特許第6373045号(P6373045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373045
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】積層シートおよびこれを用いた容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180806BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20180806BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   B65D1/00 111
   B65D65/40 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-80847(P2014-80847)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-199311(P2015-199311A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村岡 喬梓
(72)【発明者】
【氏名】中里 利勝
(72)【発明者】
【氏名】澤里 正
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073579(WO,A1)
【文献】 特開2013−163356(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0131718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 1/00− 1/48,
65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエンを含有するハイインパクトポリスチレン及びスチレンのホモポリマーからなるポリスチレンの混合物を主成分とする中芯層と、
中芯層の両面に配置された、ポリブタジエンを含有するハイインパクトポリスチレンを主成分とする外層とかならなる積層シートであって、
全厚に対する前記中芯層の厚みの比率が7584%であり、
前記中芯層中のポリブタジエン量が2.74.6質量%であり、
前記外層中のポリブタジエン量が7.19.8質量%であることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記ポリブタジエンの体積平均粒子径が、2〜4μmであることを特徴とする、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記外層及び前記中芯層の200℃5kgf荷重における、メルトマスフローレートが、2〜20g/10分であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層シート。
【請求項4】
全厚が0.5〜1.0mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層シートを用いた成形容器。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層シートを熱板によって加熱する工程と、真空成形によって前記積層シートを所定の形状に成形する工程を含む、ヨーグルト用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートおよびこれを用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンを主体とするシートまたはフィルムは、成形加工性に優れるため、従来から食品容器、飲料容器、各種トレーを含む工業用容器等の各種包材用途に幅広く用いられている。また、ポリブタジエンにポリスチレンがグラフト共重合したハイインパクトポリスチレンを用いることで、優れた耐衝撃性を有するシートが普及している。これらの容器は、成形、内容物の充填、蓋材のシールの一貫工程で製造されるケースも近年増えてきている(特許文献1及び2)。
これらのシートはポリブタジエン含有量が多くなるほど、靭性が増し耐衝撃性が向上するものの、剛性や成形後のノッチ折れ性が低下する問題があった。
この問題を解決すべく、例えば強靱なポリオレフィン系樹脂層を有する積層シートでは、シートのノッチ成形面側の最外層近傍にポリオレフィン系樹脂層を偏らせて配置させ、ノッチを入れると同時に層を完全に断ち切ることで、ノッチ折れ性能を確保する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、ノッチの入れ方は様々であり、直線状にノッチを入れる方法と、破線状にノッチを入れる方法とがあり、破線状にノッチを入れる方法では切れ込みが入らない部分が共存するため、当該箇所のオレフィン系樹脂層が完全に断ち切られない領域が存在する為、良好なノッチ折れ性の発現が困難になる。このように従来の技術では剛性、ノッチ折れ性と耐衝撃性の両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−51264号公報
【特許文献2】特表2003−522052号公報
【特許文献3】特開2007−55266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題と実情に鑑み、ノッチ折れ性、耐衝撃性及び成形性に優れる積層シートを提供することを目的とする。さらに、この積層シートを用いて成形した剛性に優れる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)ハイインパクトポリスチレン及びポリスチレンの混合物を主成分とする中芯層と、中芯層の両面に配置された、ハイインパクトポリスチレンを主成分とする外層とかならなる積層シートであって、全厚に対する前記中芯層の厚みの比率が70〜95%であり、前記中芯層中のポリブタジエン量が1〜5質量%であり、前記外層中のポリブタジエン量が6〜10質量%であることを特徴とする積層シート。
(2)前記ポリブタジエンの体積平均粒子径が、2〜4μmであることを特徴とする、(1)に記載の積層シート。
(3)前記外層及び前期中芯層の200℃5kgf荷重における、メルトマスフローレートが、2〜20g/10分であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の積層シート。
(4)全厚が0.5〜1.0mmであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の積層シート。
(5)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の積層シートを用いた成形容器。
(6)インライン方式で生産されるヨーグルト用容器である、(5)に記載の成形容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、ハイインパクトポリスチレン及びポリスチレンの混合物を主成分とする中芯層と、中芯層の両面に配置されたハイインパクトポリスチレンを主成分とする外層とからなる積層シートにおいて、全厚に対する外層の厚み、中芯層および外層のポリブタジエン量を特定範囲に設定することにより、ノッチ折れ性、耐衝撃性及び成形性に優れる積層シートが得られることを見出した。また、本発明の積層シートを用いた成形容器は剛性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書におけるノッチとは、積層シートをプレス成形し多数の連なったヨーグルト成形容器から、個々の容器を切り離すために容器連結部に形成される、くさび状の切込みを意味する。容器を切り離す際は、連結部を谷折りまたは山折りすることで、連結部が容易に割れる必要がある。
また、本発明におけるインライン方式で生産される容器とは、ヨーグルト容器等の成形工程で使用される、容器成形、内容物充填、滅菌に至る一連の工程を一貫して行なう生産方式である。
【0008】
本発明の積層シートは、ハイインパクトポリスチレン(以下、HIPSと略す)及びポリスチレンの混合物を主成分とするポリブタジエン量が1〜5質量%である中芯層と、中芯層の両面に配置されたポリブタジエン量が6〜10質量%のHIPSを主成分とする外層とから構成される。
【0009】
<中芯層>
本発明の中芯層は、HIPS及びポリスチレンの混合物を主成分とする。中芯層中に含まれるポリブタジエン量は1〜5質量%であり、3〜4質量%であることがより好ましい。ポリブタジエン量が1%未満であると耐衝撃性が低下する場合があり、5質量%を超えると、中芯層の破断伸びが大きくなるため、ノッチ折れ性が低下する場合がある。
【0010】
HIPSは、ポリブタジエン鎖にポリスチレン鎖がグラフトした形態を示す。ポリブタジエン鎖としては、ポリブタジエンのホモポリマー、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンとブタジエンのブロック共重合体等が挙げられる。
【0011】
HIPSのポリスチレン鎖には、本発明の効果を損なわない範囲で、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の非ジエン系単量体成分を共重合させてもよい。グラフト重合の方法としては塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等公知の方法が採用できる。又、重合時ジビニルベンゼン等の架橋剤を少量添加して重合しても良く、鉱物油、ロジンエステル類、テルペン樹脂、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸アミド、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることもできる。なお、HIPSは分子量や流動性の異なる2種類以上のHIPSを併用してもよい。
【0012】
中芯層に使用するポリスチレンは、スチレンのホモポリマーからなるポリスチレンを意味する。ポリスチレンの重量平均分子量は耐衝撃性の点で150000〜430000が好ましく、300000〜400000がより好ましい。重量平均分子量が430000を超えると成形性が低下する場合がある。ポリスチレンの重量平均分子量は重合開始剤や重合温度等により調整することができる。
【0013】
中芯層中のポリブタジエン量は1〜5質量%であれば、HIPS及びポリスチレン以外の樹脂を使用することができる。中芯層に配合可能なHIPS及びポリスチレン以外の樹脂としては、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレンとブタジエンのブロック共重合体等のポリマーが挙げられる。
【0014】
中芯層に使用するHIPSのポリブタジエンの体積平均粒子径としては、2〜4μmが好ましく、2.7〜3.6μmがより好ましい。体積平均粒子径を2μm未満であると耐衝撃性が低下する場合があり、4μmを超えると、内層の破断伸びが大きくなるため、ノッチ折れ性が低下する場合がある。
【0015】
中芯層には、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、染料等の着色剤、シリコーンオイルや高級脂肪酸エステル等の離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化材、タルク、クレイ、シリカなとの充填材、アルカリ金属スルホン酸塩、ポリアルキレングリコール等の帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等の成分を添加することができる。
【0016】
中芯層の200℃5kgf荷重におけるメルトマスフローレート(以下MFRと略す)は、2〜20g/10分であることが好ましい。2g/10分未満であると、流動性が低下し、成形容器に残留応力が発生しやすくなるため、薬品等の接触により容器が割れる場合がある。また、20g/10分を超えると、成形容器の厚み均一性が低下し、剛性が低下する場合がある。
尚、本発明におけるMFRは、断りの無い限り、200℃5kgf荷重にて測定された数値を示す。
【0017】
全厚に対する中芯層の厚みの比率は70〜95%であり、80〜90%が好ましい。全厚に対する中芯層の厚みの比率が70%未満であると、ノッチ折れ性が低下する場合がある。また、95%を超えると、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0018】
<外層>
本発明の外層は、HIPSを主成分とする。外層中に含まれるポリブタジエン量は6〜10質量%であり、7〜9質量%であることがより好ましい。ポリブタジエン量が6質量%未満であると耐衝撃性が低下する場合があり、10質量%を超えると、中芯層の破断伸びが大きくなるため、ノッチ折れ性が低下する場合がある。
【0019】
外層中のポリブタジエン量は6〜10質量%であれば、HIPS以外の樹脂を使用することができる。これらの樹脂としては、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレンとブタジエンのブロック共重合体等のポリマー等が挙げられる。
【0020】
外層中のポリブタジエンの体積平均粒子径としては、2〜4μmが好ましく、2.5〜3μmがより好ましい。体積平均粒子径を2μm未満であると耐衝撃性が低下する場合があり、4μmを超えると、外層の破断伸びが大きくなるため、ノッチ折れ性が低下する場合がある。
【0021】
外層には本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、染料等の着色剤、シリコーンオイルや高級脂肪酸エステル等の離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化材、タルク、クレイ、シリカなとの充填材、アルカリ金属スルホン酸塩、ポリアルキレングリコール等の帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等の成分を添加することができる。
【0022】
外層の200℃5kgf荷重におけるMFRは、2〜20g/10分が好ましく、3〜10g/10分がより好ましい。2g/10分未満であると、流動性が低下し、成形容器に残留応力が発生しやすくなるため、薬品等の接触により容器が割れる場合がある。また、20g/10分を超えると、成形容器の厚み均一性が低下し、剛性が低下する場合がある。
【0023】
全厚は0.5〜1.0mmが好ましく、0.6〜0.8mmがより好ましい。積層シートの全厚が0.5mm未満であると容器成型時の剛性が低下する場合がある。また、1mmより厚いと、中芯層中の添加剤が表面にブリードまたはブルームする場合がある。
【0024】
本発明の積層シートは、ASTMD2794で定められるデュポン衝撃強度の50%破壊高さが、1.0J以上の耐衝撃性を有することが好ましく、1.5J以上であることがより好ましい。1.0J未満では耐衝撃性に乏しいため、容器を成形する際に容器が破損する場合がある。
【0025】
本発明の積層シートの製造方法は特に限定されず、中芯層および外層を形成するシートを、インフレーション法またはTダイ法等の押出成形によって形成しておき、それらのシートを熱ラミネーションによって積層することで製造できる。
他の方法としては、中芯層および外層を形成する樹脂を、それぞれ別個の押出機に供給して溶融混練してフィードブロックに供給した後、Tダイを通す溶融共押出法によって、積層シートを製造する方法でも得ることができる。また、溶融混練された樹脂を、3層構成のマルチマニホールドダイに供給して多層シートを製造する方法でも製造することができる。この製造方法は、各層の厚さ分布が小さいシートが得られる点で好ましい。各樹脂を溶融し、押出成形によって各層を得る場合、成形する際の各樹脂の温度は、130℃〜260℃とすることが好ましい。
さらに、積層シートは、必要に応じロール速度差、テンター延伸機等を用いた縦延伸(生産方向への延伸)、横延伸(縦延伸と直交する方向の延伸)を実施することも可能である。
【0026】
本発明の積層シートは、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プレス成形法、熱板成形法等、公知の熱成形法等により各種容器に成形することができる。本発明の積層シートを使用した容器は、食品容器、飲料容器、医薬品容器、日用品容器等各種容器に好適に使用することができるが、特にインライン方式で生産されるヨーグルト用容器に好適である。
【0027】
インライン方式の成形方法としては、積層シートを繰り出した後に熱板によってシートを加熱し、真空圧空によってシートを所定の形状に成形した後に内容物を充填する方法が採用できる。
【0028】
本発明の積層シートによる成形容器は、JIS−K7181で規定される圧縮測定を行い、60N以上の座屈強度を有することが好ましく、70N以上であることがより好ましい。60N未満では、座屈強度が低下し過ぎてしまい、成形容器が破損する場合がある。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
[実施例1]
<中芯層を形成する樹脂>
東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850N」(ポリブタジエン体積平均粒子径=2.8μm、ポリブタジエン量=9.0質量%、MFR=3.6g/10分)40質量部と、東洋スチレン(株)製ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」(MFR=8.5g/10分)60質量部の混合物を、東芝機械(株)製単軸押出機(スクリュー径φ65mm、L/D=28.8)を使用し、樹脂温度220℃でTダイのフィードブロックへ供給した。
【0030】
<最外層を形成する樹脂>
東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850N」(ポリブタジエン量=9.0質量%、MFR=3.6g/10分)を(株)フロンティア製単軸押出機(スクリュー径φ40mm、L/D=25.9)を使用し、樹脂温度220℃でTダイのフィードブロックへ供給した。
【0031】
<多層シート>
フィードブロックに供給された中心層および外層を形成する樹脂をストレート方式の幅550mmのTダイを用い、220℃で外層/中芯層/外層の2種3層の積層シートに成形した。押出したシートは、80℃のキャストロールに圧着、冷却させた後、さらに常温まで冷却し積層シートを得た。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明の評価は以下の方法に従った。
(ポリブタジエン量)
使用したHIPSをクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてポリブタジエン中の二重結合と反応させた。残存する一塩化ヨウ素にヨウ化カリウムを加えヨウ素に変換し、これをチオ硫酸ナトリウムで逆適定することにより、ポリブタジエン量を求めた。なお、中芯層中及び外層中のポリブタジエン量は、各層の配合に使用したHIPS量を基に計算した。
【0034】
(ポリブタジエンの体積平均粒子径)
使用したHIPSをジメチルホルムアミドに濃度2質量%で分散させ、超音波バスでさらに20分間分散させた。これをジメチルホルムアミドで満たしておいたベックマン・コールター(株)製 レーザー解説散乱法粒度分布測定装置「LS−230」に滴下し、スレーサー回折散乱法にて体積平均粒子径を求めた。
【0035】
(中芯層の厚み)
1mの積層シートを切り出し、生産方向に対し直行方向の左右両端および中央部より20mm角の切片を切り出した。端面を平滑にした後、それぞれ3切片の中芯層の厚みを、キーエンス(株)製顕微鏡「VK−X100」にて測定した。積層シートの切り出し及び中心層の厚さ測定を計3回実施し、9点の中芯層の厚みの算術平均値を、中芯層の厚みとした。
【0036】
(積層シートの全厚)
1mの積層シートを切り出し、生産方向に対し直行方向の左右両端および中央部より20mm角の切片を切り出し、積層シートの全厚を、マイクロメータを用いて測定した。積層シートの切り出し及び全厚測定を計3回実施し、9点の全厚の算術平均値を、全厚とした。
【0037】
(メルトマスフローレートの測定)
JIS K−7210に準拠し、200℃、5kgf荷重にて測定した。
【0038】
(積層シートの成形性)
1mの積層シートを切り出し、シート表面の外観を目視にて観察することで、シートの成形性を以下の判定により評価した。
良:成形シート表面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象が全く生じなかった
もの。
可:成形シート表面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象を1〜5箇所生じて
いるもの。
不良:成形シート全面に、メルトフラクチャーや層間剥離等の白化現象を6箇所以上生じ
ているもの。
【0039】
(デュポン衝撃強度)
デュポン衝撃試験機(東洋精機(株)製、B−351000601)を使用し、得られた積層シートのデュポン衝撃強度を測定した。測定は23℃相対湿度50%の環境にて、突端半径7.9mmの撃芯を使用し、ASTMD2794に従い測定した。測定値は、下記の基準に従い優劣を判定した。
良:デュポン衝撃強度が1.5J以上である。
可:デュポン衝撃強度が1.0J以上、1.5J未満である。
不良:デュポン衝撃が1.0J未満である。
【0040】
(容器の成形性)
単発真空成形機(浅野研究所(株)製)によって、開口部径50mm、底部径50mm、高さ50mmであり、側面部厚み:シート全厚の10%以上30%以下、底面部厚み:シート全厚の25%以上40%以下であるカップ状成形容器を成形した。熱盤温度は600℃、成形時間は20秒とした。容器と底面とコーナー(底面と外側との接する部分)の外観を目視観察して、下記の基準で評価した。
良:均一に伸びて、均一な厚みに成形されている。
可:底面又はコーナーの一部に厚みムラがある。
不良:底面又はコーナーの一部に破れがある。
【0041】
(容器の座屈強度)
積層シートを用い、単発真空成形機(浅野研究所(株)製)にて開口部径50mm、底面部径50mm、高さ50mm、側面部厚み:シート全厚の10%以上30%以下、底面部厚み:シート全厚の25%以上40%以下であるカップ状成形容器を成形した。熱盤温度は600℃、成形時間は20秒とした。
得られた成形容器の座屈強度を、23℃相対湿度50%の環境にて測定した。尚、座屈強度はJIS−K7181に従い圧縮測定を行った際の、最大点荷重とした。測定機器、圧縮条件および座屈強度の判定基準を以下に記す。
使用機器:ストログラフVEID(東洋精機(株)製)
圧縮速度:50mm/min
判定基準:
良:座屈強度が70N以上である。
可:座屈強度が60N以上70N未満である。
不良:座屈強度が60N未満である。
【0042】
(容器のノッチ折れ性)
シートの中央部より50mm四方の正方形状試験片を採取し、一方の頂点から他方の頂点へ対角線上に、シート厚みに対し50%深さの切込みを入れノッチを形成した。23℃相対湿度50%の環境にて、ノッチを入れた面に対し150度折り曲げた際の破断の有無より、ノッチ折れ性を以下の基準に従い評価した。
良:1回目の折り曲げで、ノッチ部より破断を生じた。
不良:1回目の折り曲げでは、ノッチ部からの破断を生じなかった。
【0043】
[実施例2]
全層に対する中芯層の厚み比率を83%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0044】
[参考例3]
全層に対する中芯層の厚み比率を93%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0045】
[参考例4]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」(ポリブタジエン体積平均粒子径=2.5μm、ポリブタジエン量=9.8質量%、MFR=3.6g/10分)63質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」37質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」72質量部とポリスチレン「トーヨースチロールG200C」28質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例6]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」90質量部とポリスチレン「トーヨースチロールG200C」10質量部へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例7]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールH850」へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0049】
[参考例8]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」15質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」85質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例9]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」30質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」70質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例10]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」40質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」60質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例11]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」50質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」50質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形した。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
全層に対する中芯層の厚み比率を96%へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が低い結果となった。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
[比較例2]
全層に対する中芯層の厚み比率を68%へ変更した以外は、実施例2と同様な方法で積層シートを製膜しが、得られた積層シートはノッチ折れ性に劣る結果となった。結果を表2に示す。
【0056】
[比較例3]
外層の樹脂を、東洋スチレン(株)製HIPS「トーヨースチロールXL1」(ポリブタジエン体積平均粒子径=0.6μm、ポリブタジエン量=13.4質量%、MFR=2.6/10分)80質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」20質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはノッチ折れ性が悪い結果となった。結果を表2に示す。
【0057】
[比較例4]
外層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」65質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」35質量部の混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が悪い結果となった。結果を表2に示す。
【0058】
[比較例5]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」10質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」90質量部との混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはデュポン衝撃強度が低い結果となった。結果を表2に示す。
【0059】
[比較例6]
中芯層の樹脂を、HIPS「トーヨースチロールH850N」60質量部と、ポリスチレン「トーヨースチロールG200C」40質量部との混合物へ変更した以外は、実施例1と同様な方法で積層シートを成形したが、得られた積層シートはノッチ折れ性に劣る結果となった。結果を表2に示す。
【0060】
表1及び表2の結果から、本発明の積層シートを使用することにより、従来のハイインパクトポリスチレン系シートと比較し、剛性、成形加工性、ノッチ折れ性能を維持し、優れた耐衝撃性を実現し、ヨーグルト容器をはじめとする各種容器に好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の積層シートは、剛性、成形加工性、ノッチ折れ性能を維持し、耐衝撃性に優れるため、ヨーグルト容器として好適に用いられる他、その他の食品容器、飲料容器、医薬品容器、日用品容器等、各種容器など種々の用途に用いることができる。