特許第6373079号(P6373079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373079
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】センサ装置およびエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   G01D5/245 110X
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-122721(P2014-122721)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-3888(P2016-3888A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 豊
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−009573(JP,A)
【文献】 特開平08−139429(JP,A)
【文献】 実開昭63−127198(JP,U)
【文献】 特開2013−234738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電子部品が実装された回路基板と、
弾性変形可能な防塵部材と、を有し、
前記防塵部材は、前記電子部品および前記回路基板に押し付けられた状態で前記回路基板の表面を被い、且つ、前記回路基板の厚さ方向から見た場合に当該回路基板よりも大きく、前記回路基板の厚さ方向に弾性変形して前記回路基板の環状端面の少なくとも一部分を被い、
前記回路基板に当該回路基板の表面側から被せられて、前記電子部品および前記回路基板を被うカバー部材を備え、
前記防塵部材は、前記カバー部材および前記回路基板のいずれか一方に固定され、前記カバー部材と前記回路基板の間で圧縮されることにより前記電子部品および前記回路基板に押し付けられていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記防塵部材は、前記カバー部材に固定されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記電子部品として、前記回路基板の表面に沿った装着方向から外部のコネクタが着脱可能に接続された基板側コネクタを備え、
前記防塵部材は、前記基板側コネクタおよび前記外部のコネクタに押し付けられていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記防塵部材は、多孔体であることを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記防塵部材は、独立気泡体であることを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記回路基板には、磁気センサが搭載されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記回路基板を保持するホルダを有し、
前記ホルダは、前記回路基板の裏面部分を支持する複数の回路基板支持部を備え、
前記複数の回路基板支持部は、前記回路基板の中心を通過して当該回路基板に沿って延びる仮想線を間に挟んだ対称な位置に配置されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項8】
回転体の回転を検出するエンコーダにおいて、
前記回転体に取り付けられたマグネットと、
前記マグネットの変位を検出する磁気センサと、
請求項に記載のセンサ装置と、
前記カバー部材が取り付けられたエンコーダケースと、を有し、
前記磁気センサは、前記回路基板に搭載されており、
前記ホルダは、前記回転体を搭載する装置のフレームに固定されており、
前記防塵部材は、前記カバー部材に固定されており、
前記エンコーダケースは、前記フレームに設けられた位置決め部と当接する位置決め当接部を備え、
前記位置決め当接部を前記フレームの位置決め部に当接させて前記エンコーダケースを前記フレームに固定することにより前記防塵部材が前記電子部品および前記回路基板に押し付けられて当該回路基板の表面を被う状態が形成されていること特徴とするエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を備えるセンサ装置およびエンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装されている回路基板の表面に導電性の塵などの異物が付着すると、回路基板に形成された回路が短絡することがある。
【0003】
回路基板の表面に異物が付着することを防止することが可能な技術は特許文献1、2に記載されている。特許文献1では、回路基板の表面を樹脂により被っている。特許文献2では、回路基板の表面を通気可能なカバー部材により被っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−41680号公報
【特許文献2】特開2003−133703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板の表面を樹脂により被うためには、回路基板を搭載する装置の製造過程に回路基板に樹脂層を積層する作業工程が必要となる。従って、回路基板を樹脂で被う技術では、回路基板を搭載する装置の製造コストが増加するという問題がある。
【0006】
一方、回路基板をカバー部材で被う技術では、回路基板をカバー部材で被う前に回路基板の表面に付着した導電性の異物が、時間の経過とともにカバー部材と回路基板の間で移動する可能性がある。例えば、回転体に取り付けられたマグネットの変位を検出するセンサが実装された磁気センサ装置(磁気式のエンコーダ)の回路基板では、マグネットの変位による磁界の変化により、磁性体からなる異物が移動する可能性がある。導電性の異物の回路基板上での移動は、回路の短絡の原因となる。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、回路基板の表面に付着した導電性の異物の移動を抑制でき、簡単な構成で回路基板の表面を保護するセンサ装置、および、エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るセンサ装置は、表面に電子部品が実装された回路基板と、弾性変形可能な防塵部材と、を有し、前記防塵部材は、前記電子部品および前記回路基板に押し付けられた状態で前記回路基板の表面を被い、且つ、前記回路基板の厚さ方向から見た場合に当該回路基板よりも大きく、前記回路基板の厚さ方向に弾性変形して前記回路基板の環状端面の少なくとも一部分を被い、前記回路基板に当該回路基板の表面側から被せられて、前記電子部品および前記回路基板を被うカバー部材を備え、前記防塵部材は、前記カバー部材および前記回路基板のいずれか一方に固定され、前記カバー部材と前記回路基板の間で圧縮されることにより前記電子部品および前記回路基板に押し付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、防塵部材は、電子部品および回路基板に沿って弾性変形して、電子部品および回路基板を被うものとなる。従って、防塵部材により回路基板を被う前に回路基板に導電性の異物が付着していた場合には、その異物は、防塵部材と回路基板の間、或いは、防塵部材と電子部品の間に挟まれ、その移動が抑制される。また、防塵部材により電子部品および回路基板が被われた後には、電子部品および回路基板に導電性の異物が付着することを防止できる。従って、導電性の異物によって回路が短絡することを防止或いは抑制できる。
【0010】
また、本発明によれば、前記防塵部材は、前記回路基板の厚さ方向から見た場合に当該回路基板よりも大きく、前記回路基板の厚さ方向に弾性変形して前記回路基板の環状端面の少なくとも一部分を被う。従って、回路基板の外周縁部分から回路基板と防塵部材の間に導電性の異物が進入して回路を短絡させることを防止或いは抑制できる。さらに、本発明によれば、前記回路基板に当該回路基板の表面側から被せられて、前記電子部品および前記回路基板を被うカバー部材を備え、前記防塵部材は、前記カバー部材および前記回路基板のいずれか一方に固定され、前記カバー部材と前記回路基板の間で圧縮されることにより前記電子部品および前記回路基板に押し付けられている。従って、カバー部材によっても、導電性の異物が電子部品や回路基板に付着することを防止できる。また、このよう
にすれば、カバー部材を回路基板に被せることにより防塵部材を圧縮させることができるので、防塵部材を電子部品および回路基板に押し付けることが容易となる。
【0011】
本発明において、前記電子部品として、前記回路基板の表面に沿った装着方向から外部のコネクタが着脱可能に接続された基板側コネクタを備え、前記防塵部材は、前記基板側コネクタおよび前記外部のコネクタに押し付けられているものとすることができる。このようにすれば、防塵部材の弾性力(弾性復帰力)により、コネクタと外部のコネクタの接続部を押圧できるので、コネクタから外部のコネクタが抜けることを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記防塵部材は、多孔体とすることができる。このようにすれば、防塵部材を、電子部品および回路基板に押し付けたときに、電子部品および回路基板に沿って弾性変形させやすい。また、弾性変形可能な多孔体であれば、簡易な打ち抜き加工によって所望の形状を得ることが容易であり、防塵部材を安価に製造できる。
【0013】
また、本発明において、前記防塵部材は、独立気泡体とすることができる。このようにすれば、多孔体の孔を介して導電性の異物が基板表面に達することを防止できる。
【0014】
本発明において、前記回路基板には、磁気センサが搭載されているものとすることができる。磁気センサが実装された回路基板では、被検出物が発生させる磁界の変化によって基板表面に付着した磁性体からなる異物が移動して、回路の短絡を発生させる可能性がある。かかる問題に対して、防塵部材により異物の移動を抑制できるので、異物に起因した回路の短絡を防止或いは抑制できる。
【0015】
本発明において、前記防塵部材は、前記カバー部材に固定されていることが望ましい。このようにすれば、カバー部材を回路基板に被せることにより、防塵部材を電子部品および回路基板に押し付けることができる。
【0016】
本発明において、前記回路基板を保持するホルダを有し、前記ホルダは、前記回路基板の裏面部分を支持する複数の回路基板支持部を備え、前記複数の回路基板支持部は、前記回路基板の中心を通過して当該回路基板に沿って延びる仮想線を間に挟んだ対称な位置に配置されているものとすることができる。このようにすれば、防塵部材を回路基板に押し付けたときに、回路基板が歪むことを防止或いは抑制できる。
【0017】
次に、本発明は、回転体の回転を検出するエンコーダにおいて、前記回転体に取り付けられたマグネットと、前記マグネットの変位を検出する磁気センサと、上記のセンサ装置と、前記カバー部材が取り付けられたエンコーダケースと、を有し、前記磁気センサは、前記回路基板に搭載されており、前記ホルダは、前記回転体を搭載する装置のフレームに固定されており、前記防塵部材は、前記カバー部材に固定されており、前記エンコーダケースは、前記フレームに設けられた位置決め部と当接する位置決め当接部を備え、前記位置決め当接部を前記フレームの位置決め部に当接させて前記エンコーダケースを前記フレームに固定することにより前記防塵部材が前記電子部品および前記回路基板に押し付けられて当該回路基板の表面を被う状態が形成されていること特徴とする。
【0018】
本発明によれば、回路基板を保持するホルダが固定された装置のフレームにエンコーダケースを固定することにより、防塵部材が電子部品および回路基板に押し付けられて回路基板の表面を被う状態が形成される。ここで、防塵部材が電子部品および回路基板に押し付けられて回路基板の表面を被う状態が形成されれば、防塵部材により回路基板を被う前に回路基板に導電性の異物が付着していた場合でも、その異物は、防塵部材と回路基板の間、或いは、防塵部材と電子部品の間に挟まれ、その移動が抑制される。従って、導電性の異物によって回路が短絡することを防止或いは抑制できる。よって、回転体を搭載する装置に取り付けられるエンコーダの組立てをクリーンルームで行わなくても、導電性の異物によって回路が短絡することを防止或いは抑制できる。また、防塵部材により電子部品および回路基板が被われた後には、電子部品および回路基板に導電性の異物が付着することを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弾性変形可能な防塵部材を回路基板の表面に押し付けているので、回路基板への導電性の異物の付着を防止できる。また、回路基板に付着していた異物の移動を防止或いは抑制できる。また、回路基板の外周縁部分から回路基板と防塵部材の間に導電性の異物が進入して回路を短絡させることを防止或いは抑制できる。さらに、カバー部材によっても、導電性の異物が電子部品や回路基板に付着することを防止でき、カバー部材を回路基板に被せることにより防塵部材を圧縮させることができるので、防塵部材を電子部品および回路基板に押し付けることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用したロータリエンコーダを搭載したモータユニットの説明図である。
図2】ロータリエンコーダの縦断面図である。
図3】ロータリエンコーダの斜視図および分解斜視図である。
図4】回路基板の平面図である。
図5】ホルダの説明図である。
図6】ロータリエンコーダの組み立て動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態としてモータに搭載された磁気式のロータリエンコーダを説明する。
【0022】
(全体構成)
図1は本発明を適用したロータリエンコーダを搭載したモータユニットの説明図である。図1(a)はモータユニットを出力軸が突出している出力側からみた場合の斜視図であり、図1(b)はモータユニットを出力側とは反対の反出力側からみた場合の斜視図であり、図1(c)はモータユニットからエンコーダケースおよびカバー部材を外した状態を反出力側からみた場合の斜視図である。図2はモータユニットに搭載されている状態のロータリエンコーダの断面図である。
【0023】
モータユニット1は、全体として直方体形状をしたユニット本体2と、ユニット本体2から突出する出力軸3を有する。ユニット本体2は、出力軸3を搭載するモータ4と、出力軸3の回転を検出するロータリエンコーダ5を備える。なお、以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を上下方向、Z方向を軸線L0に沿った前後方向とする。また、Z方向において、ユニット本体2から出力軸3が突出している前方をZ1方向、その反対の後方をZ2方向として説明する。また、図1等のY方向の上方をY1方向、下方向をY2方向とする。
【0024】
モータ4は、全体として直方体形状をしたモータケース(フレーム)6を有する。出力軸3はモータケース6から前方(Z1方向)に突出する前側突出部分3aを備える。前側突出部分3aはモータ4の出力部である。また、図2に示すように、出力軸3は、モータ
ケース6から後方(Z2方向)に突出する後側突出部分3bを備える。後側突出部分3bはロータリエンコーダ5によって覆われている。
【0025】
(ロータリエンコーダ)
図3(a)はロータリエンコーダを後方(Z2方向)の斜め上方から見た場合の斜視図であり、図3(b)は磁気センサ装置の分解斜視図である。図2に示すように、ロータリエンコーダ5は、マグネット10と、マグネット10の回転を検出する磁気センサ装置(センサ装置)11と、エンコーダケース12を備える。エンコーダケース12は、前面12aに後方(Z2方向)に向かって窪む円形の凹部13を備える。エンコーダケース12は凹部13の内側に磁気センサ装置11を格納した状態でモータケース6に固定されている。
【0026】
マグネット10は、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面10aを備える。マグネット10は、その着磁面10aを後方(Z2方向)に向けた状態で出力軸3(後側突出部分3b)の後端に取り付けられている。マグネット10は出力軸3と一体に回転する。
【0027】
磁気センサ装置11は、モータケース6に固定されたホルダ15と、ホルダ15に支持された回路基板16と、回路基板16を被うカバー部材17と、カバー部材17と回路基板16の間に配置された防塵部材18を備える。
【0028】
ホルダ15は、ホルダ中心孔19を備える環状の部材である。ホルダ15はホルダ中心孔19の中心軸線L1がモータ4の軸線L0に一致するように位置決めされてモータケース6に固定されている。ここで、図1(c)および図2に示すように、モータケース6は、軸線L0と直交する直交方向に延びて当該モータケース6の後端面を規定している環状板部21と、環状板部21の外周縁から一定の外形寸法で前方(Z1方向)に延びる筒部22と筒部22の前端縁(Z方向1の端縁)から外周側に向かって直交方向に広がるフランジ部23を備えている。出力軸3は、図2に示すように、環状板部21の中心孔を貫通して後方(Z2方向)に延びており、環状板部21の中心孔から後側に突出する部分が後側突出部分3bとなっている。ホルダ15は環状板部21に固定され、ホルダ中心孔19には出力軸3の後側突出部分3bが挿入されている。
【0029】
回路基板16は、図2および図3(b)に示すように、その厚さ方向を前後方向Zに向けた姿勢でホルダ15の後端部分(Z2方向の端部分)に固定されている。回路基板16の表面16a(回路基板16において後方(Z2方向)を向いている面)には、複数の電子部品25が実装されている。回路基板16の裏面16b(回路基板16において前方(Z1方向)を向いている面)の中央部分には磁気センサ26が実装されている。回路基板16がホルダ15に固定された状態では、磁気センサ26はホルダ中心孔19の中心軸線L1上に位置し、ホルダ中心孔19に挿入された後側突出部分3bに固定されたマグネット10と対峙する。
【0030】
カバー部材17はエンコーダケース12の凹部13の底面13aに取り付けられている。カバー部材17はエンコーダケース12が2本の止めネジ20(図1(b)参照)によってフランジ部23に固定されることにより、回路基板16を後方(Z2方向)および外周側から被う状態とされている。ここで、エンコーダケース12がモータケース6に固定される際には、図2に示すように、エンコーダケース12の凹部13の前端側部分(位置決め部当接部)13bがモータケース6の筒部22(位置決め部)に嵌合する。これにより、エンコーダケース12は、軸線L0と直交する半径方向で位置決めされる。また、エンコーダケース12がモータケース6に固定される際には、エンコーダケース12の前面(位置決め部当接部)12aがモータケース6のフランジ部(位置決め部)23に当接す
る。これによりエンコーダケース12は、軸線L0方向(Z方向)で位置決めされる。
【0031】
防塵部材18はカバー部材17に固定されている。防塵部材18は弾性変形可能な部材であり、カバー部材17と回路基板16の間で圧縮されて回路基板16に押し付けられている。防塵部材18は回路基板16の表面16aを被っている。
【0032】
(回路基板)
次に、図4を参照して回路基板16を詳細に説明する。図4は回路基板16の平面図である。回路基板16は、フェノール基板やガラス−エポキシ基板等に配線パターンが形成されたプリント配線基板である。図4では配線パターンは省略して示している。回路基板16には、この回路基板16の中央領域の周りに回路基板16の一部を残して延在する2本のスリット31、32が形成されている。回路基板16において2本のスリット31、32の内周側に位置する中央領域は内側実装領域33となっている。2本のスリット31、32は、相対向して上下方向(Y方向)に延在する2つの縦辺部分31a、32aと、回路基板16の幅方向(X方向)に延在する2つの横辺部分31b、32bと、斜めに延在して縦辺部分31a、32aと横辺部分31b、32bを接続する傾斜辺部分31c、32cを備えており、内側実装領域33は略6角形である。スリット31、32の外周側は外側実装領域34となっている。
【0033】
回路基板16の表面16aに実装された電子部品25は、磁気センサ26からのアナログ信号を増幅してディジタル信号に変換する半導体装置35、半導体装置35からのディジタル信号に基づいて回転角度位置や回転速度等を検出する信号処理部を備えるマイクロコンピュータ36、基板側コネクタ37などである。半導体装置35は内側実装領域33の中央に実装されている。ここで、内側実装領域33の裏面16bの中央には磁気センサ26が実装されており、回路基板16の厚さ方向から見た場合に磁気センサ26と半導体装置35は重なっている。
【0034】
マイクロコンピュータ36および基板側コネクタ37は外側実装領域34に実装されている。基板側コネクタ37は回路基板16の上端部分(Y1方向の端部分)に配置されている。基板側コネクタ37には、回路基板16の表面16aに沿って上下方向(Y方向)を下方(Y2方向)に向かう装着方向から外部のコネクタ40が着脱可能に接続されている。外部のコネクタ40には給電線および信号線を含むケーブル41が接続されており、電子部品25および配線パターンから形成された回路基板16上の回路には、給電線、外部のコネクタ40および基板側コネクタ37を介して電力が供給される。また、磁気センサ装置11からの出力は、基板側コネクタ37、外部のコネクタ40および信号線を介して外部に出力される。
【0035】
回路基板16の外側実装領域34には、3つの第1貫通部45a、45b、45cと2つの第2貫通部47a、47bが形成されている。第1貫通部45aと第1貫通部45bは、回路基板16の中心16c(回路基板16の上下方向(Y方向)の中心であり、かつ、幅方向(X方向)の中心)を通過して回路基板16の表面16aに沿って上下方向(Y方向)に延びる第1基板側仮想線M1に対して線対称となる位置に形成されている。第1貫通部45bと第1貫通部45cは回路基板16の中心16cを通過して回路基板16の表面16aに沿って幅方向(X方向)に延びる第2基板側仮想線M2に対して線対称となる位置に形成されている。2つの第2貫通部47a、47bは、第2基板側仮想線M2上において第1基板側仮想線M1に対して線対称となる位置に形成されている。本例では、第2貫通部47a、47bは、回路基板16を外周側から円弧状に切り欠いた切り欠き部として形成されている。
【0036】
(ホルダ)
図5(a)はホルダ15を後方(Z2方向)から見た場合の平面図であり、図5(b)はホルダ15を前方(Z1方向)から見た場合の底面図であり、図5(c)は図5(a)のA−A′におけるホルダ15の断面図である。図5に示すように、ホルダ15は、円形のホルダ中心孔19を備えた筒状胴部50を有する。ホルダ15の筒状胴部50の後端面50aには、後方(Z2方向)に向けて同一寸法で突出する4つの第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dと、第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dと同一寸法で突出する2つの第2回路基板支持部53a、53bが設けられている。
【0037】
第1回路基板支持部51aと第1回路基板支持部51bは、ホルダ中心孔19の中心軸線L1を通過してホルダ15の後端面50aに沿って上下方向(Y方向)に延びる第1ホルダ側仮想線N1に対して線対称となる位置に形成されている。第1回路基板支持部51cと第1回路基板支持部51dも、第1ホルダ側仮想線N1に対して線対称となる位置に形成されている。また、第1回路基板支持部51aと第1回路基板支持部51cは、ホルダ中心孔19の中心軸線L1を通過してホルダ15の後端面50aに沿って幅方向(X方向)に延びる第2ホルダ側仮想線N2に対して線対称となる位置に形成されている。第1回路基板支持部51bと第1回路基板支持部51dも第2ホルダ側仮想線N2に対して線対称となる位置に形成されている。従って、第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dは、ホルダ中心孔19の中心軸線L1回りで等角度間隔に形成されている。2つの第2回路基板支持部53a、53bは、第2ホルダ側仮想線N2上において、第1ホルダ側仮想線N1に対して線対称となる位置に形成されている。従って、4つの第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dと、2つの第2回路基板支持部53a、53bは上下方向(Y方向)に延びる第1ホルダ側仮想線N1に対して線対称に設けられている。
【0038】
第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dのうち、第1回路基板支持部51a、51b、51dは、それぞれ第1回路基板支持部51a、51b、51dの外形寸法より細い外形寸法でその端面から後方(Z2方向)に向けて突出する軸部52a、52b、52dを備える。第1回路基板支持部51cには軸部は形成されていない。第2回路基板支持部53a、53bは、それぞれ第2回路基板支持部53a、53bの外形寸法より細い外形寸法で後方(Z2方向)に向けて突出する筒部54a、54bを備える。
【0039】
ここで、回路基板16は、第1貫通部45a、45b、45cに、第1回路基板支持部51a、51b、51dの軸部52a、52b、52dが挿入され、第2貫通部47a、47bに、第2回路基板支持部53a、53bの筒部54a、54bが挿入され、第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dおよび第2回路基板支持部53a、53bが回路基板16の裏面16bに当接した状態でホルダ15に支持される。また、筒部54a、54bには、図3(b)に示すように、回路基板16に対してホルダ15とは反対側(後方(Z2方向))から第2貫通部47a、47bを通って有頭ネジ55が止められており、有頭ネジ55の頭部は、回路基板16を第2回路基板支持部53a、53bに押し付けている。
【0040】
なお、第1回路基板支持部51cには軸部が形成されていない。また、回路基板16において第1回路基板支持部51cと重なる位置には貫通部が形成されていない。従って、第1回路基板支持部51cの後方(Z2方向)の端面は、回路基板16の裏面16bに当接し、回路基板16を後方(Z2方向)に支持しているだけである。
【0041】
ここで、第1回路基板支持部51cには、軸部が形成されておらず、回路基板16において第1回路基板支持部51cと重なる位置には貫通部が形成されていない。従って、回路基板16をホルダ15に支持させる際に、回路基板16の第1貫通部45a、45b、45cにホルダ15の第1回路基板支持部51a、51b、51dの軸部52a、52b
、52dを挿入することにより、回路基板16はホルダ中心孔19の中心軸線L1回りに正しい姿勢で取り付けられる。また、回路基板16は、第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dおよび第2回路基板支持部53a、53bによって支持されることにより、ホルダ中心孔19の中心軸線L1方向で位置決めされる。回路基板16がホルダ15に固定されると、回路基板16の中心16cとホルダ15の中心軸線L1が一致する。また、中心軸線L1方向から見た場合に、第1基板側仮想線M1と第1ホルダ側仮想線N1、第2基板側仮想線M2と第2ホルダ側仮想線N2が一致する。
【0042】
筒状胴部50の前端部(Z1方向の端部)には、周方向の複数個所から前方(Z1方向)および外周側に突出したセンサ装置固定用の突部57a、57b、57cが設けられている。突部57a、57b、57cは、突部57a、57b、57cにおいて、筒状胴部50から径方向外側に突出した部分には孔58a、58b、58cが形成されている。
【0043】
突部57a、57b、57cは、センサ装置固定用であり、突部57a、57b、57cおよび孔58a、58b、58cはモータケース6にホルダ15を固定する際に用いられる。より具体的には、ホルダ15は、突部57a、57b、57cの前面をモータケース6の環状板部21に当接させ、孔58a、58b、58cを介して環状板部21に止められるネジ59(図1(c)参照)により、モータケース6に固定される。
【0044】
(カバー部材)
カバー部材17は、磁性体であり、鉄などの金属から形成されている。図3(b)に示すように、カバー部材は円形の底板部61と、底板部61の周縁から突出する環状壁部62を備える。環状壁部62の突出寸法は、エンコーダカバー12に設けられた凹部13の深さ寸法よりも短い。カバー部材17は、底板部61の厚さ方向を軸線L0方向(Z方向)に向け、環状壁部62が前方(Z1方向)に突出する姿勢で配置されている。底板部61は、図2に示すように、エンコーダケース12の凹部13の底面13aの中央部分に接着剤などで固定されている。底板部61の前面(内側面)には、接着剤などで防塵部材18が固定されている。環状壁部62には、周方向の一部分に前方(Z1方向)から切り欠いた切り欠き部63が設けられている。本例では、切り欠き部63はカバー部材17の上端部分(Y1方向の端部分)に位置している。
【0045】
(防塵部材)
防塵部材18は、絶縁性の多孔体からなる。本例では、防塵部材18として、ポリウレタンなどの合成樹脂からなる独立気泡体を用いている。防塵部材18は、円盤形状をしており、その厚さ方向を軸線L0方向(Z方向)に向けている。
【0046】
防塵部材18は、軸線L0方向(Z方向)から見た場合に、その平面形状が円形であり、回路基板16を包含する大きさを備える。ここで、防塵部材18の平面形状は、カバー部材17の環状壁部62によって規定される円と同一かそれよりも小さい。従って、防塵部材18をカバー部材17の底板部61に固定する際に、防塵部材18と環状壁部62との干渉によって防塵部材18が弾性変形してしまうことが防止されている。防塵部材18の厚さ寸法はカバー部材17の環状壁部62の突出寸法よりも短い。
【0047】
(モータユニットの組み立て)
モータユニット1を組み立てる際には、まず、図1(c)に示すように、回路基板16を搭載したホルダ15をモータケース6の後端を規定する環状板部21に固定する。ホルダ15をモータケース6に固定する際には、ホルダ中心孔19に環状板部21から突出する出力軸3の後側突出部分3bを挿入する。
【0048】
ここで、ホルダ15をモータケース6に固定すると、ホルダ15はモータケース6に位
置決めされ、回路基板16の中心16cとモータ4の軸線L0が一致する。これにより、出力軸3(後側突出部分3b)の後端に固定されたマグネット10と回路基板16の裏面16bに搭載された磁気センサ26が対峙する。
【0049】
次に、カバー部材17が固定されたエンコーダケース12をモータケース6のフランジ部23に固定する。カバー部材17には防塵部材18が固定されている。エンコーダケース12をモータケース6に固定する際には、エンコーダケース12の凹部13の前端側部分13bをモータケース6の筒部22に嵌合させる。これにより、エンコーダケース12はモータケース6に位置決めされ、カバー部材17の中心は軸線L0上に位置する。また、カバー部材17の内側に回路基板16およびホルダ15の後端部分(Z2方向の端部分)が挿入される。これにより、回路基板16はカバー部材17によって磁気シールドされる。
【0050】
ここで、エンコーダケース12をモータケース6に固定すると、カバー部材17と回路基板16の間で防塵部材18が圧縮され、防塵部材18が回路基板16および電子部品25に押し付けられた状態となる。より具体的には、エンコーダケース12がモータケース6に固定され、エンコーダケース12の前面12aとモータケース6のフランジ部23の当接により軸線L0方向(Z方向)でエンコーダケース12が位置決めされると、カバー部材17の底板部61と回路基板16との間の距離が防塵部材18の厚さ寸法より短くなる。これにより、防塵部材18はその厚さ方向に圧縮され、防塵部材18の前側部分は電子部品25および回路基板16の表面16aに沿って弾性変形した状態となる。さらに、防塵部材18は回路基板16よりも大きいので、防塵部材18の前端の外周縁部分が厚さ方向に弾性変形して回路基板16の環状端面16dの全部或いは一部分を覆った状態となる。
【0051】
また、防塵部材18の弾性力(弾性復帰力)により、基板側コネクタ37と外部のコネクタ40の接続部が軸線L0方向(Z方向)から押圧され、基板側コネクタ37から外部のコネクタ40が抜けることが抑制される。なお、外部のコネクタ40に接続されているケーブル41は、防塵部材18によって回路基板16の表面16aに押し付けられた状態で、カバー部材17の切り欠き部63を介して、磁気センサ装置11の外側に引き出される。
【0052】
ここで、モータユニット1を組み立てる際にロータリエンコーダ5の回路基板16に導電性の異物が付着していた場合には、出力軸3と一体に回転するマグネット10が発生させる磁界の変化によって回路基板16の表面16aに付着した異物が移動して、回路を短絡させる可能性がある。
【0053】
このような問題に対して、本例では、モータケース6にエンコーダケース12を固定することにより、カバー部材17に固定された防塵部材18が電子部品25および回路基板16に押し付けられて回路基板16の表面16aを被う状態が形成される。従って、防塵部材18により回路基板16を被う前に回路基板16に導電性の異物が付着していた場合でも、その異物は、防塵部材18と回路基板16の間、或いは、防塵部材18と電子部品25の間に挟まれ、その移動が抑制される。従って、導電性の異物によって回路が短絡することを防止或いは抑制できる。よって、モータユニット1の組み立てをクリーンルームで行わなくても、導電性の異物により回路が短絡することを防止或いは抑制できる。
【0054】
また、防塵部材18によって電子部品25および回路基板16が被われた後には、電子部品25および回路基板16に導電性の異物が付着することを防止できる。さらに、防塵部材18は回路基板16の環状端面16dの少なくとも一部分を被うので、回路基板16の外周縁部分から回路基板16と防塵部材18の間に導電性の異物が進入して回路を短絡
させることを防止或いは抑制できる。
【0055】
さらに、本例では、防塵部材18を弾性変形可能な多孔体としているので、簡易な打ち抜き加工によって所望の形状の防塵部材18を得ることができ、防塵部材18を安価に製造できる。また、防塵部材18は独立気泡体なので、多孔体の孔を介して導電性の異物が表面16aに達することを防止できる。
【0056】
ここで、本例では、防塵部材18はカバー部材17に固定されており、カバー部材17が固定されたエンコーダケース12をモータケース6に固定することにより、防塵部材18が回路基板16とカバー部材17の間で圧縮される。従って、防塵部材18が電子部品25および回路基板16に押し付けられた状態で回路基板16の表面16aを被う状態を形成することが容易である。
【0057】
また、本例では、回路基板16を支持するホルダ15は第1回路基板支持部51a、51b、51c、51dおよび第2回路基板支持部53a、53bを備えているが、これらの回路基板支持部51a、51b、51c、51d、53a、53bは、回路基板16の中心16cを通過して回路基板16に沿って上下方向(Y方向)に延びる第1基板側仮想線M1を間に挟んだ対称な位置に配置されている。従って、防塵部材18が回路基板16に押し付けられたときに、回路基板16が歪むことを防止或いは抑制できる。
【0058】
(その他の実施の形態)
ここで、防塵部材18は、連続気包体でもよい。また、連続気包体を用いる場合には、防塵部材18の前端面(Z1方向の端面)18a、後端面(Z2方向の端面)、または、環状端面18c(図3参照)に絶縁性のシートを張ったものを防塵部材18とすることができる。このようにすれば、連続気包体の孔を介して、異物が電子部品25や回路基板16に付着することをシートによって防止できる。
【0059】
また、上記の例では、防塵部材18はカバー部材17に固定されているが、回路基板16に固定してもよい。この場合には、例えば、絶縁性の粘着テーブなどを利用して、防塵部材18を回路基板16に押し付けた状態で防塵部材18を回路基板16に固定する。
【符号の説明】
【0060】
3・・・回転軸(回転体)
5・・・ロータリエンコーダ
6・・・モータケース(フレーム)
10・・・マグネット
11・・・磁気センサ装置(センサ装置)
12・・・エンコーダケース
12a・・・エンコーダケースの前面(位置決め当接部)
13b・・・凹部の前端側部分(位置決め当接部)
15・・・ホルダ
16・・・回路基板
16a・・・回路基板の表面
16d・・・回路基板の環状端面
16c・・・回路基板の中心
17・・・カバー部材
18・・・防塵部材
22・・・モータケースの筒部(位置決め部)
23・・・モータケースのフランジ部(位置決め部)
25・・・電子部品
26・・・磁気センサ
37・・・基板側コネクタ
40・・・外部のコネクタ
51a〜51d、53a、53b・・・回路基板支持部
M1・・・第1基板側仮想線(仮想線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6