特許第6373044号(P6373044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373044
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20180806BHJP
   B65D 53/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B65D47/08 130
   B65D53/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-80789(P2014-80789)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-199533(P2015-199533A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100189968
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 浩司
(72)【発明者】
【氏名】秀島 智
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−035261(JP,A)
【文献】 特開平07−069358(JP,A)
【文献】 特開平06−298272(JP,A)
【文献】 特開平08−230920(JP,A)
【文献】 特開平08−012864(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0066755(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
B65D 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に装着されると共にリシール可能に設けられた合成樹脂製キャップであって、
上蓋と、ヒンジ部を介して該上蓋と連結された中栓とを備え、
該上蓋は、天壁と該天壁内面に設けられたインナーリングを有しており、該インナーリングは、少なくともその先端部の内壁が、その外壁を形成する樹脂よりも硬質な樹脂によって形成されており、
該中栓は、外筒と、内筒と、注出筒と、を有しており、
該外筒及び該内筒は、該容器本体の口部を嵌着させるための嵌合溝を形成しており、
該注出筒は、該上蓋を閉じた際に該インナーリングの先端部の外壁と当接可能に形成されたシール面を有しており、
該先端部の外壁は、該先端部の内壁によって支持され、その熱による変形が規制されていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
上蓋と、ヒンジ部を介して該上蓋と連結された中栓とを備え、
該上蓋は、天壁と該天壁内面に設けられたインナーリングを有しており、該インナーリングは、少なくともその先端部の内壁が、その外壁を形成する樹脂よりも硬質な樹脂によって形成されており、
該中栓は、注出筒を有しており、該注出筒は、該上蓋を閉じた際に該インナーリングの先端部の外壁と当接可能に形成されたシール面を有している合成樹脂製キャップであって、
インナーリングは、先端部の内壁に係合突起を有し、
中栓は、注出筒よりも内方に係止筒を有しており、
該係合突起は、上蓋を閉じた際に該係止筒と係合可能に形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記係止筒は、前記ヒンジ部とは反対側に切欠部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記インナーリングは、前記上蓋に設けられた外壁と、該外壁内に嵌め込まれると共に該外壁を形成する樹脂よりも硬質な樹脂で成形された硬質リングとからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の合成樹脂製キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着される合成樹脂製キャップに関し、より詳細には、上蓋と中栓との密封性を改善したヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より容器の密封性を確保するために、上蓋と中栓とがヒンジを介して一体に形成された合成樹脂製のキャップ、所謂ヒンジキャップが用いられている。この様なヒンジキャップは、中栓に、スコア等の弱化部で区画された開口予定部が形成されると共に注出筒が立設されており、又、上蓋には注出筒に当接可能に設けられたインナーリングが垂設されている(特許文献1を参照)。
【0003】
この種のヒンジキャップは、開口予定部に立設されたプルリングを引っ張り、弱化部を破断除去することで、容器を開封することできる様になっている。又、開封後のリシールはインナーリングを注出筒に当接させることで密閉性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−151326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、合成樹脂製キャップは、比較的軟質な樹脂によって成形されるものであるため、特に、衛生上の観点から殺菌のために内容物が高温充填される飲食品の分野においては、その際の熱によって、インナーリングが変形してしまい、インナーリングと注出筒との密封性が低下してしまい、リシール後の密閉が確保できなくなる可能性があった。尚、より硬質な樹脂でキャップを成形することも考えられるが、当該樹脂が硬質になる程、弱化部の破断が困難となるばかりでなく、またインナーリングと注出筒との当接性が低下していまい、密封の確保が困難となる。
【0006】
一方、近年、容器の開封性向上等の観点から、開口予定部に相当する部分を有さず、初めから開口している合成樹脂製キャップの開発が期待されている。この様なキャップにおいては、商品が流通する段階からインナーリングと注出筒との当接のみによって、密封性を確保することとなる。
【0007】
そこで、本発明は、インナーリングと注出筒との当接による密封性をより確実に担保することのできる合成樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器本体に装着されると共にリシール可能に設けられた合成樹脂製キャップであって、上蓋と、ヒンジ部を介して該上蓋と連結された中栓とを備え、該上蓋は、天壁と該天壁内面に設けられたインナーリングを有しており、該インナーリングは、少なくともその先端部の内壁が、その外壁を形成する樹脂よりも硬質な樹脂によって形成されており、該中栓は、外筒と、内筒と、注出筒と、を有しており、該外筒及び該内筒は、該容器本体の口部を嵌着させるための嵌合溝を形成しており、該注出筒は、該上蓋を閉じた際に該インナーリングの先端部の外壁と当接可能に形成されたシール面を有しており、該先端部の外壁は、該先端部の内壁によって支持され、その熱による変形が規制されていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0009】
又、本発明は、上蓋と、ヒンジ部を介して該上蓋と連結された中栓とを備え、該上蓋は、天壁と該天壁内面に設けられたインナーリングを有しており、該インナーリングは、少なくともその先端部の内壁が、その外壁を形成する樹脂よりも硬質な樹脂によって形成されており、該中栓は、注出筒を有しており、該注出筒は、該上蓋を閉じた際に該インナーリングの先端部の外壁と当接可能に形成されたシール面を有している合成樹脂製キャップであって、該インナーリング先端部の内壁に係合突起を有し、中栓注出筒よりも内方に係止筒を有しており、該係合突起は、上蓋を閉じた際に該係止筒と係合可能に形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップである
、本発明は、前記係止筒を、前記ヒンジ部とは反対側に切欠部が形成されるものとすることができる。又、本発明は、前記インナーリングを、前記上蓋に設けられた外壁と、該外壁内に嵌め込まれると共に該外壁を形成する樹脂よりも硬質な樹脂で成形された硬質リングより構成することもできる。
【0010】
又、本発明の別の態様は、上蓋と、ヒンジ部を介して該上蓋と連結された中栓とを備え、該上蓋は、天壁と該天壁内面に設けられたインナーリングを有しており、該インナーリングは、先端部内面に係合突起を有し、該中栓は、注出筒を有すると共に該注出筒よりも内方に係止筒を有しており、該インナーリングの少なくとも先端部は、該上蓋を閉じた際に、該注出筒のシール面と当接可能に形成されていると共に該係止筒と係合可能に形成ことを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記の様に構成したので、インナーリングと注出筒との当接による密封性をより確実に担保することができる。この効果は、(1)インナーリングの少なくとも先端部の内壁をその外壁よりも硬質な樹脂で形成することで奏することが可能となる。又、(2)インナーリングの先端部の外壁を係止筒と係合することでも奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態を示す開蓋時における断面図である。
図2】本発明の第1実施形態を示す閉蓋時における断面図である。
図3】本発明の第2実施形態を示す開蓋時における断面図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す閉蓋時における断面図である。
図5】本発明の第3実施形態を示す開蓋時における平面図である。
図6図1のVI−VI線における断面図である。
図7】本発明の第3実施形態における閉蓋時の様子を示す図であり、図2に相当する図である。
図8図7の立体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態を図1及び図2に基づき説明する。尚、以下、上蓋2を開けることを開蓋と、上蓋2を閉めることを閉蓋と表記する。又、上下方向は、便宜的に閉蓋した状態で上蓋2側を上側、中栓3側を下側と定義する。
【0014】
合成樹脂製キャップ1(以下、キャップ1ともいう)は、上蓋2及び中栓3を備えている。上蓋2と中栓3とはヒンジ部4を介して連結している。
【0015】
上蓋2は、天壁5、天壁5の外周縁より垂下するスカート壁6を有している。スカート壁6はその下端部に鍔部7が形成されると共に下端部に係合突起8が形成されている。天壁5の内面からは、略円環状のインナーリング9が垂設されており、インナーリング9よりも外方の内面には、中足10が垂設されている。中足10は、閉蓋の際に、中栓3の係止筒15に圧接し、高温充填された容器を冷却する際にキャップ1内外の圧力差によって、冷却水がキャップ1の内部に入り込まない様にするために設けられている。
【0016】
インナーリング9は、その内壁9aが、その外壁9bを形成する樹脂(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)等の軟質樹脂)よりも硬質な樹脂(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)やABS樹脂等の硬質樹脂)によって成形されている。
【0017】
本実施形態において、インナーリング9は、天壁5に垂設され、上蓋2と一体に成形された外壁9bに、外壁9bよりも硬質な樹脂によって成形された硬質リング11を内壁9aとして嵌め込むことで形成している。尚、インナーリング9への硬質リング11の形成方法は、適宜選択可能であり、例えば、従来公知の二色成形法や、キャップ1を成形後、硬質リング11を後工程にて嵌め込む等によって形成することも可能である。
【0018】
中栓3は、頂壁12、頂壁12の外周縁より垂下する外筒13及び頂壁12の内周縁と連続する注出筒14とを有している。外筒13の一端は、ヒンジ部4と連続しており、ヒンジ部4を介して上蓋2と連結されている。又、頂壁12には係止筒15が立設されている。係止筒15は、閉蓋の際に、上蓋2の係合突起8と係合し、閉蓋状態を保持するために設けられている。
【0019】
注出筒14は、注出壁14a、被当接壁14b及び底壁14cを有しており、被当接壁14bは、注出壁14aと底壁14cとを連絡する様に設けられている。注出壁14aは、内容物を注出する際の主たる流路であり、被当接壁14bは、その内面がシール面14dとなっており、閉蓋された際に、シール面14dがインナーリング先端部9cの外壁9bによって当接可能に形成されると共にそれによって密閉性を確保するために設けられる。
【0020】
底壁14cには、スコア17等の弱化部によって区画された開口予定部18が形成されている。開口予定部18は、スコア17を破断し開封するためのプルリング19が立設されている。
【0021】
又、注出壁14aからは、被当接壁14bから分かれる様に内筒16が延在している。内筒16は、外筒13と共にキャップ1を容器本体(図示せず)に装着する際に、該容器本体の口部を嵌着させるための嵌合溝20を形成するために設けられている。
【0022】
本実施形態においては、インナーリング9はその内壁9aが硬質樹脂によって形成されているため、内壁9aは熱によって変形し難くなっている。そのため、軟質樹脂で成形された外壁9bも内壁9aによって支持される形でその熱による変形が規制されるため、インナーリング9の外壁9bと注出筒14のシール面14dとの当接による密封性が低下することを防止することができる。それによって、リシールの際の密閉性をより確実に担保することが可能となる。
【0023】
本発明の第2実施形態を図3及び図4に基づき説明する。第1実施形態との主な相違点は、インナーリング先端部9cの内壁9aのみを外壁9bよりも硬質な樹脂によって形成したことである。第1実施形態と同じ符号の構成は、同実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0024】
本実施形態おいて、注出筒14は、頂壁12の天面より立設されており、又、内筒16は、頂壁12の底面から垂設されている。開口予定部18は、注出筒14よりも内方の頂壁12に設けられている。
【0025】
注出筒14は、被当接壁14bを兼ねる注出壁14aを有しており、又、蓋を開閉する際に、インナーリング9が注出筒の先端部に当たらないようにヒンジ部4側に切欠14eが形成されている。
【0026】
インナーリング9は、閉蓋の際に被当接壁14bを兼ねる注出壁14aのシール面14dと当接する先端部9cの内壁9aのみが外壁9bよりも硬質な樹脂で形成されている。従って、第1実施形態と同様に密閉性の確保に重要なインナーリング9の先端部9cの熱変形を防止することが可能である。それによって、リシールの際の密閉性をより確実に担保することが可能となる。
【0027】
本発明の第3実施形態を図5乃至図8に基づき説明する。第1実施形態及び第2実施形体との主たる相違は、開口予定部18を設けず、注出筒14よりも内方の頂壁12に係止筒22を設けたことである。第1実施形態及び第2実施形態と同じ符号の構成は、同実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0028】
本実施形態において、注出筒14よりも内方の頂壁12には、係止筒22が設けられており、更に、係止筒22よりも内方の頂壁12には、容器内外を連通するための開口部23が形成されている。又、注出筒14の基端側には、被当接壁14bが設けられており、被当接壁14bから延在する形で注出壁14aが設けられている。
【0029】
係止筒22は、略円環状に形成されており、少なくともヒンジ部4とは反対側に切欠部24が形成されている。切欠部24は、内容物を注出する際に、流路を確保し、係止筒22が邪魔とはならない様にするために形成されている。尚、本実施形態においては、係止筒22のヒンジ部4側にも切欠部25を形成している。
【0030】
インナーリング9は、閉蓋の際に被当接壁14bのシール面14dと当接する先端部9cの内壁9aのみ外壁9bよりも硬質な樹脂で形成されている。又、その先端部9cの内壁9aには、係止筒22と係合可能に形成された係合突起26が形成されている。つまり、閉蓋の際に、インナーリング9の先端部9cは、その外壁9bが、注出筒14の被当接壁14bと当接可能となっていると共にその内壁9aが係止筒22と係合可能となっていることとなる。
【0031】
つまり、本実施形態においては、インナーリング9の外壁9bと注出筒14のシール面14dとの当接及びインナーリングの内壁9aと係止筒22との係合の両方によって、容器の密封性が確保されていることとなる。従って、開口予定部18を設けずとも十分な密封性を確保することが可能となる。尚、リシールする際も同様である。
【0032】
尚、このため、例え、インナーリング9が熱変形したとしても、一方が他方を補うことで必要な密封性の確保が可能であるため、内壁9aを硬質樹脂により成形せずとも、換言すれば、内壁9aと外壁9bを同一の軟質樹脂で成形したとしても、密封性が担保することが可能であるが、内壁9aを硬質樹脂で成形することでより密封性を向上させることが可能である。
【0033】
本発明を、上記実施形態によって説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。又、各実施形態は、任意に組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態又は第3実施形態において、第1実施形態の様にインナーリング9の内壁9a全体を外壁9bよりも硬質な樹脂で成形することも可能である。そして、第3実施形態に、係止筒15を設けることも可能である。この場合、係止筒15とスカート壁6及び係止筒22とインナーリング9との係合力を調整することで、開蓋に要する力を分散し、より容易に開蓋することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 合成樹脂製キャップ 2 上蓋 3 中栓
4 ヒンジ部 5 天壁 6 スカート壁
7 鍔部 8 係合突起 9 インナーリング
9a 内壁 9b 外壁 9c 先端部
10 中足 11 硬質リング 12 頂壁
13 外筒 14 注出筒 14a 注出壁
14b 被当接壁 14c 底壁 14d シール面
14e 切欠 15 係止筒 16 内筒
17 スコア 18 開口予定部 19 プルリング
20 嵌合溝 22 係止筒 23 開口部 24 切欠部 25 切欠部 26 係合突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8