【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
[実施例1]
<中芯層を形成する樹脂>
東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850N」(ポリブタジエン体積平均粒子径=2.8μm、ポリブタジエン量=9.0質量%、MFR=3.6g/10分)40質量部と、東洋スチレン(株)製ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」(MFR=8.5g/10分)60質量部の混合物を、東芝機械(株)製単軸押出機(スクリュー径φ65mm、L/D=28.8)を使用し、樹脂温度220℃でTダイのフィードブロックへ供給した。
【0030】
<最外層を形成する樹脂>
東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850N」(ポリブタジエン量=9.0質量%、MFR=3.6g/10分)を(株)フロンティア製単軸押出機(スクリュー径φ40mm、L/D=25.9)を使用し、樹脂温度220℃でTダイのフィードブロックへ供給した。
【0031】
<多層シート>
フィードブロックに供給された中心層および外層を形成する樹脂をストレート方式の幅550mmのTダイを用い、220℃で外層/中芯層/外層の2種3層の積層シートに成形した。押出したシートは、80℃のキャストロールに圧着、冷却させた後、さらに常温まで冷却し積層シートを得た。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の評価は以下の方法に従った。
(ポリブタジエン量)
使用したHIPSをクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてポリブタジエン中の二重結合と反応させた。残存する一塩化ヨウ素にヨウ化カリウムを加えヨウ素に変換し、これをチオ硫酸ナトリウムで逆適定することにより、ポリブタジエン量を求めた。なお、中芯層中及び外層中のポリブタジエン量は、各層の配合に使用したHIPS量を基に計算した。
【0034】
(ポリブタジエンの体積平均粒子径)
使用したHIPSをジメチルホルムアミドに濃度2質量%で分散させ、超音波バスでさらに20分間分散させた。これをジメチルホルムアミドで満たしておいたベックマン・コールター(株)製 レーザー解説散乱法粒度分布測定装置「LS−230」に滴下し、スレーサー回折散乱法にて体積平均粒子径を求めた。
【0035】
(中芯層の厚み)
1mの積層シートを切り出し、生産方向に対し直行方向の左右両端および中央部より20mm角の切片を切り出した。端面を平滑にした後、それぞれ3切片の中芯層の厚みを、キーエンス(株)製顕微鏡「VK−X100」にて測定した。積層シートの切り出し及び中心層の厚さ測定を計3回実施し、9点の中芯層の厚みの算術平均値を、中芯層の厚みとした。
【0036】
(積層シートの全厚)
1mの積層シートを切り出し、生産方向に対し直行方向の左右両端および中央部より20mm角の切片を切り出し、積層シートの全厚を、マイクロメータを用いて測定した。積層シートの切り出し及び全厚測定を計3回実施し、9点の全厚の算術平均値を、全厚とした。
【0037】
(メルトマスフローレートの測定)
JIS K−7210に準拠し、200℃、5kgf荷重にて測定した。
【0038】
(積層シートの成形性)
1mの積層シートを切り出し、シート表面の外観を目視にて観察することで、シートの成形性を以下の判定により評価した。
良:成形シート表面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象が全く生じなかった
もの。
可:成形シート表面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象を1〜5箇所生じて
いるもの。
不良:成形シート全面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象を6箇所以上生じ
ているもの。
【0039】
(デュポン衝撃強度)
デュポン衝撃試験機(東洋精機(株)製、B−351000601)を使用し、得られた積層シートのデュポン衝撃強度を測定した。測定は23℃相対湿度50%の環境にて、突端半径7.9mmの撃芯を使用し、ASTMD2794に従い測定した。測定値は、下記の基準に従い優劣を判定した。
良:デュポン衝撃強度が1.5J以上である。
可:デュポン衝撃強度が1.0J以上、1.5J未満である。
不良:デュポン衝撃が1.0J未満である。
【0040】
(容器の成形性)
単発真空成形機(浅野研究所(株)製)によって、開口部径50mm、底部径50mm、高さ50mmであり、側面部厚み:シート全厚の10%以上30%以下、底面部厚み:シート全厚の25%以上40%以下であるカップ状成形容器を成形した。熱盤温度は600℃、成形時間は20秒とした。容器と底面とコーナー(底面と外側との接する部分)の外観を目視観察して、下記の基準で評価した。
良:均一に伸びて、均一な厚みに成形されている。
可:底面又はコーナーの一部に厚みムラがある。
不良:底面又はコーナーの一部に破れがある。
【0041】
(容器の座屈強度)
積層シートを用い、単発真空成形機(浅野研究所(株)製)にて開口部径50mm、底面部径50mm、高さ50mm、側面部厚み:シート全厚の10%以上30%以下、底面部厚み:シート全厚の25%以上40%以下であるカップ状成形容器を成形した。熱盤温度は600℃、成形時間は20秒とした。
得られた成形容器の座屈強度を、23℃相対湿度50%の環境にて測定した。尚、座屈強度はJIS−K7181に従い圧縮測定を行った際の、最大点荷重とした。測定機器、圧縮条件および座屈強度の判定基準を以下に記す。
使用機器:ストログラフVEID(東洋精機(株)製)
圧縮速度:50mm/min
判定基準:
良:座屈強度が70N以上である。
可:座屈強度が60N以上70N未満である。
不良:座屈強度が60N未満である。
【0042】
(容器のノッチ折れ性)
シートの中央部より50mm四方の正方形状試験片を採取し、一方の頂点から他方の頂点へ対角線上に、シート厚みに対し50%深さの切込みを入れノッチを形成した。23℃相対湿度50%の環境にて、ノッチを入れた面に対し150度折り曲げた際の破断の有無より、ノッチ折れ性を以下の基準に従い評価した。
良:1回目の折り曲げで、ノッチ部より破断を生じた。
不良:1回目の折り曲げでは、ノッチ部からの破断を生じなかった。
【0043】
[実施例2]
全層に対する中芯層の厚み比率を83%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0044】
[
参考例3]
全層に対する中芯層の厚み比率を93%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0045】
[
参考例4]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」(ポリブタジエン体積平均粒子径=2.5μm、ポリブタジエン量=9.8質量%、MFR=3.6g/10分)63質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」37質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」72質量部とポリスチレン「トーヨースチロールG200C」28質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例6]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」90質量部とポリスチレン「トーヨースチロールG200C」10質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例7]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0049】
[
参考例8]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」15質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」85質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例9]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」30質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」70質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例10]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」40質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」60質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例11]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」50質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」50質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
全層に対する中芯層の厚み比率を96%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が低い結果となった。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
[比較例2]
全層に対する中芯層の厚み比率を68%へ変更した以外は、実施例2と同様な方法で積層シートを製膜しが、得られた積層シートはノッチ折れ性に劣る結果となった。結果を表2に示す。
【0056】
[比較例3]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールXL1」(ポリブタジエン体積平均粒子径=0.6μm、ポリブタジエン量=13.4質量%、MFR=2.6/10分)80質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」20質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはノッチ折れ性が悪い結果となった。結果を表2に示す。
【0057】
[比較例4]
外層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」65質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」35質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が悪い結果となった。結果を表2に示す。
【0058】
[比較例5]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」10質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」90質量部との混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が低い結果となった。結果を表2に示す。
【0059】
[比較例6]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」60質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」40質量部との混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはノッチ折れ性に劣る結果となった。結果を表2に示す。
【0060】
表1及び表2の結果から、本発明の積層シートを使用することにより、従来のハイインパクトポリスチレン系シートと比較し、剛性、成形加工性、ノッチ折れ性能を維持し、優れた耐衝撃性を実現し、ヨーグルト容器をはじめとする各種容器に好適に使用することができる。