(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記校正手段は、前記磁場計測手段が計測した校正用の3軸磁場計測値の代わりに、前記撮影手段の撮影中に取得された複数の3軸磁場計測値及び携帯型撮影装置の仰俯角とロール角とに基づいて校正処理を実施する、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の携帯型撮影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1にかかる従来の技術においては、カメラの撮影方向が鉛直下方に限定され、撮影方向の自由度が低いという問題があった。
【0006】
また、特許文献2にかかる従来の技術においては、航空機等の移動体に固定された軸に対してカメラの回転角度を求め、この回転角度と移動体の進行方向とから方位角を決定するので、撮影範囲が限定されるとともに、撮影を行える航空機がカメラを搭載したものに限定されてしまう。操作者が手に持って撮影できる撮影装置であれば、撮影範囲の自由度が高まると共に、撮影に用いる航空機の制約も緩和されるが、この場合、方位角の決定が課題となる。方位角を計測する方法として磁気センサを用いる方法があるが、鉄材のほか電気回路などの磁界に影響を与える部品が近くに存在する環境下では磁気センサに対する校正無しでは正しい方位角の計測ができない。このため磁気センサを利用する機材に据付けて、その据付場所における磁気の歪の大きさ(自差)を評価し、磁気センサを校正することが一般に行なわれる(特許文献3〜5参照)。しかし、エンジンやモータなどによる磁気外乱が発生している移動体内(特定の移動体ではなく、不特定の移動体)に持込む装置における磁気センサであって、移動体内のどの場所で利用されるかが特定されない装置の磁気センサである場合においては、これまでに行なわれている磁気センサの校正だけでは正しい方位角の計測は行なえない。
【0007】
また、方位角を計測する方法としてジャイロスコープを用いる方法があるが、数時間にわたり安定して方位角を計測可能なジャイロスコープは、大型かつ大重量であるため手持ちに適さないという問題がある。一方、手持ちが可能な小型のジャイロスコープは、時間経過に伴う角度計測値の揺らぎの幅(ドリフト)が大きく(非特許文献1参照)、数時間にわたる航空機からの撮影中に、安定して方位角を計測するには適さないという問題もあった。さらに、上記ドリフトについて補正する方法もあるが、何らかの基準方向が得られることが前提条件となる(特許文献6参照)。手持ちの撮影装置に小型のジャイロスコープを取り付けた場合には、常に向きが自由に変えられるため、仰俯角、ロール角については重力方向という基準となる方向が得られたとしても、方位角については上記ドリフトの補正に必要な基準となる方向が定まらないという問題もあった。
【0008】
なお、本発明者らは、上記特許文献7において、磁気センサの校正技術に関する発明を開示している。
【0009】
本発明の目的は、磁気センサの計測への外乱を及ぼす航空機等の移動体の中という環境下にあっても、磁気センサの校正を簡易に実施でき、地磁気に基づいて方位角を計測しつつ操作者が手に持って撮影を行う場合に、任意の方向にある撮影対象物の撮影方向と位置を高い精度で取得することができる携帯型撮影装置及び撮影プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、携帯型撮影装置であって、任意の撮影位置から任意の撮影方向にある撮影対象を撮影する撮影手段と、前記撮影方向の方位角を磁場計測手段が計測した地磁気に関する直交する3軸方向の磁場計測値である3軸磁場計測値についての磁場計測値補正量を求める校正手段と、前記3軸磁場計測値及び前記磁場計測値補正量を用いて前記撮影方向の方位角を求める方位角演算手段と、前記校正手段の動作開始及び終了を指示する校正指示手段と、を備える。
【0011】
また、上記校正手段は、前記磁場計測手段が計測した校正用の複数の3軸磁場計測値(H
Xn、H
Yn、H
Zn:ただし、nは磁場計測値の計測レコード番号である。)について傾斜計測手段が計測した携帯型撮影装置の仰俯角とロール角に基づいて第1傾斜補正した第1傾斜補正磁場成分(H
X’n、H
Y’n、H
Z’n)からH
X’n−H
Z’n及びH
Y’n−H
Z’nの関係を最小自乗法により直線近似し、前記H
X’n−H
Z’n及びH
Y’n−H
Z’nの関係から傾き補正量を求めるのが好適である。
【0012】
また、上記校正手段は、更に、前記傾き補正量に基づいて前記第1傾斜補正磁場成分を第2傾斜補正して第2傾斜補正磁場成分(H
X’’n、H
Y’’n、H
Z’’n)を求め、前記第2傾斜補正磁場成分(H
X’’n、H
Y’’n、H
Z’’n)からH
X’’n−H
Y’’nの関係を最小自乗法により円近似して求め、前記最小自乗法により求めた近似円の中心の原点からのずれ量を磁場計測値補正量として求め、前記3軸磁場計測値に基づいて方位角を演算するための補正情報とするのが好適である。
【0013】
また、前記校正手段は、前記磁場計測手段が計測した校正用の3軸磁場計測値の代わりに、前記撮影手段の撮影中に取得された複数の3軸磁場計測値及び携帯型撮影装置の仰俯角とロール角とに基づいて校正処理を実施してもよい。
【0014】
また、本発明の他の実施形態は、撮影プログラムであって、コンピュータを、任意の撮影位置から任意の撮影方向にある撮影対象を撮影する撮影手段の撮影方向の方位角を磁場計測手段が計測した地磁気に関する直交する3軸方向の磁場計測値である3軸磁場計測値についての磁場計測値補正量を求める校正手段、前記3軸磁場計測値及び前記磁場計測値補正量を用いて前記撮影方向の方位角を求める方位角演算手段、前記校正手段の動作開始及び終了を指示する校正指示手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁気センサの計測への外乱を及ぼす航空機等の移動体の中という環境下にあっても、磁気センサの校正を簡易に実施でき、地磁気に基づいて方位角を計測しつつ操作者が手に持って撮影を行う場合に、任意の方向にある撮影対象物の撮影方向を高い精度で取得することができ、延いては撮影対象物の位置を高い精度で取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1には、実施形態にかかる携帯型撮影装置の構成図が示される。
図1において、携帯型撮影装置は、撮影装置10、距離計測器12、傾斜計測器13、磁場計測器14、座標計測装置16、制御装置18を含んで構成されている。
【0019】
撮影装置10は、CCDカメラその他の適宜なカメラにより構成され、撮影対象を撮影して、撮影対象の画像情報を生成する。なお、撮影装置10には、動画を撮影するビデオカメラを含んでもよい。また、撮影装置10は、撮影方向の俯角が異なる複数のカメラを上下あるいは左右方向に並べて備える構成としてもよい。更に、焦点距離の異なる複数のカメラを用い、広角レンズの撮影範囲に望遠レンズの撮影範囲が含まれるように構成してもよい。これにより、画角が広くなるとともに、高解像度を維持することができる。
【0020】
距離計測器12には、従来公知のレーザ距離計等を用い、撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離を計測する。撮影方向は、例えば撮影装置10を構成するカメラレンズの光軸方向であり、予め100m〜200mといった遠方において、カメラレンズの光軸と、距離計測器12を構成するレーザ距離計等の光軸が略平行となるよう筐体20の向きを調整し、撮影時に撮影対象Pが距離計測器12の光軸上に位置するようにする。
【0021】
傾斜計測器13には、従来公知の3軸(X、Y、Z)ジャイロスコープ等を用いる。磁場計測器14には、従来公知の直交する3軸(X、Y、Z)の磁気センサを用いる。3軸のジャイロスコープ等及び磁気センサは、例えば、Z軸を鉛直方向、Y軸をレーザ距離計等の光軸方向に向くように取り付ける。傾斜計測器13は、撮影装置10の撮影方向の仰俯角(水平方向を0度として、Y軸の水平面からの傾き:θp)とロール角(水平方向を0度として、X軸のY軸周りの回転角:θr)を計測する姿勢センサとして機能する。また、磁気センサは、直交するX軸、Y軸、Z軸の3方向の磁場Hx、Hy、Hz(単位:ガウス)を地磁気について計測し、後述する方位角演算部35が撮影装置10の撮影方向の方位角を求めることに用いる。なお、傾斜計測器13および磁場計測器14は、距離計測器12に含まれる構成としてもよい。この場合には、距離計測器12とは別に傾斜計測器13および磁場計測器14を設ける必要はない。
【0022】
方位角の計測に磁気センサを用いる場合、磁気センサの設置場所すなわち携帯型撮影装置の設置場所によっては設置場所周辺の磁場の影響を受ける可能性がある。特に、ヘリコプター等の航空機上から計測を行う場合には、航空機を構成する金属材料やエンジンの動作に基づき地磁気以外の磁場が発生し、磁場の計測において大きさや方向の変動が生じやすい。このため、磁気センサを使用して計測する撮影方向の方位角に誤差を生じさせる可能性が高い。
【0023】
そこで、本実施形態では、後述する方法により磁気センサに対する校正処理を行い、
磁気センサの3軸磁気計測値から精度の高い方位角を求められるよう磁場計測値補正量を求める。
図1に示されるように、筐体20には、校正処理に使用する校正指示手段としての校正用スイッチ20sが備えられている。校正処理の詳細については後述する。上記磁気センサに対する校正処理に関する制御は、後述する制御装置18が行う。
【0024】
距離計測器12、傾斜計測器13、磁場計測器14による上記距離及び角度の計測は、撮影装置10のシャッターと同期して行われてもよいし、シャッターとは別に上記距離、角度及び磁場を計測する構成としてもよい。なお、動画撮影を行っている場合には、所定時間間隔毎に上記計測を行う構成としてもよい。
【0025】
座標計測装置16は、GPS(全地球測位システム)受信機を含んで構成され、撮影装置10の撮影位置の座標値(例えば、経度、緯度、標高)を計測する。上記座標値の計測は、撮影装置10のシャッターと同期して行われる。なお、動画撮影を行っている場合には、所定時間間隔毎に上記座標値の計測を行う構成としてもよい。なお、
図1では、座標計測装置16が通信線により制御装置18に接続されているが、この例は使用者が撮影時に自身の身につけて(例えばポケット等に挿入して)使用し、撮影装置10と使用者とが同じ位置であるとみなせることが前提となっている。この座標計測装置16は、後述する筐体20に固定してもよい。この場合、例えばヘリコプターの窓際等、GPS衛星からの電波を良好に受信できる場所に筐体20を配置することが好ましい。また、座標計測装置16のみをヘリコプターの窓際等、GPS衛星からの電波を良好に受信できる場所に配置し、GPS衛星からの電波を受信させてもよい。
【0026】
制御装置18は、適宜なコンピュータにより構成され、撮影装置、校正処理、方位角演算に必要な各種制御を行う。また、座標計測装置16が計測した撮影位置の座標値、距離計測器12が計測した撮影位置と撮影対象Pとの間の距離、傾斜計測器13が計測した撮影装置10の撮影方向の仰俯角、ロール角及び磁場計測器14が計測した3軸磁場計測値に基づき校正処理により求まった磁場計測値補正量を適用して方位角演算により演算される方位角を求め、前記座標値、距離、仰府角、方位角の値に基づいて撮影対象Pの座標情報を求める。さらに、距離計測器12が計測した撮影位置と撮影対象との距離、傾斜計測器13が計測した上記仰俯角及びロール角、上記校正された方位角、制御装置18が求めた撮影対象の座標情報等と、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報とを関連付けて撮影結果として制御装置18が有する機能によって記憶及び出力をする。制御装置18は、これらに必要な各種制御を行う。
【0027】
なお、撮影装置10、距離計測器12、傾斜計測器13及び磁場計測器14は、使用者が手で持って撮影等の操作ができるように、使用者が把持可能な適宜な筐体20に固定されている。また、
図1に示された例では、距離計測器12、傾斜計測器13及び磁場計測器14が筐体20の外表面に配置されているが、これらの配置は
図1の例に限定されない。筐体20の内部及び筐体20の周囲(外表面)に一体的に固定されて配置され、使用者が筐体20を手で持ちながら撮影等の操作を行い易ければ適宜採用することができる。また、この筐体20には、制御装置18を収容する構成としてもよい。その場合、制御装置18としては、
図1に示されたパーソナルコンピュータではなく、小型の組み込み用コンピュータ等を使用してもよい。また、GPS衛星からの電波を受信して撮影位置の座標値が計測できるのであれば、更に座標計測装置16を筐体20に収容する構成としてもよい。実施形態にかかる携帯型撮影装置は、携帯型撮影装置に組み込んだ磁場計測器14の3軸磁場計測値と傾斜計測器13の仰俯角、ロール角から方位角を決定するので、航空機、車両等の移動体に固定された軸に対してカメラの回転角度を求める必要がない。このため、使用者が手で持った状態でも方位角を計測することができる。また、筐体20には、使用者が手で持つときに握るための把持部材22を設けるのが好適である。
【0028】
図2には、実施形態にかかる制御装置18の機能ブロック図が示される。
図2において、制御装置18は、画像情報取得部24、GPS情報取得部26、距離情報取得部28、角度情報取得部30、磁場強度取得部31、校正部32、校正指示部34、方位角演算部35、記憶部36、対象座標演算部38、出力部40、通信部42及びCPU44を含んで構成されている。この制御装置18は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU44とCPU44の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0029】
画像情報取得部24は、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報を取得する。取得した画像情報には適宜な識別情報を付して記憶部36に記憶させるとともに、出力部40に出力する。この識別情報としては、例えば距離計測器12、傾斜計測器13、磁場計測器14及び座標計測装置16の計測タイミングである撮影装置10のシャッターの動作時刻とすることができる。この場合、画像情報取得部24が撮影装置10のシャッターを動作させるトリガー信号を発生させ、このトリガー信号の発生時刻を識別情報とする。この際、シャッターを動作させるトリガー信号を距離計測器12、傾斜計測器13、磁場計測器14及び座標計測装置16に同時に出力して各計測を行わせてもよいし、距離計測器12、傾斜計測器13、磁場計測器14及び座標計測装置16に撮影装置10を動作させるトリガー信号とは別に、同期を取らずにトリガー信号を出力して各計測を行わせる構成としてもよい。なお、画像情報取得部24が取得する画像情報には、静止画の他、動画が含まれていてもよい。
【0030】
GPS情報取得部26は、座標計測装置16が撮影装置10のシャッターに同期あるいは非同期で計測した撮影装置10の撮影位置の座標値を座標情報として取得し、記憶部36に記憶させる。当該座標情報には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、座標計測装置16が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、GPS情報取得部26が座標の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の座標値を求めて記憶部36に記憶させる。この場合、記憶部36に記憶させる座標値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。また、時刻情報を識別情報とするために、座標計測装置16が受信するGPS信号に含まれる時刻情報に基づいて制御装置18の時計を初期化し、同期が取れるようにしておく。なお、GPS情報取得部26が座標情報を取得できない場合には、前後数点の座標情報を用いて補間したり、あるいはGPSの代わりにジャイロ、加速度計等を使用した公知の方法により座標情報を取得してもよい。
【0031】
距離情報取得部28は、距離計測器12を構成するレーザ距離計が撮影装置10のシャッターに同期あるいは非同期で計測した距離データを取得し、記憶部36に記憶させる。この距離データは、撮影装置10の撮影位置と撮影対象Pとの距離(例えばメートル単位の値)である。なお、上記レーザ距離計が距離とは異なる形式のデータ (例えばパルス信号)を出力する場合には、距離情報取得部28がレーザ距離計の計測データから撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離を演算する構成としてもよい。当該距離データにも、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、距離計測器12が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、距離情報取得部28が距離の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の距離データを求めて記憶部36に記憶させる。この場合、記憶部36に記憶させる距離データには、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。
【0032】
角度情報取得部30は、撮影装置10のシャッターに同期あるいは非同期で傾斜計測器13を構成するジャイロスコープ等が計測した撮影装置10の撮影方向の仰俯角及びロール角を取得し、記憶部36に記憶させる。当該仰俯角、ロール角にも、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、傾斜計測器13が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、角度情報取得部30が仰俯角及びロール角の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の仰俯角及びロール角の値を求めて記憶部36に記憶させる。この場合、記憶部36に記憶させる仰俯角及びロール角の値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。
【0033】
磁場強度取得部31は、磁場計測器14が3軸磁場計測値を磁場計測器14から取得して記憶部36に記憶する。当該磁場計測値にも、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、磁場計測器14が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、磁場強度取得部31が3軸磁場の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の3軸磁場の値を求めて記憶部36に記憶させる。この場合、記憶部36に記憶させる3軸磁場の値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。
【0034】
校正部32は、磁場計測器14が計測した3軸磁場計測値の校正用に後述する磁場計測値補正量(Hx-offとHy-off)を求め、記憶部36に記憶する。校正処理を行う際には、実施形態にかかる携帯型撮影装置を持ち込んだ航空機を旋回させつつ、後述する校正指示部34から校正開始の指示情報を入力し、航空機の旋回による携帯型撮影装置の回転角度が所定の値になるまで磁気センサによる校正用の3軸磁場の計測を継続する。なお、航空機がヘリコプターの場合には、定位置で機体を旋回させつつ磁気センサにより校正用の3軸磁場計測値を計測してもよい。上記校正用の3軸磁場計測値を使用した校正部32による校正処理については後述する。
【0035】
校正指示部34は、上記校正用スイッチ20sが操作(例えば、押しボタンスイッチの場合は押下)された際に出力される校正指示信号を受け取り、校正部32に校正開始を指示する情報を出力するとともに、校正用スイッチ20sが操作(押下)されている間、校正部32に校正処理を実行させる。なお、校正用スイッチ20sを、いわゆるトグルスイッチとし、校正部32による校正処理中に校正用スイッチ20sが操作された場合には、校正部32に校正終了を指示する情報を出力する構成としてもよい。また、校正処理の終了の判断は、航空機の旋回による携帯型撮影装置の回転角度等に基づいて校正部32が行ってもよい。
【0036】
方位角演算部35は、記憶部36より撮影装置10の撮影方向の仰俯角及びロール角、3軸磁場計測値を読み出し、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報で対応付けを行い、3軸磁場計測値に対して後述する第1傾斜補正を行い、さらに校正部32が校正処理により求めた磁場計測値補正量を記憶部36から読み出し、これらの値に基づいて後述する式1により撮影方向の方位角を演算し、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、記憶部36に記憶する。
【0037】
記憶部36は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成される記憶装置に、上記識別情報を付した画像情報、識別情報を付した座標情報、識別情報を付した距離データ、識別情報を付した仰俯角及びロール角、識別情報を付した3軸磁場計測値、識別情報を付した方位角等、及びCPUの動作プログラム等の、制御装置18の各処理に必要な情報を記憶させる。また、後述する対象座標演算部38が演算した撮影対象Pの座標情報も識別情報を付して記憶装置に記憶させる。なお、記憶装置としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶装置には、主としてCPU44の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU44が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0038】
対象座標演算部38は、GPS情報取得部26が取得した撮影位置の座標情報(緯度、経度等の座標値)、距離情報取得部28が取得した撮影装置10の撮影位置と撮影対象Pとの距離、角度情報取得部30が取得した撮影装置10の仰俯角、方位角演算部35が求めた方位角を用いて、撮影対象の座標情報を演算する。この演算には、上記識別情報にて対応関係があると判別された座標情報、距離、仰俯角、方位角を、対象座標演算部38が記憶部36から読み出して使用する。撮影対象Pの座標情報は、上述した撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付して記憶部36に記憶する。
【0039】
出力部40は、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報を、対象座標演算部38が演算して求めた撮影対象Pの座標情報とともに記憶部36から読み出して出力する。この場合、撮影対象Pの画像情報と方位角及び仰府角または座標情報とは、上記識別情報に基づいて関連づけを行う。出力部40が上記情報を出力する先は、例えば表示装置等であり、液晶ディスプレイ等に上記画像情報、方位角、仰府角、座標情報に含まれる座標値等を表示する。また、座標情報に基づいて、対応する地図を表示装置に表示させてもよい。この場合、例えば、撮影対象Pの座標情報に基づいて、所定の地図上の撮影対象の位置に、撮影対象Pの画像情報を関連付け、入力装置としてのポインティングデバイスにより撮影対象Pの位置を表す画素領域(1つまたは複数の画素により構成される)をクリック(領域指定)することにより、当該画像情報を表示する構成が好適である。なお、撮影対象の画像の2次元地図上への表示には、撮影対象の標高は必ずしも必要ではない。一方、3次元地図上へ表示する場合には、上記座標情報に標高を含めたり、あるいは2次元の座標を基にして3次元の地表面に位置を定めることにより行うことができる。上記2次元または3次元の地図情報も記憶部36に記憶させておき、出力部40が読み出して出力する構成とする。
【0040】
通信部42は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPU44が外部の装置とデータをやり取りするために使用する。また、撮影装置10、距離計測器12、傾斜計測器13、磁場計測器14、座標計測装置16から画像情報、距離と角度の計測値、磁場の強度及び座標値等の情報を受信し、必要に応じて適宜な指示情報等を送信する。
【0041】
図3には、
図2に示された校正部32が行う校正処理の例のフローが示される。
図3に示された校正処理を行う際には、本実施形態にかかる携帯型撮影装置を航空機等の移動体内に持ち込み、撮影予定の方向の窓に向けた状態で航空機が旋回を開始し、またはただちに開始できる状態であることを前提とする。また、上記校正部32の動作中(校正処理中)には、撮影装置10の撮影動作を必ずしも行わせる必要がないため、例えば上記校正部32の動作中には、撮影装置10の撮影動作が禁止されるようにしてもよい。
【0042】
図3において、校正指示部34は、校正用スイッチ20sが操作された(ONとなった)ことを示す信号を監視しており(S1)、操作されたことを示す信号を受け取った場合(S1でY)に、校正部32に対して校正開始を指示する情報を出力し、校正部32が校正動作を開始する(S2)。校正動作が開始されると、航空機の旋回中に磁気計測器14が計測する3軸磁場計測値(Hxn、Hyn、Hzn:nは、磁場計測値の計測レコード番号)を磁場強度取得部31が取得し、計測時刻情報とともに記憶部36に出力する。同様に、傾斜計測器13が計測する撮影装置10の撮影方向にあたる仰俯角θpとロール角θrを角度情報取得部30が傾斜角度計測値として取得し、計測時刻情報とともに記憶部36に出力する(S3)。
【0043】
次に、校正部32は、記憶部36から取得した3軸磁場計測値である(Hx、Hy、Hz)と傾斜角度計測値(θp、θr)とをそれぞれの計測時刻情報に基づいて対応付けを行い、傾斜角度計測値を用いて3軸磁場計測値の傾斜補正(第1傾斜補正)を行い、第1傾斜補正磁場成分(Hx’n、Hy’n、Hz’n:nは、磁場計測値の計測レコード番号である。)として記憶部36に傾斜補正に用いた傾斜角度計測値とともに記憶させる(S4)。ここで、第1傾斜補正とは、姿勢センサ(傾斜計測器13)が計測した傾斜角度計測値により磁気センサの傾きを補正し、θp及びθrの値が0度である時の直交するX軸、Y軸、Z軸の3方向の磁場の値に換算することをいう。
【0044】
次に、校正部32は、傾斜補正されたHx’、Hy’の散布図(
図5に示す横軸をHx、縦軸をHyとするグラフ)を制御装置18のモニタ上に表示する(S5)。
【0045】
航空機等の移動体を旋回させながら継時的にHx’、Hy’を散布図に表示した場合、1周分の旋回によってHx’、Hy’の分布は円状になる。この特性を利用して、制御装置18のモニタを監視する操作者は、S5で表示されたグラフを目視し、校正データの取得量が十分かを判断する。(1旋回分の校正データ取得量を100%とする場合、Hx’、Hy’の分布が半円状であれば校正データ取得量が50%、円状であれば100%に達したと判断される)。
【0046】
校正指示部34は、校正用スイッチ20sが操作されていることを示す信号(ONであることを示す信号)を監視する(S6)。校正用スイッチ20sが操作されている(操作が継続している)ことを示す信号を校正指示部34が受け取っている間(S6でY)は、校正部32に指示してS3、S4、S5を繰り返させる。
【0047】
制御装置18のモニタを監視する操作者が校正データの取得量が十分であると判断して校正用スイッチ20sの操作を止め(例えば、押しボタンから手を離し)、校正用スイッチ20sが操作されていないことを示す信号(OFFであることを示す信号)を校正指示部34が受け取った場合(S6でN)は、校正部32に指示して校正データの取得を終了させる(S7)。
【0048】
校正データの取得が終了したら、次に、校正部32は、校正演算を実行する(S8)。校正演算の内容は後述する
図4において説明する。校正演算が終了した後に、校正演算の結果として磁場計測値補正量を記憶部36に出力する(S9)。記憶部36への出力を完了すると、校正部32は校正動作を停止する(S10)。
【0049】
図4には、校正部32が実行する校正演算の動作例のフローが示される。また、
図5には、校正部32の校正動作の説明図が示される。
【0050】
図4において、上記
図3のS2〜S7で説明した校正データ取得中に計測され、第1傾斜補正が施されたN点の第1傾斜補正磁場成分(Hx’n、Hy’n、Hz’n)及び傾斜角度計測値を校正部32が記憶部36から読み出して取得する(S11)。
【0051】
記憶部36から読み出したN点の第1傾斜補正磁場成分に基づくH
X’n−H
Z’n及びH
Y’n−H
Z’nの関係を最小自乗法により直線近似して求め(S12)、上記H
X’n−H
Z’n及びH
Y’n−H
Z’nの関係から傾き補正量(θp-off、θr-off)を算出し、記憶部36に記憶させる(S13)。
【0052】
図5において、H
X’n−H
Z’nの関係はHx−Hz平面に示され、H
Y’n−H
Z’nの関係はHy−Hz平面に示される。なお、Hx−Hz平面及びHy−Hz平面に示される点(黒丸)が、第1傾斜補正磁場成分(H
X’n、H
Y’n、H
Z’n)の各(H
X’n、H
Z’n)及び(H
Y’n、H
Z’n)を表す点である。
【0053】
図5に示されるように、H
Y’n−H
Z’nの関係の近似直線LpがHy軸となす角度が姿勢角度のうちの仰俯角の補正量θp-offであり、H
X’n−H
Z’nの関係の近似直線LrがHx軸となす角度が姿勢角度のうちのロール角の補正量θr-offである。上記傾き補正量は、H
X’n−H
Z’nの関係の近似直線をHx軸に平行とし、H
Y’n−H
Z’nの関係の近似直線をHy軸に平行とするために各直線を回転させる角度である。
【0054】
次に、校正部32は、上記傾き補正量に基づいて上記第1傾斜補正磁場成分を第2傾斜補正して第2傾斜補正磁場成分(H
X’’n、H
Y’’n、H
Z’’n)を求める(S14)。ここで、第2傾斜補正とは、姿勢センサが計測した傾斜角度計測値(θp、θr)に上記傾き補正量(θp-off、θr-off)を加算した値(θp+σp・θp-off、θr+σr・θr-off:σp、σrは正負の符号で、使用する傾斜計測器のX軸、Y軸、Z軸の極性により正負が決まる。)により磁気センサの傾きを補正し、上記(θp+σp・θp-off、θr+σr・θr-off)の値が0度であるときの直交するX軸、Y軸、Z軸の3方向の磁場の値(第2傾斜補正磁場成分)に換算することをいう。求まった(H
X’’n、H
Y’’n、H
Z’’n)を第1傾斜補正磁場成分に置き換えてS13〜S14を繰り返して収束計算を行うのが好適である。
【0055】
校正部32は、上記第2傾斜補正磁場成分(H
X’’n、H
Y’’n、H
Z’’n)からN点のH
X’’n−H
Y’’nの関係を抽出し(S15)、最小自乗法により円近似する(S16)。
【0056】
図5には、Hx−Hy平面に上記近似円Caが示される。また、近似円Caの中心がRcで示される。なお、Hx−Hy平面に示される点(黒丸)が、上記N点の第1傾斜補正磁場成分(H
X’n、H
Y’n、H
Z’n)を第2傾斜補正して得られた第2傾斜補正磁場成分(H
X’’n、H
Y’’n、H
Z’’n)の各(H
X’’n、H
Y’’n)を表す点である。
【0057】
校正部32は、上記最小自乗法により求めた近似円の中心Rcの、原点すなわちHx−Hy平面におけるHx軸とHy軸の交点からのずれ量を求め、このずれ量に基づいて近似円の中心Rcを上記原点にシフトさせるための補正量Hx-offとHy-offとを求め、記憶部36に記憶する(S17)。Hx-offは近似円の中心RcをHx軸方向に移動させる磁場計測値補正量であり、Hy-offは近似円の中心RcをHy軸方向に移動させる磁場計測値補正量である。以上で校正演算が終了する。
【0058】
以上のようにして求められた磁場計測値補正量Hx-offとHy-offとを使用し、方位角演算部35は、以下の式により撮影方向の方位角を求める。
方位角=Arctan((Hy’(t)−Hy-off)/(Hx’(t)−Hx-off))… (1)
但し、tは撮影装置10のシャッターの動作時刻(識別情報)であり、H x’(t)、Hy’(t)は、記憶部36に記憶されたt時点における3軸磁場計測値(Hx、Hy、Hz)及び傾斜角度計測値(θp、θr)に基づいて第1傾斜補正されたX軸、Y軸方向の磁場の成分である。
【0059】
上記方位角も、シャッターの動作時刻等を識別情報として付して記憶部36に記憶させる。
【0060】
なお、上記校正処理は、必ずしも撮影装置10による撮影前に実施する必要はなく、撮影完了後に
図3、
図4に示された処理を実施してもよい。
【0061】
また、さらに磁場計測値補正量に基づく誤差の小さい方位角を用いて撮影対象物の撮影方向を高い精度で取得すること延いては撮影対象物の位置を高い精度で取得することが、撮影中には必要がなく撮影終了後に得られれば十分な場合は、撮影装置10による撮影前に校正部32が校正指示部34の指示により磁場計測値補正量を決定する必要もなく、例えば撮影対象の撮影完了後に、撮影中に磁場計測器14が計測したすべての3軸磁場計測値(Hx、Hy、Hz)、及び傾斜計測器13が計測した撮影装置10の撮影方向の傾斜角度計測値(θp、θr)の値をN点の校正用計測値とみなして校正部32が上記補正量を算出し、方位角演算部35が当該補正量を用いて方位角を求める構成としてもよい。
【0062】
上述した、
図3、
図4の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【0063】
図6(a),(b)には、
図2に示された対象座標演算部38の座標演算処理の説明図が示される。撮影装置10及び角度距離計測器12は、使用者が手で持って操作できるものであり、
図6(a),(b)は、ヘリコプターから使用者が携帯型撮影装置の筐体20を手で持って地表を撮影した場合の例である。
【0064】
図6(a) が、空間に任意に設定された(x,y)座標で規定される平面図であり、ヘリコプターH上の撮影位置Cから真北Nに対して角度αの方位にある撮影対象Pを撮影している状態が示されている。また、ヘリコプターH上の撮影位置Cすなわち携帯型撮影装置の撮影装置10の位置から撮影対象Pの位置までの水平距離をdで示している。なお、
図6(a)では、x方向及びy方向をそれぞれ矢印で示している。
【0065】
図6(b) が、空間に任意に設定された(x,z)座標で規定される側面図であり、高度hで飛行するヘリコプターHから下方の地表面B上の撮影対象Pを撮影している状態が示されている。この場合、撮影方向(仰俯角方向)は、角度θpの俯角となっている。また、撮影位置Cと撮影対象Pとの距離をDで示している。なお、
図6(b)では、x方向及びz方向をそれぞれ矢印で示している。
【0066】
距離Dは、距離計測器12が計測した距離を距離情報取得部28が取得し、撮影装置10のシャッターの動作時刻における撮影装置と撮影対象Pとの間の距離として決定された値であり、記憶部36を介して対象座標演算部38に渡される値である。上記方位角αは、方位角演算部35において前出(1)式のとおり計算される方位角であり記憶部36を介して対象座標演算部38に渡される値に、さらに磁気偏角の補正を施した真北からの方位角の値である。仰俯角θpは、上記方位角αを計算するときに用いた仰俯角θpの値である。つまり、仰俯角θpは、傾斜計測器13が計測した仰俯角を角度情報取得部30が取得し、撮影装置10のシャッターの動作時刻における撮影装置の仰俯角として決定された値であり、記憶部36を介して対象座標演算部38に渡される値である。対象座標演算部38は、これらの値とGPS情報取得部26が取得した撮影位置Cの座標情報とを使用して撮影対象Pの座標情報を演算する。この場合の演算式は以下の通りである。
【0067】
撮影対象Pの座標を(Xp,Yp,Zp)とし、撮影位置Cの座標を(Xc,Yc,Zc)とすると、
Xp=Xc−d・sinα
Yp=Yc+d・cosα … (2)
Zp=Zc−D・sinθとなる。
ただし、d=D・cosθ及びh=D・sinθである。
【0068】
なお、撮影位置Cの座標値が経度、緯度、標高で取得されている場合は、下記式(3)により撮影対象Pの座標値を求める。
Xp=Xc−d・sinα/Kx
Yp=Yc+d・cosα/Ky … (3)
Zp=Zc−D・sinθ
ここで、Kxは緯度Ycにおける経度1度当たりの距離であり、Kyは緯度1度当たりの距離である。