直流給電システムの例である。
【0031】
図1に示す直流給電システム1は、受電設備10、直流電源装置(REC)20、負荷装置までの給電経路、スイッチ部101、スイッチ部111から116、太陽光発電装置30、パワーコンディショナ(PCS)40、及び電源供給装置50を備える。
【0032】
受電設備10は、遮断器(CB)11、変圧器12、及び保護継電器13を備えている。保護継電器13は、例えば、過電流継電器、地絡継電器、不足電圧継電器(何れも不図示)などを含んで構成されており、これらの継電器がそれぞれの検出条件に応じて異常状態を検出すると、その信号が遮断器11に送られ当該遮断器11を開放させる。
例えば、過電流継電器は、電路に過電流が流れたことを検出した場合に遮断器11を開放して、地絡継電器は、電路や機器に地絡が発生したことを検出した場合に遮断器11を開放して、不足電圧継電器は、停電や事故により商用電力系統2から商用電力を受電できなくなったことを検出した場合に遮断器11を開放する。
なお、遮断器11には、主接触子と機械的に連動する補助接点11aが設備されており、この補助接点11aの開閉状態が、遮断器11の開閉状態を示す接点信号Auxとして、後述する電源供給装置50に出力される。
【0033】
変圧器12は、商用電力系統2から供給される高圧交流電圧(例えば、3相AC6600V)を所定の低圧交流電圧(例えば、3相AC400V)に降圧し、この低圧交流電圧を直流電源装置20に供給する。直流電源装置20は、商用交流電力を直流電力に変換する整流装置であり、変圧器12から入力される低圧交流電圧を所定の電圧の直流電圧に変換する。直流電源装置20は、AC/DCコンバータ21(図3)を備え、このAC/DCコンバータ21により、変圧器12から入力されるAC400Vの交流電圧を、例えば、DC380Vの直流電圧に変換し、このDC380Vの直流電圧を、主幹の電力供給線である給電経路P11及びN11へ出力する。
なお、直流電源装置20には、出力電流が定格電流を超えないように制限する出力電流制限機能や、給電経路P11及びN11の線間短絡事故等により瞬間的な過大電流(例えば、定格電流の300%の電流)が流れた場合に、この過大電流を検出して出力を遮断する保護機能を備えている。
【0034】
給電経路P11及びN11には、パワーコンディショナ(PCS)40及びスイッチ部101を介して、太陽光発電装置30が接続されている。スイッチ部101は、太陽光発電装置30のPCS40と、給電経路P11及びN11との間の接続/開放を行うための開閉器を含み、スイッチ部101が接続状態にある時にPCS40を直流電源装置20の出力に連系可能にする。
また、スイッチ部111からスイッチ部116は、給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28において電路を開閉するための開閉器を含む。また、給電経路P11及びP21から給電経路P28は、正極側の給電線を示し、給電経路N11及びN21から給電経路N28は、負極側の給電線を示している。
なお、以下の説明において、スイッチ部101、及びスイッチ部111から116を総称する場合は、「スイッチ部100」と呼ぶ。
【0035】
そして、上記給電経路P11及びN11は、分電盤(PDF)61の入力側に接続され、直流電源装置20は、この分電盤61を介して、給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28の系統内に配置されたそれぞれの負荷装置L11から負荷装置L16へ電力を供給する。負荷装置L11から負荷装置L16は、いずれも直流電源装置20から供給される直流電力によって動作する装置である。例えば、負荷装置L11から負荷装置L16は、直流家電、LED照明、パソコンやサーバなどの情報機器等である。また、給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28の所定の箇所には、負荷装置L11から負荷装置L16に電力を供給する給電範囲を設定するためのスイッチ部111からスイッチ部116が配置されている。つまり、スイッチ部111からスイッチ部116は、給電経路において、太陽光発電装置30からの電力を供給する給電範囲と、電力を供給しない非給電範囲とを分割する箇所に配置されている。
【0036】
上記給電経路についてより詳細に説明すると、給電経路P11及びN11は、分電盤(PDF)61の入力側に接続され、この分電盤61内の過電流遮断器(不図示)等を用いた分岐回路により、給電経路P21及びN21と、給電経路P24及びN24と、に分岐される。そして、給電経路P21及びN21は、スイッチ部111を介して、給電経路P22及びN22に接続され、この給電経路P22及びN22には負荷装置L11が接続される。また、給電経路P22及びN22から、スイッチ部112を介して、給電経路P23及びN23が分岐され、この給電経路P23及びN23に、負荷装置L12が接続される。
【0037】
一方、分電盤61から分岐される給電経路P24及びN24は、スイッチ部113を介して、給電経路P25及びN25に分岐され、この給電経路P25及びN25には、負荷装置L13が接続される。また、給電経路P24及びN24は、スイッチ部114を介して給電経路P26及びN26に分岐され、この給電経路P26及びN26には、負荷装置L14が接続される。また、給電経路P26及びN26は、スイッチ部115を介して給電経路P27及びN27に分岐され、この給電経路P27及びN27には、負荷装置L15が接続される。また、給電経路P26及びN26は、スイッチ部116を介して給電経路P28及びN28に分岐され、この給電経路P28及びN28には、負荷装置L16が接続される。
【0038】
図2は、スイッチ部の構成を示す構成図である。スイッチ部100は、図2(A)に示すスイッチSWのように、双投接点(2接点)を用いて、正極側の給電線Pと負極側の給電線Nのそれぞれを接続又は開放するように構成されている。なお、スイッチ部100は、図2(B)に示すスイッチSWのように、単投接点(1接点)を用いて、正極側の給電線P(又は負極側の給電線N)のみを接続又は開放するようにしてもよい。さらに、スイッチ部100は、図2(C)に示すように、第1方向スイッチSWaと、第2方向スイッチSWbと、第3方向スイッチSWcの接点とが相互に接続され、3方向の何れかの方向から入力された電圧を、他の2方向又は1方向に出力することができるT型スイッチであってもよい。
【0039】
また、図1及び図2では、スイッチ部100として、機械式接点を用いたスイッチの例を示しているが、実際には、スイッチSWは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子を用いた半導体スイッチを含んで構成されている。この半導体スイッチは、給電経路を接続及び遮断させて、接続時に供給先の給電経路及び負荷装置に直流電流を供給するとともに、遮断時に当該負荷装置に流れる負荷電流を遮断できる能力を持つように構成されている。なお、このスイッチ部100の構成については後述する。
【0040】
図1に戻り、太陽光発電装置(PV)30は、太陽電池アレイ(太陽電池)31を備えており、この太陽電池アレイ31により太陽エネルギーを電気に変換してPCS40に出力する。PCS40は、直流電源装置20が直流電力を供給している通常時には、太陽光発電装置30が発電した電力を給電経路P11及びN11に供給して、直流電源装置20から給電経路P11及びN11に供給される電力量を低減させる。
【0041】
また、PCS40に接続されるスイッチ部101は、給電経路P11及びN11の系統に障害(例えば、線間短絡等)が発生したことが保護継電器13や直流電源装置20により検出された場合に開(オフ)状態になり、太陽光発電装置30を系統から分離させる。
なお、太陽光発電装置30のPCS40が、給電経路P11及びN11の系統に障害が発生していることを検出して出力電流を遮断する保護機能を備える場合、例えば、PCS40に過電流が流れたことを検出して出力電流を遮断する機能を備える場合は、スイッチ部101を省略することも可能である。
【0042】
電源供給装置50は、PCS40の動作を制御する。この電源供給装置50は、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できないことにより、直流電源装置20の出力が停止した停電状態にある停電時(以下、「直流電源装置20の停電時」という。)には、PCS40の動作を一旦停止させる。例えば、電源供給装置50は、受電設備10から入力する遮断器11の補助接点11aの接点信号Auxにより、遮断器11が開放したことを検出して、PCS40の動作を一旦停止させる。
また、同時に、電源供給装置50は、スイッチ部101、及びスイッチ部111からスイッチ部116を一旦開放させる。
なお、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態を検出する方法としては、例えば、電源供給装置50が、給電経路P11及びN11に供給される電圧が所定の電圧値以下(例えば、ゼロ電圧に近い値)に低下したことを検出して、商用電力系統2に停電が発生したことを検出するようにしてもよい。
【0043】
そして、電源供給装置50は、PCS40の起動を指示する起動ボタン55(図3)が操作されるまで、PCS40の動作停止状態を維持する。そして、電源供給装置50は、PCS40の起動を指示する起動ボタン55が操作されたことを検出した場合に、上記の接点信号Auxにより遮断器11が開放状態であることを検出する。つまり、電源供給装置50は、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生する状態でないことを確認し、この確認後に、PCS40を再起動する。
なお、PCS40を再起動する際には、後述するように、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であることが起動条件になる。この所定値以上の電力とは、例えば、少なくとも1つの負荷装置に電力を供給できる電力量を下限値として、任意の値に設定することができる。
【0044】
また、電源供給装置50は、このPCS40を再起動させる際に、直流電源装置20の停電により給電経路P11及びN11に直流電圧の供給ができなくなり、PCS40の2次側(出力側)の電圧が予め定められた所定の閾値電圧より低下したことを検出した場合に、PCS40を起動させる基準となる動作電圧をPCS40に供給してこのPCS40を自立起動させる。
【0045】
つまり、PCS40を直流電源装置20の給電経路に接続し、PCS40の出力を直流電源装置20の出力に連系させる場合、PCS40は給電経路の電圧を検出する。そのため、直流電源装置20の電源に当たる商用電力系統2の停電や直流電源装置20の故障などにより給電経路に電力の供給がなくなった場合、PCS40は、給電経路の電圧として自らが動作するのに必要とされる所定の電圧範囲内の電圧を検出できなくなる。そこで、電源供給装置50は、出力を停止した停止状態のPCS40に、PCS40から出力させる基準となる動作電圧を供給して、PCS40を自立起動させる。
なお、直流電源装置20から給電経路P11及びN11に対して電力が供給されなくなる状態は、商用電力系統2が停電した場合や、直流電源装置20が故障した場合や、給電経路P11及びN11の事故等により直流電源装置20の出力が遮断された場合に発生する。
【0046】
また、電源供給装置50は、PCS40を起動させた後、一旦開状態にされたスイッチ部100に対してスイッチ制御信号CNTを送信し、スイッチ部100の開閉状態を制御する。これにより、電源供給装置50は、太陽光発電装置30から給電経路P11及びN11に対して電力を供給させるとともに、給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28における給電範囲を制御する。
つまり、電源供給装置50は、スイッチ部111からスイッチ部116の開閉状態を制御することにより、給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28における給電範囲を調整する。これにより、電源供給装置50は、直流電源装置20から電力の供給ができない場合に、太陽光発電装置30から電力を供給する停電時使用負荷装置(例えば、照明装置等)と、電力を供給しない負荷装置(例えば、空調装置等)とを設定することができる。
【0047】
このようにして、電源供給装置50は、PCS40が停止状態になり、PCS40から電力を出力させることを可能にする動作電圧が直流電源装置20からPCS40に供給されない場合に、PCS40に動作電圧を供給して該PCS40を自立起動させる。さらに、電源供給装置50は、スイッチ部100に対してスイッチ制御信号を送信し、該スイッチ制御信号によりスイッチ部100の開閉状態を制御する。これにより、電源供給装置50は、給電経路における給電範囲を設定する。
【0048】
(太陽光発電装置30のPCS40と電源供給装置50の構成)
図3は、太陽光発電装置30のPCS40と電源供給装置50の構成例を示す構成図である。図3に示すように、PCS40は、発電量制御部41と、系統連系制御部42と、DC/DCコンバータ43とを備える。
【0049】
発電量制御部41は、太陽光発電装置30から最大電力を取り出すために、太陽電池アレイ31のI−V(電流−電圧)特性において、太陽電池アレイ31の出力を最大とする動作点(最大電力点)を制御する。太陽電池アレイ31は、接続されている負荷が実際に必要としている電圧によって最大電力点がずれる。I−V特性は、日射強度やモジュール温度や状態等によって変化することから、最大電力を得るためには、最適な電圧又は電流を自動で追従しなければならない。そこで、発電量制御部41は、太陽電池アレイ31を、最大電力点で動作させるように制御する。
また、発電量制御部41は、太陽光発電装置30から出力可能な電力が、「所定値以上の電力であるか否かの情報」を電源供給装置50に通知する。この「太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であるか否かの情報」は、電源供給装置50が、一旦動作を停止したPCS40を再起動させる際の起動条件として用いられる。
【0050】
また、系統連系制御部42は、給電母線となる給電経路P11及びN11の電圧を検出し、この検出結果に基づいてDC/DCコンバータ43の出力電圧を調整する。例えば、系統連系制御部42は、直流電源装置20から給電経路P11及びN11に直流電圧が出力されている通常状態において、この給電経路P11及びN11の電圧を検出し、この検出結果に基づいてDC/DCコンバータ43の出力電圧を調整することにより、給電経路P12及びN12に対して連系させてPCS40から出力される電力を給電できるように制御する。DC/DCコンバータ43は、太陽光発電装置30の出力電圧を昇圧して給電経路P11及びN11に電力を供給するための昇圧型のコンバータである。
【0051】
電源供給装置50は、PCS起動部51と、母線電圧検出部51Aと、スイッチ制御部52と、コントロールパネル53と、蓄電池54と、起動ボタン55と、を備える。
母線電圧検出部51Aは、給電母線となる給電経路P11及びN11の直流電圧を検出する。母線電圧検出部51Aは、例えば、直流電源装置20から給電母線となる給電経路P11及びN11に電力が供給されなくなり、給電経路P11及びN11の電圧が予め定められた所定の電圧値より低下したことを検出し、この検出結果をPCS起動部51に通知する。
【0052】
PCS起動部51は、直流電源装置20から給電経路P11及びN11に電力が供給されなくなり、PCS40に出力電圧の基準となる動作電圧が供給されなくなった場合に、内蔵する蓄電池54により太陽光発電装置30のPCS40に動作電圧を供給してこのPCS40を自立起動させる。
このPCS起動部51は、PCS40の動作が一旦停止した後に、起動ボタン55が操作されて起動信号STが入力された場合、遮断器11が開放されていることと、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であることを検出した後に、PCS40を起動させる。なお、起動ボタン55は、後述する図9に示すように、コントロールパネル53上に起動ボタン55Aとして配置するようにしてもよい。
また、PCS起動部51は、PCS40の起動動作と停止動作とを制御するとともに、後述する蓄電装置80のPCS81(図12)の起動動作と停止動作とを制御する。
【0053】
スイッチ制御部52は、コントロールパネル53からの制御に応じてスイッチ部100の開閉状態を制御する。スイッチ制御部52は、スイッチ部101にスイッチ制御信号CNTを送信し、スイッチ部101を閉状態(オン状態)にすることにより、太陽光発電装置30を給電経路P11及びN11に接続する。
さらに、スイッチ制御部52は、スイッチ部111からスイッチ部116に対してスイッチ制御信号CNTを送信し、スイッチ部111からスイッチ部116の開閉状態を制御する。
つまりスイッチ制御部52は、スイッチ部111からスイッチ部116の開閉状態を制御することにより、給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28における給電範囲を制御する。
例えば、直流電源装置20の停電時において、スイッチ制御部52は、太陽光発電装置30により電力を供給する停電時使用負荷装置として、照明装置等を選択して電力を供給するように給電経路P21及びN21から給電経路P28及びN28における給電範囲を設定する。
【0054】
図4は、スイッチ制御信号CNTの例を示す説明図である。この図4に示すスイッチ制御信号CNTの例では、スイッチ制御信号CNTを、「スイッチの識別情報」と、当該スイッチの「オン/オフ(開閉)情報」とで構成している。このスイッチ制御信号CNTをスイッチ部100に向けて送信することにより、「スイッチの識別情報」に該当するスイッチ部100では、「オン/オフ(開閉)情報」に基づいて、スイッチのオン/オフ(開閉)動作を行う。
【0055】
図3に戻り、スイッチ制御信号CNTをスイッチ部100に送信する信号経路としては、専用の信号線を設けてもよく、又、給電経路P11及びN11、P21及びN21からP28及びN28のうち少なくとも一部の給電経路を信号線として利用するようにしてもよい。そして、専用の信号線を設ける場合は、スイッチ部100を動作させる電源もこの信号線を介して、電源供給装置50から供給することができる。
【0056】
また、電源供給装置50内の蓄電池54は、直流電源装置20から給電経路に電力を供給する通常状態において、例えば、給電経路P11及びN11から常時充電されている。そして、直流電源装置20の停電時において、PCS40を起動させる際に、蓄電池54は、電源供給装置50からPCS40に電力を出力させるようにする動作電圧を電源供給装置50に供給して、電源供給装置50の動作を開始させるとともに、この電源供給装置50からPCS40に動作電圧を供給して、PCS40を自立起動させる。なお、蓄電池54に代えて、燃料電池やエンジン発電機を使用してPCS40を自立起動させてもよい。
【0057】
(直流給電システム1の停電時におけるPCS40の起動処理の手順)
図5は、直流給電システム1の停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。
以下、図5に示すフローチャートを参照して、直流給電システム1におけるPCS40の起動処理の手順について説明する。
まず、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給することができない停電状態が発生したとする(ステップS110)。
この商用電力系統2において停電状態が発生すると、受電設備10内の遮断器11が不足電圧継電器の動作により開放し、遮断器11の補助接点11aが開放する。電源供給装置50は、遮断器11の補助接点11aが開放されたことを、接点信号Auxにより検出して、商用電力系統2に停電状態が発生したことを検知する。
【0058】
続いて、電源供給装置50は、PCS40の動作を一旦停止させるとともに(ステップS115)、スイッチ部101を開放する(ステップS120)。これにより、電源供給装置50は、商用電力系統2において停電状態が発生したことを検出した場合に、PCS40の動作を一旦停止させることができる。
なお、商用電力系統2において停電状態が発生したことを検出して、PCS40の動作を一旦停止させる方法としては、電源供給装置50の母線電圧検出部51Aが、給電経路P11及びN11の電圧が所定の電圧値以下(例えば、ゼロ電圧に近い値)に低下したことを検出して、PCS40の動作を一旦停止させるようにしてもよい。或いは、PCS40自身が、給電経路P11及びN11の電圧が低下したこと検出して、PCS40が自分で動作を停止するようにしてもよい。
【0059】
続いて、電源供給装置50は、PCS40を起動させる起動ボタン55が操作されたか否かを判定する(ステップS125)。
そして、ステップS125の処理において、起動ボタン55が操作されたと判定された場合(ステップS125:Yes)、電源供給装置50は、ステップS130の処理ステップに移行し、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であるか否かを判定する(ステップS130)。つまり、太陽光発電装置30が所定値以上の日照量を得ることができる状態にあり、PCS40から給電経路に所定値以上の電力を供給できる状態にあるか否かを判定する。
【0060】
続いて、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30が給電経路に所定値以上の電力を出力できる状態にあると判定された場合(ステップS130:Yes)、電源供給装置50は、ステップS135の処理ステップに移行し、遮断器11が開放された状態にあるか否かを判定する(ステップS135)。例えば、電源供給装置50は、接点信号Auxにより、遮断器11が開放された状態にあるか否かを判定する。
なお、ステップS110の停電検出処理において、電源供給装置50は、既に接点信号Auxにより遮断器11が開放されていることを検出しているため、このステップS135の判定処理は、遮断器11が開放していることを再確認するために行うものであり、省略することも可能である。
【0061】
そして、ステップS135の処理において、遮断器11が開放された状態にあると判定された場合(ステップS135:Yes)、電源供給装置50は、PCS起動部51により、PCS40を起動させる(ステップS140)。
続いて、電源供給装置50は、スイッチ制御部52により、スイッチ部101を投入して、PCS40から給電経路P11及びN11に直流電力を出力させる(ステップS145)。そして、このステップS145の処理を実行した後に、電源供給装置50は、このPCS40の起動処理を終える。
【0062】
一方、ステップS125の処理において、起動ボタン55が操作されていないと判定された場合(ステップS125:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理ステップに戻り、PCS40の動作停止状態とスイッチ部101の開放状態とを継続させる。
また、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30が給電経路に所定値以上の電力を出力できる状態にないと判定された場合(ステップS130:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理ステップに戻り、PCS40の動作停止状態とスイッチ部101の開放状態とを継続させる。
また、ステップS135の処理において、遮断器11が開放されていないと判定された場合(ステップS135:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理ステップに戻り、PCS40の動作停止状態とスイッチ部101の開放状態とを継続させる。
【0063】
これにより、直流給電システム1では、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、PCS40が、一旦その動作を停止する。その後にPCS40の起動ボタンが操作されたことを電源供給装置50により検出した場合に、電源供給装置50は、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態であることを検出して、PCS40を再起動させることができる。
【0064】
なお、ステップS140によりPCS40を起動した後、ステップS145においてスイッチ部101を投入する際に、PCS40から給電経路P11及びN11に向けて過渡的に過大な電流が流れる可能性がある場合には、先にスイッチ部101を投入し、その後に、PCS40の出力電圧を立ち上げるようにしてもよい。例えば、スイッチ部101を投入した後に、PCS40の出力電圧を緩やかに立ち上げるようにして、過渡的な過大電流が流れることを回避するようにしてもよい。
さらには、直流電源装置20の停電時において、スイッチ部101を開放することなく閉状態にしておくことにより、ステップS120のスイッチ部101の開放処理と、ステップS145のスイッチ部101の投入処理とを、省略することも可能である(後述する図11図13図15図16、及び図17においても同じ)。
【0065】
(コントロールパネル53についての説明)
次に、コントロールパネル53について説明する。コントロールパネル53は、スイッチ部100の開閉状態(オン/オフ状態)を設定する操作を検出して、検出した操作に応じてスイッチ制御部52を制御するとともに、スイッチ部100の開閉状態を表示する。このコントロールパネル53は、例えば、タッチパネル式の表示装置を含めて構成することができる。
【0066】
図6は、コントロールパネル53の一例を示す説明図である。この図6に示す例は、タッチパネル式の表示画面上に、「直流給電システム1の単線結線図の表示画面53a」と、操作を検出する位置を示す「スイッチ選択ボタン53b」、「投入ボタン53c」、及び「開放ボタン53d」と、を配置した場合を示す。
【0067】
なお、図6に示す「直流給電システム1の単線結線図の表示画面53a」では、直流給電システム1内の全ての負荷装置L11からL16を表示しているが、この表示画面53aには、直流電源装置20の停電時において太陽光発電装置30から電力を供給することが必要な負荷装置のみを選択して表示するようにしてもよい。
【0068】
例えば、この単線結線図の表示画面53aにおいて、スイッチ部100の状態を、当該スイッチ部を破線で囲む領域の色で示す。例えば、スイッチ部100が開放状態にある場合は「緑色」で表示し、スイッチ部100が閉状態にある場合は「赤色」で表示する。
「SW111」で示す開放状態にあるスイッチ部111を投入する場合、ユーザ(より正確には直流給電システム1の管理者)は、スイッチ選択ボタン53bを操作し、その後に、単線結線図の表示画面53a上でスイッチ部111の破線で囲まれる領域を操作する。このスイッチ部111を示す領域を操作することにより、コントロールパネル53は、スイッチ部111を示す領域の点滅表示を開始させる。このスイッチ部111を示す領域が点滅表示されている状態において、投入ボタン53cを操作することにより、コントロールパネル53は、上記の一連の操作に応じてスイッチ制御部52を介してスイッチ部111を投入させて閉状態にする。さらに、コントロールパネル53は、スイッチ部111の表示の色を「緑色」から「赤色」に変える。
【0069】
また、閉状態にあるスイッチ部111を開放状態にする場合、スイッチ選択ボタン53bを操作し、その後に、単線結線図の表示画面53a上でスイッチ部111の破線で囲まれる領域を操作する。このスイッチ部111を示す領域を操作することにより、コントロールパネル53は、スイッチ部111の点滅表示を開始させる。このスイッチ部111を示す領域が点滅表示されている状態において、開放ボタン53dを操作することにより、コントロールパネル53は、上記の一連の操作に応じてスイッチ制御部52を介してスイッチ部111を開放させる。さらに、コントロールパネル53は、スイッチ部111の表示の色を「赤色」から「緑色」に変える。他のスイッチ部100についても同様である。
【0070】
なお、スイッチ選択ボタン53bを操作してスイッチ部100を指定する場合、スイッチ部111部とスイッチ部112とを同時に指定するなど、複数のスイッチ部100を同時に指定することもできる。
【0071】
(スイッチ部の制御回路の構成)
また、図7は、スイッチ部の制御回路の構成例を示す構成図である。この図7に示すように、スイッチ部100には、スイッチ制御信号受信部71と、スイッチ開閉部72と、開閉結果通知部73と、スイッチ74と、電源部75とが設けられている。
【0072】
スイッチ制御信号受信部71は、電源供給装置50内のスイッチ制御部52からスイッチ制御信号CNTを受信する。
スイッチ開閉部72は、スイッチ制御信号受信部71により受信したスイッチ制御信号CNTに基づき、自身が「スイッチの識別情報」で指定されたスイッチであるか否かを判定する。そして、スイッチ開閉部72は、自身が「スイッチの識別情報」で指定されたスイッチであると判定した場合に、「スイッチのオン/オフ情報」に基づき、スイッチ74をオン/オフ(投入又は開放)させる。つまり、スイッチ開閉部72は、スイッチ74の開閉動作を行う。
【0073】
そして、スイッチ開閉部72がスイッチ74をオン/オフした場合、開閉結果通知部73は、スイッチ74をオン/オフした動作結果の情報を電源供給装置50のスイッチ制御部52に送信する。動作結果の情報を受けたスイッチ制御部52は、開閉結果通知部73から受信したスイッチ74のオン/オフの動作結果の情報を基にして、当該スイッチ74の開閉状態をコントロールパネル53上に表示させる。
【0074】
電源部75は、スイッチ制御信号受信部71と、スイッチ開閉部72と、開閉結果通知部73のそれぞれに電力を供給する。なお、電源部75は、スイッチ制御信号受信部71と、スイッチ開閉部72と、開閉結果通知部73とを機能させる電力を蓄積しておいてもよい。
これにより、ユーザは、コントロールパネル53により、給電経路上のスイッチ74の開閉を指示できるととともに、その開閉結果をコントロールパネル53上に表示して確認することができる。
【0075】
次に、図8を参照して、直流給電システムにおける電力供給処理について説明する。
図8は、直流給電システムにおける電力供給処理の手順を示すフローチャートである。この図8では、直流電源装置20が停電状態になった後に、PCS40が起動し、太陽光発電装置30からPCS40を介して給電経路P11及びN11に電力の供給がでるようになった状態からの処理を示す。また、直流電源装置20が停電状態になった際に、スイッチ部111からスイッチ部116が一旦開放されるものする。
【0076】
まず、コントロールパネル53は、ユーザの指示を検出し、検出した指示に応じて、電力の供給を必要とする負荷装置があることを検出する(ステップS200)。
【0077】
続いて、コントロールパネル53は、電力の供給範囲を指定するユーザの操作を検出する(ステップS210)。例えば、コントロールパネル53は、スイッチ部111とスイッチ部112とが指定されたことを検出する。
続いて、コントロールパネル53は、検出した操作に応じたスイッチ部100(より正確にはスイッチ部100内のスイッチ74)を順に投入させるようにスイッチ制御部52を制御する(ステップS220)。例えば、スイッチ制御部52は、スイッチ部111と、スイッチ部112とを順番に投入するように、スイッチ部111とスイッチ部112とにスイッチ制御信号CNTを順に送信して、スイッチ部111とスイッチ部112とを順に投入させる。
【0078】
続いて、スイッチ制御信号CNTが自身を対象とすると判定したスイッチ部100は、自身のスイッチ74を投入するとともに、その結果をスイッチ制御部52に通知する(ステップS230)。例えば、スイッチ部111と、スイッチ部112とは、自身のスイッチ74を投入するとともに、その結果をスイッチ制御部52に通知する。
【0079】
続いて、スイッチ制御部52は、スイッチ部100から受けた通知に応じて、コントロールパネル53にその通知に含まれたスイッチ部100の状態を表示させる。コントロールパネル53は、スイッチ部100の状態をコントロールパネル53の表示画面53a上に表示する(ステップS240)。例えば、コントロールパネル53は、スイッチ部111とスイッチ部112とが投入された場合に、このスイッチ部111とスイッチ部112の領域を「赤色」で表示する。
以上の電力供給処理により、所望のスイッチ部100を開閉制御することにより、給電経路における給電範囲を設定することができる。
【0080】
なお、上記の変形例として、スイッチ部111と、スイッチ部112とが開放している状態において、ユーザがスイッチ部112を直接指定して投入を指示することにより、電源供給装置50内のスイッチ制御部52が、自動的に、スイッチ部111の投入と、スイッチ部112の投入とを順番に実行するようにしてもよい。
【0081】
同様にして、直流電源装置20の停電状態において、負荷装置L14と負荷装置L15とに電力を供給する場合、ユーザがスイッチ部115を直接指定して投入を指示することにより、スイッチ制御部52が、自動的に、スイッチ部114の投入と、スイッチ部115の投入とを順番に実行するようにしてもよい。
【0082】
このように、ユーザは、コントロールパネル53上で、給電経路P11及びN11から給電経路P28及びN28に配置されたスイッチ部111からスイッチ部116の開閉を指示することにより、太陽光発電装置30から電力を供給しようとする給電経路の範囲を設定することができる。
これにより、ユーザは、直流電源装置20の停電時において、直流電源装置20から負荷装置に電力の供給ができず、太陽光発電装置30から電力を供給する場合に、コントロールパネル53上でスイッチ部111からスイッチ部116の開閉を指示することにより、太陽光発電装置30から電力を供給できる負荷装置を選択できる。また、太陽光発電装置30の電力の給電能力に応じて、電力を供給する負荷装置の範囲を、順次に拡大して行くことができる。
【0083】
(コントロールパネル53におけるPCS40の起動画面の例)
また、コントロールパネル53には、上述したPCS40の起動ボタンを配置することもできる。
図9は、コントロールパネル53におけるPCS40の起動画面の一例を示す説明図である。
この図9に示す例は、タッチパネル式の表示画面56上に、「PCS40の起動条件の表示部57」と、起動操作を検出する位置を示す「起動ボタン55A」と、PCS40が起動中であることを示す「表示ランプ58」と、を配置した場合を示す。
【0084】
起動条件の表示部57は、PCS40を起動させる際に必要となる起動条件が成立しているか否かを表示する表示ランプ57aから57dを含む。このPCS40の起動条件には、(1)に示す「遮断器11が開放」している条件と、「太陽光発電装置(PV)の出力状態」の条件との2つの判定条件がある。起動条件の表示部57では、各条件が成立しているか否かを破線で囲む領域の色で示す。
【0085】
(1)に示す「遮断器11が開放」の条件は、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態であることを検出するための条件である。例えば、遮断器(CB)11が開放されていることを示す接点信号Auxが、電源供給装置50に入力されているか否かを検出する。
この「遮断器11が開放」の条件が満たされている場合、例えば、表示ランプ(OK)57aの破線で囲む領域の色を、「緑色」で表示し、表示ランプ(NO)57bの破線で囲む領域の色を、「灰色」で表示する。一方、「遮断器11が開放」の条件が満たされていない場合、表示ランプ(OK)57aの破線で囲む領域の色を、「灰色」で表示し、表示ランプ(NO)57bの破線で囲む領域の色を、「赤色」で表示する。
【0086】
また、(2)に示す「太陽光発電装置30の出力状態」の条件は、太陽光発電装置30から所定値以上の電力を給電経路に供給できるか否かを検出するための条件である。
この「太陽光発電装置30の出力状態」の条件が満たされている場合、例えば、表示ランプ(OK)57cの破線で囲む領域の色を、「緑色」で表示し、表示ランプ(NO)57dの破線で囲む領域の色を、「灰色」で表示する。一方、「太陽光発電装置30の出力状態」の条件が満たされていない場合、表示ランプ(OK)57cの破線で囲む領域の色を、「灰色」で表示し、表示ランプ(NO)57dの破線で囲む領域の色を、「赤色」で表示する。
【0087】
そして、「遮断器11が開放」の条件と、「太陽光発電装置30の出力状態」の条件とがともに満たされている場合には、起動ボタン55Aの実線で囲まれる部分が、例えば、「緑色」で点滅表示され、ユーザの操作の受付が可能な状態になる。
一方、「遮断器11が開放」の条件と、「太陽光発電装置30の出力状態」の条件との何れかの条件が満たされていない場合、起動ボタン55Aの実線で囲まれる部分が、例えば、「灰色」で表示され、ユーザの操作の受付ができない状態になる。
【0088】
そして、「遮断器11が開放」の条件と、「太陽光発電装置30の出力状態」の条件とがともに満たされている場合において、起動ボタン55Aの実線で示す領域を操作することにより、電源供給装置50は、PCS40を起動させる。そして、PCS40が起動されると、PCS40が起動中であることを示す表示ランプ58の破線で示す領域が、例えば、「灰色」から「橙色」に変化する。
これにより、ユーザは、PCS40を起動させる際に、PCS40の起動条件が成立していることを確認して、PCS40の起動ボタン55Aを操作することができる。また、ユーザは、表示ランプ58により、PCS40が起動したことを目視で確認することができる。
なお、図9に示す例では、PCS40の起動条件として、「遮断器11が開放」の条件と、「太陽光発電装置30の出力状態」の条件と、の2つの条件を用いたが、その他の条件を付加することもできる。例えば、PCS40の起動条件として、給電経路に障害が発生していない条件を含めることもできる。
【0089】
以上、説明したように、第1実施形態の直流給電システム1では、商用電力系統2が停電したことを保護継電器13の不足電圧継電器により検出する例について説明したが、商用電力系統2が停電したこと検出する方法としては、例えば、変圧器12の2次側にボルティジ・センサ(電圧検出リレー)を設け、このボルティジ・センサにより商用電力系統2が停電したことを検出してもよい。
また、直流電源装置20内に、商用電力系統2が停電したこと検出するボルティジ・センサや電圧検出回路を設け、このボルティジ・センサや電圧検出回路により商用電力系統2が停電したことを検出してもよい。
さらには、直流電源装置20に過電流継電器の機能と、地絡継電器の機能と、不足電圧継電器の機能とを設けるようにしてもよい。つまり、上述した保護継電器13を直流電源装置20内に含めて構成することもできる。
また、商用電力系統2が停電状態にあることをボルティジ・センサ等により検出した場合に、遮断器11を開放せずに、PCS40の起動ボタン55が操作されたことを電源供給装置50が検出した場合に、遮断器11を開放させるようにしてもよい。
【0090】
また、直流電源装置20が、電力の回生機能を有しない片方向のAC/DCコンバータで構成され、給電経路P11及びN11から商用電力系統2に向けて電力を逆潮流させる可能性がない場合、電源供給装置50は、PCS40を起動させる際に、遮断器11の開放状態を検出することなく、PCS40を起動させることも可能である。
【0091】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態の直流給電システム1では、PCS40を起動する際に、起動ボタン55が操作されることが条件になっているが、第2実施形態の直流給電システム1Aとして、起動ボタン55を操作することなく、PCS40を自動的に起動させる例について説明する。
【0092】
図10は、本発明の第2実施形態に係る直流給電システム1Aの概略構成を示す構成図である。この図10に示す直流給電システム1Aは、図3に示す直流給電システム1と比較して、図10に示す電源供給装置50Aにおいて、図3に示す起動ボタン55を省略した点だけが異なり、他の構成は、図3に示す直流給電システム1と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0093】
この図10に示す直流給電システム1Aは、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、遮断器11を開放させるとともに、PCS40が、一旦その動作を停止する。続いて、電源供給装置50Aは、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態にあることを検出し、この検出後にPCS40を再起動して、PCS40から給電経路に電力を供給する。
つまり、第1実施形態の直流給電システム1では、PCS40の動作を一旦停止させた後にPCS40を再起動させる条件に、起動ボタン55が操作されることが含まれるが、第2実施形態の直流給電システム1Aでは、起動ボタン55の操作を必要とすることなく、PCS40を自動的に再起動させる。
【0094】
また、図11は、直流給電システム1Aの停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。この図11に示すPCS40の起動処理の手順は、図5に示す第1実施形態の直流給電システム1におけるPCS40の起動処理の手順と比較して、図5に示すステップS125の処理ステップを省略した点だけが異なり、他の処理ステップは、図5に示す処理手順と同様である。このため、同一の処理内容のステップには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0095】
つまり、直流給電システム1Aにおいて、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給することができない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合(ステップS110)、電源供給装置50Aは、PCS40の動作を一旦停止させるとともに(ステップS115)、スイッチ部101を開放する(ステップS120)。
なお、商用電力系統2において停電状態が発生したことを検出して、PCS40の動作を一旦停止させる方法としては、電源供給装置50の母線電圧検出部51Aが、給電経路P11及びN11の電圧が所定の電圧値以下(例えば、ゼロ電圧に近い値)に低下したことを検出して、PCS40の動作を一旦停止させるようにしてもよい。或いは、PCS40自身が、給電経路P11及びN11の電圧が低下したこと検出して、PCS40が自分で動作を停止するようにしてもよい。
【0096】
続いて、電源供給装置50Aは、ステップS130の処理ステップに移行し、太陽光発電装置30が給電経路に所定値以上の電力を供給できる状態にあるか否かを判定する(ステップS130)。つまり、太陽光発電装置30が所定値以上の日照量を得ることができる状態にあり、PCS40から給電経路に所定値以上の電力を出力できるか否かを判定する。
【0097】
続いて、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30が所定値以上の電力を出力できる状態にあると判定された場合(ステップS130:Yes)、電源供給装置50Aは、ステップS135の処理ステップに移行し、遮断器11が開放された状態にあるか否かを判定する(ステップS135)。
【0098】
そして、ステップS135の処理において、遮断器11が開放された状態にあると判定された場合(ステップS135:Yes)、電源供給装置50Aは、PCS起動部51により、PCS40に動作電圧を供給して、PCS40を起動させる(ステップS140)。
続いて、電源供給装置50Aは、スイッチ制御部52により、スイッチ部101を投入して、PCS40から給電経路P11及びN11に直流電力を出力させる(ステップS145)。
これにより、直流給電システム1Aでは、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、遮断器11を開放状態にするとともに、PCS40の動作を一旦停止させるが、その後、電源供給装置50Aにより、PCS40を自動的に再起動させることができる。
【0099】
[第3実施形態]
第1実施形態の直流給電システム1及び第2実施形態の直流給電システム1Aでは、バックアップ用の電源装置として、太陽光発電装置30だけを設けた例について説明したが、本発明の第3実施形態として、バックアップ用の電源装置として、太陽光発電装置30に加えて蓄電装置80を設けた例について説明する。
【0100】
図12は、本発明の第3実施形態に係る直流給電システム1Bの概略構成を示す構成図である。
この図12に示す直流給電システム1Bは、図3に示す直流給電システム1と比較して、蓄電装置80とパワーコンディショナ(PCS)81とを新たに追加した点だけが異なり、他の構成は、図3に示す直流給電システム1と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
つまり、直流給電システム1Bにおいて、給電経路P11及びN11には、PCS81及びスイッチ部102を介して、蓄電池を備える蓄電装置80が接続されている。スイッチ部102は、蓄電装置80のPCS81と、給電経路P11及びN11との間の接続/開放を行うための開閉器を含み、スイッチ部102が接続状態にある時にPCS81を直流電源装置20の出力に連系可能にする。
【0101】
蓄電装置80は、例えば、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル水素電池等の2次電池を備える。蓄電装置80は、直流電源装置20の出力が停止した停電状態にない通常時には、PCS81を介して直流電源装置20からの電力によって蓄電される。蓄電装置80は、直流電源装置20の停電時には、蓄えた電力をPCS81を介して、給電経路P11及びN11に供給する。なお、PCS81は、通常時における使用電力のピークカットを目的に蓄電装置80の充放電制御を行うこともできる。
また、PCS81に接続されるスイッチ部102は、給電経路P11及びN11の系統に障害が発生した場合に開(オフ)状態になり、蓄電装置80を系統から分離させる。このスイッチ部102は、給電経路P11及びN11の系統に障害が発生していない通常の場合には、閉(オン)状態にされている。
なお、蓄電装置80のPCS81が、給電経路P11及びN11の系統に障害が発生した場合に出力電流を遮断する保護機能を備える場合は、スイッチ部102を省略することも可能である。
【0102】
(直流給電システム1BにおけるPCS40の起動処理の手順)
図13は、直流給電システム1Bの停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。
この図13に示すPCS40の起動処理の手順は、図5に示すPCS40の起動処理の手順と比較して、ステップS110Aの処理ステップと、ステップS135Aの処理ステップと、ステップS140Aの処理ステップとを追加した点だけが異なり、他の処理ステップは、図5に示す処理手順と同様である。このため、同一の処理内容のステップには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0103】
この図13に示す起動処理の手順では、直流給電システム1Bにおいて、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給することができない停電状態が発生したとする。
この商用電力系統2において停電状態が発生すると、受電設備10内の遮断器11が保護継電器13内の不足電圧継電器(不図示)の動作により開放し、遮断器11の補助接点11aが開放する。電源供給装置50は、遮断器11の補助接点11aが開放されたことを、接点信号Auxにより検出して、商用電力系統2に停電状態が発生したことを検知する(ステップS110)。
【0104】
続いて、電源供給装置50は、蓄電装置80のPCS81を制御して、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に向けての放電を開始させるとともに(ステップS110A)、PCS40の動作を一旦停止させる(ステップS115)。また、電源供給装置50は、スイッチ部101を開放させる(ステップS120)。
続いて、電源供給装置50は、PCS40を起動させる起動ボタン55が操作されたか否かを判定し(ステップS125)、起動ボタン55が操作されたと判定された場合(ステップS125:Yes)、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であるか否かを判定する(ステップS130)。
【0105】
続いて、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30が給電経路に所定値以上の電力を出力できる状態にあると判定された場合(ステップS130:Yes)、電源供給装置50は、ステップS135の処理ステップに移行し、遮断器11が開放された状態にあるか否かを判定する(ステップS135)。
【0106】
そして、ステップS135の処理において、遮断器11が開放された状態にあると判定された場合(ステップS135:Yes)、電源供給装置50は、母線電圧検出部51Aにより給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の基準電圧の範囲内(例えば、定格電圧の±10%以内)であるか否かを判定する(ステップS135A)。
【0107】
そして、ステップS135Aの処理において、給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の基準電圧の範囲内でないと判定された場合(ステップS135A:No)、電源供給装置50は、PCS40を起動させる基準となる動作電圧をPCS40に供給してこのPCS40を自立起動させる(ステップS140)。つまり、電源供給装置50は、給電経路P11及びN11の電圧を検出することなく、出力を停止した停止状態のPCS40にPCS40から出力させることを可能にする動作電圧を供給して、PCS40を自立起動させる。
【0108】
一方、ステップS135Aの処理において、給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の基準電圧の範囲内であると判定された場合(ステップS135A:Yes)、つまり蓄電装置80から給電経路P11及びN11に直流電圧が出力されている場合に、電源供給装置50は、PCS40を給電経路P11及びN11の直流電圧に連系するようにして起動させる(ステップS140A)。
そして、PCS40が、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に出力されている直流電圧を検出して連系する場合、PCS40から給電経路P11及びN11に出力する直流電圧を、蓄電装置80のPCS81から出力される直流電圧よりも所定分だけ高い電圧(例えば、1%から数%高い電圧)とすることにより、PCS40を給電経路P11及びN11に自然に連系させることができる。
【0109】
このように、第3実施形態の直流給電システム1Bでは、直流電源装置20の停電時において、蓄電装置80からPCS81を介して給電経路P11及びN11に電力を供給できるとともに、起動ボタン55が操作されることにより、PCS40を自立起動させて、太陽光発電装置30からPCS40を介して給電経路P11及びN11に電力を供給することができる。
【0110】
[第4実施形態]
上述した第3実施形態の直流給電システム1Bでは、PCS40を起動する際に、起動ボタン55が操作されることが条件になっているが、第4実施形態の直流給電システム1Cとして、起動ボタン55を操作することなく、PCS40を自動的に起動させる例について説明する。
図14は、本発明の第4実施形態に係る直流給電システム1Cの概略構成を示す構成図である。
この図14に示す直流給電システム1Cは、図12に示す直流給電システム1Bと比較して、図14に示す電源供給装置50Aにおいて、図12に示す起動ボタン55を省略した点だけが異なり、他の構成は、図12に示す直流給電システム1Bと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0111】
この図14に示す本発明の第4実施形態に係る直流給電システム1Cは、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合に、遮断器11を開放するとともに、PCS40が、一旦その動作を停止し、蓄電装置80からPCS81を介して給電経路P11及びN11に電力を供給する。
続いて、電源供給装置50Aは、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態にあることを検出し、この検出後に、パワーコンディショナ40を自動的に再起動して、PCS40から給電経路に電力を供給する。
【0112】
つまり、第3実施形態の直流給電システム1Bでは、パワーコンディショナ40を起動する際に、起動ボタン55が操作されることが条件になっているが、第4実施形態の直流給電システム1Cでは、起動ボタン55が操作されることを必要とせずに、パワーコンディショナ40が自動的に起動される。
このように、第4実施形態の直流給電システム1Cでは、直流電源装置20の停電時において、蓄電装置80からPCS81を介して給電経路P11及びN11に電力を供給できるとともに、起動ボタン55が操作されることを必要とせずに、PCS40を自動的に自立起動させて、太陽光発電装置30からPCS40を介して給電経路P11及びN11に電力を供給することができる。
【0113】
(直流給電システム1CにおけるPCS40の起動処理の手順)
図15は、直流給電システム1Cの停電時におけるPCS40の起動処理の手順を示すフローチャートである。この図15に示す例は、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生した場合に、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に電力を供給し、その後、蓄電装置80に蓄積された電荷が不足又は枯渇した場合に、PCS40を起動する例である。
以下、図15に示すフローチャートを参照して、直流給電システム1CにおけるPCS40の起動処理の手順について説明する。
まず、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給することができない停電状態が発生したとする。
この商用電力系統2において停電状態が発生すると、受電設備10内の遮断器11が保護継電器13内の不足電圧継電器(不図示)の動作により開放し、遮断器11の補助接点11aが開放する。電源供給装置50は、遮断器11の補助接点11aが開放されたことを、接点信号Auxにより検出して、商用電力系統2に停電状態が発生したことを検知する(ステップS110)。
【0114】
続いて、電源供給装置50は、蓄電装置80のPCS81を制御して、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に向けての放電を開始させるとともに(ステップS110A)、PCS40の動作を一旦停止させる(ステップS115)。また、電源供給装置50は、スイッチ部101を開放する(ステップS120)。これにより、電源供給装置50は、商用電力系統2において停電状態が発生したことを検出した場合に、PCS40の動作を一旦停止させるとともに、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に電力を供給することができる。
【0115】
続いて、電源供給装置50は、母線電圧検出部51Aにより、給電経路P11及びN11の電圧が所定の電圧値以下(例えば、ゼロ電圧に近い値)に低下しているか否かを検出する(ステップS125A)。つまり、蓄電装置80が放電を開始した後、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に供給される直流電圧が、蓄電装置80の電荷の不足又は枯渇により、所定の電圧値以下に低下しているか否かを、電源供給装置50が検出する。
そして、ステップS125Aの処理において、給電経路P11及びN11の電圧が所定の電圧値以下に低下していると判定された場合(ステップS125A:Yes)、電源供給装置50は、ステップS130の処理ステップに移行し、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であるか否かを判定する(ステップS130)。すなわち、太陽光発電装置30が所定値以上の日照量を得ることができる状態にあり、PCS40から給電経路に所定値以上の電力を供給できる状態にあるか否かを判定する。
【0116】
続いて、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30が給電経路に所定値以上の電力を出力できる状態にあると判定された場合(ステップS130:Yes)、電源供給装置50は、ステップS135の処理ステップに移行し、遮断器11が開放された状態にあるか否かを判定する(ステップS135)。
なお、ステップS110の停電検出処理において、電源供給装置50は、既に接点信号Auxにより遮断器11が開放されていることを検出しているため、このステップS135の判定処理は、遮断器11が開放していることを再確認するために行うものであり、省略することも可能である。
【0117】
そして、ステップS135の処理において、遮断器11が開放された状態にあると判定された場合(ステップS135:Yes)、電源供給装置50は、ステップS140の処理ステップに移行し、PCS起動部51により、PCS40から電力を出力させることを可能にする動作電圧を当該PCS40に供給して、PCS40を起動させる(ステップS140)。
続いて、電源供給装置50は、スイッチ制御部52により、スイッチ部101を投入して、PCS40から給電経路P11及びN11に直流電力を出力させる(ステップS145)。そして、このステップS145の処理を実行した後に、電源供給装置50は、このPCS40の起動処理を終える。
【0118】
一方、ステップS125Aの処理において、給電経路P11及びN11の電圧が所定の電圧値以下に低下していないと判定された場合(ステップS125A:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理ステップに戻り、PCS40の動作停止状態とスイッチ部101の開放状態とを継続させる。
また、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30が給電経路に所定値以上の電力を出力できる状態にないと判定された場合(ステップS130:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理ステップに戻り、PCS40の動作停止状態とスイッチ部101の開放状態とを継続させる。
また、ステップS135の処理において、遮断器11が開放された状態でないと判定された場合(ステップS135:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理ステップに戻り、PCS40の動作停止状態とスイッチ部101の開放状態とを継続させる。
【0119】
これにより、直流給電システム1Cでは、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態が発生した場合に、PCS40の動作を一旦停止させるとともに、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に電力を供給することができる。その後、蓄電装置80に蓄積された電荷が不足又は枯渇した場合に、電源供給装置50は、PCS40を起動して、太陽光発電装置30から給電経路に電力を供給させることができる。
【0120】
(直流給電システム1CにおけるPCS40の起動処理の手順の第1の変形例)
また、図16は、直流給電システム1Cの停電時におけるPCS40の起動処理の手順の第1の変形例を示すフローチャートである。この図16に示すPCS40の起動処理の手順は、図15に示すPCS40の起動処理の手順と比較して、図15に示すステップS125Aの処理ステップを、図16に示すステップS125Bの処理に置き換えた点だけが異なり、他の処理ステップは、図15に示す処理手順と同様である。このため、同一の処理内容のステップには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0121】
この図16に示す起動処理の手順では、直流給電システム1Cにおいて、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給することができない停電状態が発生したとする。
この商用電力系統2において停電状態が発生すると、受電設備10内の遮断器11が保護継電器13内の不足電圧継電器(不図示)の動作により開放し、遮断器11の補助接点11aが開放する。電源供給装置50は、遮断器11の補助接点11aが開放されたことを、接点信号Auxにより検出して、商用電力系統2に停電状態が発生したことを検知する(ステップS110)。
【0122】
続いて、電源供給装置50は、蓄電装置80のPCS81を制御して、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に向けての放電を開始させるとともに(ステップS110A)、PCS40の動作を一旦停止させる(ステップS115)。また、電源供給装置50は、スイッチ部101を開放させる(ステップS120)。
続いて、電源供給装置50は、母線電圧検出部51Aにより給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の基準電圧の範囲内(例えば、定格電圧の±10%以内)であるか否かを判定する(ステップS125B)。
【0123】
そして、ステップS125Bの処理において、給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の基準電圧の範囲内であると判定された場合(ステップS125B:Yes)、つまり、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に直流電圧が出力されている場合に、電源供給装置50は、ステップS130の処理に移行する。そして、ステップS130の処理において、太陽光発電装置30から給電経路に所定値以上の電力を供給できる状態にあると判定された場合に(ステップS130:Yes)、電源供給装置50は、ステップS135の処理に移行して、遮断器11が開放された状態にあるか否かを判定する(ステップS135)。
そして、ステップS135の処理において、遮断器11が開放された状態にあると判定された場合(ステップS135:Yes)、電源供給装置50は、PCS起動部51により、PCS40を起動させる(ステップS140)。
一方、ステップS125Bの処理において、給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の基準電圧の範囲内でないと判定された場合(ステップS125B:No)、電源供給装置50は、ステップS115の処理に戻り、PCS40の動作停止状態を継続させる。
【0124】
つまり、図16に示すPCS40の起動処理の手順では、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に直流電圧が出力されている状態において、電源供給装置50は、PCS40を給電経路P11及びN11の直流電圧に連系するようにして起動させる。
そして、PCS40が、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に出力されている直流電圧を検出して連系する場合、PCS40から給電経路P11及びN11に出力する直流電圧を、蓄電装置80のPCS81から出力される直流電圧よりも所定分だけ高い電圧(例えば、1%から数%高い電圧)とすることにより、PCS40を給電経路P11及びN11に自然に連系させることができる。
これにより、直流電源装置20の停電時において、蓄電装置80と太陽光発電装置30とから並列に給電経路P11及びN11に電力を供給することができる。
【0125】
(直流給電システム1CにおけるPCS40の起動処理の手順の第2の変形例)
図15及び図16に示した起動処理の手順の例では、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給できない停電状態を示す信号(例えば、接点信号Aux)を電源供給装置50が検出した場合に、PCS40の動作を停止させる例について説明したが、電源供給装置50が、給電母線となる給電経路P11及びN11の電圧が所定の電圧値以下に低下したことを検出して、例えば、給電経路P11及びN11の直流電圧がゼロ電圧に近い値になったことを検出してPCS40の動作を停止させるようにしてもよい。
【0126】
図17は、PCS40の起動処理の手順の第2の変形例を示すフローチャートである。
この図17に示すPCS40の起動処理の手順は、図16に示すPCS40の起動処理の手順と比較すると、図16に示す手順からステップS110Aの処理を省略し、ステップS110BとステップS120Aの処理とを新たに追加した点が異なり、他の処理は、図16に示す処理手順と同様である。このため、同一の処理内容のステップには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0127】
この図17に示す起動処理の手順では、直流給電システム1Cにおいて、商用電力系統2から直流電源装置20に電力を供給することができない停電状態が発生したことを保護継電器13が検出した場合(ステップS110)、遮断器11を開放させるが、この時点において、電源供給装置50は、蓄電装置80から給電経路P11及びN11に直流電力を供給させない。
続いて、電源供給装置50は、給電経路P11及びN11の直流電圧を母線電圧検出部51Aにより検出し、直流電源装置20の停電により給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の電圧値以下に低下したか否かを判定する(ステップS110B)。そして、給電経路P11及びN11の直流電圧が所定の電圧値以下に低下したと判定された場合に(ステップS110B:Yes)、電源供給装置50は、PCS40の動作を一旦停止させるととともに(ステップS115)、スイッチ部101を開放する(ステップS120)。
続いて、電源供給装置50は、PCS81を制御して、蓄電装置80から給電経路P11及びN11への電力の供給を開始させる(ステップS120A)。
【0128】
その後の処理の手順は、図16に示すステップS125BからステップS145の処理の手順と同様である。
これにより、直流電源装置20の停電時において、電源供給装置50は、給電母線となる給電経路P11及びN11の直流電圧が低下したことを検出して、PCS40の動作を停止させることができる。
なお、PCS40自身が、給電経路P11及びN11の直流電圧が低下したこと検出し、PCS40が自分で動作を停止するようにしてもよい。
【0129】
また、第4実施形態の直流給電システム1Cのさらなる変形例として、直流電源装置20において停電状態が発生した場合に、PCS40は、その動作を停止することなく、蓄電装置80からPCS81を介して給電経路P11及びN11に出力される直流電圧に連系して、そのまま動作を継続するようにしてもよい。但し、電源供給装置50Aは、PCS40の動作を継続する際に、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生しない状態にあることを接点信号Auxにより検出し、この逆潮流が発生しない状態にあることを検出した場合は、そのままPCS40の動作を継続する。一方、電源供給装置50Aは、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生する可能性があることを検出した場合は、PCS40の動作を停止させる。
【0130】
以上、本発明の直流給電システムとして、第1実施形態の直流給電システム1と、第2実施形態の直流給電システム1Aと、第3実施形態の直流給電システム1Bと、第4実施形態の直流給電システム1Cと、について説明した。
これらの直流給電システムにおいて、PCS40は、このPCS40が連系する母線となる給電経路P11及びN11の電圧を検出することが必須の条件にされることはなく、PCS40は、電源供給装置50又は50Aから動作電圧の供給を受けることにより、給電経路P11及びN11の電圧を検出しなくても動作することができる。つまり、PCS40は、給電経路P11及びN11の電圧が低下するような状態になっても、そのまま、直流電力の出力を継続することができる。
【0131】
また、PCS40の起動時の条件として、商用電力系統2から直流電源装置20に電力が供給できない停電状態が発生している条件に加えて、給電経路P11及びN11の電圧がなくなったことを起動条件に含めるようにしてもよい。
さらには、第3実施形態の直流給電システム1Bや、第4実施形態の直流給電システム1Cのように、直流給電システムが蓄電装置80を備え、商用電力系統2の停電時において、この蓄電装置80のバッテリから給電経路P11及びN11に直流電力を供給する場合、直流給電システムのブラックアウト時などで起動できるように、蓄電装置80内のバッテリの電荷を枯渇させずに所定のSOC(State of Charge)を確保するようにしてもよい。つまり、蓄電装置80のバッテリのSOCが所定のSOC以下になる場合に、蓄電装置80から給電経路P11及びN11への放電を停止するようにしてもよい。
【0132】
[交流給電システムの例]
上記第1実施形態から第4実施形態では、給電経路に接続される負荷装置に直流電力を供給する直流給電システムの例について説明したが、負荷装置に交流(例えば、AC400V)を供給する交流給電システムであってもよい。
図18は、交流給電システム1Dの概略構成を示す構成図である。図18に示す交流給電システム1Dは、図1に示す直流給電システム1と比較して、基本的な構成は同じであるが、図1に示す直流電源装置20を省略し、パワーコンディショナ40を交流電圧を出力するパワーコンディショナ40Aに代えた点が、構成上で異なる。
また、図1に示す直流電圧の給電経路P11及びN11を3相交流電圧の給電経路ACL11に代え、給電経路P21及びN21からP28及びN28を、3相又は単相の給電経路ACL21からACL28に代えた点が異なる。また、図18において、スイッチ部101から116は、交流電流を導通及び遮断する機能を備える半導体スイッチであり、負荷装置L11からL16は、3相又は単相の交流電圧を入力とする負荷装置である。
【0133】
上記構成の交流給電システム1Dにおいて、商用電力系統2から供給される高圧交流電圧(例えば、3相AC6600V)を変圧器12により所定の低圧交流電圧(例えば、3相AC400V)に降圧し、この低圧交流電圧を、給電経路ACL11へ出力する。
【0134】
給電経路ACL11には、パワーコンディショナ(PCS)40A及びスイッチ部101を介して太陽光発電装置30が接続されている。太陽光発電装置30のPCS40Aは、DC/ACコンバータ(インバータ)や交流を所定の電圧に昇圧するPCS用変圧器などの電力変換装置を備える。
なお、交流給電システム1Dにおける制御動作は、図1に示す直流給電システム1における直流電電圧を交流電圧に置き換えた点だけが異なり、電源供給装置50やPCS40Aやスイッチ部100等の基本的な動作は、図1に示す直流給電システム1における動作と同様である。
【0135】
つまり、商用電力系統2の停電時において、電源供給装置50は、PCS40Aの動作を一旦停止させ、起動ボタン55が操作されると、PCS40Aに基準となる交流の動作電圧を供給して、このPCS40Aを自立起動させる。また、電源供給装置50は、スイッチ部111から116の開閉状態を設定して、給電経路ACL11からACL28における給電範囲を設定する。
なお、詳細な構成と制御動作については、直流給電システム1の場合と同様であるため、重複する説明は省略する。
これにより、交流給電システム1Dにおいて、商用電力系統2から給電経路に交流電力が供給されない停電状態において、太陽光発電装置から給電経路に交流電力を供給することができる。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態において、電源供給装置50及び電源供給装置50A内の各処理部の機能は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、各処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
すなわち、電源供給装置50及び50Aは内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。また、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0137】
なお、ここで、本発明と上述した実施形態との対応関係について補足して説明する。本発明における直流給電システムは、直流給電システム1、直流給電システム1A、直流給電システム1B、又は、直流給電システム1Cが対応する。
また、本発明における直流電源装置は、直流電源装置20が対応する。
また、本発明における電源供給装置は、電源供給装置50又は電源供給装置50Aが対応し、本発明におけるパワーコンディショナは、パワーコンディショナ(PCS)40が対応する。また、本発明における検出部は、保護継電器13が対応し、より詳細には、保護継電器13内の不足電圧継電器から出力される信号により動作する遮断器11の補助接点11aの接点信号により、電源供給装置50が、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を検出する。また、本発明における制御部は、電源供給装置50のPCS起動部51が対応する。なお、この制御部は、PCS40の系統連系制御部42であってもよい。また、本発明における遮断部は、遮断器11が対応する。
【0138】
(1)そして上記実施形態において、直流給電システム1(直流給電システム)は、商用電力系統2から供給される交流電力を直流電力に変換する直流電源装置20が設けられ、直流電源装置20から給電経路を介して負荷装置に直流電力を供給する直流給電システム1であって、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を検出する保護継電器13(検出部)と、検出された結果に基づいて給電経路への直流電力の供給を制御する電源供給装置50(制御部)と、を備え、太陽光発電装置30が発電した電力をPCS40(パワーコンディショナ)が直流電力に変換して、PCS40が変換した後の直流電力が電源供給装置50の制御に応じて給電経路に供給されるように給電経路が構成されており、電源供給装置50は、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13が検出した後に、PCS40からの直流電力を給電経路に供給するように制御する。
【0139】
このような構成の直流給電システム1(直流給電システム)では、商用電力系統2が停電状態にあり直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13(検出部)が検出した後に、電源供給装置50は、PCS40から給電経路に直流電力を供給させる。
これにより、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない停電状態において、太陽光発電装置30から給電経路に直流電力を供給することができる。
また、直流給電システム1(直流給電システム)では、PCS40から給電経路に直接電力を供給する。要するに、直流給電システム1では、PCS40から供給される電力を蓄えてから、蓄えた電力を負荷に供給するような構成を必要としない。このように構成することにより、直流給電システム1は、太陽光発電装置からの電力を蓄えることなく、太陽光発電装置30からPCS40を介して給電経路に直流電力を供給して、給電経路を介してその電力を負荷に供給することができる。
【0140】
(2)また、上記実施形態において、直流給電システム1(直流給電システム)は、商用電力系統2に逆潮流が発生しないように、給電経路から商用電力系統2に向けての電力の供給を遮断する遮断器11(遮断部)を備え、電源供給装置50(制御部)は、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13(検出部)が検出し、電源供給装置50による制御に応じてPCS40(パワーコンディショナ)から給電経路に直流電力が供給される場合に、給電経路から商用電力系統に向けての電力の供給を遮断器11によって遮断させる。
このような構成の直流給電システム1(直流給電システム)では、商用電力系統2に逆潮流が発生しないように、給電経路から商用電力系統2に向けての電力の供給を遮断する遮断器11(遮断部)を備える。そして、電源供給装置50(制御部)は、PCS40(パワーコンディショナ)から給電経路に直流電力が供給される場合に、給電経路から商用電力系統に向けての電力の供給を遮断器11によって遮断させる。
これにより、直流給電システム1(直流給電システム)では、PCS40(パワーコンディショナ)から給電経路に直流電力が供給される場合に、給電経路から商用電力系統2に向けての電力の供給を遮断器11によって遮断させることができる。
【0141】
(3)また、上記実施形態において、遮断器11(遮断部)は、商用電力系統2の受電点から直流電源装置20までの間に設けられている。
これにより、直流電源装置20から商用電力系統2に向けての電力の供給を遮断器11によって遮断させることができる。
【0142】
(4)また、上記実施形態において、太陽光発電装置30が発電した電力を変換して、変換した後の直流電力を給電経路に供給するというPCS40(パワーコンディショナ)の動作を、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13(検出部)が検出した後に、電源供給装置50(制御部)が一旦停止させる。そして、電源供給装置50は、PCS40の動作を一旦停止させた後に、商用電力系統2に向けての電力の供給を遮断した状態にあることを検出して、電力の供給を遮断した状態にあることを検出した後に、動作が一旦停止した状態にあるPCS40が再起動するように当該PCS40を制御して、PCS40が再起動した後にPCS40から給電経路に直流電力を供給させる。
【0143】
このような構成の直流給電システム1(直流給電システム)では、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13(検出部)が検出した後に、PCS40の動作を一旦停止させる。そして、電源供給装置50は、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生することを回避する状態にあることを検出した後、例えば、遮断器11が開放されていることを接点信号Auxにより検出した後に、PCS40を再起動して、PCS40から給電経路に電力を供給する。
これにより、直流給電システム1(直流給電システム)では、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない停電状態において、PCS40の動作を一旦停止させた後に、PCS40を再起動して、太陽光発電装置30から給電経路に直流電力を供給することができる。
【0144】
(5)また、上記実施形態において、電源供給装置50(制御部)は、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13(検出部)が検出した場合に、PCS40(パワーコンディショナ)の動作を一旦停止させるとともに、PCS40の動作を一旦停止させた後に、PCS40の起動を指示する操作が行われたことを検出して、この起動を指示する操作の検出結果に応じてPCS40を再起動させる。
このような構成の直流給電システム1(直流給電システム)では、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を保護継電器13が検出した場合に、PCS40の動作を一旦停止させる。そして、電源供給装置50は、PCS40の動作を一旦停止させた後、起動ボタン55が操作されたことを検出して、PCS40を再起動して、PCS40から給電経路に電力を供給する。
これにより、直流給電システム1(直流給電システム)では、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない停電状態において、PCS40の動作を一旦停止させた後に、起動ボタン55を操作することにより、PCS40を再起動して、太陽光発電装置30から給電経路に直流電力を供給することができる。
【0145】
(6)また、上記実施形態において、電源供給装置50(制御部)は、PCS40(パワーコンディショナ)の起動を指示する操作が行われたことを検出した後に、直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を検出することと、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であることと、がともに満たされる場合にPCS40を再起動させる。
これにより、直流給電システム1(直流給電システム)では、起動ボタン55が操作されたことが電源供給装置50により検出された場合に、給電経路から商用電力系統2に向けて電力の逆潮流が発生することを回避できるとともに、太陽光発電装置30から出力可能な電力が所定値以上の電力であることを検出して、PCS40を再起動することができる。
【0146】
(7)また、上記実施形態において、直流給電システム1(直流給電システム)は、PCS40(パワーコンディショナ)が動作を停止した状態から起動する際に、PCS40から電力を出力させることを可能にする動作電圧を供給して該PCS40を起動させる電源供給装置50を備える。
このように、直流給電システム1(直流給電システム)では、直流電源装置20の停電時において、一旦動作を停止したPCS40を再起動するために、PCS40から電力を出力させることを可能にする動作電圧を供給して、PCS40を自立起動させる。
これにより、直流給電システム1(直流給電システム)では、給電経路から太陽光発電装置30のPCS40の動作可能とする動作電圧が供給されていない停電状態において、当該PCS40を自立起動させて、給電経路に電力を供給することができる。
【0147】
(8)また、上記実施形態において、直流給電システム1(直流給電システム)は、保護継電器13(検出部)と、直流電源装置20と、電源供給装置50(制御部)と、太陽光発電装置30と、PCS40(パワーコンディショナ)と、を備える。
このような構成の直流給電システム1(直流給電システム)は、保護継電器13(検出部)と、直流電源装置20と、電源供給装置50(制御部)と、太陽光発電装置30と、PCS40(パワーコンディショナ)とを備えることにより、商用電力系統2が停電状態にあり直流電源装置20から給電経路に直流電力が供給されない状態を直流電源装置20(保護継電器13)が検出した後に、電源供給装置50は、PCS40から給電経路に直流電力を供給させる。
これにより、直流給電システム1(直流給電システム)では、給電経路から太陽光発電装置30のPCS40の動作可能とする動作電圧が供給されていない停電状態において、当該PCS40を自立起動させて、給電経路に電力を供給することができる。
【0148】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の直流給電システムは、上述の図示例にのみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0149】
例えば、直流給電システム1及び直流給電システム1Aでは、バッアップ用の電源装置として、太陽光発電装置30が設備された例を示し、直流給電システム1B及び直流給電システム1Cでは、バッアップ用の電源装置として、太陽光発電装置30と蓄電装置80とが設備された例を示したが、バッアップ用の電源として、さらに燃料電池やエンジン発電機等が設備される場合においても、本発明は好適に適用できるものである。
【0150】
また、図6に示したコントロールパネル53を用いてスイッチ部100の開閉を行う例は、一例を示したものであって、給電経路上のスイッチ部100を指定して開閉を行う他の制御方法を用いて行ってもよい。また、図9に示したコントロールパネル53を用いてPCS40の起動を行う例についても、一例を示したものであって、PCS40の起動ボタンは、機械式のスイッチを用いて行ってもよく、又、他の起動指示方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0151】
1, 1A,1B,1C・・・直流給電システム、1D・・・交流給電システム、
2・・・商用電力系統、10・・・受電設備、
11・・・遮断器(遮断部)、13・・・保護継電器(検出部)、
20・・・直流電源装置、21・・・AC/DCコンバータ、
30・・・太陽光発電装置(PV)、40・・・パワーコンディショナ(PCS)、
41・・・発電量制御部、42・・・系統連系制御部、
43・・・DC/DCコンバータ、
50・・・電源供給装置(制御部)、51・・・PCS起動部、
51A・・・母線電圧検出部、52・・・スイッチ制御部、
53・・・コントロールパネル、54・・・蓄電池、
55,55A・・・起動ボタン、61・・・分電盤(PDF)、
71・・・スイッチ制御信号受信部、72・・・スイッチ開閉部、
73・・・開閉結果通知部、74・・・スイッチ、75・・・電源部、
80・・・蓄電装置、81・・・パワーコンディショナ(PCS)、
100,101〜116・・・スイッチ部、
Aux・・・接点信号、L11〜L16・・・負荷装置、
P11,P21〜P28,N11,N21〜N28・・・給電経路
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