特許 6373036 揮散容器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6373036

(24)【登録日】2018年7月27日

(45)【発行日】2018年8月15日

(54)【発明の名称】揮散容器

(51)【国際特許分類】

   B65D 83/00 20060101AFI20180806BHJP

   A61L 9/12 20060101ALI20180806BHJP

   A01M 7/00 20060101ALI20180806BHJP

【ＦＩ】

   B65D83/00 F

   A61L9/12

   B65D83/00 K

   A01M7/00 Q

【請求項の数】3

【全頁数】12

(21)【出願番号】特願2014-73951(P2014-73951)

(22)【出願日】2014年3月31日

(65)【公開番号】特開2015-196505(P2015-196505A)

(43)【公開日】2015年11月9日

【審査請求日】2016年9月27日

(73)【特許権者】

【識別番号】000006909

【氏名又は名称】株式会社吉野工業所

(74)【代理人】

【識別番号】100147485

【弁理士】

【氏名又は名称】杉村 憲司

(74)【代理人】

【識別番号】100156867

【弁理士】

【氏名又は名称】上村 欣浩

(72)【発明者】

【氏名】水嶋 博

(72)【発明者】

【氏名】後藤 孝之

【審査官】 田中 佑果

(56)【参考文献】

【文献】 特表２０１０−５１１４２２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０９−３０８８４０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開昭５９−０９３４３４（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開昭６１−１６７９６７（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開平０７−０００８８２（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開昭６３−０５５９１４（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ６５Ｄ ８３／００

Ｂ６５Ｄ ８５／００

Ａ０１Ｍ ７／００

Ａ６１Ｌ ９／１２

Ａ６１Ｌ ９／１４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

容器体内の薬剤を吸上芯で吸い上げて揮発させる揮散体と、シリンダに対する頭部の押し下げにて前記容器体内の前記薬剤を吸い上げて噴霧する噴霧ポンプと、を備える揮散容器において、
前記容器体に前記吸上芯及び前記揮散体に対して上下動可能に取り付けられると共に前記噴霧ポンプの前記シリンダが取り付けられた開閉体を備え、
前記開閉体は、上方に移動した状態では、該開閉体の前記容器体への取り付け部の下方において該開閉体の下端に形成された開口を通じて、前記揮散体から揮発した前記薬剤を外部へ放出させる一方、下方に移動した状態では前記開口を通じた前記薬剤の放出を防止することを特徴とする揮散容器。

【請求項2】

前記噴霧ポンプは、噴霧口を覆うと共に前記頭部の押し下げを防止する閉鎖状態と、前記噴霧口を開放すると共に前記頭部の押し下げを可能にする開放状態との間で回動可能に前記頭部に軸支されたカバーを有する、請求項１に記載の揮散容器。

【請求項3】

前記開閉体は、前記容器体の口部に直接取り付けられる、請求項１又は２に記載の揮散容器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、容器体内の薬剤を吸上芯で吸い上げて揮発させる揮散体と、頭部の押し下げにて容器体内の薬剤を吸い上げて噴霧する噴霧ポンプと、を備える揮散容器に関し、特に、流通時や不使用時には揮散を防止できる一方、使用時にはワンタッチ操作で揮散可能とし、しかも、薬剤を揮散可能とした状態のままで揮散容器を片手で把持して薬剤を噴霧させる際に、手が揮散する薬剤に晒されることを抑制しようとするものである。

【背景技術】

【0002】

従来、芳香剤等の揮発性の薬剤を、揮散体から揮発させて外部に分散させる（すなわち、揮散させる）据え置きタイプの揮散容器が知られている。また、このような揮散容器として、噴霧ポンプも備え、通常時には据え置きタイプとして使用できる一方、比較的多量の薬剤を短時間で外部に与えたい場合には、噴霧ポンプから薬剤を噴霧できるようにした、所謂ツーウェイ式の揮散容器が知られている。

【0003】

このようなツーウェイ式の揮散容器として、例えば、特許文献１に記載されるものでは、流通時には、容器体の口部に閉鎖キャップが螺着されており、使用時には、当該閉鎖キャップを取り外し、揮散体と吸上芯とを取付部材によって容器体の口部に取り付け、さらに、容器体に噴霧ポンプを取り付けるようになっている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００８−３０１９１６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、特許文献１に記載されるような揮散容器では、使用時に、閉鎖キャップを取り外し、揮散体及び噴霧ポンプ等を取り付けることで、薬剤を揮散可能とすることができるが、より容易に揮散可能とすることのできる構成が求められている。また、揮散容器を片手で把持して薬剤を噴霧させられる構成とし、さらには、薬剤を揮散可能とした状態のままで噴霧させた場合でも、手が揮散する薬剤に晒されにくい構成にできれば、使い勝手をより一層向上させることができる。

【0006】

本発明は、前記の現状に鑑み開発されたもので、揮散体及び噴霧ポンプの双方を有するツーウェイ式の揮散容器において、流通時や不使用時には揮散を防止できる一方、使用時にはワンタッチ操作で揮散可能とし、しかも、薬剤を揮散可能とした状態のままで揮散容器を片手で把持して薬剤を噴霧させる際に、手が揮散する薬剤に晒されることを抑制できる揮散容器を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
１．容器体内の薬剤を吸上芯で吸い上げて揮発させる揮散体と、シリンダに対する頭部の押し下げにて前記容器体内の前記薬剤を吸い上げて噴霧する噴霧ポンプと、を備える揮散容器において、
前記容器体に前記吸上芯及び前記揮散体に対して上下動可能に取り付けられると共に前記噴霧ポンプの前記シリンダが取り付けられた開閉体を備え、
前記開閉体は、上方に移動した状態では、該開閉体の前記容器体への取り付け部の下方において該開閉体の下端に形成された開口を通じて、前記揮散体から揮発した前記薬剤を外部へ放出させる一方、下方に移動した状態では前記開口を通じた前記薬剤の放出を防止することを特徴とする揮散容器。

【0008】

２．前記噴霧ポンプは、噴霧口を覆うと共に前記頭部の押し下げを防止する閉鎖状態と、前記噴霧口を開放すると共に前記頭部の押し下げを可能にする開放状態との間で回動可能に前記頭部に軸支されたカバーを有する、前記１の揮散容器。

【0009】

３．前記開閉体は、前記容器体の口部に直接取り付けられる、前記１又は２の揮散容器。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、使用時には、開閉体を上方に移動させるというワンタッチ操作で、開閉体の容器体への取り付け部の下方に形成された開口を通じて、揮散体から揮発した薬剤を外部へ放出させることができる一方、流通時や不使用時には、開閉体を下方に移動した状態とすることで、前記開口を通じた薬剤の放出を防止することができる。また、薬剤を揮散可能とした状態のままで揮散容器を片手で把持して薬剤を噴霧させる際には、前記開口が開閉体の容器体への取り付け部の下方に形成されていることから、開閉体を把持して噴霧ポンプの押し下げ操作を行うことで、手が揮散する薬剤に晒されることを抑制することができる。

【0011】

したがって、本発明によれば、揮散体及び噴霧ポンプの双方を有するツーウェイ式の揮散容器において、流通時や不使用時には揮散を防止できる一方、使用時にはワンタッチ操作で揮散可能とし、しかも、薬剤を揮散可能とした状態のままで揮散容器を片手で把持して薬剤を噴霧させる際に、手が揮散する薬剤に晒されることを抑制できる揮散容器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】（ａ）は、本発明の一実施形態に係る揮散容器の一部断面側面図であり、揮発した薬剤の放出を防止し、且つ、噴霧ポンプの押し下げを防止した状態を示す。（ｂ）は、（ａ）の一部平面図であり、（ｃ）は（ａ）の一部正面図であり、（ｄ）は（ａ）の一部背面図である。

【図2】（ａ）は、図１の揮散容器の一部断面側面図であり、揮発した薬剤の放出を可能とし、且つ、噴霧ポンプの押し下げを可能とした状態を示す。（ｂ）は、（ａ）の一部平面図であり、（ｃ）は（ａ）の一部正面図であり、（ｄ）は（ａ）の一部背面図である。

【図3】本発明の他の実施形態に係る揮散容器の一部断面側面図であり、揮発した薬剤の放出を防止した状態を示す。

【図4】図３の揮散容器の一部断面側面図であり、揮発した薬剤の放出を可能とした状態を示す。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、図１〜図２を参照して、本発明の一実施形態に係る揮散容器１について詳細に例示説明する。
なお、本明細書において、上下方向とは、噴霧ポンプ７０の軸線Ｏに沿う方向を意味し、上方とは、噴霧ポンプ７０の頭部７３が位置する側（すなわち、図１（ａ）における上方）、下方とは、容器体１０の底部１４が位置する側（すなわち、図１（ａ）における下方）を意味するものとする。また、正面とは、軸線Ｏからみて噴霧ポンプ７０の噴霧口７３ａが位置する側（すなわち、図１（ａ）においては左側、図３においては右側）、背面とは、その反対側を意味するものとする。

【0014】

図１に示すように、本実施形態に係る揮散容器１は、容器体１０と、吸上芯２０と、吸上芯取付体３０と、装着体４０と、揮散体５０と、開閉体６０と、噴霧ポンプ７０と、を備える。

【0015】

容器体１０は、軸線Ｏを中心とする円筒状の口部１１を有するボトル状を成しており、口部１１から拡径する肩部１２、肩部１２に連なり、やはり軸線Ｏを中心とする円錐状の胴部１３、及び胴部１３の下端を閉塞する底部１４を有している。容器体１０の内部には、芳香剤、消臭剤、防虫剤、殺虫剤等の液状の薬剤（図示省略）が収納されている。

【0016】

また、容器体１０の内部には、容器体１０内の薬剤を吸い上げて揮散体５０に到達させる吸上芯２０が配置されている。吸上芯２０は、軸線Ｏを中心とする円筒状を成しており、吸上芯取付体３０によって、容器体１０の口部１１に取り付けられている。

【0017】

吸上芯取付体３０は、容器体１０の口部１１の上端に当接するフランジ部３１と、フランジ部３１の内周縁から垂下する筒壁部３２と、筒壁部３２の下端から縮径部を介して垂下すると共に、吸上芯２０に突起３３ａによって係合して吸上芯２０を保持する保持筒部３３とを有する。

【0018】

容器体１０の口部１１の外周面には、軸線Ｏを中心とする雄ねじ部１１ａが形成されている。該雄ねじ部１１ａには、装着体４０の装着筒部４１の内周面に形成された雌ねじ部４１ａが螺着することで、装着体４０が容器体１０に取り付けられている。なお、雄ねじ部１１ａ及び雌ねじ部４１ａに代えて、互いに乗越えによって係止する凹凸部を設けることで、装着体４０を容器体１０に取り付けるようにしてもよい。

【0019】

装着筒部４１の上端には、内向きフランジ部４２が連設されており、内向きフランジ部４２の径方向内側端には環状のシール壁部４３が垂設されている。装着体４０が容器体１０に取り付けられた状態で、内向きフランジ部４２が、吸上芯取付体３０のフランジ部３１の上面に当接し、シール壁部４３が、吸上芯取付体３０の筒壁部３２の内周面に当接することにより、吸上芯取付体３０の筒壁部３２の内外周面及びフランジ部３１の上下面に沿う液漏れを防止している。

【0020】

内向きフランジ部４２の径方向中間部には、内周壁部４４が立設されている。本実施形態では、内周壁部４４と、該内周壁部４４の径方向内側の内向きフランジ部４２とによって形成された環状の段部に揮散体５０が保持されている。なお、揮散体５０が装着体４０の前記段部に保持された状態では、揮散体５０の底面と、吸上芯２０の上端面とは、互いに接触している。揮散体５０は、例えば、フェルト、不織布又は濾紙等の吸水性素材で構成することができ、中央に貫通孔５１を有する円板状を成している。

【0021】

装着体４０の装着筒部４１の外周面には、軸線Ｏを中心とする雄ねじ部４１ｂが形成されている。装着筒部４１の下端には、外向きフランジ部を介して中間壁部４５が垂設されている。中間壁部４５の下端には、外向きフランジ部を介して外周壁部４６が垂設されている。外周壁部４６の内周面下部には、容器体１０の肩部１２に設けられた段差部１２ａに周設された環状凹部１２ｂに上方から乗越え係止する係止突起４６ａが形成されている。

【0022】

装着筒部４１の雄ねじ部４１ｂには、開閉体６０の天壁部６１の外周縁から垂下すると共に容器体１０の胴部１３に滑らかに連なる円錐状の外壁部６２の内周面に形成された雌ねじ部６２ａが螺着している。開閉体６０は、この装着体４０の雄ねじ部４１ｂに螺着する雌ねじ部６２ａを介して、容器体１０に上下動可能に取り付けられている。すなわち、開閉体６０は、装着体４０に対して開閉体６０を回転させることで、図２に示す上方に移動した状態と、図１に示した下方に移動した状態とを切り替えられるようになっている。

【0023】

また、開閉体６０の外壁部６２における雌ねじ部６２ａの下方には、開閉体６０が上方に移動した状態にて、装着体４０の中間壁部４５の外周面に形成されたリブ状の突起４５ａに当接し（図２参照）、開閉体６０のそれ以上の上方への移動を妨げる回り止め用のリブ状の突起６３が形成されている。なお、リブ状の突起６３は、開閉体６０を、所定の大きさ以上の力で回転させることで、該突起６３と、中間壁部４５のリブ状の突起４５ａとを弾性変形させて互いに乗越えさせ、開閉体６０を装着体４０から取り外せるようになっている。また、図１に示したように、開閉体６０の外壁部６２における雌ねじ部６２ａの上方には、開閉体６０が下方に移動した状態にて、装着体４０の内周壁部４４の外周面に気密に接触するシール筒部６４が垂設されている。

【0024】

開閉体６０の外壁部６２の内周側には、補強筒体６５が設けられている。補強筒体６５は、軸線Ｏを中心とする筒壁部６５ａと、筒壁部６５ａの下端に形成された下側鍔部６５ｂと、筒壁部６５ａの上端にテーパ壁部６５ｃを介して連なる上側鍔部６５ｄとを有している。下側鍔部６５ｂの外周面は、シール筒部６４の内周面に当接し、上側鍔部６５ｄの外周面は、外壁部６２の内周面上端に当接している。また、下側鍔部６５ｂの底面における外周縁は、開閉体６０の下降状態（図１に示した状態）にて、装着体４０の内周壁部４４の上端面に当接する。上側鍔部６５ｄの上面は、開閉体６０の天壁部６１の底面に当接している。

【0025】

筒壁部６５ａ及びテーパ壁部６５ｃの外周面には、上側鍔部６５ｄと下側鍔部６５ｂとを繋ぐ複数の縦リブ６５ｅが周方向に間隔を空けて形成されている。上側鍔部６５ｄの径方向内側端には、開閉体６０の天壁部６１の径方向内側端に立設された噴霧ポンプ７０のための取付筒部６６の内周面に当接する上筒部６５ｆが立設されている。補強筒体６５は、例えば、嵌合、又は接着剤等により開閉体６０に取り付けられ、その結果、開閉体６０に一体化されている。

【0026】

開閉体６０の取付筒部６６の外周面には、軸線Ｏを中心とする雄ねじ部６６ａが形成されている。雄ねじ部６６ａには、噴霧ポンプ７０の取付筒体７１に形成された雌ねじ部７１ａが螺着されている。なお、雄ねじ部６６ａ及び雌ねじ部７１ａに代えて、互いに乗越えによって係止する凹凸部を設けることで、噴霧ポンプ７０を取付筒部６６に取り付けるようにしてもよい。

【0027】

噴霧ポンプ７０は、取付筒部６６に取付筒体７１を取り付けることによって、シリンダ７２が取付筒部６６に固定され、頭部７３の押し下げにて、それ自体公知のポンプ機構によって、吸上パイプ７４を通じて容器体１０内の薬剤を吸い上げ、頭部７３の噴霧口７３ａから薬剤を噴霧できるようになっている。本実施形態では、噴霧ポンプ７０は、流通時乃至不使用時に噴霧ポンプ７０の噴霧口７３ａを覆い、該頭部７３の押し下げを防止するカバー７５を備えている。

【0028】

より具体的には、カバー７５は、噴霧ポンプ７０の噴霧口７３ａを覆うと共に取付筒体７１に当接することによって頭部７３の押し下げを防止する閉鎖状態と、噴霧口７３ａを開放すると共に頭部７３の押し下げを可能にする開放状態との間で回動可能に頭部７３に軸支されている。なお、カバー７５と頭部７３の間には、閉鎖状態及び開放状態をそれぞれ維持するための係合凸部７５ａ及び係合凹部７３ｂが設けられている。

【0029】

かかる構成によれば、使用時には、図２に示したように、装着体４０に対して開閉体６０を回転させて、上方に移動させるというワンタッチ操作にて、開閉体６０の装着体４０を介した容器体１０への取り付け部である雌ねじ部６２ａの下方に開口Ｐを形成し、該開口Ｐを通じて、揮散体５０から揮発した薬剤を外部へ放出させることができる。なお、本実施形態では、前記の開口Ｐは、装着体４０に対して開閉体６０を上方に移動させることで、開閉体６０の外壁部６２の下端と装着体４０の外周壁部４７の外周面とによって形成される。

【0030】

また、このとき、揮散体５０から揮発した薬剤は、開閉体６０の雌ねじ部６２ａと装着体４０の雄ねじ部４１ｂの隙間を通じて開口Ｐに到達することになるが、薬剤をより放出させ易くするために、例えば、開閉体６０の雌ねじ部６２ａに、複数の縦溝を周方向に間隔をあけて形成し、これら縦溝を薬剤の放出のための経路としてもよい。

【0031】

また、この状態で、比較的多量の薬剤を短時間で外部に与えたい場合等には、開閉体６０を片手で把持して、例えば人差し指で、噴霧ポンプ７０のカバー７５を回動させて開放状態とし、そのまま噴霧ポンプ７０の頭部７３を押し下げることができる。

【0032】

その際、前記開口Ｐが開閉体６０の容器体１０への取り付け部（すなわち、雌ねじ部６２ａ）の下方に形成されていることから、手が揮散する薬剤に晒されることを抑制することができる。また、本実施形態では、前記開口Ｐは下方に向かって開口しており、揮発した薬剤が下方に向かって放出されるようになっているため、手が揮散する薬剤に晒されることを、より一層抑制することができる。

【0033】

また、揮散容器１の流通時や不使用時には、開閉体６０を、図１に示したように、下方に移動した状態とすることで、前記開口Ｐを通じた薬剤の放出を防止することができる。すなわち、開閉体６０を下方に移動した状態とすることで、装着体４０の内周壁部４４の外周面に、開閉体６０のシール筒部６４を気密に接触させて封止し、薬剤の外部への放出を防止することができる。

【0034】

さらに、このとき、カバー７５を回動させて、図１に示したような閉鎖状態とすることで、噴霧ポンプ７０の噴霧口７３ａを覆うと共に頭部７３の押し下げを防止することができるため、噴霧口７３ａへの埃の付着を防止し、子供が簡単に操作できないようにし（チャイルドレジスタンス機能）、噴霧ポンプ７０の誤操作を防止することができる。

【0035】

なお、本実施形態の揮散容器１は、開閉体６０の外形が円錐状を成しているため掴み易く、開閉体６０から噴霧ポンプ７０が立ち上がっていることから、噴霧ポンプ７０の頭部７３の押し下げ操作も容易である。したがって、例えば、室内上方への薬剤の噴霧も容易にできる。

【0036】

また、開閉体６０から噴霧ポンプ７０が立ち上がっている外観により、ツーウェイ式の揮散容器であることをユーザーに認識させ易い。また、噴霧ポンプ７０のポンプ機構は既存の構成のものを用いているため、既存の部品点数の増加を抑制し、コストの上昇を抑制することができる。

【0037】

次に、図３〜図４を参照して、本発明の他の実施形態に係る揮散容器２について詳細に例示説明する。
本実施形態に係る揮散容器２は、開閉体８０を、容器体１０’の口部１１’に直接取り付けるようになっている。開閉体８０は、本実施形態では、内側開閉体８０Ａと外側開閉体８０Ｂとで構成されている。以下、詳細に説明する。

【0038】

本実施形態に係る揮散容器２は、容器体１０’と、吸上芯２０’と、吸上芯取付体３０’と、揮散体５０’と、開閉体８０と、噴霧ポンプ７０’と、を備える。
容器体１０’は、軸線Ｏを中心とする円筒状の口部１１’を有するボトル状を成しており、口部１１’から拡径する肩部１２’、肩部１２’に連なり、やはり軸線Ｏを中心とする円筒状の胴部１３’、及び胴部１３’の下端を閉塞する底部１４’を有している。

【0039】

胴部１３’の上部には、縮径により形成された段差部１３ａが形成されている。また、胴部１３’の外周面には、肩部１２’から段差部１３ａの下方にかけて、複数の上下方向に延びる凹溝１３ｂが周方向に間隔をあけて形成されている。容器体１０’の内部には、前述した例の場合と同様の薬剤（図示省略）が収納されている。

【0040】

また、容器体１０’の内部には、容器体１０’内の薬剤を吸い上げて揮散体５０’に到達させる吸上芯２０’が配置されている。吸上芯２０’は、円柱状を成しており、吸上芯取付体３０’によって、容器体１０’の口部１１’に取り付けられている。

【0041】

吸上芯取付体３０’は、容器体１０’の口部１１’の上端に当接するフランジ部３１’と、フランジ部３１’の内周縁から垂下する筒壁部３２’と、筒壁部３２’の下端に連なるリング状の底壁部３４と、該底壁部３４に穿設された円形の孔の外周縁から垂下すると共に吸上芯２０’の上端部に圧接して吸上芯２０’を保持する保持筒部３５とを有する。

【0042】

容器体１０’の口部１１’の外周面には、軸線Ｏを中心とする雄ねじ部１１ａ’が形成されている。該雄ねじ部１１ａ’には、内側開閉体８０Ａの取り付け筒部８１の内周面に形成された雌ねじ部８１ａが螺着することで、内側開閉体８０が容器体１０’に上下動可能に取り付けられている。取り付け筒部８１の上部には、複数の貫通孔８１ｂが周方向に間隔をあけて形成されている。雌ねじ部８１ａは貫通孔８１ｂの下方に形成されており、雌ねじ部８１ａを口部１１’の雄ねじ部１１ａ’に取り付ける際には、雌ねじ部８１ａが口部１１’の外周面上端に周設された抜け止め突起１１ｂを乗越えるが、雌ねじ部８１ａを取り外し方向に回動させた際（すなわち、容器体１０’に対して開閉体８０を上方に移動させた際）には、図４に示すように雌ねじ部８１ａの上端が抜け止め突起１１ｂに抜け止め係止されるようになっている。

【0043】

取り付け筒部８１の上端には、内向きフランジ部８２を介して中間壁部８３が立設されている。中間壁部８３の上端には、天壁部８４の外周縁が連結している。天壁部８４の底面には、中間壁部８３の内周面に連結すると共に下方に延びる補強用の複数の縦リブ８４ａが周方向に間隔をあけて形成されている。天壁部８４の内周縁には、噴霧ポンプ７０’のための取付筒部８５が立設されている。

【0044】

内側開閉体８０Ａの中間壁部８３の外周面には、係止凹部８３ａが周設されている。係止凹部８３ａには、外側開閉体８０Ｂが有する複数の連結片８６に形成された係止爪部８６ａが、上方からの乗越えにより嵌合している。複数の連結片８６は、周方向に間隔をあけて配置されており、各連結片８６の周方向両側には、中間壁部８３の外周面から突出する回り止め用の突起８３ｂが設けられている。各連結片８６の上端は、略円筒状の外周壁部８７の内周面に連結している。このように、外側開閉体８０Ｂは、内側開閉体８０Ａに嵌合により取り付けられ、内側開閉体８０Ａと一体化されている。

【0045】

外側開閉体８０Ｂの外周壁部８７の下端部は、容器体１０’の胴部１３’の段差部１３ａに当接しており、開閉体８０の、容器体１０’に対する回転に伴う上下動により、段差部１３ａに対して摺動するようになっている。外周壁部８７の上端部は、噴霧ポンプ７０’の頭部７３’の外周面を取り囲むと共に、噴霧ポンプ７０’の正面及び背面にそれぞれ、切り欠き８７ａ、８７ｂを有している。

【0046】

内側開閉体８０Ａの取付筒部８５の外周面には、軸線Ｏを中心とする雄ねじ部８５ａが形成されている。雄ねじ部８５ａには、噴霧ポンプ７０’の取付筒体７１’に形成された雌ねじ部７１ａ’が螺着されている。なお、雄ねじ部８５ａ及び雌ねじ部７１ａ’に代えて、互いに乗越えによって係止する凹凸部を設けることで、噴霧ポンプ７０’を取付筒部８５に取り付けるようにしてもよい。

【0047】

噴霧ポンプ７０’は、取付筒部８５に取付筒体７１’を取り付けることによって、シリンダ７２’が取付筒部８５に固定され、頭部７３’の押し下げにて、それ自体公知のポンプ機構によって、吸上パイプ７４’を通じて容器体１０’内の薬剤を吸い上げ、頭部７３’の噴霧口７３ａ’から薬剤を噴霧できるようになっている。

【0048】

かかる構成によれば、使用時には、図４に示したように、容器体１０’に対して開閉体８０を回転させて、上方に移動させるというワンタッチ操作にて、開閉体８０の容器体１０’への取り付け部である雌ねじ部８１ａの下方に形成された開口Ｐ’を通じて、揮散体５０’から揮発した薬剤を外部へ放出させることができる。なお、本実施形態では、前記の開口Ｐ’は、外側開閉体８０Ｂの外周壁部８７の下端と容器体１０’の胴部１３’の凹溝１３ｂとによって形成されている。また、このとき、揮散体５０’から揮発した薬剤は、開閉体８０の複数の貫通孔８１ｂを通じて開口Ｐ’に到達することになる。

【0049】

また、この状態で、比較的多量の薬剤を短時間で外部に与えたい場合等には、開閉体８０を片手で把持して、噴霧ポンプ７０’の頭部７３’を押し下げることができる。その際、前記開口Ｐ’が開閉体８０の容器体１０’への取り付け部（すなわち、雌ねじ部８１ａ）の下方に形成されていることから、手が揮散する薬剤に晒されることを抑制することができる。また、本実施形態では、前記開口Ｐ’は下方に向かって開口しており、揮発した薬剤が下方に向かって放出されるようになっているため、手が揮散する薬剤に晒されることを、より一層抑制することができる。

【0050】

また、揮散容器２の流通時や不使用時には、開閉体８０を、図３に示したように、下方に移動した状態とすることで、前記開口Ｐ’を通じた薬剤の放出を防止することができる。すなわち、開閉体８０を下方に移動した状態とすることで、吸上芯取付体３０’のフランジ部３１’の上面に内側開閉体８０Ａの内向きフランジ部８２の底面を気密に接触させて封止し、薬剤の外部への放出を防止することができる。

【0051】

また、本実施形態の揮散容器２は、開閉体８０を、容器体１０’の口部１１’に直接取り付けるようになっているため、図１〜図２を用いて説明した例では設けていた装着体４０を設ける必要がなく、部品点数を低減することができる。

【0052】

なお、本実施形態の揮散容器２は、開閉体８０の外形が円柱状を成しているため掴み易く、開閉体８０の上端部に噴霧ポンプ７０’の頭部７３’が位置していることから、噴霧ポンプ７０’の頭部７３’の押し下げ操作も容易である。したがって、例えば、室内上方への薬剤の噴霧も容易にできる。

【0053】

また、開閉体８０の上端部に噴霧ポンプ７０’の頭部７３’が位置している外観により、ツーウェイ式の揮散容器であることをユーザーに認識させ易い。また、噴霧ポンプ７０’のポンプ機構は既存の構成のものを用いているため、既存の部品点数の増加を抑制し、コストの上昇を抑制することができる。

【0054】

前述したところは、本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、図１〜図２を用いて説明した例において、開閉体６０を、図３〜図４を用いて説明した例の場合のように、容器体１０の口部１１に直接取り付けるように構成することもできる。また、図３〜図４を用いて説明した例において、噴霧ポンプ７０’を、図１〜図２を用いて説明した例の場合のように、カバー７５を有する構成とすることもできる。

【符号の説明】

【0055】

１、２ 揮散容器
１０，１０’ 容器体
１１，１１’ 口部
１１ａ，１１ａ’ 雄ねじ部
１１ｂ 抜け止め突起
１２，１２’ 肩部
１２ａ 段差部
１２ｂ 環状凹部
１３，１３’ 胴部
１３ａ 段差部
１３ｂ 凹溝
１４，１４’ 底部
２０，２０’ 吸上芯
３０，３０’ 吸上芯取付体
３１，３１’ フランジ部
３２，３２’ 筒壁部
３３ 保持筒部
３３ａ 突起
３４ 底壁部
３５ 保持筒部
４０ 装着体
４１ 装着筒部
４１ａ 雌ねじ部
４１ｂ 雄ねじ部
４２ 内向きフランジ部
４３ シール壁部
４４ 内周壁部
４５ 中間壁部
４５ａ 突起
４６ 外周壁部
４６ａ 係止突起
５０，５０’ 揮散体
５１ 貫通孔
６０ 開閉体
６１ 天壁部
６２ 外壁部
６２ａ 雌ねじ部
６３ 突起
６４ シール筒部
６５ 補強筒体
６５ａ 筒壁部
６５ｂ 下側鍔部
６５ｃ テーパ壁部
６５ｄ 上側鍔部
６５ｅ 縦リブ
６５ｆ 上筒部
６６ 取付筒部
６６ａ 雄ねじ部
７０，７０’ 噴霧ポンプ
７１，７１’ 取付筒体
７１ａ，７１ａ’ 雌ねじ部
７２，７２’ シリンダ
７３，７３’ 頭部
７３ａ，７３ａ’ 噴霧口
７３ｂ 係合凹部
７４，７４’ 吸上パイプ
７５ カバー
７５ａ 係合凸部
８０ 開閉体
８０Ａ 内側開閉体
８０Ｂ 外側開閉体
８１ 取り付け筒部
８１ａ 雌ねじ部
８１ｂ 貫通孔
８２ 内向きフランジ部
８３ 中間壁部
８３ａ 係止凹部
８３ｂ 突起
８４ 天壁部
８４ａ 縦リブ
８５ 取付筒部
８５ａ 雄ねじ部
８６ 連結片
８６ａ 係止爪部
８７ 外周壁部
８７ａ 切り欠き
８７ｂ 切り欠き
Ｏ 軸線
Ｐ，Ｐ’ 開口

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】